(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態による免震機構について、
図1乃至
図10に基づいて説明する。
図1乃至
図4に示すように、本実施形態による免震機構1は、下部構造体11と上部構造体12との間の免震層13に設けられている。本実施形態では、下部構造体11が建物の躯体床で構成され、上部構造体12が躯体床の上側に設けられた床パネルで構成され、建物の躯体床と床パネルのとの間の免震層13に免震機構1が設けられている。なお、免震層13には、複数の免震機構1が設けられているものとする。
【0018】
免震機構1は、下部構造体11の上部に固定された下部案内部材2と、上部構造体12の底部に固定された上部案内部材3と、下部案内部材2と上部案内部材3との間に介装された摺動子4と、下部案内部材2と上部案内部材3との相対変位を復元する変位復元機構5と、を有している。
【0019】
下部案内部材2は、摺動子4が摺動する下部摺動面21を有する本体部22と、本体部22の下部に連結されて下部構造体11に固定される固定部23と、を有している。本体部22は、略直方体状の長尺のブロック状の部材で構成され、長手方向が一の水平方向(X方向とする)となり、短手方向がX方向に直交する他の水平方向(Y方向とする)となる向きに配置されている。本体部22の上面は、水平面となり下部摺動面21を構成している。下部摺動面21には、摺動子4との摩擦を低減させるようにテフロン(登録商標)などの滑り材が設けられている。
【0020】
固定部23は、板状に形成され、板面が水平面となる向きで本体部22の下面と接合されている。固定部23は、本体部22よりもX方向およびY方向に大きい略長方形状に形成され、本体部22よりもX方向およびY方向に突出している。固定部23は、下部構造体11の上面に固定されている。
図2に示すように、固定部23のうちのX方向の一方側におけるY方向の一方側の角部を第1角部23aとし、X方向の一方側におけるY方向の他方側の角部を第2角部23bとし、X方向の他方側におけるY方向の他方側の角部を第3角部23cとし、X方向の他方側におけるY方向の一方側の角部を第4角部23dとする。
【0021】
上部案内部材3は、摺動子4が摺動する上部摺動面31を有する本体部32と、本体部32の上部に連結されて上部構造体12に固定される固定部33と、を有している。本体部32は、略直方体状の長尺のブロック状の部材で構成され、長手方向がY方向となり、短手方向がX方向となる向きに配置されている。本体部32の下面は、水平面となり上部摺動面31を構成している。上部摺動面31には、摺動子4との摩擦を低減させるようにテフロン(登録商標)などの滑り材が設けられている。
【0022】
固定部33は、板状に形成され、板面が水平面となる向きで本体部32の上面と接合されている。固定部33は、本体部32よりもX方向およびY方向に大きい略長方形状に形成され、本体部32よりもX方向およびY方向に突出している。固定部33は、上部構造体12の下面に固定されている。
図2に示すように、固定部33のうちのY方向の一方側におけるX方向の他方側の角部を第1角部33aとし、Y方向の一方側におけるX方向の一方側の角部を第2角部33bとし、Y方向の他方側におけるX方向の一方側の角部を第3角部33cとし、Y方向の他方側におけるX方向の他方側の角部を第4角部33dとする。
【0023】
このような下部案内部材2と上部案内部材3とは、上下方向に間をあけて重なるように配置され、下部案内部材2と上部案内部材3とが上下方向に重なる交差部10に摺動子4が配置されている。
【0024】
摺動子4は、本体部41と、下部案内部材2とのY方向の相対変位を防止する第1ガイド部42と、上部案内部材3とのX方向の相対変位を防止する第2ガイド部43と、を有している。
本体部41は、略直方体状に形成され、下面41aおよび上面41bが水平面となるように配置され、4つの側面がX方向またはY方向を向くように配置されている。
【0025】
本体部41の下面41aおよび上面41bには、それぞれ滑り材44,45が貼りつけられている。本体部41の下面41aに貼りつけられた滑り材44の下面は、下部摺動面21と当接する下部当接面44aに相当し、本体部41の上面41bに貼りつけられた滑り材44の上面は、上部摺動面31と当接する上部当接面45aに相当している。下部当接面44aおよび上部当接面45aは、いずれも水平面となるように配置されている。
滑り材44,45は、それぞれ下部摺動面21および上部摺動面31との摩擦を低減させる材料で形成されている。
【0026】
第1ガイド部42は、本体部41のY方向の両縁部それぞれから下側に突出する一対の第1突出部421,421と、一対の第1突出部421,421にそれぞれ設けられた滑り材(第1摺動材)422,422と、を有している。
一対の第1突出部421,421は、それぞれX方向に延びて板面がY方向を向く平板状に形成されている。一対の第1突出部421,421の間には、本体部41の下面41aが配置されている。
滑り材422,422は、テフロン(登録商標)などの摩擦を低減させる材料で形成され、一対の第1突出部421,421の互いに対向する面に設けられている。
【0027】
一対の第1突出部421,421のうちのY方向の一方側に配置された第1突出部421におけるY方向の一方側の端面と、本体部41のY方向の一方側を向く側面とは、面一に形成されて、摺動子4の第1側面4aを構成している。
一対の第1突出部421,421のうちのY方向の他方側に配置された第1突出部421におけるY方向の他方側の端面と、本体部41のY方向の他方側を向く側面とは、面一に形成されて、摺動子4の第2側面4bを構成している。
【0028】
第2ガイド部43は、本体部41のX方向の両縁部それぞれから下側に突出する一対の第2突出部431,431と、一対の第2突出部431,431にそれぞれ設けられた滑り材(第2摺動材)432,432と、を有している。
一対の第2突出部431,431は、それぞれY方向に延びて板面がX方向を向く平板状に形成されている。一対の第2突出部431,431の間には、本体部41の上面41bが配置されている。
滑り材432,432は、テフロン(登録商標)などの摩擦を低減させる材料で形成され、一対の第2突出部431,431の互いに対向する面に設けられている。
【0029】
一対の第2突出部431,431のうちのX方向の一方側に配置された第2突出部431におけるX方向の一方側の端面と、本体部41のX方向の一方側を向く側面とは、面一に形成されて、摺動子4の第3側面4cを構成している。
一対の第2突出部431,431のうちのX方向の他方側に配置された第2突出部431におけるX方向の他方側の端面と、本体部41のX方向の他方側を向く側面とは、面一に形成されて、摺動子4の第4側面4dを構成している。
【0030】
摺動子4は、下部当接面44aが下部案内部材2の下部摺動面21と当接し、第1ガイド部42の一対の第1突出部421,421が下部案内部材2の本体部22のY方向の両側に配置されるように下部案内部材2の上側に配置される。このとき、一対の第1突出部421,421それぞれの下端部は、下部案内部材2の固定部23の上面と離間し、一対の第1突出部421,421それぞれに設けられた滑り材422,422が下部案内部材2の本体部22の側面と当接、または隙間をあけて近接している。
これにより、摺動子4は、下部案内部材2に対してY方向に移動しようとすると、一対の第1突出部421,421の少なくとも一方が下部案内部材2とY方向に当接するため、下部案内部材2に対するY方向の移動が拘束される。
【0031】
また、摺動子4は、上部当接面45aが上部案内部材3の上部摺動面31と当接し、第2ガイド部43の一対の第2突出部431,431が上部案内部材3の本体部32のX方向の両側に配置されるように上部案内部材3の下側に配置される。このとき、一対の第2突出部431,431それぞれの上端部は、上部案内部材3の固定部33の下面と離間し、一対の第2突出部431,431それぞれに設けられた滑り材432,432が上部案内部材3の本体部32の側面と当接、または隙間をあけて近接している。
これにより、摺動子4は、上部案内部材3に対してX方向に移動しようとすると、一対の第2突出部431の少なくとも一方が上部案内部材3とX方向に当接するため、上部案内部材3に対するX方向の移動が拘束される。
【0032】
このような摺動子4は、下部案内部材2に対して下部摺動面21に沿ってX方向のみに摺動可能であるとともに、上部案内部材3に対して上部摺動面31に沿ってY方向のみに摺動可能に構成されている。
摺動子4は、平常時には
図2に示すような下部案内部材2のX方向の中央部の上側で、上部案内部材3のY方向の中央部の下側となる原位置に配置されている。
【0033】
変位復元機構5は、摺動子4のX方向の一方側に配置された第1変位復元機構5Aと、摺動子4のX方向の他方側に配置された第2変位復元機構5Bと、摺動子4のY方向の一方側に配置された第3変位復元機構5Cと、摺動子4のY方向の他方側に配置された第4変位復元機構5Dと、を有している。
第1〜第4変位復元機構5A〜5Dはそれぞれ、復元ばねとして設けられた定荷重ばね51と、定荷重ばね51に連結されたワイヤ52と、ワイヤ52を巻取り可能なワイヤ巻取り手段53と、ワイヤ52が巻き掛けられる2つの滑車54,55と、を有している。
【0034】
図3および
図4に示すように、定荷重ばね51は、ゼンマイ状のばね材を2つのドラムに対して逆方向に巻回され、例えば窓際のブラインドなどに使用されている公知の構造のものが採用されている。定荷重ばね51は、ケース56に収容されている。定荷重ばね51には、ワイヤ52を巻取り可能なワイヤ巻取り軸部(不図示)が一方のドラムに同軸に設けられている。定荷重ばね51は、ワイヤ52がワイヤ巻取り軸部から巻き出されることにより、ばね反力が生じてワイヤ52を巻き取るように構成されている。なお、ワイヤ巻取り軸部もケース56に収容されていて、ワイヤ巻取り軸部に巻き取られたワイヤ52もケース56に収容される。
【0035】
定荷重ばね51は、ばね反力が変位量に依存せずに一定となり、地震力(加速度)が大きくても変位量が一定値以上とはならず頭打ちとなるように構成されている。また、定荷重ばね51は、変位が小さくても変位が大きい場合と復元力が変わらないため、変位が小さい場合でも残留変位が生じにくい。
なお、地震後の摺動子4の残留変位を抑制するには、定荷重ばね51により滑り支承(下部摺動面21および上部摺動面31)の摩擦力(μ×W)の0.1〜0.2倍程度の復元力を与えることが好ましい。
【0036】
ワイヤ52は、長さ方向の一方の端部が定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部に連結され、他方の端部がワイヤ巻取り手段53に連結されている。ワイヤ52には、一方の端部側に戻り止めのストッパ521が設けられている。
ワイヤ52は、摺動子4が原位置に配置された状態となると、定荷重ばね51に所定の予張力が生じるように変位を与えた状態となり、ストッパ521がケース56に係止される。
【0037】
ワイヤ巻取り手段53は、ワイヤ52の弛みを防止するために設けられていて、ワイヤ52が弛まない最小限程度の張力をワイヤ52に付与し、ワイヤ52を自動に巻き取り可能に構成されている。ワイヤ巻取り手段53によるワイヤ52の巻取り能力は、定荷重ばね51の復元力によるワイヤ52の巻取り能力にほとんど影響しないように小さく設定されている。
本実施形態では、ワイヤ巻取り手段53は、芯材に巻きつけられたゼンマイばねと、芯材およびゼンマイばねを収容する外筒部と、芯材に接続されてワイヤ52を巻取り可能なプーリと、を有している。
ワイヤ52は、摺動子4が原位置に配置された状態となると、巻き取り手段53から全て引き出され、プーリに巻きついていない状態となる。
【0038】
滑車54,55は、それぞれの軸部541,551が鉛直方向に延びる向きで下部案内部材2の固定部23または上部案内部材3の固定部33に設けられている。下部案内部材2の固定部23に設けられた滑車54,55は、それぞれの軸部541,551が下部案内部材2の固定部23から上方に延びている。下部案内部材2の固定部33に設けられた滑車54,55は、それぞれの軸部541,551が下部案内部材2の固定部33から下方に延びている。
【0039】
第1変位復元機構5Aは、定荷重ばね51が収容されたケース56が摺動子4の第1側面4aにおけるX方向の一方側の縁部近傍に取付けられ、ワイヤ巻取り手段53の外筒部が摺動子4の第2側面4bにおけるX方向の一方側の縁部近傍に取付けられている。第1変位復元機構5Aは、一方の滑車54の軸部が下部案内部材2の固定部23の第1角部23aの近傍に設けられ、他方の滑車55の軸部が下部案内部材2の固定部23の第2角部23bの近傍に設けられている。
ワイヤ52は、定荷重ばね51およびワイヤ巻取り手段53それぞれのX方向の一方側(摺動子4のX方向の一方側)において2つの滑車54,55に巻き掛けられて、平面視形状がX方向の他方側に開口する略U字形状になるように配置されている。
【0040】
第2変位復元機構5Bは、定荷重ばね51が収容されたケース56が摺動子4の第2側面4bにおけるX方向の他方側の縁部近傍に取付けられ、ワイヤ巻取り手段53の外筒部が摺動子4の第1側面4aにおけるX方向の他方側の縁部近傍に取付けられている。第2変位復元機構5Bは、一方の滑車54の軸部が下部案内部材2の固定部23の第3角部23cの近傍に設けられ、他方の滑車55の軸部が下部案内部材2の固定部23の第4角部23dの近傍に設けられている。
ワイヤ52は、定荷重ばね51およびワイヤ巻取り手段53それぞれのX方向の他方側(摺動子4のX方向の他方側)において2つの滑車54,55に巻き掛けられて、平面視形状がX方向の一方側に開口する略U字形状になるように配置されている。
【0041】
第3変位復元機構5Cは、定荷重ばね51が収容されたケース56が摺動子4の第3側面4cにおけるY方向の一方側の縁部近傍に取付けられ、ワイヤ巻取り手段53の外筒部が摺動子4の第4側面4dにおけるY方向の一方側の縁部近傍に取付けられている。第3変位復元機構5Cは、一方の滑車54の軸部が上部案内部材3の固定部33の第1角部33aの近傍に設けられ、他方の滑車55の軸部が上部案内部材3の固定部33の第2角部33bの近傍に設けられている。
ワイヤ52は、定荷重ばね51およびワイヤ巻取り手段53それぞれのY方向の一方側(摺動子4のY方向の一方側)において2つの滑車54,55に巻き掛けられて、平面視形状がY方向の他方側に開口する略U字形状になるように配置されている。
【0042】
第4変位復元機構5Dは、定荷重ばね51が収容されたケース56が摺動子4の第4側面4dにおけるY方向の他方側の縁部近傍に取付けられ、ワイヤ巻取り手段53の外筒部が摺動子4の第3側面4cにおけるY方向の他方側の縁部近傍に取付けられている。第4変位復元機構5Dは、一方の滑車54の軸部が上部案内部材3の固定部33の第3角部33cの近傍に設けられ、他方の滑車55の軸部が上部案内部材3の固定部33の第4角部33dの近傍に設けられている。
ワイヤ52は、定荷重ばね51およびワイヤ巻取り手段53それぞれのY方向の他方側(摺動子4のY方向の他方側)において2つの滑車54,55に巻き掛けられて、平面視形状がY方向の一方側に開口する略U字形状になるように配置されている。
【0043】
摺動子4がX方向において原位置に配置されると、第1変位復元機構5Aおよび第2変位復元機構5Bのワイヤ52は、ストッパ521がケース56に係止された状態となるとともに、ワイヤ巻取り手段53から全て引き出された状態となる。摺動子4がY方向において原位置に配置されると、第3変位復元機構5Cおよび第4変位復元機構5Dのワイヤ52は、ストッパ521がケース56に係止された状態となるとともに、ワイヤ巻取り手段53から全て引き出された状態となる。
【0044】
続いて、免震機構1の挙動について説明する。
図5乃至
図8に示すように、地震が生じて下部構造体11と上部構造体12とが水平方向に相対変位すると、下部案内部材2と上部案内部材3とが水平方向に相対変位して、上部案内部材3および下部案内部材2に対して交差部10が移動する。摺動子4は、常に上部案内部材3と下部案内部材2との交差部10に配置されている。
図1に示すように、原位置では、下部案内部材2のX方向の中央部、上部案内部材3のY方向の中央部および摺動子4が上下方向に重なるように配置されている。
【0045】
図5に示すように、下部構造体11に対して上部構造体12がX方向の一方側に移動すると、上部案内部材3が摺動子4とともに下部案内部材2に対してX方向の一方側に移動する。
これにより、第1変位復元機構5Aは、定荷重ばね51およびワイヤ巻取り手段53が2つの滑車54,55に近接するため、ワイヤ52の張力が小さくなる。これにより、ワイヤ巻取り手段53によってワイヤ52が弛まないように巻き取られる。ワイヤ52は、略U字形状に配置されていることにより、摺動子4の原位置からX方向の一方側への変位量の2倍の長さがワイヤ巻取り手段53によって巻き取られる。
なお、第1変位復元機構5Aのワイヤ52は、弛まないようにワイヤ巻取り手段53に巻き取られるだけであるため、定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部に巻き取られている部分が巻き出されることはなく、ストッパ521がケース56に係止された状態のままとなる。このため、定荷重ばね51には、予荷重のみが作用した状態となり復元力は発生しない。
【0046】
これに対し、第2変位復元機構5Bは、定荷重ばね51およびワイヤ巻取り手段53が2つの滑車54,55から離間するため、ワイヤ52の張力が大きくなる。これにより、ワイヤ52における定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部に巻き取られている部分が巻き出されてケース56から引き出される。ワイヤ52は、略U字形状に配置されていることにより、摺動子4の原位置からX方向の一方側への変位量の2倍の長さが定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部から巻き出される。その結果、第2変位復元機構5Bの定荷重ばね51には、予荷重を超える荷重が作用し、復元力が生じる。
なお、ワイヤ巻取り手段53の巻取り能力は定荷重ばね51の復元力にほとんど影響しないほど小さいため、第2変位復元機構5Bのワイヤ52は、定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部から巻き出されても、ワイヤ巻取り手段53に巻き取られず、ワイヤ巻取り手段53から全て巻き出された状態のままである。
【0047】
そして、定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部からワイヤ52が巻き出されたことによって第2変位復元機構5Bの定荷重ばね51に生じた復元力によって、第2変位復元機構5Bのワイヤ52がストッパ521がケース56に係止されるまでワイヤ巻取り軸部に巻きとられる。すなわち、ワイヤ52のうちの定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部から巻き出された部分が、再びワイヤ巻取り軸部に巻き取られた状態となる。また、第1変位復元機構5Aのワイヤ52のうちのワイヤ巻取り手段53に巻き取られていた部分が全て巻き出された状態となる。
これにより、摺動子4がX方向の原位置に復元される。
【0048】
図6に示すように、下部構造体11に対して上部構造体12がX方向の他方側に移動すると、上部案内部材3が摺動子4とともに下部案内部材2に対してX方向の他方側に移動する。
これにより、第2変位復元機構5Bは、定荷重ばね51およびワイヤ巻取り手段53が2つの滑車54,55に近接するため、ワイヤ52の張力が小さくなる。これにより、ワイヤ巻取り手段53によってワイヤ52が弛まないように巻き取られる。ワイヤ52は、略U字形状に配置されていることにより、摺動子4の原位置からX方向の他方側への変位量の2倍の長さがワイヤ巻取り手段53によって巻き取られる。
なお、第2変位復元機構5Bのワイヤ52は、弛まないようにワイヤ巻取り手段53に巻き取られるだけであるため、定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部に巻き取られている部分が巻き出されることはなく、ストッパ521がケース56に係止された状態のままとなる。このため、定荷重ばね51には、予荷重のみが作用した状態となり復元力は発生しない。
【0049】
これに対し、第1変位復元機構5Aは、定荷重ばね51およびワイヤ巻取り手段53が2つの滑車54,55から離間するため、ワイヤ52の張力が大きくなる。これにより、ワイヤ52における定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部に巻き取られている部分が巻き出されてケース56から引き出される。ワイヤ52は、略U字形状に配置されていることにより、摺動子4の原位置からX方向の他方側への変位量の2倍の長さが定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部から巻き出される。その結果、第1変位復元機構5Aの定荷重ばね51には、予荷重を超える荷重が作用し、復元力が生じる。
なお、ワイヤ巻取り手段53の巻取り能力は定荷重ばね51の復元力にほとんど影響しないほど小さいため、第1変位復元機構5Aのワイヤ52は、定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部から巻き出されても、ワイヤ巻取り手段53に巻き取られず、ワイヤ巻取り手段53から全て巻き出された状態のままである。
【0050】
そして、定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部からワイヤ52が巻き出されたことによって第1変位復元機構5Aの定荷重ばね51に生じた復元力によって、第1変位復元機構5Aのワイヤ52がストッパ521がケース56に係止されるまでワイヤ巻取り軸部に巻きとられる。すなわち、ワイヤ52のうちの定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部から巻き出された部分が、再びワイヤ巻取り軸部に巻き取られた状態となる。また、第2変位復元機構5Bのワイヤ52のうちのワイヤ巻取り手段53に巻き取られていた部分が全て巻き出された状態となる。
これにより、摺動子4がX方向の原位置に復元される。
【0051】
図7に示すように、下部構造体11に対して上部構造体12がY方向の一方側に移動すると、上部案内部材3が摺動子4とともに下部案内部材2に対してY方向の一方側に移動する。
これにより、第3変位復元機構5Cは、定荷重ばね51およびワイヤ巻取り手段53が2つの滑車54,55に近接するため、ワイヤ52の張力が小さくなる。これにより、ワイヤ巻取り手段53によってワイヤ52が弛まないように巻き取られる。ワイヤ52は、略U字形状に配置されていることにより、摺動子4の原位置からY方向の一方側への変位量の2倍の長さがワイヤ巻取り手段53によって巻き取られる。
なお、第3変位復元機構5Cのワイヤ52は、弛まないようにワイヤ巻取り手段53に巻き取られるだけであるため、定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部に巻き取られている部分が巻き出されることはなく、ストッパ521がケース56に係止された状態のままとなる。このため、定荷重ばね51には、予荷重のみが作用した状態となり復元力は発生しない。
【0052】
これに対し、第4変位復元機構5Dは、定荷重ばね51およびワイヤ巻取り手段53が2つの滑車54,55から離間するため、ワイヤ52の張力が大きくなる。これにより、ワイヤ52における定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部に巻き取られている部分が巻き出されてケース56から引き出される。ワイヤ52は、略U字形状に配置されていることにより、摺動子4の原位置からY方向の一方側への変位量の2倍の長さが定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部から巻き出される。その結果、第4変位復元機構5Dの定荷重ばね51には、予荷重を超える荷重が作用し、復元力が生じる。
なお、ワイヤ巻取り手段53の巻取り能力は定荷重ばね51の復元力にほとんど影響しないほど小さいため、第4変位復元機構5Dのワイヤ52は、定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部から巻き出されても、ワイヤ巻取り手段53に巻き取られず、ワイヤ巻取り手段53から全て巻き出された状態のままである。
【0053】
そして、定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部からワイヤ52が巻き出されたことによって第4変位復元機構5Dの定荷重ばね51に生じた復元力によって、第4変位復元機構5Dのワイヤ52がストッパ521がケース56に係止されるまでワイヤ巻取り軸部に巻きとられる。すなわち、ワイヤ52のうちの定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部から巻き出された部分が、再びワイヤ巻取り軸部に巻き取られた状態となる。また、第3変位復元機構5Cのワイヤ52のうちのワイヤ巻取り手段53に巻き取られていた部分が全て巻き出された状態となる。
これにより、摺動子4がY方向の原位置に復元される。
【0054】
図8に示すように、下部構造体11に対して上部構造体12がY方向の他方側に移動すると、上部案内部材3が摺動子4とともに下部案内部材2に対してY方向の他方側に移動する。
これにより、第4変位復元機構5Dは、定荷重ばね51およびワイヤ巻取り手段53が2つの滑車54,55に近接するため、ワイヤ52の張力が小さくなる。これにより、ワイヤ巻取り手段53によってワイヤ52が弛まないように巻き取られる。ワイヤ52は、略U字形状に配置されていることにより、摺動子4の原位置からY方向の他方側への変位量の2倍の長さがワイヤ巻取り手段53によって巻き取られる。
なお、第4変位復元機構5Dのワイヤ52は、弛まないようにワイヤ巻取り手段53に巻き取られるだけであるため、定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部に巻き取られている部分が巻き出されることはなく、ストッパ521がケース56に係止された状態のままとなる。このため、定荷重ばね51には、予荷重のみが作用した状態となり復元力は発生しない。
【0055】
これに対し、第3変位復元機構5Cは、定荷重ばね51およびワイヤ巻取り手段53が2つの滑車54,55から離間するため、ワイヤ52の張力が大きくなる。これにより、ワイヤ52における定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部に巻き取られている部分が巻き出されてケース56から引き出される。ワイヤ52は、略U字形状に配置されていることにより、摺動子4の原位置からY方向の他方側への変位量の2倍の長さが定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部から巻き出される。その結果、第3変位復元機構5Cの定荷重ばね51には、予荷重を超える荷重が作用し、復元力が生じる。
なお、ワイヤ巻取り手段53の巻取り能力は定荷重ばね51の復元力にほとんど影響しないほど小さいため、第3変位復元機構5Cのワイヤ52は、定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部から巻き出されても、ワイヤ巻取り手段53に巻き取られず、ワイヤ巻取り手段53から全て巻き出された状態のままである。
【0056】
そして、定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部からワイヤ52が巻き出されたことによって第3変位復元機構5Cの定荷重ばね51に生じた復元力によって、第3変位復元機構5Cのワイヤ52がストッパ521がケース56に係止されるまでワイヤ巻取り軸部に巻きとられる。すなわち、ワイヤ52のうちの定荷重ばね51に設けられたワイヤ巻取り軸部から巻き出された部分が、再びワイヤ巻取り軸部に巻き取られた状態となる。また、第4変位復元機構5Dのワイヤ52のうちのワイヤ巻取り手段53に巻き取られていた部分が全て巻き出された状態となる。
これにより、摺動子4がY方向の原位置に復元される。
【0057】
次に、上述した本実施形態に係る免震機構1の作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した本実施形態に係る免震機構1では、摺動子4が摺動する下部摺動面21および上部摺動面31は、水平面に形成されている。これにより、下部摺動面21および上部摺動面31がV字形状や逆V字形状に形成されて傾斜が切り替わる屈曲部を有する場合と比べて、本実施形態では屈曲部がないため、摺動子が下部摺動面21や上部摺動面31と離間して回転したり、摺動子4が下部摺動面21や上部摺動面31に引っ掛かったり滑ったりを繰り返すようなスティックスリップ現象が発生したりすることを防止できる。その結果、下部構造体11に対する上部構造体12の加速度が理論値よりも大きくなることを防止できる。
【0058】
また、変位復元機構5は、定荷重ばね51を用いることにより、
図9に示すように、摺動子4と下部案内部材2とのX方向の相対変位量にかかわらず、摺動子4と下部案内部材2とのX方向の相対変位を復元する復元力が一定となるとともに、摺動子4と上部案内部材3とのY方向の相対変位量にかかわらず、摺動子4と上部案内部材3とのY方向の相対変位を復元する復元力が一定となる。このため、下部構造体11と上部構造体12の相対変位量にかかわらず下部構造体11と上部構造体12の相対変位を復元する復元力が一定となり、下部構造体11に対する上部構造体12の残留変位を抑制することができる。
【0059】
また、変位復元機構5は、摺動子4、上部案内部材3および下部案内部材2の近傍に設けられるため、変位復元機構5が摺動子4、上部案内部材3および下部案内部材2と離間して設けられる場合と比べて、免震機構1の設置スペースを小さくすることができる。
【0060】
また、ワイヤ52はU字形状となるように配置されていることにより、下部案内部材2に対して摺動子4が2つの滑車54,55と離間する側に変位すると、定荷重ばね51の軸部から巻き出されるワイヤ52の長さが下部案内部材2に対する摺動子4の変位量の2倍となるとともに、ワイヤ52おける2つの滑車54,55の両側それぞれにおいて定荷重ばね51よる復元力が作用する。
これにより、
図10に示すように、本実施形態では、摺動子4が原位置に対して変位すると、摺動子4が引っ張られた状態の定荷重ばね51(例えば、摺動子4が原位置に対してX方向の一方側に変位した場合では、第2変位復元機構5Bの定荷重ばね51)からワイヤ52を介して受ける引張力が引っ張られた状態の定荷重ばね51の引張軸力の2倍となるため、定荷重ばね51の設置数を少なくしたり、定荷重ばね51の出力を小さくしたりすることができる。
【0061】
また、摺動子4は、第1ガイド部42および第2ガイド部43と、を有していることにより、摺動子4が下部案内部材2とY方向に相対変位して下部案内部材2から外れることを防止できるとともに、上部案内部材3とX方向に相対変位して上部案内部材3から外れることを防止できる。
【0062】
また、第1ガイド部42は、一対の第1突出部421,421と、一対の第1突出部421,421部に設けられた滑り材422,422と、を有し、第2ガイド部43は、一対の第2突出部431,431と、一対の第2ガイド部43に設けられた滑り材432,432と、を有している。これにより、摺動子4が下部案内部材2から外れることなく下部案内部材2とX方向にスムーズに相対変位することができるとともに、上部案内部材3から外れることなく上部案内部材3とY方向にスムーズに相対変位することができる。
【0063】
以上、本発明による免震機構の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、第1〜第4変位復元機構5A〜5Dそれぞれの定荷重ばね51およびワイヤ巻取り手段53が摺動子4に設けられ、2つの滑車54,54が下部案内部材2の固定部23または上部案内部材3の固定部33に設けられて、ワイヤ52が摺動子4側に開口するU字形状となるように配置されている。
これに対し、
図11乃至
図13に示す免震機構1Aのように、第1〜第4変位復元機構5A1〜5D1それぞれの定荷重ばね51およびワイヤ巻取り手段53が下部案内部材2の固定部23または上部案内部材3の固定部33に設けられ、2つの滑車54,55が摺動子4に設けられ、ワイヤ52が摺動子4と離間する側に開口するU字形状となるように配置されていてもよい。
【0064】
また、下部案内部材2の固定部23および上部案内部材3の固定部33に代わって下部構造体11および上部構造体12に、滑車54、または定荷重ばね51およびワイヤ巻取り手段53が設けられていてもよい。
また、上記の実施形態では、第1〜第4変位復元機構5A〜5Dは、ワイヤ52がU字形状となるように2つの滑車54,54に巻き掛けられているが、滑車54の数は適宜設定されてよい。
また、第1〜第4変位復元機構5A〜5Dは、ワイヤ52が直線状に配置されるように、滑車54を設けずに、定荷重ばね51およびワイヤ巻取り手段53のいずれか一方を摺動子4に設け、いずれか他方を下部案内部材2の固定部23または上部案内部材3の固定部33に設けたり、下部構造体11または上部構造体12に設けたりしてもよい。
【0065】
また、上記の実施形態では、摺動子4は、Y方向の両縁部から下方に突出する一対の第1突出部421,421を有していて、一対の第1突出部421,421の間に下部案内部材2の本体部22が配置されるように構成されている。これに対し、摺動子4には一対の第1突出部421,421が設けられておらず、代わりに下部案内部材2の本体部22にY方向の両縁部からそれぞれ上方に突出する一対の突出部が設けられて、これらの一対の突出部の間に摺動子4が配置されるように構成されていてもよい。このような場合も、摺動子4が下部案内部材2に対してY方向に移動することが防止される。
同様に、摺動子4には上側に突出する一対の第2突出部431,431が設けられておらず、代わりに上部案内部材3の本体部32にX方向の両縁部からそれぞれ下方に突出する一対の突出部が設けられて、これらの一対の突出部の間に摺動子4が配置されるように構成されていてもよい。このような場合も、摺動子4が上部案内部材3に対してX方向に移動することが防止される。
【0066】
また、上記の実施形態では、摺動子4の一対の第1突出部421,421および一対の第2突出部431,431にそれぞれ滑り材422,432が設けられて、滑り材422,432が下部案内部材2または上部案内部材3と当接するように構成されている。これに対し、下部案内部材2および上部案内部材3に滑り材が設けられて、この滑り材が摺動子4の一対の第1突出部421,421および一対の第2突出部431,431と当接するように構成されていてもよい。