特許第6820611号(P6820611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マイクロボット メディカル リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6820611
(24)【登録日】2021年1月7日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】二重同心のガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
   A61M25/09
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-505028(P2018-505028)
(86)(22)【出願日】2016年8月18日
(65)【公表番号】特表2018-525088(P2018-525088A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】IL2016050907
(87)【国際公開番号】WO2017033182
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2019年8月14日
(31)【優先権主張番号】62/208,715
(32)【優先日】2015年8月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518226710
【氏名又は名称】マイクロボット メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100140327
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 千秋
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】シェカリム,アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】ペレグ・ノーム
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−502889(JP,A)
【文献】 特表2012−515620(JP,A)
【文献】 特表2010−536430(JP,A)
【文献】 特表2008−543427(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0298922(US,A1)
【文献】 特表2010−531170(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0343457(US,A1)
【文献】 米国特許第05605162(US,A)
【文献】 特表2015−533622(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0021685(US,A1)
【文献】 特表2008−501489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重ガイドワイヤであって:
(a)細長いフレキシブルシャフトを含み、遠位先端で終端となる遠位部を有する第1のガイドワイヤであって、前記第1のガイドワイヤの前記遠位部が、偏向可能な螺旋コイルを含み、前記第1のガイドワイヤが、前記第1のガイドワイヤの長さに沿って延びる中央内腔を有する中空のガイドワイヤである、第1のガイドワイヤと;
(b)細長いフレキシブルシャフトを含み、遠位先端で終端となる遠位部を有する第2のガイドワイヤであって、前記第2のガイドワイヤの前記遠位部が、偏向可能な螺旋コイルを含み、前記第2のガイドワイヤが、前記第1のガイドワイヤの前記中央内腔内に配置されている、第2のガイドワイヤと;
(c)少なくとも前記第2のガイドワイヤの近位部に機械的に結合されたアジャスタ機構であって、前記アジャスタ機構が、
(i)前記第2のガイドワイヤの前記遠位先端が、前記第1のガイドワイヤの前記遠位先端に隣接する、第1の状態と、
(ii)前記第2のガイドワイヤの前記遠位部の少なくとも一部が、前記第1のガイドワイヤの遠位先端を越えて前進させられる、第2の状態と、
(iii)前記第2のガイドワイヤの遠位先端が、前記第1のガイドワイヤの前記遠位部の少なくとも一部に沿う前記中央内腔の一部を空にするように、前記中央内腔に沿って近位へ引き出される第3の状態と
の間で、前記第1のガイドワイヤに対して長軸方向に、前記第2のガイドワイヤを変位させるのに動作可能な、アジャスタ機構とを含み、
前記第1のガイドワイヤおよび第2のガイドワイヤの各々の前記遠位先端に隣接する前記遠位部の領域は、当該領域が側方に偏向されるように、非弾性的に変形可能なように構成されるか、事前に形成され、前記第1のガイドワイヤの前記遠位先端に隣接する前記遠位部の前記領域は、第1の長さを有し、
前記第1のガイドワイヤおよび第2のガイドワイヤの各々の前記遠位先端に隣接する前記遠位部の領域が偏向された場合、前記中央内腔に沿った前記第2のガイドワイヤを、前記第1の状態から前記第3の状態へ、前記第1のガイドワイヤおよび第2のガイドワイヤの偏向された領域が互いに長手方向に変位するように近位へ引き出すことは、側方へ偏向される前記二重ガイドワイヤの遠位部を第2の長さとし、前記第2の長さは、前記第1の長さよりも長い、二重ガイドワイヤ。
【請求項2】
前記第1のガイドワイヤの前記遠位部の外部表面が、親水性被膜により被覆され、前記第2のガイドワイヤの前記遠位部の外部表面が、前記親水性被膜により被覆されない、請求項1に記載の二重ガイドワイヤ。
【請求項3】
前記第1のガイドワイヤがさらに、前記第1のガイドワイヤの前記遠位部の前記螺旋コイルの内部表面に沿って延び、かつ前記第1のガイドワイヤの前記遠位部の前記螺旋コイルに沿う複数の離間した位置で前記第1のガイドワイヤの前記遠位部の前記螺旋コイルに恒久的に取り付けられた金属片を含む、請求項1または2に記載の二重ガイドワイヤ。
【請求項4】
前記第2のガイドワイヤがさらに、前記第2のガイドワイヤの前記遠位部の前記螺旋コイル内で延び、かつ前記第2のガイドワイヤの前記遠位先端において前記第2のガイドワイヤの前記遠位部の前記螺旋コイルに恒久的に取り付けられたテーパ状の金属コアを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二重ガイドワイヤ。
【請求項5】
前記第1のガイドワイヤの外径が、「014に互換的な」オーバーザワイヤ機器と共に使用するための大きさにされる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の二重ガイドワイヤ。
【請求項6】
前記第1のガイドワイヤの外径が、「038に互換的な」オーバーザワイヤ機器と共に使用するための大きさにされる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の二重ガイドワイヤ。
【請求項7】
前記二重ガイドワイヤの近位端に配置されたハンドルをさらに備え、
前記アジャスタ機構は、前記ハンドルに統合されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の二重ガイドワイヤ。
【請求項8】
前記第1のガイドワイヤの近位部は前記ハンドルに関係し、前記ハンドルは、前記第1のガイドワイヤを長手方向軸周りに回転させるために用いられるよう構成されている、請求項1に記載の二重ガイドワイヤ。
【請求項9】
前記ハンドルはスロットを有する安全リングを備え、
前記アジャスタ機構は、放射状に突出した部分を備え、
前記安全リングは、前記アジャスタ機構が前記第2のガイドワイヤを前記第1の状態から前記第2の状態へ変位させることを防止するために、前記アジャスタ機構が前記安全リングによって止められたロック位置と、前記アジャスタ機構が前記第2のガイドワイヤを前記第1の状態と前記第2の状態との間で変位させるように、前記スロットが前記放射状に突出した部分と位置合わせされるロック解除位置との間で回転するように構成されている、請求項7または8に記載の二重ガイドワイヤ。
【請求項10】
前記ハンドルが、前記ハンドルを前記二重ガイドワイヤから取り除くことを可能とするために、少なくとも前記第1のガイドワイヤの近位部を切断するカッターを含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の二重ガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介入性の心臓手術、放射線手術、および血管手術のための医療機器に関する。より詳細には、本発明は、そのような外科手術で使用するためのガイドワイヤに関する。
【0002】
米国特許第5,968,064号(Selmon at el, 1997)を参照すると、狭窄は、動脈の内部通路の狭小化または閉塞である。この疾患(閉塞症としての公知の一般的に)は、アテローム動脈硬化症(動脈の線維組織、脂肪組織、または石灰化組織の蓄積)に苦しむ患者において発見される。閉塞は、高血圧症(高血圧)、血流不全(循環の不足)、アンギナ(胸痛)、心筋梗塞(心臓発作)、脳卒中または死亡において発症する可能性がある。閉塞は、部分的、または完全であってもよく、柔らかく柔軟であるか、固く石灰化されてもよく、大動脈、冠状動脈および頸動脈、ならびに末梢血管を含む動脈系における種々様々な部位で発見されてもよい。ひどい、または完全な動脈閉塞(「慢性完全閉塞」またはCTO)に苦しむ患者において、バイパスを行うよりむしろ、ひどくまたは完全に閉塞された動脈自体を開くことが望ましい。アテロームを介して、またはそのアテロームの周囲でガイドワイヤおよび動作するカテーテルを通ることができる場合、ひどい、または完全な閉塞は、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)、方向性冠動脈粥腫切除術(DCA)、ステント術、部位特異的な薬物送達、またはこれらの実績のある治療法の組み合わせによって処置されうる。これらの外科手術を行うために、誘導システムが、冠状動脈のカテーテル処置と合わせて使用される。これらの誘導システムの1つは、2方向透視であって、インターベンション医師(interventionist)は、異なる角度から得られる2つの平らなリアルタイムのX線像を観察する。画像処理技術を使用するとき、患者は比較的大量のX線照射にさらされる。X線への集中的な曝露は、癌のリスクを増加させる。加えて、血管の画像を達成するために、外科手術の間に、1回量のX線造影剤が、ガイドカテーテルを介して患者の血管へと注入される。その造影剤は、親水性/親油性およびタンパク質結合能力などのその生理化学的な特性に応じて、ある程度の毒性を有する。これらのリスクのために、医療的介入の時間を最小限にすることが重要である。粥腫切除術を介するCTOクロッシング(CTO crossing)を意図した機器が、近年開発された。例えば、Crosser(商標)、Frontrunner(商標)、およびTrue−Path(商標)である。Crosser(商標)(Bard Peripheral Vascular, Inc.)は、高周波の機械的振動を活用しCTOを通過する、3.9Fのカテーテルである。Frontrunner(商標)(Cordis Corporation)は、3.1Fのカテーテルであり、鈍いマイクロダイセクション(blunt microdissection)によって、閉塞を通るチャネルを作り出す遠位先端を作動させる。0.018インチ(1.4F)のシャフトプロファイルを有するTruePath(商標)(Boston Scientific Corporation)は、0.017インチのダイヤモンド被覆された回転する切除端を有する内部のドライブシャフトの動力回転によって、CTOを通るマイクロダイセクションを作り出す。粥腫切除術によるクロッシングは、CTOの近位キャップ(proximal cap)の石灰化像を通るダイセクションを作るのに十分な硬さの切削端を有する機器を必要とする。安全上の理由から、血管壁を傷つけ穿孔するリスクを減少させるために、病変内の機器の正確な位置決めが必要とされる。それらの硬い先端は、それらの機器が操縦され病変内を誘導するために容易に操作されるのを妨げる。Crosser(商標)およびFrontrunner(商標)は、そのツールを位置決めするガイドワイヤ上を前進させられる。そのツールを前進させるためには、病変を通るガイドワイヤを操作することが必要であり、そのことが、クロッシング手術を厄介なものとする。TruePath(商標)の先端は、比較的直線で大きな末梢血管内で操縦されるには十分に柔軟であるが、一方で、冠血管の蛇行した幾可学的形状において使用するには硬すぎる。
【0003】
CTOは、しばしば双方向性の血栓形成で破綻したプラークとして始まる。経時的に、血栓および脂質は、最初はコラーゲンに置き換えられ、その後カルシウムにも置き換えられる。線維組織は、病変の近位端および遠位端において特に高密度であり、組織化された血栓および脂質のより柔らかいコアを取り囲む線維皮膜を作り出す。CTOの組織学的検査は、大部分が100umから500umまでのサイズに変化しうる腔内のマイクロチャネルを有することを明らかにしてきた。Strauss et al.は、これらの内部閉塞の微小血管が、CTOのガイドワイヤクロッシングのための経路を提供する可能性があることを提案してきた。(CTO Recanalization by intraocclusion Injection of Contrast.: The MicroChannel Technique, Carlino et al, Catheterization and Cardiovascular Interventions, Volume 71, Issue 1, pages 20−26, 1 January 2008)。マイクロチャネルを介するCTOの通過は、非外傷性の先端を備える単なるガイドワイヤしか伴わないので、アトラクトミー(atractomy)よりも安全である。
【0004】
マイクロチャネルを処理するために、ガイドワイヤは、従来の0.014”の先端、好ましくは0.009”未満の先端、よりも小さな直径の薄くて柔軟な先端を有するべきである。その先端は、大きな湾曲が、方向制御中に血管壁を傷つける可能性があるため、小さな曲線(末端から1−2mmの約30度の曲がり、)であるべきである。しかし、以下に説明されるように、血管系内を誘導するために、曲線のサイズ(半径)は、血管内腔径よりも少し大きくなければならない。
【0005】
ガイドワイヤの遠位先端は、事前に形成され曲線を形作られるか、医師が先端を形成し曲線を形作るように形成可能である。その湾曲した形状により、柔軟な先端は血管壁に優しく押し付けられる。ガイドワイヤを軸方向に回転させる、および移動させることによって、柔軟な先端は血管壁に沿って前進させられる。その先端は、一旦血管系内の分岐の小孔(開口部)に到達すると、その分岐へと入る。この状態において、ガイドワイヤを押すことで、先端はさらに分岐に沿って前進するだろう。
【0006】
したがって、比較的大きな湾曲を備える0.014”の柔軟なガイドワイヤは、病変まで誘導し、病変を最初に処理するために使用される。しかしながら、このタイプの曲線は、CTO病変が通常、重度に石灰化した近位部(近位キャップとして示した)から成るので、CTO病変を処理するには適切ではなく、この柔軟なガイドワイヤは通過することができなかった。
【0007】
病変を通過させるために、医師は典型的には、より硬くより小さな曲線の先端を備えるCTOガイドワイヤに切り替え、このワイヤを操作することにより通過させようとしてもよい。このワイヤが病変を通過しない場合、医師はこのワイヤを、いっそう硬い先端を備えるワイヤに切り替えてもよい。医師は、ワイヤを繰り返し切り替え、よりいっそう硬いガイドワイヤを用いて通過させることを試みる。この方法は、時間、X線照射線量、および造影剤消費量の点では不経済である。
【0008】
ワイヤを切り替えるとき、医師は典型的には血管内の位置も分からなくなってしまう。このことは、病変を通過させることに成功する可能性を減少させる。
【0009】
硬いガイドワイヤは通常、0.009または0.008インチまで細くなる直径を備えるテーパ状の先端を含む。テーパ状の先端は、近位キャップの形態の一部であるマイクロチャネル内で、その先端が操作可能となるように意図される。しかしながら、テーパ状の末端および硬い先端の組み合わせは、これらのワイヤの使用による穿通のリスクを増加させるため、医師は通常硬いワイヤの使用を、CTCの隣または内部の位置に制限する。一旦病変を通過すれば、さらなる切り換えは再び時間の消費となるが、医師は柔軟なガイドワイヤに切り替えることを好むだろう。
【0010】
硬さを増加させ、ガイドワイヤの先端にサポートを提供するために、医師はマイクロカテーテルを使用してもよい。ワイヤの先端の近くにマイクロカテーテルの先端を近付けることによって、医師は徐々にワイヤの硬さを増加させる。しかしながら、ガイドワイヤとマイクロカテーテルとの間の位置が正確にセットされる必要があるので、この方法によって正確に硬さを調節するのは難しい。したがって、ガイドワイヤは容易に、医師が意図したよりもはるかに硬くなる可能性があった。このことが、血管を穿孔するリスクを高める可能性があった。
【0011】
血管が完全に閉塞した場合、造影剤は閉塞された区域を越えて流れることができない。その結果、血管の後続する区域はX線像では目視可能ではなく、医師は、知識と経験に基づいて、硬いガイドワイヤの、閉塞を通る経路を導かなければならない。偶然の穿通によって血液が動脈から流出し囲心腔内に溜まる場合、血液が心臓を圧迫するため、心不全と死亡を避けるために緊急介入を必要とする。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、二重ガイドワイヤである。
【0013】
本発明の教示に従って、二重ガイドワイヤであって、その二重ガイドワイヤが、(a)遠位先端で終端となる遠位部を有する細長いフレキシブルシャフトを含む第1のガイドワイヤであって、その遠位部が、偏向可能な螺旋コイルを含み、その第1のガイドワイヤが、第1のガイドワイヤの長さに沿って延びる中央内腔を有する中空のガイドワイヤである、第1のガイドワイヤと;(b)遠位先端で終端となる遠位部を有する細長いフレキシブルシャフトを含む第2のガイドワイヤであって、その遠位部が、偏向可能な螺旋コイルを含み、その第2のガイドワイヤが、第1のガイドワイヤの中央内腔内に配置されている、第2のガイドワイヤと;(c)第1および第2のガイドワイヤの近位部に機械的に結合されたアジャスタ機構であって、そのアジャスタ機構が:(i)第2のガイドワイヤの遠位先端が、第1のガイドワイヤの遠位先端に隣接する、第1の状態、と(ii)第2のガイドワイヤの遠位部の少なくとも一部が、第1のガイドワイヤの遠位先端を越えて前進させられる、第2の状態、との間の第1のガイドワイヤに対して長軸方向に、第2のガイドワイヤを変位させるように動作可能である、アジャスタ機構、を含むことを特徴とする、二重ガイドワイヤが提供される。
【0014】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、アジャスタ機構はさらに、第2のガイドワイヤの遠位先端が、第1のガイドワイヤの遠位部の少なくとも一部に沿う中央内腔の一部を空にするように、中央内腔に沿って近位へ引き出される第3の状態に対する第1のガイドワイヤに対して長軸方向に、第2のガイドワイヤを変位させるように動作可能である。
【0015】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、第1および第2のガイドワイヤの各々の遠位先端に隣接する遠位部の領域は、非弾性的に変形可能なように構成されるか、遠位部に側方の偏向を付与するように事前に形成され、そして第1および第2のガイドワイヤの各々の遠位先端に隣接する遠位部の第1の長さが偏向させられるとき、第1の状態から第3の状態への第2のガイドワイヤの部分的な引き出しは、二重ガイドワイヤの第2の長さを偏向させ、第2の長さは、第1の長さより長い。
【0016】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、第1のガイドワイヤの遠位部の外部表面は、親水性被膜により被覆され、第2のガイドワイヤの遠位部の外部表面は、親水性被膜により被覆されない。
【0017】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、第1のガイドワイヤはさらに、螺旋コイルの内部表面に沿って延び、螺旋コイルに沿う複数の離間した位置で、螺旋コイルに恒久的に取り付けられた金属片を含む。
【0018】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、第2のガイドワイヤはさらに、螺旋コイル内で延び、遠位先端において螺旋コイルに恒久的に取り付けられたテーパ状の金属コアを含む。
【0019】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、第1のガイドワイヤの外径は、「014に互換的な」オーバーザワイヤ機器と共に使用するための大きさにされる。
【0020】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、第1のガイドワイヤの外径は、「038に互換的な」オーバーザワイヤ機器と共に使用するための大きさにされる。
【0021】
本発明の実施形態の教示に従って、患者に外科手術を行う方法であって、その方法が:(a)側方の偏向を有する第1および第2のガイドワイヤの各々の遠位先端に隣接する遠位部の領域を備える、請求項1に従う二重ガイドワイヤを提供するステップであって、第1のガイドワイヤの偏向した部分が、第1の長さを有するステップと;(b)側枝血管の位置に到達させるために、患者の血管系へと二重ガイドワイヤを導入し、血管系内で二重ガイドワイヤを誘導するステップと;(c)側枝血管への二重ガイドワイヤの誘導を促進するために、互いに対して長軸方向に変位された第1および第2のガイドワイヤの偏向した部分を位置付けるように、第1のガイドワイヤに対して第2のガイドワイヤを選択的に変位させるステップであって、そのステップによって、二重ガイドワイヤに第2の長さに対して延びる側方の偏向を付与し、その第2の長さが第1の長さよりも長い、ステップと、を含む方法も提供される。
【0022】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、第2のガイドワイヤは、第2のガイドワイヤの遠位部が第1のガイドワイヤの遠位先端を越えて延びるように、第1のガイドワイヤに対して選択的に変位される。
【0023】
本発明の実施形態のさらなる特徴に従って、血管形成バルーン、および拡張可能ステントから成る群から選択される「014に互換的な」オーバーザワイヤ機器は、二重ガイドワイヤに沿って前進させられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、添付の図面を参照して、ほんの一例として本明細書に記載されている。
図1】制御される先端を有する二重ガイドワイヤの近位端に位置する手動制御ハンドルの概略図を含む、本発明の好ましい実施形態を例示する。
図2A図1の二重ガイドワイヤの先端を含む遠位部の概略的な横断面図である。
図2B図1の二重ガイドワイヤの先端を含む遠位部の概略的な縦断面図である。
図3】安全リボンがガイドワイヤの近位端に接続された図2のハンドルの概略的な断面の詳細図である。
図4図1のハンドルに関する例の一連の図である。
図5図4のハンドルの1対の概略的な軸の断面図である。
図6】第2の内側のガイドワイヤの先端が、図1のハンドルを操作することによりガイドワイヤの先端から突出している、図1のガイドワイヤの概略的な断面図である。
図7】第2のガイドワイヤの先端の突出の範囲(extant)がハンドルを操作して調節される、図1のガイドワイヤの概略的な断面図である。
図8】第2のガイドワイヤが、ガイドワイヤの先端から突出している間に曲がるように事前に形成された先端を有する、本発明の好ましい実施形態を例示する。
図9】ガイドワイヤの近位部内の第2のガイドワイヤの先端の位置が、先端の硬さおよび湾曲を制御するためにハンドルを操作して調節される、図1のガイドワイヤの概略的な断面図である。
図10】ガイドワイヤの近位部内の第2のガイドワイヤの先端の位置が、先端の硬さおよび湾曲を制御するためにハンドルを操作して調節される、図1のガイドワイヤの別の概略的な断面図である。
図11】ガイドワイヤの近位部内の第2のガイドワイヤの先端の位置が、先端の硬さおよび湾曲を制御するためにハンドルを操作することによって調節される、図1のガイドワイヤのさらなる別の概略的な断面図である。
図12図1のガイドワイヤのハンドルの概略的な等角図である。
図12A】ロック位置の安全リングを例示する、図12の領域の拡大図である。
図12B】ロック解除位置を例示する、図12の領域の拡大図である。
図12C】スライダ制御をさらに進めた後のロック解除位置を例示する、図12の領域の拡大図である。
図13】偏向の第1の状態の図1のガイドワイヤの、概略的で部分的に切断した側面図である。
図14】ガイドワイヤの遠位部が軸平面に沿って切断された、図13と同様な図である。
図15】偏向の第2の状態のガイドワイヤを示す、図14と同様な図である。
図16】偏向の第3の状態のガイドワイヤを示す、図14と同様な図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、二重同心のガイドワイヤである。
【0026】
本発明に係るガイドワイヤの原理および操作は、図と添付の記載を参照することで一層よく理解されうる。
【0027】
前置きとして、本発明の特定の好ましい実施形態は、ガイドワイヤの必要な一連の特徴をそれぞれ提供する2つのガイドワイヤが同心的に配置される、すなわち一方が他方内に配置される二重ガイドワイヤを提供することによって区別されることが、留意されるべきである。したがって、それぞれが、遠位先端で終端となる遠位部を有する細長いフレキシブルシャフトとして形作られ、その遠位部は偏向可能な螺旋コイルを含む。螺旋コイルは、ガイドワイヤの遠位部の重要な特徴であり、コイルのコイルが互いに対して閉じているときに、相当な軸力の適用を同じ時間に可能にしている一方で、蛇行経路を即座に通り抜けることができる、容易に偏向可能な構造の組み合わせを提供する。第1のガイドワイヤは、その長さに沿って延びる中央内腔を有する中空のガイドワイヤとして実装されるが、第2のガイドワイヤは、第1のガイドワイヤの中央内腔内に配置される、より小さなゲージのガイドワイヤとして構成される。
【0028】
二重ガイドワイヤのハンドルと統合された手動で制御されるスライダとして典型的に実装されるアジャスタ機構は、第2の内側のガイドワイヤが、第1の外側のガイドワイヤに対して前進、および引き戻されることを可能にし、それによって、ガイドワイヤの先端の特性の様々な変形をユーザーに提供し、そうでなければ、それらの特性の変形は、典型的には、上記されたような交換などの全ての不利益を有するガイドワイヤを取り換えること(身体から第1のガイドワイヤを取り除き、代替的なガイドワイヤを挿入すること)でしか、達成することができない。具体的には、アジャスタ機構を操作することによって、ユーザーは、好ましくは、以下の状態の2つ以上の間で意のままにガイドワイヤを変形させることができる:
・第2のガイドワイヤの遠位先端が第1のガイドワイヤの遠位先端に隣接する、第1の状態(図9)。この状態において、両方のガイドワイヤがガイドワイヤの硬さに寄付し、比較的硬いガイドワイヤを提供し、そしてガイドワイヤの効果的な先端直径は、大きい方の外側のガイドワイヤの直径である。
・第2の(内側の)ガイドワイヤの遠位部の少なくとも一部が、第1のガイドワイヤの遠位先端を越えて前進させられる、第2の状態(図6−8)。この状態において、全体的なガイドワイヤの遠位部の特性は、内側のガイドワイヤの特性によってのみ規定され、ガイドワイヤの比較的より微細なゲージ、およびより柔軟な先頭部分を提供する。
・第2の(内側の)ガイドワイヤの遠位先端が、第1のガイドワイヤの遠位部の少なくとも一部に沿う中央内腔の一部を空にするように、中央内腔に沿って近位へ引き出される第3の状態(図1、2、10、11、および13−16)。外側のガイドワイヤの遠位部からの内側のガイドワイヤの引き出しは、図14−16に関してさらに以下に記述されるように、偏向を受ける遠位先端の長さを延長するために使用されてもよい。加えて、または代替的に、それは第1のガイドワイヤの遠位部の可撓性を高めるために使用されてもよい。
【0029】
上記の第1および第2の状態間で切り替わる能力は、第1および第2のガイドワイヤによって提供される可能性のある他の特性間で、ユーザーが思い通りに交換することを可能にする。例えば、1つの特に好ましい非制限的な例に従って、第1の(外側の)ガイドワイヤの遠位部の外部表面は、親水性被膜により被覆される一方、第2の(外側の)ガイドワイヤの遠位部の外部表面は、親水性被膜により被覆されず、被覆されないか、または疎水性被膜などのある他の被膜を有するかのどちらかである。このことが、ガイドワイヤの遠位端の特性が外側のガイドワイヤによって規定されている、第1の状態におけるガイドワイヤの滑らかな挿入を容易にし、そして親水性被膜が、被覆されていないガイドワイヤと比較して、大幅に減少された摩擦を確かなものにする。ユーザーが目標位置に近づいているか、そうでなければ強められた触覚フィードバックを必要とするとき、親水性被膜を持たない外側表面が先頭の露出したガイドワイヤ表面となるように、第2の比較的より高い摩擦のガイドワイヤが前進させられ、それによって、所望の強められた触覚フィードバックを提供する。
【0030】
第1の(外側の)ガイドワイヤの構造の完全性を維持するため、および安全機能として、第1のガイドワイヤは好ましくは、螺旋コイルの内部表面に沿って延び、螺旋コイルに沿う複数の離間した位置で、螺旋コイルに恒久的に取り付けられた(例えば、溶接された)金属片(形成リボン(shaping ribbon))を含む。
【0031】
内側の(第2の)ガイドワイヤは、好ましくは、螺旋ばね(helical spring)内に延びるテーパ状の金属コアを用いて形作られ、そして、遠位先端の螺旋コイルに恒久的に取り付けられている(例えば、溶接されている)。金属コアのテーパリングは、遠位端が最も柔軟な部分である第2のガイドワイヤに、徐々に変わる硬さを本質的にもたらし、先端からの距離が大きくなるとともに、徐々により硬くなる。
【0032】
本発明の二重ガイドワイヤは、幅広い用途における利益に使用されてもよい。応用の1つの特に好ましいセットとしては、二重ガイドワイヤは、冠動脈内で行われる手術で使用される。そのような応用に関しては、第1の(外側)ガイドワイヤの外径は、「014に互換的な」オーバーザワイヤ機器を用いて、すなわち、約0.014インチ(0.36mm)までの外径で、使用するための大きさにされる。
【0033】
末梢血管系における他の応用において、本発明の実施では、「038に互換的な」オーバーザワイヤ機器を用いて、すなわち、約0,038インチ(0.97mm)までの外径で使用するための大きさにされた、第1の(外側)ガイドワイヤの外径が利用される。
【0034】
図1に例示されるような本発明の好ましい実施形態は、血管に介入する手術の間にカテーテルの配置を容易にするように意図されたガイドワイヤ(100)を含む。バルーン拡張カテーテル(図で示されない)などの典型的なカテーテルは操縦可能ではないか機動性がなく、および、したがって、それ自身で所望の位置に到達することができず、拡張バルーンを血管系内の所望の位置に配達するために、カテーテルの少なくとも一部が、ガイドワイヤ(100)上に導入される。
【0035】
ガイドワイヤ(100)は中空で、遠位先端(111)で終わる遠位部(110)、およびハンドル(200)に関係する近位部(120)を有する。
【0036】
図2に例示されるように、遠位部(110)は、好ましくは、互いに連結された以下の2つのコイルを含む:プラチナ/タングステン合金など(限定されないが)の放射線不透過性の材料で作られた遠位のコイル(112)、およびスプリングテンパーステンレス鋼(spring temper stainless steel)(113)など(限定されないが)の高弾性の材料で作られた近位のコイル。遠位部の遠位先端(111)は、放射線不透過性のコイル(112)内に位置付けられる。近位部(120)は、スプリングテンパーステンレス鋼または超弾性のニチノールなど(限定されないが)の高弾性の材料で作られたハイポチューブである。近位部(120)の遠位端(121)および遠位部(110)の近位端はともに、溶接、はんだ付け、接着、または他のいかなる適切な方法によって、恒久的に連結される。好ましい実施形態において、ガイドワイヤのトルク能力を向上させるために、近位部(120)の遠位端、および遠位部(110)の一部は、PETまたはPTFEなど(限定されないが)の材料で作られた、高分子熱収縮スリーブ(130)を用いて覆われている。
【0037】
図2によれば、形成リボン(140)は遠位部(110)内に位置付けられ、リボンの遠位端は、遠位先端(111)の末端(115)と、その遠位部に沿う他の点(116)に取り付けられる。リボンは、遠位部のコイルが伸張するのを妨げ、したがって、そのことによりガイドワイヤ(100)のトルク能力が高まる。最も好ましくは、形成リボン(140)は、外側のガイドワイヤの全長に沿って延びる金属片の一部として実装され、ガイドワイヤに沿う離間した位置に取り付けられ、また、機械的破損の場合でさえ、ガイドワイヤのいかなる部分もガイドワイヤの残りから分離するのを妨げるための安全リボンとしても貢献する。形成リボン(140)は、スプリングテンパーステンレス鋼、コバルト合金(L605など)、および超弾性ニチノールなど(限定されないが)の高弾性の材料で作られる。
【0038】
ガイドワイヤに沿う離間した位置における金属片の取り付けは、テフロン(登録商標)(PTFE)などの非付着性被膜から形作られる、または被覆されるインナーロッドの一時的な挿入によって、外側のガイドワイヤの内側表面に対して一時的にその金属片を押し付けることにより達成されてもよく、それによって、外側のガイドワイヤの内部表面に対してその金属片を外側に押し付け、そして、その後、溶接などの適切な接合技術を利用して、外側のガイドワイヤと金属片との間の永久接続を形作る。その後、一時的なインナーロッドは取り除かれ、内側のガイドワイヤが導入される。
【0039】
近位部(120)は、ハンドル(200)と関係している。その近位端は、トルカーとしてハンドルを使用することにより、その長手軸のまわりで近位端が回転されうるように、ハンドル(200)によって保持される。図3および図4において示される好ましい実施形態に従って、ハンドルは、ガイドワイヤ上のカテーテルの配置を容易にするために、近位部(120)をカットし、ハンドル(200)を取り除くカッター(220)を含む。
【0040】
図1に戻って、遠位先端(111)は、事前に形成され曲線を形作られるか、医師が遠位先端(111)を形成し曲線を形作るように形成可能である。医師は、湾曲した先端(111)によって血管系中のガイドワイヤ(100)を操縦することができる。安全で効果的に先端(111)を操縦するために、遠位部(110)は一方では、偏向に対して柔軟で柔らかく、および他方では、先端が1対1の比率のトルクを伝達するように、回転に対して硬くなければならない。その湾曲した形状により、柔軟な先端(111)は、血管壁(図示されない)に対して優しく押し付けられる。
【0041】
ガイドワイヤ(100)を回転させることによって、およびそれを軸方向に移動させることによって、柔軟な先端(111)は、血管壁に沿って移動する。その先端が、一旦血管系内の分岐の小孔(開口部)に到達すると、その分岐へと入る。この状態において、ガイドワイヤ(100)を押すことで、先端(111)はさらに分岐に沿って前進するだろう。この方法を使用すると、医師は、血管系中のほぼいかなる所望の位置へ、遠位先端(111)を導くことができる。
【0042】
中空のガイドワイヤ(100)は、近位部(120)の近位端(122)から、遠位部(110)の先端(111)の遠位端(115)まで、その全長に沿って延びる内腔(150)を規定する。図2および図3において示された好ましい実施形態において、安全性を高めるために、形成リボン(140)は、ガイドワイヤ(100)の全長に沿って延び、近位部(120)の近位端(122)に対して取り付けられ、そして、好ましくは、ガイドワイヤの長さに沿って離間した他の位置においても、いずれか部分、またはガイドワイヤ(100)の構成要素の間の連結が、何らかの理由で失敗した場合に、リボン(140)がなお容器全体を一緒に保持するように、医師が安全にガイドワイヤ(100)を引き出すことを可能にする。したがって単一の金属片は、好ましくは「形成リボン」、および「安全リボン」の両方として機能する。
【0043】
図2に例示されるように、第2の内側のガイドワイヤ(300)は、ハンドル(200)から遠位部(120)まで、内腔(150)を通って延びる。第2のガイドワイヤ(300)は、内腔(150)内に摺動可能に収容される。第2のガイドワイヤ(300)は、遠位先端(311)で終わる遠位部(310)、およびハンドル(200)に関係する近位部(320)を有する。
【0044】
図2に例示されたように、内側のガイドワイヤ(300)の遠位部(310)は、内側の遠位のコイル(314)内に配置されたテーパ状の末端(313)を有する心線(312)から成る。内側のコイル(314)の遠位端は、心線(311)の遠位端へ取り付けられる。内側のコイル(313)の近位端(315)もまた、心線(311)のテーパ部(312)へ取り付けられる。第2の内側のガイドワイヤ(300)の構成要素は、スプリングテンパードステンレス鋼(spring tempered stainless steel)、コバルト合金(L605などの)、および超弾性ニチノールなど(限定されないが)の高弾性の材料で作られている。内側のコイル(314)は、好ましくは、プラチナ/タングステン合金など(限定されないが)の放射線不透過性の材料で作られている。好ましい実施形態において、心線(312)は、摩擦を減少させるために、PTFEまたは他の適切な被膜を用いて被覆される。
【0045】
第2のガイドワイヤ(300)の近位部(320)は、スライダ部材(210)によってサイドハンドル(200)に関連づけられる。近位端(321)は、溶接、はんだ付け、接着、または他のいかなる適切な方法を使用することにより、スライダへ取り付けられる。ハンドル(200)に沿ってスライダ部材(210)を滑らせることによって、医師は、ガイドワイヤ(100)の内腔(350)内で、第2の内側のガイドワイヤ(300)を変位させることができる。
【0046】
第2のガイドワイヤの遠位先端(311)は、ハンドル(200)を操作することにより、ガイドワイヤの遠位先端(111)から突出するように構成される。図6に例示されるように、第2のガイドワイヤ(300)の遠位先端(311)は、ハンドル(230)の遠位端の方へスライダを移動させることにより、外側のガイドワイヤの遠位先端を越えて外に突出するように作られうる。
【0047】
第2の内側のガイドワイヤは、ガイドワイヤ(100)の外径に応じて、0.005”から0.024”まで変化しうる小さな直径のワイヤである。好ましい実施形態において、第2のガイドワイヤ(300)の少なくとも遠位部の直径は、0.014”未満であり、特定の特に好ましい実施においては、0.007”±0.002”である。このことが、医師がCTO病変の近位キャップの薄いマイクロチャネルを通過させるために、そのマイクロチャネルを処理することを可能とするのに、内側のガイドワイヤを特に適切にする。
【0048】
図7に例示されるように、第2のガイドワイヤの先端(311)の突出する範囲(340)は、スライダ(210)とハンドル(230)の遠位端との間の距離(240)によって制御される。スライダ(210)を移動させることによって、医師は、正確に病変内で先端を位置決めすることができ、加えて、医師は、その硬さを制御することができる。突出する範囲(340)が増加するにつれて、先端(311)は柔軟になる。さらに加えて、医師は、繰り返し前後にスライダ(210)を移動させることによって、タッピング(tapping)を生成することができる。
【0049】
図8において示された本発明の別の好ましい実施形態において、第2のガイドワイヤ(300)は、外側のガイドワイヤの先端(111)を越えて突出するときに曲がるように、事前に形成された先端(311)を有する。
【0050】
本明細書において記載されたガイドワイヤの実施形態は、好ましくは、従来のガイドワイヤと同じサイズである。従って、ガイドワイヤ(100)の直径は、0.038”であるか、0.038”、0.024”、0.018”、および0.014”の従来のサイズ未満である。
【0051】
経皮経管冠動脈形成術(PTCA)および経皮的血管形成術(PTA)のためのバルーン拡張カテーテルは、「014に互換的」として本明細書において引用された0.014”ガイドワイヤ上に、通常導入されるように意図される。したがって、本発明のガイドワイヤ(100)が、それらの手術の間にバルーン拡張カテーテルの配置を容易にするように意図される場合、ガイドワイヤが0.014”である、またはそれ未満であるということが役に立つ。
【0052】
頑丈なガイドワイヤ(workhorse guide wires)(PTCA手術中の誘導のための冠血管を最初に処理することが意図されるガイドワイヤ)は、表面摩擦を減少させ追従性を高める親水性被膜を用いて被覆されるべきであることが、介入性の循環器専門医師の間で一般に認められている。その親水性被膜が、病変内のガイドワイヤの位置に関しての医師の触覚を妨害するので、CTOを処理することが意図されるガイドワイヤの遠位先端は、被覆されるべきでないこともまたよく一般に認められている。
【0053】
親水性被膜で覆われた先端を用いてCTO病変まで誘導し、その後、被覆されていない先端を用いてCTOを処理するための選択を医師に提供する、単一のツールを所有していることが役に立つだろう。したがって、図6において示された好ましい実施形態において、ガイドワイヤ(100)の遠位先端(111)は、親水性被膜(160)を用いて被覆されるが、第2のガイドワイヤ(300)の遠位部(310)は、被覆されない(130)(または親水性被膜とは別の被膜を用いて被覆されてもよい)。
【0054】
図8図9図10および図11に例示されたように、ガイドワイヤ(100)の遠位部(110)内の第2のガイドワイヤ(300)の遠位先端(311)の位置は、ハンドル(200)の遠位端(230)に対してスライダ(210)を移動させることにより調節される。図9は、第2のガイドワイヤの先端が、ガイドワイヤ(100)の先端(115)の遠位端に位置する位置を例示する。この位置において、硬さは最大である。図10および11において、内側のガイドワイヤがさらなる湾曲を生じさせない場合に、45度の曲線または直角の曲線がそれぞれ、外側のガイドワイヤの先端(111)の初期形状に従って形作られるように、先端(311)が引き出される。湾曲および偏向のさらなる制御を提供する追加の選択肢は、図13−16に関して以下に記載されるだろう。
【0055】
スライダ(210)を使用して、ガイドワイヤ(100)の遠位部(110)内で第2の内側のガイドワイヤ(300)の先端(311)を変位させることによって、医師は、ガイドワイヤ(100)の遠位先端(111)の硬さおよび湾曲を要求に応じて調節する。従って、本発明の機器の使用によって、医師は、ワイヤ間の切り替えを必要とすることなく、柔軟な状態から硬い状態へ、および逆もまた同様に、現在使用しているガイドワイヤの特徴をすぐに変更することができる。
【0056】
図4のハンドルは図12で例示された安全リングを有し、その結果、図2に示される好ましい実施形態において、スライダー(210)が、図12のV1(図12A)で例示されるようにリング(250)によって止められるとき、遠位先端(311)が、図9で例示されるようなガイドワイヤ(100)の先端(111)の遠位端(115)へ前進させられる。
【0057】
ガイドワイヤ(100)から先端(311)を突出させるために、医師は、スライダー(210)の放射状に出っ張っている部分とスロットを位置合わせするために、図12のV2(図12B)に例示されるようなリングを回し、その結果、図12のV3(図12C)に例示されるように、スライダー(210)を、ハンドル(200)の遠位端(230)に向けて前進させることができる。
【0058】
図13および図14に示される好ましい実施形態において、遠位先端(111)は、第1の曲線(111a)を形作るように事前に形成される。遠位先端(111)は形成可能にもなり、その結果、医師が、それを形成し、第1の曲線(111a)を形作ることができる。図14に例示されるように、ハンドル(200)から遠位部(111)まで、内腔(150)を通って延びる第2の内側のガイドワイヤ(300)はまた、事前に形成されるか、ユーザーが形成可能な遠位先端(311)を有する。
【0059】
したがって、第2のガイドワイヤの遠位先端(311)は、外側のガイドワイヤに沿う対応する位置の外側のガイドワイヤにおいて、第2の曲線(111b)を生じさせ、それによって、ハンドル(200)のスライダ(210)を操作することにより、ガイドワイヤの先端の形状の調節を可能にする。言いかえれば、外側のガイドワイヤの柔軟な遠位部内の内側のガイドワイヤの曲がった先端の存在は、偏向のさらなる領域を生成し、その領域は、スライダ(210)を操作することにより外側のガイドワイヤに対して変位させることができ、それによって、二重ガイドワイヤの先端部の湾曲の全体的な範囲、角度、および幾可学的形状を調節する。
【0060】
この特徴の効果は、図13図14図15および図16において例示され、それらの図は、偏向を受ける先端部の曲率半径および/もしくは長さ、ならびに/またはガイドワイヤ(100)の遠位先端(111)の軸(160)からの完全な側方の偏向が、以下のハンドルの操作によりどのように調節されうるかを例示している:ガイドワイヤ(100)内の湾曲した先端(311)を、その遠位先端(111)の末端(115)に向かって前進させるハンドル本体(230)に対して、スライダ(110)を前進させる操作。この操作が今度は、第1の曲線(111a)と第2の曲線(111b)との間の距離がより短くなるにつれ、ガイドワイヤ(100)の完全な側方の偏向(160)を減少させる。より詳細には、図13および図14において、各曲線(111a)および(111b)はおよそ45度の偏向に相当し、比較的直線な部分がその2つの曲線間に存在する。図15において、内側のガイドワイヤをわずかに外側のガイドワイヤに対して前進させた後、その2つの曲線がともに近づけられることによって、およそ90度の連続的な曲線に近似するものと、図14と比較して減少した全体的な側方の偏向と、が結果としてもたらされる。外側のガイドワイヤに対する内側のガイドワイヤのさらなる前進は、全体的な湾曲が90度未満であり、図1において例示されるように、全体的な側方の偏向がさらに小さくなるように、内側のガイドワイヤと外側のガイドワイヤの偏向される部分の少なくとも部分的な重複を結果としてもたらす。ちなみに、ガイドワイヤの湾曲と偏向を調節するための図13−16を参照して説明した動作原理が、内側のワイヤ(300)の構造の詳細とは無関係に実施可能である本発明の態様に対応することを留意すべきである。したがって、本発明のこの態様の代替的な実施は、図13−16に関して記載されるような調節可能な湾曲と偏向を提供し、そこでは、内側の要素は、遠位のコイルを備えるガイドワイヤとしては実装されないが、代わりに、例えば、事前に形成される偏向された先端、またはユーザーが形成可能な先端を備える適切な直径のソリッドワイヤなどの、いくつかの他のタイプの湾曲調節要素である。そのような実施形態において、スライダ(210)などの調整機構は、好ましくは、外側のガイドワイヤの先端を越えて前進できないように内側の湾曲調節要素の動きを制限する。
【0061】
図8において例示されるように、スライダ(210)をさらに前進させることによって、第2のガイドワイヤ(300)の事前に形成された(または、ユーザーに形成された)湾曲した先端(311)は、ガイドワイヤの先端(111)から突出するように作られ、それによって、既に上記した微細なゲージの非常に柔軟なガイドワイヤの機能性を提供する。
【0062】
したがって、本明細書において記載される本発明の機器の様々な特徴は、冠状動脈および末梢血管系における、CTO病変を開口させるため、および他の血管の応用のための機器の有効性に対して様々な改善を提供し、典型的には、従来の技術と比較して、時間の節約、および/または動脈を穿孔するリスクの減少を提示している。
【0063】
添付された請求項が多数従属することなく立案された範囲まで、本発明は、そのような複数の従属を許可しない管轄において、単に方式要件に適応させるためにしか実施されていない。請求項を複合的に従属させることにより示唆されるであろう特徴のすべての可能な組み合わせは、明瞭に想定され、そして本発明の一部であると考慮するべきであることに留意するべきである。
【0064】
上の記載は、単に例として役立つように意図され、多くの他の実施形態は、添付された請求項に規定されるような本発明の範囲内で可能であることが理解されるだろう。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15
図16