特許第6820636号(P6820636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6820636
(24)【登録日】2021年1月7日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】術具
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20210114BHJP
【FI】
   A61B34/30
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-536288(P2020-536288)
(86)(22)【出願日】2020年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2020014157
【審査請求日】2020年6月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】新藤 広樹
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4938753(JP,B2)
【文献】 特開2009−107087(JP,A)
【文献】 特開2011−072574(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2019/0328467(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2019/0239890(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術用ロボットに装着される術具において、
施術処置に用いられる処置部であって、開閉するように変位可能な把持部を有する処置部と、
前記把持部開閉するように変位させる駆動力を発生させるスライダーであって、直線方向に往復運動することにより当該駆動力を発生させるスライダーと、
前記把持部開方向に変位させるために、1つの前記スライダーを前記直線方向に移動させる手動解除具であって、前記スライダーが収納された本体部に着脱可能に装着可能な手動解除具と
を備える術具。
【請求項2】
前記スライダーには、前記手動解除具から直接的又は間接的に駆動力を受ける受動部が設けられており、
さらに、前記スライダーは、前記受動部から駆動力を受けて直線方向に変位可能である請求項1に記載の術具。
【請求項3】
前記本体部に設けられた伝達部であって、前記手動解除具が前記本体部に装着される際に、前記直線方向と交差する方向に前記伝達部が当該手動解除具から受ける装着力を、前記1つのスライダーが変位する前記直線方向にかかる前記駆動力に変換して前記受動部に伝達する伝達部を備える請求項2に記載の術具。
【請求項4】
前記手動解除具は、前記スライダーの変位方向と交差する方向に変位可能に前記本体部に装着可能であり、
前記伝達部は、前記手動解除具に設けられたラック部と噛み合い可能なピニオン部を有している請求項3に記載の術具。
【請求項5】
前記伝達部は、前記受動部を構成するラック部と噛み合い可能な第2のピニオン部を有している請求項3に記載の術具。
【請求項6】
前記受動部は、前記本体部に装着された前記手動解除具の回転による前記駆動力を受ける請求項2に記載の術具。
【請求項7】
前記受動部は、前記手動解除具に設けられたピニオン部と噛み合い可能なラック部を有している請求項6に記載の術具。
【請求項8】
前記本体部には、前記手動解除具が装着可能な装着部が複数設けられている請求項1ないし7のいずれか1項に記載の術具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手術用ロボットに装着される術具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、手術中に医療用支持アーム装置への電力供給が停止した場合であっても、継続して施術可能な医療用支持アーム装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−152906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手術用ロボットに装着される術具のうち、例えば鉗子等の処置具においては、先端側にハンド部(把持部)等の処置部が設けられている。当該処置部には、少なくとも1つの可動部が設けられている。
【0005】
可動部は、空気圧や電力を利用したアクチュエータにより直接的又は間接的に変位させられる。このため、空気圧の供給や電源供給が停止してアクチュエータが停止すると、可動部の状態が当該アクチュエータ停止時のままで保持されてしまう。
【0006】
具体的には、例えば、「鉗子(術具)の把持部が患者の組織を把持している場合」において、電源供給が停止すると、手術の続行又は手術の中断が難しい。
【0007】
本開示は、手術用ロボットに装着される術具において、電源供給が停止した場合に対処可能な術具の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
手術用ロボットに装着される術具は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0009】
具体的には、当該構成要件は、施術処置に用いられる処置部であって、変位可能な可動部を少なくとも1つ有する処置部と、可動部を変位させる駆動力を発生させるスライダーであって、直線方向に往復運動することにより当該駆動力を発生させるスライダーと、可動部を変位させるための手動解除具であって、スライダーが収納された本体部に着脱可能に装着可能な手動解除具とである。
【0010】
これにより、当該術具では、利用者が手動解除具を本体部に装着すると、当該利用者は、手動解除具を介して手動操作により可動部を変位させることが可能となり得る。したがって、当該術具によれば、電源供給が停止した場合であっても、例えば、手術の続行又は手術の中断といった対処が可能となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る手術用ロボットの外観図である。
図2】第1実施形態に係る手術用ロボットのブロック図である。
図3】第1実施形態に係るロボットアームの先端側及び術具を示す図である。
図4】第1実施形態に係る術具の先端側を示す図である。
図5】第1実施形態に係る本体部の構造を示す図である。
図6】第1実施形態に係る本体部の外観を示す図である。
図7】第1実施形態に係る本体部の構造を示す図である。
図8】第1実施形態に係る本体部の構造を示す図である。
図9】第2実施形態に係る本体部の外観を示す図である。
【符号の説明】
【0012】
10…術具 11… 本体部 12… 挿入部 13…処置部 13A、13B… 可動部 15〜17…スライダー 18… 手動解除具 18A…ラック部 19… 受動部 19A… ラック部 20…ピニオン 20A… ピニオン部 20B…ピニオン部
【発明を実施するための形態】
【0013】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された手術用ロボット及び術具は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0014】
(第1実施形態)
<1.手術用ロボットの概要>
図1に示された手術用ロボット1は、内視鏡下外科手術に用いられる手術用ロボットの一例である。当該手術用ロボット1は、ロボットアーム3に加えて、図2に示されるように、制御装置5、駆動機構7及び術具10を備える。
【0015】
<ロボットアーム>
ロボットアーム3は、図1に示されるように、術具10を保持した状態で当該術具10を変位させることが可能なアーム装置の一例である。具体的には、ロボットアーム3は、複数の関節を有するリンク機構にて構成されている。
【0016】
<駆動機構>
駆動機構7は、図4に示されるようにロボットアーム3及び術具10の可動部13A、13Bを駆動する駆動部の一例である。本実施形態に係る駆動機構7は、図2に示されるように、電動アクチュエータ71及び空圧アクチュエータ72を有している。
【0017】
電動アクチュエータ71は、少なくとも1つの電動モータで構成され、各関節部を駆動する。なお、本実施形態では、各関節部に電動モータが設けられている。このため、各電動モータは、ロボットアーム3に配置されている。
【0018】
空圧アクチュエータ72は、図4に示されるように、少なくとも可動部13A、13Bを駆動する。当該空圧アクチュエータ72は、図2に示されるように、少なくとも1つ(本実施形態では3つ)の空気圧シリンダー73A〜73C、圧力発生装置72A、及び空気圧シリンダーと同数の制御用電磁弁74A〜74Cを有している。
【0019】
圧力発生装置72Aは、空気圧シリンダー73A〜73Cに圧搾空気を供給する圧力供給源である。各空気圧シリンダー73A〜73Cは、空気圧を受けて作動する。各制御用電磁弁74A〜74Cは、空気圧シリンダー73A〜73Cに供給する空気圧を制御することにより、対応する空気圧シリンダー73A〜73Cの作動を制御する。
【0020】
なお、本実施形態では、少なくとも空気圧シリンダー73A〜73Cは、ロボットアーム3に設けられている。図3に示されるように術具10は、ロボットアーム3の先端に設けられた装着部3Aに着脱自在に装着される。
【0021】
<制御装置>
制御装置5は、駆動機構7、より具体的には電動アクチュエータ71及び空圧アクチュエータ72等の作動を制御する。さらに具体的には、制御装置5は、制御用電磁弁74A〜74Cを制御する。制御装置5は、マスター側の入力操作装置(図示せず)から出力される指令信号を受信し、その指令信号に従って駆動機構7を作動させる。
【0022】
このとき、制御装置5は、図1に示されるように術具10のうち被手術者の切開位置Pに対応する部位が不動となるように、電動アクチュエータ71の作動を制御する。切開位置Pとは、内視鏡下手術時に図1に示すようなトロッカー14Cが挿入される部位である。
【0023】
トロッカー14Cは、筒状の部材である。なお、トロッカー(trocar)はトラカール(trochar)ともいう。トロッカーは、カニューラやカニューレと表記される場合もある。施術者は、トロッカー14Cを通して内視鏡や鉗子等の術具10を被手術者の体内に挿入し、内視鏡で撮影された画像を見ながら手術を行う。
【0024】
<2.術具>
<2.1 術具の概要>
術具10は、図3に示されるように、本体部11、挿入部12及び処置部13を備える。本体部11は、ロボットアーム3、より具体的には装着部3Aに着脱自在に装着可能な部位である。
【0025】
挿入部12は、本体部11から延びる管状の部位である。当該挿入部12は、トロッカー14Cを通して身体内に挿入される部位であって、金属等の曲げ剛性の高い材質にて構成されている。
【0026】
挿入部12の先端部には処置部13が設けられている。当該処置部13は、図4に示されるように、少なくとも1つ(本実施形態では2つ)の可動部13A、13Bを有している。
【0027】
可動部13A、13Bは、挿入部12に対して変位可能な部位である。具体的には、本実施形態に係る術具10は鉗子である。つまり、本実施形態に係る処置部13は、処置対象部位や縫合針等を把持可能な把持部である。
【0028】
そして、2つの可動部13A、13Bは、中心軸Oを中心に「閉じた位置(図4参照)」と先端が離隔した「開いた位置」との間で回転変位又は揺動可能である。これにより、処置部13は、対象部位等を把持することが可能である。
【0029】
本実施形態に係る処置部13は、関節部14を介して挿入部12の先端に連結されている。関節部14は、処置部13の角度を変更するための機構である。具体的には、当該関節部14は、少なくとも1つ(本実施形態では2つ)の回転軸14A、14Bを有している。
【0030】
関節部14は、各回転軸14A、14Bを中心軸として回転変位可能である。なお、第1の回転軸14Aは、挿入部12の長手方向に対して直交する軸部である。第2の回転軸14Bは、挿入部12の長手方向及び第1の回転軸14Aに対して直交する軸部である。
【0031】
<2.2 可動部を変位させるための機構>
本体部11内には、図5に示されるように、少なくとも1つ(本実施形態では、複数)のスライダー15〜17が収納されている。各スライダー15〜17は、直線方向に往復運動可能な部材である。
【0032】
本実施形態では、各スライダー15〜17は、挿入部12の長手方向と平行な方向(具体的には、図5に示された矢印方向)に変位する。なお、各スライダー15〜17は、図2に示されるような空気圧シリンダー73A〜73Cから駆動力を得て変位する。
【0033】
スライダー15は、往復運動することにより可動部13Aを変位させる駆動力を発生させる。スライダー15において、変位方向における第1端及び第2端それぞれには、駆動ワイヤー15Wの第1端15A、駆動ワイヤー15Wの第2端15Bが連結されている。
【0034】
スライダー16は、往復運動することにより可動部13Bを変位させる駆動力を発生させる。スライダー16において、変位方向における第1端及び第2端それぞれには、駆動ワイヤー16Wの第1端16A、駆動ワイヤー16Wの第2端16Bが連結されている。
【0035】
駆動ワイヤー15Wは、直接的又は間接的に可動部13Aに連結されている。このため、スライダー15が変位すると、当該変位に連動して可動部13Aが変位する。具体的には、スライダー15が往復運動すると、当該往復運動に連動して把持部をなす処置部13の可動部13Aが第2の回転軸14Bを中心として変位する。
【0036】
駆動ワイヤー16Wは、直接的又は間接的に可動部13Bに連結されている。このため、スライダー16が変位すると、当該変位に連動して可動部13Bが変位する。具体的には、スライダー16が往復運動すると、当該往復運動に連動して把持部をなす処置部13の可動部13Bが第2の回転軸14Bを中心として変位する。
【0037】
可動部13Aおよび可動部13Bの回動方向が反対方向の場合には、処置部13は開閉する。可動部13Aおよび可動部13Bの回動方向を同方向の場合には、処置部13は第2の回転軸14Bを中心として変位する。
【0038】
スライダー17は、関節部14を稼働させる駆動力を発生する。スライダー17において、変位方向における第1端及び第2端それぞれには、駆動ワイヤー17Wの第1端17A、駆動ワイヤー17Wの第2端17Bが連結されている。
【0039】
駆動ワイヤー17Wは、第1の回転軸14Aを中心として処置部13および第2の回転軸14Bを変位させる。これにより、スライダー15、16、17の変位に連動して関節部14が稼働する。
【0040】
なお、滑車15Cは駆動ワイヤー15Wを転向させる定滑車である。滑車16Cは駆動ワイヤー16Wを転向させる定滑車である。滑車17Cは駆動ワイヤー17Wを転向させる定滑車である。
【0041】
<2.3 処置部(把持部)の手動解除>
図6に示されるように、術具10は手動解除具18を備えている。手動解除具18は、可動部13Aを変位させるための部材であって、本体部11にして着脱可能な部材である。
【0042】
なお、図6は手動解除具18が本体部11に装着された状態を示している。図3は手動解除具18が装着されていない状態を示している。手動解除具18が装着されていない状態では、当該手動解除具18は、例えば、ロボットアーム3に保持されている。
【0043】
スライダー15には、図5に示されるように、受動部19が設けられている。受動部19は、手動解除具18から直接的又は間接的に駆動力を受ける部位である。なお、本実施形態では、受動部19は、図7に示されるように、手動解除具18から間接的に駆動力を受ける。
【0044】
本実施形態に係る受動部19は、スライダー15のスライド方向と平行な方向に延びるラック部19Aにより構成されている。なお、ラックとは、曲率半径が無限大のセクター歯車である。以下、受動部19をラック部19Aともいう。換言すれば、受動部19は、ラック部19Aを有する。
【0045】
本実施形態に係る手動解除具18は、スライダー15の変位方向と交差(例えば、本実施形態では、直交)する方向に変位可能に本体部11に装着される。そして、手動解除具18において、挿入方向先端側にはラック部18Aが設けられている。
【0046】
本体部11には、ラック部18Aと噛み合い可能なピニオン部20A、及びラック部19Aと噛み合い可能なピニオン部20Bが設けられている。なお、ピニオン部20Aとピニオン部20Bとは、各回転軸線が一致した状態で一体化されている。以下、当該一体化された2つのピニオン部20A、20Bをピニオン20という。言い換えると、ピニオン20は、ピニオン部20A及びピニオン部20Bを有する。
【0047】
このため、手動解除具18とピニオン部20Aとが噛み合った状態で、当該手動解除具18が変位すると、ピニオン部20Bが回転するため、当該回転がラック部19Aに伝達される。
【0048】
ピニオン20は、本体部11に対して回転軸線の位置が不動である。このため、手動解除具18とピニオン20とが噛み合った状態で、当該手動解除具18が変位すると、スライダー15は、ラック部19Aから駆動力を受けて直線方向に変位する。
【0049】
ピニオン20は、手動解除具18が本体部11に装着される際に当該手動解除具18が受ける装着力を変換して受動部19に伝達する伝達部として機能する。そして、本実施形態では、手動解除具18が挿入の向き(言い換えると、図7の矢印の向き)に変位したときに、処置部13が開くように可動部13Aが変位する。
【0050】
なお、装着力は操作力の一例に相当する。
【0051】
図8に示されるように本実施形態に係る術具10では、利用者は、図7に示される位置と異なる位置からも手動解除具18を本体部11に挿入することができる。本実施形態に係る本体部11には、図6に示されるような装着部(手動解除具18が装着可能に構成される装着部)18Bが複数設けられている(ただし、図6では1つの装着部18Bのみが図示されている)。
【0052】
なお、複数(本実施形態では、2つ)の装着部18Bのうち、第1の装着部18Bは本体部11の第1の側方に設けられ、第2の装着部18Bは本体部11の第2の側方に設けられている。第2の装着部18Bは、ピニオン20の回転軸線を中心に第1の装着部18Bに対して180度回転した位置に設けられている。
【0053】
<3.本実施形態に係る手術用ロボット(特に、術具)の特徴>
本実施形態に係る術具10は、可動部13Aを変位させるための手動解除具18であって、本体部11に着脱可能に装着可能な手動解除具18を備える。
【0054】
これにより、当該術具10では、利用者が手動解除具18を本体部11に装着すると、当該利用者は、手動解除具18を介して手動操作により可動部13Aを変位させることが可能となり得る。したがって、当該術具によれば、電源供給が停止した場合であっても、例えば、手術の続行又は手術の中断といった対処が可能となり得る。
【0055】
スライダー15には、手動解除具18から直接的又は間接的に駆動力を受ける受動部19が設けられている。そして、スライダー15は、受動部19から駆動力を受けて直線方向に変位可能である。これにより、利用者は、手動解除具18を用いて確実に可動部13Aを手動操作にて変位させることができ得る。
【0056】
本実施形態では、手動解除具18が本体部11に装着されると、ラック部18Aとピニオン部20Aとが噛み合ってスライダー15が変位する。具体的には、本実施形態では、手動解除具18が受ける装着力が伝達部及び受動部19にてスライダー15を変位させる力に変換される。なお、ピニオン20が伝達部の一例に相当する。
【0057】
したがって、利用者は、手動解除具18を本体部11に差し込むように装着するのみで、可動部13Aを変位させることができ得る。このため、利用者は、迅速、かつ、確実に、処置部13を開くことができ得る。なお、処置部13が把持部の一例に相当する。
【0058】
(第2実施形態)
上述の実施形態に係る手動解除具18は、ピニオン部20Aに噛み合うラック部18Aを有する構成であった。これに対して、図9に示されるように本実施形態に係る手動解除具21は、ピニオン部20Bと連結可能な部材である。このため、本実施形態では、ラック部18A及びピニオン部20Aが設けられていない。なお、ピニオン部20Bはピニオン20に含まれる。
【0059】
ピニオン部20Bには、手動解除具21の図9に示される軸部21Aと着脱自在に連結可能な連結部(図示せず。)が設けられている。そして、利用者は、手動解除具21の軸部21Aを連結部に連結した状態で当該手動解除具21を回転させることにより、可動部13Aを変位させることができ得る。
【0060】
なお、さらに別の実施形態としては、伝達部が廃止され、ピニオン部20Bが手動解除具21の軸部21Aに設けられた構成であってもよい。当該構成によれば、手動解除具21が本体部11に装着され、軸部21Aのピニオン部20Bがラック部19Aと噛み合ったときに、スライダー15が手動操作にて変位可能な状態となる。
【0061】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係るスライダー15〜17は、挿入部12の長手方向と平行な方向に往復運動する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。例えば、スライダー15〜17が挿入部12の長手方向と交差する方向に往復運動する構成であってもよい。
【0062】
上述の実施形態では、ピニオン部20B及びラック部19Aが設けられ、ピニオン部20Bとラック部19Aとが噛み合うことにより、手動解除具18、21の操作力がスライダー15に伝達される構成であった。
【0063】
しかし、本開示はこれに限定されない。例えば、ピニオン部20B及びラック部19Aが廃止され、伝達部とスライダー15との接触部で発生する摩擦力を利用してスライダー15に操作力を伝達する構成であってもよい。
【0064】
上述の実施形態では、手動解除具18、21の操作力が伝達部を介してスライダー15に伝達される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。例えば、手動解除具18、21がスライダー15に着脱自在に連結可能な構成であってもよい。
【0065】
この場合、手動解除具18、21がスライダー15に連結されている状態で、利用者が当該手動解除具18、21をスライド方向に変位させることより、当該スライダー15を変位させる構成であってもよい。
【0066】
上述の実施形態では、手動解除具18、21によりスライダー15を変位させて可動部13Aを変位させる構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。例えば、スライダー15以外の部材である駆動ワイヤー15Wなどを手動解除具18、21にて操作可能な構成であってもよい。
【0067】
上述の実施形態では、手動解除具18、21の装着方向がスライダー15のスライド方向と直交する方向であった。しかし、本開示はこれに限定されない。例えば、手動解除具18、21の装着方向がスライド方向と平行であってもよい。
【0068】
上述の実施形態では、手動解除具18が装着可能な装着部18Bが2つ設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。例えば、装着部18Bが1つ又は3つ以上設けられた構成であってもよい。
【0069】
上述の実施形態では、スライダー15の変位が駆動ワイヤー15Wを介して可動部13Aに伝達される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。例えば、スライダー15の変位がプッシュプルワイヤー又はギヤードケーブルを介して可動部13Aに伝達される構成であってもよい。
【0070】
上述の実施形態に係る処置部13は、いわゆる把持部で構成され、かつ、関節部14と別部分であった。しかし、本開示はこれに限定されない。例えば、処置部13が把持部以外で構成されたもの、又は処置部13と関節部14とが一体となった構成、言い換えると、手動解除具18、21にて関節部14も稼働させることが可能な構成であってもよい。
【0071】
上述の実施形態では、手動解除具18、21は、スライダー15を変位させる構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。例えば、手動解除具18、21にてスライダー16、17も変位させることが可能な構成であってもよい。
【0072】
上述の実施形態では、手動解除具18、21を介してスライダー15を操作する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。例えば、スライダー15に突起状の操作部が設けられ、当該操作部の先端側が、利用者が操作可能な程度に本体部11から突出した構成であってもよい。なお、当該構成では、手動解除具18、21は不要である。
【0073】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【要約】
手術用ロボット(1)に装着される術具(10)を提供するべく、当該術具は、施術処置に用いられる処置部であって、変位可能な可動部(13A,13B)を有する処置部(13)と、前記可動部を変位させる駆動力を発生させるスライダーであって、直線方向に往復運動することにより当該駆動力を発生させるスライダー(15,16,17)と、前記可動部を変位させるための手動解除具であって、前記スライダーが収納された本体部に着脱可能に装着可能な手動解除具(18)と、を備えるように構成した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9