(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(B)成分を構成する香料化合物が、マルトール、エチルマルトール、バニリン、エチルバニリン、及びラズベリーケトンから選ばれる1種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の液体柔軟剤組成物。
(B)成分を構成する脂肪族モノカルボン酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸から選ばれる1種以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の液体柔軟剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[液体柔軟剤組成物]
本発明の液体柔軟剤組成物は、(A)成分、(B)成分、及び水を含有し、30℃におけるpHが2.5以上5.0以下であるものである。以下、各成分について説明する。
【0013】
<(A)成分>
本発明の(A)成分は、下記一般式(1)で表される4級アンモニウム塩化合物であって、アシル基を脂肪酸と見做した場合に、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の割合が、アシル基を構成している全脂肪酸の60質量%以上100質量%以下である4級アンモニウム塩化合物である。
【0015】
〔式中、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立して、炭素数16以上22以下の脂肪酸からOHを除いた残基(アシル基という)、又は水素原子であり、ただし、R
1、R
2、R
3の少なくとも1つは、アシル基であり、R
4は炭素数1以上3以下のアルキル基であり、X
−は陰イオンである。〕
【0016】
本発明の液体柔軟剤組成物で処理された繊維製品は、香りの持続性に優れる。その理由は必ずしも明らかではないが、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸から選ばれる1種以上の脂肪酸由来のアシル基を主として構成される(A)成分の4級アンモニウム塩化合物は、室温で液状様であることから、ベシクル中に(B)成分を取込みやすく、乾燥後の繊維製品上での(B)成分の分解を抑制し、(B)成分が徐々に分解して香料化合物が放出される結果、残香持続性が高まるものと推測される。
【0017】
本発明の(A)成分は、アシル基を構成している全脂肪酸中、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸から選ばれる1種以上の割合が、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、より更に好ましくは85質量%以上、そして好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
(A)成分は、この脂肪酸の割合の条件を満たした上で、アシル基を構成している全脂肪酸中、オレイン酸の割合が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更より好ましくは65質量%以上であり、そして好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更により好ましくは90質量%以下である。
【0018】
(A)成分のアシル基を構成する、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸以外の脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸及びエライジン酸を挙げることができる。
【0019】
(A)成分はトリエタノールアミン脂肪酸エステルの4級化物であることから、アシル化度が1、2又は3の3つの異なる4級化合物から構成されるものである。(A)成分の平均アシル化率は、柔軟性、組成物の保存安定性観点及び残香持続性の観点から、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.95以下である。平均アシル化度は、脂肪酸とトリエタノールアミンとの反応比率及び4級化の際のアルキル化剤との反応比率や反応条件によって調整することができる。
【0020】
本発明では(A)成分を構成するそれぞれの割合は以下の比率が好ましい。
アシル化度が1の化合物、すなわち一般式(1)中のR
1がアシル基であり、R
2及びR
3が水素原子である化合物(a1)〔以下、(a1)成分という〕の割合が、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、そして45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下であって、
アシル化度が2の化合物、すなわち一般式(1)中のR
1及びR
2がアシル基であり、R
3が水素原子である化合物(a2)〔以下、(a2)成分という〕の割合が、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、そして75質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下であって
アシル化度が3の化合物、すなわち一般式(1)中のR
1、R
2及びR
3がアシル基である化合物(a3)〔以下、(a3)成分という〕の割合が、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、5質量%以上、好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0021】
(a2)成分と(a3)成分は柔軟効果及び香料前駆体の繊維製品への吸着に有効な成分であるが、液体柔軟剤組成物の保存安定性に影響を与える。そのために、(A)成分は、(a1)成分を適度に残した組成であることが好ましい。更には、前記の割合を満たした上で、(A)成分中の(a2)成分の含有量が(a3)成分よりも多いこと、より好ましくは(a2)成分の含有量(質量%)と(a3)成分の含有量(質量%)との差が、15質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上あることである。
【0022】
一般式(1)中、R
4はメチル基又はエチル基が好ましい。
一般式(1)中、X
−は、ハロゲンイオン、好ましくはクロロイオン、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1以上3以下のアルキル基が1個以上3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンから選ばれる陰イオンが好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオンがより好ましく、メチル硫酸エステルイオン又はエチル硫酸エステルイオンがより好ましい。
【0023】
本発明に用いる(A)成分は、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸の比率が規定濃度の脂肪酸とトリエタノールアミンを脱水エステル化反応させる方法(脱水エステル化法という)、又は前記脂肪酸による脂肪酸低級アルキルエステル(低級アルキルはメチル基、エチル基、プロピル基)とトリエタノールアミンをエステル交換反応させる方法(エステル交換法という)により得られたエステル化反応物を、アルキル化剤で4級化反応させることで得ることができる。本発明の(A)成分の(a1)成分〜(a3)成分の割合を満たす混合物を得るには、例えば、脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステル:トリエタノールアミンのモル比を、好ましくは1.3:1以上、より好ましくは1.5:1以上、そして2.0:1以下、好ましくは1.95:1以下の比率で反応させたトリエタノールアミン脂肪酸エステルの混合物を4級化反応させる。
【0024】
なお、選択水素化反応を行った場合には不飽和結合の幾何異性体の混合物が形成するが、本発明ではシス/トランスが25/75〜100/0、好ましくは50/50〜95/5(モル比)が好ましい。
【0025】
脱水エステル化法においてはエステル化反応温度を140℃以上230℃以下で縮合水を除去しながら反応させることが好ましい。反応を促進させる目的から通常のエステル化触媒を用いても差し支えなく、例えば硫酸、燐酸などの無機酸、酸化錫、酸化亜鉛などの無機酸化物、テトラプロポキシチタンなどのアルコラートなどを選択することができる。反応の進行はJISK0070−1992に記載の方法で酸価(AV)及び鹸化価(SV)を測定することで確認を行い、好適にはAVが10mgKOH/g以下、好ましくは6mgKOH/g以下となった時、エステル化反応を終了する。得られるエステル化合物の混合物は、SVが好ましくは110mgKOH/g以上、より好ましくは130mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは210mgKOH/g以下、より好ましくは190mgKOH/g以下である。
【0026】
エステル交換法においては、反応は好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上、そして、好ましくは150℃以下の温度で生成する低級アルコールを除去しながら行う。反応促進のために水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリや、メチラート、エチラートなどのアルコキシ触媒を用いることも可能である。反応の進行はガスクロマトグラフィーなどを用いて脂肪酸低級アルキルエステルの量を直接定量することが好適であり、未反応脂肪酸低級アルキルエステルが仕込みの脂肪酸低級アルキルエステルに対してガスクロマトグラフィーチャート上で10面積%以下、特に6面積%以下で反応を終了させることが好ましい。得られるエステル化合物の混合物は、SVが好ましくは110mgKOH/g以上、より好ましくは130mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは210mgKOH/g以下、より好ましくは190mgKOH/g以下である。
【0027】
次にこのようにして得られたエステル化合物の4級化を行うが、4級化に用いられるアルキル化剤としては、メチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が好適である。アルキル化剤として、メチルクロリドを用いる場合には、特に溶媒を使用する必要はないが、溶媒を使用する場合は、エタノールやイソプロパノールなどの溶媒を、エステル化合物に対して10質量%以上50質量%以下程度混合した溶液をチタン製のオートクレーブなどの加圧反応器に仕込み、密封下30℃以上120℃以下の反応温度でメチルクロリドを圧入させて反応させる。このときメチルクロリドの一部が分解し塩酸が発生する場合があるため、アルカリ剤を少量加えることで反応が効率よく進むため好適である。メチルクロリドとエステル化合物とのモル比は、エステル化合物のアミノ基1当量に対してメチルクロリドを1倍当量以上1.5倍当量以下用いることが好適である。
【0028】
ジメチル硫酸及び/又はジエチル硫酸とエステル化合物とのモル比は、エステル化合物のアミノ基1当量に対してジメチル硫酸及び/又はジエチル硫酸を好ましくは0.9倍当量以上、より好ましくは0.95倍当量以上、そして、好ましくは1.1倍当量以下、より好ましくは0.99倍当量以下用いる。
【0029】
本発明の液体柔軟剤組成物は、(A)成分の製造時に生成されるその他反応生成物を含有してもよい。例えば、4級化されなかった未反応アミンとして、具体的には脂肪酸トリエステル構造体のアミンと脂肪酸ジエステル構造体のアミンがあり、製法によっては、脂肪酸トリエステル構造体のアミンと脂肪酸ジエステル構造体のアミンとを合計して、(A)成分100質量部に対して5〜30質量部含む反応生成物が得られる。一方、脂肪酸モノエステル構造体のアミンは4級化し易いことから、通常、反応生成物中の含有量は(A)成分100質量部に対して0.5質量部以下である。更には脂肪酸エステル化されなかったトリエタノールアミン及びトリエタノールアミンの4級化物は合計で(A)成分100質量部に対して0.5〜3質量部含有され、このうち90質量%以上は4級化物である。また未反応脂肪酸が含まれることもある。(A)成分を含む反応生成物を用いる場合は、本発明の効果を損なわない限り、このような未反応成分や副反応成分が液体柔軟剤組成物中に含まれていてもよい。
【0030】
(A)成分として(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分を含む混合物を用いる場合、該混合物中の(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分、アミン化合物の割合等は、高速液体クロマトグラフ(HPLCと言う場合もある)を用い、検出器として荷電荷粒子検出器(Charged Aerosol Detection、CADと言う場合もある)を使用して求めることができる。CADを用いた測定方法については「荷電化粒子検出器Corona CADの技術と応用」(福島ら Chromatography, Vol.32 No.3(2011))を参考にすることができる。
【0031】
<(B)成分>
本発明における(B)成分は、フェノール構造又はヒドロキシ−4−ピロン構造を有する香料化合物〔以下、「(b1)成分」ともいう〕と、炭素数8以上18以下の脂肪族モノカルボン酸〔以下、「(b2−1)成分」ともいう〕又は炭素数3以上20以下の脂肪族ジカルボン酸〔以下、「(b2−2)成分」ともいう〕とのエステル化合物からなる香料前駆体である。
【0032】
〔(b1)成分〕
(b1)成分は、フェノール構造又はヒドロキシ−4−ピロン構造を有する香料化合物である。
本発明において「香料」とは、匂いを感じさせる物質のことをいい、「フレグランス(fragrance)」のことを指す。香料化合物は、香料を構成する個々の化合物をいう。香料化合物が香料となる場合もある。
フェノール構造又はヒドロキシ−4−ピロン構造を有する香料化合物のpKaは、長期に亘って強い香りを発現させる観点から、好ましくは13以下であり、より好ましくは12以下、更に好ましくは11.5以下、そして、好ましくは7以上、より好ましくは7.5以上である。
本発明において、pKaとは酸解離定数のことであり、水素イオンが放出される解離反応における平衡定数Kaの負の常用対数pKaによって表される。pKaが小さいほど強い酸であることを示す。本発明におけるpKaの算出には、インターネット上に構築されている化学構造−物性計算サイトであるSPARC(SPARC Performs Automated Reasoning In Chemistry、ARChem社、http://www.archemcalc.com/sparc.html)を用いた。
【0033】
フェノール構造を有する香料化合物としては、長期に亘って持続的に香りを徐放させる観点から、炭素数が好ましくは7以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは9以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは9以下であり、9であるものがより更に好ましい。
具体的には、バニリン(炭素数8、pKa7.8)、エチルバニリン(炭素数9、pKa7.8)、iso−オイゲノール(炭素数10、pKa9.8)、サリチル酸ベンジル(炭素数14、pKa9.8)、サリチル酸シス−3−ヘキセニル(炭素数13、pKa9.8)、バニリンPGA(炭素数11、pKa9.8)、サリチル酸シクロヘキシル(炭素数13、pKa10.0)、オイゲノール(炭素数10、pKa10.0)、ジンゲロン(炭素数11、pKa10.0)、バニトロープ(炭素数11、pKa10.0)、ラズベリーケトン(炭素数10、pKa10.1)、サリチル酸メチル(炭素数8、pKa10.1)、サリチル酸ヘキシル(炭素数13、pKa10.1)、カルバクロール(炭素数10、pKa10.5)、及びチモール(炭素数10、pKa10.9)が挙げられる。
【0034】
ヒドロキシ−4−ピロン構造を有する香料化合物としては、炭素数が好ましくは6以上、より好ましくは7以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは7以下であり、7であるものが更に好ましい。炭素数が前記範囲内であると、長期に亘って香り徐放することができる。
具体的には、マルトール(炭素数6、pKa11.2)、エチルマルトール(炭素数7、pKa11.3)を挙げることができる。
【0035】
前記(b1)成分の中でも、柔軟剤組成物の保存安定性を向上させることができ、また、徐放性能を向上させる観点から、マルトール、エチルマルトール、バニリン、エチルバニリン、及びラズベリーケトンから選ばれる香料化合物が好ましく、エチルマルトール及びエチルバニリンから選ばれる香料化合物がより好ましい。
これらの香料化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
〔脂肪族モノカルボン酸〕
〔(b2−1)成分〕
(b2−1)成分は、炭素数8以上18以下の脂肪族モノカルボン酸である。
炭素数が前記範囲内の脂肪族モノカルボン酸を用いることにより、液体柔軟剤組成物中において、(B)成分のエステル結合部分が水と接触しにくくなり加水分解の進行が抑制され、液体柔軟剤組成物の保存安定性が向上する。それにより、液体柔軟剤組成物の液色の変化を抑制することができる。
脂肪族モノカルボン酸の炭素数は、液体柔軟剤組成物中の保存安定性を向上させる観点から、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは11以上、更に好ましくは12以上であり、なるべく分子量を小さくすることで(B)成分を効率よく配合する観点及び初期の発香の観点から、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下であり、12であるものがより更に好ましい。
【0037】
脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、エナント酸、カプリル酸、ベラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ジメチルオクタン酸、オクテン酸、デセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、及びリノレン酸等の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。
本発明においては、なるべく分子量を小さくすることで(B)成分を効率よく配合する観点及び初期の発香の観点から、これらの中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸が好ましく、ラウリン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸がより好ましい。
【0038】
〔(b2−2)成分〕
(b2−2)成分は、炭素数3以上20以下の脂肪族ジカルボン酸である。
炭素数が前記範囲内の脂肪族ジカルボン酸を用いることにより、液体柔軟剤組成物中において、(B)成分のエステル結合部分が水と接触しにくくなり加水分解の進行が抑制され、液体柔軟剤組成物の保存安定性が向上する。それにより、液体柔軟剤組成物中製品の液色の変化を抑制することができる。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、液体柔軟剤組成物の保存安定性を向上させる観点から、3以上、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは9以上、より更に好ましくは10以上であり、なるべく分子量を小さくすることで(B)成分を効率よく配合する観点及び初期の発香の観点から、20以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及びテトラデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
本発明においては、なるべく分子量を小さくすることで(B)成分を効率よく配合する観点及び初期の発香の観点から、これらの中でも、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びドデカン二酸が好ましく、アジピン酸、セバシン酸がより好ましく、及びセバシン酸が更に好ましい。
【0039】
(B)成分としては、(b1)成分と(b2−1)成分とのエステル化合物からなる香料前駆体が好ましい。
【0040】
〔(B)成分の製造方法〕
(B)成分は、例えば下記(i)〜(iv)の方法で製造することができる。
(i)前記香料化合物と、前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸とを直接エステル化反応させることにより製造する方法
(ii)前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸に対してメタノール等の低級アルコールを反応させたエステルと、前記香料化合物とをエステル交換反応させることにより製造する方法
(iii)前記香料化合物と前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物とを反応させることにより製造する方法
(iv)前記香料化合物と前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の無水物とを反応させることにより製造する方法
これらの中でも、製造効率の観点から、(iii)の前記香料化合物と前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物とを反応させて製造する方法が好ましい。
【0041】
(酸ハロゲン化物)
前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物は、例えば、前記脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸と、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン及び三臭化リン等の各種ハロゲン化試薬との反応で得ることができる。
これらの中でも、反応性の観点、試薬の入手容易性の観点から、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸と三塩化リンとの反応で得られる酸ハロゲン化物が好ましく、具体的には、脂肪族モノカルボン酸の酸クロリドが好ましい。
【0042】
(香料化合物の仕込み量)
(B)成分を製造する際の前記香料化合物の仕込み量は、反応を速やかに進行させると共に未反応の脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の量を低減させる観点から、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物1モルに対し、好ましくは0.9モル以上、より好ましくは0.95モル以上、更に好ましくは0.98モル以上であり、未反応の香料化合物の量を低減させる観点から、好ましくは1.1モル以下、より好ましくは1.05モル以下、更に好ましくは1.02モル以下である。
【0043】
(溶媒)
(B)成分の製造に用いる溶媒としては、特に制限はなく、例えば、クロロホルム及びジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、酢酸エチル、及び酢酸イソプロピル等の脂肪族エステル、ベンゼン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼン等の芳香族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、及びテトラリン等の脂環式炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びオクタン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。
これらの中でも、前記香料化合物、前記脂肪族モノカルボン酸及び前記脂肪族ジカルボン酸の溶解性の観点から、ハロゲン化炭化水素、脂肪族エステル、及び芳香族炭化水素から選ばれる1種以上が好ましく、ジクロロメタン、酢酸エチル、及びトルエンから選ばれる1種以上がより好ましい。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(反応温度)
(B)成分を製造する際の反応温度は、原料をロスすることなく反応を行う観点から、香料化合物、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の、全ての化合物の沸点以下が好ましい。具体的な反応温度は、反応速度を向上させる観点から、好ましくは−20℃以上、より好ましくは−18℃以上、更に好ましくは−15℃以上、より更に好ましくは−12℃以上である。また、反応を制御する観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下、より更に好ましくは20℃以下である。
本発明においては、前記温度範囲で反応を行った後、十分に反応を進行させる観点から、所定の温度、時間で撹拌を行うことが好ましい。撹拌する際の温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下、より更に好ましくは60℃以下、より更に好ましく50℃以下である。
撹拌は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは0.8時間以上であり、そして、好ましくは4時間以下、より好ましくは3時間以下、更に好ましくは1.5時間以下行う。
【0045】
(反応圧力)
(B)成分の製造は、大気圧又は減圧下で行うことができ、簡易な設備で製造することができる観点から、大気圧下で製造することが好ましい。
(B)成分を製造する際の具体的な圧力は、好ましくは80kPa以上、より好ましくは90kPa以上、更に好ましくは95kPa以上であり、そして、好ましくは101kPa以下である。
また、(B)成分の製造は、副反応を抑制する観点、反応系中に水が混入するのを抑制する観点から、不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられ、これらの中でも、コストを抑えて製造する観点から、窒素が好ましい。
【0046】
(塩基性物質)
前記(B)成分の製造方法においては、反応を効率的に行う観点から、塩基性物質を用いることが好ましい。
前記塩基性物質としては、トリエチルアミン、及びトリブチルアミン等の脂肪族アミン、ピリジン、及びピコリン等の芳香族アミンや、DBU(ジアザビシクロウンデセン)を挙げることができる。これらの中でも、入手容易性の観点、取り扱い性の観点から、脂肪族アミンが好ましく、トリエチルアミンがより好ましい。
前記塩基性化合物の使用量は、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物1モルに対して、好ましくは1モル以上、より好ましくは1.01モル以上、更に好ましくは1.02モル以上、更に好ましくは1.04モル以上であり、そして、使用量とコストのバランスから、好ましくは1.2モル以下、より好ましくは1.15モル以下、更に好ましくは1.1モル以下、より更に好ましくは1.06モル以下である。
【0047】
<(A)成分、(B)成分の含有量>
本発明の液体柔軟剤組成物において、(A)成分の含有量は、十分な柔軟効果を得る観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更により好ましくは3質量%以上であり、そして、保存安定性の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは16質量%以下、更に好ましくは14質量%以下、より更に好ましくは12質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下である。
【0048】
また、本発明の液体柔軟剤組成物において、(B)成分の香料前駆体の含有量は、香りの持続性を向上させる観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上であり、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.7質量%以下である。
【0049】
本発明の液体柔軟剤組成物は水を含有する。水は、脱イオン水、脱イオン水に次亜塩素酸塩を少量配合した滅菌した水、水道水等を用いることができる。
【0050】
<液体柔軟剤組成物の30℃におけるpH>
本発明の液体柔軟剤組成物の30℃におけるpHは、2.5以上5.0以下であり、液体柔軟剤組成物による処理後の繊維製品の発香性及び残香性の観点、及び保存安定性の観点から、好ましくは2.5以上、より好ましくは2.7以上、更に好ましくは2.9以上、そして、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.0以下、更により好ましくは3.5以下である。
【0051】
pHは、「JIS K 3362;2008の項目8.3に従って30℃において測定する。pHは、アルカリ剤や後述する酸剤等のpH調整剤により調整することができる。
【0052】
<液体柔軟剤組成物の30℃における粘度>
本発明の液体柔軟剤組成物の30℃における粘度は、使用勝手の点で、好ましくは5mPa・s以上、より好ましくは8mPa・s以上、更に好ましくは10mPa・s以上であり、そして、好ましくは150mPa・s以下、より好ましくは130mPa・s以下、更に好ましくは110mPa・s以下である。液体柔軟剤組成物の粘度は、B型粘度計を用いて、No.1〜No.3ローターのいずれかのローターを用い、60r/minで、測定開始から1分後の指示値である。液体柔軟剤組成物は30±1℃に調温して測定する。粘度計の測定領域が2つのローターで得られた場合であって、換算した粘度が異なる場合は、ローター番号の小さい方のデータを採用する。
【0053】
本発明の液体柔軟剤組成物は、更に以下に示す成分を含有することが好ましい。
<(C)成分:香料化合物>
本発明の液体柔軟剤組成物は、(C)成分として、香料化合物を含有してもよい。
(C)成分の香料化合物とは、(B)成分の香料前駆体として結合を形成している香料化合物及び後述の(N)成分の徐放性香料又はカプセル香料に用いられる香料化合物以外の香料化合物を意味する。
したがって、(B)成分の原料として用いた香料化合物と同じ香料化合物であっても、(B)成分の香料前駆体として結合を形成していない香料化合物は(C)成分として扱う。つまり、(C)成分の香料化合物は液体柔軟剤組成物中に分散させた香料化合物であり、これらの香料化合物を外香料という場合がある。
【0054】
(C)成分として用いることができる香料化合物に特に制限はなく、(B)成分の原料として用いられる香料化合物と同じ香料化合物を用いてもよい。
(C)成分として用いることができる香料化合物としては、例えば「香料と調香の基礎知識、中島基貴 編著、産業図書株式会社発行、2005年4月20日 第4刷」に記載の香料化合物や特許文献等を通じて柔軟剤に配合することが知られている香料化合物の他に、香料メーカーが独自に調製した香料成分又は調香した香料組成物を使用することができる。
例えば、β−イオノン(3.7)、γ−ウンデカラクトン(3.8)、γ−ノナラクトン(2.8)、γ−メチルイオノン(4.0)、アンブロキサン(5.3)、イソEスーパー(4.7)、エチルバニリン(1.8)、エチレンブラッシレート(4.6)、オイゲノール(3.0)、カシュメラン(IFF社製)(4.0)、クマリン(1.5)、ゲラニオール(2.4)、酢酸o,t−ブチルシクロヘキシル(4.1)、酢酸シトロネリル(4.2)、酢酸ジメチルベンジルカルビニル(2.8)、サンダルマイソールコア(3.9)、ジヒドロジャスモン酸メチル(2.4)、ジヒドロミルセノール(3.0)、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド(2.9)、ジャバノール(ジボダン製)(4.7)、ネロリンヤラヤラ(3.2)、ハバノライド(フィルメニッヒ製)(6.2)、フルーテート(花王株式会社)(3.4)、ペオニル(ジボダン製)(4.0)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(4.9)、ヘリオトロピン(1.1)、メチルβ−ナフチルケトン(2.8)、メチルアンスラニレート(2.0)、ラズベリーケトン(1.1)、リモネン(4.4)、及びリリアール(3.9)を挙げることができる。なお( )内の数値はlogP値である。
【0055】
なお、本発明の液体柔軟剤組成物は、香料化合物の希釈剤や保留剤を含有してもよい。希釈剤及び保留剤としては、ジプロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピルエステル、ジエチルフタレート、ペンジルベンゾエート、流動パラフィン、イソパラフィン、及び油脂等を挙げることができる。
希釈剤及び保留剤を用いる場合、(C)成分と希釈剤及び保留剤との合計に対する希釈剤及び保留剤の量は、好ましくは0質量%以上20質量%以下である。
【0056】
(C)成分は、(B)成分と併用することで、従来よりも自由度の高い香料設計が可能となる。したがって(C)成分を併用した本発明の液体柔軟剤組成物を繊維製品に処理を施した場合、例えば、フレッシュ且つリッチな香りを付与することができる。
【0057】
本発明の液体柔軟剤組成物が(C)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、保存安定性及び他の香料添加剤とのバランスの観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.8質量%以下、更により好ましくは1.5質量%以下である。なお、液体柔軟剤組成物中の(C)成分は、製品に合わせてその含有量を調整することができる。
【0058】
また、本発明の液体柔軟剤組成物が(C)成分を含有する場合において、(B)成分及び(C)成分の合計の含有量は、繊維製品に対して十分に賦香する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、保存安定性及び他の香料添加剤とのバランスの観点から、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。
なお、前記合計の含有量における(B)成分の質量は、(B)成分の香料前駆体を構成する香料化合物の質量にて計算する。
【0059】
<(D)成分:(A)成分以外の陽イオン性界面活性剤>
本発明においては、(D)成分として(A)成分以外の陽イオン性界面活性剤を含有してもよい。
(D)成分は、環状以外の炭素数8以上22以下の炭化水素基を1つ以上有するアミン化合物又は4級アンモニウム塩化合物が好ましい。
アミン化合物は(A)成分の調製時に残留する4級化されなかった未反応のアミン化合物であってもよい。
更に優れた柔軟性を与え且つ(A)成分の不飽和脂肪酸臭を抑制する観点から、(D)成分は、前記一般式(1)で示される4級アンモニウム化合物であって、アシル基を構成する脂肪酸組成が異なる以外は、同様にして得られる4級アンモニウム塩化合物が好ましい。具体的には、下記一般式(D1)で表される4級アンモニウム塩化合物であって、アシル基を脂肪酸と見做した場合に、不飽和脂肪酸の割合が、アシル基を構成している全脂肪酸の50質量%以下、更に40質量%以下である4級アンモニウム塩化合物が好ましい。該4級アンモニウム塩化合物の不飽和脂肪酸の割合の下限値は、アシル基を構成している全脂肪酸の10質量%以上であってよい。
【0061】
〔式中、R
1d、R
2d、R
3dは、それぞれ独立して、炭素数16以上22以下の脂肪酸からOHを除いた残基(アシル基という)、又は水素原子であり、ただし、R
1d、R
2d、R
3dの少なくとも1つは、アシル基であり、R
4dは炭素数1以上3以下のアルキル基であり、X
−は陰イオンである。〕
【0062】
R
1d、R
2d、R
3dのアシル基を構成する脂肪酸は、牛脂、パーム油、ヒマワリ油、大豆油、ナタネ油、サフラワー油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油から選ばれる油脂をケン化して得られる脂肪酸組成のものが好適であり、特に柔軟性能の点から牛脂、パーム油及びヒマワリ油から得られる脂肪酸組成のものが良好である。また、これらは炭素−炭素不飽和結合を2つ以上有するアルケニル基を多量に含有するため、例えば特開平4−306296号公報に記載されているような晶析や、特開平6−41578号公報に記載されているようにメチルエステルを減圧蒸留する方法、あるいは特開平8−99036号公報に記載の選択水素化反応を行うことで炭素−炭素不飽和結合を2つ以上含有する脂肪酸の割合を制御する方法などにより製造することができる。例えば硬化牛脂は牛脂由来の脂肪酸を水素添加により飽和にしたものであり、一部を硬化させたものとして半硬化という表現をする場合もある。
【0063】
その他の(D)成分の具体例としては、液体柔軟剤組成物の保存安定性を高める窒素原子に結合する基のうち、1つ又は2つが炭素数10以上22以下のアルキル基又はアルケニル基であり、残りがヒドロキシ基を有していてもよい炭素数1以上4以下のアルキル基、ベンジル基、好ましくはメチル基である第3級アミン化合物及びその酸塩、並びに前記第3級アミン化合物の4級化物が挙げられる。これらの中でも、液体柔軟剤組成物に殺菌効果を付与する観点から、炭素数10以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を1つ有し、ベンジル基を1つ有する陽イオン性界面活性剤が好ましい。
前記化合物の4級化に用いるアルキル化剤としては、(A)成分において記載した化合物を用いることができる。
【0064】
(D)成分としては、下記(I)〜(III)から選ばれる1種以上の陽イオン性界面活性剤が挙げられる。
(I)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上22以下のジ長鎖アルキル又はアルケニルジメチルアンモニウム塩
(II)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上22以下のモノ長鎖アルキル又はアルケニルトリメチルアンモニウム塩
(III)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上22以下のモノ長鎖アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩
具体的には塩化ジデシルジメチルアンモニウム塩、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム塩、塩化ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、及び塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩を挙げることができる。
【0065】
本発明の液体柔軟剤組成物が(D)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更により好ましくは2質量%以上であり、そして、保存安定性の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更により好ましくは16質量%以下、より更に好ましくは14質量%以下である。
更には、本発明の液体柔軟剤組成物は、(A)成分及び(D)成分を合計で、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更により好ましくは18質量%以下含有する。
【0066】
また本発明の液体柔軟剤組成物は、(D)成分を併用する場合、更には前記一般式(D1)で示される4級アンモニウム塩化合物を併用する場合は、(D)成分に対する(A)成分の割合、すなわち(A)/(D)が質量比で好ましくは0.05以上、より好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.1以上、よりさらに好ましくは0.5以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下より更に好ましくは5以下である。
【0067】
<(E)成分:非イオン性界面活性剤>
本発明の液体柔軟剤組成物は、(E)成分として、非イオン性界面活性剤を含有してもよい。ただし、後述する(F)成分は(E)成分から除くものとする。
【0068】
(E)成分としては、炭素数8以上20以下のアルキル基又はアルケニル基とオキシアルキレン基とを有する非イオン性界面活性剤が好ましく、下記一般式(E1)で表される非イオン性界面活性剤がより好ましい。
R
1e−A−〔(R
2eO)
x−R
3e〕
y (E1)
〔式中、R
1eは、炭素数8以上、好ましくは10以上であり、そして、18以下、好ましくは16以下のアルキル基又はアルケニル基であり、R
2eは、炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、R
3eは、炭素数1以上3以下のアルキル基又は水素原子であり、xは2以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であり、そして、100以下、好ましくは80以下、より好ましくは60以下の数であり、Aは−O−、−COO−、−CON<又は−N<であり、Aが−O−又は−COO−の場合yは1であり、Aが−CON<又は−N<の場合yは2である。〕
【0069】
一般式(E1)の化合物の具体例としては、以下の式(E1−1)〜(E1−3)で表される化合物を挙げることができる。
R
1e−O−(C
2H
4O)
k−H (E1−1)
〔式中、R
1eは前記R
1eと同義である。kは8以上、好ましくは10以上、そして、100以下、好ましくは60以下の数である。〕
R
1e−O−[(C
2H
4O)
s/(C
3H
6O)
t]−H (E1−2)
〔式中、R
1eは前記R
1eと同義である。s及びtはそれぞれ独立に2以上、好ましくは5以上であり、そして、40以下の数であり、(C
2H
4O)と(C
3H
6O)はランダム又はブロック付加体であってもよい。「/」は(C
2H
4O)と(C
3H
6O)の結合順序を問わないことを示す符号である。〕
【0071】
(式中、R
1e及びR
3eは前記の意味を示す。Aは −N< 又は −CON< であり、u及びvはそれぞれ独立に0以上40以下の数であり、u+vは5以上60以下、好ましくは40以下の数である。)
【0072】
本発明では、(E)成分として、一般式(E1−1)で表される非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
(E)成分は、液体柔軟剤組成物の粘度を低下させることができることから、液体柔軟剤組成物の各成分の混合から充填までの製造を容易にすることができ、更に、液体柔軟剤組成物中における(B)成分及び(C)成分の安定性を向上させることができる。
【0073】
本発明の液体柔軟剤組成物が(E)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、そして、液体柔軟剤組成物の長期保存後の増粘を抑制する観点から、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0074】
<(F)成分:多価アルコールと脂肪酸とのエステル>
本発明の液体柔軟剤組成物は、保存安定性を改善する観点から(F)成分として、多価アルコールと脂肪酸とのエステルを含有してもよい。
多価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、炭素数3以上6以下であり、かつ3価以上6価以下の多価アルコールと、炭素数12以上22以下の脂肪酸とのエステル化合物が好ましい。
より具体的には、炭素数が好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、そして、好ましくは6以下であり、かつ、好ましくは3価以上、より好ましくは4価以上であり、そして、好ましくは6価以下である多価アルコールと、炭素数が好ましくは12以上、より好ましくは14以上、更に好ましくは16以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下の脂肪酸とのエステル化合物である。
【0075】
(F)成分を構成する多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−ペンタトリオール、エリスリトール、アラビトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール、キシリトール及びマンニトールから選ばれる1種以上が好ましく、ペンタエリスリトール及びソルビタンから選ばれる1種以上がより好ましい。
(F)成分を構成する脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、及びリノレン酸等の不飽和脂肪酸、パーム油脂肪酸、及び硬化パーム油脂肪酸の植物油由来の脂肪酸、牛脂脂肪酸及び硬化牛脂脂肪酸等の動物油由来の脂肪酸から選ばれる1種以上が好ましく、飽和脂肪酸、植物油由来の脂肪酸、及び動物油由来の脂肪酸から選ばれる1種以上がより好ましく、ステアリン酸、硬化パーム油脂肪酸、及び硬化牛脂脂肪酸から選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0076】
本発明における(F)成分としては、ペンタエリスリトールと炭素数16以上22以下の脂肪酸とのエステル化合物(以下、「ペンタエリスリトール脂肪酸エステル」ともいう)、及びソルビタンと炭素数16以上22以下の脂肪酸とのエステル化合物(以下、「ソルビタン脂肪酸エステル」ともいう)から選ばれる1種以上が好ましい。
【0077】
本発明の液体柔軟剤組成物が(F)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは0.7質量%以上であり、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下が好ましい。
【0078】
<(G)成分:両性界面活性剤>
本発明の液体柔軟剤組成物は、(G)成分として、両性界面活性剤を含有することができる。
(G)成分としては、一般的に液体柔軟剤組成物に配合することができるものであれば特に制限はなく、例えば、アルキル(炭素数12以上22以下)アミドプロピルカルボベタイン、アルキル(炭素数12以上22以下)アミドプロピルスルホベタイン、アルキル(炭素数12以上22以下)カルボベタイン、アルキル(炭素数12以上22以下)スルホベタイン、アルキル(炭素数10以上18以下)ジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
【0079】
本発明の液体柔軟剤組成物が(G)成分を含有する場合、その含有量は、液体柔軟剤組成物の粘度を低下させる観点、及び殺菌性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、そして、保存安定性や柔軟効果の低下を抑制する観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。
【0080】
<(H)成分:無機塩>
本発明の液体柔軟剤組成物は、保存安定性を向上させる観点から(H)成分として、無機塩を含有することができる。
無機塩としては、保存安定性を向上させる観点から、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムから選ばれる1種以上が好ましい。
本発明の液体柔軟剤組成物が(H)成分を含有する場合、その含有量は、液体柔軟剤組成物の保存安定性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、そして、(B)成分の凝集を防ぐ観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0081】
<(I)成分:シリコーン化合物>
本発明の液体柔軟剤組成物は、(I)成分として、シリコーン化合物、更に、水不溶性のシリコーン化合物を含有してもよい。本明細書における(I)成分の「水不溶性」とは、20℃のイオン交換水1Lに溶解するシリコーン化合物の量が1g以下であることをいう。
(I)成分の具体例としては、ジメチルポリシロキサン、4級アンモニウム変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、エポキシ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシ変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、及びフッ素変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン化合物が挙げられる。
【0082】
(I)成分としては、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、及びポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン、好ましくはポリオキシエチレン)変性ジメチルポリシロキサンから選ばれる1種以上が好ましい。これらのシリコーン化合物の重量平均分子量は、好ましくは千以上、より好ましくは3千以上、更に好ましくは5千以上であり、そして、好ましくは100万以下である。また、これらのシリコーン化合物の25℃における粘度が好ましくは2mm
2/s以上、より好ましくは500mm
2/s以上、更に好ましくは1千mm
2/s以上であり、そして、好ましくは100万mm
2/s以下である。
なお、(I)成分における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
【0083】
アミノ変性ジメチルポリシロキサンのアミノ当量(アミノ当量とは窒素原子1個当たりの分子量)は、好ましくは1,500g/mol以上、より好ましくは2,500g/mol以上、更に好ましくは3,000g/mol以上であり、そして、好ましくは40,000g/mol以下、より好ましくは20,000g/mol以下、更に好ましくは10,000g/mol以下である。
【0084】
本発明の液体柔軟剤組成物が(I)成分を含有する場合、(I)成分に対する(A)成分の質量比[(A)成分/(I)成分]は、好ましくは1/10以上、より好ましくは1/5以上、更に好ましくは1/3以上であり、そして、好ましくは60/1以下、より好ましくは50/1以下である。
【0085】
本発明の液体柔軟剤組成物が(I)成分を含有する場合、その含有量は、繊維製品の仕上り感として、さっぱり感を与える観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、そして、分散性の観点から、好ましくは5質量%以下である。
【0086】
<(J)成分:酸剤>
本発明の液体柔軟剤組成物は、液体柔軟剤組成物のpHを調整する観点から、(J)成分として酸剤を含有することができる。
酸剤としては、無機酸及び有機酸が挙げられ、無機酸の具体例としては、塩酸、及び硫酸が挙げられる。有機酸の具体例としては、炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸、又は炭素数1以上20以下の1価又は多価のスルホン酸、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸が挙げられる。より具体的には、メチル硫酸、エチル硫酸、p−トルエンスルホン酸、(o−、m−、p−)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、エチレンジアミン4酢酸、クエン酸、安息香酸、及びサリチル酸が挙げられる。
これらの中でも、炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸が好ましく、クエン酸がより好ましい。
本発明の液体柔軟剤組成物が酸剤を含有する場合、その含有量は、(A)成分の種類や量によって適宜調整することができ、pHが前記範囲になる範囲であって、保存安定性を損なわない程度が好ましい。
【0087】
<(K)成分:脂肪酸>
本発明の液体柔軟剤組成物は、柔軟効果を向上させる観点から、(J)成分としての脂肪酸の他に、(K)成分として、脂肪酸を含有してもよい。
脂肪酸は、(A)成分の合成時の未反応物や、(A)成分の分解物として含有してもよい。
脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、及びベヘニン酸等の炭素数12以上22以下の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸から選ばれる脂肪酸がより好ましい。
【0088】
<(L)成分:水溶性有機溶剤>
本発明の液体柔軟剤組成物は、保存安定性や粘度の観点から(L)成分として、水溶性有機溶剤を含有することができる。
水溶性有機溶剤としては、液体柔軟剤組成物に用いられる一般的な水溶性有機溶剤が挙げられる。なお、(L)成分における「水溶性有機溶剤」とは、20℃の脱イオン水100gに対して20g以上溶解する有機溶剤をいう。
水溶性有機溶剤の具体例としては、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、モノエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、イソプロパノール、及びエタノール等を挙げることができる。これらの中でも、エチレングリコール、エタノールが好ましい。
【0089】
本発明の液体柔軟剤組成物が他の成分によって、十分に安定化され粘度が低い場合は、(L)成分である水溶性有機溶剤を含有しなくてもよい。
本発明の液体柔軟剤組成物が(L)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0090】
<(M)成分:キレート剤>
本発明の液体柔軟剤組成物は、液体柔軟剤組成物の長期保存時の色相変化や染料の褪色及び香りの変質を抑制する観点から、(M)成分として、キレート剤を用いることが好ましい。なお、本発明における(M)成分は前記酸剤としての機能も有する。
キレート剤の具体例としては、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、L−グルタミン酸−N,N−二酢酸、N−2−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、クエン酸、コハク酸、及びそれらの塩が挙げられる。
塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。
本発明の液体柔軟剤組成物が(M)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上であり、そして、好ましくは2質量%以下、より好ましく1.5質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。なお、(J)成分の酸剤として(M)成分に該当する成分が用いられた場合、その量は(M)成分の量として取り扱うものとする。
【0091】
<(N)成分:徐放性香料又はカプセル香料>
また本発明の液体柔軟剤組成物には、(C)成分以外に、徐放性香料として特開2014−125685号公報記載のケイ酸エステル化合物や、カプセル香料として特開2015−200047号公報記載のマイクロカプセル香料を用いることができる。本発明の液体柔軟剤組成物において(N)成分を用いる場合は、各香料成分の特徴にあった調合により使用する。
【0092】
<(O)成分:その他の成分>
本発明の液体柔軟剤組成物においては、基材の劣化を抑制する観点から、BTH等の酸化防止剤を用いることができ、また、審美や長期保存時の着色を防ぐ観点から、液体柔軟剤組成物において一般的に用いられる染料及び顔料を用いることもできる。更に、プロキセルの商品名で市販されている防菌、防黴剤を用いることもできる。
【0093】
本発明の液体柔軟剤組成物は、繊維製品用として好適であり、繊維製品としては、衣料、布帛、寝具、タオル等が挙げられる。
【実施例】
【0094】
実施例で使用した成分を以下に示す。
【0095】
<(A)成分>
(a−1):下記合成例a−1で製造された4級アンモニウム塩化合物
〔合成例a−1:(a−1)の製造〕
トリエタノールアミンとRCOOHで表される脂肪酸(組成は後述の通り)とを、反応モル比(脂肪酸/トリエタノールアミン)が1.87/1で、エステル化反応させ、一般式(1)で表される化合物の前駆体であるアミン化合物を含むエステル化反応物を得た。
エステル化反応物中には、未反応の脂肪酸が1質量%含まれていた。エステル化反応物中のアミン化合物のアミンに対して、メチル基が0.96等量となるように、ジメチル硫酸で4級化反応を行った後、エタノールを添加した。
【0096】
得られた反応物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた反応物は、(A)成分である(a−1)成分を66質量%、エタノール15質量%、未反応アミン塩(メチル硫酸塩として)17質量%、未反応脂肪酸1質量%、微量のトリエタノールアミン4級化物及びその他微量成分を含み、このうち一般式(1)において、R
1がアシル基であり、R
2及びR
3が水素原子であり、R
4がメチル基であって、X
−がメチル硫酸である化合物[以下(a1−1)という場合がある]が(a−1)成分中22質量%、一般式(1)において、R
1及びR
2がアシル基であり、R
3が水素原子であり、R
4がメチル基であって、X
−がメチル硫酸である化合物[以下(a2−1)という場合がある]が(a−1)成分中58質量%、一般式(1)において、R
1、R
2及びR
3がアシル基であり、R
4がメチル基であって、X
−がメチル硫酸である化合物[以下(a3−1)という場合がある]が(a−1)成分中20質量%であった。また4級化率は80質量%であった。
【0097】
なお(a−1)を製造するための反応に用いたRCOOHの組成を以下に示す。
オレイン酸:80質量%
リノール酸:10質量%
リノレン酸:2質量%
ステアリン酸:2質量%
パルミチン酸:6質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。
なお、表2中の数値は(a−1)成分濃度に換算している。
【0098】
<(B)成分>
(b−1):下記合成例b−1で製造されたラウリン酸とエチルバニリンとのエステル
〔合成例b−1:ラウリン酸とエチルバニリンとのエステルの製造〕
窒素雰囲気下、300mLの四つ口フラスコに、ラウリン酸クロリド8.95g(0.041mol)、ジクロロメタン40mLを入れ、0℃に冷却した。一方、100mLの滴下ロートに、エチルバニリン6.80g(0.041mol)、トリエチルアミン4.35g(0.043mol)、ジクロロメタン40mLを入れた。滴下ロートより反応温度が−5℃〜0℃に保たれるようフラスコに40分かけて滴下を行った。滴下終了後、室温(25℃)で2時間撹拌を行った。フラスコに飽和塩化アンモニウム水溶液10mLを添加し、反応を停止した。ジエチルエーテル150mLを添加し、生成した白色固体をろ過で除去し、ろ液を分液ロートに移した。分液ロートにイオン交換水100mLを添加し、ジエチルエーテル50mLで水層から3回抽出を行った。抽出溶液を集め、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで溶液を乾燥した。溶媒を減圧除去後、淡黄色固体のラウリン酸とエチルバニリンとのエステル14.20g(収率99%)を得た。
【0099】
以下にNMR及びIRの測定結果を示す。
NMR(1H、400MHz)
0.88(t、J=7Hz、3H)、1.20〜1.50(m、19H)、1.78(quint.、J=7Hz、2H)、2.59(t、J=7Hz、2H)、4.13(t、J=7Hz、2H)、7.20(d、J=8Hz、1H)、7.46(d、J=8Hz、2H)、9.93(s、1H)
IR(KBr):2918、2850、1763、1693、1273、1115、742cm
−1
【0100】
(b−2):下記合成例b−2で製造されたラウリン酸とエチルマルトールとのエステル
〔合成例b−2:ラウリン酸とエチルマルトールとのエステルの製造〕
窒素雰囲気下、300mLの四つ口フラスコに、ラウリン酸クロリド10.00g(0.046mol)、ジクロロメタン45mLを入れ、0℃に冷却した。一方、100mLの滴下ロートに、エチルマルトール6.41g(0.046mol)、トリエチルアミン4.86g(0.048mol)、ジクロロメタン45mLを入れた。滴下ロートより反応温度が−5℃〜0℃に保たれるようフラスコに30分かけて滴下を行った。滴下終了後、室温(25℃)で1時間撹拌を行った。フラスコに飽和塩化アンモニウム水溶液10mLを添加し、反応を停止した。ジエチルエーテル150mLを添加し、生成した白色固体をろ過で除去し、ろ液を分液ロートに移した。分液ロートにイオン交換水100mLを添加し、ジエチルエーテル50mLで水層から3回抽出を行った。抽出溶液を集め、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで溶液を乾燥した。溶媒を減圧除去後、淡黄色固体のラウリン酸とエチルマルトールとのエステル14.74g(収率100%)を得た。
【0101】
以下にNMR及びIRの測定結果を示す。
NMR(1H、400MHz)
0.88(t、J=7Hz、3H)、1.20〜1.45(m、21H)、1.75(quint.、J=7Hz、2H)、2.59(m、4H)、6.39(d、J=6Hz、1H)、7.69(d、J=6Hz、1H)
IR(KBr):2923、2854、1768、1658、1160、1133、1106、825cm
−1
【0102】
<(C)成分>
(c−1):表1記載の香料
【0103】
【表1】
【0104】
<(D)成分>
(d−1):下記合成例d−1で製造された4級アンモニウム塩化合物
〔合成例d−1:(d−1)の製造〕
(D)成分として一般式(D1)で示される4級アンモニウム塩化合物であってアシル基を構成する脂肪酸組成が(A)成分と異なる4級アンモニウム塩化合物を調製した。すなわちトリエタノールアミンとRCOOHで表される脂肪酸(組成は後述の通り)を、反応モル比(脂肪酸/トリエタノールアミン)が1.65/1で、エステル化反応させ、一般式(D1)で表されるアミン化合物を含むエステル化反応物を得た。
エステル化反応物中には、未反応の脂肪酸が5質量%含まれていた。エステル化反応物中のアミン化合物のアミンに対して、メチル基が0.96等量となるように、ジメチル硫酸で4級化反応を行った後、エタノールを添加した。以上の様にして(D)成分である一般式(D1)で示される4級アンモニウム塩化合物のうち、(A)成分とアシル基の脂肪酸組成の異なる4級アンモニウム塩化合物[以下(d−1)という]を含有する反応物を調製した。
得られた反応物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた反応物は、一般式(D1)で示され(A)成分とアシル基の脂肪酸組成の異なる化合物である(d−1)成分を75質量%、エタノール10質量%、未反応アミン(メチル硫酸塩として)12質量%、未反応脂肪酸2%、微量のトリエタノールアミン4級化物及びその他微量成分を含み、(d−1)成分のうち一般式(D1)において、R
1dがアシル基であり、R
2d及びR
3dが水素原子であり、R
4dがメチル基であって、X
−がメチル硫酸である化合物[以下(d1−1)という場合がある]が(d−1)成分中28量%、一般式(D1)において、R
1d及びR
2dがアシル基であり、R
3dが水素原子であり、R
4dがメチル基であって、X
−がメチル硫酸である化合物[以下(d2−1)という場合がある]が(d−1)成分中56質量%、一般式(D1)において、R
1d、R
2d及びR
3dがアシル基であり、R
4dがメチル基であって、X
−がメチル硫酸である化合物[以下(d3−1)という場合がある]が(d−1)成分中16質量%であった。また4級化率は80質量%であった。
【0105】
なお(d−1)を製造するための反応に用いたRCOOHの組成を以下に示す。
パルミチン酸:45質量%
ステアリン酸:25質量%
オレイン酸:27質量%
リノール酸:3質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。
なお、表2中の数値は(d−1)成分濃度に換算している。
【0106】
(d−2):(a−1)及び/又は(d−1)に含まれるアミン化合物(トリエタノールアミン・メチル硫酸塩)
【0107】
<(E)成分>
(e−1):ラウリルアルコールにエチレンオキサイドを平均29モル付加させた化合物、すなわち、一般式(E1−1)においてR
1eが直鎖の炭素数12のアルキル基であって酸素原子と結合するR
1eの炭素原子が第1級炭素原子であり、kが29である非イオン性界面活性剤
【0108】
<(H)成分>
(h−1)成分:塩化カルシウム
<(M)成分>
(m−1)成分:メチルグリシン二酢酸3ナトリウム
【0109】
<(N)成分>
(n−1)成分:Si(O−Geranyl)
4
なお、(n−1)成分における「Geranyl」は、ゲラニオール(1級アリルアルコール性香料、logP2.4)から水酸基を1個除いた基を表す。
(n−2)成分:Si(O−Rasp)(O−Folrosia)
3
なお、(n−2)成分における「Rasp」は、ラズベリーケトン(フェノール性香料、logP1.1)からフェノール性水酸基を1個除いた基を表し、「Folrosia」は、フォルロージア(4−イソプロピルシクロヘキサノール、2級アルコール性香料、logP2.7)から水酸基を1個除いた基を、それぞれ表す。
【0110】
前記(n−1)成分及び前記(n−2)成分については、下記合成例n−1、合成例n−2により合成した。
(合成例n−1:Si(O−Geranyl)
4の合成)
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン27.08g(0.13mol)、ゲラニオール72.30g(0.47mol)及び2.8質量%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.485mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら110〜120℃で2時間撹拌した。
2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら117〜120℃でさらに4時間撹拌した。4時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ゲラニオールのケイ酸エステル香料前駆体を含む76.92gの黄色油状物を得た。
【0111】
(合成例n−2:Si(O−Rasp)(O−Folrosia)
3の合成)
500mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン83.32g(0.40mol)、ラズベリーケトン59.11g(0.44mol)、フォルロージア153.062g(1.08mol)及び5.275質量%ナトリウムエトキシドエタノール溶液0.50gを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら150℃で約2時間撹拌を行った。
2時間後、槽内の圧力を徐々に4kPaまで下げ、エタノールを留出させながら150℃でさらに15時間撹拌した。その後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ラズベリーケトンとフォルロージアのモル比1:3のケイ酸エステル化合物を含む202.63gの黄色油状物を得た。
【0112】
<(O)成分>
(o−1)成分:プロキセルBDN(アーチ・ケミカル・ジャパン社製)
<pH調整剤>
液体柔軟剤組成物のpHを調整するため、必要に応じて適宜、水酸化ナトリウム又は(J)成分であるクエン酸、塩酸を使用した。
【0113】
〔実施例1〜7及び比較例1〜3〕
(1)液体柔軟剤組成物の製造
表2に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、液体柔軟剤組成物を調製した。具体的には、以下の通りである。なお、表中の組成の質量%は、有効分の質量%である。
【0114】
300mLビーカーに、液体柔軟剤組成物のできあがり量が200gとなるのに必要な量の80質量%に相当する量のイオン交換水と、(E)成分、(M)成分、(O)成分、及びpH調整剤とを入れ、ウォーターバスを用いてイオン交換水の温度を60±2℃に調温した。(E)成分がイオン交換水中に均一に溶解するように、必要に応じて撹拌羽根を用いて撹拌することにより混合液を得た。なお、撹拌羽根としては、直径が5mmの撹拌棒の回転中心軸を基準として、長辺が90度方向になるように配置された撹拌羽根であって、羽根の数3枚、羽根の長辺/短辺=3cm/1.5cm、回転面に対して45度の角度で羽根が設置されたものを用いた。
【0115】
60±2℃の温度に調温した混合液を、前記撹拌羽根で撹拌(300r/m)した。これに、(A)成分、(B)成分と共に65℃で加熱溶解させた(D)成分を3分間掛けて投入し投入終了後、15分間撹拌した。
次に、5℃のウォーターバスを用いて、混合液の温度が30±2℃になるまで冷却した。これに、(C)成分、(N)成分、(H)成分を順次投入し、5分間撹拌した。更に、できあがり質量(200g)となるようにイオン交換水を加え、5分間撹拌して液体柔軟剤組成物を得た。
【0116】
得られた液体柔軟剤組成物について可視光透過率を測定した。具体的には、測定セルとして光路長10mmのガラスセルを使用し、対照セルにイオン交換水を入れ、紫外可視分光光度計(島津製作所製のUV−2500PC)を用いて測定した。実施例及び比較例で得られた液体柔軟剤組成物の可視光線透過率(波長660nm)は、全て10%未満であり、乳濁型液体柔軟剤組成物であった。また、前記の方法で液体柔軟剤組成物の粘度を測定した結果を表2に示した。
【0117】
(2)評価
あらかじめ、市販の弱アルカリ性洗剤(花王株式会社、アタック)を用いて、グンゼ株式会社製の肌着17枚を、株式会社日立製作所製全自動洗濯機NW−6CYで5回洗浄を繰り返し、室内乾燥することによって過分の薬剤を除去した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水47L、水温20℃、洗浄10分、ためすすぎ2回、脱水6分)。
【0118】
パナソニック株式会社製電気バケツN−BK2−Aに、4Lの水道水を注入し、液体柔軟剤組成物を10g/肌着1.5kgになるように分散させ、さらに上述の方法で洗濯した肌着1枚を入れて、5分間撹拌した。その後、液体柔軟剤組成物で仕上げた肌着を株式会社日立製作所製二槽式洗濯機の脱水槽で3分脱水を行ってから、24時間乾燥した。1つの液体柔軟剤組成物につき、この操作を別々に4回行い、液体柔軟剤組成物で仕上げた肌着を4枚ずつ用意した。
なお、実施例の液体柔軟剤組成物で処理された肌着は十分な柔軟性を有していた。
【0119】
準備した肌着のうち1枚を畳んで、20℃/60%RHの部屋に7日間保管した。
保管後、肌着を8時間着用し後の香りを評価する専門のパネラー3人により香りの残り具合を評価した。
評価は、下記基準で行い、3人の評価のうち一番多い結果となったものを評価結果とした。3人の評価が1点、2点、3点と別れた場合は、2点とした。香りの評価は、20℃/60%RHの部屋で行った。
<評価基準>
3:リッチ且つフレッシュな香りがしっかりする。
2:リッチ且つフレッシュな香りが少しする。
1:リッチ且つフレッシュな香りがほとんどしない。
【0120】
【表2】
【0121】
以上の結果より明らかなように、本発明の液体柔軟剤組成物は、繊維製品を処理した場合に、優れた香りの持続性を付与することができる。