(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水路構造物の主水路を外部に連ねるスリット状の開口路のための開口路更生装置であって、前記主水路には更生管が収容され、前記主水路の内面と前記更生管との間には、被覆層が充填される環状隙間が画成され、前記更生管には前記開口路と連通する連通スリットが形成されており、
前記開口路更生装置が、
前記開口路の一対の内壁とそれぞれ対面され、前記内壁との間に被覆層が充填される一対の垂直隙間を画成する壁状の一対の開口路更生部材と、
これら開口路更生部材どうし間に撤去可能に架け渡された開口路更生治具と、を備え、
前記開口路更生治具が、
前記開口路更生装置の長手方向へ延びる板状に形成され、前記開口路に配置されて前記連通スリットを上方から閉塞する閉塞部と、
前記閉塞部の幅方向の両端部に連なり、前記一対の開口路更生部材どうしの対向面に宛がわれるとともに前記開口路更生部材より上へ突出された一対の保持部と、
各保持部の上端部から前記幅方向の外側へ突出されて前記水路構造物に支持された一対の被支持部と、
前記各保持部と前記内壁との間に配置され、各被支持部と開口路更生部材とを着脱可能に連結する連結手段と、を含むことを特徴とする開口路更生装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、高速道路の側溝の老朽化が進み、その対策が求められている。例えば、冬季、凍結融解剤を散布すると、塩化物を含む路面水が側溝へ流れ込む。この塩化物が、側溝の内壁で乾湿を繰り返すことにより、側溝を構成するコンクリート躯体内への塩化物浸透が進んで、鉄筋が腐食して膨張し、被り部分のコンクリートの剥落が起きやすくなる。特に、円形水路の場合、スリット状開口路の周辺部が腐食や剥落を起こしやすい。剥落が起きると、開口路の幅が広くなるために、バイクの車輪が陥入する懸念がある。
【0005】
そこで、主水路の上側のコンクリート部分をカットし、コンクリート蓋を被せる等の対策が採られている。しかし、そうすると、車の乗上げによる蓋の飛散、通水断面の阻害等の問題が生じ、抜本的な対策に至っていない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、高速道路その他の道路における円形水路等の主水路とスリット状開口路とを有する老朽化した水路構造物を、蓋無し構造を保ちながら効率的に補修することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明方法は、主水路と、前記主水路から外部に達するスリット状の開口路とを有する水路構造物を補修する方法であって、
前記主水路の内周に沿って更生管を設け、
前記更生管に前記開口路と連なる連通スリットを形成し、
前記連通スリットを塞いだうえで、前記主水路の内周と前記更生管との間の隙間及び前記開口路の内壁に被覆層を設け、
その後、前記連通スリットを開放させることを特徴とする。
【0007】
先に連通スリットを形成しておくことによって、連通スリットの形成によって更生管が変形したとしても矯正したうえで被覆層を充填できる。或いは、変形後の形状に合わせて被覆層を充填できる。この結果、水路構造物の補修施工の品質を向上でき、補修を効率的に行なうことができる。
被覆層としては、モルタル、セメント、樹脂等を用いることができる。被覆層を設ける際は、連通スリットを塞いでおくことで、被覆層が連通スリットを介して主水路内に入り込まないようにできる。
開口路を構成するコンクリート等における腐食した部分は、除去したうえで、被覆層を設けることが好ましい。開口路には、被覆層のための型枠を設置することが好ましい。型枠は、被覆層の充填、養生後に撤去可能であってもよく、残置されるものでもよい。
その後、連通スリットを開放することで、主水路と開口路とを連通スリットを介して連通させることができる。
【0008】
壁状の開口路更生部材を前記開口路の内壁と対面するように設置し、かつ前記開口路更生部材に付設された閉塞部によって前記連通スリットを塞いだうえで、
前記開口路の内壁と前記開口路更生部材との間に前記被覆層の一部を充填し、
その後、前記開口路更生部材を残置したまま前記閉塞部を撤去することが好ましい。
連通スリットを閉塞部によって塞いでおくことで、被覆層を設ける際、被覆層が連通スリットを介して主水路内に入り込むのを防止できる。その後、閉塞部を撤去することで、連通スリットを開放でき、主水路を、連通スリットを介して開口路と連通できる。
閉塞部は、開口路更生部材に対して着脱可能であってもよい。閉塞部が切除可能であってもよい。
前記開口路更生部材は、更生後の開口路の内壁として提供できる。
【0009】
本発明装置は、水路構造物の主水路を外部に連ねるスリット状の開口路のための開口路更生装置であって、
前記開口路の一対の内壁とそれぞれ対面される一対の開口路更生部材と、
これら開口路更生部材どうし間に架け渡された開口路更生治具と、を備え、
前記開口路更生治具が、前記主水路の内面に沿う更生管における、前記開口路との連通スリットを閉塞可能、かつ撤去可能な閉塞部を含むことを特徴とする。
当該発明装置によれば、先に連通スリットを形成しておき、それを閉塞部で塞いだうえで、主水路の内周と更生管との間、及び開口路の内壁と開口路更生部材との間に被覆層を充填できる。閉塞部で連通スリットを塞いでおくことで、被覆層が連通スリットを介して主水路内に入り込むのを防止できる。
開口路更生治具によって一対の開口路更生部材どうしの間隔を保持でき、被覆層を充填する際の圧力に耐えることができる。
その後、閉塞部を撤去することで、連通スリットを開放でき、主水路と開口路とを連通スリットを介して連通できる。 連通スリットの形成によって更生管が変形したとしても矯正したうえで被覆層を充填できる。或いは、変形後の形状に合わせて被覆層を充填できる。この結果、水路構造物の補修施工の品質を向上でき、効率的に補修できる。
【0010】
前記開口路更生治具が、前記開口路更生部材と着脱可能に連結されていることが好ましい。
被覆層の充填後、開口路更生治具を開口路更生部材から分離する。これによって、閉塞部を簡単に撤去でき、連通スリットを簡単に開放することができる。
【0011】
前記開口路更生治具が、各開口路更生部材における他方の開口路更生部材との対向面に宛がわれる保持部を含むことが好ましい。
保持部によって、一対の開口路更生部材どうしの間隔を保持でき、被覆層を充填する際の圧力に耐えることができる。ひいては、更生後の開口路の幅を確保することができる。
【0012】
前記開口路更生治具が、前記水路構造物の外面に係止されて支持される被支持部を有していることが好ましい。
これによって、開口路更生装置を水路構造物に支持させることができる。
【0013】
前記開口路更生部材が、前記更生管との接続部を有し、かつ前記開口路更生治具に対して前記被支持部と前記接続部とを結ぶ方向(スライド方向)へスライド可能に連結されていることが好ましい。
開口路更生部材のスライド調節によって、更生管を主水路に対して前記スライド方向へ位置合わせできる。前記スライド方向を上下に向けることによって、更生管を昇降させることができ、更には、更生管を主水路の底部から浮かせることができる。この結果、主水路の底部と更生管との間に隙間を形成でき、そこに被覆層を充填できる。ひいては、被覆層を主水路の内周の全周にわたって設けることができる。
【0014】
前記接続部が、更生管の連通スリットを通って前記更生管の内周面に係止されることが好ましい。
これによって、開口路更生部材を更生管に簡単に接続できる。
【0015】
本発明構造物は、主水路と、前記主水路から外部に達するスリット状の開口路とを有する水路構造物を含む補修水路構造物であって、
前記開口路と連なる連通スリットを有して、前記主水路の内面に沿う更生管と、
前記開口路に収容された開口路更生部材と、
を備え、前記開口路更生部材が、前記開口路の内壁と対面する側壁と、前記側壁に連なる接続部とを含み、前記接続部が、前記更生管における連通スリットの縁周辺部と接続され、
前記主水路の内周と前記更生管の間、及び前記開口路の内壁と前記側壁との間に、被覆層が設けられていることを特徴とする。
これによって、水路構造物を効率的に補修できる。
【0016】
前記接続部が、更生管の連通スリットを通って前記更生管の内周面に係止されていることが好ましい。
これによって、開口路更生部材を更生管に簡単に接続できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高速道路その他の道路における円形水路等の主水路とスリット状開口路とを有する老朽化した水路構造物を、蓋無し構造を保ちながら効率的に補修することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態>
図1(a)は、高速道路1(道路)を示したものである。高速道路1の側部には、桝15と、補修水路構造物2が設けられている。桝15は、数十メートル(例えば40メートル)置きに配置されている。桝15は、平面視で数十cm(例えば50cm)四方の鉄筋コンクリート製の縦穴構造になっている。桝15の上端開口は、蓋15dによって塞がれている。
【0020】
<補修水路構造物2>
図1(b)に示すように、補修水路構造物2は、老朽化した既設水路構造物10(側溝)を補修したものであり、既設水路構造物10と、更生管20と、開口路更生部材30と、被覆層40を含む。
既設水路構造物10ひいては補修水路構造物2は、隣接する2つの桝15,15どうしを結ぶように、高速道路1と平行に延びている。既設水路構造物10は、鉄筋コンクリートにて構成され、地中に敷設されている。
図2に示すように、水路構造物10の上面は高速道路1上に露出されている。水路構造物10の上面の一側部に縁石1eが被さっている。
なお、
図1において、既設水路構造物10ひいては補修水路構造物2の直径は、軸長に対して誇張されている。
【0021】
図2に示すように、水路構造物10は、主水路11と、開口路13を有している。主水路11は、断面円形になっている。主水路11は、水路構造物10の全長にわたって延びている。
主水路11の上部(周方向の一側部)に開口路13が連なっている。開口路13は、スリット状をなし、主水路11の上部から水路構造物10の上面(外面)へ延びて外部に達している。開口路13は、主水路11の全長にわたって延びている。開口路13の幅は、主水路11の幅(直径)よりも小さい。
【0022】
図4の二点鎖線にて示すように、新設時における水路構造物10の上部には、一対の開口路画成部12,12が互いに対峙するように形成されている。各開口路画成部12の断面は、概略四半円弧状になっている。これら開口路画成部12,12の対向面どうし間に幅狭のスリット12sが形成されている。この幅狭スリット12sが新設時の開口路13である。その後、
図4の三点鎖線にて示すように、水路構造物10における開口路画成部12等の鉄筋が凍結融解剤等によって腐食して膨張し、コンクリートの剥落等が起き、老朽化が進む。
図4の実線にて示すように、補修後の水路構造物10においては、開口路画成部12の老朽化した部分が切除されることで、開口路13が新設時よりも拡幅されている。
以下、特に断らない限り、水路構造物10ひいては開口路13は補修済みであるものとする。
【0023】
図1(b)に示すように、水路構造物10の主水路11内に更生管20が収容されている。主水路11の内周面に更生管20がライニングされている。更生管20は、主水路11の全長にわたって延びている。更生管20の内部空間が、補修水路構造物2の補修後主水路2aとなっている。更生管20は、補修後主水路2aの内壁として提供されている。
図2に示すように、更生管20の頂部(上側部)には、連通スリット23が形成されている。連通スリット23は、更生管20の全長にわたって延びている。連通スリット23の幅は、前述した新設時スリット12sの幅とほぼ等しく、車両の車輪、特に二輪車の車輪の幅以下である。
【0024】
図1(b)に示すように、更生管20は、帯状部材20xによって構成され、螺旋管状になっている。帯状部材20xが、螺旋状に巻かれ、かつ一周違いに隣接する縁どうしが接合されている。
図3(a)に示すように、帯状部材20xは、主帯材21と、補強帯材22を含む。主帯材21は、ポリ塩化ビニル(PVC)等の合成樹脂によって構成されている。主帯材21の幅方向の一端部((
図3(a)において左端部)に雌嵌合部21bが形成されている。主帯材21の幅方向の他端部((
図3(a)において右端部)に雄嵌合部21dが形成されている。
図3(b)に示すように、一周違いに隣接する雌嵌合部21b及び雄嵌合部21dどうしが嵌合されている。
主帯材21の外面部には補強リブ21fが形成されている。更に、主帯材21の外面に鋼製の補強帯材22が設けられている。補強帯材22は、省略されていてもよい。補強帯材22が、主帯材21の補強リブ21fの内部等に埋め込まれていてもよい。
【0025】
図1(b)及び
図2に示すように、水路構造物10の開口路13内に一対の開口路更生壁3A,3Aが設けられている。一対の開口路更生壁3A,3Aが、開口路13における対応する内壁13aとそれぞれ対面している。開口路更生壁3Aは、複数の開口路更生部材30を含む。各開口路更生部材30は、概略、壁状になっている。複数の開口路更生部材30が、開口路13の延び方向に一列に並べられることによって、長壁状の開口路更生壁3Aが構成されている。一対の開口路更生壁3Aどうし間に、補修水路構造物2の補修後開口路2bが形成されている。
【0026】
図2に示すように、補修水路構造物2の被覆層40は、主水路被覆層41と、開口路被覆層43を含む。被覆層40(41,43)は、好ましくは無収縮モルタルにて構成されている。主水路被覆層41は、主水路11の内周面と更生管20との間の環状隙間14に充填されている。開口路被覆層43(被覆層40の一部)は、開口路13の内壁13aと開口路更生壁3Aとの間の垂直隙間13bに充填されている。被覆層40(41,43)は、無収縮モルタルにて構成されている。
図1(b)に示すように、補修水路構造物2の両端部における隙間14,13bには、端口封止材42が設けられている。端口封止材42は、好ましくは急結モルタルにて構成されている。
【0027】
図9に示すように、水路構造物10の補修には、複数の開口路更生装置3が用意される。
図8に示すように、各開口路更生装置3は、一対の前記開口路更生部材30と、開口路更生治具50を備えている。
各開口路更生部材30は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の等の合成樹脂によって構成されている。なお、開口路更生部材30の材質は、前記以外の合成樹脂であってもよく、金属であってもよい。
一対の開口路更生部材30どうしは、互いに対称形状に形成され、開口路更生装置3の幅方向に対峙されている。各開口路更生部材30は、側壁31と、埋設フランジ32(埋設突起)と、接続カール部33(接続部)と、シール部材34を含む。側壁31は、垂直な壁状になっている。側壁31の長手方向の両端部には、連結板部35が設けられている。
図8(b)に示すように、複数の開口路更生部材30が長手方向に並べられ、かつ隣接する開口路更生部材30の連結板部35どうしがボルト36を介して連結されている。これによって、複数の開口路更生部材30が長手方向に連ねられている。
【0028】
図2に示すように、各開口路更生部材30の側壁31は、開口路13における対応する内壁13aと対面されている。側壁31と内壁13aとの間に開口路被覆層43が充填されている。側壁31は、補修後開口路2bの内壁として提供されている。
【0029】
図8に示すように、側壁31の上端部にフランジ32が設けられている。フランジ32は、側壁31と直交されるとともに、開口路更生装置3の幅方向の外側(他方の開口路更生部材30とは反対側)へ突出されている。フランジ32には、ネジ孔32bが形成されている。
【0030】
図2に示すように、埋設フランジ32は、開口路13における中間高さ(上端より低い位置)に位置されている。埋設フランジ32が、側壁31から内壁13a側へ突出して、開口路被覆層43内に埋設されている。埋設フランジ32より上側に開口路被覆層43が延びている。
【0031】
図8に示すように、側壁31の下端部に接続カール部33が連なっている。カール部33は、下へ凸の半円筒状に形成され、他方の開口路更生部材30とは反対側へ湾曲されている。
図2に示すように、接続カール部33は、更生管20の連通スリット23を通って、主水路11内に臨んでいる。接続カール部33の先端部は、更生管20の連通スリット23の縁周辺部23eの内周面に係止(接続)されている。開口路被覆層43の一部が、カール部33と更生管20の内周との間のカール部内空間33bに入り込んでいる。
【0032】
カール部33の先端部にシール部材34が設けられている。シール部材34は、ゴム等にて構成され、開口路更生部材30の全長にわたって延びている。シール部材34が更生管20のスリット縁周辺部23eの内周面に押し当てられている。
カール部33の先端部と更生管20の内周面との間が、シール部材34によって封止されている。
なお、
図8において、シール部材34の図示は省略する。
【0033】
図2及び
図9に示すように、開口路更生装置3においては、開口路更生部材30に加えて開口路更生治具50が付設されている。開口路更生部材30は、補修水路構造物2の最終構成要素となる。一方、開口路更生治具50は、補修水路構造物2の施工過程で撤去され、補修水路構造物2の最終構成要素とはならない。
開口路更生治具50は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂によって構成されている。なお、開口路更生治具50の材質は、前記以外の合成樹脂であってもよく、金属であってもよい。
【0034】
図8に示すように、開口路更生治具50は、一対の開口路更生部材30どうし間に架け渡されている。開口路更生治具50は、治具本体部51と、一対の被支持フランジ52(被支持部)を含む。
治具本体部51は、一対の開口路更生部材30の側壁31どうし間に挿入配置される。治具本体部51は、一対の側板53(保持部)と、底板54(閉塞部)を含む。側板53は、垂直な壁状に形成され、開口路更生装置3の長手方向へ延びている。一対の側板53どうしが、開口路更生装置3の幅方向に対峙している。各側板53が、対応する側壁31の内側面(他方の開口路更生部材30を向く面)に宛がわれている。
一対の側板53の下端部どうし間に底板54が設けられている。底板54は、側板53と直交する水平な板状に形成され、開口路更生装置3の長手方向へ延びている。開口路更生治具50が開口路更生部材30に付設され、ひいては底板54が開口路更生部材30に付設されている。
図9に示すように、底板54は、連通スリット23を上方から閉塞可能である。
【0035】
図8に示すように、各側板53の上端部に被支持フランジ52が連なっている。被支持フランジ52は、側板53と直交する水平な板状に形成され、側板53から幅方向の外側へ突出されるとともに、開口路更生装置3の長手方向へ延びている。
被支持フランジ52には、ネジ挿通孔52bと、注入孔52cが形成されている。
図9に示すように、被支持フランジ52は、水路構造物10の上面(外面)に係止される。
【0036】
開口路更生装置3において、開口路更生治具50は、開口路更生部材30に対して着脱可能に連結されている。詳しくは、開口路更生装置3の幅方向の互いに同じ側のフランジ52,32どうしが、上下に対向している。かつ、ボルト55(連結手段、昇降手段)が、ネジ挿通孔52bを通して、ネジ孔32bにねじ込まれている。ボルト55によって、フランジ52,32が上下に接近離間可能に連結されている。ひいては、開口路更生部材30が、開口路更生治具50に対して、上下(フランジ52,32どうしを結ぶ方向)へスライド可能に連結されている。
ボルト55を外すことで、開口路更生治具50が開口路更生部材30から分離して撤去可能である。ひいては、底板54が連通スリット23から撤去可能である。
【0037】
老朽化した既設水路構造物10を補修して、補修水路構造物2を構築する方法を説明する。
<開口路処理>
図4の仮想線に示すように、先ず、開口路画成部12の腐食部分を切除する。これによって、
図4の実線に示すように、新設時よりも幅広の開口路13が形成される。開口路13の幅は、開口路更生装置3の一対の開口路更生部材30どうし対向幅ひいては連通スリット23の幅よりも大きくする。
【0038】
<更生管20の設置>
次に、
図6に示すように、主水路11の内面に沿って更生管20を設ける。
図5に示すように、更生管20の設置方法の一例として、地上のドラム4から帯状部材20xを一方側(
図5において左側)の桝15内へ繰り出す。当該桝15内の製管機6によって、帯状部材20xを螺旋状に巻回しながら、該帯状部材20xの一周違いに隣接する縁どうしを接合していく。更生管20の先端部にワイヤ8を繋着する。
図5の矢印にて示すように、更生管20が製管されるにしたがって、ワイヤ8を反対側の側(
図5において右側)の桝15へ向けて引くことで、更生管20を主水路11内に挿し入れる。
なお、更生管20の挿し入れ方法として、前記牽引式に代えて、更生管20を製管機6側から主水路11内へ向けて押し込む元押し式を適用してもよい(特開2015−105658号公報等参照)。
自走式の製管機6によって更生管20を製管してもよい(特開2016−043555号公報等参照)。
前記ドラム4から繰り出された時の帯状部材20xには、巻き癖が付いている。この巻き癖と主水路11の内周面との曲率の違い等により、更生管20が主水路11の内周面の全周に張り付く。具体的には、補強リブ21fが、主水路11の内周面の全周に当たる。
更生管20は、螺旋管状であるから、主水路11の段差や曲がり等に対して自在に対応することができる。
【0039】
<連通スリット23の形成>
次に、
図7に示すように、更生管20に連通スリット23を形成する。
これによって、更生管20の内部が連通スリット23を介して開口路13と連通される。
【0040】
<開口路更生装置3の設置>
次に、
図1(b)及び
図9に示すように、開口路13に複数の開口路更生装置3を並べて設置する。
詳しくは、複数の開口路更生部材30を一列に連結することで開口路更生壁3Aを作製する。該開口路更生壁3Aを開口路13に挿入し、カール部33を連通スリット23から更生管20内に挿し入れる。開口路13の幅方向の両側にそれぞれ開口路更生壁3Aを設置する。
続いて、一対の開口路更生部材30間に開口路更生治具50を架け渡し、かつ治具本体部51をこれら開口路更生部材30間に挟み付ける。これによって、被支持フランジ52が側壁31の内面に宛がわれる。かつ、底板54によって連通スリット23を上方から塞ぐことができる。
更に、被支持フランジ52を水路構造物10の上面に係止して支持させる。また、開口路更生治具50と開口路更生部材30をボルト55で連結する。そして、ボルト55によって、開口路更生部材30を上昇スライドさせる。これによって、カール部33を更生管20のスリット縁周辺部23eに確実に係止できる。かつシール部材34を更生管20に押し当てることによって、カール部33と更生管20との間を確実に封止できる。
連通スリット23の形成によって更生管20が変形したとしても、開口路更生装置3を設置する際にその変形を矯正できる。例えば、連通スリット23の形成によって更生管20が縮径されたとしても、開口路更生装置3によって連通スリット23の幅を広げることで、更生管20を元の径に戻すことができる。したがって、更生管20の補強リブ21fを主水路11の内周面の全周に確実に押し当てることができる。
【0041】
<被覆層40の充填>
次に、
図1(b)に示すように、水路構造物10の両端部における隙間14,13bに急結モルタルからなる端口封止材42を充填して封止する。
続いて、
図10に示すように、水路構造物10の両端部どうし間における隙間14,13bに被覆層40を充填する。例えば、水路構造物10の長手方向の一端部の開口路更生治具50の注入孔52cから被覆層40を注入する。水路構造物10の長手方向の他端部の開口路更生治具50の注入孔52cから被覆層40が溢れるのを待つ。水路構造物10の一端部及び他端部以外の開口路更生治具50の注入孔52cは塞いでおく。(水路構造物10の一端部及び他端部以外の開口路更生治具50には、注入孔52cが形成されていなくてもよい。)
連通スリット23を塞いでおくことで、被覆層40が連通スリット23を介して主水路11内に入り込まないようにできる。
側板53が側壁31に宛がわれることで、一対の開口路更生部材30どうしの間隔を保持でき、被覆層40からの圧力に耐えることができる。
環状隙間14の被覆層40は主水路被覆層41となる。垂直隙間13bの被覆層40は開口路被覆層43となる。開口路被覆層43の一部は、連通スリット23の縁と側壁31との間を通って、カール部内空間33bにも充填され得る。シール部材34によってカール部33と更生管20との間を封止しておくことで、開口路被覆層43がカール部内空間33bから更生管20の内部へ漏れ出るのを防止できる。
【0042】
<開口路更生治具50の撤去>
被覆層40の充填、養生後、
図2に示すように、開口路更生部材30を残置したまま、開口路更生治具50を撤去する。ボルト55を外すことで、開口路更生治具50を開口路更生部材30から簡単に分離して、簡単に撤去できる。
ひいては、底板54が撤去される。底板54の撤去によって、連通スリット23が開放される。
撤去した開口路更生治具50は、再利用することができる。
【0043】
このようにして、老朽化した水路構造物10を補修できる。更生管20の内部空間が補修水路構造物2の補修後主水路2aとなる。両側の開口路更生部材30どうし間の空間が、補修水路構造物2の補修後開口路2bとなる。補修後主水路2aと補修後開口路2bとが連通スリット23を介して連通される。ひいては、道路の雨水が、補修後開口路2bから補修後主水路2aへ流下できる。
前記被覆層40の充填の際、側板53によって一対の開口路更生部材30どうしの間隔を保持しておくことで、補修後開口路2bの幅を確保することができる。
埋設フランジ32及び連結板部35が開口路被覆層43内に埋まることによって、開口路更生部材30の定着強度を高めることができる。
被覆層40の充填に先行して連通スリット23を形成しておくことで、被覆層40を設けた後で、連通スリット23を形成する必要が無い。したがって、連通スリット23の形成によって更生管20が変形したとしても、前述したように、その変形を矯正したうえで被覆層40を充填したり、或いは変形後の形状に合わせて被覆層40を充填したりできる。この結果、水路構造物10の補修施工の品質を向上でき、効率的に補修できる。
【0044】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して、説明を省略する。
<第2実施形態>
図11〜
図13は、本発明の第2実施形態を示したものである。
図11に示すように、第2実施形態では、更生管60が、複数の管部材61によって構成されている。管部材61は、円形断面の直管である。複数の管部材61が、主水路11の延び方向に沿って一列に並べられている。なお、
図11において、管部材61の直径は軸長に対して誇張されている。また、管部材61の数は、主水路11の長さ等に応じて適宜設定される。
図12に示すように、管部材61の外径は、主水路11の内径より少し小さい。
【0045】
管部材61の材質は、好ましくは樹脂である。ここでは、管部材61として、例えばポリ塩化ビニル管が用いられているが、これに限定されるものではなく、強化プラスチック複合管(FRPM管)、鋼管、波付き管等であってもよい。好ましくは、管部材61は、アニーリング処理されたアニーリング材によって構成されている。
【0046】
水路構造物10を更生する際は、管部材61を1つずつ、何れか一方の桝15から主水路11内に挿し入れる。桝15が狭い場合は、適宜、周辺部を開削して、管部材61の挿し入れスペースを確保しておく。後続の管部材61を、先行する直近の管部材61に突き当てながら挿し入れることで、複数の管部材61を一列に連ねる。
ワイヤーロープを後端の管部材61等に繋着し、ウィンチでワイヤーロープを引っ張ることで、管部材61を主水路11内に引き込んでもよい。
或いは、人力で管部材61を主水路11内に押し込んでもよい。
先頭の管部材61等の底部にコロを設けることで、押し込み易くしてもよい。
隣接する管部材61,61どうしを粘着テープによって連結してもよい。
【0047】
図12に示すように、複数の管部材61の挿し入れ後、これら管部材61からなる更生管60の頂部に連通スリット63を形成する。管部材61をアニーリング処理しておくことによって、連通スリット63の形成による縮径を防止できる。
この時点の更生管60は、主水路11の内周面の底部に着地されており、主水路11に対して下方へ偏心されている。
なお、管部材61に連通スリット63を予め形成したうえで、管部材61を主水路11内に挿し入れてもよい。
【0048】
図13に示すように、続いて、開口路13に開口路更生装置3を設置する。開口路更生装置3のカール部33を連通スリット63から更生管60内に挿し入れ、スリット縁周辺部63eに係止させる。
次に、ボルト55によって、開口路更生部材30を開口路更生治具50に対して上方へスライドさせる。これによって、更生管60を引き上げることができ、主水路11の内周面の底部と更生管60の底部との間に隙間を形成できる。
【0049】
図示は省略するが、続いて、隙間14,13bに被覆層40(
図10参照)を充填する。更生管60を引き上げておくことで、主水路11の内周面の底部と更生管60の底部との間にも主水路被覆層41を回り込ませることができる。
【0050】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その精神を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、隣接する開口路更生部材30どうしが、凹凸嵌合にて連結されるようになっていてもよい。
開口路更生治具50における少なくとも底板54が切除可能であってもよい。切除によって連通スリット23を開放させて、補修後主水路2aと補修後開口路2bを連通させることができる。開口路更生治具50における底板54以外の部分は、開口路2bに残置されることによって、補修水路構造物2の構成要素となってもよい。
開口路更生部材30の接続部33と更生管20とを、ボルトや接着剤等の接続手段を介して接続してもよい。
【0051】
更生管を主水路11内に設置する方法として。反転工法や形成工法(特開2011−143684号公報等参照)を適用してもよい。
反転工法では、熱または光で硬化する樹脂を含浸させた更生管材料を、水圧または空気圧によって反転加圧させながら、一方の桝15から主水路11内に挿入する。次に、主水路11内で加圧状態のまま更生管材料を硬化させ、更生管を構築する。
形成工法では、熱または光で硬化する樹脂を含浸させた更生管材料や、熱可塑性樹脂の連続パイプからなる更生管材料を、一方の桝15から主水路11内に引き込む。次に、更生管材料を、水圧、空気圧または蒸気圧で拡張・圧着させ、その後、硬化や冷却固化することで、更生管を構築する。
本発明の補修方法及び補修構造は、高速道路1に限られず、一般道路や自転車専用道路等の種々の道路の側溝の補修にも適用できる。