【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の修理パッチの成形方法は、部材の修理対象となる被修理部に用いられる修理パッチの成形方法であって、前記修理パッチは、予め硬化させた複合材により形成される修理パッチ片を複数積層してなり、成形ツール上に、硬化前となる第1の前記修理パッチ片を配置する第1修理パッチ片配置工程と、第1の前記修理パッチ片を被覆するように、第1の前記修理パッチ片上に、離形材を配置する離形材配置工程と、前記離形材を挟んで第1の前記修理パッチ片を被覆するように、前記離形材上に、硬化前となる第2の前記修理パッチ片を配置する第2修理パッチ片配置工程と、第1の前記修理パッチ片と第2の前記修理パッチ片との間に前記離形材を挟んだ状態で、第1の前記修理パッチ片及び第2の前記修理パッチ片を硬化させる成形工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1の修理パッチ片及び第2の修理パッチ片の硬化時において、離形材を挟んで硬化させることができる。このため、第1の修理パッチ片及び第2の修理パッチ片の間の間隔を、接着剤層を形成するにあたって均一な厚さとなるように、離形材によって均一に維持することができる。このため、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間に形成される接着剤層が均一となり、接着強度の低下を抑制できる修理パッチを成形することができる。
【0008】
また、修理時において、第1の前記修理パッチ片と第2の前記修理パッチ片との間には、接着剤層が形成され、前記離形材は、第1の前記修理パッチ片に設けられる第1離形フィルムと、第2の前記修理パッチ片に設けられる第2離形フィルムと、前記第1離形フィルムと前記第2離形フィルムとの間に設けられ、前記接着剤層を模擬した層厚となるスペーサと、を有し、前記離形材配置工程では、第1の前記修理パッチ片上に前記第1離形フィルムを配置し、前記第1離形フィルム上に前記スペーサを配置し、前記スペーサ上に前記第2離形フィルムを配置することが、好ましい。
【0009】
この構成によれば、接着剤層を模擬した層厚となるスペーサを用いて、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間隔を、精度よく均一に成形することができる。また、第1離形フィルム及び第2離形フィルムにより、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片とを好適に分離させることができる。なお、スペーサは、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間隔を成形できるものであれば、特に限定されず、いずれのものを用いてもよい。
【0010】
また、前記スペーサは、前記接着剤層を形成するための接着シートであることが、好ましい。
【0011】
この構成によれば、加熱によって溶融する接着シートの流動を再現することができ、修理時を模擬して、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間隔を成形することができる。
【0012】
また、修理時において、第1の前記修理パッチ片と第2の前記修理パッチ片との間には、接着剤層が形成され、前記離形材は、前記接着剤層を模擬した層厚となっていることが、好ましい。
【0013】
この構成によれば、離形材のみによって、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間隔を、精度よく均一に成形することができる。
【0014】
また、修理時において、第1の前記修理パッチ片と第2の前記修理パッチ片との間には、接着剤層が形成され、前記離形材は、前記接着剤層を模擬した層厚となるように積層した複数の離形フィルムからなることが、好ましい。
【0015】
この構成によれば、積層した複数の離形フィルムによって、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間隔を、精度よく均一に成形することができる。
【0016】
また、前記修理パッチ片は、前記修理パッチ片の積層方向に対して直交する面内において、中央部から外側の端部に向かって厚さが薄くなるように、成形されることが、好ましい。
【0017】
この構成によれば、修理パッチ片の端部に加わる応力を分散させることができるため、修理パッチの端部への応力集中を低減することができる。
【0018】
また、前記修理パッチ片の積層方向における少なくとも一方側の面を接着面とし、前記接着面を活性化させるために引き剥がされるピール材を、前記接着面に設けるピール材配置工程を、さらに備えることが、好ましい。
【0019】
この構成によれば、ピール材を設けた修理パッチ片を成形することができるため、修理パッチ片を用いた修理時において、ピール材を引き剥がすことで、修理パッチ片の接着面を活性化させることができる。
【0020】
また、前記成形ツールは、硬化前の前記修理パッチ片が配置されるツール面を有し、前記ツール面は、平坦面となっていることが、好ましい。
【0021】
この構成によれば、成形ツールの平坦なツール面に、硬化前の修理パッチ片を積層して、修理パッチを成形することができる。また、成形ツールのツール面が平坦であることから、成形ツールを簡素なものとすることができる。
【0022】
また、前記成形ツールは、硬化前の前記修理パッチ片が配置されるツール面を有し、前記ツール面は、前記被修理部を模擬した面となっていることが、好ましい。
【0023】
この構成によれば、修理パッチ片を被修理部の形状に合わせて成形することができるため、修理時において、修理パッチ片を変形させることなく、修理パッチ片を被修理部に配置することができる。このため、修理後の修理パッチ片に発生する残留応力を低減することができる。
【0024】
また、第1の前記修理パッチ片と第2の前記修理パッチ片との間に、脱気回路を形成するための脱気回路形成部材を設置する脱気回路形成部材工程を、さらに備えることが、好ましい。
【0025】
この構成によれば、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間に脱気回路を形成することができるため、修理時において、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間を適切に脱気することができる。このため、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間の接着剤層に形成されるボイドの発生を抑制することができる。
【0026】
本発明の修理パッチは、部材の修理対象となる被修理部に用いられる修理パッチであって、予め硬化させた複合材により形成される第1の修理パッチ片と、第1の前記修理パッチ片を被覆するように、第1の前記修理パッチ片上に配置され、予め硬化させた複合材により形成される第2の修理パッチ片と、を備え、第1の前記修理パッチ片と第2の前記修理パッチ片との間に形成される隙間は、均一な厚さとなっていることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間に形成される接着剤層を均一な厚さとすることができるため、接着剤がリッチとなる部位の形成を抑制でき、接着強度の低下を抑制することができる。
【0028】
また、第1の前記修理パッチ片と第2の前記修理パッチ片との間に設けられる接着シートを、さらに備えることが、好ましい。
【0029】
この構成によれば、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間に接着シートを挟んだ状態で、これらを取り扱うことができる。
【0030】
また、第1の前記修理パッチ片は、第2の前記修理パッチ片と対向する方向から見た形状が、非円形状となっており、第2の前記修理パッチ片は、第1の前記修理パッチ片よりも大きい、第1の前記修理パッチ片と相似形となる非円形状となっていることが、好ましい。
【0031】
この構成によれば、非円形状の第1の修理パッチ片と、相似形となる非円形状の第2の修理パッチ片とを、各修理パッチ片の形状に基づいて、各修理パッチ片の中心が重なり合うように配置することができる。このため、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間に形成される隙間が均一な厚さとなるように、第1の修理パッチ片に対する第2の修理パッチ片の位置決めを精度よく行うことができる。なお、非円形状としては、例えば、楕円形状または矩形形状等であり、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片とを位置決め可能な形状であれば、特に限定されない。
【0032】
本発明の被修理部の修理方法は、上記の修理パッチを用いて、部材の修理対象となる被修理部を修理する被修理部の修理方法であって、前記被修理部上に、第1の接着シートを配置する第1接着シート配置工程と、第1の前記接着シートを挟んで前記被修理部を被覆するように、第1の前記接着シート上に、第1の前記修理パッチ片を配置する第1修理パッチ片積層工程と、第1の前記修理パッチ片上に、第2の接着シートを配置する第2接着シートと、第2の前記接着シートを挟んで第1の前記修理パッチ片を被覆するように、第2の前記接着シート上に、第2の前記修理パッチ片を配置する第2修理パッチ片積層工程と、第1の前記接着シート及び第2の前記接着シートを溶融させて硬化させる成形工程と、を備えることを特徴とする。
【0033】
この構成によれば、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間に形成される接着剤層(溶融して硬化した接着シート)を均一な厚さとすることができるため、接着剤がリッチとなる部位の形成を抑制でき、接着強度の低下を抑制することができる。
【0034】
また、前記成形工程前に、第1の前記修理パッチ片及び第2の前記修理パッチ片を被覆するように、耐雷部材を配置する耐雷部材配置工程を、さらに備えることが、好ましい。
【0035】
この構成によれば、被修理部の修理と共に耐雷部材を設置することができるため、作業効率の向上を図ることができる。
【0036】
また、第1の前記修理パッチ片と第2の前記修理パッチ片との間に、第2の前記接着シートと共に、脱気回路となる脱気回路部材を配置する脱気回路部材配置工程を、さらに備えることが、好ましい。
【0037】
この構成によれば、脱気回路部材により第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間に脱気回路を形成することができるため、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間を適切に脱気することができる。このため、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間の接着剤層に形成されるボイドの発生を抑制することができる。
【0038】
また、第1の前記修理パッチ片は、第2の前記修理パッチ片と対向する方向から見た形状が、非円形状となっており、第2の前記修理パッチ片は、第1の前記修理パッチ片よりも大きい、第1の前記修理パッチ片と相似形となる非円形状となっており、前記第2修理パッチ片積層工程では、第2の前記修理パッチ片の内側に、第1の前記修理パッチ片が収まり、第1の前記修理パッチ片の中心と第2の前記修理パッチ片の中心とが重なり合うように、第2の前記修理パッチ片を配置することが、好ましい。
【0039】
この構成によれば、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間に形成される隙間が均一な厚さとなるように、第1の修理パッチ片に対する第2の修理パッチ片の位置決めを精度よく行うことができる。
【0040】
本発明の補修部は、部材の修理対象となる被修理部を、修理パッチを用いて修理することで形成された補修部であって、前記被修理部に、第1の接着剤層を介して接着される第1の修理パッチ片と、第1の前記修理パッチ片を被覆するように、第2の接着剤層を介して接着される第2の修理パッチ片と、を備え、第2の前記接着剤層は、均一な厚さとなっていることを特徴とする。
【0041】
この構成によれば、第1の修理パッチ片と第2の修理パッチ片との間に形成される接着剤層が均一な厚さとなる補修部を形成することができるため、接着剤がリッチとなる部位の形成を抑制でき、補修部における接着強度の低下を抑制することができる。