(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接触式三次元表面粗さ計を用いて、0.08mmカット‐オフ値を適用して測定した中心線平均表面粗さRaが20nm以下であり、表面中心線で最大ピーク高さRpが300nm以下である、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を含む具体例または実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、下記の具体例または実施例は、本発明を詳細に説明するための一つの参照であって、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な形態に実現されてもよい。
【0013】
また、他に定義されない限り、すべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者の一人によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本発明において説明に使用される用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限することを意図しない。
【0014】
また、明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形態は、文脈で特別な指示がない限り、複数形態も含むことを意図することができる。
【0015】
本発明の一様態は、ポリエステル樹脂および粒子を含む単層ポリエステルフィルム、またはポリエステル樹脂を含むコア層とその片面または両面にポリエステル樹脂および粒子を含むスキン層を少なくとも一層以上含む多層ポリエステルフィルムから選択されるポリエステルフィルムであって、
前記粒子は、平均粒径が0.01〜2.0μmであり、粒径が大きい粒子Aと小さい粒子Bを含み、前記大きい粒子Aと小さい粒子Bの粒径の比が下記式1を満たし、前記大きい粒子Aの含量が小さい粒子Bの含量と一致するか小さく、下記式2を満たすバイモーダル粒度分布を有するポリエステルフィルムである。
[式1]
1.3≦A/B≦2.5
[式2]
1.6≦D≦2.6
前記式2中、D=Vh/Vsであり、Vhはバイモーダル粒度分布のうち大きい粒子ピークの体積%であり、Vsはバイモーダル粒度分布のうち小さい粒子ピークの体積%である。
【0016】
本発明の一様態において、前記大きい粒子Aは、平均粒径が0.8〜2.0μmであり、小さい粒子Bは、平均粒径が0.01〜0.8μmであってもよい。
【0017】
本発明の一様態において、前記粒子の含量は、フィルムの全重量に対して1000〜3500ppm含まれてもよい。
【0018】
本発明の一様態において、前記フィルムの表面粗さピークカウントPcが、下記式3を満たしてもよい。
【0020】
前記式3中、Pcは単位面積当たりピーク(Peak)の個数であり、単位はea/mm
2である。
【0021】
本発明の一様態において、前記ポリエステルフィルムは、接触式三次元表面粗さ計を用いて、0.08mmカット‐オフ値を適用して測定した中心線平均表面粗さRaが20nm以下であり、表面中心線で最大ピーク高さRpが300nm以下であってもよい。
【0022】
本発明の一様態において、前記ポリエステルフィルムは、機械方向の屈折率が1.640以上であり、幅方向の屈折率が1.670以上であり、複屈折率が0.03以上であってもよい。
【0023】
本発明の一様態において、前記ポリエステルフィルムは、厚さが20〜40μmであってもよい。
【0024】
本発明の一様態において、前記粒子は、炭酸カルシウム(CaCO
3)であってもよい。
【0025】
本発明の一様態において、前記ポリエステルフィルムは、機械方向に3〜5倍、幅方向に4〜6倍二軸延伸されていてもよい。
【0026】
本発明の一様態において、前記ポリエステルフィルムは、二軸延伸後、200〜250℃で熱処理および1〜10%弛緩されてもよい。
【0027】
本発明の一様態において、前記多層ポリエステルフィルムのコア層は、粒子をさらに含んでもよい。
【0028】
本発明の他の様態は、前記ポリエステルフィルムと、その片面または両面に離型層を含む離型フィルムである。
【0029】
以下、本発明の構成について、より具体的に説明する。
【0030】
本発明のポリエステルフィルムの第1の様態は、ポリエステル樹脂と、平均粒径が0.01〜2.0μmである粒子を含み、前記粒子のうち粒径が大きい粒子Aと小さい粒子Bを含み、前記大きい粒子と小さい粒子の粒径の比が前記式1を満たし、前記大きい粒子Aの含量が小さい粒子Bの含量と一致するか小さくして前記式2を満たすバイモーダル粒度分布を有する粒子を含む単層ポリエステルフィルムである。
【0031】
本発明のポリエステルフィルムの第2の様態は、粒子を含まず、ポリエステル樹脂を含むコア層と、前記コア層の片面または両面に少なくとも1層以上積層され、ポリエステル樹脂と、平均粒径が0.01〜2.0μmである粒子を含み、前記粒子のうち粒径が大きい粒子Aと小さい粒子Bを含み、前記大きい粒子と小さい粒子の粒径の比が前記式1を満たし、前記大きい粒子Aの含量が小さい粒子Bの含量と一致するか小さくして前記式2を満たすバイモーダル粒度分布を有する粒子を含む多層ポリエステルフィルムである。
【0032】
本発明のポリエステルフィルムの第3の様態は、ポリエステル樹脂および平均粒径が0.01〜2.0μmである粒子を含むコア層と、前記コア層の片面または両面に少なくとも1層以上積層され、ポリエステル樹脂と、平均粒径が0.01〜2.0μmである粒子を含み、前記粒子のうち粒径が大きい粒子Aと小さい粒子Bを含み、前記大きい粒子と小さい粒子の粒径の比が前記式1を満たし、前記大きい粒子Aの含量が小さい粒子Bの含量と一致するか小さくして前記式2を満たすバイモーダル粒度分布を有する粒子を含む多層ポリエステルフィルムである。
【0033】
本発明の一様態において、前記単層ポリエステルフィルムまたは多層ポリエステルフィルムは、離型フィルムのベースフィルムとして使用されてもよい。
【0034】
本発明の一様態において、前記ポリエステルフィルムをなすポリエステル樹脂は、特に制限されず、通常のポリエステル樹脂を使用してもよい。ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸を主成分とする酸成分とアルキレングリコールを主成分とするグリコール成分を縮重合して得られる。前記ジカルボン酸は、制限されないが、テレフタル酸またはそのアルキルエステルやフェニルエステルなどを使用してもよく、一部はイソフタル酸、オキシエトキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸および5‐ナトリウムスルホイソフタル酸などの二官能性カルボン酸またはそのエステル形成誘導体で置換して使用してもよい。また、グリコール成分としては、制限されないが、エチレングリコールを主に使用し、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、1,4‐シクロヘキサンジオール、1,4‐シクロヘキサンジメタノール、1,4‐ビスオキシエトキシベンゼン、ビスフェノールおよびポリオキシエチレングリコールなどを混合して使用してもよく、一官能性化合物または三官能性化合物を一部併用してもよい。
【0035】
その他にも、ポリエステル樹脂の重合時に通常フィルム分野において使用される添加剤、すなわち、ピニング剤(pinning)、帯電防止剤、紫外線安定剤、防水剤、スリップ剤および熱安定剤から選択される1種または2種以上の成分を含んでもよく、これに制限されるものではない。
【0036】
前記ポリエステル樹脂は、当該技術分野において通常の重合方法であるTPA(Terephthalic acid)重合法またはDMT(dimethyl terephthalate)重合法などで製造してもよく、これに制限されるものではない。
【0037】
本発明の一様態において、前記ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートであってもよい。すなわち、前記ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸としてテレフタル酸(Terephthalic acid)を使用し、グリコールとしてエチレングリコール(Ethylene glycol)を使用して製造したポリエチレンテレフタレートであってもよい。
【0038】
また、本発明のポリエステルフィルムは、表面粗さを下げて離型フィルムのベースフィルムとして適用する際、表面粗さの転写によって離型層に塗布される層にピンホールや厚さムラなどが発生することを防止し、且つロール走行性、巻取性などのハンドリング(Handling)性が改善することで生産性を大幅に向上させるために、粒子を含むことが好ましい。
【0039】
本発明の一様態において、前記ポリエステルフィルムが多層フィルムの場合、前記コア層は、ポリエステル樹脂、より具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂単独からなってもよく、粒子を含んでもよいが、製膜安定性およびフィルム走行性を向上させるための観点から、粒子は、スキン層に含んでもよい。
【0040】
前記コア層に使用されるポリエチレンテレフタレート樹脂は、固有粘度0.6〜0.7dl/gのものを使用することが、耐熱性に優れ、共押出時に界面不安定が発生しないが、これに制限されるものではない。前記スキン層は、固有粘度0.6〜0.7dl/gのポリエステル樹脂とアンチブロッキング剤を含み、固有粘度が前記範囲を満たす範囲で、界面不安定が発生せず、コア層と安定して積層されて多層フィルムを製造することができ、加工性が容易であるという利点があるが、これに制限されるものではない。
【0041】
全フィルムに対して、前記コア層が70〜90重量%であり、スキン層が10〜30重量%であってもよく、前記範囲で、製膜安定性に優れるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0042】
本発明の一様態において、前記粒子は、平均粒径が0.01〜2.0μmの範囲であるものが、表面粗さを下げてピンホールなどの欠点がない離型フィルムのベースフィルムとして使用するのに適するため好ましく、前記粒子のうち粒径が大きい粒子Aと小さい粒子Bを含むバイモーダル粒子を使用し、前記大きい粒子Aと小さい粒子Bの粒径の比が下記式1を満たし、前記大きい粒子Aの含量が小さい粒子Bの含量と一致するか小さくして下記式2を満たすバイモーダル粒度分布を有してもよい。
【0045】
前記式2中、D=Vh/Vsであり、Vhはバイモーダル粒度分布のうち大きい粒子ピークの体積%、Vsはバイモーダル粒度分布のうち小さい粒子ピークの体積%である。
【0046】
前記大きい粒子Aと小さい粒子Bの粒径の比A/Bが、1.3〜2.5、具体的には1.4〜2.0、さらに具体的に1.6〜1.8の範囲で、表面粗さが低く、走行性に優れたフィルムを提供することができるため好ましい。粒径の比A/Bが大きいほど、大きい粒子が巨大ピークとして作用し、表面粗さの転写によってMLCCの作製時にショート(Short)による不良率が増加することがある。逆に、粒径の比A/Bが小さいほど、走行性に影響を与える有効ピークの個数が減少し、走行性および巻取性が低下し得る。したがって、前記範囲で、フィルム内の有効ピークの個数が増加し、MLCCの作製時に生産歩留りが向上することができるため好ましい。
【0047】
前記大きい粒子Aは、平均粒径が0.8〜2.0μm、具体的には1.0〜1.5μmであってもよく、小さい粒子Bは、平均粒径が0.01〜0.8μm、具体的に0.3〜0.6μmであってもよく、粒度分布の測定時に大きい粒子と小さい粒子のピークが重複しなくてもよい。
【0048】
前記大きい粒子Aの含量が小さい粒子Bの含量と一致するか小さいことが好ましく、さらに好ましくは、前記式2を満たすバイモーダル粒度分布を有する粒子を使用してもよい。すなわち、前記Dが、1.6〜2.6、さらに具体的には1.7〜1.8であってもよい。前記範囲で、表面粗さを下げることができ、且つ大きい粒子による走行性および巻取性を達成することができる。Dが増加するほど、表面粗さRa、Rpが増加して、表面粗さの転写によってピンホールが発生し、MLCCショートの不良率が増加することがあり、Dが減少するほど、有効ピークが減少して、走行性および巻取性が低下することがある。
【0049】
本発明の一様態において、前記粒子の含量は、フィルムの全重量に対して、1000〜3500ppm、具体的には1500〜3000ppm、さらに具体的には2000〜2500ppmであってもよい。共押出多層フィルムの場合、スキン層にのみ粒子を含む場合には、スキン層に使用された粒子の含量が前記範囲と一致してもよい。またはスキン層とコア層にいずれも粒子を含む場合には、全フィルム内の粒子の含量が前記範囲を満たしてもよい。前記範囲で、表面粗さを下げるとともに巻取性および走行性を満たすことから、生産性が向上するフィルムを提供することができるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0050】
本発明の一様態において、前記粒子は、有機粒子および無機粒子から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。前記無機粒子としては、当該技術分野において自明に使用される粒子であれば、制限なく使用可能である。例えば、炭酸カルシウム、シリカ、二酸化チタン、カオリン、硫酸バリウム、アルミナシリケートおよびカルシウムカーボネートなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を混合して使用してもよく、これに制限されるものではない。前記有機粒子は、シリコン樹脂、架橋ジビニルベンゼンポリメタクリレート、架橋ポリメタクリレート、架橋ポリスチレン樹脂、ベンゾグアナミン‐ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン‐メラミン‐ホルムアルデヒド樹脂およびメラミン‐ホルムアルデヒド樹脂からなる群から選択されるいずれか一つまたは二つ以上の混合物であってもよく、これに制限されるものではない。
【0051】
さらに具体的には、炭酸カルシウムを使用することが、他の粒子に比べ相対的に粒度分布が均一で、経済的な面から有利であるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0052】
前記条件を満たす粒度分布を有する粒子を作製する際、バイモーダル(Bimodal)構造が導入された単一粒子を使用してもよく、または種類が相違する2種以上の粒子を互いに混合するか、単一成分の粒子を粉砕、遠心分離、あるいは沈降および精製により分離した後、再度組み合わせをする方法を使用してもよい。
【0053】
前記粒子の投入は、ポリエステル樹脂の合成時に、グリコール成分に分散させたスラリー状に添加することが、分散性に優れ、粒子間の再凝集を防止することができるため効果的であるが、これに制限されるものではない。すなわち、重縮合ステップで添加されてもよいが、これに制限されない。
【0054】
本発明の一様態において、前記ポリエステルフィルムは、表面粗さピークカウント(peak count)Pcが、下記式3を満たしてもよい。
【0056】
前記式3中、Pcは単位面積当たりピーク(Peak)の個数であり、単位はea/mm
2である。
【0057】
前記表面粗さピークカウントが、80〜200、具体的には100〜180、さらに具体的には110〜170であってもよい。前記範囲で、表面粗さを下げるとともに巻取性および走行性を満たすことから、生産性が向上するフィルムを提供することができるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0058】
本発明の一様態において、前記ポリエステルフィルムは、接触式三次元表面粗さ計を用いて、0.08mmカット‐オフ値を適用して測定した中心線平均表面粗さRaが20nm以下であり、表面中心線で最大ピーク高さRpが300nm以下であってもよい。
【0059】
具体的には、中心線平均表面粗さRaが、1〜20nm、さらに具体的には4〜16nmであってもよく、表面中心線で最大ピーク高さRpが、10〜300nm、さらに具体的には20〜250nmであってもよい。前記範囲で、表面粗さが低く、平滑性に優れたフィルムを提供することができるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0060】
本発明の一様態において、前記ポリエステルフィルムは、機械方向の屈折率(nMD)が1.640以上であり、幅方向の屈折率(nTD)が1.670以上であり、複屈折率(△n=nTD−nMD)が0.03以上であってもよい。具体的には、機械方向の屈折率(nMD)が1.640〜1.650であり、さらに具体的には1.643〜1.647であってもよい。幅方向の屈折率(nTD)が、1.670〜1.680であり、さらに具体的には1.671〜1.674であってもよい。また、複屈折率(△n=nTD−nMD)が、0.03以上、さらに好ましくは0.03以上、0.07以下であってもよい。複屈折率が0.03未満の場合、フィルムの幅方向(TD)のヤング率(Young's Modulus)が低下し、後加工時にタレやシワが発生することがあり、特に、幅方向の厚さにムラが生じることがあり、複屈折率が0.07を超える場合、フィルムの幅方向の強度のみ向上させて製膜安定性が低下し、フィルム破断が発生することがあるため、前記範囲が好ましいが、これに制限されるものではない。
【0061】
本発明の一様態において、前記ポリエステルフィルムは、厚さが20〜40μmであってもよい。前記範囲で、離型フィルムのベースフィルムとしての適用に十分であるが、これに制限されるものではない。MLCC用離型フィルムの基材フィルムとして使用されるポリエステルフィルムは、継続してその使用厚さが薄膜化している傾向にあり、フィルムの厚さが40μmを超える場合には、使用後、廃棄の際に環境負荷が大きくなり、製造コストが上がるという問題が発生することがあり、20μm未満の場合には、グリーンシートのコーティング加工および離型作業において基材フィルムの剛性を保持することが難しく、加工不良が増加する問題が発生することがあるため、前記範囲が好ましいが、これに制限されるものではない。
【0062】
本発明の一様態において、前記ポリエステルフィルムは、片面または両面に離型層をさらに含んでもよい。前記離型層は、セラミックスラリーなどの塗布時に、塗布される層が均一に塗布されるようにし、且つ離型時に、容易に剥離されるようにするための観点から、シリコン離型層が形成されてもよい。前記離型層は、通常、電子材料用フィルムの離型フィルム分野において離型層として適用されるものであれば、制限なく使用可能である。
【0063】
本発明の一様態において、前記ポリエステルフィルムは、二軸延伸フィルムであってもよい。具体的には、前記ポリエステルフィルムは、機械方向に3〜5倍および幅方向に4〜6倍二軸延伸されていてもよい。前記延伸比で、高分子構造の熱的寸法安定性がさらに増加し、熱収縮を低減することができるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0064】
本発明の一様態において、前記ポリエステルフィルムは、二軸延伸後、200〜250℃で熱処理および1〜10%弛緩されていてもよい。具体的には、熱処理と同時に弛緩を付与してもよく、より具体的には、幅方向に1〜10%、さらに具体的には2〜4%弛緩してもよい。前記範囲で、フィルムが幅方向に緊張した状態を保持し、高分子構造の緻密性が高くなり、熱による変形を低減することができるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0065】
本発明の一様態において、前記ポリエステルフィルムが、多層ポリエステルフィルムであり、スキン層に粒子を含む場合を例に挙げて、製造方法についてさらに具体的に説明すると、
a)粒子およびポリエステル樹脂を含むスキン層用組成物と、ポリエステル樹脂を含むコア層用組成物を溶融および共押出し、コア層とスキン層が積層したシートを製造するステップと、
b)前記シートを機械方向に一軸延伸するステップと、
c)前記一軸延伸したフィルムを幅方向に延伸するステップと、
d)熱処理および弛緩するステップとを含んでもよい。
【0066】
また、必要に応じて、前記d)ステップの後、e)前記フィルムの片面または両面にコロナ処理を施すステップをさらに含んでもよい。
【0067】
本発明の一様態において、前記ポリエステルフィルムが単層ポリエステルフィルムの場合、前記a)ステップにおいて粒子およびポリエステル樹脂を含む組成物を溶融および押出し、シートを製造してもよい。また、前記ポリエステルフィルムが、多層ポリエステルフィルムであり、スキン層とコア層にいずれも粒子を含む場合には、前記a)ステップにおいてポリエステル樹脂および粒子を含むスキン層用組成物と、ポリエステル樹脂および粒子を含むコア層用組成物を溶融および共押出し、シートを製造してもよい。
【0068】
前記a)ステップにおいて、前記スキン層用組成物は、ポリエステル樹脂の重縮合ステップで粒子を添加して重合されたポリエステル樹脂マスターバッチチップを含んでもよい。具体的には、前記スキン層用組成物は、前記ポリエステル樹脂マスターバッチチップと、無機粒子を含んでいないポリエステル樹脂ベースチップを混合し、粒子の含量が、フィルムの全重量に対して1000〜3500ppmになるようにしてもよい。
【0069】
前記a)ステップにおいて、全フィルムに対して、コア層が70〜90重量%であり、スキン層が10〜30重量%であってもよい。前記範囲で、界面安定性に優れたフィルムを製造することができるため好ましいが、これに制限されるものではない。
【0070】
本発明の一様態において、前記b)ステップの機械方向の延伸後、必要に応じて、水分酸性コーティング液を塗布し、プライマーコーティング層を形成するステップをさらに含んでもよい。具体例としては、前記プライマーコーティング層は、後工程で塗布される物質との接着力を向上させるための易接着性プライマー層であるか、若しくはダストなどによってセラミックスラリーなどの塗布時に生じる不良または静電気による不良を防止するために帯電防止性を付与するための帯電防止プライマー層を形成するものであってもよい。
【0071】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、下記の実施例および比較例は、本発明をより詳細に説明するための一つの例示であって、本発明が下記実施例および比較例によって制限されるものではない。
【0072】
以下、本発明の物性は、次のように測定した。
【0073】
1)平均粒径および粒子分布
粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、LS13 320)を使用して測定しており、Bimodal Pointの左側ピーク(Peak)を中心にVsとし、同じ方法で右側ピーク(Peak)を中心にVhとした。その比を換算したDを算出し、最適の結果を算出した。
【0074】
Vhは、バイモーダル粒度分布のうち大きい粒子ピークの体積%であり、Vsは、バイモーダル粒度分布のうち小さい粒子ピークの体積%である。
【0075】
2)屈折率
フィルムロール(Roll)幅方向(TD)を基準に真中部でフィルムの機械方向(MD)と幅方向(TD)に50mm×15mmサイズの測定用試料を取った。これをMetricon社製のPrism Coupler(モデル2010/M)を用いて、フィルム機械方向(MD)および幅方向(TD)に対する屈折率を測定した。
【0076】
屈折率の測定の際、レーザ(Laser)は632.8nm He‐Neを使用し、Measure TypeはBulk thicknessタイプとして、TEモード(Transverse Electric)でフィルムの機械方向(MD)に対する屈折率(nMD)および幅方向(TD)に対する屈折率(nTD)をそれぞれ測定した。複屈折率は、下記の式で計算した。
【0077】
複屈折率(△n)=MD方向の屈折率(nMD)−TD方向の屈折率(nTD)
【0078】
3)表面粗さ(Ra)、最大の山高さ表面粗さ(Rp)およびピークカウント(Peak count、Pc)
JIS B‐0601に準じて、三次元表面粗さ測定装置(Tokyoseimitsu社製、Surfcom 590A‐3DF‐12)を使用して、測定速度0.03mm/sec、触針半径2μm、荷重0.7mm/N、測定面積1.0mm
2、カットオフ値0.08mmの条件下で測定し、中心線をx軸、垂直方向をy軸とし、粗さ曲線をy=f(x)で示した時に下記の式で計算した。
【0080】
この際、サンプリング長さ内の中心線から最大のプロファイル(Profile)山の高さを最大の山高さ表面粗さ(Rp)とした。単位面積当たり山頂点(Peak)の個数をピークカウント(Peak count)とした。
【0081】
4)生産歩留り
実施例および比較例で製造されたポリエステルフィルムのマスタロール1ロールを基材フィルムとして使用し、シリコン離型層を形成した後、セラミックスラリーを塗布して、1.5〜3.0μm厚さのセラミックグリーンシートを製造した。この際、ピンホールが発生したか否かに応じて次のように評価した。生産歩留りは、供給されたポリエステルフィルムのマスタロール1ロールの面積に対して、最終生成されたセラミックグリーンシートの面積で計算する。
【0082】
生産歩留り(%)=セラミックグリーンシートの面積/ポリエステルフィルムのマスタロール1ロールの面積×100
優秀:ポリエステルフィルムのマスタロール1ロールに対してピンホールが発生しない
良好:ポリエステルフィルムのマスタロール1ロールに対してピンホールが一部発生し、生産歩留りが70%以上
普通:ポリエステルフィルムのマスタロール1ロールに対してピンホールが一部発生し、生産歩留りが30%以上
不良:ポリエステルフィルムのマスタロール1ロールに対してピンホールが多数発生し、生産歩留りが30%未満
【0083】
[実施例1]
平均粒径1.0μmの炭酸カルシウム粒子Aと平均粒径0.6μmの炭酸カルシウム粒子Bを含むポリエチレンテレフタレートチップを使用して単層フィルムに押出し、冷却ロールにキャスティングして、未延伸シートを製造した。
【0084】
機械方向に3.9倍延伸後、幅方向に4.0倍に延伸し、235℃で熱処理し、熱処理の際、幅方向に5.5%に弛緩させて厚さ30μmのフィルムを製造した。フィルムの製膜条件および粒子の含量とフィルムの製造後の物性を評価し、表1に示した。
【0085】
[実施例2および実施例3]
下記表1のように変更した以外は、実施例1と同様にし、フィルムを製造した。
【0086】
フィルムの製膜条件および粒子の含量とフィルムの製造後の物性を評価し、表1に示した。
【0087】
[実施例4]
コア層には、無機粒子を含んでいないポリエチレンテレフタレート(PET)チップを使用し、スキン層には、平均粒径1.0μmの炭酸カルシウム粒子Aと平均粒径0.6umの炭酸カルシウム粒子Bを含むポリエチレンテレフタレートチップを使用して、スキン層/コア層/スキン層が積層された3層フィルムに共押出し、冷却ロールにキャスティングして未延伸シートを製造した。この際、前記コア層は、全フィルム重量の80重量%、スキン層は、全フィルム重量の20重量%にした。
【0088】
機械方向に3.9倍延伸後、幅方向に4.0倍に延伸し、235℃で熱処理し、熱処理の際、幅方向に5.5%に弛緩させて、厚さ30μmのフィルムを製造した。フィルムの製膜条件および粒子の含量とフィルムの製造後の物性を評価し、表1に示した。
【0089】
[実施例5]
下記表1のように粒子含量比を変更した以外は、実施例1と同様にし、フィルムを製造した。
【0090】
フィルムの製膜条件および粒子の含量とフィルムの製造後の物性を評価し、表1に示した。
【0091】
[比較例1〜5]
下記表1のように変更した以外は、実施例1と同様にし、フィルムを製造した。
【0092】
フィルムの製膜条件および粒子の含量とフィルムの製造後の物性を評価し、表1に示した。
【0094】
前記表1に示されているように、本発明の実施例は、表面粗さが低く、生産歩留りが良好であることが分かる。
【0095】
比較例1〜3は、1種の粒子を使用した場合であり、生産歩留りが不良であることが分かり、比較例4および5に示されているように、2種の粒子を使用しても、粒子間の粒径の比およびバイモーダル粒度分布が本発明の範囲から逸脱する場合、生産歩留りが不良であることが分かる。