(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スイッチングトランジスタのスイッチング周波数より低い周波数の変調信号を生成し、前記変調信号に応じて前記上側しきい値信号および前記下側しきい値信号の差分を変調する変調器をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の点灯回路。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、一般にロービームとハイビームとを切りかえることが可能である。ロービームは、近方を所定の照度で照明するものであって、対向車や先行車にグレアを与えないよう配光規定が定められており、主に市街地を走行する場合に用いられる。一方、ハイビームは、前方の広範囲および遠方を比較的高い照度で照明するものであり、主に対向車や先行車が少ない道路を高速走行する場合に用いられる。したがって、ハイビームはロービームと比較してより運転者による視認性に優れているが、車両前方に存在する車両の運転者や歩行者にグレアを与えてしまうという問題がある。
【0003】
近年、車両の周囲の状態にもとづいて、ハイビームの配光パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)技術が提案されている。ADB技術は、車両の前方の先行車、対向車や歩行者の有無を検出し、車両あるいは歩行者に対応する領域を減光あるいは消灯するなどして、車両あるいは歩行者に与えるグレアを低減するものである。
【0004】
車両灯具の光源の点灯には、スイッチングコンバータが利用される場合が多いが、ADB制御では、光源の点消灯や光量を高速に変化させる必要がある。そこで本発明者は、高速応答性に優れるヒステリシス制御(Bang-Bang制御)を採用することを検討した。
図1は、本発明者らが検討したヒステリシス制御の車両用灯具のブロック図である。なおこの比較技術を公知技術として認定してはならない。
【0005】
車両用灯具1rは、半導体光源10および点灯回路20rを備える。半導体光源10は、LED(発光ダイオード)あるいはLD(レーザダイオード)などの半導体デバイスを含む。点灯回路20rは、スイッチングコンバータ30rおよびコンバータコントローラ32rを含む。
【0006】
スイッチングコンバータ30rは、バッテリ2からスイッチ4を介してバッテリ電圧V
BAT(入力電圧V
INともいう)を受け、半導体光源10にランプ電流(駆動電流)I
LAMPを供給する。たとえばスイッチングコンバータ30rは、降圧コンバータ(Buckコンバータ)であり、入力キャパシタC1、スイッチングトランジスタM1、ダイオードD1、インダクタL1を含む。
【0007】
コンバータコントローラ32rは、ランプ電流I
LAMPを検出し、ランプ電流I
LAMPが半導体光源10の目標光量に対応する目標電流I
REFと一致するように、スイッチングトランジスタM1のスイッチングのデューティ比を調節する。コンバータコントローラ32rはヒステリシス制御方式のコントローラであり、電流検出回路34、ヒステリシスコンパレータ36、ドライバ38を備える。スイッチングコンバータ30rにおいて、ランプ電流I
LAMPの経路上には、電流検出抵抗(以下、センス抵抗という)R
CSが挿入される。センス抵抗R
CSには、ランプ電流I
LAMPに比例した電圧降下が発生する。電流検出回路34は、センス抵抗R
CSの電圧降下にもとづいて現在のランプ電流I
LAMPを示す電流検出信号V
CSを生成する。
【0008】
ヒステリシスコンパレータ36は、電流検出信号V
CSを基準電圧V
REFに応じて定まる2つのしきい値信号V
THL,V
THHと比較し、比較結果に応じた制御パルスS
CNTを生成する。具体的には制御パルスS
CNTは、電流検出信号V
CSが、ランプ電流I
LAMPのピーク値I
PEAKに相当する上側しきい値信号V
THHに達すると第1レベルに遷移し、電流検出信号V
CSがランプ電流I
LAMPのボトム値I
BOTTOMに相当する下側しきい値信号V
THLに達すると第2レベルに遷移する。ドライバ38は、制御パルスS
CNTにもとづいてスイッチングトランジスタM1を駆動する。
【0009】
ランプ電流I
LAMPは、ピーク値I
PEAKとボトム値I
BOTTOMの間を往復することとなり、したがって半導体光源10は、ピーク値I
PEAKとボトム値I
BOTTOM(2つのしきい値信号V
THH,V
THL)の平均値I
REFに応じた輝度で発光する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、上述のヒステリシス制御の点灯回路において、PWM調光(PWM減光)を行うことを検討した。すなわち、制御パルスS
CNTの周波数よりも低い周波数のPWM調光パルスS
PWMを生成し、PWM調光パルスS
PWMが第1レベル(たとえばハイレベル)の点灯期間において、スイッチングトランジスタM1をスイッチングし、第2レベル(たとえばローレベル)の消灯期間において、スイッチングトランジスタM1をオフする。PWM調光パルスS
PWMのデューティ比を変化させることにより、半導体光源10の実効的な輝度を変化させることができる。
【0012】
図2は、
図1の車両用灯具1rにおけるPWM調光を説明する図である。なお本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0013】
PWM調光パルスS
PWMがハイレベルに遷移し、点灯期間となると、スイッチングトランジスタM1がターンオンする。そして、ランプ電流I
LAMPが、(V
IN−V
OUT)/Lの傾きで増加していき、上限I
PEAKに達すると、スイッチングトランジスタM1がターンオフする。その後、点灯期間の間、ランプ電流I
LAMPは、ピーク値I
PEAKとボトム値I
BOTTOMの間を往復する。
【0014】
やがてPWM調光パルスS
PWMがローレベルに遷移し、消灯期間となると、スイッチングトランジスタM1がターンオフする。そうすると、ランプ電流I
LAMPが、(V
OUT/L)の傾きで低下していき、ゼロとなる。
【0015】
ヒステリシス制御では、点灯期間と消灯期間の切りかえに際して、ランプ電流I
LAMPが非常に高速に変化する。これはヒステリシス制御の利点のひとつと言える。ところが、インダクタL1のインダクタンスの値や、入出力電圧V
IN,V
OUTの組み合わせによっては、点灯期間と消灯期間の切りかえ時のランプ電流I
LAMPの急峻な変化が、電磁ノイズの原因となり得る。
【0016】
本発明はこれらの課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、電磁ノイズを抑制可能な車両用灯具およびその点灯回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のある態様は、車両用灯具に使用される点灯回路に関する。点灯回路は、車両用灯具に設けられた半導体光源に電力を供給するスイッチングコンバータと、スイッチングコンバータを制御するコンバータコントローラと、を備える。コンバータコントローラは、スイッチングコンバータから半導体光源に供給される駆動電流に応じた電流検出信号を、基準信号に応じて定まる上側しきい値信号および下側しきい値信号と比較し、比較結果に応じた制御パルスを生成するヒステリシスコンパレータと、制御パルスに応じてスイッチングコンバータのスイッチングトランジスタを駆動するドライバと、PWM(パルス幅変調)調光信号をなまらせて徐変信号を生成し、徐変信号にもとづいて基準信号を変化させるPWM調光回路と、を備える。
【0018】
この態様によると、ランプ電流の包絡線を、緩やかに変化させることにより、PWM調光にともなう電磁ノイズを抑制できる。
【0019】
PWM調光回路は、PWM調光信号を受け、徐変信号を生成するローパスフィルタ(積分回路)を含んでもよい。これにより、ローパスフィルタのカットオフ周波数(時定数)に応じて、電磁ノイズの量と、PWM調光のリニアリティを調節できる。
【0020】
ヒステリシスコンパレータは、電流検出信号をしきい値電圧と比較し、制御パルスを生成するコンパレータと、アナログ調光信号が発生するラインと接地の間に順に直列に設けられる第1抵抗、トランジスタおよび第2抵抗と、第1抵抗とトランジスタの接続点に生ずる第1電圧と、トランジスタと第2抵抗の接続点に生ずる第2電圧とを受け、制御パルスに応じた一方を出力するセレクタと、含んでもよい。しきい値電圧は、セレクタの出力電圧に応じていてもよい。
【0021】
ある態様の点灯回路は、制御パルスの周波数を示す周波数検出信号を生成する周波数検出回路と、周波数検出信号が基準値に近づくように、上側しきい値信号および下側しきい値信号の電位差を変化させるしきい値電圧調節回路と、をさらに備えてもよい。
この態様によると、入力電圧や出力電圧、インダクタンスの変動にかかわらず、スイッチング周波数を基準値に応じた周波数に安定化することができる。
【0022】
ある態様の点灯回路は、スイッチングトランジスタのスイッチング周波数より低い周波数の変調信号を生成し、変調信号に応じて上側しきい値信号および下側しきい値信号の差分を変調する変調器をさらに備えてもよい。
この態様によると、スイッチング周波数のスペクトルを拡散させることができ、これにより、ビートノイズなどの発生を抑制できる。
【0023】
本発明の別の態様は車両用灯具に関する。車両用灯具は、半導体光源と、半導体光源を点灯させる上述のいずれかの点灯回路と、を備える。
【0024】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のある態様によれば、電磁ノイズを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0028】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0029】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0030】
(第1の実施の形態)
図3は、第1の実施の形態に係る車両用灯具1のブロック図である。車両用灯具1は、半導体光源10および点灯回路20を備える。半導体光源10は、LEDやLD、有機EL(エレクトロルミネッセンス)などが例示されるが、特に限定されない。点灯回路20は、スイッチングコンバータ30およびコンバータコントローラ32を備える。
図1と同様にスイッチングコンバータ30は降圧コンバータであり、コンバータコントローラ32は、スイッチングコンバータ30から半導体光源10に供給されるランプ電流I
LAMPを、所定の目標電流I
REFに安定化する。
【0031】
コンバータコントローラ32は、電流検出回路34、ヒステリシスコンパレータ36、ドライバ38およびPWM調光回路90を備える。電流検出回路34は、スイッチングコンバータ30から半導体光源10に供給されるランプ電流I
LAMPに応じた電流検出信号V
CSを生成する。
図1と同様に、センス抵抗R
CSをランプ電流I
LAMPの経路上に挿入し、電流検出回路34によりセンス抵抗R
CSの電圧降下を増幅して電流検出信号V
CSを生成してもよい。
【0032】
ヒステリシスコンパレータ36は、電流検出信号V
CSを、上側しきい値信号V
THHおよび下側しきい値信号V
THLと比較し、比較結果に応じた制御パルスS
CNTを生成する。上側しきい値信号V
THHおよび下側しきい値信号V
THLは、アナログ調光信号V
ADIMに応じて規定される。
【0033】
ドライバ38は、制御パルスS
CNTに応じてスイッチングコンバータ30のスイッチングトランジスタM1を駆動する。本実施の形態において、制御パルスS
CNTのハイレベルがスイッチングトランジスタM1のオンに、ローレベルがスイッチングトランジスタM1のオフに対応する。
【0034】
点灯回路20には、PWM調光信号S
PWMが入力される。PWM調光信号S
PWMは、数十Hz〜数百Hz程度の周波数を有し、そのデューティ比は、半導体光源10の目標輝度に応じて変化する。
【0035】
PWM調光回路90は、PWM調光信号S
PWMをなまらせて徐変信号S
SOFTを生成し、徐変信号S
SOFTにもとづいてアナログ調光信号V
ADIMを変化させる。
【0036】
以上が車両用灯具1の構成である。続いてその動作を説明する。
図4は、
図3の点灯回路20の動作波形図である。アナログ調光信号V
ADIMは、PWM調光信号S
PWMをなまらせた徐変信号に応じた波形を有する。PWM調光信号S
PWMがローレベルからハイレベルに遷移し、点灯期間に移行すると、ヒステリシスコンパレータ36における上側しきい値信号V
THHおよび下側しきい値信号V
THLは、アナログ調光信号V
ADIMに応じて緩やかに増加する。したがって電流検出信号V
CS、ひいてはランプ電流I
LAMPの包絡線は、アナログ調光信号V
ADIMに応じて緩やかに増加していく。
【0037】
反対にPWM調光信号S
PWMがハイレベルからローレベルに遷移し、消灯期間に移行すると、ヒステリシスコンパレータ36における上側しきい値信号V
THHおよび下側しきい値信号V
THLは、アナログ調光信号V
ADIMに応じて緩やかに低下する。したがって電流検出信号V
CS、ひいてはランプ電流I
LAMPの包絡線は、アナログ調光信号V
ADIMに応じて緩やかに減少していく。
【0038】
以上が点灯回路20の動作である。
図4には比較のために、
図1におけるランプ電流I
LAMP’の波形が一点鎖線で示される。一点鎖線では、PWM調光信号S
PWMがハイレベルに遷移すると、ランプ電流I
LAMPは直ちに目標電流I
REF付近まで増加し、このときの急峻な電流変化が電磁ノイズの要因となる。これに対して
図3の点灯回路20によれば、ランプ電流I
LAMPは、I
LAMP’と傾きこそ同じであるが、1回のスイッチングごとの変化量が小さくなるため、電磁ノイズを抑制できる。
【0039】
本発明は、
図3のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、回路に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や回路動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例を説明する。
【0040】
図5は、
図3の点灯回路20の一部の構成例を示す回路図である。PWM調光回路90は、ローパスフィルタ92およびバッファ94を含む。ローパスフィルタ92はたとえば1次RCフィルタであり、抵抗R51およびキャパシタC51を含む。ローパスフィルタ92の出力信号が、上述する徐変信号に相当する。バッファ94は、徐変信号を受け、それをアナログ調光信号V
ADIMとして出力する。バッファ94に代えて、非反転アンプを用いてもよい。
【0041】
アナログ調光信号V
ADIMを緩やかにしすぎると、電磁ノイズは減少するが、PWM調光信号S
PWMのデューティ比が小さい領域において、デューティ比対光強度のリニアリティが悪化する。反対にアナログ調光信号V
ADIMを急峻にしすぎると、デューティ比対光強度のリニアリティは改善するが電磁ノイズが増加する。
図5のPWM調光回路90によれば、ローパスフィルタ92のカットオフ周波数にもとづいて、電磁ノイズの低減効果とPWM調光のリニアリティのバランスを設定できる。
【0042】
ヒステリシスコンパレータ36は、コンパレータCOMP1、第1抵抗R21、第2抵抗R22、第1トランジスタM21、セレクタ37、抵抗R61〜R63を含む。コンパレータCOMP1は、電流検出信号V
CSをしきい値電圧V
THと比較し、制御パルスS
CNTを生成する。第1抵抗R21、第1トランジスタM21、第2抵抗R22は、アナログ調光信号V
ADIMが発生するライン96と接地の間に順に直列に設けられる。
【0043】
第1トランジスタM21のゲートは適切にバイアスされる。たとえば第1トランジスタM21のバイアスのためにオペアンプOA1が設けられる。オペアンプOA1の出力は、第1トランジスタM21のゲートと接続され、非反転入力端子には、トランジスタM21と第2抵抗R22の接続点と接続され、反転入力端子にはとある電圧V
Xが入力される。この構成では、第1トランジスタM21に、電圧V
Xに比例した電流I
X=V
X/R22が流れるようにバイアスされる。このとき、2つの電圧V
H,V
Lは以下の式で表される。
V
H=V
ADIM−Ix×R21 …(1a)
V
L=Ix×R22 …(1b)
R21=R22=Rとすれば、
V
H=V
ADIM−Ix×R …(2a)
V
L=Ix×R …(2b)
となる。またそれらの平均電圧は、式(3)で与えられる。
(V
H+V
L)/2=V
ADIM/2 …(3)
つまり、ランプ電流I
LAMPの平均値(I
REF)をアナログ調光電圧V
ADIMにもとづいて制御することができる。
【0044】
セレクタ37は、第1抵抗R21と第1トランジスタM21の接続点に生ずる第1電圧V
Hと、第1トランジスタM21と第2抵抗R22の接続点に生ずる第2電圧V
Lとを受け、制御パルスS
CNTに応じた一方を出力する。
【0045】
コンパレータCOMP1に与えられるしきい値電圧V
THは、セレクタ37の出力電圧V
Yに応じている。たとえば抵抗R61〜R63によって、電圧V
Yおよびアナログ調光信号V
ADIMを加算平均して、しきい値電圧V
THを生成してもよい。あるいは電圧V
Yをそのまましきい値電圧V
THとしてもよい。
【0046】
(第2の実施の形態)
図6は、第2の実施の形態に係る車両用灯具1aのブロック図である。
図6のコンバータコントローラ32aは、
図3のコンバータコントローラ32に加えて、周波数検出回路40およびしきい値電圧調節回路42をさらに備える。
【0047】
周波数検出回路40は、制御パルスS
CNTの周波数、つまりスイッチングトランジスタM1のスイッチング周波数を示す周波数検出信号V
FREQを生成する。しきい値電圧調節回路42は、周波数検出信号V
FREQが基準値V
REFに近づくように、上側しきい値信号V
THHおよび下側しきい値信号V
THLの電位差(ヒステリシス幅)ΔV(=V
THH−V
THL)を変化させる。
【0048】
第2の実施の形態によれば、入力電圧V
INや出力電圧V
OUT、インダクタンスL1の変動にかかわらず、スイッチング周波数を基準値V
REFに応じた周波数に安定化することができる。
【0049】
続いて第2の実施の形態の具体的な構成例を説明する。
図7は、
図6の点灯回路20aの構成例を示す回路図である。
図7には、周波数検出回路40、しきい値電圧調節回路42およびヒステリシスコンパレータ36の一部が示されている。
【0050】
周波数検出回路40は、F/V変換回路と把握することができる。周波数検出回路40は、ハイパスフィルタ52、第1キャパシタC11、第2トランジスタM12、充電回路54、ピークホールド回路56を含む。ハイパスフィルタ52は、制御パルスS
CNTもしくはスイッチングトランジスタM1のゲートパルスを受ける。ハイパスフィルタ52は微分回路と把握することもできる。第1キャパシタC11の一端は接地される。充電回路54は、第1キャパシタC11を充電する。充電回路54は、電流源あるいは抵抗で構成される。第2トランジスタM12は第1キャパシタC11と並列に接続され、ハイパスフィルタ52の出力信号が、ゲートソース間しきい値電圧を超えると第1キャパシタC11を放電する。
【0051】
第1キャパシタC11には、ランプ波形を有する第1周期信号S11が発生する。周波数検出回路40は、第1周期信号S11の振幅に応じた周波数検出信号V
FREQを出力する。具体的にはピークホールド回路56は、第1周期信号S11を受け、そのピーク値を示す周波数検出信号V
FREQを出力する。なお周波数検出回路40の構成は特に限定されない。
【0052】
上述したように
図5のヒステリシスコンパレータ36において、2つの電圧V
H,V
Lは式(2a)、(2b)で与えられる。したがってそれらの電位差は、式(4)で与えられる。
V
H−V
L=V
ADIM−2×Ix×R=V
ADIM−2×V
X …(4)
したがって、電圧V
Xを変化させることにより、電位差V
H−V
Lを変化が変化し、ひいてはヒステリシス幅ΔVを変化させることができる。
【0053】
そこでしきい値電圧調節回路42は、周波数検出信号V
FREQが基準値V
REFに近づくように、電圧V
Xを変化させる。たとえばしきい値電圧調節回路42は、周波数検出信号V
FREQと基準値V
REFの誤差にもとづいて電圧V
Xを生成してもよい。しきい値電圧調節回路42は、周波数検出信号V
FREQを基準値V
REFと比較する電圧コンパレータと、電圧コンパレータの出力パルスを平滑化するローパスフィルタと、を含んでもよい。あるいはしきい値電圧調節回路42は、周波数検出信号V
FREQと基準値V
REFの誤差を増幅するエラーアンプを含んでもよい。
【0054】
図7の回路動作を説明する。スイッチングトランジスタM1のスイッチング周波数が目標周波数より高い状態では、V
FREQ<V
REFとなり、電圧V
Xが低下する。これにより、上側電圧V
Hと下側電圧V
Lの電位差つまりしきい値電圧V
THH、V
THLの電位差ΔVが大きくなり、スイッチング周波数が低くなる方向、つまり目標周波数に近づく方向にフィードバックがかかる。
【0055】
反対に、スイッチングトランジスタM1のスイッチング周波数が目標周波数より低い状態では、V
FREQ>V
REFとなり、電圧V
Xが上昇する。これにより、上側電圧V
Hと下側電圧V
Lの電位差が小さくなり、スイッチング周波数が高くなる方向、つまり目標周波数に近づく方向にフィードバックがかかる。このようにして点灯回路20によれば、スイッチング周波数を目標周波数に安定化することができる。
【0056】
周波数のフィードバック制御は、入力電圧V
INの変動に限らず、出力電圧V
OUTの変動、インダクタL1のインダクタンスのばらつき、温度変動など、スイッチング周波数を変動させるあらゆる変動、ばらつきに対して有効である。そしてスイッチング周波数の予期せぬ変動を抑制できるため、スイッチングノイズ対策にかかるコストを削減することが可能である。
【0057】
また、上側しきい値信号V
THHと下側しきい値信号V
THLの平均レベルは、アナログ調光信号V
ADIMのみに依存しており、ヒステリシス幅Vxには依存しない。したがってヒステリシス幅ΔVを変化させつつも、ランプ電流I
LAMPの平均値を一定に維持することができ、半導体光源10のちらつきを防止できる。
【0058】
(第3の実施の形態)
図8は、第3の実施の形態に係る車両用灯具1bのブロック図である。
図6のコンバータコントローラ32bは、
図6のコンバータコントローラ32aに加えて、変調器60をさらに備える。変調器60は、スイッチングトランジスタM1のスイッチング周波数より低い周波数の変調信号V
MODを生成し、変調信号V
MODに応じて上側しきい値信号V
THHおよび下側しきい値信号V
THLの差分(ヒステリシス幅)を変調する。たとえば変調器60は、しきい値電圧調節回路42に入力される基準値V
REFに変調信号V
MODを重畳してもよい。
【0059】
図9は、変調器60の構成例を示す回路図である。変調器60は、スイッチング周波数よりも十分に周波数が低い変調信号V
MODを生成する発振器62を含み、変調信号V
MODに応じて、基準値V
REFを変化させる。発振器62は、抵抗R91〜R94、キャパシタC91、オペアンプOA91を含む。キャパシタC91には、抵抗R91,R92により定まる電圧レベルを基準とした三角波の変調信号V
MODが発生する。
【0060】
なお変調信号V
MODの波形は特に限定されず、のこぎり波、ランプ波、正弦波、台形波のいずれかであってもよく、別の観点から言えば、スロープを有する周期信号であればよい。抵抗R95〜R97によって、変調信号V
MODと電源電圧V
CCが、加算平均(重み付け加算)され、変調信号V
MODが重畳された基準値V
REFが生成される。
【0061】
第3の実施の形態によれば、スイッチング周波数の目標周波数を、変調信号V
MODに応じてゆっくりと変化させながら、実際のスイッチング周波数を目標周波数に近づけるようにフィードバック制御することにより、入力電圧V
INや出力電圧V
OUTの変動、インダクタンスのばらつき、温度変動等の影響を排除しつつも、スイッチング周波数のスペクトルを拡散させることができる。これにより、ビートノイズなどの発生を抑制できる。
【0062】
なお第3の実施の形態において、変調器60に要求される機能は、変調信号V
MODに応じて上側しきい値信号V
THHおよび下側しきい値信号V
THLの差分ΔVを変調することである。したがって変調器60は、基準値V
REFに代えて周波数検出信号V
FREQに対して、変調信号V
MODを重畳してもよい。
【0063】
(第4の実施の形態)
図10は、第4の実施の形態に係る車両用灯具1cのブロック図である。
図10のコンバータコントローラ32cは、
図3のコンバータコントローラ32に加えて変調器70を備える。変調器70は、スイッチングトランジスタM1のスイッチング周波数よりも低い周波数の変調信号V
MODを生成し、変調信号V
MODに応じてヒステリシス幅ΔVを変調する。変調器70は、
図9の変調器60と同様に構成してもよい。
【0064】
ヒステリシスコンパレータ36を、
図5の構成とする場合、トランジスタM21のバイアス状態つまり電流Ixを、変調信号V
MODにもとづいて変調すればよい。上述のように電圧V
HとV
Lの電位差すなわちヒステリシス幅ΔVは、式(4)で与えられる。したがって、電圧Vxに変調信号V
MODを重畳することにより、ヒステリシス幅ΔVを変調し、スペクトルを拡散することができる。
【0065】
(変形例)
続いて、いくつかの実施の形態において適用可能な変形例を説明する。
【0066】
(第1変形例)
いくつかの実施の形態では、PWM調光回路90、周波数検出回路40、しきい値電圧調節回路42、変調器70、等をアナログ回路で構成したが、それらの一部あるいは全部をデジタル回路で構成してもよい。さらには、コンバータコントローラ32全体をデジタル回路をベースに構成してもよい。この場合、電流検出回路34の出力信号をデジタル値に変換するA/Dコンバータを追加し、ヒステリシスコンパレータ36をデジタルコンパレータとすればよい。
【0067】
(第2変形例)
スイッチングコンバータ30は昇圧コンバータ、昇降圧コンバータであってもよいし、トランスを用いたコンバータであってもよいし、Cukコンバータなどその他のコンバータであってもよい。
【0068】
(用途)
図11は、ADB機能を有するアレイ方式の車両用灯具1のブロック図である。ADBにおいては、ハイビーム照射領域は、複数N個(Nは2以上の自然数)のサブ領域に分割される。半導体光源10は、N個のサブ領域に対応づけられる複数の発光素子12_1〜12_Nを含む。各発光素子12は、LED(発光ダイオード)やLD(レーザダイオード)などの半導体デバイスであり、それぞれが対応するサブ領域を照射するよう配置される。点灯回路20は、複数の発光素子12_1〜12_Nそれぞれのオン(点灯)、オフ(消灯)を制御することで、ハイビームの配光を変化させる。あるいは点灯回路20は、高い周波数で発光素子12をPWM(パルス幅変調)制御することで、実効的な輝度を調節する。
【0069】
点灯回路20は、スイッチングコンバータ30および図示しないコンバータコントローラ32に加えて、複数のバイパス回路80_1〜80_N、コントローラ82を備える。複数のバイパス回路80_1〜80_Nは、複数の発光素子12_1〜12_Nに対応づけられる。バイパス回路80はオン、オフが切りかえ可能に構成される。i番目のバイパス回路80_iがオン状態となると、ランプ電流I
LAMPが、発光素子12_iではなくバイパス回路80_iに流れ、発光素子12_iが消灯し、バイパス回路80_iがオフ状態となると、ランプ電流I
LAMPが発光素子12_iに流れて点灯する。
【0070】
車両用灯具1を制御する上流のプロセッサ(たとえば電子制御ユニットECU)6は、車両前方の状態にもとづいて、ハイビームにより照射すべきサブ領域を判定し、点灯回路20のコントローラ82に指示する。コントローラ82は、プロセッサ6からの制御指令にもとづいてバイパス回路80_1〜80_Nの状態を制御する。具体的には、照射すべきサブ領域に対応する発光素子12を選択し、選択された発光素子12と並列なバイパス回路80をオフ状態とし、残りの発光素子12と並列なバイパス回路80をオン状態とする。
【0071】
図12は、ADB機能を有するブレードスキャン方式の車両用灯具1を模式的に示す斜視図である。車両用灯具1は主として、走査型光源11、投影レンズ120および点灯回路20を備える。
【0072】
走査型光源11は、ブレード(反射鏡)100および光源10を備える。光源10は複数個設けてもよいが、ここでは理解の容易化、説明の簡素化のため、1個の光源10の場合を説明する。
【0073】
光源10は、LED(発光ダイオード)あるいはレーザダイオードを利用した半導体光源である。ブレード100は光源10の出射光L1を受け、所定の周期運動を繰り返すことによりその反射光L2を車両前方で横方向(図中、Y方向)に走査する。本実施の形態では、ブレード100は、図示しないモータに取り付けられており、回転運動を行なう。ある時刻においてブレード100の出射光L1は、ブレード100の位置(ロータの回転角)に応じた反射角で反射し、照射領域300が形成される。
【0074】
ブレード100が回転することで、反射角が変化し、照射領域300がY方向に走査される。この動作を高速に、たとえば50Hz以上で繰り返すことで車両前方には、配光パターン310が形成される。点灯回路20は、所望の配光パターンが得られるように、ブレード100の周期運動と同期しながら、光源10の光量(輝度)を制御する。照射領域300が照射される範囲(領域)を点灯領域R
ON、照射領域300が照射されない範囲(領域)を消灯領域R
OFFと称する。配光パターン310は、点灯領域R
ONと消灯領域R
OFFの組み合わせである。
【0075】
図12の車両用灯具1において、前方車両に対するアンチグレアのために、前方車両の存在箇所を消灯領域R
OFFとする配光パターン310を形成する場合を考える。この場合、半導体光源10の点消灯は、ブレード100の周期運動と同期して切りかえられ、したがってこの動作もPWM調光の一種と捉えることができる。
【0076】
走査型光源11の構成は
図12のそれに限定されない。たとえばブレード100に代えて、ポリゴンミラーやガルバノミラーを用いてもよいし、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スキャンミラーを用いてもよい。また、モータに代えてアクチュエータを設け、ブレード100の向きを変化させてもよい。
【0077】
あるいはブレード100を固定し、あるいは省略して、半導体光源10の光軸をアクチュエータによって移動させてもよい。あるいはブレード100に代えて、電気光学素子を利用してもよい。たとえば電気光学素子は屈折率が電圧あるいは電流、温度等によって制御可能なレンズであってもよい。周期的にレンズの屈折率を変化させることにより、光を走査させてもよい。
【0078】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。