特許第6820982号(P6820982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タムラ製作所の特許一覧

特許6820982黒色硬化性樹脂組成物およびプリント配線基板
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6820982
(24)【登録日】2021年1月7日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】黒色硬化性樹脂組成物およびプリント配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20210114BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   H05K3/28 D
   G03F7/004 505
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-132479(P2019-132479)
(22)【出願日】2019年7月18日
(65)【公開番号】特開2020-25092(P2020-25092A)
(43)【公開日】2020年2月13日
【審査請求日】2019年8月28日
(31)【優先権主張番号】特願2018-146678(P2018-146678)
(32)【優先日】2018年8月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 一彦
【審査官】 鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−065942(JP,A)
【文献】 特開2010−060812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
G03F 7/004
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)エポキシ化合物と、(D)反応性希釈剤と、(E)着色剤とを含有し、
前記(E)成分が、(E1)黒色顔料および(E3)ラジカル反応性のエチレン性不飽和基を有する黒色以外の染料を含有する黒色硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)エポキシ化合物と、(D)反応性希釈剤と、(E)着色剤とを含有し
記(E)成分が、(E2)ラジカル反応性のエチレン性不飽和基を有する黒色染料を含有する黒色硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項に記載の黒色硬化性樹脂組成物において、
前記(E3)成分が、エチレン性不飽和基を有するカチオン性ローダミン誘導体、エチレン性不飽和基を有するカチオン性トリアリールメタン系色素誘導体、およびエチレン性不飽和基を有するカチオン性シアニン系色素誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である黒色硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載の黒色硬化性樹脂組成物において、
前記(E3)成分が、黄色染料、青色染料および赤色染料からなる群から選択される少なくとも1種である黒色硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項に記載の黒色硬化性樹脂組成物において
記(E)成分が、黄色顔料および青色顔料からなる群から選択される少なくとも1種を、さらに含有する
黒色硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の黒色硬化性樹脂組成物において、
ソルダーレジスト膜を形成する際に用いる
黒色硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の黒色硬化性樹脂組成物からなるソルダーレジスト膜を備えるプリント配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板のはんだ付けランドを除く配線における永久保護皮膜(いわゆるソルダーレジスト膜)を形成するための黒色硬化性樹脂組成物、およびそれを用いたプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス分野では、技術進歩に伴い、小型化、軽量化への要求が一層増し、これに伴い、より小型化された電子部品を高密度に配置するために、プリント配線基板の導体回路パターンのファインピッチ化、微細化、高精度性が求められている。これに応じて、ソルダーレジスト膜についても、解像性(寸法精度、ライン残り)、耐熱性などの諸特性について、より高性能のものが要求されている。一方で、ソルダーレジスト膜においては、高性能化以外の様々な要求もされており、例えば黒色のソルダーレジスト膜では、黒色の色調を濃くすることが要求されている。
そこで、例えば黒色のソルダーレジスト膜を形成する材料として、カルボキシル基含有樹脂に配合される着色剤が、黒色着色剤と、黒色着色剤以外の1種以上の着色剤であるソルダーレジスト組成物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−257045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、黒色の色調を濃くすると、露光時の光吸収が多くなってしまい、特に、ソルダーレジスト膜の深部にまで光が届きにくい。従って、ソルダーレジスト膜の深部における光硬化が十分ではなく、現像後にソルダーレジスト膜の深部の寸法が小さくなりすぎてプリント配線基板からライン寸法の小さい硬化塗膜が剥離するという問題(ライン残りの問題)など、解像性に劣るという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、黒色の色調が十分に濃く、しかも優れた解像性を有する黒色硬化性樹脂組成物、およびそれを用いたプリント配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のような黒色硬化性樹脂組成物およびプリント配線基板を提供するものである。
本発明の一態様に係る黒色硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)エポキシ化合物と、(D)反応性希釈剤と、(E)着色剤とを含有し、前記(E)成分が、(E1)黒色顔料および(E3)黒色以外の染料を含有するか、或いは、前記(E)成分が、(E2)黒色染料を含有する。
【0007】
本発明の一態様に係る黒色硬化性樹脂組成物においては、前記(E3)成分が、ラジカル反応性の官能基を有する染料であることが好ましい。
本発明の一態様に係る黒色硬化性樹脂組成物においては、前記ラジカル反応性の官能基を有する染料が、エチレン性不飽和基を有するカチオン性ローダミン誘導体、エチレン性不飽和基を有するカチオン性トリアリールメタン系色素誘導体、およびエチレン性不飽和基を有するカチオン性シアニン系色素誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の一態様に係る黒色硬化性樹脂組成物においては、前記(E3)成分が、黄色染料、青色染料および赤色染料からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の一態様に係る黒色硬化性樹脂組成物においては、前記(E2)成分が、ラジカル反応性の官能基を有する染料であることが好ましい。
本発明の一態様に係る黒色硬化性樹脂組成物においては、ソルダーレジスト膜を形成する際に用いることが好ましい。
本発明の一態様に係る黒色硬化性樹脂組成物においては、前記(E)成分が、(E2)黒色染料を含有する場合、前記(E)成分が、黄色顔料および青色顔料からなる群から選択される少なくとも1種を、さらに含有することが好ましい。
本発明の一態様に係るプリント配線基板は、前記本発明の一態様に係る黒色硬化性樹脂組成物からなるソルダーレジスト膜を備える。
【0008】
本明細書において、染料とは、彩色に利用できる物質であり、希釈剤のいずれかに溶解するものをいう。また、顔料とは、彩色に利用できる物質であり、希釈剤のいずれにも溶解しないものをいう。
【0009】
本発明の黒色硬化性樹脂組成物においては、以下説明するように、黒色の色調が十分に濃く、しかも優れた解像性を有するという効果を達成できる。
すなわち、本発明の黒色硬化性樹脂組成物においては、(E)着色剤として(E1)黒色顔料と(E3)黒色以外の染料との組み合わせか、或いは、(E2)黒色染料を用いている。染料は、顔料と比較して発色がよく、顔料よりも少ない配合量で、顔料と同等の色調とできる。そして、顔料よりも少ない配合量とできるので、黒色硬化性樹脂組成物の光透過性も向上でき、優れた解像性を達成できる。
一方で、染料は、光や熱により色褪せしやすいという欠点があるため、光や高温に曝されるソルダーレジスト膜には、使用されていなかった。しかし、黒色硬化性樹脂組成物からなる塗膜のように、黒色の塗膜では、染料の色褪せの影響が観察されにくいため、(E1)黒色顔料と(E3)黒色以外の染料との組み合わせか、或いは、(E2)黒色染料を用いれば、黒色の色調が十分に濃く、しかも優れた解像性を有するという効果を達成できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、黒色の色調が十分に濃く、しかも優れた解像性を有する黒色硬化性樹脂組成物、およびそれを用いたプリント配線基板を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
先ず、本実施形態の黒色硬化性樹脂組成物について説明する。
本実施形態の黒色硬化性樹脂組成物は、以下説明する(A)カルボキシル基含有感光性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)エポキシ化合物、(D)反応性希釈剤、および(E)着色剤を含有するものである。
【0012】
[(A)成分]
本実施形態に用いる(A)カルボキシル基含有感光性樹脂は、特に限定されず、例えば、感光性の不飽和二重結合を1個以上有する感光性のカルボキシル基含有樹脂が挙げられる。カルボキシル基含有感光性樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能性エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸やメタクリル酸(以下、「(メタ)アクリル酸」ということがある。)のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて、エポキシ(メタ)アクリレートなどのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得た後に、生成した水酸基にさらに多塩基酸またはその無水物を反応させて得られる、多塩基酸変性エポキシ(メタ)アクリレートなどの多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂が挙げられる。
【0013】
多官能性エポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂であればいずれでも使用可能である。また、エポキシ当量は、特に限定されないが、例えば、1000以下であり、好ましくは100以上500以下である。多官能性エポキシ樹脂には、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂(例えば、シリコーン変性エポキシ樹脂など)、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型などのエポキシ樹脂)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、о−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、および、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂にBr、Clなどのハロゲン原子を導入したものも使用可能である。
【0014】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸などが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法は特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸とを適当な希釈剤中で加熱することにより反応させることができる。
【0015】
多塩基酸または多塩基酸無水物は、前記エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応により生成した水酸基に反応することで、樹脂に遊離のカルボキシル基を導入させるものである。多塩基酸またはその無水物は特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用可能である。多塩基酸には、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、3−エチルテトラヒドロフタル酸、4−エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、3−エチルヘキサヒドロフタル酸、4−エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸およびジグリコール酸などが挙げられ、多塩基酸無水物としては、これらの無水物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0016】
上記した多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂もカルボキシル基含有感光性樹脂として使用できる。また、必要に応じて、上記した多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂のカルボキシル基に、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有するグリシジル化合物を反応させることにより、ラジカル重合性不飽和基を更に導入して、感光性をより向上させたカルボキシル基含有感光性樹脂としてもよい。
【0017】
この感光性をより向上させたカルボキシル基含有感光性樹脂は、前記グリシジル化合物の反応によって、ラジカル重合性不飽和基が多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂骨格の側鎖に結合することから、光重合反応性が高く、優れた感光特性を有することができる樹脂となる。1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物としては、特に限定されないが、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテルなどが挙げられる。なお、グリシジル基は1分子中に複数有していてもよい。上記した1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0018】
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は、特に限定されないが、例えば、確実なアルカリ現像の点から、30mgKOH/g以上であることが好ましく、40mgKOH/g以上であることが特に好ましい。一方、この酸価は、アルカリ現像液による露光部の溶解防止の点から、200mgKOH/g以下であることが好ましく、150mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
【0019】
また、カルボキシル基含有感光性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、硬化物の強靭性および指触乾燥性の点から、3000以上であることが好ましく、5000以上であることが特に好ましい。一方、この重量平均分子量は、円滑なアルカリ現像性の点から、200000以下であることが好ましく、50000以下であることが特に好ましい。なお、カルボキシル基含有感光性樹脂の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算値である。
【0020】
カルボキシル基含有感光性樹脂として市販されているものには、例えば、サイクロマー(ACA)Z−251(ダイセル・オルネクス社製)、ZCR−1601H、ZAR−2000、ZFR−1122、ZFR−1124、FLX−2089(以上、日本化薬社製)、リポキシSP−4621(昭和電工社製)が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
カルボキシル基含有感光性樹脂は、黒色硬化性樹脂組成物の主成分であり、その配合量は、特に限定されないが、例えば、黒色硬化性樹脂組成物100質量%に対して、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。
【0022】
[(B)成分]
本実施形態に用いる(B)光重合開始剤としては、特に限定されず、適宜公知のものを使用できる。この光重合開始剤としては、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(0−アセチルオキシム)、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、およびP−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0023】
光重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、例えば、感光性および解像性の観点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.4質量部以上6質量部以下であることがより好ましく、0.6質量部以上4質量部以下であることが特に好ましい。
【0024】
[(C)成分]
本実施形態に用いる(C)エポキシ化合物は、エポキシ基を有する化合物である。このエポキシ化合物により、黒色硬化性樹脂組成物の硬化物の架橋密度を上げることができる。
エポキシ化合物には、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、ビスフェノールA型変性柔軟性エポキシ樹脂、核水添ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型)、ビスフェノールF型やビスフェノールS型エポキシ樹脂(ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られたエポキシ樹脂)、脂環式エポキシ樹脂(シクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、および、アダマンタン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
エポキシ化合物の配合量は、十分な硬化性を得るという観点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、1質量部以上75質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。
【0026】
[(D)成分]
本実施形態に用いる(D)反応性希釈剤は、例えば、光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つの重合性二重結合を有する化合物である。反応性希釈剤は、黒色硬化性樹脂組成物の光硬化性を向上できる。
【0027】
反応性希釈剤としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、および、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
反応性希釈剤の配合量は、特に限定されないが、例えば、硬化物の強靭性および指触乾燥性の観点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、2質量部以上500質量部以下であることが好ましく、10質量部以上300質量部以下であることが特に好ましい。
【0029】
[(E)成分]
本実施形態に用いる(E)着色剤は、(E1)黒色顔料および(E3)黒色以外の染料を含有するか、或いは、(E2)黒色染料を含有することが必要である。
なお、(E)成分は、(E1)成分、(E2)成分および(E3)成分の全てを含有していてもよい。また、(E)成分は、(E2)成分単独で使用してもよいが、(E2)成分および(E1)成分の組み合わせで使用してもよく、(E2)成分および(E3)成分の組み合わせで使用してもよい。
(E1)黒色顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、ペリレンブラック、黒色酸化鉄、グラファイト、および活性炭などが挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、およびファーネスブラックなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0030】
(E2)黒色染料は、染料の中で黒色を示すものである。染料の種類としては、アントラキノン系染料、アゾ−メチン染料、キノリン染料、ケトンイミン染料、フルオロン染料、ニトロ染料、キサンテン染料、アセナフテン染料、キノフタロン染料、アミノケトン染料、メチン染料、ペリレン染料、クマリン染料、ペリノン染料、トリフェニル染料、トリアリールメタン染料、シアニン染料、フタロシアニン染料、インクロフェノール染料、アジン染料、ローダミン染料、およびアゾ染料などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
また、(E2)成分を用いる場合、(E2)成分は、ラジカル反応性の官能基を有する染料であることが好ましい。このようなラジカル反応性の官能基を有する染料を用いる場合、黒色硬化性樹脂組成物を光硬化させる際に、樹脂中に染料を取り込ませることができる。そして、このような黒色染料であれば、光や熱による色褪せを抑制できる。このような黒色染料は、富士フィルム和光純薬社より入手できる。
【0031】
(E1)成分の配合量、(E2)成分の配合量、或いは、(E1)成分および(E2)成分の合計の配合量は、黒色の色調と解像性とのバランスの観点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
(E1)成分を用いる場合、(E1)成分の配合量は、解像性の観点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、2質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
【0032】
(E3)黒色以外の染料は、染料の中で黒色以外の色を示すものである。具体的には、黄色染料、青色染料および赤色染料からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの染料を用いることで、黒色を漆黒により近づけることができる。また、黄色染料、青色染料および赤色染料の組み合わせで用いることにより、黒色硬化性樹脂組成物の硬化物の黒色の色調をより濃くすることができる。染料の種類としては、アントラキノン系染料、アゾ−メチン染料、キノリン染料、ケトンイミン染料、フルオロン染料、ニトロ染料、キサンテン染料、アセナフテン染料、キノフタロン染料、アミノケトン染料、メチン染料、ペリレン染料、クマリン染料、ペリノン染料、トリフェニル染料、トリアリールメタン染料、シアニン染料、フタロシアニン染料、インクロフェノール染料、アジン染料、ローダミン染料、およびアゾ染料などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0033】
本実施形態において、(E3)成分は、ラジカル反応性の官能基を有する染料であることが好ましい。このようなラジカル反応性の官能基を有する染料を用いる場合、黒色硬化性樹脂組成物を光硬化させる際に、樹脂中に染料を取り込ませることができる。そして、このような染料であれば、光や熱による色褪せを抑制でき、また、ソルダーレジスト膜とした場合のはんだ耐熱性(耐変色性)を向上できる。このような染料は、富士フィルム和光純薬社より入手できる。
ラジカル反応性の官能基を有する染料としては、エチレン性不飽和基を有するカチオン性ローダミン誘導体、エチレン性不飽和基を有するカチオン性トリアリールメタン系色素誘導体、およびエチレン性不飽和基を有するカチオン性シアニン系色素誘導体などが挙げられる。
【0034】
(E3)成分の配合量は、黒色の色調と解像性とのバランスの観点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以上7質量部以下であることが特に好ましい。
(E1)成分に対する(E3)成分の配合比((E3)成分/(E1)成分)は、黒色の色調と解像性とのバランスの観点から、1以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2以上であることが特に好ましい。
【0035】
本実施形態の黒色硬化性樹脂組成物には、上記した(A)成分〜(E)成分の他に、必要に応じて、種々の添加成分、例えば、前記(E)成分以外の着色剤(黄色顔料、青色顔料、赤色顔料、および緑色顔料など)、潜在性硬化剤、溶剤、フィラー、酸化防止剤、カップリング剤、イオンキャッチャーおよび他の添加剤(例えば、メルカプトカルボン酸エステル)などを、適宜配合してもよい。
【0036】
潜在性硬化剤としては、三フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、ジシアンジアミド(DICY)およびその誘導体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)およびその誘導体、グアナミンおよびその誘導体、メラミンおよびその誘導体、アミンイミド(AI)並びにポリアミンなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの中でも、耐金メッキ性および金メッキ処理性の両立という観点から、メラミンおよびジシアンジアミドの組み合わせで用いることが好ましい。
このような潜在性硬化剤を用いる場合、その配合量としては、耐金メッキ性および金メッキ処理性の両立という観点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上4質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上3質量部以下であることが特に好ましい。
【0037】
溶剤(非反応性希釈剤)は、黒色硬化性樹脂組成物の粘度や乾燥性を調整するためのものである。溶剤としては、ケトン類(例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン)、アルコール類(例えば、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン)、石油系溶剤類(例えば、石油エーテル、石油ナフサ)、セロソルブ類(例えば、セロソルブ、ブチルセロソルブ)、カルビトール類(例えば、カルビトール、ブチルカルビトール)、および、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
溶剤の配合量としては、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、1質量部以上200質量部以下であることが好ましく、5質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上80質量部以下であることが特に好ましい。これらの配合量が前記範囲内であれば、得られる黒色硬化性樹脂組成物の諸特性に影響を与えずに、黒色硬化性樹脂組成物の粘度や乾燥性を調整できる。
【0038】
フィラーとしては、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、タルク、およびマイカなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
フィラーの配合量としては、黒色硬化性樹脂組成物の硬化物の物理的強度の観点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、3質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上20質量部以下であることが特に好ましい。
酸化防止剤、カップリング剤、およびイオンキャッチャーとしては、適宜公知のものを使用できる。
【0039】
これらの酸化防止剤、カップリング剤、イオンキャッチャーおよび他の添加剤を用いる場合、その配合量としては、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。これらの配合量が前記下限以上であれば、それぞれの添加剤の効果を奏することができ、他方、前記上限以下であれば、得られる黒色硬化性樹脂組成物の諸特性の低下を抑制できる。
【0040】
上記した本実施形態の黒色硬化性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されない。例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温にて、三本ロール、ボールミル、サンドミルなどの混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサーなどの攪拌手段により混練または混合して製造することができる。また、前記混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合してもよい。
【0041】
次に、本実施形態のプリント配線基板について説明する。
本実施形態のプリント配線基板は、前述した本実施形態の黒色硬化性樹脂組成物からなるソルダーレジスト膜を備えるものである。そして、本実施形態のプリント配線基板は、前述した本実施形態の黒色硬化性樹脂組成物を用いて、ソルダーレジスト膜を形成することによって作製できる。
【0042】
具体的には、先ず、プリント配線基板に、プリント配線基板上の全面に本実施形態の黒色硬化性樹脂組成物を塗布し、その後予備乾燥をして、塗膜を形成する。
ここで、塗膜の塗布方法としては、スクリーン印刷、スプレーコータおよびカーテンコータなどが挙げられる。
予備乾燥の条件は、黒色硬化性樹脂組成物の種類に応じて異なり、特に限定されないが、例えば、60℃以上80℃以下の範囲の温度で15分間以上60分間以下の範囲で加熱すればよい。このような予備乾燥により、黒色硬化性樹脂組成物中の溶剤などを揮散させて、タックフリーな塗膜を形成できる。
塗膜の厚み(DRY膜厚)は、特に限定されないが、通常、5μm以上200μm以下であり、好ましくは、10μm以上70μm以下である。
【0043】
次に、黒色硬化性樹脂組成物の塗膜上に、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、その上から紫外線を照射する。
このときの露光量は、黒色硬化性樹脂組成物の種類や露光装置の種類に応じて、適宜設定できる。例えば、露光量は、10mJ/cm以上1000mJ/cm以下であることが好ましく、10mJ/cm以上600mJ/cm以下であることがより好ましい。
【0044】
次に、希アルカリ水溶液で非露光領域を除去することにより、露光後の塗膜を現像する。これにより、塗膜に回路パターンに対応した開口部を設けることができる。
現像方法としては、例えば、スプレー法、およびシャワー法などが挙げられる。
希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5質量%以上5質量%以下の炭酸ナトリウム水溶液などが挙げられる。
【0045】
次いで、現像後のプリント配線基板に熱処理(以下場合により、ポストキュアともいう)を行う。これにより、プリント配線基板上に目的とするパターンを有する絶縁被膜(ソルダーレジスト膜)を形成させることができる。
熱処理条件としては、黒色硬化性樹脂組成物の種類に応じて異なり、特に限定されない。例えば、熱処理炉としては、熱風循環式の乾燥機、および遠赤外線炉などを採用できる。また、熱風循環式の乾燥機を用いる場合、熱処理温度は、130℃以上170℃以下であることが好ましく、熱処理時間は、30分間以上80分間以下であることが好ましい。さらに、遠赤外線炉を用いる場合、熱処理温度は、200℃以上250℃以下であることが好ましく、熱処理時間は、3分間以上10分間以下であることが好ましい。
【実施例】
【0046】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0047】
((A)成分)
カルボキシル基含有感光性樹脂:商品名「リポキシSP−4621」、昭和電工社製、固形分は62.5質量%
((B)成分)
光重合開始剤:2−メチル1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノープロパン−1−オン、商品名「LUNA907」、BASF社製
((C)成分)
エポキシ化合物:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名「EPICRON 860」、DIC社製
((D)成分)
反応性希釈剤:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、商品名「Miramaer
M600」、東洋ケミカルズ社製
((E1)成分)
黒色顔料A:アセチレンブラック、Denka社製
黒色顔料B:ペリレンブラック、商品名「CHROMOFINE BLACK」、大日精化工業社製
黒色顔料C:ペリレンブラック、商品名「LUMOGEN BLACK FK4280」、BASF社製
黒色顔料D:ペリレンブラック、商品名「LUMOGEN BLACK FK4281」、BASF社製
((E2)成分)
黒色染料:重合性黒色染料、商品名「Reactive Dye Black K01」、富士フィルム和光純薬社製
((E3)成分)
黄色染料:重合性黄色染料、商品名「Reactive Dye Yellow Y03」、富士フィルム和光純薬社製
青色染料:重合性青色染料、商品名「Reactive Dye Blue B01」、富士フィルム和光純薬社製
赤色染料A:重合性赤色染料、商品名「Reactive Dye Red R60」、富士フィルム和光純薬社製
赤色染料B:C.I.Solvent Red 150
(他の成分)
黄色顔料:商品名「クロモフタロイエローAGR」、BASF社製
青色顔料:商品名「リオノールブルーFG−7351」、トーヨーカラー社製
潜在性硬化剤A:ジシアンジアミド、商品名「DICY−7」、三菱化学社製
潜在性硬化剤B:メラミン、日産化学工業社製溶剤:ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、商品名「EDGAC」、三洋化成工業社製
フィラー:シリカ、商品名「レオロシール」、TOKUYAMA社製
【0048】
[実施例1]
カルボキシル基含有感光性樹脂A100質量部、光重合開始剤8質量部、エポキシ化合物6質量部、反応性希釈剤7質量部、黒色顔料A0.5質量部、黒色顔料B1質量部、黄色染料0.5質量部、青色染料0.5質量部、潜在性硬化剤A0.2質量部、潜在性硬化剤B1.8質量部、フィラー7質量部、および溶剤12質量部を容器に投入し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールを用いて室温にて混合し分散させて黒色硬化性樹脂組成物を得た。
そして、配線基板(ガラスエポキシ基材、FR−4、基材厚み:1.6mm、導体厚み:50μm)を、バフ研磨により表面処理後、スクリーン印刷法にて、得られた黒色硬化性樹脂組成物を、DRY膜厚が20〜23μmとなるように塗布した。塗布後、BOX炉にて80℃で20分間の予備乾燥を行った。予備乾燥後、塗膜上に露光装置(オーク社製「HMW−680GW」)にて、露光量が500mJ/cmの条件で露光をした。露光後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、現像温度30℃、スプレー圧0.2MPa、現像時間60秒間の条件で、現像した。その後、BOX炉にて150℃で60分間のポストキュアを行い、基板上にソルダーレジスト膜を形成して、評価用基板を作製した。ソルダーレジスト膜の厚みは、20μmであった。
【0049】
[実施例2〜13]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、黒色硬化性樹脂組成物および評価用基板を得た。
[比較例1および2]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、黒色硬化性樹脂組成物および評価用基板を得た。
【0050】
<黒色硬化性樹脂組成物の評価>
黒色硬化性樹脂組成物の評価(解像性、色座標(L*、a*、b*)、透過率、はんだ耐熱性、文字印刷への色移り)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。
(1)解像性
評価用基板における所定のフォトマスク(ライン寸法が30μmから130μmまで、10μmづつ変化するパターンがあるもの)を介して形成した部分の残存ラインを目視にて確認し、評価した。残存ラインのうち最もライン寸法が小さいものを、解像性(ライン残り)の数値(単位:μm)とする。
(2)色座標(L*、a*、b*)
評価用基板について、CIE 1976(L*、a*、b*)色空間(CIELAB)の3つの座標を、色差計(日本電色工業社製の「SE2000」)を用いて測定した。なお、CIELABの3つの座標は、色の明度(L*=0は黒、L*=100は白の拡散色で、白の反射色はさらに高い)、赤/マゼンタと緑の間の位置(a*、負の値は緑寄りで、正の値はマゼンタ寄り)、黄色と青の間の位置(b*、負の値は青寄り、正の値は黄色寄り)に対応している。
(3)透過率
ガラス板上に、上記の評価用基板の作製方法と同様の方法で、厚みが20μmの硬化塗膜を形成して、試験片を得た。この試験片について波長400nmの光の透過率を測定し、別途測定したガラス体の波長400nmの光の透過率をベースラインに用いることで、硬化塗膜の透過率を測定した。透過率の測定には、UV分光光度計U−3310(日立ハイテクノロジー社製)を使用した。
(4)はんだ耐熱性
JIS C−6481に記載の方法に準拠して、評価用基板のはんだ耐熱性を評価した。具体的には、評価用基板を260℃のはんだ槽に30秒間浸漬後、セロハンテープによるピーリング試験をすることを1サイクルとし、このサイクルを1〜3回繰り返した後の硬化塗膜の状態を目視により観察し、以下の基準に従って評価した。
◎:3サイクル繰り返し後も硬化塗膜に色変化が認められない。
○:3サイクル繰り返し後の硬化塗膜にほんの僅か色変化が認められる。
△:2サイクル繰り返し後の硬化塗膜に色変化が認められる。
×:1サイクル繰り返し後の硬化塗膜に剥離が認められる。
(5)文字印刷への色移り
評価用基板上に、白文字インキ(タムラ製作所社製の「VSI−210−W」)を印刷し、印刷後の白文字インキの変色を目視にて観察した。そして、以下の基準に従って、現像後の外観を評価した。
○:白文字インキに変色がない。
△:白文字インキに変色があるが、僅かであり、実用上の問題はない。
×:白文字インキに変色がある。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明の黒色硬化性樹脂組成物を用いた場合(実施例1〜13)には、解像性、色座標(L*、a*、b*)、透過率、はんだ耐熱性、および、文字印刷への色移りの結果が全て良好であることが分かった。従って、本発明の黒色硬化性樹脂組成物は、黒色の色調が十分に濃く、しかも優れた解像性を有することが確認された。
これに対し、染料を含有していない黒色硬化性樹脂組成物を用いた場合(比較例1および2)には、硬化塗膜の透過率が低く、解像性が劣っていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の黒色硬化性樹脂組成物は、プリント配線基板などにパターンを有する絶縁塗膜を形成するための技術として好適に用いることができる。