(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガントリの内部において体軸方向を中心軸として回転する回転部を有するCT装置であって、該回転部に内蔵する光源、検出器、画像メモリ、或いは二次電池のいずれかがカートリッジ構造であって、かつ該カートリッジ構造からなる光源、検出器、画像メモリ、或いは二次電池を個別に収納するカートリッジ収納部に対し該回転部の該中心軸のある内側から該回転部の外周の法線方向に向かって該カートリッジ構造からなる光源、検出器、画像メモリ、或いは二次電池を挿入、及び抜去するための個別の開口部を該中心軸に平行な該ガントリの内周面に有するCT装置。
【実施例】
【0036】
本発明では、ガントリ或いは寝台の移動方向、即ち「体軸方向」をZ軸、Z軸に垂直な面をX−Y平面と定義する。
図1を用いて、CT装置の回転部23の内部構造、特に電気回路部分について詳しく説明する。
図1(a)は、ガントリ5の内部にある回転部23の内部構造を説明するZ軸方向から見たときの構成部品等を示す平面図である。回転部23の内部には、光源、例えばX線発生部25m、高電圧制御回路29、検出器アレー31、検出器周辺回路33、検出器駆動制御回路41、後述するデジタル信号処理回路(図示せず)、画像メモリ35m、二次電池27m、回転部インターフェース2−2を有する。X線発生部25m、二次電池27m、画像メモリ35mは、以下に詳しく説明するように、回転部23からそれぞれ個別に容易に挿入、及び抜去が可能な構造である。カートリッジと回転部23は、金属端子同士の接触により電気的導通が可能である。回転部インターフェース2−2は、後述の非接触インターフェースであっても、導電性の電極による電気的接点であってもよい。X線発生部25mから出射されたX線ビーム26が寝台3に載せられた被験者(図示せず)を透過し、検出器アレー31に到達する。なお、回転部の回転時における重量バランスを調整する重量バランス調整部を設けてもよい。好適には、X線発生部25mにカーボンナノチューブ(CNT)等のカーボンナノ材料を電界電子放出源とするX線発生装置を用いてもよい。カーボンナノ材料を冷陰極材料として用いるので、予熱が不要であり従来のX線管を用いた場合に比べ、小型・低消費電力化が可能になり、高電圧制御回路29の小型化や冷却ファンの小型化或いは冷却ファンそのものを不要にできるからである。なお、本実施例では、回転部23の内部に検出器アレー31が内蔵されている構造について説明したが、後述するように、検出器アレー31が回転部23の内部ではなく、回転部23を取り巻くガントリ5の固定部の内周部全周に亘って配置した構造であってもよい(
図6等)。この場合には、検出器周辺回路の一部、画像メモリ、ホストインターフェース等がガントリ内の固定部に配置される。
【0037】
図1(b)は回転部23の内部、特に検出器31とその周辺回路33を説明するための回路ブロック図である。
図1(a)における周辺回路33には、検出器駆動制御回路41、信号増幅・アナログデジタル(AD)変換回路43、信号走査・制御回路45、デジタル信号処理回路47、パラレルシリアル変換回路49等を含んでいる。図示するように、検出器アレー31には、複数の検出器ユニット30が円弧状に、或いはスライス数を増やすためにZ軸方向にも規則的に並んでいる。検出器ユニット30には、従来のTFT型の検出器に加え、例えば、小型の電子増倍型検出器(例えば、浜松ホトニクス社製「マイクロPMT素子」等)やアバランシェ効果(APD)を利用した増幅型検出器、フォトンカウンティング型検出器等を用いることができる。また、アナログデジタル(AD)変換回路をオンチップ化したCMOS型或いはCCD型検出器を使用することができ、高速かつ低ノイズの読み出しが実現する。或いは、複数の検出器アレーの位置合わせ精度が高く、軽量化が容易なCMOS型検出器を使用することもできる(例えば、特許文献7)。これらの検出器ユニットは高感度、或いは低ノイズであるため、X線照射(被ばく)量を減少させ、或いは短時間パルス照射によるZ軸方向の高速走査が容易になる。また、後述するように、X線照射面積を拡大する必要がなければ、X線発生部に必要な高電圧電流を増大させることもない。また回転部23のZ軸方向の薄型化による軽量化に加え、特に電界電子放出源として使用するカーボンナノ材料の安定性や耐久性を向上させることもできる。
【0038】
検出器アレー31から出力される検出器信号は、信号増幅・AD変換回路43によりデジタルデータ(例えば16ビット)に変換され、信号走査・制御回路45を経由してデジタル信号処理回路47に送られ必要な画像処理が加えられる。デジタル信号処理回路47から送られた画像データを直接記録するために回転部23の内部に画像メモリ35を内蔵している。パラレルシリアル変換せずにバスライン38を介し直接画像メモリ35にパラレル記録することができるので、高速書き込みが可能になる。画像メモリ35には、磁気記録媒体も使用できるが、記録速度、及び信頼性の観点から、DRAMやNAND形フラッシュメモリ等の半導体メモリが好適である。他方、撮像終了後であって、回転部23の回転及びガントリ5の移動停止後に画像データを画像メモリ35から読み出す場合には、撮像時と異なりリアルタイムで読み出す必要がないので、パラレルシリアル変換回路49により、シリアルデータとして、回転部インターフェース2−2に出力すれば良い。シリアル化することにより、ホストインターフェース2−1における端子数を減らせる効果も有する。ホストインターフェース2−1と回転部インターフェース2−2からなる電気的接続手段においては、回転部23の回転部インターフェース2−2の内部に複数のコネクタがあり、その形状が凹状の受け構造である(凹型接続端子6)。他方、ホストインターフェース2−1の側には凸型接続端子4が同数あり、接続端子4を凹型接続端子6に挿入することにより電気的接続が可能になる。従来の動的機械的(摺動)接点であるスリップリングを使用した場合とは異なり、回転部23の静止時おいて内部に記録・蓄積した画像データを回転部インターフェース2−2からホストインターフェース2−1に読み出す。そのため、スリップリング使用時の弊害を解消でき、かつ回転部23の高速回転、例えば毎秒5回転以上の高速回転も容易になる。このように、回転部23の軽量化と回転速度の高速化により、体軸(Z軸)方向におけるスキャン速度を高速化できるため、スライス数を増やすことなくX線被ばく量を軽減することができる。
【0039】
図1(c)は回転部23の内部にあるX線発生部25mと光源駆動回路29を説明するためのブロック図である。カートリッジ構造のX線発生部25mは、カーボンナノ材料電子ビーム発生冷陰極25Cと陽極ターゲット25Aから構成されている。光源駆動回路29は、電圧昇圧回路29−1と高電圧制御回路29−2から構成されている。好適には、光源駆動回路29は、スイッチング電源及びパワー半導体を用いることにより、トランスレスの小型・軽量・低消費電力の高電圧電源部とする。カートリッジ構造の二次電池27には、例えば、リチウムイオン電池を用いることができる。このように、リチウムイオン電池27mの直流電圧を光源駆動回路29により昇圧し、かつタイミングコントロールされた高電圧パルスをX線発生部25mに印加することができる。なお、リチウムイオン電池27mは、図示していない電池残量検知回路及び充電回路により、回転部23の静止時において回転部インターフェース2−2とホストインターフェース2−1を介し充電することができる。
【0040】
実施例に係るCT装置100をX軸方向から見た側面図を
図2(a)に示す。CT装置100は、寝台3−1、及びこれを支えかつ移動させる寝台移動支持部(3−2)、と円環状の空洞部有するガントリ5から構成されている。既に説明したように、ガントリ5の内部には回転可能な回転部23があり、その詳細は
図1において説明した通りである。また、回転中心軸1はZ軸、即ち体軸方向に平行である。回転部23の周囲には固定部24がボールベアリング等(図示せず)を介し組み合わされている。回転部23と固定部24との間における破線で囲まれた部分Aについて以下に説明する。なお、図示していないを操作・制御部及び表示(モニター)部があり、画像描出回路及びソフトウエア等により再構成された断層像等がモニター上に表示される。
【0041】
図2(b)は、CT装置100をZ軸方向から見た平面図である。ガントリ5の円環状の部分の内部には、回転中心軸1の周囲を回転する回転部23がベアリングを介し取り付けられている。さらに回転部23を回転させるためのタイミングベルト21と回転部駆動モータ19が取り付けられている。なお、後述するように、回転部23を回転子、これを取り囲むガントリ5の内周を固定子とするダイレクトドライブ(DD)モータ構造としても良い。
図2(c)は、
図2(a)における要部Aの拡大図であり、回転部23の側面部には、金属電極からなる回転部インターフェース6−1が形成されている。回転部インターフェース6−1は、凸型接続端子4からなるホストインターフェースと対向する位置にあるので、回転部23の静止時において互いに接触することにより電気的に接続することができる。なお、好適には凸型接続端子4と回転部インターフェース6−1が対向する位置で停止するようにするため、ホール素子等を用いた位置センサ等(図示せず)を使用することができる。或いは、回転部インターフェース6−1を回転部23の側面の円環状全周にわたりリング状に形成すれば、回転部23の静止位置によらず電気的接続が可能である。
【0042】
図3(a)、及び(b)は、実施例に係るCT装置200、及び210のガントリ部分を説明するためのX軸方向からみた断面図である。回転部23の内部に組み込まれる構成要素であるX線発生部25mは、ターゲット部材の劣化や電子ビーム発生冷陰極材料、本実施例ではカーボンナノ材料の消耗等により、使用頻度に応じた交換が必要である。同様に、検出器アレー31mも、使用する半導体部品等の放射線損傷、或いは積層するX線シンチレータ材料の湿度依存性などの理由から交換が必要になる場合がある。そこで本実施例では、カートリッジ構造のX線発生部25mと検出器アレー31mにより、回転部23から脱着可能とした。
図3(a)に示すように、回転部23にはカートリッジ構造のX線発生部25mと検出器アレー31mが挿入されるカートリッジ収納部25fと31f(いずれも破線部)が形成されている。X線発生部25mと検出器アレー31mの挿入、及び抜去の方向はZ軸、即ち体軸方向であり、カートリッジを挿入又は抜去するための開口部がZ軸方向に向かって開口している。例えば、後述するように、クレードル部との間で新旧のカートリッジを交換する場合(
図5(a))に好適である。
【0043】
これに対し、
図3(b)に示す構造においては、X線発生部25mと検出器アレー31mの挿入、及び抜去の方向はZ軸方向に対し直角、即ち、回転部23が描く円形の法線方向である。さらに、カートリッジを挿入又は抜去するための開口部は、図示するように、回転部23の中心軸1のある内側から回転部23の外周方向に向かって開口している。そのため、カートリッジの交換時に回転部23を取り巻く固定部が交換作業の障害にならないという利点がある。また、既に
図2において説明した構造のように、回転部の側面部に電気的接続端子(4、6−1)等が配置されている場合にも好適な構造である。なお、カートリッジ構造は、X線発生部25mと検出器アレー31mに限定されず、前述、或いは後述するように、二次電池27、或いは記録容量増大に対応するため画像メモリ(
図1(a)、
図5(c)、(d)等)をカートリッジ構造とすることもできる。
【0044】
図3(c)は、実施例に係るCT装置200の回転部23をZ軸方向から見た平面図である。回転部23の内部には後述するように、回生ブレーキ回路50を内蔵してもよい。本実施例では、カートリッジ構造の画像メモリ35mと二次電池27mに加え、第一のX線発生部25と第二のX線発生部25−2、及びこれらに中心軸1を介し対向する位置に第一の検出器アレー31、及び第二の検出器アレー31−2を有する。検出器アレー31と検出器アレー31−2は、Z軸方向にずれた位置に、即ちシフトさせて配置してもよい。また、X線発生部25とX線発生部25−2は、同時にX線を照射しても時間差を置いて照射してもよい。さらに、X線発生部25とX線発生部25−2には異なる管電圧(波長)を印加し、マルチ分光解析を行うことができる。画像メモリと二次電池をカートリッジ構造としたので、画像データ量の増大、及び二次電池の消耗に対し迅速に対応することができる。本実施例では、画像メモリ35mと二次電池27mをカートリッジ化したが、前述の通り、X線発生部25、25−2、或いは検出器アレー31をカートリッジ構造としても良い。このように、回転部23の内部に使用する主要な部品をカートリッジ構造とすることにより、単に交換・修理等のメンテナンス負荷の軽減のみに留まらず、装置の連続稼働時間の延長、或いはマルチ分光解析など撮像・検査機能の多用途化、ハイブリッド化も可能になるという極めて有用な作用・効果をもたらすことにも着目すべきである。
【0045】
実施例に係るCT装置300について、
図4を用いて以下に説明する。
図4(a)は、CT装置300をX軸方向から見た側面図である。CT装置300は、架台7、及びこれを支える架台支持部(9−1、9−2)、その上部にZ軸方向に移動可能なガントリ5が載せられた構造からなる。ガントリ5の内部には回転可能な回転部23があり、その回転中心軸1が図示されている。回転部23の内部には、既に
図1等を用い説明したカートリッジ構造の部品(図示せず)が使用されている。なお、図示していないを操作・制御部及び表示(モニター)部があり、画像描出回路及びソフトウエア等により再構成された断層像等がモニター上に表示される。ガントリ5をZ軸方向に移動させるための駆動部及び車輪15を内蔵したガントリ移動台車11がガントリ5の下部に取り付けられている。また、以下に詳述するように、ガントリ内の回転部23と架台7との間において電気信号又は電力の授受を行う電気的接続手段が架台の上部(2−1)とガントリ内の回転部側(図示せず)に有する。被験者その他の測定対象物を載せるために寝台3がガントリ5の中空部内をZ軸方向に挿入されている。撮影中はガントリ5のみがZ軸方向に移動し、被験者は寝台3と共に寝台3の上で静止しているので、堅牢かつ精密な被験者移動制御手段は不要である。そのため、CT装置300自体の軽量化が可能になる。後述するように、ガントリの体軸(Z軸)方向における走査速度を高速化しても、被験者の身体的・精神的負荷や不安を回避できる効果も有する。
【0046】
図4(b)は、CT装置300をY軸方向から見た平面図である。ガントリ5が架台7の上を移動するためにガントリ移動用レール13が架台7の上部に2本設けられている。ガントリ移動用レール13及び車輪15が金属等の導電性材料であれば、ガントリ移動台車11の内部にある駆動用モータ17に電力を供給し、或いはガントリ移動台車11との間において制御信号等の授受が可能になる。上述の如く、ガントリ内の回転部23と架台7との間において電気信号又は電力の授受を行う電気的接続手段であるホストインターフェース2−1を架台の上部、即ちガントリ5の移動範囲の終点にある所定位置に配置している。本実施例では、寝台3が架台支持部9−1、及び9−2の上部に取り付けられているが、取り外すことも容易である。そのため、寝台3の代わりに他の形状の被験者保持手段を用いても良い。また、寝台3を取り除いて、ガントリ3を架台7から取り外すことも容易であるため、ガントリ5のメンテナンスや交換にも好都合であり、さらに異なる撮像特性、例えば、光源エネルギー(波長)の異なる光源を搭載したガントリに取り換えることも容易になる。
【0047】
図4(c)は、CT装置300をZ軸方向から見た平面図である。ガントリ5の内部には、回転中心軸1の周囲を回転する回転部23がベアリング(図示せず)等を介し取り付けられている。さらに回転部23を回転させるためのタイミングベルト21がガントリ移動台車11の内部にあるガントリ回転部駆動モータ19に取り付けられている。回転部23の内部には後述するように、回生ブレーキ回路50を内蔵してもよい。また、回転部23は、回転部インターフェース2−2を有しているので、回転部23の静止時においてホストインターフェース2−1と対向する位置において電気的に接続することができる。なお、好適にはホストインターフェース2−1と回転部インターフェース2−2が対向する位置で停止するようにするため、ホール素子等を用いた位置センサ等(図示せず)を使用することができる。また、ガントリ5をZ軸方向に移動させるためのガントリ移動台車駆動モータ17をガントリ移動台車11の内部に有している。駆動のための電源は、既に説明したように、ガントリ移動用レール13から供給することもできるが、ガントリ移動台車11の内部に二次電池を内蔵することもできる。
【0048】
また、ガントリ5をZ軸方向に移動させるための移動手段として、後述するように(
図5(a)等)、架台支持部9−1或いは9−2側からけん引する構造であってもよい。本構造により、ガントリ内の回転部23の回転手段を移動可能なガントリ移動台車11等に配置したので、従来と異なり、ガントリ部を撮像装置本体に固定させる必要が無く、ガントリ部の移動、取り外し等が容易になる。なお、回転部23の構造については既に他の実施例において詳しく説明したので省略する。本実施例においても、回転部23の内部に検出器アレー31が内蔵されている構造について説明したが、検出器アレー31が回転部23の内部ではなく、回転部23を取り巻くガントリ5の内周部の全周に亘って配置した構造であってもよい(
図6等)。
【0049】
図5(a)は、実施例に係るCT装置400のX軸方向からみた側面図である。既に説明した実施例と異なる部分について以下に詳述する。
図5(a)に示すように、CT装置400には、架台7からY軸方向に直立する部分9−3があり、これをクレードルと呼ぶ。回転部23の内部には、既に
図1等を用い説明したカートリッジ構造の部品(図示せず)が使用されている。クレードル9−3は、ガントリ5を待機させるスペース(破線部37)があり、ガントリ5の回転部23の回転部インターフェース2−2が非接触のインターフェース構造12から構成され、ホストインターフェース2−1が非接触のインターフェース構造10から構成されている。これらは互いに対向して近接した状態で非接触の給電、即ち回転部23の内部のリチウムイオン電池への充電、及び回転部23とホスト側との間でデータや信号の授受を行う。回転部インターフェース側の12とホストインターフェース側の10が互いに回転中心軸1の方向に近接し対向する構造を例示している。本構造により、ガントリ5がZ軸方向に移動する方向において非接触インターフェース12が非接触のインターフェース10に近接することができる。ガントリ5の内部には回転部23があり、回転中心軸1の周囲を回転するが、その駆動方法は
図7(c)において説明した構造と同様に、回転部回転モータ19、及びタイミングベルト21(図示せず)による回転である。回転部23の内部には後述するように、回生ブレーキ回路50を内蔵してもよい。また、ガントリ移動用レール13から給電されない場合は、ガントリ内に二次電池(図示せず)を内蔵することもできる。他方、架台支持部9−1又はクレードル9−3、及び架台7の内部に設けたガントリけん引モータ14、及びガントリけん引ベルト8によりガントリ5を体軸(Z軸)方向に移動させる実施例を開示している。
【0050】
クレードル9−3のガントリ収納部37の内部には、上記の非接触ホストインターフェース10以外に、試料保持部20が設けられている。試料とは、例えば、回転部23の内部の検出器や光源部が正常に機能しているか否かを事前にテストするための被測定物であって標準サンプル、或いはファントムと呼ばれるものである。また、クレードル内に回転部23の検査或いは校正を目的とする検査プローブ(図示せず)を設けても良い。さらに、例えば、収納部37の内部には、ガントリ5の内部の温度を下げるため、冷却ガス、例えば、空気や窒素ガスの供給口16があり、他方、回転部23には供給口16と嵌合する開口部18が設けられている。このように、クレードル9−3には、ガントリの安定駆動、或いは安全性や性能等の維持管理に必要な機能を付加することができる。
【0051】
図5(b)は非接触インターフェース部(10及び12)における電磁誘導方式のワイヤレス給電に係る回路構成の一例を説明するためのブロック図である。図示するように、ホストインターフェース側(10)の回路構成は、商用電源を直流に変換するAC/DCコンバータ、高周波の方形波を出力する高周波インバータ、これを正弦波に変換する波形変換回路、安全確保のための絶縁トランス等を介し一次コイルL1につながっている。他方、二次コイルL2は、高周波を直流に戻す整流平滑回路、逆流素ダイオード等を介し、負荷、例えば二次電池等に接続している。他方、制御信号或いは画像データ等の送受信には、例えば、近接場磁界結合にもとづくワイヤレス通信方式(図示せず)を使用する。データ転送速度をギガ(G)ビット/秒程度の高速化が可能だからである。なお、上記ワイヤレス給電とワイヤレス通信を同一のコイル、或いはアンテナを使用して行う方式であってもよい。
【0052】
図5(c)、(d)は、さらに上記実施例の変形例に係るガントリ部5とクレードル9−4の構造を説明するための断面図である。即ち、ガントリ部5がクレードル部に退避している状態において、ガントリ内の二次電池の見かけ上の充電時間を短縮することが可能な構造を開示するものである。
図5(c)に示すように二次電池は、既に説明したように(
図3(a)等)、カートリッジ構造の二次電池27mであり、カートリッジ収納部27fに挿入されている。他方、クレードル9−4のガントリ収納部37には、カートリッジホルダー22が設けられており、ガントリ5がガントリ収納部37に収納されると二次電池27mがカートリッジホルダー22に結合する。その後、ガントリ5がガントリ収納部37から離れる時に二次電池27mがガントリ収納部37に残り、充電が行われる。
図5(d)は、
図5(c)を90度回転した場合の断面図であり、ガントリ部5の内部のカートリッジ収納部27fには二次電池27mが挿入されておらず、他方、クレードル9−4のガントリ収納部37の内部のカートリッジホルダー22には充電済みの二次電池27mが取り付けられている。そのため、ガントリ5がガントリ収納部37に収納されたときに充電済みの二次電池27mをガントリ内の二次電池27mのためのカートリッジ収納部27fに挿入することができる。言い換えると、使用後の二次電池27mをクレードル9−4に戻すと同時に、充電済みの二次電池27mをガントリ5に供給することにより、二次電池27mの充電完了を待たずに、ガントリ部5が次の撮像動作を開始できる。その結果、二次電池の見かけ上の充電時間を短縮でき、検査に要する時間を短縮し装置の稼働効率を向上させることができる。
【0053】
図6(a)は実施例に係るCT装置500の、特にガントリ内の構造をZ軸方向からみた平面図であり、同図(b)はガントリ部のX軸又はY軸方向から見た断面図である。
図6(a)に示すように、本実施例では、回転部23−2の内部にX線光源部25m、二次電池27m、高電圧制御回路29m、後述の回生ブレーキ回路50等を内蔵し、他方、円環状の固定部24の内部には全円周上に取り付けられた多数の検出器ユニット30を内蔵している。固定部24は、ガントリの外周部5−2に固定されている。また、回転部23−2を回転させるためのモータ19、タイミングベルト21が図示されている。本構造は、所謂ニューテット・ローテート方式のCT装置と類似しているが、回転部23−2の高速回転により、検出器30或いは検出器ユニットの体(Z)軸方向のユニット数、或いは画素数の拡大要求が厳しくないため、回転部23−2の回転時に固定部24をX線ビームに対し退避しない場合であっても再構成画像におけるアーチファクト等の悪影響が生じ難い。なお、X線光源部25m、二次電池27m、高電圧制御回路29m、画像メモリ35m、検出器駆動制御回路41mは着脱が容易なカートリッジ構造であるため、稼働率の改善、撮像時間の延長、メンテナンス負荷の軽減等が実現する。
【0054】
図6(b)を用いさらに詳しく説明する。ガントリ5−2の内部には、固定部24及び回転部23−2が組み込まれている。回転部23−2の内部に取り付けられたX線発生部25mの配置は、図示するように、検出器ユニット30に対し、Z軸に対し右方向にオフセットしている。さらにX線出射方向は、Z軸に対し垂直方向ではなく、対向する位置にある検出器ユニット30に照射するようにZ軸方向に傾斜するように角度が付けられている。従来、Z軸(体軸)方向における検出器ユニット30の数が増大すると、Z軸方向における検出器ユニット30のZ軸方向の位置により、X線の入射角度の差が大きくなる。しかし、本発明では回転部23−2の回転数を増大し、ガントリのZ軸方向の移動速度を高速化することが容易なため、検出器ユニット30のZ軸(体軸)方向の幅或いは個数を少なくすることが容易になった。
【0055】
図6(c)は、上記実施例の変形例に係るCT装置510の、特にガントリ5−2の内部構造を説明するための断面図である。ガントリ5−2の内部には、固定部24及び回転部23−2が組み込まれている。
図6(b)に示した構造と異なる点は、X線光源25mを内蔵する回転部23−2の直径が、固定部の24の内周部の直径よりも小さく、従って、X線光源25mから発したX線が固定部24に妨げられずに検出器30に到達する。本構造は、所謂ステーショナリー・ローテート方式のCT装置と類似しているが、従来の構造、例えば、ブラシからスリップリングに対し高速かつ滑らせながら大きな電流を流すと、接触面が発熱し焼き付きの原因となるばかりでなく、スパーク等による発光現象により検出器30が誤った光電変換を行うため、特に高速スキャン(撮像)には適さない構造である。本構造では、X線光源25mの回転中心の中心軸を挟んで対向する部分の回転部23−2が、X線光源25mから発したX線の光路上にあるため何らかの影響を与える可能性がある。
【0056】
この課題を解決した構造について、
図7を用い以下に説明する。
図7(a)は、実施例に係るCT装置600の、特にガントリ内の構造を説明するZ軸方向からみた平面図である。上述の通り、回転部23−2の外周を取り巻くように固定部24が組み合わされている。固定部24の内周には、図示していない検出器が全周にわたって配置されている。回転部23−2には、X線発生部25mと図示していない光源駆動回路や二次電池等を内蔵している。回転部23−2には、破線で示す開口部28が形成されており、X線ビーム26の強度や進行方向に及ぼす影響を軽減している。開口部28は、必ずしもすべての部材を取り除いた状態(空気のみ)である必要はなく、例えば、X線透過率の高い樹脂製の保護カバーが残されていてもよい。
図5(b)は、ガントリ内の構造をX軸又はY軸方向から開口部28を見た場合の断面図である。固定部24の内周に沿って検出器30が配置され、開口部28を通過したX線ビームが検出器30に到達する。なお、検出器30の上方にX線を遮蔽するファイバーオプティックプレート及びX線シンチレータ等を積層しても良い。
【0057】
図7(c)は、
図7(a)における破線部Bの構造を説明するためのZ軸方向から見た拡大図である。固定部24の環状部に沿って、検出器30の長手方向がZ軸に平行になるように密接に並べられている。
図7(d)は、同じ部位をX線発生部25mの方から開口部28を見たときの平面図である。回転部23−2に形成された開口部28により、固定部24に取り付けられた複数の検出器30の受光面、或いは画素アレーが直接X線光源25mに対し露出しているので、照射X線の減衰を低減した露光を可能にしている。
【0058】
図8(a)は、本実施例に係るCT装置の駆動方法を説明するためのフローチャートである。図示するように、寝台又はガントリの移動及び回転部の回転開始後、X線照射による撮像が開始される。この場合、ガントリを所定位置まで、或いは寝台を移動させた後に、回転部の回転を開始する方法と、回転部の回転を開始し所定の回転数に達した後に寝台又はガントリの移動を開始する方法がある。また、破線矢印で示すように、ガントリ、或いは寝台のZ軸(正)方向の移動による撮像を終了後に、ガントリ、或いは寝台の移動方向を反転させZ軸(負)方向の移動による撮像を行う撮像方法が考えられる。さらに、寝台又はガントリ移動方向の反転時に、回転部の回転方向を反転させる方法と回転部の回転方向を変えない方法(正転)がある。
【0059】
図8(b)は、寝台又はガントリのZ軸方向の移動及び回転部の回転に伴うX線ビームの螺旋状の移動軌跡を説明するための斜視図である。これに、回転部の回転の回転方向を加えた軌跡が
図8(c)、及び(d)である。たたし、図面の簡略化のため、三次元的な斜視図ではなく、二次元的な模式図である。破線部はいずれもガントリの移動方向を反転させた場合の軌跡である。
図8(c)の場合は、回転部の回転も反転させているので、互いの軌跡の間を補完するような軌跡になっている。これに対し、
図8(d)の場合は、回転部23の回転方向を反転していないので、互いの軌跡が交差している。いずれが好ましいかは、画像の再構成アルゴリズム、或いは、所謂アーチファクトの出現状況により最適な方法を選択することができる。すでに説明したように、検出器アレー31から得られたデジタルデータはリアルタイムで画像メモリ35に記録される。
図1(b)に示したように、デジタルデータは、パラレルシリアル変換するまでもなく、パラレルデータのまま画像メモリに35に記録することができる。撮像終了後、ガントリは所定位置に停止し、回転部インターフェース2−2からホストインターフェース2−1を介し画像メモリ35に記録されたデータが読み出され、操作・制御部(図示せず)において画像の再構成処理後、モニター上に表示される。また、並行してリチウムイオン電池27を充電し、一連の駆動シーケンスを完了し待機状態となる。
【0060】
実施例に係るCT装置700の、特にガントリの内部にある回転部分について、
図9用いて説明する。
図9(a)は、ガントリ5の内部の回転部23をZ軸方向からみた平面図であり、
図9(b)及び
図9(c)は、(a)における破線部分39の構造を説明するための一部拡大図である。回転部23には、X線発生部25、二次電池27、光源駆動回路29、検出器アレー31、信号増幅・アナログデジタル(AD)変換回路及び信号走査・制御回路等を含む検出器周辺回路33、検出器駆動制御回路41、非接触インターフェース2−2、及び図示していないデジタル信号処理回路とパラレルシリアル変換回路等を内蔵している。以下に説明するように、回転部23の内部又はガントリ内の固定部に回生ブレーキ回路50を内蔵し、かつ回転部23又は固定部のいずれかの周囲に電磁誘導コイルを有しており、この電磁誘導コイルに誘起される起電力を回収するのが回生ブレーキ回路50である。
【0061】
図9(b)の構造(39−1)は、例えば、固定部側に永久磁石(34−1)のN極とS極が交互にリング状に並んでいる。これに対し、回転部側は、鉄心(32−1)に誘導コイル(36−1)が巻き付けられており、従って、回転部の内部に回生ブレーキ回路50を有している。他方、
図9(c)の構造(39−2)は、例えば、回転部側に永久磁石(34−2)のN極とS極が交互にリング状に並んでいる。これに対し、固定部側は、鉄心(32−2)に誘導コイル(36−2)が巻き付けられているため、固定部の内部に回生ブレーキ回路50を設けてもよい。回転部23の内部における二次電池或いは後述する電気二重層キャパシタに電気エネルギーを蓄積するのであれば、
図9(b)の構造が好ましい。
図9(b)の構造の構造では、回転部23が後述するタイミングベルトを介し外部モータにより強制的に回転させられている場合にも誘導コイル(36−1)には起電力が生じるため、二次電池27を充電することが可能であり、上記の強制的な回転終了後も回転が止まるまで誘導コイル(36−1)に生じる回転エネルギーを二次電池或いは後述する電気二重層キャパシタに回収することができるからである。
【0062】
なお、永久磁石には、例えばネオジウム磁石を使うことができる。後述するように、撮像動作が終了すればガントリ内部の回転部の回転運動は不要であるが、機械的に停止させるまでもなく、回転するガントリの慣性モーメントを電気エネルギーに変換することができれば、省エネルギー効果が得られる。本実施例では回生ブレーキ回路50がその役割を担っている。CT装置においては、回転(撮像モード)と停止(待機モード)を頻繁に繰り返すので、回転部の回転エネルギー回収効果は顕著であり、特に回転部の回転数を上昇させて高速スキャンを行う場合にはさらにその効果が高まる。
【0063】
本実施例における回生ブレーキ50について
図9(d)を用いて以下に説明する。本発明に係るCT装置は、回転部23の回転開始後に撮像動作に入り、撮像終了後に回転部23の回転が減速し回転運動が止まる。既に説明したように、一度の撮像動作において回転開始と回転停止を短時間内に繰り返し行うので、回転部23の回転運動エネルギーを有効に活用することは二次電池の消耗を軽減し、省エネルギーにも貢献する。
図1(d)は回転部分23の内部に設けた回生ブレーキ50を説明するため回路構成図である。二次電池27には双方向DC−DCコンバータ42の一端が接続されている。さらに、DC−ACコンバータを介し、誘導コイル36に接続している。他方、誘導コイル36からはAC−DCコンバータを介しキャパシタ、好適には電気二重層キャパシタ44につながり、さらに双方向DC−DCコンバータ42につながっている。回転部23の回転運動エネルギーを誘導コイル36に発生した逆起電力に変換し、電気二重層キャパシタ44を充電する。また、双方向DC−DCコンバータ42を介し二次電池27を充電することもできる。
【0064】
一般に、キャパシタのエネルギー回収効率は90%以上であり、二次電池充電時のエネルギー回収効率60%前後に比べると高効率である。特に、本実施例のように回転部23が減速し(回収し)、すぐにまた回転部23を回転(放電)させる場合などに好適である。なお、双方向DC−DCコンバータ42には、降圧チョッパ回路と昇圧チョッパ回路を組み合わせた回路方式、或いはDSP(Digital Signal Processor)とADコンバータを用いたPWM(Pulse Width Modulation)方式等を用いることができる。なお、本構成の場合、回転部23の内部に有する二次電池27を電源として交流電圧を発生させ電磁誘導コイル36−1に印加し回転部23を回転させる場合は、回転部23を回転子、ガントリ5の固定部側を固定子とするダイレクトドライブ(DD)モータとして用いることも可能である。
【0065】
図10(a)は実施例に係る撮像装置800の特にガントリ内の回転部分をZ軸方向からみた平面図であり、
図10(b)は、(a)における破線部分39Rの構造を説明するための一部拡大図である。本実施例では、回転部23が二つの部分(23−1と23−2)から構成され、一方の回転部(本図では23−1)には、タイミングベルト21が装着され、他方(本図では23−2)はラチェット構造により回転部(23−1)と機械的に連動する構造となっている。即ち、
図10(b)に示すように、回転部23−1の周囲には爪40が取り付けられており、回転部23−1が右回転すると回転部23−2の内周にある溝に引っ掛かり、トルクを伝達することができる。他方、回転部23−1が停止或いは左回転すると、爪40は回転部23−2の内周にある溝を乗り越えてトルクを伝達することができずに空転する。なお、ここで示した爪座ラチェット構造以外にも、ボールラチェット構造等、適宜最適な構造を選択することができる。
【0066】
図10(c)は実施例(例えば、CT装置700)における回生ブレーキを用いた場合の駆動方法を説明するためのフローチャートである。図示するように、回転部23の回転開始後、寝台又はガントリの移動を開始する。次に、X線照射による撮像が開始される。検出器アレーから得られたデジタルデータはリアルタイムで画像メモリに記録される。すでに説明したように、デジタルデータは、パラレルシリアル変換するまでもなく、パラレルデータのまま画像メモリに記録することができる。撮像終了後、回転部23の回転運動エネルギーが誘導コイルに逆起電力を生じさせ電気エネルギーとして回収し、キャパシタ又は二次電池を充電しつつ回転運動は減速する。最終的にガントリは所定位置に停止し、回転部インターフェースからホストインターフェースを介し画像メモリに記録されたデータが読み出され、図示していない操作・制御部において画像の再構成処理後、モニター上に撮影情報が表示される。また、並行して二次電池を充電し、一連のシーケンスが完了し待機状態となる。なお、図示していないが、後述するように、上記のガントリが所定位置に停止し、再度撮像開始時(フローチャートの最初のステップ)に戻るときに、使用済みの二次電池を切り離し、既に充電済みの二次電池を装着するステップを加えることもできる。
【0067】
図10(d)は
図10(a)、(b)に示したラチェット構造を用いたCT装置(800)場合の駆動方法を説明するためのフローチャートである。図示するように、回転部23−1が回転部23−2にトルクが加わる方向に回転を開始し、その後或いは同時に寝台又はガントリの移動を開始する。次に、X線照射による撮像が開始される。検出器アレーから得られたデジタルデータはリアルタイムで画像メモリに記録される。後述するように、デジタルデータは、パラレルシリアル変換するまでもなく、パラレルデータのまま画像メモリに記録することができる。撮像終了後、回転部23−1の回転トルクを減少或いは停止すると、回転部23−2は、回転部23−1との結合が解かれ空転する。回転部23−2の内部には、回生ブレーキ50(図示せず)があるため、既に説明したように、回転運動エネルギーが誘導コイルに逆起電力を生じさせ電気エネルギーとして回収し、キャパシタ又は二次電池を充電しつつ回転部23−2の回転運動は減速する。最終的にガントリは所定位置に停止し、回転部インターフェースからホストインターフェースを介し画像メモリに記録されたデータが読み出され、図示していない操作・制御部において画像の再構成処理後、モニター上に撮影情報が表示される。また、並行して二次電池を充電し、一連のシーケンスが完了し待機状態となる。なお、図示していないが、既に説明したように、上記のガントリが所定位置に停止し、再度撮像開始時(フローチャートの最初のステップ)に戻るときに、使用済みの二次電池を切り離し、既に充電済みの二次電池を装着するステップを加えることもできる。
【0068】
図11(a)は、他の実施例に係る撮像装置900のX軸方向から見た側面図である。本実施例では、ガントリ部が2台(ガントリ5とガントリ5−2)架台7上に搭載されている。さらに、クレードル部も2台(9−3と9−4)有しており、特にクレードル9−4は、被験者及び寝台(図示せず)が通り抜けられるようにドーナツ形の中空構造になっている。ガントリを複数台、例えばX線CT検査用ガントリとPET(ポジトロンエミッショントモグラフィー)検査用ガントリの組み合わせや、X線CT検査用ガントリと近赤外拡散光イメージング用ガントリの組み合わせのように、異なる検査を一台の撮像装置で実現することが可能になる。さらに、ガントリの移動中に被験者或いは被測定物がガントリに接触することを防止するための保護カバー51をガントリの移動方向に沿って架台に設けた構造となっている。また、複数のガントリ部は、個々に駆動する場合、或いは互いに連動して駆動させることもできる。なお好適には、ガントリ部が体軸方向に移動中に回転部或いはガントリ部から出力される信号、例えば、被験者の透視画像をモニターできるようにするため、無線通信インターフェースをガントリ部又は回転部と操作・制御部との間に有する構造としても良い。
【0069】
図11(b)は他の実施例に係るCT装置1000の斜視図であり、同図(c)はガントリ部5の内部の回転部23−3、及び固定部24−2の周辺部におけるX軸又はY軸方向から見た断面図である。CT装置1000は、Z軸方向が、水平線に対し直角、即ち重力の方向と一致している。従って、ガントリ5の移動方向は破線矢印で示すように上下方向である。ガントリ5を引き上げ、或いは下降させるモータ等は、クレードル9−5に内蔵している。クレードル9−5及びガントリ5を保持するための架台部に相当する二本の支柱7−1、7−2が底部支持台或いは底部クレードル9−6の上部に設けられている。既に説明した本発明に係るガントリ部の小型、軽量化により、このようなガントリ移動方向を採用したCT装置が可能になる。
【0070】
図11(c)に示すように、本発明に係る回転部23−3と固定部24−2は、環状に並べた複数のボールベアリング53を介し、上下方向に組み合わされている。回転部23−3の内部には既に説明したように(
図1(a)、
図3(c)等)、回生ブレーキ回路50(図示せず)を内蔵してもよい。回転部23−3は、タイミングベルト21を介し外部モータ(図示せず)により回転することができる。さらに、回転部23−3と固定部24−2が対面する部分に永久磁石34−3と34−4が対になっていずれも同じ極性が対向するように(即ち、N極同士、或いはS極同士が対面するように)配置されている。永久磁石34−3と34−4は、いずれもそれぞれ一枚のドーナツ形状の永久磁石であっても、複数の磁石を円周上に並べた構造であっても良い。このように、回転部23−3と固定部24−2に永久磁石を配置することにより、互いに反発する磁力が生じ、回転部23−3の重量がボールベアリング53に加える負荷を軽減することができる。磁力浮上方式であり、回転部23−3を回転させるときの始動トルクの軽減、或いは高速回転に伴うボールベアリングの摩耗やノイズの発生等を軽減させることができる。なお、回転部23−3と固定部24−2との間隙dは狭いほど反発力が大きくなるが、両者の表面加工精度等を考慮し、例えば、0.5から7ミリメートル(mm)程度の範囲に設定される。
【0071】
図12(a)は、実施例に係る医療用検診車1100の側面図である。本実施例では、車両の前後方向をX軸、車両の高さ方向、即ち鉛直方向をY軸、車両の側面方向、即ちX軸とY軸に直交する方向をZ軸と定義する。本発明に係るCT装置(例えば、CT装置600等)の体軸方向が車両のZ軸方向と一致しているためである。車両の側面部に、人体等の被検体を載せた寝台3を挿入する被検体挿入部54がある。図示していないガントリ又は寝台3を移動させながら撮像を行うことができる。
図12(b)は、他の実施例に係る医療用検診車1200の側面図である。本実施例では、車両の前後方向をX軸、車両の高さ方向、即ち鉛直方向をZ軸、車両の側面方向、即ちX軸とZ軸に直交する方向をY軸と定義する。ガントリ垂直移動型CT装置57(例えば、CT装置1000等)の体軸方向が車両のZ軸と一致するためである。(a)及び(b)のいずれの場合も、ソーラーパネル58、階段又は踏み台59を備えている。
【0072】
図12(c)、及び
図12(d)に上記医療用検診車1100の変形例に係る医療用検診車1110、及び医療用検診車1120を上部から見下ろした場合の平面図を示す。医療用検診車1110の場合は、被検体挿入部54に相当する開口部が車両の一方の側面のみにあり、従って、搭載するCT装置55は、寝台移動型CT装置(例えば、CT装置500)を使用することができる。例えば、寝台3−1が被検体を載せた状態でCT装置55の内部に移動、或いはCT装置55から出ることが容易になる。被検体が自ら移動して開口部を出入りするのが困難なためである。
【0073】
これに対し、
図12(d)に示す医療用検診車1120では、被検体挿入部54に相当する開口部が車両の両方の側面にあり、従って、搭載するCT装置56は、上記寝台移動型CT装置でも良いが、ガントリ移動型CT装置56(例えば、CT装置600等)を使用することができる。被検体が自ら移動して開口部に入り、検査(撮像)終了後に反対側の開口部から出ることができるので、集団検診などの場合、連続して被験者を検査(撮像)する場合に効率的である。そのため、人体以外の対象物も含め、連続的に複数の検査対象を同一方向に挿入し順次車両の反対側に送り出すことも容易である。
図12(c)の実施例では、車両の外部にさらに寝台移動装置(3−1,3−2)が必要であったが、本実施例では、例えば、ストレッチャーと呼ばれる簡易型移動寝台61を開口部に近づければよく、必ずしも寝台移動装置等を積載する必要が無い。従来は寝台を移動させるためのスペースが必要であったため、CT装置を医療用検診車両に搭載することが困難であったが、本実施例により、遠隔地においても高度な医療活動の展開が可能になった。なお、
図12(c)、
図12(d)において、符号63−1乃至63−6は、データ処理、電源制御室、その他の検査機器室、生化学検査室、診察室、待合室或いは更衣室等である。
【解決手段】ガントリ内の回転部23に内蔵する光源、検出器、画像メモリ35m、二次電池27m、その他部品を着脱可能なカートリッジ構造とし、該回転部に該カートリッジを該中心軸1の方向、或いは該中心軸から法線方向に向かって挿入又は抜去するための開口部を有するカートリッジ収納部を該回転部に備えるCT装置200を提供する。