(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6820992
(24)【登録日】2021年1月7日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】玄米を原料とした清酒の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/022 20190101AFI20210114BHJP
【FI】
C12G3/022 119A
C12G3/022 119J
C12G3/022 119F
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-186925(P2019-186925)
(22)【出願日】2019年10月10日
【審査請求日】2019年11月7日
(31)【優先権主張番号】201910823057.4
(32)【優先日】2019年9月2日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519366101
【氏名又は名称】付治華
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】付治華
【審査官】
田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−117096(JP,A)
【文献】
特開昭54−70498(JP,A)
【文献】
特開昭60−47671(JP,A)
【文献】
特開昭61−181369(JP,A)
【文献】
特開平10−229868(JP,A)
【文献】
特開平11−18751(JP,A)
【文献】
特開2004−350535(JP,A)
【文献】
特開2009−261353(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第110551592(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第108395954(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第106010888(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第109468198(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第106281855(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 1/00−3/08
C12H 6/00−6/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄米を原料とした清酒の製造方法であって、具体的な工程が以下の通り、
(1)玄米を原料とし、これを水が澄むまできれいに洗浄し、その後水を添加して4〜8時間浸漬する;
(2)工程(1)で浸漬した米の水分を切り、蒸煮後、冷水を蒸米にかけて22〜28℃にし、乾燥した米の重量に基づいて0.3%〜0.5%の比率で甘酒麹を混ぜ入れ、その後糖化槽に入れ、蒸米を平らにならし、真ん中にくぼみを作り、密封後、温度が24〜28℃の培養室で保温し、20〜28h糖化カビを活性化させる;
(3)工程(2)で糖化カビを活性化させた蒸米を恒温の糖化室中に移し、糖化室の温度を6℃より高く、10℃より低く設定し、この温度条件下で、甘酒麹中の糖化カビがデンプンを分解して糖液に転化させ、酵母およびその他の雑菌は低温の休眠状態にあり、低温条件下で蓋を開けて好気的糖化を行い、糖化時間は3日間より長く、5日間より短く、糖化過程において、くぼみ中の糖液により蒸米表面の湿りを保持する;
(4)工程(3)で糖化した蒸米を直接圧搾し、タンパク質および脂肪を含有する米外層を分離し、その後、圧搾後の液体に水を添加して糖度を25%〜35%に調整してから、常温で10〜15日間発酵させて清酒原液を得る;
または工程(3)で糖化した蒸米に、乾燥した米の重量に基づいて1:0.5〜2の比率で水を添加し、密封して一次発酵を行い、その発酵温度は18〜22℃、時間は1〜7日間であり、その後一次発酵が完了した原料液を圧搾し、タンパク質および脂肪を含有する米外層を分離し、澄んだ液を発酵缶に移し、室温下で10〜15日間二次発酵を行い、清酒原液を得る;
(5)工程(4)で発酵した後に得られた清酒原液を62〜65℃でパスツール殺菌し、28〜32min保温してから、30℃以下まで急速に冷却し、3〜7日間静置して澄ませ、ろ過し、澄んでおり、口当たりが純粋で、さわやかな日本酒を得る;
(6)工程(5)で製造した日本酒を貯蔵缶に移して熟成させ、10〜15日後、缶に分注して出荷することができる;であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記工程(3)で、1〜4時間ごとにくぼみ中の糖液を蒸米表面に均等にかけて保湿し、静置することを特徴とする、請求項1に記載の玄米を原料とした清酒の製造方法。
【請求項3】
前記工程(3)の糖化過程で、測定した蒸米のデンプン残留率が5%より低いとき、糖化が完了していると見なすことを特徴とする、請求項1に記載の玄米を原料とした清酒の製造方法。
【請求項4】
前記工程(5)で、滅菌過程中または滅菌完了後、300g〜500g/清酒原液1トンの量で沈殿剤を添加し、沈殿剤は水で希釈してから清酒原液中に添加し;3〜7日間澄ませた後、珪藻土または布袋でろ過し;滅菌過程中に沈殿剤を添加するとき、沈殿剤はベントナイトを用い;滅菌完了後に沈殿剤を添加するとき、沈殿剤はゼラチン、キトサン、魚膠または卵白粉末を用いることを特徴とする、請求項1に記載の玄米を原料とした清酒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発酵、酒造の技術分野に属し、具体的に玄米を原料とした清酒の製造方法を提供する。該方法は、微生物の発酵を制御することにより、微生物が米の様々な成分に対して適切、規則的に分解、発酵を行い、精米歩合を必要としない玄米で吟醸、大吟醸の特徴、品質を有する清酒を醸造することを実現した。
【背景技術】
【0002】
清酒は日本の国酒であり、アルコール含量は14%〜17%(V)で、柔らかく、なめらかで、甘く、さっぱりとした味が特徴である。既存の日本酒は、タンパク質、脂肪含量が低い精米を原料、米麹または酵素製剤を糖化剤として使用し、発酵、圧搾、殺菌により製造した醸造酒である。清酒の製造過程において、タンパク質およびミネラルは清酒の雑味の原因となり、原料米中のタンパク質および脂肪含量が低いほど、製造した清酒の口当たりはなめらかであるため、清酒の原料米は非常に慎重に選択する。米中のタンパク質および脂肪含量が低いことが求められるだけでなく、デンプンが中心に集まった米を選択する必要もあり、タンパク質および油脂含量が高い外層部分を磨き落とし、デンプン含量が高い米の中心部分のみを残して醸造を行うのに都合がよい。一般的な普通の米では、脂肪、タンパク質およびデンプンのこれらの成分は比較的混ざり合い、分布は比較的均一であるため、タンパク質、脂肪およびデンプンを分けるのは難しく、そのため原料の選択範囲は大幅に低下し、原料コストを高めている。
【0003】
日本酒の製造では、一般的に用いる原料の精米率を10%〜75%に制御することが求められる(注:10%〜75%は籾殻を除いた米の率を指し、この数値が小さいほど精米率が高いことを示し、100%は早米である)。大部分の清酒における原料の精米率は75%前後であり、すなわち25%前後の外層部分を除去している。このうち純米吟醸は精米率を60%以下に制御しており、純米大吟醸は精米率を50%以下に制御している。これと比較して、我々が日常生活で食べている米の精米率は90〜92%の間であり、すなわち8〜10%の米ぬかのみを除去している。清酒の醸造において、その精米率が高いほど、酒中の米の香りは芳醇、濃厚であり、精米率が低いほど、酒中に花、果実のすがすがしい香りをより有し、口当たりはよりなめらかである。精米率を低下させるため、比較的多くの表層部分を磨き落とし、磨いた米の中心部分におけるタンパク質および脂肪の比率が比較的低ければ、清酒の香り、口当たりが純粋、さわやかであり、米の本来の味を表すことができる。しかし原料米を磨くと、同等量の清酒を製造するのに、より多くの米を消費する必要があり、原料コストを大幅に高めている。さらに米外層はタンパク質および脂肪を含有する以外に、部分的にデンプンも含有し、外層を磨き落とすと原料を大量に損失し、酒の製造率を低下させる。通常の清酒の製造において、1トンの玄米からの製造率は最高で清酒1.5トンである。このほか、精米の磨きは酒造の工程を増加させ、米を磨く設備および作業員を単独で配置する必要があり、これにより製造コストを高めている。
【0004】
甘酒麹は糖化菌および酵母製剤であり、含まれる微生物は、主にクモノスカビ、ケカビおよび少量の酵母である。発酵過程で糖化菌がまず米中のデンプンをグルコースに分解し、タンパク質をアミノ酸に分解し、続いて少量の酵母がグルコースを解糖系によりアルコールに転化する。甘酒麹は清酒の醸造に用いることもできるが、甘酒麹は糖化菌以外に酵母も含有し、酒造過程で糖化しながら発酵する過程が容易に生じるため、甘酒麹を採用した清酒の酒造は原料に対する要求がより高い。中国の黄酒は、実際は日本酒と同じ起源である。黄酒が使用するのは精米していない完全な米またはもち米であり、酒造過程で糖化しながら発酵するため、米外層のタンパク質および脂肪が大量に酒内に加水分解され、これにより複雑で濃厚な味および口当たりをもたらしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、既存の日本酒の原料処理の煩わしさ、製造コストの高さを解決するために提供する、玄米を原料とした清酒の製造方法である。該方法は、微生物活性を制御することにより、微生物が米の様々な成分に対して適切、規則的に分解、発酵を行い、精米歩合を必要としない普通の玄米で、吟醸または大吟醸の特徴を有する清酒の醸造を実現することができ、清酒の製造性を大幅に高め、清酒の製造コストを低下させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的問題を解決するため、本発明は玄米を原料とした清酒の製造方法を提供している。具体的な工程は以下の通りである。
(1)玄米を原料とし、これを水が澄むまできれいに洗浄し、その後水を添加して4〜8時間浸漬する。
(2)工程(1)で浸漬した米の水分を切り、蒸煮後、冷水を蒸米にかけて22〜28℃にし、乾燥した米の重量に基づいて0.3〜0.5%の比率で甘酒麹を混ぜ入れる。その後糖化槽に入れ、蒸米を平らにならし、真ん中にくぼみを作り、密封後、温度が24〜28℃の培養室で保温し、20〜28h糖化カビを活性化させる。
(3)工程(2)で糖化カビを活性化させた蒸米を恒温の糖化室中に移す。糖化室の温度を6度より高く、10℃より低く設定し、この温度条件下で、甘酒麹中の糖化カビはデンプンを分解して糖液に転化させる。酵母およびその他の雑菌は低温の休眠状態にあり、低温条件下で蓋を開けて好気的糖化を行う。糖化時間は3日間より長く、5日間より短い。糖化過程において、くぼみ中の糖液により蒸米表面の湿りを保持する。
(4)工程(3)で糖化した蒸米を直接圧搾し、タンパク質および脂肪を含有する米外層を分離する。その後、圧搾後の液体に水を添加して糖度を25%〜35%に調整してから、常温で10〜15日間発酵させて清酒原液を得る。
または工程(3)で糖化した蒸米に、乾燥した米の重量に基づいて1:0.5〜2の比率で水を添加し、密封して一次発酵を行い、その発酵温度は18〜22℃、時間は1〜7日間である。その後一次発酵が完了した原料液を圧搾し、タンパク質および脂肪を含有する米外層を分離し、澄んだ液を発酵缶に移し、室温下で10〜15日間二次発酵を行い、清酒原液を得る。
(5)工程(4)で発酵した後に得られる清酒原液を62〜65℃でパスツール殺菌し、28〜32min保温してから、30℃以下まで急速に冷却する。3〜7日間静置して澄ませ、ろ過し、澄んでおり、口当たりが純粋で、さわやかな日本酒を得る。
(6)工程(5)で製造した日本酒を貯蔵缶に移して10〜15日間熟成させると、缶に分注して出荷することができる。
【0007】
本発明の好ましい技術案として、前記工程(3)で、1〜4時間ごとにくぼみ中の糖液を蒸米表面に均等にかけて保湿し、静置する。
【0008】
本発明の好ましい技術案として、前記工程(3)の糖化過程で、測定した蒸米のデンプン残留率が5%より低いとき、糖化が完了していると見なす。
【0009】
本発明の好ましい技術案として、前記工程(5)で、滅菌過程中または滅菌完了後、200g〜800g/清酒原液1トンの量で沈殿剤を添加し、沈殿剤は水で希釈してから清酒原液中に添加する。滅菌過程中に沈殿剤を添加するとき、沈殿剤はベントナイトを用い、ベントナイトおよび精製水の重量比率は1:10である。滅菌完了後に沈殿剤を添加するとき、沈殿剤はゼラチン、キトサン、魚膠または卵白粉末を用いる。このうちゼラチン、キトサンおよび精製水の重量比は1:15〜20である。
【0010】
本発明の出願人は長年の研究を通じて、様々な温度領域における米発酵酒の生物反応を実験し、酒麹内の様々な微生物が様々な温度に面したとき、その生物活性はそれぞれ異なることを発見している。このうち酵母は10℃以下の温度にあるとき、完全に活性を失い;糖化カビ(クモノスカビ、二ホンコウジカビ)はデンプンを部分的に分解して糖に転化させる活性を保持することができ、6℃より低くなると、デンプンの分解が停止する。このため、酒麹内に同時に存在するこの2種(糖化カビ、酵母)の微生物が低温により休眠する臨界点の違いを「微生物活性における低温臨界値の違い」と命名する。
【0011】
本発明は普通の玄米を原料として使用し、外層を磨き落とす必要はなく、洗浄、浸漬、蒸煮後、甘酒麹を添加し、糖化カビを活性化させる。その後、10℃より低い低温で酵母の発酵を抑制し、同時に6℃より高い温度で糖化カビはデンプンを分解して糖液に転化させることができる。米外層中のタンパク質および脂肪などの物質は、該温度範囲内で分解されることはなく、固体状態で米外層に付着し、後期の圧搾工程で簡単に分離することができる。糖化後の蒸米は、直接加圧すると、常温下で清酒を発酵、醸造することができる。水を添加した後、酒粕を含んだまま1〜7日間一次発酵を行い、酵母が米外層のタンパク質などの成分に対して適度な分解、発酵を行ってから圧搾し、その後圧搾した、澄んだ液を常温で二次発酵させることもできる。発酵が終了し、滅菌して澄ませると、高品質の日本酒を得ることができ、酒粕を含んだ発酵は清酒の味を改善することができる。酵母が米外層のタンパク質などの成分を分解する程度を自由に制御し、純米酒から大吟醸までの各種の品質または特徴を有する日本酒を醸造する。酒麹内のある種の微生物を単独で制御することにより、酒造の前段階は糖化カビにデンプンのみを分解させて糖に転化させることができ、糖化の完了後、原料のタンパク質またはその他の成分に対する酵母の発酵、分解の程度を任意で制御することができるため、たとえ普通の玄米を使用し、磨く(精米歩合)必要が無くても、吟醸、大吟醸の品質の日本酒を醸造することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
(1)本発明で使用する原料は普通の玄米でも、清酒製造用の米でもよい。磨く(すなわち精米歩合)必要はなく、直接蒸煮、発酵に用いる。米に含まれるデンプンを浪費せず、原料の利用率はより高く、原料および前処理コストが大幅に低下する。
【0013】
(2)本発明の醸造工程では精米の工程を除き、清酒の酒造プロセスを減少させた。他に精米の作業場、設備、人員を設置する必要はなく、製造および人的コストを大幅に低下させ、製造効率を高めた。同等の醸造製造現場の面積における製造能力より、5〜10倍拡大することができる。
【0014】
(3)本発明の醸造工程では、糖化温度および後期の発酵温度を制御する必要があるのみであり、工程の製造操作はより簡単で、規格化され、同等の製造量より労働コストを50%以上低下させることができる。
【0015】
(4)本発明は、水を添加する比率および酒粕を含んだ発酵の時間を調整することにより、酵母が米外層のタンパク質などの成分を分解する程度を自由に制御して、純米酒から大吟醸までの各種品質または特徴を有する日本酒を醸造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施例を組み合わせて、本発明についてさらに説明する。
【0017】
実施例1で提供する日本酒の製造方法において、具体的な工程は以下の通りである。
(1)普通の米100キログラムを水が澄むまできれいに洗浄し、300キログラムの水を添加して6時間浸漬する。その後水分を切り、蒸米機で蒸煮し、その後冷水をかけて22〜28℃まで冷却する。
(2)工程(1)で冷却し、水分を切った蒸米を、麹を混ぜる台に乗せ、蒸米の塊がなくなるまで軽く散らし、500グラムの甘酒麹を混ぜ入れる。その後ステンレスの糖化槽に入れ、糖化槽の寸法は長さ120センチメートル、幅60センチメートル、高さ60センチメートルであり、さらに蒸米の真ん中に2つのくぼみを作り、放熱および観察を有利にする。その後糖化槽を密封し、培養室に移す。温度を24〜28℃に設定し、時間は20〜28時間で、蒸米から淡い甘酒の香りがすることを基準とする。
(3)工程(2)で糖化カビを活性化させた蒸米を低温の糖化作業場に移す。糖化カビのデンプンに対する分解は好気的糖化であり、糖化槽の蓋を開く。1〜4時間ごとにくぼみ内の糖液をすくって蒸米表面に均等にかけ、蒸米の湿りを保持すると同時に、蒸米の真ん中の温度を下げることもできる。糖化作業場の温度を6℃以上に設定してクモノスカビの活性を保持し、10度より低くして低温で酵母活性を抑制し、酵母が糖および米外層のタンパク質を分解するのを防止する。同時に酵母が酸を生成し、脂肪を分解するのを防止することにより、糖化の終了時に、米外層および米外層に付着したタンパク質および脂肪が固体状態で完全に残っていることを保証する。4日間糖化し、測定した蒸米のデンプン残留率が5%より低いとき、糖化が完了したと見なすことができる。
(4)工程(3)で糖化が完了した蒸米および糖化槽を発酵室に移し、乾燥した米の重量に基づいて1:1.2の比率で水を添加して一次発酵を行う。密封して48時間発酵させ、発酵完了後、発酵後の原料液を圧搾し、タンパク質および脂肪を豊富に含む固体状態の完全な米外層を分離する。澄んだ液を発酵作業場の発酵缶にポンプ注入し、温度18〜22℃で15日間二次発酵を行い、清酒原液を得る。
(5)工程(4)で発酵が完了した清酒原液を滅菌缶にポンプ注入し、500g/清酒原液1トンでベントナイトを添加する。添加前に、ベントナイトおよび精製水を重量比1:10の比率で均一に溶解し、清酒原液中に添加する。撹拌を起動し、65℃まで昇温し、30分間保温してから25℃まで急速に冷却し、沈殿缶にポンプ注入する。5日間沈殿させた後、珪藻土でろ過すると、澄んでおり、口当たりが純粋で、米の香りが上品で、淡い青葉の香りを発する日本酒を得ることができる。これを貯蔵缶に移して10〜15日間熟成させると、缶に分注して出荷することができる。
【0018】
実施例1で醸造した日本酒は、実測値がアルコール度15.7、全糖1.3%、全酸0.28%、アミノ態窒素0.19%であり、品質は純米大吟醸の品質に近い。合計で玄米1トン当たり、2.5トンの清酒を製造することができる。
【0019】
実施例2で提供する日本酒の製造方法は、味がより純粋な清酒を得るためである。工程(1)から(3)は実施例1と同じであり、工程(4)で糖化が完了した蒸米の原料液を圧搾し、米外層を分離する。澄んだ液に精製水を添加して糖度を35%に調整し、発酵缶にポンプ注入して発酵を行い、発酵温度は18〜22℃、発酵時間は15日間である。その後、実施例1の工程(5)に基づいて、清酒の滅菌および沈殿、ろ過処理を行う。
【0020】
実施例2で製造した清酒は甘口の清酒であり、測定の結果、アルコール度は15%、全糖7%、全酸0.25%、アミノ態窒素0.15%である。合計で玄米1トン当たり、2.2トンの清酒を製造することができる。
【0021】
実施例3で提供する日本酒の製造方法は、米の香りがより濃厚で、口当たりがより芳醇な製品を得るためである。工程(1)から(3)は実施例1と同じであり、工程(4)で糖化が完了した蒸米および糖化槽を発酵作業場に移し、乾燥した米の重量に基づいて1:1.3の比で水を添加し、密封して一次発酵を行い、発酵温度は18〜22℃、発酵期間は7日間である。一次発酵の完了後、発酵中の酒液および蒸米を圧搾し、米外層を分離し、酒液を発酵缶にポンプ注入して温度18〜22℃で二次発酵を15日間行う。その後、滅菌缶にポンプ注入し、撹拌を起動し、62〜65℃まで昇温して28〜32分間保温してから、28℃まで急速に冷却する。ゼラチンおよび精製水を重量比1:15の比率で溶解し、その後300gゼラチン/清酒原液1トンの量で、清酒原液に添加して30分間撹拌し、沈殿缶にポンプ注入する。3日間沈殿させた後、珪藻土でろ過すると、澄んでおり、口当たりが純粋で、米の香りが上品な日本酒を得ることができる。これを貯蔵缶に移して10〜15日間熟成させると、缶に分注して出荷することができる。
【0022】
実施例3で製造した清酒は、測定の結果、アルコール度16.5%、全糖0.4%、全酸0.48%、アミノ態窒素0.45%の日本酒である。米1トン当たり、2.4トンの酒を製造することができる。
【0023】
比較例1:本発明の発明者は、糖化温度および糖化時間に対して以下の比較試験を行った。具体的に以下の通りである。
普通の米10キログラムを水が澄むまできれいに洗浄し、水を添加して7時間浸漬する。その後水分を切り、蒸煮後、冷水をかけて22〜28℃まで冷却し、乾燥した米の重量に基づいて0.4%の比率で甘酒麹を混ぜ入れる。その後糖化槽に入れ、蒸米の真ん中にくぼみを作り、放熱および観察を有利にする。その後糖化槽を密封し、培養室に移し、温度を24〜28℃に設定し、時間は20〜28時間で糖化カビを活性化させ、糖化カビを活性化させた蒸米を低温の糖化作業場内に移して好気的糖化を行う。糖化完了後、糖化液中の還元糖含量を測定し、様々な糖化時間および糖化温度の条件下における糖化液中の還元糖含量を記録する。詳しくは表1を参照のこと。
【0025】
表1の比較試験のデータから以下のことがわかる。糖化温度が6℃より低いとき、デンプンの転化量は比較的低く、6℃に達すると、デンプンの転化量は比較的速く増加し、糖化温度が10℃に達すると、酵母の活性が回復し始めて、糖質源が消費され始め、12℃を超えると、糖質源の消費は次第に速くなる。糖化時間が3日間以下ではデンプンの転化量は比較的少なく、糖化液中に含まれる糖量は低く、3日間に達すると、デンプンの転化率は次第に上昇し、5日間に達すると、糖量の増加は基本的に停止する。本発明における糖化は低温下で行うため、製造コストを低下させるため、糖化時間は一般的に5日間を超えない。
【0026】
同時に、発明者は比較例中の様々な温度下で、糖化作業場中の二酸化炭素含量および作業場内の感覚について記録した。詳しくは表2を参照のこと。
【0028】
表2中の比較データから、温度が10℃に達すると、作業場の二酸化炭素が増加し始め、酵母がすでに働き始めていることを示しており、12℃に達すると、その増加は非常に顕著であり、15℃に達すると、作業場にはすでに顕著な窒息感があることがわかる。
【0029】
比較例2:本発明の発明者は、酒粕を含んだ発酵の時間に対して以下の比較試験を行った。具体的な操作は、実施例1中の工程(1)から工程(4)により行う。工程(4)の酒粕を含んだ一次発酵の時間はそれぞれ0から7日間であり、一次発酵後に圧搾し、澄んだ液を測定する。このうちアミノ態窒素の含量は表3に示す通りである。
【0031】
比較例2から、酒粕を含んだ一次発酵の時間は、清酒中のアミノ態窒素含量に直接影響を及ぼし、これにより清酒の口当たりに影響を及ぼすことがわかる。
【0032】
本発明は普通の米を原料としており、外層を磨き落とす必要はなく、直接浸漬、蒸煮する。まず温度により糖化カビの米のデンプンに対する糖化を制御し、酒粕を含んだ発酵の後圧搾するか、または直接圧搾し、澄んだ液を二次発酵して、口当たりが純粋で、澄んでおり、全酸およびアミノ態窒素と各種官能指標とが大吟醸の特徴に符合した日本酒を製造する。さらに酒粕を含んだ一次発酵の時間を調整することにより、酵母が米外層のタンパク質などの成分を分解する様々な程度を制御し、各種特徴を有する日本酒を醸造することができる。実施例により、本発明中の方法は、磨いていない玄米1トンから2.5トンの酒を製造することができることがわかり、その製造率は既存の清酒の製造率の1.5倍前後より高い。清酒の製造率を大幅に高め、清酒の原料コストを低下させ、さらに米外層を磨く部門、設備および人員を他に準備する必要はない。清酒の製造コストを大幅に低下させ、全体の原料および製造コストは既存の日本酒の製造工程と比較して50%以上低下させることができる。
【要約】
【課題】本発明は、玄米を原料とした清酒の製造方法を提供する。
【解決手段】前記方法は、普通の玄米を使用し、浸漬、蒸煮後、続けて甘酒麹を糖化槽に入れて密封し、24〜28℃の条件下で保温して培養する。その後、作業場の温度を6℃以上10℃以下に調整して酵母活性を抑制すると同時に、糖化カビの部分的な活性を残し、米のデンプンを分解して液化および糖化する。その後圧搾するか、または水を添加して酒粕を含んだ一次発酵を行ってから圧搾し、タンパク質および脂肪を豊富に含む固体状態の米外層を分離し、澄んだ液を発酵缶にポンプ注入して二次発酵を行ってから滅菌し、澄ませてろ過し、清酒を得る。本発明の方法は、玄米を原料とし、外層の磨き工程を必要とせず、口当たりが純粋で、澄んでおり、全酸およびアミノ態窒素と各種官能指標とが大吟醸の特徴に符合した日本酒を製造することができる。全体の原料および製造コストは、既存の日本酒の製造工程と比較して、50%以上低下させることができる。
【選択図】なし