(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6821006
(24)【登録日】2021年1月7日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】抗EGFRと抗CD3の二重特異性抗体及びその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20210114BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20210114BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20210114BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20210114BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20210114BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20210114BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20210114BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20210114BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20210114BHJP
C12N 15/70 20060101ALI20210114BHJP
C12N 15/74 20060101ALI20210114BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20210114BHJP
C12N 15/81 20060101ALI20210114BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20210114BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20210114BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/46ZNA
C07K16/30
C07K16/28
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/70 Z
C12N15/74 Z
C12N15/85 Z
C12N15/81 Z
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K47/65
A61P35/00
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-505507(P2019-505507)
(86)(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公表番号】特表2019-526246(P2019-526246A)
(43)【公表日】2019年9月19日
(86)【国際出願番号】CN2017103896
(87)【国際公開番号】WO2018068652
(87)【国際公開日】20180419
【審査請求日】2019年1月31日
(31)【優先権主張番号】201610886938.7
(32)【優先日】2016年10月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512320009
【氏名又は名称】北京東方百泰生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING DONGFANG BIOTECH CO.LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】517058510
【氏名又は名称】北京精益泰翔技▲術▼▲発▼展有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】白 ▲義▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲穏▼
(72)【発明者】
【氏名】徐 萌
(72)【発明者】
【氏名】裴 爽
(72)【発明者】
【氏名】▲ザン▼ ▲ヤン▼▲ル▼
(72)【発明者】
【氏名】文 ▲聖▼▲梅▼
【審査官】
高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/071004(WO,A1)
【文献】
特開平08−280387(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/165818(WO,A2)
【文献】
国際公開第2016/115274(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/146438(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/146437(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/020622(WO,A1)
【文献】
薬学雑誌,2015年,Vol. 135, No. 7,pp.851-856
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)インタクトなモノクローナル抗体、(b)一本鎖抗体ScFvおよび(c)リンカー(linker)を含み、前記(a)はEGFR抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖と2つの抗体軽鎖とからなり、前記(b)は免疫細胞抗原CD3に特異的に結合し、前記(b)は2つの一本鎖抗体ScFvであり前記(b)の2つの一本鎖抗体ScFvはそれぞれ前記(c)リンカーを介して前記(a)の2つの重鎖のC末端に連結され、
前記(a)インタクトなモノクローナル抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号:1と配列番号:4、配列番号:2と配列番号:5または配列番号:3と配列番号:6という3種類の組み合わせのうちの1種類であることを特徴とする二重特異性抗体。
【請求項2】
前記(c)リンカーのアミノ酸配列は(GGGGX)nであり、XはAlaまたはSerであり、nは1〜4の自然数であることを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項3】
前記XはSerであり、前記nは3であることを特徴とする請求項2に記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
前記(b)2つの一本鎖抗体ScFvのアミノ酸配列はいずれも配列番号:7であることを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
前記(b)一本鎖抗体ScFvの重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号:8であり、前記(b)一本鎖抗体ScFvの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号:9であることを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項6】
前記(a)インタクトなモノクローナル抗体の重鎖定常領域はlgG1、lgG2、lgG3またはlgG4のうちの1種の重鎖定常領域であることを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の二重特異性抗体を含むことを特徴とする抗体、ポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の二重特異性抗体をコードすることを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項8に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする組換えDNA発現ベクター。
【請求項10】
宿主細胞であって、請求項9に記載の組換えDNA発現ベクターが形質転換されており、原核細胞、酵母または哺乳動物細胞を含むことを特徴とする宿主細胞。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の二重特異性抗体を含むことを特徴とする薬物または薬物組成物。
【請求項12】
EGFR抗原特異的発現による腫瘍病気またはその他の病気を治療する薬物の調製における請求項1〜6のいずれか1項に記載の二重特異性抗体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物技術分野に関し、具体的には、EGFRとCD3についての二重特異性抗体の構築および調製方法、並びにこの抗体の病気における応用に関する。
【背景技術】
【0002】
二重特異性抗体(bispecific antibody,BiAb)は2つの異なる抗体断片により構成される人工抗体であり、2つの異なる抗原または2つの異なる抗原エピトープを特異的に認識および結合することができる。
【0003】
モノクローナル抗体は、癌、炎症および他の疾患の治療に広く使用されている。これらの抗体は単一のターゲットに向けているので、多くの患者は単一の治療に十分に応答できず、薬物耐性が時に生じる。二重特異性抗体は、2つの異なる抗原または抗原性エピトープを同時に認識でき媒介としてナチュラルキラー細胞およびT細胞などの免疫エフェクター細胞を再配向でき、腫瘍細胞の死滅機能を増強する。さらに、二重特異性抗体は、同じ細胞における2つの異なる抗原に位置付けられ、癌拡散シグナルまたは炎症シグナルを含む細胞シグナル伝達の変化をもたらすこともできる。長期にわたる研究開発の後、二重特異性ミニ抗体、二本鎖抗体、一本鎖二価抗体、および多価二重特異性抗体のような二重特異性抗体の様々な形態が出現した。これらの二重特異性抗体は、基本的に、Fc含有およびFc非含有の二種類に分類される。前者はより良好な溶解性、安定性および半減期を有する一方で、Fcが媒介する抗体依存性細胞毒性作用(ADCC)および補体依存性細胞溶解効果(CDC)は、治療に必要な付加的効果を幾つかもたらすことができる。これに比べて、Fcを欠く二重特異性抗体は、その抗原結合能力に完全に依存してその治療効果を発揮する。さらに、Fcタンパク質はインビボでの薬物タンパク質(またはポリペプチド)の半減期を延長し、それによりインビボでの活性分子の作用時間を延長する。
【0004】
腫瘍細胞表面抗原である表皮成長因子受容体(EGFR):、表皮成長因子受容体は血管組織以外の上皮細胞膜に広く分布し、約180KDaの分子量を有する膜貫通タンパク質であり、リガンド誘発チロシンプロテインキナーゼ活性を有し、ErbBという保守的な受容体ファミリーのメンバーの1つである。このファミリーの他のメンバーとして、HER2/Neu/ErbB2、HER3/ErbB3およびHER4/ErbB4が含まれる。ErbB受容体の共通の特徴は、細胞外(EC)リガンド結合領域、2つの反復システインリッチ領域からなる単一膜貫通領域、およびチロシンプロテインキナーゼおよび自身リン酸化部位を含む細胞内配列を含むことと、リガンドと受容体との結合後、受容体の二量化を起こし、ホモまたはヘテロ型の二量体を形成することと、二量化の受容体が架橋リン酸化が発生し、細胞内領域におけるTKサブ領域を活性化し、それによって次のレベルのシグナル伝達を誘導し、細胞増殖、形質転換をもたらすこととを含む。EGFRは、腫瘍細胞の増殖、血管形成、腫瘍浸潤、転移、およびアポトーシスの阻害に関し、その機制は、EGFR高発現による下流シグナル伝達の増強、変異体EGFR受容体またはリガンド発現の増加によるEGFRの連続的活性化、自己分泌ループの作用増強、受容体の下方調節機構の破壊、および異常シグナル伝達経路の活性化を含む。研究の結果、EGFRが多くの固形腫瘍において高発現または異常発現し、腫瘍細胞の増殖、血管形成、腫瘍浸潤、転移およびアポトーシスの阻害に関連することを示している。EGFRの過剰発現は、腫瘍の進化において重要な役割を果たし、神経膠腫、肺癌、前立腺癌、膵臓癌などの組織にEGFRの過剰発現がある。
【0005】
免疫細胞表面抗原分化クラスター3(CD3):CD3分子は、T細胞膜上の重要な分化抗原であり、成熟T細胞の特徴的マーカーであり、6つのペプチド鎖からなり、非共有結合でT細胞抗原受容体(TCR)との間でTCR−CD3複合体を構成し、TCR−CD3複合体の細胞質内の組み立てに関与するだけでなく、各ポリペプチド鎖の細胞質基質領域の免疫受容体活性化チロシンモチーフ(immunoreceptor tyrosine−based activation motif,ITAM)を介して抗原刺激シグナルを送達する。CD3分子の主な機能は、TCR構造を安定化させ、T細胞活性化シグナルを伝達することである。TCRが特異的に抗原を認識して結合すると、CD3はT細胞の活性化を誘導する最初のシグナルとして、T細胞の細胞質基質へのシグナルの伝達に参加する。それは、T細胞抗原認識および免疫応答産生において極めて重要な役割を果たす。
【0006】
医学、特に腫瘍の免疫療法において、二重特異性抗体は、良好な作用および見込みを有し、腫瘍細胞および免疫細胞上の特異的抗原−抗免疫活性細胞CDI6またはCD3部分に同時に結合でき、NK細胞またはT細胞を活性化するとともに、抗腫瘍特異抗原部分は、腫瘍細胞に結合でき、免疫細胞を腫瘍細胞にターゲティングさせ、局所のNK細胞またはT細胞濃度を増加させ、これにより、免疫エフェクター細胞が腫瘍細胞を特異的に殺傷可能にされる。先行技術では、市販されているEGFRおよびCD3二重特異性抗体医薬品は存在せず、この技術はまだ研究されていない。
中国特許CN201510030519.9と比較して、本発明は、抗EGFR抗体の生物学的活性を完全に保留するため、四価二重特異性抗体を使用する。四価二重特異性抗体は、二重特異性抗体の生物学的活性をより良く発揮するために、腫瘍抗原およびエフェクター細胞(T細胞およびNK細胞など)をよりよく認識する。米国特許第9249217B2号は、ScFv−ScFv(BITE)の形態を使用するが、BITEは二価で、Fc断片がない。BITEと比較して、本発明は四価抗体の利点に加えてFc断片を含む。Fc断片はインビボでのエフェクター分子の半減期を延長でき、それによりエフェクター分子のインビボでの作用時間を延長できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許CN201510030519.9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は二重特異性抗体を提供する。この二重特異性抗体は抗EFGRのC−端に抗CD3のScFv配列を増加し、この二重特異性抗体は抗EGFR抗体完全分子構造を保留するとともに、CD3抗原を結合する能力を増加させる。このようにして、インビボでの元のEGFR抗体の生物学的活性を維持するだけでなく、2つの異なる抗原を特異的に認識し、免疫エフェクター細胞を腫瘍細胞に標的化し、それによって免疫エフェクター細胞が腫瘍細胞を殺す効果を高める。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(a)インタクトなモノクローナル抗体、(b)一本鎖抗体ScFvおよび(c)リンカーを含み、前記(a)はEGFR抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖と2つの抗体軽鎖とからなり、前記(b)は免疫細胞抗原CD3に特異的に結合し、前記(b)は2つの一本鎖抗体ScFvであり、前記(b)は2つの一本鎖抗体ScFvであり、前記(b)の2つの一本鎖抗体ScFvはそれぞれ前記(c)リンカーlinkerを介して前記(a)の2つの抗体重鎖のC末端に連結される抗EGFRと抗CD3の二重特異性抗体及びその応用を提供する。
【0010】
前記二重特異性抗体において、前記(c)リンカーlinkerのアミノ酸配列は(GGGGX)
nであり、XはSerまたはAlaを含み、Xは好ましくはSerであり、nは1〜4の自然数であり、nは好ましくは3である。
【0011】
前記二重特異性抗体(a)インタクトなモノクローナル抗体は2つの軽鎖と2つの重鎖とからなり、各重鎖と軽鎖の間はジスルフィド結合を介して連結され、2つの重鎖の間はヒンジ領域のジスルフィド結合を介して連結される。前記重鎖および軽鎖の可変領域は腫瘍細胞表面EGFR抗原に特異的に結合する。
【0012】
前記(a)インタクトなモノクローナル抗体の重鎖定常領域はlgG1、lgG2、lgG3またはlgG4のうちの1種であり、好ましくはlgG2である。
【0013】
前記(a)インタクトなモノクローナル抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列はSEQ ID NO 1、SEQ ID NO 2またはSEQ ID NO 3のうちの1種であり、前記(a)インタクトなモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO 4、SEQ IDNO 5またはSEQ IDNO 6のうちの1種である。前記(b)一本鎖抗体ScFvの重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO 8であり、前記(b)一本鎖抗体ScFvの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO 9である。
【0014】
前記(b)2つの一本鎖抗体ScFvのアミノ酸配列はいずれもSEQ ID NO 7である。
【0015】
各(b)一本鎖抗体ScFvは重鎖可変領域と、(c)リンカーlinkerと軽鎖可変領域とからなり、前記重鎖可変領域および軽鎖可変領域に免疫細胞表面CD3抗原を特異的に結合し、前記(c)リンカーlinkerのアミノ酸配列は(GGGGS)
nであり、nは1〜4の自然数であり、好ましくは(GGGGS)
3である。
【0016】
二重特異性抗体の発現ベクターを構築し、二重特異性抗体が一つのベクターに構築されられるか、または二つの異なるベクター上にそれぞれに構築されられる。
【0017】
遺伝子工学的方法によって構築されたベクターを宿主細胞にトランスフェクトされ、前記宿主細胞は、原核細胞、酵母または哺乳動物細胞を含み、例えばCHO細胞、NS0細胞または他の哺乳動物細胞、好ましくはCHO細胞である。
【0018】
二重特異性抗体は、プロテインA親和性クロマトグラフィーおよびイオン交換、疎水性クロマトグラフィーまたはモレキュラーシーブ法を含む従来の免疫グロブリン法によって得られる。
【0019】
前記二重特異性抗体は、EGFR高発現または異常発現の腫瘍組織の治療及び他のEGFR過剰発現による病気の治療に用いられる。
【0020】
前記インタクトなモノクローナル抗体は全長抗体である。
【発明の効果】
【0021】
上記の技術的解決法が採用され、以下の有益な技術的効果を含む。
本発明の二重特異性抗体は、四価抗体の形態を採用し、腫瘍抗原に結合した抗体配列を完全に保留し、高い親和性を有する。同時に、四価二重特異性抗体は、腫瘍細胞とエフェクター細胞とをより良好に連結でき、それによって二重特異性抗体の生物学的機能を促進する。一般的に使用されるBITE二重特異性抗体形態に対して、本発明の分子はFc断片も含み、Fc断片の存在はインビボでの薬物分子の半減期を延長し、それにより薬物分子のより良好な機能を発揮させ、患者の薬物使用頻度を低減可能にし、患者の苦しみを低減させる。本発明は高発現または異常発現EGFR腫瘍組織の治療、及び他のEGFR過剰発現による病気の治療に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】二重特異的分子プラスミド発現の構築図である。
【
図3】精製二重特異性分子の変性SDSエレクトロフェログラムを例示的に示す図である。
【
図4】抗原に対する二重特異性分子の結合能を検出するためのELISA法を例示的に示す図である。
【
図5】A431細胞に対する二重特異性抗体の結合を例示的に示す図である。
【
図6】Jukart細胞に対する二重特異性抗体の結合を例示的に示す図である。
【
図7】二重特異性抗体媒介によるA431に対するPBMCの結合を例示的に示す図である。
【
図8】二重特異性抗体媒介によるH520に対するPBMCの死滅効果を例示的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、具体的な実施形態及び図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、(a)インタクトなモノクローナル抗体、(b)一本鎖抗体ScFvおよび(c)リンカーを含み、前記(a)はEGFR抗原に特異的に結合し、2つの抗体重鎖と2つの抗体軽鎖とからなり、前記(b)は免疫細胞抗原CD3に特異的に結合し、前記(b)は2つの一本鎖抗体ScFvであり、前記(b)は2つの一本鎖抗体ScFvであり、前記(b)の2つの一本鎖抗体ScFvはそれぞれ前記(c)リンカーlinkerを介して前記(a)の2つの重鎖のC末端に連結される抗EGFRと抗CD3の二重特異性抗体及びその応用を提供する。
【0024】
さらに好ましくは、前記二重特異性抗体において、前記(c)リンカーlinkerのアミノ酸配列は(GGGGX)
nであり、XはSerまたはAlaを含み、Xは好ましくはSerであり、nは1〜4の自然数であり、nは好ましくは3である。
【0025】
さらに好ましくは、前記二重特異性抗体(a)インタクトなモノクローナル抗体は2つの軽鎖と2つの重鎖とからなり、各重鎖と軽鎖の間はジスルフィド結合を介して連結され、2つの重鎖の間はヒンジ領域のジスルフィド結合を介して連結される。前記重鎖および軽鎖の可変領域は腫瘍細胞表面EGFR抗原に特異的に結合する。
【0026】
さらに好ましくは、前記(a)インタクトなモノクローナル抗体の重鎖定常領域はlgG1、lgG2、lgG3またはlgG4のうちの1種であり、好ましくはlgG2である。
【0027】
さらに好ましくは、前記(a)インタクトなモノクローナル抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列はSEQ ID NO 1、SEQ ID NO 2またはSEQ ID NO 3のうちの1種である。
【0028】
SEQ ID NO 1(ニモツズマブモノクローナル抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列):
QVQLQQPGAELVKPGASVKLSCKASGYTFTNYYIYWVKQRPGQGLEWIGGINPTSGGSNFNEKFKTKATLTVDESSTTAYMQLSSLTSEDSAVYYCTRQGLWFDSDGRGFDFWGQGTTLTVSS。
【0029】
SEQ ID NO 2(セツキシマブモノクローナル抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列):
QVQLKQSGPGLVQPSQSLSITCTVSGFSLTNYGVHWVRQSPGKGLEWLGVIWSGGNTDYNTPFTSRLSINKDNSKSQVFFKMNSLQSNDTAIYYCARALTYYDYEFAYWGQGTLVTVSA。
【0030】
SEQ ID NO 3(パニツムマブモノクローナル抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列):
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSVSSGDYYWTWIRQSPGKGLEWIGHIYYSGNTNYNPSLKSRLTISIDTSKTQFSLKLSSVTAADTAIYYCVRDRVTGAFDIWGQGTMVTVSS。
前記(a)インタクトなモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO 4、
SEQ ID NO 5またはSEQ ID NO 6ののうちの1種である。
【0031】
SEQ ID NO 4(ニモツズマブモノクローナル抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列):
DVLMTQIPLSLPVSLGDQASISCRSSQNIVHSNGNTYLDWYLQKPGQSPNLLIYKVSNRFSGVPDRFRGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCFQYSHVPWTFGGGTKLEIK。
【0032】
SEQ ID NO 5(セツキシマブモノクローナル抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列):
DILLTQSPVILSVSPGERVSFSCRASQSIGTNIHWYQQRTNGSPRLLIKYASESISGIPSRFSGSGSGTDFTLSINSVESEDIADYYCQQNNNWPTTFGAGTKLELK。
【0033】
SEQ ID NO 6(パニツムマブモノクローナル抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYFCQHFDHLPLAFGGGTKVEIK。
【0034】
さらに好ましくは、前記(b)一本鎖抗体ScFvの重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO 8であり、前記(b)一本鎖抗体ScFvの軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO 9である。
【0035】
SEQ ID NO 8(抗CD3一本鎖抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列):
DIKLQQSGAELARPGASVKMSCKTSGYTFTRYTMHWVKQRPGQGLEWIGYINPSRGYTNYNQKFKDKATLTTDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCARYYDDHYCLDYWGQGTTLTVSS。
【0036】
SEQ ID NO 9(抗CD3一本鎖抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列):
DIQLTQSPAIMSASPGEKVTMTCRASSSVSYMNWYQQKSGTSPKRWIYDTSKVASGVPYRFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSSNPLTFGAGTKLELK。
【0037】
さらに好ましくは、前記(b)2つの一本鎖抗体ScFvのアミノ酸配列はいずれもSEQ ID NO 7である。
【0038】
SEQ ID NO 7(抗CD3一本鎖抗体アミノ酸配列):
DIKLQQSGAELARPGASVKMSCKTSGYTFTRYTMHWVKQRPGQGLEWIGYINPSRGYTNYNQKFKDKATLTTDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCARYYDDHYCLDYWGQGTTLTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQLTQSPAIMSASPGEKVTMTCRASSSVSYMNWYQQKSGTSPKRWIYDTSKVASGVPYRFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSSNPLTFGAGTKLELK。
【0039】
さらに好ましくは、各(b)一本鎖抗体ScFvは重鎖可変領域と、(c)リンカーlinkerと軽鎖可変領域とからなり、前記重鎖可変領域および軽鎖可変領域は免疫細胞表面CD3抗原に特異的に結合し、前記(c)リンカーlinkerのアミノ酸配列は(GGGGS)
nであり、nは1〜4の自然数であり、好ましくは(GGGGS)
3である。
さらに好ましくは、構築されたベクターを宿主細胞にトランスフェクトされ、前記宿主細胞は、原核細胞、酵母または哺乳動物細胞を含み、例えばCHO細胞、NS0細胞または他の哺乳動物細胞、好ましくはCHO細胞である。
【0040】
さらに好ましくは、前記二重特異性抗体は、EGFR高発現または異常発現の腫瘍組織の治療及び他のEGFR過剰発現による病気の治療に用いられる。
【0041】
実施例1、二重特異性抗体分子の発現ベクターの構築
a)二重特異性一過性発現ベクターの構築
対応する遺伝子配列を、
図1の二重特異性抗体の形態で設計した。抗EGFR軽鎖遺伝子および抗EGFR重鎖CD3のScFV融合遺伝子をクローニングし発現するための発現ベクターとしてPTSEを選択した。軽鎖遺伝子および融合遺伝子はコード領域配列両側にそれぞれSall、BamHl酵素切断部位を付加し、2つの遺伝子を中美泰和生物技術(北京)有限公司によって合成し、PUC19ベクターにクローニングした。2つのプラスミドは、TOPコンピテント状態(匯天東方、シリアル番号HT702−03)にそれぞれ転換し、康為世紀小型抽出キット(シリアル番号CW0500)で小型抽出してからベクターと共にそれぞれ制限エンドヌクレアーゼSall−HFおよびBamHI−HFで消化して、相同組換えが実施され、軽鎖および融合遺伝子を含む発現ベクター(
図2Aおよび
図2Bに示される概略図)を取得した。プラスミドはそれぞれPTSE−JY016L−TetBiAb、PTSE−JY016H−TetBiAbと命名される。
b)二重特異性の安定発現ベクターの構築
【0042】
抗EGFR軽鎖遺伝子および抗EGFR重鎖CD3のScFV融合遺伝子をクローニングし発現するための発現ベクターとしてPGN−2CMVを選択した。このベクターは、選択マーカーNeomycinおよびGSを含み、また、2つのGMVプロモーターおよび対応する構造単位を含む。軽鎖及び融合遺伝子のプライマーを設計し、Kozak配列、シグナルペプチド及び対応する酵素切断部位を導入し、中美泰和生物技術(北京)有限公司によって合成する。プラスミドPTSE−JY016L−TetBiAb、PTSE−JY016H−TetBiAbをテンプレートとし、PCRで対応するストリップを増幅し、ベクターと共に相同組換えを実施する(プラスミドスペクトラムは
図2Cを参照)。
【0043】
実施例2、二重特異性抗体分子の発現と精製
a)四価抗体の発現
プラスミドをエンドトキシンフリー大型抽出キット(康為世紀、CW2104)で抽出し、キットによって提供される説明書に従って特定のステップを実施した。
【0044】
ヒト胚性腎臓細胞(HEK293ESサスペンションセル)をFreestyle 293 Expression Medium(Gibco、12338−026)で培養し、細胞は1日または2日おきに継代され、継代された細胞の開始密度は0.2〜0.6×10
6/mlに維持し、細胞培養体積はシェイクボトル容積の15〜35%であり、細胞培養瓶をシェーカー(シェーカーの回転速度は135rpmとなり、温度は37°Cとなり、CO
2は5%となる)に置い培養させる。トランスフェクションの前日、対数増殖期にあり、増殖状態が良好なHEK293ES細胞を、細胞密度0.5×10
6/mlまでに継代させ、シェーカー(135rpm、37°C、5%CO
2)で培養し、第二日でトランスフェクションを行う。
【0045】
トランスフェクション前に、準備した1×10
6/ml細胞サスペンションをシェーカー(135rpm、39°C、5%CO
2)2h培養し、トランスフェクション時、順にPTSE−antiEGFR−H−TetBiAb(最終濃度0.5μg/ml)、PTSE−antiEGFR−L(最終濃度0.5μg/ml)、ポリエチレンイミンPEI(Sigma)(最終濃度2ug/ml)を加入し、均一に混合し、一緒にHEK293ESサスペンションセルにトランスフェクションし、その後、シェーカー(135rpm、39°C、5%CO
2)で40min培養した。トランスフェクション後の細胞は続いて135rpm、37°C、5%CO
2のシェーカーで培養し、抗EGFR×CD3の四価抗体が発現した。トランスフェクションの96時間後、発現上清を遠心分離によって集めた。
【0046】
b)四価二重特異性抗体の精製
発現上清を0.22uM濾過フィルムで濾過し、アフィニティークロマトグラフィーカラムを用いて発現上清からFcドメインを有する抗体を取得する。平衡緩衝液および溶出緩衝液はそれぞれ50mMTris−HCI、0.15M NaCl PH7.0および0.1Mクエン酸−クエン酸ナトリウムPH3.0である。陽イオン交換クロマトグラフィーにより標的二重特異性抗体を取得し、陽イオン交換カラムはHiTrap SP FFであり、平衡緩衝
液20mM PB PH6.3でSPクロマトグラフィーカラムを平衡させ、溶出緩衝液20mM PB+1M NaCl(PH6.3)で溶出し、最後に、PBS緩衝液で液体交換及び濃縮を行う。精製後の二重特異的分子還元SDS−PAGEは
図3に示す。Bispecific−1のEGFR抗体配列はニモツズマブ(nimotuzumab)配列であり、Bispecific−2のEGFR抗体配列はセツキシマブ(Cetuximab);Bispecific−3のEGFR抗体配列はパニツムマブ(Panitumumab)である。
【0047】
実施例3:二重特異性抗体分子とCD3、EGFR分子との結合状況
pH9.6の炭酸塩緩衝液でEGFR細胞外領域またはCD3EとCD3Gサブユニットとの細胞外領域の二量体をコーティングし、100ng/孔/100ulで、4°Cでコーティングして一夜を置いた。300ul/孔 0.1%のPBS(PBS−T)緩衝液で5回洗浄し、1%BSA−PBS溶液を加入して室温で2h密封した。異なる希釈度の二重特異性抗体または対応する抗体を加入した。二重特異性抗体(または抗体)最高濃度は1uMであり、3倍希釈して10つのグラジエントになり、最後1つの孔に希釈液PBSのみをいれて陰性対照とし、37°Cで1hインキュベートした。300ul/孔に従ってPBS−T溶液で5回洗浄し、1%BSA−PBS溶液で1:40000希釈されたAnti−Human Fc−HRP第二抗を加入して37°Cで1hインキュベートした。100ul/孔のTMB現像キットで現像し、室温で8min現像し、そして、2M H
2S0
4で現像を終了させ、50ul/孔、450nm/630nmで数を読む。実験結果は
図4に示すように、すべての二重特異性抗体のEGFRとの結合能力はいずれもその対応する単一抗体能力に類似する。[即ち、ニモツズマブ単一抗体配列により構築される二重特異性抗体のEGFRとの結合能力はニモツズマブ単一抗体の能力に類似する(
図4A)。セツキシマブ単一抗体配列により構築される二重特異性抗体のEGFRとの結合能力はセツキシマブ単一抗体の能力に類似する(
図4B)。パニツムマブ単一抗体配列により構築される二重特異性抗体のEGFRとの結合能力はパニツムマブ単一抗体の能力に類似する(
図4C)]。各二重特異性抗体のCD3EおよびCD3G二量体との結合能力が類似する(
図4D)。結果によって、用いた二重特異性抗体の形態は抗原に対する元の抗体の結合能力を完全に保持したことを示す。かつ、CD3のScFvのCD3に対する結合能力はそれに連結する異なる抗体には関わらない(
図4D)。
【0048】
実施例4、二重特異性抗体分子と過剰発現EGFRまたはCD3細胞との結合状況
a)二重特異性抗体与A431細胞の結合状況
本発明は過剰発現EGFRの腫瘍細胞系(A431)により異なる二重特異性抗体と細胞表面EGFRの結合状況を検出し、陽性対照として対応する抗体を用い、同型対照として人のIgG(hlgG)を用いた。0.25%トリプシンで消化、遠心してA431細胞を収集した。同時に各抗体を希釈させ、最高濃度は1uMであり、3倍グラジエントで希釈した。収集した細胞をPBS+1%BSAで3回洗浄し、そしてPBS+1%BSAを加入して細胞を再懸濁し、細胞を96孔板に置き、孔ごとに1×10
5の細胞があり、希釈した100ulの二重特異性抗体を加入し、室温で1時間インキュベートした。遠心で上清を除去し、細胞をPBSで3回洗浄し、そして希釈した、Alexa488でマークした抗人IgG−Fc抗体で細胞を再懸濁し、室温で遮光して1時間インキュベートし、PBSで3回洗浄し、そして100ulPBSで再懸濁して、フローサイトメトリーにより蛍光強度を検出した。結果をGraphpad Prismで分析した。結果により(
図5を参照)、各二重特異性抗体とA431との結合能力と、対応する抗体との間に比較可能性を有するが、hlgGとA431との結合力が弱いことを示す。二重特異性抗体がその母本抗体の細胞表面EGFRに特異結合する特異結合活性を保持することを証明した。
【0049】
b)二重特異性抗体とJurkat細胞との結合状況
Jurkat細胞がCD3を過剰発現するので、二重特異性抗体と細胞表面CD3の結合状況を検出することに用いられる。二重特異性抗体とJurkat細胞との結合状況の実験工程は実施例4aに類似し、その相違点はJurkat細胞がサスペンションセルであるが、A431が接着細胞である。遠心してJurkat細胞を収集し、各抗体を加入し、そのほかの操作はA431実験に同一である。結果により(
図6を参照)、同型対照のJurkatに対する結合能力が弱く、異なる二重特異性抗体はいずれも細胞によく結合でき、Jurkat細胞に対する3種類の二重特異性抗体の結合能力が同一であり、
図1においての二重特異性抗体の抗CD3のScFvの細胞表面抗原に対する結合能力がそれに連結する抗体に影響されないことを示す。
【0050】
実施例5、エフェクター細胞に対する二重特異性抗体分子媒介のPBMCの死滅作用
a)A431またはH520細胞に対するPKH26マーキング
A431はEGFRを過剰発現する腫瘍細胞株であるが、H520はEGFRを発現しない。本実験は実験細胞株としてA431を用い、陰性対照としてH520を用いる。
2×10
6つの細胞を1.5ml遠心管に入れて、1500rpmで5min遠心し、完全培地を捨てて、無血清培地で細胞を2回洗浄する。PKH26キット中のDiluentC溶液で細胞を再懸濁し、そして等体積の2×P KH26染料液(調製割合:0.4μl染料原液を100μlのDiluentCに溶解させる)を入れて、均一に混合して室温で1minを置く。反応後、管中溶液の体積と等体積の0.5%BSA−PBS溶液を入れて反応を終了させ、そして1mlの対応する完全培養基を入れて細胞を希釈し再懸濁させ、1500rpmで5min遠心して細胞沈殿を収集する。完全培養基で再懸濁した後、細胞培養瓶で培養する。
【0051】
b)PBMC分離
50ml管に20ml単核細胞分離液を入れる。収集した血液を全血希釈液で1:1で希釈処理し、均一に混合してコーニングチューブ内壁に沿って均一速度で徐々に分離液上層に敷き、各管内に希釈後20ml全血を入れる。各管に液の入れが終わった後、22°Cまでに予め冷めた遠心機内に置き、600gで15min水平遠心(速度加減を1とする)した。遠心完成後、遠心管を取り出し、ピペットで分離液と血清との間に存在する、円弧状に分布した細胞層である単核細胞(PBMC)を吸い取り、新たな50ml管に置いた。1:5の割合で細胞液に細胞洗浄液を入れて、均一に混合して遠心し、上清を捨て、再び1回洗浄し、細胞沈殿を収集し、RPMI−1640培養基で再懸濁し、細胞瓶に培養して置いた。
【0052】
c)GD3+T細胞磁気ビーズソーティング
PBS(Ph7.2、0.5%BSA、2mMEDTA)は、濾過除菌して、同時に泡の発生を避ける。
遠心で血小板(20℃、200g、10〜15分間)を除去し、30μm濾過フィルムで細胞ペレットを除去した。200gで10分間遠心し、上清を捨てて、PBMC細胞を収集した。2×10
7細胞を60μl buffer+20μlFcR Blocking Reagentに再懸濁させる。20μl磁気ビーズを入れて、均一に混合し、2〜8°Cで15分間インキュベートし、1〜2ml bufferを入れ、300gで、10分間遠心し、上清を捨てた。500μlで再懸濁した。ソーティング柱をソーティングラックに置き、500μlで洗浄した。細胞サスペンションを入れて、未結合細胞を収集した。柱体頂端液体が流れ尽きた後、500μlで3回洗浄した。ソーティング柱をソーティングラックから取り除き、収集管に置き、1mlで早速洗浄し、細胞を収集し、カウントして活細胞の割合を観察した。
【0053】
d)二重特異性抗体の効果及び機能の検出
最終濃度1uMから、1:3倍で希釈し、10グラジエントで、2つの重複孔を設立する。同時に、2つの無薬物対照孔を設立し、培養基で体積を補足し、マークした後のA431またはH520細胞(2×10
4個/孔/50μl)とCD3+T細胞(2×10
5個/孔/50μl)を、必要量で均一に混合してV−bottom96孔板各孔に分け、同時に、(1)無マークのRaji細胞(2×10
4個/孔)(2)PKH26マーク後の細胞(2×10
4個/孔);(3)CD3+T細胞(2×10
5個/孔)という3つの流式対照孔を設立した。18時間培養し、インキュベート終了後、1:50000の割合でT0−PR03染料を入れ、37°Cで遮光して10minインキュベートした。同時に、流式対照(4)T0−PR03マーク後の細胞を設立した。3000rpmで5min遠心した後、培養基上清の一部を捨て、0.5%BSA−PBS溶液で再懸濁し、流式検出した。
算出公式は、
細胞死亡率%=(1−PKH26
+TOPRO3
−細胞数(薬物作用組)/PKH26
+TOPRO3
−細胞数(無薬物作用組))×100となる。
【0054】
e)結果分析
図7によれば、二重特異性抗体分子媒介によるPBMCのEGFR過剰発現のA431エフェクター細胞に対する死滅作用が非常によいが、対応する抗体とhlgGに対する死滅効果が弱いことがわかった。同時に、全ての二重特異性抗体はEGFRを発現しないH520細胞に対する死滅効果が非常に弱く、且つ同型対照hlgGに類似(
図8)する。すべての構築した二重特異性抗体のターゲット細胞に対する死滅作用が特異的であることを示した。3種類の異なる二重特異性抗体が特異的なターゲット細胞を死滅する能力は類似し、かつ細胞死亡率は80%左右にある。以上は
図1においての二重特異性抗体がよい生物学活性を有することを示した。
【0055】
以上の説明は、本発明の好適な実施の形態に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明に対して種々の変形や変更が可能である。本発明の精神および範囲内でなされる任意の修正、均等な置換、改善などは、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]