【実施例】
【0045】
以下は、交互配置された整流器内に補償リアクタンスを有する無線電力受信器の利点を例証する実施例である。実施例1A−1Cは、以下の仕様を伴う無線電力システムの実施形態を説明する。無線電力システムは、85kHzの動作周波数(基本周波数f
0)の負荷に略10kWの電力を送信するように構成される。無線電力送信器のスイッチングインバータによって産出される方形波に起因して、基本周波数f
0以外の周波数における電流および/または電圧が、システムにもたらされる。例えば、基本周波数f
0の少なくとも1つの高調波周波数を有するエネルギーが、無線電力受信器によって受信される。システム内の基本周波数以外の周波数の存在が、予測される以外のインピーダンス値をもたらす。受信器のリアクタンスXが、以下の関係によって定義されることに留意されたい。
【化6】
【0046】
実施例1A−1Cでは、負荷は、280V〜420Vの全体的電圧範囲V
battを有する、1つ以上のバッテリであり得る。
(実施例1A)
【0047】
280Vのバッテリ電圧V
battに対して、以下の表が、例示的無線電力受信器300の構成要素と関連付けられる値を概説する。上部および底部304、306のそれぞれの予期されるインピーダンスZは、6.35+j9.53オームである。いくつかの実施形態では、入力電圧Vinが、調節され、入力電力Pinを一定に保ち得る。
【0048】
交互配置された整流器の分岐のそれぞれの抵抗が、回路シミュレーションによって決定され得る。この特定の実施例では、予期される抵抗R
4A、R
4B、R
4C、およびR
4Dは、それぞれ、6.35オームである。予期されるリアクタンスX
4A、X
4B、X
4C、およびX
4Dは、以下のように計算される。
【化7】
【0049】
分岐4A、4B、4C、および4D内の電流I
4A、I
4B、I
4C、およびI
4Dは、無線電力システムの動作の間に(例えば、電流センサによって)測定される。電流I
4A、I
4C(グループ1)が、略等しく(電流のうちのより大きい方の1%以内)、電流I
4B、I
4D(グループ2)もまた、略等しい(電流のうちのより大きな方の1%以内)ことに留意されたい。しかしながら、これらの2つのグループの電流の間の差は、各分岐4A−4DのインピーダンスZの差の結果であり得る。例えば、例示的非補償システムでは、リアクタンスX
4Aは、リアクタンスX
4Bに等しく、リアクタンスX
4Cは、X
4Dに等しい。これはまた、「非補償リアクタンス」とも称される。それは、リアクタンスが、電流(および/または電力)非平衡を考慮するように調節(または非平衡に)されない点で、非補償である。したがって、基本および高調波周波数の両方においてエネルギーを受信する平衡リアクタンスを有する、非補償受信器は、非平衡電流を被る。補償受信器は、平衡電流を被る、補償リアクタンスを有する。補償受信器では、分岐4A、4B、4C、および4Dのそれぞれで見る正味インピーダンスは、物理リアクタンスX
4A、X
4B、X
4C、およびX
4Dが、以下であるように調整されているため、同様である。
【化8】
【0050】
いくつかの実施形態では、これらのリアクタンスX
4A、X
4B、X
4C、およびX
4Dは、具体的には、分岐4A、4B、4C、および4Dのそれぞれで見る正味インピーダンスを意図的に負または正にするように選定され得る。いくつかの実施形態では、正味インピーダンスは、具体的な値または値の範囲を有するように成され得る。このタイプの調節は、整合ネットワーク内に(
図2に202Aまたは202B、または
図3にC3A’’またはC3B’’として示される)同調可能構成要素を収容する利点を有し得る。例えば、同調可能構成要素が一方向に、すなわち、より負またはより正のリアクタンスに向かって調節され得る場合、交互配置された整流器の正味インピーダンスを反対方向に構成することは、同調可能構成要素に対するより大きな程度の調節を提供することができる。無線電力システム内での同調可能構成要素の実施例は、「Controlling wireless power systems」と題された2017年2月2日に出願された米国特許出願第15/422,554号および「PWM capacitor control」と題された2017年2月8日に出願された米国特許出願第15/427,186号内で見出され得る。
【0051】
抵抗値の割合の差は、以下に示されるように、抵抗値の差の、2つの抵抗値のうちのより高い方に対する比率を決定することによって計算されることができる。リアクタンス値の割合の差は、リアクタンス値の絶対値のそれぞれの差の、2つのリアクタンス値のうちのより高い方の絶対値に対する比率を決定することによって計算されることができる。
【化9】
【0052】
いくつかの実施形態では、リアクタンスの絶対値|X
4B|は、リアクタンスの絶対値|X
4A|と少なくとも4%異なり、リアクタンスの絶対値|X
4D|は、リアクタンスの絶対値|X
4C|と少なくとも4%異なる。いくつかの実施形態では、リアクタンスの絶対値|X
4B|は、リアクタンスの絶対値|X
4A|と少なくとも10%異なり、リアクタンスの絶対値|X
4D|は、リアクタンスの絶対値|X
4C|と少なくとも10%異なる。いくつかの実施形態では、リアクタンスの絶対値|X
4B|は、リアクタンスの絶対値|X
4A|と少なくとも20%異なり、リアクタンスの絶対値|X
4D|は、リアクタンスの絶対値|X
4C|と少なくとも20%異なる。
下記の表で詳述される例示的非補償受信器では、第1のグループの電流と第2のグループの電流との間の差は、略20.1%である。
【化10】
上記の公式では、割合の差が、電流のうちのより高い方との差として決定されることに留意されたい。
対照的に、下記の表で詳述される例示的補償受信器では、第1のグループの電流と第2のグループの電流との間の差は、略0.2%である。
【化11】
これまで説明された例示的非補償システム内に存在する非平衡電流課題は、インダクタL4A−L4Dに対して低いインダクタンス値を選定する状況におけるものであった。比較すると、例示的非補償受信器では、最小定寸されたインタクダL4のサイズの4倍のインダクタもまた、使用され、電流非平衡を軽減させ得る。この大きさのインダクタが、いくつかの用途において実行可能な解決策であり得る一方で、多くの用途では、サイズ、コスト、および重量の制限が、無線電力受信器の商品化における強い影響力をもつ要素であるであろう。いくつかの実施形態では、非補償受信器は、最小定寸されたインダクタL4のサイズの4倍から10倍の間の任意のサイズを要求し、電流非平衡を低減させ得る。使用されるインダクタが大きいほど、それは高調波周波数で発振する電流上により良好なフィルタリング効果をもたらす。しかしながら、インダクタのサイズを低減させながら予期される性能を維持することにおいて、重大な難題が、存在する。
【0053】
いくつかの実施形態では、インダクタンス値L4が、L4A、L4B、L4C、およびL4Dの全てにわたって同一であることに留意されたい。言い換えると、L4=L4A=L4B=L4C=L4Dである。
【表1】
【0054】
図6Aは、例示的無線電力受信器内に非補償リアクタンスを有するインピーダンス整合ネットワーク内の、電流レベルのプロット図である。線602aは、時間の関数としてのI
4B、I
4Dに関する電流の大きさであり、線604aは、時間の関数としてのI
4A、I
4Cに関する電流の大きさである。
図6Bは、例示的無線電力受信器内に補償リアクタンスを有するインピーダンス整合ネットワーク内の、電流レベルのプロット図である。線602bは、時間の関数としてのI
4B、I
4Dに関する電流の大きさであり、線604bは、時間の関数としてのI
4A、I
4Cに関する電流の大きさである。
図7における線602bの大きさと線604bの大きさとの間の差606に留意されたい。差606は、とりわけ、
図6Bの電流の大きさ602b、604bには存在せず、リアクタンスが補償されるときに電流が平衡されることを例証する役割を果たす。
(実施例1B)
【0055】
350Vのバッテリ電圧V
battに関して、以下の表が、例示的無線電力受信器300の構成要素と関連付けられる値を概説する。整合ネットワークの予期されるインピーダンスZは、9.93+j9.53オームである。
【0056】
ここでは、以前の実施例、すなわち、実施例1と同様の計算が、使用され、電流、抵抗、およびインピーダンス値の割合の差を決定する。補償受信器内の平衡電流(および/または平衡電力)の上記の効果は、このバッテリ電圧レベルではあまり顕著ではない。例えば、電流レベルの割合の差は、非補償受信器の41%から補償受信器の25.4%に低下する。大幅に大きなインダクタは、電流非平衡をおおよそ12.7%に低減させる効果を有するが、大幅に高いコスト(すなわち、最小インダクタンスL4のインダクタンス値のおおよそ4倍)においてである。
【表2-1】
【表2-2】
(実施例1C)
【0057】
420Vのバッテリ電圧V
battに関して、以下の表が、例示的無線電力受信器300の構成要素と関連付けられる値を概説する。整合ネットワークの予期されるインピーダンスZは、14.3+j9.53オームである。
【0058】
ここでは、実施例1Aと同様の計算が、使用され、電流、抵抗、およびインピーダンス値の割合の差を決定する。補償受信器内の平衡電流(および/または平衡電力)の上記の効果は、このバッテリ電圧レベルではあまり顕著ではない。例えば、電流レベルの割合の差は、非補償受信器の65%から補償受信器の53.5%に低下する。大幅に大きなインダクタは、電流非平衡をおおよそ24.5%に低減させる効果を有するが、大幅に高いコスト(すなわち、最小インダクタンスL4のインダクタンス値のおおよそ4倍)においてである。
【表3-1】
【表3-2】
【0059】
図7Aは、バッテリ電圧V
battの関数としての、入力抵抗R
in(
図4参照)のプロット図であり、
図7Bは、種々の構成の非補償リアクタンスおよび補償リアクタンスを有する受信器に対するバッテリ電圧V
battの関数としての、入力リアクタンスX
inのプロット図である。実線702aおよび702bは、入力AC源(この場合、無線電力送信器)が、等価負荷抵抗よりも小さい範囲の等価抵抗を確認する理想的な抵抗圧縮装置の、それぞれ、予期される抵抗およびリアクタンスを表す。最小インダクタンスL4=18.12uHを有する非補償(または非補償)受信器704の抵抗およびリアクタンスが、それぞれ、
図7Aおよび7Bにおいて三角形(▲)データ点で表される。最小インダクタンスL4=18.12uHを有する補償受信器706の抵抗およびリアクタンスが、それぞれ、
図7Aおよび7Bにおいて丸形(●)データ点で表される。上記のデータ内に観察されるように、より低いバッテリ電圧(例えばV=280V)において、補償受信器706の抵抗およびリアクタンスは両方とも、理想的な抵抗圧縮装置702に最も近い。さらに他のバッテリ電圧レベルに関して、補償受信器706は、同様のサイズのインダクタL4を有する非補償システム704よりも理想的な抵抗圧縮装置702に近い。言い換えると、補償受信器706の最大の利点の一部は、受信器のより高い電流レベルに存在する。
【0060】
補償受信器706の抵抗およびリアクタンスが理想的な抵抗圧縮装置702に最も近いバッテリ電圧を選択することが、可能である。例えば、抵抗およびリアクタンスが、理想的な抵抗圧縮装置に最も近い点において、より低いバッテリ電圧(すなわち、この実施例では280V)の代わりとしてより高いバッテリ電圧(すなわち、この実施例では420V)を選択してもよい。この場合、補償受信器のリアクタンスは、より低いバッテリ電圧レベルにおいて、正であろう。
【0061】
図7Cは、バッテリ電圧V
battの関数としての入力抵抗R
in(
図4参照)のプロット図であり、
図7Dは、基本周波数f
0=85kHzを伴うエネルギーを受信するように構成される補償リアクタンスを有する受信器に対するバッテリ電圧V
battの関数としての、入力リアクタンスX
inのプロット図である。例示的な補償無線電力受信器は、静電容量C
4A、C
4C=445nF、C
4B、C
4D=75nF、かつインダクタL4A、L4C、L4B、およびL4D=18.12uHになるように設計されることができる。実線702cおよび702dは、入力AC源(この場合、無線電力送信器)が、等価負荷抵抗よりも小さい範囲の等価抵抗を確認する理想的な抵抗圧縮装置の、それぞれ、予期される抵抗およびリアクタンスを表す。最小インダクタンスL4=18.12uHを有する補償受信器の抵抗およびリアクタンスが、それぞれ、
図7Cおよび7Dにおいて丸形(●)データ点で表される。それが、抵抗およびリアクタンスが理想的な抵抗圧縮装置に最も近い点であるため、より低いバッテリ電圧(すなわち、この実施例では280V)の代わりとしてより高いバッテリ電圧(すなわち、この実施例では420V)を選択してもよい。受信器C3A’’、C3A’’(
図3参照)の要素の調節が、バッテリ電圧のそれぞれにおける受信器の入力リアクタンスを調節するために使用され得ることを理解されたい。
(実施例2)
【0062】
例示的無線電力システムは、略6.78MHzの基本周波数f
0で動作し、かつ負荷に略100Wの電力を送信するように構成される。この負荷に対するバッテリ電圧V
battの範囲は、20V〜30Vである。いくつかの実施形態では、入力電圧Vinは、入力電力Pinを一定に保つように調整されてもよい。いくつかの例示的実施形態では、負荷は、ラップトップまたはノート型コンピュータであり得る。以下の表は、例示的無線電力受信器300の構成要素と関連付けられる値を概説する。整合ネットワークの予期されるインピーダンスZは、3.24+j4.86オームである。
【0063】
下記のデータは、無線電力受信器のリアクタンスにおける補償の利点を例証する。例えば、電流の非平衡は、非補償受信器の21.3%から補償受信器の1.6%に低減される。
【表4】
【0064】
本明細書に説明されるコンデンサ構成要素の任意のものの言及が、相互に電気的に接続される1つ以上のコンデンサまたはコンデンサ構成要素を参照し得ることに留意されたい。図では、複数のコンデンサ構成要素は、明確化のため、単一のコンデンサ記号によって表され得る。
【0065】
上記の議論は、本発明の種々の例示的実施形態を開示するが、当業者は、本開示の真の範囲から逸脱することなく、本発明の利点のいくつかを達成するであろう種々の修正を成し得ることが明白であるはずである。本明細書で言及される文書は全て、参照することによって本明細書に組み込まれる。