(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例】
【0026】
本発明では、車両の直進方向をX軸、車両の高さ方向、即ち鉛直方向をY軸、車両の進行方向に対し左右方向、即ちX軸とY軸に直交する方向をZ軸と定義する。実施例に係る医療車両100について、
図1(a)乃至
図1(d)を用いて以下に説明する。
図1(a)は、実施例に係る医療車両100のZ軸方向から見た側面図である。車両の側面部に、人体等の被検体を載せる寝台を挿入する被検体窓部20がある。CT61は、図示していないガントリ部の体軸方向がZ軸方向に一致している。本実施例では、被検体を載せた寝台(3)を寝台支持部3Sの上に導き入れた後、ガントリをZ軸方向において移動させながら撮像を行う。或いは、後述するように、固定されたガントリに対し、被検体をZ軸方向に移動させながら撮像するCTであってもよい。医療車両100には、自然エネルギー活用のため、ソーラーパネル71、及び車内への出入りのための階段18が配置されている。
図1(b)は、Y軸方向から見た要部平面図である。医療車両100には、図示するように、車両側面側から被験者が寝台3の上に横になった状態で、例えば、ストレッチャ−と呼ばれる簡易的な移動寝台62を使い、CT61の寝台支持部3Sの上部に導き入ることができる。本実施例では、後述するクレードル9−1を有している。クレードルとは、床面、壁面、又は架台等から直立する部分であり、かつガントリ5を待機させるスペースであり、ガントリ5の内部にある回転部23の回転部インターフェースと電気的に結合するホストインターフェース等を有している。なお、CT61を使用しないとき、例えば、医療車両100が移動中などは、被検体窓部20を遮蔽するためのスライドドア52を有している。なお、医療車両100には、データ処理、電源制御室、その他の検査機器室、生化学検査室、診察室、待合室或いは更衣室等(16−1乃至16−6)、車内通路(16P)を有している。このように、CT61が必要とするストローク領域が医療車両100の内部ではなく、医療車両100の外部にあるため、医療車両100を大型化することなく、或いは車内のスペースを他の目的のために有効に活用することができる。なお、後述するように、ガントリ5の内部には体軸方向を中心に回転可能な光源部(X線等)があり、さらに、図示していない操作・制御部及び表示(モニター)部が車内に設けられている。即ち、画像描出回路及びソフトウエア等により再構成された断層像等がモニター上に表示される。以下に詳述するように、ガントリ内の回転部とこれを支える架台との間において電気信号又は電力の授受を行う有線又は無線による電気的接続手段が架台とガントリ内の回転部側に有する。撮影中はガントリ5のみがZ軸方向に移動し、被験者は寝台3と共に寝台3の上で静止しているので、必ずしも堅牢かつ精密な被験者移動制御寝台を必要としない。そのため、医療車両100自体の小型、軽量化が容易になる。また、ガントリの体軸(Z軸)方向における撮像走査速度を高速化しても、被験者の身体的・精神的負荷や不安を回避できる効果も有する。
【0027】
図1(c)は、医療車両100の、特にCT61を車両後方のX軸方向から見た場合の構造を説明するための要部断面図である。被検体窓部20より、被検体を載せた寝台3がCT61の内部に運び込まれる。この場合、ストレッチャ62が寝台3を保持しても良いが、より安定に被検体を保持するために、寝台保持板3Sを予め備えたCT61としてもよい。上述の如く、ガントリ5は、その内部に回転可能な光源等を有し、Z軸方向に移動しながら被検体の断層像を撮影する。このように、ガントリ5が被検体に沿って移動するため、ガントリが被検体と接触することを防止する被検体保護部材51が、ガントリ5の内周部を貫通するように取り付けられている。また、ガントリ5の移動範囲の他方の端部には後述するクレードル9−1があり、ガントリ5と電気的に、或いは機械的に結合することができる。なお、本図では、被検体(人物)の下半身からCT61の内部に移送される例を示しているが、反対に頭部からCT61に導き入れても良い。多くの場合、検査対象は頭部や内臓等の上半身であり、必ずしも全身を撮像する必要が無いからである。そのため、CT61のZ軸方向の寸法を、例えば、1m(メータ)程度に短縮し、さらにCT61の医療車両100内における占有スペースを削減できる効果も有する。
図1(d)は、CT61をZ軸方向から見た要部拡大図である。被検体保護部材51は、ガントリ5の内周部に位置するため円形である。ガントリ5は、架台7に支えられ移動するため、ガントリ移動台車11に取り付けられている。本実施例では、架台7が医療車両100の側面55−3に取り付けられているが、後述すように床面(55−1)上に取り付けても良い。
【0028】
実施例に係る医療車両を200、及びその変形例に係る医療車両210について、
図2(a)乃至
図2(c)を用いて以下に説明する。
図2(a)は、実施例に係る医療車両200のZ軸方向から見た側面図である。ただし、医療車両を200の前方は、
図1(a)の場合とは異なり、図面上、右方向である。車両の側面部に、人体等の被検体を載せる寝台(3−1)をCT63の内部にある寝台保持板3Sの上部に沿って挿入する被検体窓部20がある。CT63は、ガントリの体軸方向がZ軸方向に一致している。本実施例では、ガントリ部を固定した状態で被検体を載せた寝台(3−1)を移動させながら撮像を行う場合について説明する。
図2(b)は、医療車両200をY軸方向から見た要部平面図である。本実施例では、医療車両200の左右両側面部に被検体窓部20があり、CT63の被検体挿入部と被検体窓部20との間には、ロート状の被検体保護部材53が取り付けられており、後述するように
車外の外気が医療車両200の内部に入ることを防止している。医療車両200の車両の一方の側面側から、被験者が寝台移動装置の寝台3−1の上に横になった状態で、寝台移動装置の搬送部3−2によりCT63に導き入れられる。即ち、CT63が必要とするストローク領域が医療車両200の内部ではなく、医療車両200の外部にある。本実施例では、ガントリ5が、Z軸方向において医療車両200のほぼ中心部に固定されている。ガントリ5の内部には回転可能な回転部があり、さらに、図示していない操作・制御部及び表示(モニター)部が車内に設けられている。即ち、画像描出回路及びソフトウエア等により再構成された断層像等がモニター上に表示される。また、医療車両200には、医療車両100と同様に、他の目的のためのスペース(16−1乃至16−6、及び16P)、階段18等が配置されている。また、CT63を使用しないとき、例えば、医療車両200の走行中等は、CT63を車外から遮断するため、開閉式のドア52−1、及び52−2を有している。本構造により、医療車両200の左右どちら側からも被験体を搬入、又は搬出することができる。
【0029】
図2(c)は、医療車両210の、特にCT63を車両後方のX軸方向から見た場合の構造を説明するための要部断面図である。被検体窓部より、被検体を載せた寝台3−1が寝台移動装置の搬送部3−2により寝台支持部3S上を移動しながらCT63の内部のガントリ5を通過する。ガントリ5は、その内部に回転可能な光源等を有し、寝台3−1のZ軸方向における移動中に被検体の断層像を撮影する。本実施例では、ガントリ5は床面55−1に固定された構造であり、さらに被検体保護部材51が、ガントリ5の内周部を貫通するように取り付けられている。さらに、被検体保護部材51の左右の端部には、円錐状、或いはロート状の被験者保護部材53が、窓部と被検体保護部材51の間を連続的につなぐ役割を果たしている。本構造により、医療車両210の内部を医療車両210の外部から遮蔽することができるので、CT63、及び車内の温湿度等の変動を抑え、或いは被験者の鼻や口から発する飛沫や外部からの粉塵が車内に入ることを防止できる。また、図示するように、医療車両210の左右両側面部に寝台移動装置の搬送部3−2を配置し、一方の被検体窓部から搬入した被検体を、対向する反対側の被検体窓部から搬出することができる。このように、一方の側から被験体を搬入し、他方の側から搬出することができるので、例えば、多数の被検体を連続して順次検査する場合に好適である。従来、このような連続的検査を行うためには、車内に搬入側と搬出側に対応するストローク領域を実質的に2倍確保する必要が有ったが、本構造によりストローク領域そのものを必要とすることなく多数の被検体を効率的に検査することができる。
【0030】
実施例に係る医療車両を300、及びその変形例に係る医療車両310、320について、
図3(a)乃至
図3(d)を用いて以下に説明する。
図3(a)は、実施例に係る医療車両300の後方X軸方向から見た要部断面図である。図示するように、医療車両300の一方の側面部に、CT65に被検体を搬入・搬出する被検体窓部20があり、ロート状の被験者保護部材53と被験者保護部材51が取り付けられ、さらに被験者保護部材51の被検体窓部に対向する反対側の端部51−2は車内に対し閉じた形状となっている。また、CT65のガントリ5は被検体窓部の近傍に固定されており、被験者が寝台移動装置の寝台3−1の上に横になった状態で、寝台移動装置の搬送部3−2によりCT65に導き入れられる。そのため、CT65が必要とするストローク領域が医療車両300の内部ではなく、医療車両300の外部にある。また、ガントリ5が占有するスペースが被検体窓部20の近傍に固定されているので、車内のスペースをさらに有効に活用することができる。前述のように、CT65のZ軸方向の寸法は、例えば、上半身を撮影するに足る長さとすれば、CT65が車内において占有する空間をさらに削減することができる。
【0031】
図3(b)は、実施例に係る医療車両310の後方X軸方向から見た要部断面図である。図示するように、医療車両310の一方の側面部に被検体窓部20があり、X軸方向から見た被検体窓部20の形状は、例えば、タテに長い長方形であって、その開口面積は被験者保護部材51の開口部の面積よりも大きい。即ち、車内に向かって奥行きを持った斜線部で示す空間部57を有しており、その高さ(h)、幅(w)、奥行き(d)は、被験者(人物)が自ら寝台3の上にのり、横になることができる大きさであることが好ましい。例えば、本図における高さh、及び奥行dは、それぞれ、120cm〜200cm、及び50cm〜100cmの範囲である。CT67−1は、CT63と同様に、被験者が寝台3の上に横になり、寝台支持部3S上にスライドした後に静止し、ガントリ5がZ軸方向に移動しながら撮像する構造である。ガントリ5のZ軸方向における移動距離は、上半身、例えば100cm〜150cm程度でも良い。本構造により、CT67−1が必要とするストローク領域が、医療車両310の外部にあり、しかもストレッチャ等の被検体移動手段を用いることなく、被験者が自ら寝台上にのり、CT67−1の内部に送り込まれることができる。
図3(c)は、医療車両310をY軸方向から見た要部平面図である。斜線部で示す領域57の幅wは好ましくは、被験者が寝台3にのることが容易な程度、例えば150cm〜200cmの範囲である。なお、好ましくは、空間部57の壁面は、被検体保護部材51と一体的に形成され、外気が医療車両310の内部に侵入することを防止する構造とする。
【0032】
図3(d)は、実施例に係る医療車両320の後方X軸方向から見た要部断面図である。図示するように、医療車両320の左右双方の側面部に被検体窓部20があり、前述の医療車両310と同様に、X軸方向から見た開口は被験者保護部材51の開口部より大きく、車内に向かって空間部57を左右に有している。空間部57の高さ、幅、奥行き等は、被験者(人物)が自ら寝台3−1にのり、横になることができる程度である。本実施例では、ガントリ5が車両のZ軸方向の中心部にあり、車両の床55−1に固定されている。ガントリ5が移動しないので、被検体保護部材51のZ軸方向における長さを短くできると同時に、空間部57の容積を拡大できる。また、車外におけるストローク領域を拡大するため、車体に取り付けられた補助板59を図示するように90度回転させて用いても良い。本実施例では、被験者が寝台移動装置の寝台3−1の上に横になった状態で、寝台移動装置の小型搬送部3−3によりCT67−2に導き入れられる。本構造により、左右どちらからでもCT検査が可能であり、ストローク領域の削減、或いはストローク領域そのものを必要としない。また、医療車両210と同様に、連続して一方向に被験者を順次移動させながら効率的に多数の被験者に対するCT検査を行うこともできる。
【0033】
実施例に係る医療車両を400、及び410について、
図4(a)乃至
図4(c)を用い、以下に説明する。
図4(a)は、実施例に係る医療車両400のZ軸方向から見た要部側面図である。CT69−1は、ガントリ5の体軸方向がX軸方向に一致するように車内に配置されており、車両の後部側面部に人体等の被検体を載せる寝台を挿入する被検体窓部がある。本実施例では、被検体を載せた寝台3−1が寝台移動装置の搬送部3−2により、CT69−1の内部に導き入れられ、その間に車両後部の側面部近傍に取り付けられたガントリ5により撮像を行う。また、CT69−1の高さに合わせるため、図示するように、予め車体に取り付けられた補助板18fを、ワイヤ18aを使い90度回転させることにより水平なストローク領域を作り、さらにスロープ18Sを介しその上に寝台移動装置の搬送部3−2を導き入れることができる。
図4(b)は、医療車両を400の後部をX軸方向から見た平面図である。被検体窓部20には、ロート状の被検体保護部材53が取り付けられている。また、車内に立ち入るための開閉式扉52−3を有している。このように、CT69−1が必要とするストローク領域が医療車両400の内部ではなく、医療車両400の後方かつ外部にあるため、医療車両400を大型化することなく、車内のスペースを有効に活用することができ、また幅の狭い場所や通路等においても容易に車外にストローク領域を確保することができる。
【0034】
図4(c)は、医療車両400の変形例に係る医療車両410をY軸方向から見た要部平面図である。本実施例は、被検体に対しガントリ5が体軸、即ちX軸方向に移動しながら撮像を行う構造であり、既に説明したように、社外からストレッチャ62等により被検体を導き入れることができる。さらに、医療車両410においては、被検体窓部20を遮蔽した状態であってもCT69−2を使用可能である。即ち、CT69−2においては、図示していない被検体保護部材51の車内通路(16P)側の側面部が開閉式であり、白抜きの矢印で示すように、車内から寝台3の上にのり、横になることができる。本構造により、車外からストレッチャ62等を用い被験者を導き入れることにより、外気の影響や患者からの感染を防止する検査方法に加え、このような懸念が無い場合や被験者が車内に立ち入って検査を行う方が、メリットが大きい場合等にも対応できる構造となっている。
【0035】
既に説明した実施例に係る医療車両100(
図1等)に好適なCTの構造について以下に説明する。なお、説明の簡略化のため、
図5(a)乃至(c)においては、より一般的な水平床面上に架台7を有するCT61−2を例に説明する。
図5(a)は、CT61−2をX軸方向から見た要部側面図である。CT61−2は、架台7、及びこれを支える架台支持部(図示せず)、クレードル9−1、及びZ軸方向の移動を容易にする車輪15を内蔵したガントリ移動台車11、ガントリ5等から構成されている。CT撮像を行わないときは、クレードル9−1を、破線で示すガントリ収納部37に退避させ固定することができるので、医療車両が移動中にガントリ5を振動等から保護することができる。好ましくは、円筒状の被験者保護部材51がガントリ5の内部に配置されている。また、寝台支持部3Sを有していてもよい。簡易寝台にのせられた被験者を寝台支持部3S上に導き入れ保持するためである。ガントリ5の内部には後述する回転可能な回転部(23)があり、その回転中心軸1が図示されている。なお、図示していないを操作・制御部及び表示(モニター)部があり、画像描出回路及びソフトウエア等により再構成された断層像等がモニター上に表示される。撮影中はガントリ5のみがZ軸方向に移動し、被験者は寝台上で静止している。そのため、本構造では、堅牢かつ精密な被験者移動制御手段は不要であり、CT自体の小型、軽量化が可能になる。また、ガントリの体軸(Z軸)方向における走査速度を高速化しても、被験者の身体的・精神的負荷や不安を回避できる効果も有する。なお、ガントリ5をZ軸方向に移動させるための移動手段として、クレードル9−1側からけん引する構造であってもよい。
【0036】
図5(b)は、CT61−2をY軸方向から見た要部平面図である。ガントリ5が架台7の上を移動するためにガントリ移動用レール13が架台7の上部に2本設けられている。ガントリ移動用レール13及び車輪15が金属等の導電性材料であれば、ガントリ移動台車11の内部にある駆動用モータ(17)に電力を供給し、或いはガントリ移動台車11との間において制御信号等の授受が可能になる。上述の如く、ガントリ内の回転部23と架台7との間において電気信号又は電力の授受を行う電気的接続手段であるホストインターフェース2−1を架台の上部、即ちガントリ5の移動範囲内の所定位置、例えばガントリ5の移動範囲の終点に配置している。寝台支持部3Sを取り除いて、ガントリ3を架台7から取り外すことが可能なので、ガントリ5のメンテナンスや交換が容易であり、さらに異なる撮像特性、例えば、光源エネルギー(波長)の異なる光源を搭載したガントリに取り換えることもできる。
【0037】
図5(c)は、CT61−2をZ軸方向から見た要部平面図である。ガントリ5の内部には、回転中心軸1の周囲を回転する回転部23がベアリング(図示せず)等を介し取り付けられている。さらに回転部23を回転させるためのタイミングベルト21がガントリ移動台車11の内部にあるガントリ回転部駆動モータ19に取り付けられている。また、回転部23は、回転部インターフェース2−2を有しているので、回転部23の静止時においてホストインターフェース2−1と対向する位置において電気的に接続することができる。なお、好適にはホストインターフェース2−1と回転部インターフェース2−2が対向する位置で停止するようにするため、ホール素子等を用いた位置センサ等(図示せず)を使用することができる。また、ガントリ5をZ軸方向に移動させるためのガントリ移動台車駆動モータ17をガントリ移動台車11の内部に有している。駆動のための電源は、既に説明したように、ガントリ移動用レール13から供給することもできるが、ガントリ移動台車11の内部に二次電池を内蔵することもできる。なお、後述するように、ホストインターフェースがクレードル9−1に位置し、ガントリ5がクレードル9−1に接近又は結合した状態において、回転部インターフェースと電気的に結合する構造でもよい。
【0038】
図6(a)、(b)を用いて、クレードル側のホストインターフェースとガントリ内の回転部インターフェースとの間における非接触の電力供給、その他電気信号の授受について説明する。
図6(a)は、既に説明したように静止状態の被検体に対しガントリ5が体軸方向に移動する方式のCT装置(63−3)であり、かつ医療車両200の場合と同様に、被検体窓部を車両の左右両サイドに有する構造である。さらに、左右の被検体窓部20の近傍にクレードル9−3、及び9−4を有している。そのため、一台のガントリが左右どちらのクレードルとも電気的に結合することができるが、本実施例では、2台のガントリ5−1、5−2を有する場合について説明する。図示するように、車両の左右側面(55−3、55−5)には被検体窓部20があり、ロート状の被検体保護部材53が取り付けられ、さらに既に説明した被検体保護部材51に対し連続的に組み合わされている。そのため、被検体保護部材53はクレードル9−3、及び9−4の内部をZ軸方向に貫通している。左右のクレードル9−3、及び9−4には、非接触ホストインターフェース10があり、ガントリ5−1、及び5−2には、非接触回転部インターフェース12があり、ガントリと回転部が互いに対向し近接する構造になっている。既に説明したように、ホストインターフェース10と回転部インターフェース12が対向する位置で停止するようにするため、ホール素子を用いた位置センサ等を用いることができる。なお、2台のガントリ5−1、5−2を有するCTとすることにより、例えば、整形外科、循環器科、消化器科領域等異なる医療分野及び異なる光源エネルギーに対するマルチ画像診断も容易になる。さらに、一台のガントリをPET用のガントリや近赤外光を光源とするガントリとすることもできる。
【0039】
図6(b)は非接触インターフェース部(10及び12)における電磁誘導方式のワイヤレス給電に係る回路構成の一例を説明するためのブロック図である。図示するように、ホストインターフェース側(10)の回路構成は、商用電源(10−2)を直流に変換するAC/DCコンバータ(10−3)、高周波の方形波を出力する高周波インバータ(10−4)、これを正弦波に変換する波形変換回路(10−5)、安全確保のための絶縁トランス(10−6)等を介し一次コイルL1(10−1)につながっている。他方、二次コイルL2(12−1)は、高周波を直流に戻す整流平滑回路(12−4)、逆流阻止ダイオード((12−3)等を介し、光源や二次電池充電回路等の負荷(12−2)に接続している。他方、制御信号或いは画像データ等の送受信には、例えば、近接場磁界結合にもとづくワイヤレス通信方式(図示せず)を使用する。また、近年急速に普及しつつある高速大容量の通信方式(例えば、5G)を利用した高速、大容量のCT画像データの伝送等を行うこともできる。データ転送速度をギガ(G)ビット/秒以上の高速化が可能だからである。なお、上記ワイヤレス給電とワイヤレス通信を同一のコイル、或いはアンテナを使用して行う方式であってもよい。
【0040】
図7を用いて、CTの構造、特に回転部23の構造を詳しく説明する。
図7(a)は、ガントリ5の内部にある回転部23の内部構造を説明するZ軸方向から見た要部平面図である。回転部23の内部には、光源、例えばX線発生部25、高電圧制御回路29、検出器アレー31、検出器周辺回路33、画像メモリ35、二次電池27、回転部インターフェース2−2を有する。即ち、X線発生部25から出射されたX線ビーム26が寝台3に載せられた被験者(図示せず)を透過し、検出器アレー31に到達する。なお、回転部の回転時における重量バランスを調整する重量バランス調整部を設けてもよい。好適には、X線発生部25にカーボンナノチューブ(CNT)等のカーボンナノ材料を電界電子放出源とするX線発生装置を用いる。カーボンナノ材料を冷陰極材料として用いているので、予熱が不要であり従来のX線管を用いた場合に比べ、小型・低消費電力化が可能になり、高電圧制御回路29の小型化や冷却ファンの小型化或いは冷却ファンそのものを不要にできるからである。なお、本実施例では、回転部23の内部に検出器アレー31が内蔵されている構造について説明したが、後述するように、検出器アレー31が回転部23の内部ではなく、回転部23を取り巻くガントリ5の内周部の全周に亘って配置した構造であってもよい(
図8等)。
【0041】
図7(b)は
図7(a)における回転部分23の内部、特に検出器31とその周辺回路33を説明するための回路ブロック図である。
図7(a)における周辺回路33には、
図7(b)に示すように検出器駆動制御回路41、信号増幅・アナログデジタル(AD)変換回路43、信号走査・制御回路45、デジタル信号処理回路47、パラレルシリアル変換回路49等を含んでいる。図示するように、検出器アレー31には、複数の検出器ユニット30が円弧状に、或いはスライス数を増やすためにZ軸方向にも規則的に並んでいる。検出器ユニット30には、例えば、小型の電子増倍型検出器(例えば、浜松ホトニクス社製「マイクロPMT素子」等)やアバランシェ効果(APD)を利用した増幅型検出器、フォトンカウンティング型検出器等を用いることができる。また、アナログデジタル(AD)変換回路をオンチップ化したCMOS型、或いはCCD型検出器を使用することができるので、高速かつ低ノイズの信号読み出しが実現する。これらの検出器ユニットは高感度、或いは低ノイズであるため、必ずしもスライス数の多い大面積の検出器ユニット、例えばガラス基板上にTFTを積層した大面積検出器等を必要としない。そのため、X線照射(被ばく)量を減少させ、或いは短時間パルス照射によるZ軸方向の高速走査が容易になる。また、後述するように、X線照射面積を拡大する必要がないので、X線発生部に必要な電圧及び電流値を増大させることもない。また回転部23のZ軸方向の薄型化による軽量化に加え、特に電界電子放出源として使用するカーボンナノ材料の安定性や耐久性を向上させることができる。
【0042】
検出器アレー31から出力される検出器信号は、信号増幅・AD変換回路43によりデジタルデータ(例えば16ビット)に変換され、信号走査・制御回路45を経由してデジタル信号処理回路47に送られ必要な画像処理が加えられる。デジタル信号処理回路47から送られた画像データを直接記録するために回転部23の内部に画像メモリ35を内蔵している。パラレルシリアル変換せずにバスライン38を介し直接画像メモリ35にパラレル記録することができるので、高速書き込みが可能になる。画像メモリ35には、磁気記録媒体も使用できるが、記録速度、及び信頼性の観点から、DRAMやNAND形フラッシュメモリ等の半導体画像メモリが好適である。他方、撮像終了後であって、回転部23の回転及びガントリ5の移動停止後に画像データを画像メモリ35から読み出す場合には、撮像時と異なりリアルタイムで読み出す必要がないので、パラレルシリアル変換回路49により、シリアルデータとして、ホストインターフェース2−2に出力すれば良い。シリアル化することにより、ホストインターフェース2−2における端子数を減らせる効果も有する。ホストインターフェース2−2と回転部インターフェース2−1からなる電気的接続手段においては、回転部23の回転部インターフェース2−1の内部に複数のコネクタ6があり、その形状が凹状の受け構造である。他方、架台7上部におけるホストインターフェース2−2の側にはコネクタ4が複数あり、その形状は凸状である。コネクタ4をコネクタ6に挿入することにより電気的接続が可能になる。このように、機械的電気接点であるスリップリングを使用せず、回転部23の静止時おいて内部に記録・蓄積した画像データを回転部インターフェース2−1からホストインターフェース2−2に読み出す。そのため、上述のスリップリング使用時の弊害を解消でき、かつ回転部23の高速回転、例えば毎秒5回転以上の高速化回転も容易になる。このように、高感度、低ノイズ検出器の使用、回転部5の軽量化による回転部5の回転速度の高速化により、ガントリ5を体軸(Z軸)方向に高速移動できるため、スライス数を増やすことなく、X線被ばく量を軽減することができる。
【0043】
図7(c)は回転部23の内部にあるX発生部25と光源駆動回路29を説明するための回路構成図である。X発生部25は、カーボンナノ材料電子ビーム発生冷陰極25Cと陽極ターゲット25Aから構成されている。光源駆動回路29は、電圧昇圧回路29−1と高電圧制御回路29−2から構成されている。好適には、光源駆動回路29は、スイッチング電源及びパワー半導体を用いることにより、トランスレスの小型・軽量・低消費電力の高電圧電源部とする。二次電池27には、例えば、リチウムイオン電池を用いることができる。このように、リチウムイオン電池27の直流電圧を光源駆動回路29により昇圧し、かつタイミングコントロールされた高電圧パルスをX発生部25に印加することができる。なお、リチウムイオン電池27は、図示していない電池残量検知回路及び充電回路により、回転部23の静止時において回転部インターフェース2−2とホストインターフェース2−1を介し充電される。
【0044】
図8(a)は、実施例に係る医療車両に用いるCTの、特にガントリ内の構造を説明するZ軸方向からみた平面図である。上述の通り、回転部23−2の外周を取り巻くように固定部24が組み合わされている。固定部24の内周には、図示していない検出器が全周にわたって配置されている。回転部23−2には、X線発生部25mと図示していない光源駆動回路や二次電池等を内蔵している。回転部23−2には、破線で示す開口部28が形成されており、X線発生部より発せられたX線を透過、或いは通過させることができる。即ち、X線ビーム26の強度や進行方向に及ぼす影響を軽減することができる。なお、開口部28は、必ずしもすべての部材を取り除いた状態(空気のみ)である必要はなく、例えば、X線透過率の高い樹脂製の保護カバー、或いは可視光等に対する遮光膜等が残されていてもよい。
図8(b)は、ガントリ内の構造をX軸又はY軸方向から開口部28を見た場合の断面図である。固定部24の内周に沿って検出器ユニット30が配置され、開口部28を通過したX線26が検出器ユニット30に到達する。
【0045】
図8(c)は、
図8(a)における破線部Bに係る部分の構造を説明するためのZ軸方向から見た拡大図である。固定部24の環状部に沿って、複数の検出器30ユニットの長手方向がZ軸に平行になるように連続して密接に並べられ検出器アレーを構成している。即ち、X線発生部25mの方から開口部28を見たときの平面図を
図8(d)に示す。回転部23−2に形成された開口部28により、固定部24に取り付けられた複数の検出器ユニット30の画素アレーがX線光源25mに対し露出しているので、照射X線を遮蔽することなく、検出器ユニット30に対するX線露光を可能にしている。
【0046】
図9を用い、実施例に係る医療車両におけるCTに用いる場合に好適な検出器ユニット30とその配置や組み合わせ等について以下に説明する。
図9(a)は、複数の検出器ユニット30−1を、回転中心軸1を取り囲むように前述の固定部24の内周に沿って密接して配置されている。検出器ユニット30−1は、図示するように、多数の画素30−11が上下左右に並ぶ矩形の受光領域において、対向する2辺に沿って、垂直シフトレジスタ30−12、及び水平シフトレジスタと信号読み出し回路30−13等の周辺回路が配置され、残る対向する2辺は、上記受光領域の端部においても画素30−11が配置されている。そして複数の検出器30−1が接する境界線が30−14であり、この境界線を挟んだ各画素30−11の配列ピッチが、同方向において境界線30−14に接しない受光領域内部の画素30−11の配列ピッチと等しいことが望ましい。例えば、日本国特許第5027339号に開示された構造を採用することにより、この要求を満たすことができる。なお、図示するように、複数の検出器ユニット30−1は、検出器ユニット30−1が互いに隣接しない2辺に沿って上記の周辺回路が形成されている。回転部の回転方向において、連続した画素信号を得るためである。なお、検出器ユニット30−1の素子寸法は大型であることが望ましいが、例えば、デジタルカメラ等で広く採用されている、所謂、中判サイズ(44mm×33mm)、フルサイズ(36mm×24mm)、APSサイズ(23mm×15mm)等のCMOS型撮像素子の構造や製造方法を流用し、さらに本発明のCTの要求仕様に従った設計とすることができる。
【0047】
図9(b)は、複数の検出器ユニット30−2を、回転中心軸1を取り囲むように前述の固定部24の内周に沿って密接して配置され、かつ回転中心軸1の方向にもさらに検出器ユニット30−2を配置することにより、体軸(Z軸)方向の画素数を拡大した構造を開示する。これにより、スライス幅を約2倍拡大することができる。本実施例では、図面上、左右に密接する検出器ユニット30−2の境界線30−24が重要となる。境界線が30−24を挟んだ各画素30−21の配列ピッチが、同方向において境界線30−24に接しない他の画素30−21の配列ピッチと等しいことが望ましいからである。既に説明したように日本国特許第5027339号に開示された構造が好適である。また、図示するように、水平、垂直走査回路や信号読み出し回路((30−22、30−23)は、図示するように、検出器ユニット30−2の3辺において各画素30−11の配列ピッチを阻害しないようにするため、検出器ユニット30−2の1辺に集約した回路配置とした。なお、さらにスライス幅を拡大するために、2以上の検出器30を体軸(Z軸)方向に並べる場合は、上記の水平、垂直走査回路や信号読み出し回路((30−22、30−23)が、画素30−21の配列ピッチを阻害することになる。この問題を解決する手段の一例が日本国特許第5424371号に開示されている。
【0048】
図9(c)は、
図9(b)に示した検出器30−2の構造をさらに詳しく説明するための断面図である。検出器30−2は、裏面照射構造のCMOS型固体撮像素子であり、裏面側にシンチレータ層46が積層されている。本CMOS型固体撮像素子に使用しているシリコン基板の厚さは5乃至10ミクロンメートル(μm)程度あれば十分である。入射X線をシンチレータ層において可視光に変換後、画素30−21を介し電気信号として読み出すからである。検出器ユニット30−2の表側には、配線層30−27、水平、垂直走査回路や信号読み出し回路((30−22、30−23)、接続端子30−26が設けられている。なお、裏面側には、集積回路をX線損傷から保護、軽減するための遮蔽部材30−25を水平、垂直走査回路や信号読み出し回路((30−22、30−23)の上部に配置している。本構造により、従来、CMOS型検出器をCTのX線検出器ユニットとして使用することが困難であった上記課題が解決し、CTにおける低ノイズ、高感度、高速撮像が可能になり、その結果、X線等による放射線被曝の問題が軽減された。
【0049】
図10(a)乃至(e)を用い、医療車両に使用するCTの一例を説明する。CTをX軸方向から見た側面図を
図10(a)に示す。CT70は、既に説明したように、ガントリ5が静止した状態において、寝台3−1が体軸方向に移動しながら撮像するCTである。CT70は、寝台3−1、及びこれを支えかつ移動させる寝台移動部(図示せず)、及び円環状の空洞部有するガントリ5から構成されている。ガントリ5の内部には回転可能な回転部23があり、回転中心軸1はZ軸、即ち体軸方向に平行である。回転部23の周囲には固定部24がボールベアリング等(図示せず)を介し組み合わされている。回転部23と固定部24との間における破線で囲まれた部分Bについて以下に説明する。なお、図示していないを操作・制御部及び表示(モニター)部があり、画像描出回路及び画像処理ソフトウエア等により再構成された断層像等がモニター上に表示される。
【0050】
図10(b)は、CT70をZ軸方向から見た平面図である。ガントリ5の円環状の部分の内部には、回転中心軸1の周囲を回転する回転部23がベアリングを介し取り付けられている。さらに回転部23を回転させるためのタイミングベルト21と回転部駆動モータ19が取り付けられている。なお、回転部23を回転子、これを取り囲むガントリ5の内周を固定子とするダイレクトドライブ(DD)モータ構造としても良い。
図10(c)は、
図1(a)における要部Bの拡大図であり、回転部23の側面部には、金属電極からなる回転部インターフェース6−1が形成されている。回転部インターフェース6−1は、例えば、凸型形状の接続端子4からなるホストインターフェースと対向する位置にあるので、回転部23の静止時において互いに接触することにより電気的に接続することができる。なお、好適には凸型接続端子4と回転部インターフェース6−1が対向する位置で停止するようにするため、ホール素子等を用いた位置センサ等(図示せず)を使用することができる。或いは、回転部インターフェース6−1を回転部23の側面の円環状全周にわたりリング状に形成すれば、回転部23の静止位置によらず電気的接続が可能である。なお、回転部23が回転中にであっても、制御信号や画像信号等の低電圧、低電流の信号を、この円環状の回転部インターフェースを介し固定部24との間において送受信することができる。或いは、前述のように、光源、例えばX線発生部等への電源供給は、回転部内の二次電池により供給することにより、機械的接触部であるスリップリング等を介する必要が無い。なお、接続端子4と回転部インターフェース6−1の配置は、図示するようなZ軸方向において接触する場合に限らず、中心軸に1に向かう方向(
図10(c)においては、Y軸方向)であっても良い。
【0051】
図10(d)、及び10(e)は実施例に係るCT70のガントリ部分を説明するためのX方向、及びZ軸方向からみた断面図(d)と平面図(e)である。
図10(d)は、特に回転部23を横(X軸)方向からみた断面図である。回転部23の内部に組み込まれる構成要素であるX線発生部25mは、ターゲット部材の劣化や電子ビーム発生部材等の消耗により、使用頻度に応じた交換が必要である。同様に、検出器アレー31mも、使用する半導体部品等の放射線損傷、或いは積層するX線シンチレータ材料の湿度依存性などの理由から交換が必要になる場合がある。そこで本実施例では、カートリッジ構造のX線発生部25mと検出器アレー31mにより、回転部23からZ軸方向に脱着可能とした。図示するように、回転部23にはカートリッジ構造のX線発生部25mと検出器アレー31mが挿入されるスペース25fと31f(いずれも破線部)が形成されている。なお、カートリッジ構造は、X線発生部と検出器アレーに限定されず、既に説明した半導体画像メモリ35の記録容量増大、或いは二次電池27をカートリッジ構造とすることもできる。このように、主要部品をカートリッジ構造としたので、医療車両が遠隔地に出向いているときであっても故障時の対応が容易であり、また定期的なメンテナンス負荷も著しく軽減される。
【0052】
図10(e)は、実施例に係るCTの回転部23の他の変形例をZ軸方向から見た平面図である。本実施例では、カートリッジ構造の二次電池27mに加え、第一のX線発生部25と第二のX線発生部25−2、及びこれらに中心軸1を介し対向する位置に第一の検出器アレー31、及び第二の検出器アレー31−2を有する。検出器アレー31と検出器アレー31−2は、Z軸方向にずれた位置に、即ちシフトさせて配置してもよい。また、X線発生部25とX線発生部25−2は、同時にX線を照射しても時間差を置いて照射してもよい。さらに、X線発生部25とX線発生部25−2には異なる管電圧(波長)を印加し、マルチ分光解析を行っても良い。このように、CT本体を小型・軽量化したにも拘らず、異なる条件下での撮像が容易になり、より精度の高い検査、診断等が実現する。
【0053】
実施例の医療車両に好適なCT、特にガントリの内部にある回転部の構造に係る変形例を
図11用いて説明する。
図11(a)は、ガントリ5の内部の回転部23をZ軸方向からみた平面図であり、
図11(b)及び
図11(c)は、(a)における破線部分39の二つのタイプの構造を説明するための一部拡大図である。
図11(a)に示すように、回転部23には、X線発生部25、カートリッジ構造の二次電池27m、光源駆動回路29、カートリッジ構造の検出器アレー31m、信号増幅・アナログデジタル(AD)変換回路及び信号走査・制御回路等を含む検出器周辺回路33、カートリッジ構造の半導体画像メモリ35m、検出器駆動制御回路41、非接触インターフェース12、及び図示していないデジタル信号処理回路とパラレルシリアル変換回路等を内蔵している。以下に説明するように、回転部23の内部又はガントリ内の固定部に回生ブレーキ回路50を内蔵し、かつ回転部23又は固定部の周囲に電磁誘導コイルと永久磁石が対向するように配置されており、電磁誘導コイルに誘起される起電力を回収するのが回生ブレーキ回路50である。なお、本発明では便宜的に「回生ブレーキ回路」と呼ぶが、後述するように、回転部が減速するときの運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する場合に限らず、回転部を積極的に回転させることにより、運動エネルギーを電気エネルギーに変換し持続的に発電する場合にも有効な回路である。
【0054】
図11(b)の構造(39−1)は、例えば、固定部側に永久磁石(34−1)のN極とS極が交互にリング状に並んでいる。これに対し、回転部側には、鉄心(32−1)に誘導コイル(36−1)が巻き付けられており、回転部の内部に回生ブレーキ回路50を有している。他方、
図11(c)の構造(39−2)は、回転部側に永久磁石(34−2)のN極とS極が交互にリング状に並んでいる。これに対し、固定部側は、鉄心(32−2)に誘導コイル(36−2)が巻き付けられているため、固定部の内部に回生ブレーキ回路50を設けている。後述するように、回転部23の内部における二次電池、或いは電気二重層キャパシタに電気エネルギーを蓄積するのであれば、
図11(b)の構造が好ましい。撮像中の強制的な回転運動終了後、回転が止まるまでの間、誘導コイル(36−1)に生じる回転運動エネルギーを回転部内の二次電池或いは後述する電気二重層キャパシタに回収することができる。これに対し、
図11(c)の構造は、DDモータの構造であって、外部モータとタイミングベルトを必要としない構造である。なお、
図11(b)の構造においては、回転部23がタイミングベルトを介し外部モータにより強制的に回転させられている状態は、誘導コイル(36−1)に起電力が生じるため、二回転部内の光源に電力を供給することが可能であり、二次電池27の付加を軽減できる効果を有する。なお、永久磁石には、例えばネオジウム磁石を使うことができる。撮像動作が終了すればガントリ内部の回転部の回転運動は不要であるが、機械的に停止させるまでもなく、回転するガントリの慣性モーメントを電気エネルギーに変換することができれば、省エネルギー効果が得られる。本実施例では回生ブレーキ回路50がその役割を担っている。CTにおいては、回転(撮像モード)と停止(待機モード)を頻繁に繰り返すので、回転部の回転エネルギー回収効果は顕著であり、特に回転部の回転数を上昇させて高速スキャンを行う場合にはさらにその効果が高まる。
【0055】
上記の回生ブレーキ50について
図11(d)を用いて以下に説明する。本構造を有するCTは、回転部23の回転開始後に撮像動作に入り、撮像終了後に回転部23の回転が減速し回転運動が止まる。既に説明したように、一度の撮像動作において回転開始と回転停止を短時間内に繰り返し行うので、回転部23の回転運動エネルギーを有効に活用することは二次電池の消耗を軽減し、省エネルギーにも貢献する。
図11(d)は回転部分23の内部に設けた回生ブレーキ50を説明するため回路構成図である。二次電池27には双方向DC−DCコンバータ42の一端が接続されている。さらに、DC−ACコンバータ48Dを介し、光源駆動回路29、誘導コイル36等に接続している。他方、誘導コイル36からはAC−DCコンバータ48Aを介しキャパシタ44、好適には電気二重層キャパシタにつながり、さらに双方向DC−DCコンバータ42に接続している。回転部23の回転運動エネルギーを誘導コイル36に発生した逆起電力に変換し、電気二重層キャパシタ44を充電する。また、双方向DC−DCコンバータ42を介し所定電圧に変換後、二次電池27を充電することができる。なお、前述の通り、CT撮像時において、回転部23がタイミングベルトを介し外部モータにより強制的に回転させられている状態においては、誘導コイル(36−1)に起電力が生じるため、これを回転部内の光源駆動回路29等の駆動に利用可能である。さらに、CT撮像時以外のCT撮像停止時においても、本構造は有益である。即ち、外部モータによりタイミングベルトを介し回転部23を強制的に回転させることにより、回転部23の内部に内蔵する二次電池を充電することができる。この場合、CT撮像を伴わないので、CT非撮像時における回転部の回転数n2は任意に設定することができる。好ましくは、CT撮像時の回転部の回転数をn1としたときに、回転数n2を回転数n1より増大させる(n2>n1)ことにより、上記二次電池を高速に充電する。即ち、
図11(d)に示すように、誘導コイル36により発電し、AC−DCコンバータ48Aを介しキャパシタ44を充電し、さらに双方向DC−DCコンバータ42を介し二次電池27を充電することができる。これにより、スリップリングを介した電力供給が不要になり、CTの信頼性向上、及びメンテナンス負荷が軽減され医療車両に使用するCTの構造及び駆動方法として特に好適である。
【0056】
実施例における回生ブレーキを用いた場合の駆動方法を説明する。回転部23の回転開始後、寝台又はガントリの移動を開始する。次に、X線照射による撮像が開始される。検出器アレーから得られたデジタルデータはリアルタイムで画像メモリに記録される。すでに説明したように、デジタルデータは、パラレルシリアル変換するまでもなく、パラレルデータのまま画像メモリに記録することができる。撮像終了後、回転部23の回転運動エネルギーが誘導コイルに逆起電力を生じさせ電気エネルギーとして回収し、キャパシタ又は二次電池を充電しつつ回転運動は減速する。最終的にガントリは所定位置に停止し、回転部インターフェースからホストインターフェースを介し画像メモリに記録されたデータが読み出され、操作・制御部において画像の再構成処理後、モニター上に撮影情報が表示される。また、並行して二次電池を充電し、一連のシーケンスが完了し待機状態となる。
【0057】
一般に、キャパシタのエネルギー回収効率は90%以上であり、二次電池充電時のエネルギー回収効率60%前後に比べると高効率である。特に、本実施例のように回転部23が減速し(回収し)、すぐにまた回転部23を回転(放電)させる場合などに好適である。なお、双方向DC−DCコンバータ42には、降圧チョッパ回路と昇圧チョッパ回路を組み合わせた回路方式、或いはDSP(Digital Signal Processor)とADコンバータを用いたPWM(Pulse Width Modulation)方式等を用いることができる。なお、本構成の場合、回転部23の内部に有する二次電池27を電源として交流電圧を発生させ電磁誘導コイル36−1に印加し回転部23を回転させる場合は、回転部23を回転子、ガントリ5の固定部側を固定子とするダイレクトドライブ(DD)モータとして用いることも可能である。
【0058】
医療車両に用いるCTに好適であって、特にガントリ内の回転部分の構造、及び駆動方法に関する実施例を
図12に示す。
図12(a)は、ガントリ5をZ軸方向からみた平面図であり、
図12(b)は、(a)における破線部分39Rの構造を説明するための一部拡大図である。本実施例では、回転部23が二つの部分(23−1、及び23−2)から構成され、一方の回転部(本図では23−1)には、タイミングベルト21が装着され、他方(本図では23−2)はラチェット構造により回転部(23−1)と機械的に連動する構造となっている。即ち、
図12(b)に示すように、回転部23−1の周囲には可動式の爪40が取り付けられており、回転部23−1が右回転すると回転部23−2の内周にある溝に引っ掛かり、トルクを伝達することができる。他方、回転部23−1が減速から停止、或いは左回転すると、爪40は回転部23−2の内周にある溝を乗り越えてトルクを伝達することができずに空転する。なお、ここで示した爪座ラチェット構造以外にも、ボールラチェット構造等、適宜最適な構造を選択することができる。
【0059】
図12(c)は
図12(a)、(b)に示したラチェット構造を用いたガントリを有するCTの駆動方法を説明するためのフローチャートである。図示するように、回転部23−1が回転部23−2にトルクが加わる方向に回転を開始し、その後或いは同時に寝台又はガントリの移動を開始する。次に、X線照射による撮像が開始される。検出器アレーから得られたデジタルデータはリアルタイムで外部に無線送信、或いは回転部23−2に内蔵する画像メモリに記録される。撮像終了後、回転部23−1の回転トルクを減少或いは停止すると、回転部23−2は、回転部23−1との機械的結合が解かれ空転する。回転部23−2の内部には、回生ブレーキ回路50(図示せず)があるため、既に
図11等を用い説明したように、回転運動エネルギーにより誘導コイルに逆起電力を生じさせ電気エネルギーとして回収し、キャパシタ又は二次電池を充電しつつ回転部23−2の回転運動は減速する。最終的にガントリは所定位置に停止し、回転部インターフェースからホストインターフェースを介し画像メモリに記録されたデータが読み出され、図示していない操作・制御部において画像の再構成処理後、モニター上に撮影情報が表示される。また、並行して二次電池を充電し、一連のシーケンスが完了し待機状態となる。本構造により、撮像終了後の回転運動エネルギーがタイミングベルト21を介し、回転部駆動モータ19の回転運動に変換されないため、回転部23−2の回転運動エネルギーを回生ブレーキ回路50により電気エネルギーとして効率的に回収することが可能になる。
【0060】
図13(a)は、実施例に係る医療車両500の、特に車両駆動モータ77、CT等を中心とした電源構成を説明する要部ブロック図である。医療車両500は、水素貯蔵タンク75を備え、水素ガスを用い燃料電池73において発生した電気エネルギーを車両駆動モータ77に供給する。さらに、医療車両500の移動中の車両ブレーキング、即ち減速に伴う回生エネルギーを回収する車両回生ブレーキ回路79を有している。CTの主電源は、架台7を介し、燃料電池73より供給される。また、医療車両500の移動中においては、車両回生ブレーキ回路79より架台7を介し、例えば、ガントリ5の内部の二次電池を充電することができる。また、ソーラーパネル71により、太陽光エネルギーの利用が可能であり、車両内部のリチウムイオン電池74等を充電することができる。燃料電池73は、水素(H
2)、及び空気(Air)のみを消費し、排出物は水分(H
2O)のみである。そのため有害な排気ガスや騒音、振動等の問題が無く、被験者や医療従事者等に害を及ぼすことなく、検診等の医療活動を継続することができる。
【0061】
上述の医療車両に関する実施例では、検査或いは医療行為を行う部分と車両を駆動する部分が一体となった構造について説明したが、
図5(b)に示すように、検査或いは医療行為を行う車両510Bを他の運転移動可能車両510Aによりけん引する構造であっても良いことは言うまでもない。この場合、検査或いは医療行為を行う車両510Bは、運転移動可能車両510Aから電源の供給を受ける方式、或いは車両510Bの内部に燃料電池等の電源部を内蔵する構造であってもよい。本構造により、目的地到着後、運転移動可能車両510Aは、検査或いは医療行為を行う車両510Bを切り離し、さらに別の検査或いは医療行為を行う車両をけん引し別の目的地に向かうことができる。
【0062】
医療車両500により、遠隔地、震災、台風等による被災地、開発途上国等の電源供給や燃料の補充が期待できない場所に赴いて検査、医療活動等が容易になる。このような環境下においては、しばしば野外テントの中、或いは避難所等の建物の内部に医療車両500を移動させ、24時間、検査、診療活動を継続することが期待される。燃料電池73のエネルギー効率は高く、予備の水素貯蔵タンクにより、長時間の医療活動の継続が可能だからである。また、
図13(c)のフローチャートに示すように、医療車両500が移動開始後、目的地においてCT等の医療機器を使用する前までは、燃料電池73は主として車両駆動モータ77に電力を供給し、CT等の医療機器に電力を供給する必要が無い。他方、医療車両500が目的地において停止した後は、燃料電池73は主としてCT等の医療機器に電力を供給し、車両駆動モータ77には電力を供給する必要が無い。また、医療車両500が移動中は、車両回生ブレーキ回路79よりCTに内蔵した二次電池を充電することもできる。
【解決手段】体軸方向が医療車両の直進方向に対し直交し、かつ医療車両の左側面、又は右側面にCT装置のガントリに被検体を導き入れ、或いは搬出するための窓部を有する医療車両とする