特許第6821080号(P6821080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6821080アメリカホドイモの花及び/又は葉を含むアミノ酸補給剤、及び、アミノ酸補給剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6821080
(24)【登録日】2021年1月7日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】アメリカホドイモの花及び/又は葉を含むアミノ酸補給剤、及び、アミノ酸補給剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20210114BHJP
   A23L 33/175 20160101ALI20210114BHJP
【FI】
   A23L33/105
   A23L33/175
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-96932(P2020-96932)
(22)【出願日】2020年6月3日
【審査請求日】2020年6月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520196461
【氏名又は名称】窪田 信作
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 信作
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−087364(JP,A)
【文献】 特開2017−123830(JP,A)
【文献】 特開平08−224072(JP,A)
【文献】 種苗法による品種登録,インターネット,2016年 9月13日,URL,hinshu2.maff.go.jp/gazette/touroku/contents/393touroku.html
【文献】 F. O. Uruakpa et al.,American groundnut(Apios americana)protein isolate:Amino acid profile,Macromolecules An Indian Journal,2011年,Vol.7,No.2,p90-92
【文献】 P. W. WILSON et al.,Amino Acids in the American Groundnut(Apios americana),JOURNAL OF FOOD SCIENCE,1987年,Vol.52,No.1,p224-225
【文献】 William M. Walter et al.,Compositional Study of Apios priceana Tubers,J. Agric. Food Chem.,1986年,Vol.34,No.1,p39-41
【文献】 岩井 邦久他,青森県立保健大学における栄養学研究〜食品からのアプローチ〜地域食資源の栄養と生理機能に関する研究,青森保健大雑誌,2009年,Vol.10,No.2,p243-250
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/FSTA(STN)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アメリカホドイモの花及び/又は葉に含まれるアミノ酸を有効成分とする、アミノ酸補給剤。
【請求項2】
前記アメリカホドイモはキラリエ(種苗法品種登録の番号:25377)である、請求項1に記載のアミノ酸補給剤。
【請求項3】
前記アメリカホドイモの花及び/又は葉の一部又は全部は、粉末である、請求項1に記載のアミノ酸補給剤。
【請求項4】
前記アメリカホドイモの花及び/又は葉の一部又は全部はキラリエ(種苗法品種登録の番号:25377)である、請求項3記載のアミノ酸補給剤。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のアミノ酸補給剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アメリカホドイモを含むアミノ酸補給剤に関する。特に、アメリカホドイモの花及び/又は葉を含むアミノ酸補給剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アメリカホドイモは、マメ科ホドイモ属の植物であり、地下の塊茎すなわちイモ部分を食用とするものである。いわゆるおうちごはんの参考にされるレシピサイトにおいても、アメリカホドイモ(アメリカホド、ホドイモ、アピオス等と称される)のイモ部分を加熱していかに美味しく食すかを紹介するレシピが多数掲載されている。
【0003】
また、特許文献1には、イモ類をコンニャク原料と混和する加工食品が開示され、該イモ類としてアメリカホドイモを例示している。いずれにしても、アメリカホドイモはイモ類として、すなわち、塊茎を食用とし、花や葉は基本的に廃棄されていた。
【0004】
しかしながら、その名前のとおり、アメリカンインディアンにとって貴重な食糧であったアメリカホドイモも、日本ではその生産量や流通量は限定的である。ましてやアメリカホドの花や葉については、食用とされてこなかったため、その詳細や効能は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−306916
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、アメリカホドイモの花や葉について、食用として有用であることを見出し、かつ、粉末加工前においても粉末加工後においても各種アミノ酸を網羅的に含有することに着目して完成させたものである。すなわち、本発明は、アメリカホドイモの花や葉を利用した、アミノ酸補給剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のアミノ酸補給剤は、アメリカホドイモの花及び/又は葉を含む。
【0008】
前記アメリカホドイモはキラリエ(種苗法品種登録の番号:25377)であることが好ましい。
【0009】
前記アメリカホドイモの花及び/又は葉の一部又は全部は、粉末であってもよい。
【0010】
前記アメリカホドイモの花及び/又は葉の一部又は全部はキラリエ(種苗法品種登録の番号:25377)であることが好ましい。
【0011】
本発明のアミノ酸補給剤の製造方法は、上記アメリカホドイモの花及び/又は葉の一部又は全部の粉末の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアミノ酸補給剤は、アメリカホドイモの花や葉を含むことにより、アミノ酸を網羅的に含有することが可能である。これにより、通常食用とされず廃棄されていたアメリカホドイモの花や葉について、アミノ酸を補給するものとして利用価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】アメリカホドイモの花、塊茎、バナナ、ミカン、リンゴ、イチゴのアミノ酸含有量を示したものである。
図2】アメリカホドイモの花の各アミノ酸含有量を100としたときの、アメリカホドイモの花、塊茎、バナナ、ミカン、リンゴ、イチゴの当該アミノ酸含有量を示したものである。
図3】アメリカホドイモの花及び葉の粉末、バナナ、ミカン、リンゴ、イチゴのアミノ酸含有量を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明のアミノ酸補給剤について詳細な説明を行う。
【0015】
本発明のアミノ酸補給剤は、アメリカホドイモの花や葉を含むものである。また、アメリカホドイモの花及び/又は葉の一部又は全部は、粉末であってもよい。
【0016】
(アメリカホドイモについて)
アメリカホドイモは、マメ科ホドイモ属に分類されるものを適宜選択される。登録品種であるキラリエはその一例である。
【0017】
(キラリエについて)
キラリエは、平成28年9月13日に、農林水産植物の種類としてApios american Medik.登録番号第25377号、育成者権者を本願発明者として種苗法第18条第1項の規定により品種登録簿に登録された登録品種の名称である。
【0018】
アメリカホドイモ種審査基準の特性によれば、キラリエは、茎のアントシアニン着色の有無は有、葉の長さは中、葉の幅は中、葉の緑色の濃淡は中、葉のアントシアニンの着色は無又は弱、頂小葉の長さは中、頂小葉の幅は中、頂小葉の形は披針形、頂小葉の先端の形は鋭形、頂小葉の基部の形は円形、花序の長さは中、花序の幅は中、花弁の色は暗赤紫、塊茎の形は楕円形、塊茎の皮色の褐色の濃淡は淡、塊茎の表皮の粗滑は中、塊茎の肉色は白、上いも数はやや少、上いもの平均重は軽である。
【0019】
出願品種「キラリエ」は、対照品種「六戸在来」と比較して、上いも数がやや少であること、上いもの平均重が軽であること等で区別性が認められている。
【0020】
(キラリエの花及び葉について)
摘み取ったキラリエの花及び葉について、どのような成分が含まれるかを確認した。
【0021】
キラリエの花100gについて、成分分析を行った。検査方法は、五訂日本食品標準成分表分析マニュアル記載に従った。
表1にその結果を示す。
【0022】
【表1】
【0023】
キラリエの葉100gについて、成分分析を行った。検査方法は、五訂日本食品標準成分表分析マニュアル記載に従った。
表2にその結果を示す。
【0024】
【表2】
【0025】
(キラリエの花のアミノ酸含有量について)
キラリエの花にどのような種類のアミノ酸がどの程度含まれているのかを確認した。従来より食用とされているアメリカホドイモ(キラリエ)の塊茎、バナナ、ミカン、リンゴ、イチゴの含有アミノ酸の種類と量を、比較した。
上記試料のうち、アメリカホドイモ(キラリエ)の花、及び、アメリカホドイモ(キラリエ)の塊茎については、含有量の測定を実施した。上記試料のうち、バナナ、ミカン、リンゴ、イチゴのアミノ酸含有量は、文部科学省が開示する「本食品標準成分表2015年版(七訂) アミノ酸成分表編」から引用した。
【0026】
アミノ酸は、必須アミノ酸8種類、準必須アミノ酸2種類、非必須アミノ酸8種類の合計18種類について比較した。アミノ酸の分類は諸説あるが、ここで必須アミノ酸とは、その動物(ヒト)の体内で十分な量を合成できず、栄養分として摂取しなければならないアミノ酸であり、具体的には、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリンである。準必須アミノ酸には、急速な発育を要する幼児においては不足しやすいアミノ酸であり、具体的にはヒスチジン、アルギニンである。それ以外のアミノ酸を非必須アミノ酸とし、具体的には、シスチン、チロシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリンについて比較した。
【0027】
表3に、100gあたりのアミノ酸含有量(mg)を示した。さらに、各試料のアミノ酸を必須・準必須アミノ酸の合計と、必須アミノ酸の合計にまとめ、それぞれの含有量を図1に示した。
【0028】
また、アメリカホドイモ(キラリエ)の花の各アミノ酸の含有量を100%としたときの、各試料における当該アミノ酸の含有量(含有比)を表4及び図2に示した。
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
表3、表4、図1図2より、アメリカホドイモ(キラリエ)の花には、測定した18種類のアミノ酸全部が含有されていることが分かった。特に必須アミノ酸及び準必須アミノ酸の計10種類は完全に網羅されており、また、測定した非必須アミノ酸もすべて網羅されている。
また、アメリカホドイモ(キラリエ)の花には、必須アミノ酸8種類について、比較したバナナ、ミカン、リンゴ、イチゴより含有量が多いことが分かった。たとえば、トリプトファンについては、アメリカホドイモ(キラリエ)の花を100としたときリンゴは2.8(35.7分の1)であった。一番含有量が多い例でもロイシンについて、アメリカホドイモ(キラリエ)の花を100としたときバナナは60(1.7分の1)であった。すなわち、アメリカホドイモ(キラリエ)の花には、必須アミノ酸の種類によるものの、約1.7倍〜約35.7倍の必須アミノ酸が含まれていることが分かった。
さらに、アメリカホドイモ(キラリエ)の塊茎と比較しても、必須アミノ酸8種類の含有量は同じか多いことが分かった。
【0032】
アメリカホドイモ(キラリエ)の花は、準必須アミノ酸のヒスチジンを除き、比較したバナナ、ミカン、リンゴ、イチゴ及びアメリカホドイモ(キラリエ)の塊茎より、すべてのアミノ酸について含有量が多いことも分かった。
以上より、アメリカホドイモの花は、食用すればアミノ酸を効率的に網羅的に補給することができるといえる。
【0033】
(粉末の製造について)
アメリカホドイモの花及び/又は葉を粉末にする場合、含有するアミノ酸を損なうことがない方法が求められる。すなわち、粉末製造方法は、アミノ酸の量が減らない方法が適宜用いられる。
【0034】
粉末製造方法は、第一段階でじっくり水分を減らし、第二段階で遠赤外線等の輻射熱を用いてさらに乾燥させることが例示される。
【0035】
具体的には、以下の方法で粉末の製造を行った。
第一段階として、アメリカホドイモの花及び/又は葉を25℃以下で60日間、日陰干しを実施し、じっくり水分を飛ばした。
表5に、第一段階の加工前後の水分量を示す。
【0036】
【表5】
【0037】
表5より、第一段階の加工前後で、アメリカホドイモ(キラリエ)の花において82質量%の水分が減少し、葉において92質量%の水分が減少したことが分かった。
【0038】
第二段階として、遠赤外乾燥を行った。具体的には、琺瑯びきの器具に、第一段階で水分をアメリカホドイモ(キラリエ)の花及び葉を入れ、赤外線を放射し、輻射熱を利用し、含有するアミノ酸が損なわれないようにしつつさらに水分の除去を行い、粉砕して粉末とした。
【0039】
(粉末の成分について)
上述した製造方法で得られた粉末の成分を分析した。水分、ビタミン等の分析結果を表6に、アミノ酸の分析結果を表7に示す。
【0040】
【表6】
【0041】
【表7】
【0042】
表6より、得られた粉末中の水分は、8.9g/100gであることが分かった。また、少なくともチアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ビタミンB6、ビタミンB12、総アスコルビン酸(総ビタミンC)、ビタミンE(αートコフェロール)、葉酸、パントテン酸の8種類のビタミン類も含有していることが分かった。これらのビタミン類はヒトの体内で作り出すことができないものである。よって、該粉末は、アミノ酸を網羅していることに加え、少なくとも8種類のビタミンを含有する、画期的なものであることが分かった。
【0043】
さらに、表7より、得られた粉末中には、必須アミノ酸、準必須アミノ酸、及び測定した非必須アミノ酸は、すべて含有されていることが分かった。
【0044】
得られたアメリカホドパウダー(キラリエの花及び葉から製造した粉末)についても、文部科学省が開示する「本食品標準成分表2015年版(七訂) アミノ酸成分表編」から引用したバナナ、ミカン、リンゴ、イチゴの含有アミノ酸の種類と量を比較し、表8及び図3に示した。アメリカホドパウダー(キラリエの花及び葉から製造したもの)の各アミノ酸の含有量を100%としたときの、各試料における当該アミノ酸の含有量(含有比)を表9に示した。
【0045】
【表8】
【0046】
【表9】
【0047】
表7〜9、図3より、アメリカホドイモ(キラリエ)の花及び葉の粉末には、測定した18種類のアミノ酸全部が含有されていることが分かった。
また、アメリカホドイモ(キラリエ)の花及び葉の粉末には、必須アミノ酸8種類について、比較したバナナ、ミカン、リンゴ、イチゴより含有量が多いことが分かった。たとえば、トリプトファンについては、アメリカホドイモ(キラリエ)の花及び葉の粉末を100としたときリンゴは0.3(333.3分の1)であった。一番含有量が多い例でもロイシン及びメチオニンについて、アメリカホドイモ(キラリエ)の花及び葉の粉末を100としたときバナナは6.1(16.4分の1)であった。すなわち、アメリカホドイモ(キラリエ)の花及び葉の粉末には、必須アミノ酸の種類によるものの、約16.4倍〜約333.3倍の必須アミノ酸が含まれていることが分かった。
【0048】
アメリカホドイモ(キラリエ)の花及び葉の粉末は、必須アミノ酸のみならず、準必須アミノ酸、測定した非必須アミノ酸すべてにおいて、含有量が多いことも分かった。
以上より、アメリカホドイモの花及び/又は葉の粉末は、食用すればアミノ酸を効率的に網羅的に補給することができるといえる。
【要約】      (修正有)
【課題】アメリカホドイモの花や葉を利用した、アミノ酸補給剤を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明のアミノ酸補給剤は、アメリカホドイモの花及び/又は葉を含むことを特徴とする。アメリカホドイモはキラリエ(種苗法品種登録の番号:25377)である。
【選択図】図1
図1
図2
図3