特許第6821164号(P6821164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6821164
(24)【登録日】2021年1月8日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】磁流式低温分解装置
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20210114BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20210114BHJP
   F23G 5/00 20060101ALI20210114BHJP
   F23G 5/44 20060101ALI20210114BHJP
   F23L 7/00 20060101ALI20210114BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   F23G5/50 M
   B09B3/00 302F
   F23G5/00 A
   F23G5/00 119Z
   F23G5/44 F
   F23L7/00 Z
   B01J19/08 D
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-29286(P2020-29286)
(22)【出願日】2020年2月25日
【審査請求日】2020年2月25日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和元年9月15日〜11月15日 東京国際空港「エコ エアポート」実証試験/発表会において発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514027849
【氏名又は名称】ゾンデックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520064780
【氏名又は名称】ハーベストジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100119426
【弁理士】
【氏名又は名称】小見山 泰明
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和彦
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−055381(JP,A)
【文献】 米国特許第06182584(US,B1)
【文献】 特開2019−215668(JP,A)
【文献】 特開2008−190733(JP,A)
【文献】 特開2007−105628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00
B09B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開度を調整することで空気量の制御が可能な調整弁(24)が配設された吸入口(21)から取り込まれた空気を、永久磁石又は電磁石で構成され磁力線を発生させる磁気部(22)で挟まれた空気管(25)内を通過させて磁気化して排出する磁力ボックス(20)と、
磁気化した空気で有機物を低酸素状態で低温分解する処理室(30)と、
排気ガスを処理するスクラバ(50)と、
を有する、分解装置本体(10)であって、
前記スクラバが、当該スクラバ内の臭い及び煙粒子を検知する第1の検知部(55)を有し、
前記処理室が、当該処理室内の温度を検知する第2の検知部(41)を有する、分解装置本体(10)と、
前記第1の検知部から取得した第1のデータ及び前記第2の検知部から取得した第2のデータに基いて前記処理室の所定時間後の反応を予測する予測部(84)を有する操作部(70)と、
を備え、
前記処理室は、室内の温度を180℃〜250℃に保ち、10%以下の酸素濃度で有機物を分解処理し、
前記処理室は、有機物に圧力を加えるプッシャ(35)を更に有し、
前記予測部は、取得された前記第1のデータ及び前記第2のデータとそれらの時間的変化に基いて、所定時間後の煙量を統計学的手法により予測する、磁流式低温分解装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の磁流式低温分解装置において、
前記操作部は、前記第1のデータ及び前記第2のデータを組み合わせから構成される時系列データを統計学的手法の説明変数として記憶する記憶部(87)を更に有し、
前記予測部は、前記スクラバ内の煙粒子量が前記所定時間後に所定の値に到達することを統計学的手法により予測する、磁流式低温分解装置。
【請求項3】
請求項2に記載の磁流式低温分解装置において、
前記操作部は、前記スクラバ内の煙粒子量が前記所定の値を将来超えないように前記処理室の反応を制御する制御部(83)を更に有する、磁流式低温分解装置。
【請求項4】
請求項3に記載の磁流式低温分解装置において、
前記制御部は、前記予測部の予測結果に基いて、前記磁力ボックスへの空気の投入量、前記処理室への磁気化した空気の投入量、当該処理室への有機物の投入量、及び、前記スクラバ内への噴霧量のうち少なくともいずれか一つを制御する、磁流式低温分解装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の磁流式低温分解装置において、
前記記憶部は、有機物の種類と量、有機物の含水量、及び、外部の気温と湿度のうち少なくともいずれか一つを含む追加データとを記憶し、
前記予測部は、統計学的手法の説明変数に前記追加データを含めて予測する、磁流式低温分解装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか一項に記載の磁流式低温分解装置において、
前記統計学的手法は、回帰分析、多変量解析、又は、教師あり学習モデルである、磁流式低温分解装置。
【請求項7】
請求項5、又は、請求項5に従属する請求項6に記載の磁流式低温分解装置において、
前記操作部は、通信回線(200)を介して接続されたクラウドサーバ(300)との間でデータの送受信をするルータ(190)を更に有し、
前記時系列データと前記追加データは、前記ルータを介して前記クラウドサーバのサーバ記憶部に送信され記憶され、
前記操作部は、前記クラウドサーバに接続された他の磁流式低温分解装置と共有される時系列データと追加データとに基いて、当該クラウドサーバの予測構築部(320)により計算された統計学的手法の説明変数を前記ルータを介して受信し、
前記予測部は、前記説明変数に基いて予測し、
前記制御部は、前記予測部の予測結果に基いて制御する、磁流式低温分解装置。
【請求項8】
請求項3乃至7のいずれか一項に記載の磁流式低温分解装置において、
前記制御部は、前記処理室が有機物を低酸素状態で低温分解するように当該処理室に投入される有機物の量を制御する、磁流式低温分解装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の磁流式低温分解装置において、
前記第1の検知部は、
緑色光または緑色光よりも短い波長の光を発光する発光部(61)と、
前記発光部が発光した光が煙粒子によって反射した散乱光を直接受光する受光部(63)と、
を有する、磁流式低温分解装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の磁流式低温分解装置において、
投入された廃棄物中の有機物を低温分解して無機物を排出する、磁流式低温分解装置。
【請求項11】
開度を調整することで空気量の制御が可能な調整弁(24)が配設された吸入口(21)から取り込まれた空気を、永久磁石又は電磁石で構成され磁力線を発生させる磁気部(22)で挟まれた空気管(25)内を通過させて磁気化して排出する磁力ボックス(20)と、磁気化した空気で有機物を低酸素状態で低温分解する処理室(30)と、排気ガスを処理するスクラバ(50)と、を有する、分解装置本体(10)であって、
当該スクラバが当該スクラバ内の臭い及び煙粒子を検知する第1の検知部(55)を有し、
当該処理室が当該処理室の温度を検知する第2の検知部(41)を有し、
前記処理室が、室内の温度を180℃〜250℃に保ち、10%以下の酸素濃度で有機物を分解処理し、
前記処理室が、有機物に圧力を加えるプッシャ(35)を更に有する、
分解装置本体(10)を操作する方法において、
前記第1の検知部から取得した第1のデータを記憶する工程と、
前記第2の検知部から取得した第2のデータを記憶する工程と、
前記第1のデータ及び前記第2のデータに基いて前記処理室の所定時間後の反応を予測する工程と、
前記第1のデータ及び前記第2のデータを組み合わせて時系列データを作成して統計学的手法の説明変数として記憶する工程と、
有機物の種類と量、有機物の含水量、及び、外部の気温と湿度のうち少なくともいずれか一つを含む追加データを記憶する工程と、
前記追加データを前記説明変数に含める工程と、
前記説明変数に基いて、前記スクラバ内の煙粒子量が前記所定時間後に所定の値に到達することを統計学的手法により予測する工程と、
予測結果に基いて、
前記磁力ボックスへの空気の投入量、前記処理室への磁気化した空気の投入量、当該処理室への有機物の投入量、及び、前記スクラバ内への噴霧量のうち少なくともいずれか一つを制御することで、
前記スクラバ内の煙粒子量が前記所定の値を将来超えないように前記処理室の反応を制御する工程と、
を備え、
前記処理室の反応を制御する工程は、前記処理室が有機物を低酸素状態で低温分解するように当該処理室に投入される有機物の量を制御し、
前記処理室の反応を制御する工程は、有機物に圧力が加えて有機物間の空気を排除して当該処理室の反応を制御し、
前記処理室の所定時間後の反応を予測する工程は、取得された前記第1のデータ及び前記第2のデータとそれらの時間的変化に基いて、所定時間後の煙量を統計学的手法により予測する、分解装置本体を操作する方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記時系列データと前記追加データを、通信回線を介して接続されたクラウドサーバに送信する工程と、
前記クラウドサーバに接続された他の磁流式低温分解装置と共有される時系列データと追加データとに基いて、当該クラウドサーバにより計算された統計学的手法の説明変数を受信する工程と、
受信した前記説明変数に基いて予測する工程と、
前記処理室の所定時間後の反応を予測する工程における予測結果に基いて前記処理室の反応を制御する工程と、
を更に備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁流式低温分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
400℃を超える高温で有機物を焼却した場合、排煙中にダイオキシンやその前駆体が含まれ、300℃〜400℃の間でダイオキシンが再合成されるという問題があった。
【0003】
処理速度を向上して長期間の運転を可能とすることを目的として、塩化ビニール樹脂からなる複数の円形断面短管が螺合接続されてなり、第一中心軸線を有して空気が流通する管部と、第二中心軸線を有して円管状に形成され、磁化方向が、第一中心軸線及び第二中心軸線と略同一となるように配された磁石部と、を備えている流体発磁機に関する公報開示の技術が存在する(特許文献1)。
【0004】
また、磁流式低温分解装置に関連して、石油や電力等の燃料を要することなく磁気のみによって熱分解作用を促し、ダイオキシンの発生を抑制しつつ低ランニングコストで廃棄物の分解処理を行うことを目的する公報開示の発磁機及び磁気処理装置の技術が存在する(特許文献2)。発磁機が、空気等の流体が流通可能な流通路と、流通路を上下から挟むように配設される一対の磁石部と、これらの流通路及び磁石部を保持する円筒状の枠体とから構成され、流通路を構成する側面のうち対向する二面が、磁性を有する鋼材で形成された磁性部となっており、これら磁性部の各々には流通路の内外に連通する円形の開口部がそれぞれ設けられ、これらの各開口部を塞ぐように流通路の外方から一対の磁石部が配設され、この磁石部は永久磁石で、N極とS極というように引き合うように異なる磁極が対向された、発磁機及び磁気処理装置に関する。
【0005】
更に、廃棄物を低温熱処理して灰を生成することを目的として、熱処理炉の下部で発生させた250℃〜400℃の酸素を制限した活性熱気体を熱処理炉に収容した各種廃棄物の下部から継続して吹き込み、廃棄物を低温燃焼させて悉く灰にする廃棄物の低温熱処理方法及び装置に関する公報開示の技術が存在する(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−113008号公報
【特許文献2】特開2007−209843号公報
【特許文献3】特開2008−190733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、磁流式低温分解装置は、磁気作用を利用して空気を磁気化し、有機物を燃焼させることなく低温で分解してセラミックス灰にする装置である。焼却炉ではないため、有機物の処理に化石燃料がかからず、ダイオキシン等の排出も抑制され、地球環境の保護にも適した分解装置として注目された。しかし、炉内の反応速度の変化によっては、ダイオキシンやその他の有害物や臭いを含んだ排煙を放出する恐れがあった。より精密な運転をするために高度に習熟した運転者が勘と経験により状況を判断しながら給気弁等を手動で操作する必要があり、人手の確保を要するという課題があった。
【0008】
また、磁流式分解装置の排煙を浄煙手段による散水中を通過させて排煙を低減させると共に、熱処理装置に温度センサを設置して検知した温度の基いて給気管の開度を制御することで温度の上昇を抑える場合、処理装置内の温度は250℃〜400℃に制限され、ダイオキシンの抑制が充分でなかった。また、温度センサにより所定温度を上回る場合に制御を実施するものであり、所定温度を超えてから処理装置内の温度が下がるまでの期間はダイオキシンの抑制が充分でないという制御上の課題があった。更に、温度による運転制御と分解処理速度とは二律背反の関係にあり、前記所定温度を低く抑えると、分解処理速度が遅くなり、結果として有機物分解量が低下する恐れがあった。
【0009】
本発明は、ダイオキシンや煙の発生を抑えつつ、処理効率の高い磁流式低温分解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、磁流式低温分解装置(1)は、
空気を磁気化する磁力ボックス(20)と、
磁気化した空気で有機物を低酸素状態で低温分解する処理室(30)と、
排気ガスを処理するスクラバ(50)と、
を有する、分解装置本体(10)であって、
前記スクラバが、当該スクラバ内の臭い及び煙粒子を検知する第1の検知部(55)を有し、
前記処理室が、当該処理室内の温度を検知する第2の検知部(41)を有する、分解装置本体(10)と、
前記第1の検知部から取得した第1のデータ及び前記第2の検知部から取得した第2のデータに基いて前記処理室の所定時間後の反応を予測する予測部(84)を有する操作部(70)と、
を備える。
【0011】
請求項2に記載の磁流式低温分解装置は、請求項1に記載の磁流式低温分解装置において、
前記操作部は、前記第1のデータ及び前記第2のデータを組み合わせから構成される時系列データを統計学的手法の説明変数として記憶する記憶部(87)を更に有し、
前記予測部は、前記スクラバ内の煙粒子量が前記所定時間後に所定の値に到達することを統計学的手法により予測する、ことを特徴とすれば、本構成を有しない場合に比して、収集した時系列データを記憶して所定時間後の反応を予測し、磁流式低温分解装置を最適に稼働させて、処理効率の向上とダイオキシンや臭いを含む有害な煙発生量を抑えることができるので好ましい。
【0012】
請求項3に記載の磁流式低温分解装置は、請求項1又は2に記載の磁流式低温分解装置において、
前記操作部は、前記スクラバ内の煙粒子量が前記所定の値を将来超えないように前記処理室の反応を制御する制御部(83)を更に有する、ことを特徴とすれば、本構成を有しない場合に比して、制御部が、ダイオキシンや臭いを含む煙の排出を最小化し、処理効率を最大化する最適正制御を行うことができるので好ましい。自動運用が可能となり、専門家がいなくても運用が可能になるので好ましい。
【0013】
請求項4に記載の磁流式低温分解装置は、請求項3に記載の磁流式低温分解装置において、
前記制御部は、前記予測部の予測結果に基いて、前記磁力ボックスへの空気の投入量、前記処理室への磁気化した空気の投入量、当該処理室への有機物の投入量、及び、前記スクラバ内への噴霧量のうち少なくともいずれか一つを制御する、ことを特徴とすれば、処理室の反応を想定以上に進行し過ぎないように制御することができるので好ましい。
【0014】
請求項5に記載の磁流式低温分解装置は、請求項3又は4に記載の磁流式低温分解装置において、
前記記憶部は、有機物の種類と量、有機物の含水量、及び、外部の気温と湿度のうち少なくともいずれか一つを含む追加データとを記憶し、
前記予測部は、統計学的手法の説明変数に前記追加データを含めて予測する、ことを特徴とすれば、更に精緻な制御が可能になるので好ましい。
【0015】
請求項6に記載の磁流式低温分解装置は、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の磁流式低温分解装置において、
前記統計学的手法は、回帰分析、多変量解析、又は、教師あり学習モデルである、ことを特徴とすれば、日常の運用と並行してモデルを順次改良することが可能になるので好ましい。
【0016】
請求項7に記載の磁流式低温分解装置は、請求項5又は6に記載の磁流式低温分解装置において、
前記操作部は、通信回線(200)を介して接続されたクラウドサーバ(300)との間でデータの送受信をするルータ(190)を更に有し、
前記時系列データと前記追加データは、前記ルータを介して前記クラウドサーバのサーバ記憶部に送信され記憶され、
前記操作部は、前記クラウドサーバに接続された他の磁流式低温分解装置と共有される時系列データと追加データとに基いて、当該クラウドサーバの予測構築部(320)により計算された統計学的手法の説明変数を前記ルータを介して受信し、
前記予測部は、前記説明変数に基いて予測し、
前記制御部は、前記予測部の予測結果に基いて制御する、ことを特徴とすれば、本構成を有しない場合に比して、他の磁流式低温分解装置から収集されたデータと共にビッグデータ化され算出された共有可能な統計パラメータを、予測のために使用することでより精度のよい運用ができるので好ましい。
【0017】
請求項8に記載の磁流式低温分解装置は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の磁流式低温分解装置において、
前記処理室は、有機物に圧力が加えるプッシャ(35)を更に有する、ことを特徴とすれば、本構成を有しない場合に比して、
有機物に圧力が加えて有機物間の空気を排除して反応の進行を阻害し、処理室内の低温環境を維持すると共に、圧縮された有機物間の熱伝導が効率化するので好ましい。
【0018】
請求項9に記載の磁流式低温分解装置は、請求項3乃至8のいずれか一項に記載の磁流式低温分解装置において、
前記制御部は、前記処理室が有機物を低酸素状態で低温分解するように当該処理室に投入される有機物の量を制御する、ことを特徴とすれば、
処理室内の温度をダイオキシンの発生温度とされる300℃〜400℃よりも低い180℃〜250℃に保ち、ダイオキシン類、窒素酸化物等の有毒ガスの発生を抑制するので好ましい。
【0019】
請求項10に記載の磁流式低温分解装置は、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の磁流式低温分解装置において、
前記第1の検知部は、
緑色光または緑色光よりも短い波長の光を発光する発光部(61)と、
前記発光部が発光した光が煙粒子によって反射した散乱光を直接受光する受光部(63)と、
を有する、ことを特徴とすれば、水蒸気粒子を除く煙粒子の粒子量を検出でき、費用を低減することができるので好ましい。
【0020】
請求項11に記載の磁流式低温分解装置は、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の磁流式低温分解装置において、
投入された廃棄物中の有機物を低温分解して無機物を排出する、ことを特徴とすれば、有機物が無機物から単離され低温分解されて、排出される無機物が投入される廃棄物の1/200〜1/300(質量比)になり、その後の処理費用を低減することができるので好ましい。
【0021】
上記課題を解決するために、分解装置本体を操作する方法は、
空気を磁気化する磁力ボックス(20)と、磁気化した空気で有機物を低酸素状態で低温分解する処理室(30)と、排気ガスを処理するスクラバ(50)と、を有する、分解装置本体(10)であって、
当該スクラバが当該スクラバ内の臭い及び煙粒子を検知する第1の検知部(55)を有し、
当該処理室が当該処理室の温度を検知する第2の検知部(41)を有する、
分解装置本体(10)を操作する方法において、
前記第1の検知部から取得した第1のデータを記憶する工程と、
前記第2の検知部から取得した第2のデータを記憶する工程と、
前記第1のデータ及び前記第2のデータに基いて前記処理室の所定時間後の反応を予測する工程と、
前記第1のデータ及び前記第2のデータを組み合わせて時系列データを作成して統計学的手法の説明変数として記憶する工程と、
有機物の種類と量、有機物の含水量、及び、外部の気温と湿度のうち少なくともいずれか一つを含む追加データを記憶する工程と、
前記追加データを前記説明変数に含める工程と、
前記説明変数に基いて、前記スクラバ内の煙粒子量が前記所定時間後に所定の値に到達することを統計学的手法により予測する工程と、
予測結果に基いて、
前記磁力ボックスへの空気の投入量、前記処理室への磁気化した空気の投入量、当該処理室への有機物の投入量、及び、前記スクラバ内への噴霧量のうち少なくともいずれか一つを制御することで、
前記スクラバ内の煙粒子量が前記所定の値を将来超えないように前記処理室の反応を制御する工程と、
を備え、
前記処理室の反応を制御する工程は、前記処理室が有機物を低酸素状態で低温分解するように当該処理室に投入される有機物の量を制御し、
前記処理室の反応を制御する工程は、有機物に圧力が加えて有機物間の空気を排除して当該処理室の反応を制御する。
【0022】
請求項13に記載の方法は、請求項12に記載の方法において、
前記時系列データと前記追加データを、通信回線を介して接続されたクラウドサーバに送信する工程と、
前記クラウドサーバに接続された他の磁流式低温分解装置と共有される時系列データと追加データとに基いて、当該クラウドサーバにより計算された統計学的手法の説明変数を受信する工程と、
受信した前記説明変数に基いて予測する工程と、
前記予測部の予測結果に基いて前記処理室の反応を制御する工程と、
を更に備える、ことを特徴とすれば、本構成を有しない場合に比して、他の磁流式低温分解装置から収集されたデータと共にビッグデータ化され算出された共有可能な統計パラメータを、予測のために使用することでより精度のよい運用ができるので好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ダイオキシンや煙の発生を抑えつつ、処理効率の高い磁流式低温分解装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る磁流式低温分解装置の構成を示す概略図である。
図2】分解装置本体の正面図である。
図3】磁力ボックスの構成図である。
図4】処理室の構成図である。
図5】処理室から排気された排気ガスを処理するスクラバの構成図である。
図6】パーティクルセンサの原理を説明する図である。
図7】粒子サイズと発光波長と検出量との関係を説明する図である。
図8】操作部の構成図である。
図9】第2実施形態に係る磁流式低温分解装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る磁流式低温分解装置の構成を示す概略図であり、図2は、分解装置本体の正面図である。磁流式低温分解装置1は、分解装置本体10と操作部70とを有して構成される。分解装置本体10は、空気を磁気化する磁力ボックス20と、磁気化した空気で有機物を低酸素状態で低温分解する処理室30と、排気ガスを処理するスクラバ50と、を有して構成される。分解装置本体10は、後述する操作部70に接続されて制御される。磁力ボックス20に取り込まれた外気は磁力ボックス20内で磁気化(マイナスイオン化)され、生成された磁気イオンとして処理室30へ排出される。外部から投入される有機物と磁力ボックス20から供給される磁気イオンとが処理室30内で低温反応して有機物が分解処理され、生成物が生成されると共に排出ガスがスクラバ50へ排出される。処理室30から排出された排出ガスはスクラバ50内で消煙され無害化され外部へ排出される。かかる構成を有する磁流式低温分解装置1の詳細を以下に説明する。
【0026】
図3は、磁力ボックス20の構成図である。吸入口21から取り込まれた外気は、磁力線を発生させる磁気部22で挟まれた空気管25内を通過することにより磁気化(マイナスイオン化)され、生成された磁気イオンが排出口23から処理室30(図4)へ排出される。吸入口21には調整弁24が配設され、吸入口21の開度を調整することで取り込まれる空気量が制御される。本実施形態では、磁力ボックス20は2個の空気管25を備え、吸入口21から取り込まれた外気が空気室26を経由して当該2個の空気管25に送られる構成を有する。なお、排出口23は2個に限定されず、1個でも3個以上でもよい。
【0027】
磁気部22は、永久磁石や電磁石、プラズマ磁力等が考えられる。図3では磁気部22を1つとして示すが、空気管25に沿って複数の磁気部22を配置してもよい。複数の磁気部22を配置する場合、取り込まれる空気量に応じて各磁気部22を制御することで、生成される磁気イオンの質の安定化を図ることができる。調整弁24は、吸入口21の開度を調整して自然吸気の空気量を調整する構成を説明したが、ファンの風量を調整して強制的に吸入される空気量を調整する構成でもよい。図3では調整弁24を吸入口21側に配設した構成を示したが、排出口23側に配設してもよい。調整弁24が吸入口21側に配設される場合、磁気化した空気(磁気イオン)は複数の排出口23から均等に或いは空気管25の太さに応じた量が排出される。調整弁24が排出口23側に配設される場合、複数の排出口23の各々から排出される磁気化した空気の量を調整することができる。複数の排出口23がある場合、各排出口23が図4の処理室30の対応する吸入口31に接続される。処理室30の吸入口31の位置(高さ)に応じて磁気化した空気が排出される。なお、磁力ボックス20が調整弁24を備える代わりに、処理室30の吸入口31に調整弁を備える構成としてもよい(図示省略)。
【0028】
図4は、処理室30の構成図である。磁力ボックス20の排出口23(図3)が処理室30の吸入口31に接続され、磁気化した空気が処理室30内に取り込まれる。分解装置本体10(図2)の外部に設置された粉砕機(不図示)により粉砕された有機物がベルトコンベア等(不図示)で搬送され、投入口34から処理室30内に投入される。投入口34には蓋部33があり、開閉を検知する投入口管理センサ40が配設される。投入口34には、蓋部33のすぐ下にプッシャ35が配設されている。プッシャ35は、有機物38に圧力を加えるエアシリンダ36を備える。処理室30内には、第2の検知部を構成する1又は複数の温度センサ41が設置される。測定値は操作部70(図1)に送られる。なお、処理室30が複数の吸入口31を備え、各吸入口に調整弁が配置された構成の場合、各調整弁を適宜制御することで磁気化した空気の投入量を処理室30の上部と下部とで制御し、処理室30全体の均質な反応を促進することができる(図示省略)。
【0029】
プッシャ35は、反応の進行に伴って有機物38間に空洞が生じるとき、有機物38に圧力が加えて有機物38間の空気を排除して反応の進行を阻害し、処理室30内の低温環境を維持すると共に、圧縮された有機物38間の熱伝導の効率化を図る。有機物38を押すプッシャ35の位置(高さ)に応じて、エアシリンダ36のピストンロッド37(図2)の長さは変化する。従って、ピストンロッド37の長さを計測または目視することで、処理中の有機物38の量を知ることができる。有機物38の体積が所定体積まで小さくなると、投入口34から有機物が追加投入される。
【0030】
有機物は、プラスチック・発泡スチロール・ポリ袋・ビニル・トレイ等の石油製品、食品残渣、雑誌・カタログ類・電話帳等の紙製品、庭木・枝・木片・おがくず・解体木材等の樹木類、ビニルシート・農業用ビニルハウス・肥料用袋等の農業廃棄物、水産、魚のあら・漁網等の漁業廃棄物、馬や牛等の家畜糞、畜舎の藁等の畜産廃棄物、衣類・ぬいぐるみ等の布製品、ベッドシーツ・紙おむつ等・注射針の医療廃棄物等が考えられる。実験によれば、含水率が70%以下であれば、ほとんどの有機物を分別することなく投入することが可能である。含水量が高いものは、紙類・ダンボール等の含水率の低いものと混合して70%以下にするか、または、脱水・天日干し等をして70%以下すれば投入可能である。
【0031】
処理室30は、有機物が外部から投入された後に、炉心作成のために初期時に着火される。投入された有機物は、反応しつつ処理室30内を下方に移動する。有機物38の水分や空気中の水分は磁気化した空気によって電気分解され、水素イオンと水酸化物イオンとが生成される。このとき、処理室30内を移動する磁気化した空気の起電力は1ボルト以下のごく微弱なもので、酸素は発生しない。発生した水酸化物イオンが有機物38を低酸素状態で低温分解すると共に、有機物38中の炭素分子に衝突して熱を生じさせる。この反応で発熱するので、燃料(化石燃料等)を新たに投入することを要しない。有機物の投入量を制御することで処理室30内の温度を180℃〜250℃に保ち、有機物38を低温分解処理する。ダイオキシンの発生温度とされる300℃〜400℃よりも低い温度で分解処理するため、ダイオキシン類、窒素酸化物等の有毒ガスの発生は抑制される。低温分解は低酸素状態の限界酸素(酸素濃度10〜5%以下、好ましくは8%以下)下で進行し、有機物38は磁気化した空気に晒されて炭素化が促される。約12〜24時間が経過すると有機物38は乾燥し体積が減る。新たな有機物が投入口34から投入される。低温反応処理の結果、排出ガスが排出されると共に、生成物が生成される。排気ガスは、水蒸気と臭い、ダイオキシンを少量含む煙を僅かに含むため、排気口を経由して排出されスクラバ50(図5)で消煙される(後述)。
【0032】
生成物には、排出液とセラミックス灰がある。排出液は、弱酸性の木酢液用の残液で、タール状の残滓と酢液に分類される。タール状の残滓はすくい取られ、新たな有機物と混合して処理室30に再投入され処理される。新たに投入された有機物の大半は処理室30内で低温処理され、投入量の1/200〜1/300(質量比)まで分解される。処理室30内の下部には炭化した残滓が残り、72時間程度を経て最終的に磁気を帯びた白色のセラミックス灰39になる。
【0033】
例えばプリント配線基板等を含む電気部品の場合、使用されるエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が低温分解されて銅等の無機物が排出される。アルミニウムが裏打ちされた自動車用シートに使用されるフェルトや、防磁のために導電性塗料が内側面に塗布されたCRTやノート型パソコン等のカバーも、破砕されて投入されると有機物が低温分解されて無機物が残る。同様に、太陽光パネルも破砕されて投入されると有機物が低温分解されて、ガラスパネルのケイ素や、太陽光パネルのガリウム、ヒ素、カドミウム、テルル等の無機物が残る。農業廃棄物や漁業廃棄物等は材料として塩化ビニルを含む。塩素ガスやダイオキシン等の有毒ガスを発生させることなく低温分解され、塩素は廃棄物中のナトリウムやカリウムと結びついて塩(NaCl、KCl)となる。特に漁網には鉛等の無機物が含まれるが、有機物は低温分解されて無機物だけが残る。従来はこれらの廃棄物を破砕して地中等に埋めていたが、時間の経過とともに塩素成分は塩素ガスとして大気中に排出する恐れがあった。医療廃棄物も破砕されて投入されると、180℃〜250℃の温度に約12〜24時間保たれて有機物は低温分解され72時間程度を経て無機物が残るので、乾熱滅菌ができる。磁流式低温分解装置1によれば、有機物と金属類等の無機物とが混合された状態で投入されると、有機物が低温分解されて投入量の1/200〜1/300(質量比)の無機物が残るので、磁流式低温分解装置1は有機物と無機物のセパレータとしての機能を果たす。
【0034】
セラミックス灰39は、取り出し口42(図2)から掻き出され、肥料としてのリサイクルや壁紙の糊に混ぜる等して再利用される。もうひとつの生成物である排出液(酢液)は、蓋部33より滴下し底部にたまり、セラミックス灰39と同様に取り出し口42(図2)から取り出される。酢液は、市販の木酢液と同様に500〜1000倍に薄めて害虫駆除剤として散布利用される。
【0035】
ここで、投入口管理センサ40は、安全管理のために蓋部33の開閉状態を検出し、或いは、蓋部33の開閉回数や有機物38の投入の有無を検出し、検出結果を操作部70(図1)へ送る。一回当たりの平均投入量を予め入力することで、操作部70(図1)は投入回数から投入量を推定することができる。尚、処理室30の下部に重量センサ(不図示)を設置することで投入量を検出することもできる。
【0036】
処理室30内が高温になるとダイオキシンや臭い等の有害物質の発生が増加する。一方、低温に抑えると化学反応速度が遅くなり、結果として有機物の処理速度が低下する。温度センサ41は、処理室30内で下部に設置される。処理室30内で最高温度になるのが処理室30内の下部であるから、そこに温度センサ41を設置することはダイオキシン等の発生の抑制には好適である。処理室30内の上部にも温度センサ41を設置することで、処理室30内の状況をより詳細に把握でき、有機物の投入量や磁気化した空気の吸入量、プッシャ35による加圧の程度をより詳細に制御することができる。
【0037】
後で説明する統計的な予測処理をする場合、処理室30内の下部に設置した温度センサ41が検出する温度(第2のデータ)は、有機物の処理速度と有害物質の発生量に関連する説明変数となる。また、有機物の投入量は、前述したピストンロッド37の長さや、投入口管理センサ40が検出する蓋部33の開閉回数、重量センサが検出する重量が説明変数になる。処理室30内の下部と上部の温度の差は、投入されて未処理の有機物の量と熱伝導度に関連する説明変数となる。
【表1】

A1、A2は、後述する予測のための説明変数として利用する。
【0038】
図5は、スクラバ50の詳細図である。スクラバ50は、湿式のスクラバ方式である。処理室30(図4)から排出された排気ガスは吸入口51を通じて消煙室54に導入される。消煙室54は、排気ガスを重力方向に導く下向きの通路と重力方向の逆向きに導く通路とが交互に連結されて構成される。消煙室54の下向き通路の上部には噴霧器53が設置され、噴霧器53から水がミスト状に下方向に噴霧される。排気ガスが消煙室54を通過する際、排気ガスに含まれる粒子はミストによって絡め取られ、排気ガスは無害化される。噴霧された水と絡め取られた排気ガスの粒子は、消煙室54の下部に蓄積される。蓄積された水は油分を含み、油分の回収機構(不図示)と水の回収機構(不図示)が回収する。一方、無害化された排気ガスは、ほぼ水蒸気だけが残った浄化されたガスとなって煙突56から排出される。
【0039】
噴霧器53は、水道管または貯水槽に接続され、調整弁52によって噴霧量が制御される。噴霧器53が消煙機能を性能通りに達成するため、また、噴霧器53から消煙機能を超えた量の水が噴霧されないようにするため、噴霧量が制御され、性能を維持しつつ省資源化を図っている。
【0040】
スクラバ50には、消煙室54の吸入口51及び煙突56の近傍にパーティクルセンサ55が設置され、第1の検知部を構成する。パーティクルセンサ55によって、排気ガスの粒子量(第1のデータ)が計測される。吸入口51の近傍の排気ガスは、臭いや、水蒸気粒子とダイオキシンを含む煙の粒子を少量含む。煙突56の近傍の排気ガスは、理想的には水蒸気粒子だけである。煙突56から排出される水蒸気は、処理室30内で発生した水蒸気の一部と噴霧器で噴霧された水の一部を含む。
【0041】
排気ガスは、水蒸気とダイオキシンを含む煙や臭いの粒子を含むが、環境の観点で重要なのは水蒸気以外の粒子が排出されないことであり、水蒸気を除いた粒子量を計測する必要がある。吸入口51の近傍で計測される水蒸気を除く粒子量は、処理室30(図4)内で有機物38から発生した粒子量であり、煙突56の近傍で計測される水蒸気を除く粒子量は、消煙室54での浄化後の粒子量である。処理室30内での発生煙量と、消煙室54での浄化量の2つの目的変数、説明変数を定義できる。
【表2】
【0042】
ここで、A1及びA2を説明変数にしたとき、B1は目的変数になる。B2は、水蒸気を除く最終的な粒子発生量であるので、B2を目的変数としたとき、A1、A2、A3を説明変数にすることができる。B2を予測することは、消煙室54の水蒸気を除く粒子量が所定の値を超えないように予測することになる。詳細は後で説明する。
【0043】
図6及び7は、パーティクルセンサ55(図5)に関する説明図である。図6は、パーティクルセンサ55の原理を説明する図である。パーティクルセンサ55は、発光部61と受光部62とを有して構成される。発光部61は、LED等の発光素子を有し、受光部62は、フォトトランジスタダイオード、光電子倍増管等の受光素子を有する。光は発光部61から煙粒子63および水蒸気粒子64を含む排気ガスに向けて照射され、排気ガス中の球状粒子によって乱反射された散乱光が受光部62に届く。これにより、球状粒子による散乱光の強度を求めることができる。
【0044】
発光部61で発光した光は、受光部62で受光される。受光部62の受光素子が検出した散乱光の強度は、変換部65によりA/D変換される。変換された電圧は、粒子量の特性値として扱われる。送信部66は、変換部65で変換された信号をBluetooth(登録商標)やWIFI(登録商標)、ZigBee(登録商標)等の既存の通信技術を使って操作部70(図1)に送る。
【0045】
図7は、波長と粒子の散乱光の強度との関係を表したグラフである。粒径が小さい範囲では、散乱光の強度は粒径の3乗に比例し、波長の4乗に反比例する性質を持つことが知られている。排気ガス中の水蒸気は、粒子径が10〜100μm程度の大きさで煙粒子と比較して十分大きいので、発光部61の光の波長を適切に選択することで、水蒸気粒子を除く煙粒子の粒子量を推定できる。図7に示されるように、粒子径の大きい水蒸気の散乱光の強度は波長に対して変動が少ないのに対して煙粒子の散乱光の強度は波長によって変動があるため、短い波長を選択することで水蒸気粒子の影響を排除し、煙粒子の粒子量を散乱光の強度として求めることができる。
【0046】
図6に戻って、発光部61が照射する光の波長は、煙粒子を捕捉し易い緑領域の波長=525nmが好適であるが、より波長の短い青領域やUV領域の波長を有するLEDその他の発光素子を用いてもよい。緑領域以外に、赤または赤外の領域で波長の異なる光を発する複数の発光素子を同時に用いて比較することで、水蒸気粒子と煙粒子の配分比といったデータを取得することも可能である。この場合、時分割で受発光する方式や発光部61及び受光部62に偏光板等のフィルタを付ける等の方式を取る。精度を上げるための追加の回路や部材が必要となりコスト高の原因になる。磁流式低温分解装置1では、一定量の水蒸気粒子がある環境下で煙粒子の存在と量を検知するので、複数の発光素子を用いず、また、偏光板を介さない単一波長の発光素子と、偏光板を介さず直接受光する受光部62とで水蒸気粒子以外の煙粒子を検出する。
【0047】
緑色光または緑色光よりも短い波長の光を連続的に発光する発光部61と、発光部61が発光した光が粒子によって反射した散乱光を、(フィルタを介さず)直接受光する受光部62と、受光部62からの信号を電圧に変換する簡単な構成で、水蒸気粒子を除く煙粒子の粒子量を検出でき、費用を低減することができる。
【0048】
図8は、操作部70の構成と予測制御を示す。磁流式低温分解装置1では、操作部70は、センサデータや、後述の追加データや付帯情報を収集する受信部81と、収集データや稼働状況を表示および報知する表示部82と、磁流式低温分解装置1の稼働制御をする制御部83と、収集データに基づいて装置の稼働を予測する予測部84と、記憶部87と、を有して構成される。なお、操作部は、制御部を具備しないで受信部と表示部だけで構成されてもよい。制御部を具備していない構成では、管理者が表示部に表示される数値やガイダンスに基づいて手動で対応する。
【0049】
操作部70は、磁流式低温分解装置1に備え付けられた専用のものでなく、例えば外付けのパーソナル・コンピュータや、スマートフォン等の汎用機器でもよい。装置価格を低く抑えることできる。操作部は、1つの磁流式低温分解装置に1つとは限らず、複数の操作部があってもよい。例えば管理者が持つスマートフォンにモニタリング機能を有するアプリケーションソフトウェアを導入して対応すれば、利便性が格段に上がる。
【0050】
受信部81は、処理室30に設置された温度センサ41が検出する温度のデータ(第2のデータ)や、スクラバ50に設置されたパーティクルセンサ55が計測する排気ガスの粒子量のデータ(第1のデータ)や投入口管理センサ40のデータを収集する。これらのデータを所定の時間間隔で収集し、記憶部87に時系列データの一つの組として格納する。収集したデータは表示部82で表示したり、後述する予測部84の予測データとして利用する。
【0051】
収集するデータは、上記のデータ以外に追加データを収集してもよい。追加データとして、有機物の種類、有機物の含水量、外部の気温や湿度等がある。これらデータは、例えば、種類や含水量や温度湿度等を分類し層別することで予測データを取得するために活用することができる。また、磁力ボックス20やスクラバ50に設置された調整弁24,52の状況(開度)やピストンロッドの長さ等を付帯情報として収集し、予測データを取得するために活用するとともに、収集したデータや予測結果を表示部82に表示することも可能である。
【0052】
表示部82は、収集したデータや調整弁の状況を表示する。表示は、データを数値化したもの、色等で視覚化したものであってもよい。収集したデータが所定の閾値を超えた場合、後述する予測部84の結果を、音や表示、或いは信号表示灯等で報知する機能をもつ。報知は表示部82に表示する以外に、管理者の持つスマートフォン等に報知してもよい。管理者が磁流式低温分解装置1の近傍にいなくても適切に処置することを可能とする。
【0053】
表示部82は、単純な7セグメントLEDディスプレイ等の表示装置であったり、キーボード機能を有するタッチパネル等の入力部88を備えてもよい。入力部88を備える操作部70の場合は、例えば収集したデータ、追加データ、付帯情報を表形式で表示したり、センサの設置位置を表す地図表示上にデータを表示する表示形態を切り替えしたりすることが可能である。制御部83を備えた操作部70の場合、制御用のコントロールパネル(不図示)をモニタ80に表示して、モニタ80から稼働制御をしてもよい。
【0054】
制御部83は、磁力ボックス20やスクラバ50の各々に備えられた調整弁24,52を制御する。適切に制御することで、ダイオキシンや臭いを含む煙の排出を最小化し、処理効率を最大化する最適正制御を行うことができる。制御部83は、制御用のコントロールパネル(不図示)から手動により操作されるか、後述する予測部84の予測結果に基づいて自動で操作される。調整弁24を制御することで磁力ボックス20への空気の投入量が制御される。調整弁52を制御することで噴霧器53への水の投入量を制御することができ、消煙の効果および過剰な水の供給を制御できる。
【0055】
制御部83は、反応に関わる制御や消煙に関する制御に限定されない。例えば、処理室30の蓋部33からの有機物38の投入量に関わる、蓋部33の開閉や粉砕した有機物38を運ぶベルトコンベア(不図示)の制御も実行できる。有機物38の投入量を制御することで有機物38の処理速度の最速化が可能になる。
【0056】
記憶部87は、受信部81で収集したパーティクルセンサ55が計測する排気ガスの粒子量のデータ(第1のデータ)及び温度センサ41が検出する温度のデータ(第2のデータ)、付帯情報、追加データを時系列データとして記憶する。また、予測部84で使用する回帰係数等の統計学的手法の説明変数を記憶する。回帰係数等の予測データは、外部で事前に作成されたものを記憶したり、収集した時系列データを基に作成し記憶してもよい。
【0057】
予測部84は、センサ等から収集されたデータから、統計学的な予測処理を使って所定時間後の反応を予測する。反応の予測は主に煙発生量の予測であるが、その他に反応のバラつきや浄煙等の付帯状況を含む。磁流式低温分解装置1を最適に稼働するために、処理効率の向上とダイオキシンや臭いを含む有害な煙発生量を抑えることを同時に達成する必要がある。
【0058】
(予測運転制御)
温度センサ41による処理室30の予測運転制御を説明する。250℃を超えるとダイオキシンの発生の恐れがあるため、従来のディテクション型の制御方法では、処理室30内の温度を常時監視し、温度が所定の温度、例えば250℃になると警報を発呼し、その後、自動操作や手動操作で反応を抑制する制御を行う。従来の方法では、発呼から制御までの時間遅延や制御開始から温度が下がるまでの時間遅延が発生することになり、処理室30内の温度が一時的に所定の温度を超えて、ダイオキシン等の発生させる恐れがある。所定の温度を低く設定することでダイオキシンの発生温度に到達しないようすることも可能だが、その場合は逆に処理効率を低下させる要因となる。従来のディテクション方式では、問題発生後になるべく迅速に問題対応するため、強めの制御をかけるため、却って処理効率が低下する恐れもある。
【0059】
より効果的な稼働のために、磁流式低温分解装置1では、温度の制御だけでなく、煙を測定することで実質的に有害な煙の発生を抑えること、及び、煙を検出し対処するのではなく、煙の発生を避けるプレベンテーション方式により制御を実施する。パーティクルセンサ55及び温度センサ41のデータからプレベンテーション方式の警報を出力することによって、処理速度の向上と有害物質の抑止の両方の最適化を図ることができ、効果的に磁流式低温分解装置1を導入できる。
【0060】
予測部84は、予測のためにセンサ等から収集されたデータ、付帯情報、追加データを収集して統計パラメータを生成する予測構築部85と、将来の状態を予測する予測運用部86とを有して構成される。予測構築部85では、データ等を時系列の組又は時系列に依存しない定数として記憶部87に蓄積されたデータから、適切なタイミングで統計分析を行い、統計学的手法の説明変数の算出を行う。ここで、説明変数は回帰係数である。
【0061】
予測構築部85の説明変数の構築は、外部から説明変数を取り込んで構築する方法や試験運転期間中に取得する方法がある。更に、実運用の期間中もたびたび構築し、より精度の高い説明変数を取得することができる。予測構築部85で構築する統計手法は、簡便な手段としては、A1で示した処理室30内の下部に設置した温度センサ41の温度又は温度変化を独立変数として、所定時間後のB2で示した煙突56の近傍に設置したパーティクルセンサ55の値を従属変数にし、所定時間後の煙量を単純回帰分析として予測する。ここで、所定時間は自動制御や手動制御により効果が現れるまでの時間である。
【0062】
より柔軟性のある方法として、所定時間も説明変数にして、多変量解析により煙量を求めることも可能である。外注の人手による運用では、SLA(サービルレベルアグリメント)に定義されたサービス継続性が重要になる。例えば、インシデント発生後、30分以内に運用管理をする等を契約する方法である。このようなアウトソーシングをするために、所定時間を可変にし、運用のアウトソーシング化を可能にすることもできる。
【0063】
さらに、より精度の高い予測手法をとることが可能である。前述した処理室30内の下部に設置した温度センサ41のデータに加えて、調整弁24または32の弁の開度、つまり磁気化した空気の吸入量を時系列または固定の説明変数に加えることで、現在の開度による所定時間後の煙量の予測が可能になる。
【0064】
このような予測が可能になると、逆の手法である例えばゴールシーキング等の手法を使うことにより、最適な調整弁の開度を求めることも可能である。ゴールシーキングとは、目的変数の値を決めて、どのような説明変数値だと目的変数の値になるのか説明変数を変動させて求める方式である。ゴールシーキングにより、調整弁の開度を始めとする付帯情報のうちどの値を制御するかを求めることが可能となる。所定時間後に煙量が所定量を超える予想をした場合、所定の閾値を超えないように制御する必要がある。また、安全に運用できる基準の煙量の基準量を予め設定しておく。例えば、基準量は所定の閾値の95%である。目的変数として、設定した煙量として基準量を設定し、ゴールシーキングで調整弁の開度を求める。所定時間を説明変数に利用している場合、所定時間を長く確保した場合に所定の閾値に達する調整弁の開度を求めることも可能である。この場合は当面、煙の発生が基準量を超えない調整弁の開度を求めることになる。
【0065】
処理室30での反応は、磁気化した空気の量だけでなく、有機物の種類や含水量、投入量、処理室30内での均質性(混ざり合い)、外部の温度、湿度によっても影響を受ける。従って、これらの追加データを説明変数として、数値以外のパラメータは層別した値を設定し、多変量解析を行ってもよい。これにより更に精緻な制御が可能になる。このように説明変数を多くすることによって、例えば先に説明した予測同様にゴールシーキング等の手法を用いることにより有機物投入量の最適量を求めることが可能になる。
【0066】
予測構築部85について、単純回帰分析や多変量解析によるパラメータ構築を説明したが、教師あり学習モデル、例えばSVM(サポートベクターマシン)等の手法を用いて、煙が所定量を超えるかどうか予測することでもよい。日常の運用しながら、モデルを順次改良することが可能になる。
【0067】
予測運用部86は、予測構築部85で構築した統計モデルに基づき、収集したセンサの時系列データ、付帯情報、追加データから所定時間後に煙量が閾値を超えるか予測し、その結果を表示部82や制御部83に通知する。表示部82ではその結果に基いて、警報を発呼する。既に説明したように、ゴールシーキング等の手法により、必要な制御方法を表示部に表示することも可能である。例えば、表示部82では「調整弁の10%開いてください」等の案内を出すことが可能となる。このような表示は、運用者に予測結果を認知させ、運用者が手動操作による調整弁等の調整を可能とする。
【0068】
制御部83との連携する場合について説明する。自動制御する場合は、制御部83に対して予測結果を通知する。制御部83は、予測結果に基づいて将来の処理室30の反応が想定以上に進行し過ぎないように調整弁を制御する。反応が想定以上に進行し過ぎないとは、消煙室54の水蒸気を除く煙量が所定の量を超えないこと、または、消煙室54に入る水蒸気を除く煙量が所定の量を超えないことである。多変量解析を用いる場合は、調整弁の制御だけでなく、有機物の投入量等の別の説明変数に該当する部分の制御も可能である。制御部83を追加することで自動運用が可能となり、専門家がいなくても運用が可能になる。
【0069】
スクラバ50の吸入口51近傍のパーティクルセンサ55と煙突56近傍のパーティクルセンサ55の計測値の差から、消煙室54の浄化能力を算出することが可能である。適切な閾値を設定することにより、噴霧器53の制御が可能になる。反応度のバラつきや消煙室54の能力は、予測運用部86だけで算出したが、予測構築部85で、煙量を予測した方式を採ることも可能である。
【0070】
以上述べたように、予測は多変量解析や教師型学習の手法を用い、更に磁気化した空気の吸入量や、その他のデータを加えることで、更なる最適化ができるとともに、運用のアウトソーシングも可能となる。
【0071】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態に係る磁流式低温分解装置を説明する図である。第2実施形態に係る磁流式低温分解装置101は操作部170がルータ190を備え、通信回線200を介してクラウドサーバ300に接続されている点で、第1実施形態に係る磁流式低温分解装置1と相違する。第1実施形態に係る磁流式低温分解装置1との同一又は類似の要素については、同一又は類似の符号を付して説明を省略する。
【0072】
クラウドサーバ300にはイントラネットやインターネット等の通信回線200を介して複数の磁流式低温分解装置101,101’,101”が接続されている。それぞれの磁流式低温分解装置101,101’,101”には、操作部170,170’,170”がある。クラウドサーバ300は、サーバ記憶部310と予測構築部320とを備える。
【0073】
磁流式低温分解装置101では、操作部170が受信した時系列データ、付帯情報、追加データが、磁流式低温分解装置101に紐付けされて、ルータ190を介してクラウドサーバ300に送信される。データを受け取ったクラウドサーバ300では、データがサーバ記憶部310に蓄積される。ここで、追加データのうち、気温や湿度は、磁流式低温分解装置101からでなく、外部サービスの気象データを取得してもよい。
【0074】
クラウドサーバ300上の予測構築部320では、各磁流式低温分解装置101,101’,101”から収集されたデータを、例えば有機物の種類等用法に応じて分類し、各磁流式低温分解装置101,101’,101”で共有可能な統計パラメータを算出する。算出された統計パラメータは、各磁流式低温分解装置101,101’,101”に送信され、各磁流式低温分解装置101,101’,101”の予測運用部での予測のために使用する。クラウドサーバ300上に予測運用部を持ち予測関連の処理を集中化することも可能だが、ネットワーク障害等が発生した場合の、サービスの継続性考慮した場合、予測運用部は、クラウドサーバ300上ではなく、各磁流式低温分解装置にあることが好ましい。
【0075】
以上述べたように、磁流式低温分解装置101は、クラウドサーバ300から離れた遠隔地に配置することができる。また、各磁流式低温分解装置で収集されるデータをクラウドサーバ300上に収集し、ビッグデータ化し、統計パラメータを算出し、各磁流式低温分解装置で共有することによってより精度のよい運用ができるようになると共に、運用のサービス化が可能になる。
〔態様1〕
空気を磁気化する磁力ボックス(20)と、
磁気化した空気で有機物を低酸素状態で低温分解する処理室(30)と、
排気ガスを処理するスクラバ(50)と、
を有する、分解装置本体(10)であって、
前記スクラバが、当該スクラバ内の臭い及び煙粒子を検知する第1の検知部(55)を有し、
前記処理室が、当該処理室内の温度を検知する第2の検知部(41)を有する、分解装置本体(10)と、
前記第1の検知部から取得した第1のデータ及び前記第2の検知部から取得した第2のデータに基いて前記処理室の所定時間後の反応を予測する予測部(84)を有する操作部(70)と、
を備える、磁流式低温分解装置(1)。
〔態様2〕
態様1に記載の磁流式低温分解装置において、
前記操作部は、前記第1のデータ及び前記第2のデータを組み合わせから構成される時系列データを統計学的手法の説明変数として記憶する記憶部(87)を更に有し、
前記予測部は、前記スクラバ内の煙粒子量が前記所定時間後に所定の値に到達することを統計学的手法により予測する、磁流式低温分解装置。
〔態様3〕
態様1又は2に記載の磁流式低温分解装置において、
前記操作部は、前記スクラバ内の煙粒子量が前記所定の値を将来超えないように前記処理室の反応を制御する制御部(83)を更に有する、磁流式低温分解装置。
〔態様4〕
態様3に記載の磁流式低温分解装置において、
前記制御部は、前記予測部の予測結果に基いて、前記磁力ボックスへの空気の投入量、前記処理室への磁気化した空気の投入量、当該処理室への有機物の投入量、及び、前記スクラバ内への噴霧量のうち少なくともいずれか一つを制御する、磁流式低温分解装置。
〔態様5〕
態様3又は4に記載の磁流式低温分解装置において、
前記記憶部は、有機物の種類と量、有機物の含水量、及び、外部の気温と湿度のうち少なくともいずれか一つを含む追加データとを記憶し、
前記予測部は、統計学的手法の説明変数に前記追加データを含めて予測する、磁流式低温分解装置。
〔態様6〕
態様3乃至5のいずれか一項に記載の磁流式低温分解装置において、
前記統計学的手法は、回帰分析、多変量解析、又は、教師あり学習モデルである、磁流式低温分解装置。
〔態様7〕
態様5又は6に記載の磁流式低温分解装置において、
前記操作部は、通信回線(200)を介して接続されたクラウドサーバ(300)との間でデータの送受信をするルータ(190)を更に有し、
前記時系列データと前記追加データは、前記ルータを介して前記クラウドサーバのサーバ記憶部に送信され記憶され、
前記操作部は、前記クラウドサーバに接続された他の磁流式低温分解装置と共有される時系列データと追加データとに基いて、当該クラウドサーバの予測構築部(320)により計算された統計学的手法の説明変数を前記ルータを介して受信し、
前記予測部は、前記説明変数に基いて予測し、
前記制御部は、前記予測部の予測結果に基いて制御する、磁流式低温分解装置。
〔態様8〕
態様1乃至7のいずれか一項に記載の磁流式低温分解装置において、
前記処理室は、有機物に圧力が加えるプッシャ(35)を更に有する、磁流式低温分解装置。
〔態様9〕
態様3乃至8のいずれか一項に記載の磁流式低温分解装置において、
前記制御部は、前記処理室が有機物を低酸素状態で低温分解するように当該処理室に投入される有機物の量を制御する、磁流式低温分解装置。
〔態様10〕
態様1乃至9のいずれか一項に記載の磁流式低温分解装置において、
前記第1の検知部は、
緑色光または緑色光よりも短い波長の光を発光する発光部(61)と、
前記発光部が発光した光が煙粒子によって反射した散乱光を直接受光する受光部(63)と、
を有する、磁流式低温分解装置。
〔態様11〕
態様1乃至10のいずれか一項に記載の磁流式低温分解装置において、
投入された廃棄物中の有機物を低温分解して無機物を排出する、磁流式低温分解装置。
〔態様12〕
空気を磁気化する磁力ボックス(20)と、磁気化した空気で有機物を低酸素状態で低温分解する処理室(30)と、排気ガスを処理するスクラバ(50)と、を有する、分解装置本体(10)であって、
当該スクラバが当該スクラバ内の臭い及び煙粒子を検知する第1の検知部(55)を有し、
当該処理室が当該処理室の温度を検知する第2の検知部(41)を有する、
分解装置本体(10)を操作する方法において、
前記第1の検知部から取得した第1のデータを記憶する工程と、
前記第2の検知部から取得した第2のデータを記憶する工程と、
前記第1のデータ及び前記第2のデータに基いて前記処理室の所定時間後の反応を予測する工程と、
前記第1のデータ及び前記第2のデータを組み合わせて時系列データを作成して統計学的手法の説明変数として記憶する工程と、
有機物の種類と量、有機物の含水量、及び、外部の気温と湿度のうち少なくともいずれか一つを含む追加データを記憶する工程と、
前記追加データを前記説明変数に含める工程と、
前記説明変数に基いて、前記スクラバ内の煙粒子量が前記所定時間後に所定の値に到達することを統計学的手法により予測する工程と、
予測結果に基いて、
前記磁力ボックスへの空気の投入量、前記処理室への磁気化した空気の投入量、当該処理室への有機物の投入量、及び、前記スクラバ内への噴霧量のうち少なくともいずれか一つを制御することで、
前記スクラバ内の煙粒子量が前記所定の値を将来超えないように前記処理室の反応を制御する工程と、
を備え、
前記処理室の反応を制御する工程は、前記処理室が有機物を低酸素状態で低温分解するように当該処理室に投入される有機物の量を制御し、
前記処理室の反応を制御する工程は、有機物に圧力が加えて有機物間の空気を排除して当該処理室の反応を制御する、分解装置本体を操作する方法。
〔態様13〕
態様12に記載の方法において、
前記時系列データと前記追加データを、通信回線を介して接続されたクラウドサーバに送信する工程と、
前記クラウドサーバに接続された他の磁流式低温分解装置と共有される時系列データと追加データとに基いて、当該クラウドサーバにより計算された統計学的手法の説明変数を受信する工程と、
受信した前記説明変数に基いて予測する工程と、
前記予測部の予測結果に基いて前記処理室の反応を制御する工程と、
を更に備える、方法。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、ダイオキシンを始めとする有害物質や臭い等の有害物の抑制制御と分解処理速度とを両立させて運転を最適化する磁流式低温分解装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1:磁流式低温分解装置、
10:分解装置本体、
20:磁力ボックス、21:吸入口、22:磁気部、23:排出口、24:調整弁、25:空気管、26:空気室、
30:処理室、31:吸入口、33:蓋部、34:投入口、35:プッシャ、36:エアシリンダ、37:ピストンロッド、38:有機物、39:セラミックス灰、40:投入口管理センサ、41:温度センサ(第2の検知部)、42:取り出し口
50:スクラバ、51:吸入口、52:調整弁、53:噴霧器、54:消煙室、55:パーティクルセンサ(第1の検知部)、56:煙突、
61:発光部、62:受光部、63:煙粒子、64:水蒸気粒子、65:変換部、66:送信部、
70:操作部、
80:モニタ、81:受信部、82:表示部、83:制御部、84:予測部、85:予測構築部、86、予測運用部、87:記憶部、88:入力部、
101,101’,101”:磁流式低温分解装置、170,170’,170”:操作部、190:ルータ、
200:通信回線、
300:クラウドサーバ、310:サーバ記憶部、320:予測構築部
【要約】
【課題】ダイオキシンの発生を抑え、最適に管理できる磁流式低温分解装置を提供する。
【解決手段】磁流式低温分解装置1は、空気を磁気化する磁力ボックス20と、磁気化した空気で有機物を低酸素状態で低温分解する処理室30と、排気ガスを処理するスクラバ50と、を有する分解装置本体10を備える。スクラバ50は、スクラバ50内の臭い及び煙粒子を検知する第1の検知部35を有し、処理室30は、処理室30内の温度を検知する第2の検知部29を有する。磁流式低温分解装置1は、第1の検知部35から取得した第1のデータ及び第2の検知部29から取得した第2のデータに基いて処理室30の反応を予測する予測部84を有する操作部70を更に備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
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図5
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図8
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