特許第6821167号(P6821167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6821167
(24)【登録日】2021年1月8日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】毛髪化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20210114BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20210114BHJP
   A61Q 5/08 20060101ALI20210114BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20210114BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20210114BHJP
   A61K 8/22 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61K8/86
   A61Q5/08
   A61Q5/10
   A61K8/19
   A61K8/22
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-103911(P2016-103911)
(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-210429(P2017-210429A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】清水 香里
(72)【発明者】
【氏名】森下 奈那
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−086175(JP,A)
【文献】 特開2002−193770(JP,A)
【文献】 特開2007−126415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤及び酸化剤を含有し、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成される毛髪化粧料組成物であって、
(A)ヒドロキシエチルセルロースを0.01〜1質量%
(B)数平均分子量が2000以下のポリエチレングリコールを0.1〜7質量
含有し、前記(A)成分の含有量に対する(B)成分の含有量の質量比が1〜50である毛髪化粧料組成物。
【請求項2】
さらに(C)25℃で液状である、高級アルコール、油脂、炭化水素、高級脂肪酸、及びロウから選ばれる少なくとも一種の油性成分を含有する請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項3】
前記(C)成分は、25℃で液状の高級アルコールを含む請求項1又は2に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項4】
前記毛髪化粧料組成物は、アルカリ剤及び(A)成分を含有する第1剤、並びに酸化剤を含有する第2剤を含み、前記第1剤と第2剤が密閉容器内において振とう混合された後、毛髪に適用される請求項1〜3のいずれか一項に記載の毛髪化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ剤及び酸化剤を含有し、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成される毛髪化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、毛髪化粧料組成物として、複数の薬剤を混合することにより効果を発揮する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤が知られている。そのような毛髪化粧料組成物としては、例えば、アルカリ剤及び酸化染料を含有する第1剤と、酸化剤、例えば過酸化水素を含有する第2剤とから構成される酸化染毛剤が知られている。アルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進するとともに、毛髪を膨潤させて毛髪への染料の浸透性を向上させることにより、染毛力を向上させる。
【0003】
毛髪化粧料組成物は、使用時に複数の薬剤を混合した混合物として調製された後、刷毛、櫛等を用いて毛髪に塗布している。従来より、混合物の伸びをよくし、刷毛等を用いて毛髪に塗布する際の毛髪への塗布性を向上させるために、セルロース誘導体を配合する毛髪化粧料組成物が知られている。例えば、特許文献1,2の毛髪化粧料組成物は、ヒドロキシアルキルセルロース又はカチオン化セルロースを含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−089307号公報
【特許文献2】特開2007−126415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、セルロース誘導体を含有する毛髪化粧料組成物は、使用時に水分が蒸発すると、経時的に塗布性が著しく低下するという問題があった。
本発明の目的は、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成され、セルロース誘導体を含有する毛髪化粧料組成物において、塗布性の低下を抑制できる毛髪化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定分子量のポリエチレングリコールを所定量配合することにより、毛髪化粧料組成物の塗布性の低下を抑制できることを見出したことに基づくものである。尚、成分の含有量を示す質量%の数値は、水等の可溶化剤も含めた剤型中における数値である。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、アルカリ剤及び酸化剤を含有し、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成される毛髪化粧料組成物であって、(A)セルロース誘導体、(B)数平均分子量が2000以下のポリエチレングリコールを含有し、前記(A)成分の含有量に対する(B)成分の含有量の質量比が1〜50であることを特徴とする。
【0008】
さらに(C)25℃で液状である、高級アルコール、油脂、炭化水素、高級脂肪酸、及びロウから選ばれる少なくとも一種の油性成分を含有してもよい。前記(C)成分は、25℃で液状の高級アルコールを含んでもよい。前記毛髪化粧料組成物は、アルカリ剤及び(A)成分を含有する第1剤、並びに酸化剤を含有する第2剤を含み、前記第1剤と第2剤が密閉容器内において振とう混合された後、毛髪に適用されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗布性の低下を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る毛髪化粧料組成物を2剤式の酸化染毛剤に具体化した一実施形態について説明する。2剤式の酸化染毛剤は、第1剤と第2剤とから構成され、第1剤と第2剤が混合された後、毛髪の染毛に使用される。また、酸化染毛剤は、3剤式の酸化染毛剤として構成してもよい。
【0011】
<2剤式の酸化染毛剤>
2剤式の酸化染毛剤は、例えばアルカリ剤、酸化染料を含有する第1剤と酸化剤等を含有する第2剤から構成される。
【0012】
(2剤式の酸化染毛剤の第1剤)
第1剤は、アルカリ剤及び酸化染料の他に、例えば(A)セルロース誘導体、(B)数平均分子量が2000以下のポリエチレングリコール、及び(C)25℃で液状である、高級アルコール、油脂、炭化水素、高級脂肪酸、及びロウから選ばれる少なくとも一種の油性成分を含有する。
【0013】
(A)セルロース誘導体は、混合物の伸びをよくし、刷毛等を用いて毛髪に塗布する際の毛髪への塗布性を向上させる。また、複数の薬剤を混合する際の混合性を向上させる。(A)セルロース誘導体の具体例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化セルロース誘導体等が挙げられる。カチオン化セルロース誘導体の具体例としては、例えばヒドロキシエチルセルロースに塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを付加して得られる4級アンモニウム塩の重合体(ポリクオタニウム−10(INCI名称):例えばレオガードG、同GP(ライオン社製)、ポリマーJR−125、同JR−400、同JR−30M、同LR−400、同LR−30M(Amerchol社製)、セルコートSC−230M(アクゾノーベル社製))、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド共重合体(ポリクオタニウム−4:例えばセルコートH−100、同L−200(アクゾノーベル社製))等が挙げられる。これらのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、混合性及び塗布性に優れる観点から、ヒドロキシアルキルセルロース又はその誘導体が好ましく、ヒドロキシエチルセルロースがより好ましい。
【0014】
毛髪化粧料組成物中、すなわち第1剤及び第2剤の混合物中における(A)セルロース誘導体の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上である。(A)セルロース誘導体の含有量が0.01質量%以上であると、毛髪化粧料組成物の伸びをよくすることができる。
【0015】
第1剤及び第2剤の混合物中における(A)セルロース誘導体の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.75質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。(A)セルロース誘導体の含有量が1質量%以下であると、組成物に対する溶解性を向上させることができる。
【0016】
(B)所定分子量のポリエチレングリコールは、毛髪化粧料組成物の経時的な塗布性の低下を抑制する。(B)ポリエチレングリコールの数平均分子量の上限は、2000以下、好ましくは1600以下、より好ましくは1000以下である。数平均分子量を2000以下とすることにより、塗布性の低下を抑制することができる。(B)ポリエチレングリコールの数平均分子量の下限は、特に限定されないが、原料入手の容易性の観点から好ましくは100以上である。
【0017】
第1剤及び第2剤の混合物中における上記(B)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。(B)成分の含有量が0.1質量%以上であると、毛髪化粧料組成物の経時的な塗布性の低下を抑制することができる。
【0018】
第1剤及び第2剤の混合物中における上記(B)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。(B)成分の含有量が10質量%以下であると、染毛性を向上することができる。
【0019】
第1剤及び第2剤の混合物中における(A)成分の含有量に対する(B)成分の含有量の質量比の下限は、1以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上である。かかる質量比を1以上とすることにより、毛髪化粧料組成物の経時的な塗布性の低下を抑制することができる。第1剤及び第2剤の混合物中における(A)成分の含有量に対する(B)成分の含有量の質量比の上限は、50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下である。かかる質量比を50以下とすることにより、染毛性を向上することができる。
【0020】
(C)成分は、毛髪化粧料組成物の経時的な塗布性の低下をより抑制する。そのため毛髪化粧料組成物は、好ましくは(C)成分を配合する。(C)成分は、25℃で液状の高級アルコール、25℃で液状の油脂、25℃で液状の炭化水素、25℃で液状の高級脂肪酸、及び25℃で液状のロウから選ばれる少なくとも一種である。25℃で液状の高級アルコールの具体例としては、例えばイソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、2−ヘキシルデカノール、ラウリルアルコール等が挙げられる。25℃で液状の油脂の具体例としては、例えばアルガニアスピノサ核油、オリーブ油(オリブ油)、ツバキ油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アーモンド油、アボカド油、カロット油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、月見草油、ミンク油、卵黄油等が挙げられる。25℃で液状の炭化水素の具体例としては、例えばα−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワラン、ポリブテン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等が挙げられる。25℃で液状の高級脂肪酸の具体例としては、例えばイソステアリン酸、オレイン酸等が挙げられる。25℃で液状のロウの具体例としては、例えばホホバ油等が挙げられる。これらのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、液状油脂としてツバキ油、ヒマワリ油、及びヒマシ油が好ましく、液状炭化水素としてα−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、及び軽質流動イソパラフィンが好ましく、液状高級脂肪酸としてオレイン酸が好ましい。さらに、製剤安定性に優れる視点から、25℃で液状の高級アルコールが好ましい。
【0021】
第1剤及び第2剤の混合物中における(C)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上である。(C)成分の含有量が0.01質量%以上であると、経時的な塗布性の低下をより抑制することができる。第1剤及び第2剤の混合物中における(C)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。(C)成分の含有量が20質量%以下であると、製剤安定性をより向上できる。
【0022】
第1剤及び第2剤の混合物中における高級アルコール、油脂、炭化水素、高級脂肪酸、及びロウの各含有量の総質量中における(C)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上である。かかる総質量中における(C)成分の含有量が3質量%以上であると、経時的な塗布性の低下をより抑制することができる。
【0023】
第1剤に含有するアルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進させることにより、毛髪の染毛効果を向上する働きをする。アルカリ剤としては、例えばアンモニア、アルカノールアミン、ケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、メタケイ酸塩、硫酸塩、塩化物、リン酸塩、有機アミン、塩基性アミノ酸、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。アルカノールアミンの具体例としては、例えばモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。ケイ酸塩の具体例としては、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が挙げられる。炭酸塩の具体例としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等が挙げられる。炭酸水素塩の具体例としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。メタケイ酸塩の具体例としては、例えばメタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等が挙げられる。硫酸塩の具体例としては、例えば硫酸アンモニウム等が挙げられる。塩化物の具体例としては、例えば塩化アンモニウム等が挙げられる。リン酸塩の具体例としては、例えばリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等が挙げられる。有機アミンの具体例としては、例えば2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、グアニジン等が挙げられる。塩基性アミノ酸の具体例としては、例えばアルギニン、リジン等が挙げられる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これらのアルカリ剤のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、染毛効果の向上の観点から、アンモニア、アンモニウム塩、及びアルカノールアミンが好ましく適用される。
【0024】
第1剤及び第2剤の混合物中におけるアルカリ剤の含有量は、pHが7〜12の範囲となる量で配合されることが好ましい。第1剤及び第2剤の混合物のpHを7以上とすることにより、第2剤に含まれる酸化剤の作用をより促進することができる。第1剤及び第2剤の混合物のpHを12以下とすることにより、酸化染毛剤の塗布による毛髪の損傷をより抑制することができる。
【0025】
酸化染料は、第2剤に含有される酸化剤による酸化重合に起因して発色可能な化合物であり、染料中間体及びカプラーに分類され、酸化染料は好ましくは染料中間体及びカプラーを含んでいる。
【0026】
染料中間体としては、例えばp−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン(p−トルイレンジアミン)、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルアミン、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、o−クロル−p−フェニレンジアミン、4−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−4−ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4−ジアミノフェノール、それらの塩等が挙げられる。塩の具体例としては、例えば塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これらの染料中間体の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0027】
カプラーは、染料中間体と結合することにより発色する。カプラーとしては、例えばレゾルシン、5−アミノ−o−クレゾール、m−アミノフェノール、α−ナフトール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、トルエン−3,4−ジアミン、2,6−ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N−ジエチル−m−アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、それらの塩等が挙げられる。塩の具体例としては、例えば塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これらのカプラーの具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。酸化染料は、毛髪の色調を様々に変化させることができることから、好ましくは、染料中間体の前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種と、カプラーの前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種とから構成される。第1剤は、前記酸化染料以外の染料として、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料を適宜含有してもよい。
【0028】
第1剤及び第2剤の混合物中における酸化染料の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。酸化染料の含有量が0.01質量%以上であると、特に染毛力をより向上できる。
【0029】
第1剤及び第2剤の混合物中における酸化染料の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。酸化染料の含有量が10質量%以下であると、特に可溶化剤を使用する場合、可溶化剤に対する溶解性を向上できる。
【0030】
酸化染毛剤は、必要に応じて、前述した成分以外の成分、例えば可溶化剤、上記以外の水溶性ポリマー、上記以外の油性成分、上記以外の多価アルコール、界面活性剤、pH調整剤、糖、防腐剤、安定剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、酸化防止剤、キレート化剤、紫外線吸収剤等をさらに含有してもよい。
【0031】
可溶化剤は、例えば、第1剤を液状等にする場合に配合される。使用される可溶化剤の例としては、例えば水及び有機溶媒(溶剤)が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、例えばエタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、γ−フェニルプロピルアルコール、ケイ皮アルコール、アニスアルコール、p−メチルベンジルアルコール、α−ジメチルフェネチルアルコール、α−フェニルエタノール、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、フェノキシイソプロパノール、2−ベンジルオキシエタノール、N−アルキルピロリドン、炭酸アルキレン、アルキルエーテル等が挙げられる。これらの可溶化剤のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、第1剤中のその他の成分を溶解する能力に優れることから水が好ましく適用される。溶媒として水が用いられる場合、第1剤と第2剤の混合物中における水の含有量(使用時の含有量)は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。
【0032】
水溶性ポリマーは、酸化染毛剤に適度な粘度を与える。そのため、酸化染毛剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において水溶性ポリマーを含有してもよい。水溶性ポリマーとしては、例えば天然高分子、半合成高分子、合成高分子、及び無機物系高分子が挙げられる。天然高分子の具体例としては、例えばグアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、デキストリン、トリグルコ多糖(プルラン)等が挙げられる。
【0033】
半合成高分子の具体例としては、例えばカチオン化グアーガム、デンプンリン酸エステル、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸塩等が挙げられる。合成高分子の具体例としては、例えばポリビニルカプロラクタム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン−酢酸ビニル(VP/VA)コポリマー、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニル重合体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキル共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、イタコン酸とポリオキシエチレン(以下、「POE」という)アルキルエーテルとの半エステル、又はメタクリル酸とPOEアルキルエーテルとのエステルと、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのアルキルエステルから選ばれる少なくとも一つの単量体と、からなる共重合体が挙げられる。これらの水溶性ポリマーのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0034】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため、酸化染毛剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において油性成分を含有してもよい。油性成分としては、例えば25℃で固体状の油脂、25℃で固体状のロウ、25℃で固体状の高級アルコール、25℃で固体状の炭化水素、25℃で固体状の高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン等が挙げられる。
【0035】
25℃で固体状の油脂の具体例としては、例えばラノリン、シア脂、牛脂、馬脂、水素添加卵黄脂肪油、カカオ脂、パーム脂、水素添加パーム核油、水素添加ヒマシ油、テオブロマグランディフロラム種子脂等が挙げられる。25℃で固体状のロウの具体例としては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ラノリンロウ、コメヌカロウ、サトウキビロウ、虫白ロウ、パームロウ、モンタンロウ等が挙げられる。25℃で固体状の高級アルコールの具体例としては、例えばセチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。25℃で固体状の炭化水素の具体例としては、例えばパラフィン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、オゾケライト、セレシン等が挙げられる。25℃で固体状の高級脂肪酸の具体例としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
【0036】
アルキルグリセリルエーテルの具体例としては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。エステルの具体例としては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10〜30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、2−エチルヘキサン酸セチル等が挙げられる。
【0037】
シリコーンの具体例としては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(PEG/PPG/ブチレン/ジメチコン)コポリマー)、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。これらの油性成分のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0038】
多価アルコールとしては、例えばグリコール、及びグリセリンが挙げられる。グリコールとしては、例えばエチレングリコール、数平均分子量が2000を超えるポリエチレングリコール、高重合ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、及び1,3−ブチレングリコールが挙げられる。グリセリンとしては、例えばグリセリン、ジグリセリン、及びポリグリセリンが挙げられる。これらの多価アルコールのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0039】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分を可溶化させるための成分として酸化染毛剤を使用時に乳化又は可溶化させ、粘度を調整したり粘度安定性を向上させたりする。そのため、酸化染毛剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0040】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルホン脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル、N−アルキロイルメチルタウリン塩、それらの誘導体等が挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンの具体例としては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアミン等が挙げられる。より具体的には、アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、例えばPOEラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。アルキル硫酸塩の具体例として、例えばラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等が挙げられる。アルキル硫酸塩の誘導体の具体例として、例えばPOEラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。スルホコハク酸エステルの具体例として、例えばスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等が挙げられる。N−アルキロイルメチルタウリン塩の具体例として、例えばN−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
【0041】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、ベヘニルジメチルアミン、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリルジメチルアミン、パルミトキシプロピルジメチルアミン、ステアロキシプロピルジメチルアミン、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。塩化アルキルトリメチルアンモニウムの具体例としては、例えば塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化アラキルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0042】
両性界面活性剤の具体例としては、例えばココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0043】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばエーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、アルキルグルコシド等が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばPOEセチルエーテル(セテス)、POEステアリルエーテル(ステアレス)、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル(オレス)、POEラウリルエーテル(ラウレス)、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル、POEポリオキシプロピレンセチルエーテル、POEポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等が挙げられる。
【0044】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばモノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル等が挙げられる。
【0045】
アルキルグルコシドの具体例として、例えばアルキル(炭素数8〜16)グルコシド、POEメチルグルコシド、POEジオレイン酸メチルグルコシド等が挙げられる。これらの界面活性剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0046】
pH調整剤は、酸化染毛剤のpHを調整するために配合してもよい。pH調整剤は、適宜公知のものから選択される。pH調整剤としては、例えば無機酸、有機酸、それらの塩等が挙げられる。有機酸の具体例としては、例えばクエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、レブリン酸、酢酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マンデル酸等が挙げられる。有機酸塩の具体例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。無機酸の具体例としては、例えばリン酸、ピロリン酸等のリン酸類、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。これらは一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
糖の具体例としては、例えばグルコース、ガラクトース等の単糖、マルトース、スクロース、フルクトース、トレハロース等の二糖、糖アルコール等が挙げられる。防腐剤の具体例としては、例えばパラベン、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。安定剤の具体例としては、例えばフェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等が挙げられる。酸化防止剤の具体例としては、例えばアスコルビン酸類及び亜硫酸塩等が挙げられる。キレート化剤の具体例としては、例えばエデト酸(エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩類、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸及びその塩類、並びにヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)及びその塩類等が挙げられる。
【0048】
第1剤の剤型は特に限定されず、具体例として、25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状、固体状等が挙げられる。これらの中で、頭髪への塗布性と、複数剤の混合性を兼ね備える観点からクリーム状の剤型が好ましい。
【0049】
(2剤式の酸化染毛剤の第2剤)
第2剤は、酸化剤の他、上述した可溶化剤等を配合することもできる。酸化剤は、毛髪に含まれるメラニンの脱色性をより向上させる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、及びピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が挙げられる。これらの酸化剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。第2剤中における酸化剤の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上である。酸化剤の含有量が0.1質量%以上の場合、メラニンの脱色性をより向上することができる。また、第2剤中における酸化剤の含有量は、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは9質量%以下であり、さらに好ましくは6質量%以下である。酸化剤の含有量が15.0質量%以下の場合、毛髪の損傷等をより抑制することができる。
【0050】
酸化剤として過酸化水素を第2剤に配合する場合、過酸化水素の安定性を向上させるために、好ましくは、第2剤は、安定化剤、例えばスズ酸ナトリウム、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩を含有する。ヒドロキシエタンジホスホン酸塩としては、例えばヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム、及びヒドロキシエタンジホスホン酸二ナトリウムが挙げられる。第2剤は、酸化染毛剤に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第1剤に含有される成分を本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜含有してもよい。
【0051】
第2剤の剤型は特に限定されず、具体例として、25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状、固体状等が挙げられる。第1剤がクリーム状の剤型が適用される場合、第2剤の剤型は第1剤との混合性を向上させる観点から乳液等の液状又はクリーム状の剤型であることが好ましい。
【0052】
<3剤式の酸化染毛剤>
例えば、2剤式の酸化染毛剤の第1剤について、アルカリ剤を含有する剤と、アルカリ剤以外の組成を有する剤の2つに分け、3剤式の酸化染毛剤として構成してもよい。この場合、3剤式の酸化染毛剤は良好な製剤安定性を有する。このようにして、製剤安定性等の観点から、第1剤又は第2剤に含有される各成分を、複数剤に分けて保存してもよい。酸化染毛剤を3剤式以上に構成した場合であっても、本発明の効果を奏する限りにおいて依然として本発明に含まれるものとする。
【0053】
<酸化染毛剤の混合物の調製>
酸化染毛剤は、使用時に上述した各剤を混合して混合物が調製される。混合物の調製は、所定容量の密閉容器内に各剤を所定量投入し、振とう混合することにより調製してもよく、トレー等の器内に各剤を投入し、刷毛、撹拌棒等を用いて撹拌混合により調製してもよい。例えば、第1剤がクリーム状の剤型、第2剤が乳液等の液状又はクリーム状の剤型の場合、混合操作のしやすさから、好ましくは100〜300mLの筒状の密閉可能な容器が用いた振とう混合が好ましい。また、容器内における混合物の総量は、混合性向上の観点から密閉容器の内容量に対して20〜80容量%であることが好ましい。各剤が投入された密閉容器による振とう混合は、手動で上下・左右の往復運動や回転運動等により行ってもよく、加振機等を用いて機械的に行ってもよい。得られた酸化染毛剤の混合物は、必要量だけ薄手の手袋をした手、コーム(櫛)又は刷毛、吐出口を有する蓋又は櫛付き容器等により毛髪に塗布される。なお、本発明において、所定時間経過後にコーミング等を行う行為も塗布に含めるものとする。
【0054】
本実施形態に係る酸化染毛剤は以下の利点を有する。
(1)本実施形態に係る酸化染毛剤は、(A)セルロース誘導体、(B)数平均分子量が2000以下のポリエチレングリコールを所定の配合比率で含有する。(A)成分により、混合物の伸びをよくし、刷毛等を用いて毛髪に塗布する際の毛髪への塗布性を向上させ、(B)成分により、使用時における経時的な塗布性の低下を抑制できる。また、それにより、均染性を向上することができる。
【0055】
(2)本実施形態において、(C)成分として25℃で液状の高級アルコールが用いられる場合、製剤安定性をより向上できる。
(3)(A)成分としてヒドロキシエチルセルロースを使用し、第1剤をクリーム状の剤型として構成した場合、ヒドロキシエチルセルロースの安定性をより向上できる。
【0056】
(4)第1剤と第2剤の振とう混合の操作として、100〜300mLの筒状の密閉可能な容器が用いられ、その内容量に対して混合物の総量が20〜80容量%である場合、使用時の混合性をより向上できる。
【0057】
(5)各剤が投入された密閉容器が、手動で上下方向への往復運動により振とう混合される場合、容易に且つ短時間に混合物を調製できる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0058】
・上記多剤式の酸化染毛剤について、酸化染料の配合を省略し、多剤式の毛髪脱色・脱染剤として構成してもよい。かかる構成においても(A)成分により、混合物の伸びをよくし、刷毛等を用いて毛髪に塗布する際の毛髪への塗布性を向上させ、(B)成分により、使用時における経時的な塗布性の低下を抑制できる。また、それにより、脱色・脱染の均一性を向上することができる。
【0059】
・第1剤又は第2剤の粘度範囲は、特に限定されないが、例えば乳液の剤型の場合、25℃における粘度が好ましくは3000〜10000ミリパスカル秒(mPa・s)、クリーム状又はゲル状の剤型の場合、25℃における粘度が好ましくは10000〜50000mPa・sである。粘度は、例えばB型粘度計を用い、25℃及び1分間の測定条件で求めることができる。B型粘度計の具体例としては、例えばBL型粘度計VISCOMETER(東機産業社製)を挙げることができる。使用するロータ及び回転速度は、測定機器の測定可能な粘度範囲に従い適宜選択される。例えば、3号ロータを用い、120rpmの条件で求めることができる。
【0060】
・上記実施形態の毛髪化粧料組成物では、(A)〜(C)成分が、使用時において、混合物中に含有されていれば、本発明の効果を奏することができる。したがって、毛髪化粧料組成物が複数剤型として構成される場合、保存時において、(A)〜(C)成分はいずれの剤中に含有されてもよい。
【0061】
・上記実施形態において、毛髪化粧料組成物を構成する第1剤、第2剤、又は第3剤に含有される各成分の一部を別剤として構成し、剤型の数を増やしてもよい。
・上記実施形態において、上述した酸化染料以外の染料として、本発明の効果を阻害しない範囲内において、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された直接染料を適宜含有してもよい。
【実施例】
【0062】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。尚、本発明は、実施例欄記載の構成に限定されるものではない。以下、実施例4は、参考例4に置き換えるものとする。
(試験例1:酸化染毛剤)
酸化染毛剤として、表1,2に示す各成分を含有するクリーム状の剤型の第1剤、及び表3に示す各成分を含有するクリーム状の剤型である第2剤をそれぞれ調製した。なお、表1〜4における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。表中「成分」欄における(A)〜(C)の表記は、本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。一方、表中「成分」欄における「b」の表記は、本願請求項記載の各成分の対比化合物を示す。
【0063】
次に、各実施例及び比較例において、酸化染毛剤の第1剤及び第2剤を2:3の比率で混合し、酸化染毛剤の混合物を調製した。第1剤及び第2剤の混合は、高さ12cm、直径4.5cmの円筒状の蓋付き密閉容器(内容量200mL)を用い、第1剤と第2剤の合計100mLを充填後、上下方向へ30回往復運動により振とう混合した。
【0064】
次に、長さ10cmの白毛、黒毛及び白毛交じりの黒毛(30%白毛)の毛束サンプル(ビューラックス社製)(以下、単に毛束という。)に刷毛を用いて混合物を塗布し、室温(30℃)にて25分間放置した。次に、毛束に付着した酸化染毛剤を水で洗い流した後、毛束にシャンプー(ホーユー社製のビゲントリートメントシャンプー)を2回、及びリンス(ホーユー社製のビゲントリートメントリンス)を1回施した。続いて、毛束を温風で乾燥した後、一日間放置した。染毛処理が施された毛束について、下記に示す方法に従い染毛性の評価を行った。また、毛束に混合物を塗布する際の塗布性について、混合物の調製直後と混合物の調製後、所定時間経過後にそれぞれ評価した。
【0065】
(混合物の調製直後の塗布性)
パネラー5名が、上記各例の混合物の塗布性について、以下の基準で評価することにより、混合物の調製直後の塗布性が優れるか否かについて判断した。混合物の伸びが優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)及び不良(1点)の5段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を下記表に示す。
【0066】
(所定時間経過後の塗布性)
パネラー5名が、上記各例の混合物の調製後25分後の塗布性について、以下の基準で評価することにより、調製後25分後の塗布性が優れるか否かについて判断した。混合物を塗布した毛束について、塗布完了から20分後に、コーミングを行い、塗布した混合物の乾き具合及びコーミング操作が滑らかであるか否かを総合的に評価し、優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)及び不良(1点)の5段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を下記表に示す。
【0067】
(染毛性)
パネラー5名が標準光源下で目視にて、上記各例の染毛処理後の毛束の色合いについて、以下の基準で評価することにより、染毛性が優れるか否かについて判断した。優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)、及び不良(1点)の5段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を下記表に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
表1,2に示されるように、各実施例は、各評価項目について3以上の結果であることが確認された。表2に示されるように、(A)成分を含有しない比較例1は、各実施例に対して、混合物の伸びが悪く、混合物の調製直後の塗布性が劣ることが確認された。(B)成分を含有しない比較例2は、各実施例に対して、所定時間経過後の塗布性の評価が劣ることが確認された。(B)成分の代わりに高重合ポリエチレングリコール(数平均分子量40万)を使用した比較例3は、溶媒に対する溶解性が著しく劣り、ダマ(溶け残り)が生じたため、各評価試験を行っていない。なお、実施例1,6及び比較例1より、セルロース誘導体を使用した場合における経時的な塗布性の低下は、(B)成分の配合量を増やすことにより抑制されることが確認された。
【0072】
なお、上記各実施例及び比較例の酸化染毛剤について、表3に示されるクリーム状の第2剤を、乳液の剤型である第2剤に置き換えて評価した場合も、表1,2と同様の評価が得られたことを確認している。なお、乳液の剤型である第2剤は、表4に示される各成分を混合することにより調製されたものを採用し、試験を行っている。
【0073】
(試験例2:脱色剤)
表1に示される実施例1,9の酸化染毛剤の第1剤について、染料の添加を省略して、各脱色剤の第1剤(実施例1−2,9−2)をそれぞれ調製した。かかる脱色剤について、表4に示される乳液の剤型である第2剤を用いて、上記と同様の処理方法により毛束を脱色処理した。得られた毛束について、染毛性と同様の基準により、脱色性が得られているか否かについて評価した。
【0074】
その結果、実施例9−2は、実施例1−1に対して、脱色性の評価が劣ることが確認された。
(試験例3:酸化染毛剤の第1剤の安定性)
実施例1,9の各酸化染毛剤の第1剤について、安定性について評価を行った。各例の第1剤をガラス瓶に入れ、60℃の恒温漕中で24時間保存した後、第1剤の分離状態を目視にて評価することによりクリーム状の第1剤の保持効果が良いか否かを判断した。
【0075】
その結果、実施例9は、実施例1に対して、第1剤の安定性が劣ることが確認された。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。(イ)前記第1剤はクリーム状の剤型である前記毛髪化粧料組成物。