特許第6821169号(P6821169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6821169
(24)【登録日】2021年1月8日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】刷版加工方法及び刷版加工装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 27/00 20060101AFI20210114BHJP
   B41F 13/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   B41F27/00 A
   B41F13/00
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-136125(P2016-136125)
(22)【出願日】2016年7月8日
(65)【公開番号】特開2018-1731(P2018-1731A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】591005316
【氏名又は名称】西研グラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 哲也
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−126166(JP,A)
【文献】 特開2004−025501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 27/00
B41F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪転機のカラー印刷部にて複数色のカラー画像を形成するための刷版を位置決めし、当該刷版に位置決め孔と係止片を加工する刷版加工方法において、
前記カラー印刷部での基準色に対する他の色の相対的なねじれ量を予め求め、
刷版を位置決めするときに、当該刷版上の任意の位置から選択される回転中心位置を中心として、前記ねじれ量を補正するための補正回転量だけ回転させて位置決めすることを特徴とする刷版加工方法。
【請求項2】
前記回転中心位置を中心として前記補正回転量だけ回転させる動作は、刷版の前後左右方向の動作と刷版の回転方向の動作との組合せによる請求項1に記載の刷版加工方法。
【請求項3】
前記回転中心位置を刷版上のカラコンマークの位置とする請求項1又は2に記載の刷版加工方法。
【請求項4】
輪転機のカラー印刷部にて複数色のカラー画像を形成するための刷版を位置決めし、当該刷版に位置決め孔と係止片を加工する刷版加工装置であって、
刷版を保持し前後左右方向及び回転方向に移動させて位置決めする位置決め手段と、
前記位置決め手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、刷版を位置決めするときに、当該刷版上の任意の位置から選択される回転中心位置を中心として、予め入力された前記カラー印刷部での基準色に対する他の色の相対的なねじれ量を補正するための補正回転量だけ回転させて位置決めするように前記位置決め手段を制御することを特徴とする刷版加工装置。
【請求項5】
前記回転中心位置を刷版上のカラコンマークの位置とする請求項4に記載の刷版加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輪転機のカラー印刷部にて複数色のカラー画像を形成するための刷版に、位置決め孔と係止片を加工する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
輪転機のカラー印刷部では、複数色(典型的にはK(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)及びY(イエロー)の4色)ごとの刷版を用いて重ね刷りをしてカラー印刷を行う。このとき、カラー印刷部において各色の刷版により印刷される絵柄の位置にずれがあると、得られる印刷物は色ずれしたものとなる。そこで従前より、刷版に加工形成する位置決め孔と係止片の加工精度向上や、刷版を版胴に装着するときの位置決め精度向上といった対策が講じられてきた。
【0003】
しかし、これらの対策を講じても色ずれの問題は解消されていない。その原因の一つが非特許文献1で述べられている「V字ねじれ現象」の発生である。同文献によるとV字ねじれ現象とは、「4ハイタワー・ユニット中心の見当を合わせると、両端のレジスターマークは1段目(基準色K)に対して2段目〜4段目のCMYが上方向(遅れ方向)に位置する」という現象であると説明されており、本発明者らも同様のV字ねじれ現象を確認している。
【0004】
図4は、本発明者らが確認したV字ねじれ現象の概念図である。同図には、タワーユニット式のカラー印刷部、具体的には、1段目(基準色K)及び2段目(C)を1階に配置し、3段目(M)及び4段目(Y)を2階に配置した4頁幅(2頁幅×2)のカラー印刷部で確認されたV字ねじれ現象のうち、2頁幅分を中段に示している。すなわち、基準色Kに対して同じ1階に配置したCのねじれは小さいが、2階に配置したM及びYについては約0.30mmのねじれが確認された。このねじれは、輪転機側の調整により下段に示すように2頁幅の中央が0になるように調整可能であるが、それでも約0.15mmのねじれが残ることになる。
【0005】
このようなV字ねじれ現象に対して、非特許文献1では、CTP(Computer To Plate)による見当調整方法が提案されている。
【0006】
その第一の方法は、図5に示すように刷版10内の各頁の画像(紙面)11をずらして描く方法である。この方法では、1頁単位で刷版が回転しているような効果が得られ、これによりある程度のねじれの補正が可能となる。しかし、新聞などのように2頁の見開き面がある場合は2頁にまたがって画像がつながっているので、この第一の方法では対応できない。
【0007】
次に第二の方法は、図6に示すように刷版加工用の基準マーク(トンボ)12をずらして描く方法である。基準マーク12は刷版加工装置で刷版に位置決め孔と係止片を加工形成するときの位置決めの基準となるので、この基準マーク12をずらして描くことでねじれの補正が可能となる。しかし、刷版加工装置において刷版の位置決めの際に刷版を回転させるときの回転軸は必ずしも刷版の中心にはなく、刷版加工装置ごとに回転軸の位置は異なることから、CTP側では刷版加工装置1台ごとに合せていわゆる「絵合せ」が必要となり、刷版加工装置側では、一度調整したら刷版の搬入位置などが変えられなくなり、装置据付後の微調整などにも制限がかかることになる。
【0008】
このようにV字ねじれ現象に対してCTPによる対応には、上述のような諸問題があり十分な効果が得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】新聞技術2010III(No.213),p.35〜p.37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、V字ねじれ現象に対して刷版加工装置側で対応可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一観点によれば、次の刷版加工方法が提供される。
「輪転機のカラー印刷部にて複数色のカラー画像を形成するための刷版を位置決めし、当該刷版に位置決め孔と係止片を加工する刷版加工方法において、
前記カラー印刷部での基準色に対する他の色の相対的なねじれ量を予め求め、
刷版を位置決めするときに、当該刷版上の任意の位置から選択される回転中心位置を中心として、前記ねじれ量を補正するための補正回転量だけ回転させて位置決めすることを特徴とする刷版加工方法。」
【0012】
また、本発明の他の観点によれば、次の刷版加工装置が提供される。
「輪転機のカラー印刷部にて複数色のカラー画像を形成するための刷版を位置決めし、当該刷版に位置決め孔と係止片を加工する刷版加工装置であって、
刷版を保持し前後左右方向及び回転方向に移動させて位置決めする位置決め手段と、
前記位置決め手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、刷版を位置決めするときに、当該刷版上の任意の位置から選択される回転中心位置を中心として、予め入力された前記カラー印刷部での基準色に対する他の色の相対的なねじれ量を補正するための補正回転量だけ回転させて位置決めするように前記位置決め手段を制御することを特徴とする刷版加工装置。」
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、V字ねじれ現象に対して刷版加工装置側で対応し、ねじれを刷版単位で補正することができる。しかも、ねじれを補正するための刷版の回転は当該刷版上の任意の位置から選択される回転中心位置を中心として行われ、その回転量も予め求めておいたねじれ量に対応する任意の回転量であるため、刷版の大きさや画像の内容(見開き等)にかかわらず、また、いかなる刷版加工装置よっても同様にねじれを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例による刷版加工装置の構成を概念的に示す平面図である。
図2】本発明の一実施例による刷版加工方法の手順(後述する手順3−1)を概念的に示す平面図である。
図3】本発明の一実施例による刷版加工方法の手順(後述する手順3−2)を概念的に示す平面図である。
図4】V字ねじれ現象を概念的に示す説明図である。
図5】V字ねじれ現象に対する従来の対応方法(前述の第一の方法)を概念的に示す平面図である。
図6】V字ねじれ現象に対する従来の対応方法(前述の第二の方法)を概念的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施例による刷版加工装置の構成を概念的に示す平面図である。同図に示す刷版加工装置は、搬送手段20、位置決め手段30、地側及び天側のそれぞれに撮影手段40A,40B、パンチユニット50A,50B、曲げユニット60A,60B、並びに制御手段70を備える。
【0017】
搬送手段20は、例えば搬送ベルトからなり、刷版を図1において上から下に向けて搬入し、その後搬出する。
位置決め手段30は、例えばバキューム付テーブルからなり、搬送手段20により搬入された刷版を保持し、その刷版を前後左右方向(xy方向)及び回転方向(θ方向)に移動させて位置決めする。すなわち、位置決め手段30は、刷版をバキューム力等により保持する機能と、保持した刷版を前後左右方向(xy方向)及び回転方向(θ方向)に自在に移動させる機能を有する。
撮影手段40A,40Bは、例えばCCDカメラからなり、刷版上の基準マーク12(図4参照)を認識する機能を有する。
パンチユニット50A,50Bは、位置決めされた刷版に位置決め孔を加工形成する。また、曲げユニット60A,60Bは、位置決めされた刷版に係止片を加工形成する。
制御手段70は、以上の搬送手段20、位置決め手段30、撮影手段40A,40B、パンチユニット50A,50B及び曲げユニット60A,60Bの各動作を制御する。
【0018】
以上の基本構成において、各構成のより具体的な構成例と、刷版に位置決め孔と係止片を加工する基本的な手順については、例えば特開2004−25501号公報に開示されているように周知である。そこで以下では、本発明の特徴である、V字ねじれ現象によるねじれ量を補正する手順を中心に説明する。
【0019】
(1)手順1(本発明の特徴)
予め、対象の刷版を使用する輪転機のカラー印刷部において、基準色(典型的にはK)に対する他の色(典型的にはC、M、Y)の相対的なねじれ量を求めるとともに、そのねじれ量を補正するための回転量(補正回転量)を求め、その補正回転量を制御手段70に入力する。補正回転量の具体例は、図4に破線で示した程度のねじれ量(0.15mm)について本発明者らが計算したところ、0.008°となった。この補正回転量は、使用する刷版加工装置の位置決め手段30の回転軸の位置データ、刷版のカラコンマークの位置データ及びねじれ量のデータなどから計算可能で、その計算は制御手段70によって実行可能である。
【0020】
(2)手順2(従来技術)
従来技術に従い、撮影手段40A,40Bにより認識した刷版の基準マークの位置情報に基づき、制御手段70が位置決め手段30を動作させて、刷版を水平にする。
【0021】
(3)手順3(本発明の特徴)
本実施例では、刷版上のカラコンマークの位置を回転中心位置として、手順2で水平にした刷版を手順1で求めた補正回転量だけ回転させて位置決めするが、これは以下の手順3−1及び手順3−2の組合せにより実現可能である。
【0022】
(手順3−1)
図2に誇張して示すように手順2で水平にした刷版10を、位置決め手段30の回転軸周りに手順1で求めた補正回転量だけ回転させる。ただし、この回転動作だけでは、図2に示すように回転前後でカラコンマーク13の位置がずれるので、次の手順3−2を実行する。
【0023】
(手順3−2)
図3に誇張して示すように、位置決め手段30の前後左右方向(xy方向)の動作により刷版10を平行移動(xy移動)させて、カラコンマーク13の位置を手順3−1の回転動作前の位置に合せる。この手順3−2における刷版のxy移動量と移動方向は、使用する刷版加工装置の位置決め手段30の回転軸の位置データ、刷版のカラコンマークの位置データ及び補正回転量のデータなどから、制御手段70が計算により決定する。
【0024】
このように手順3−1及び手順3−2の組合せにより、刷版がカラコンマークの位置を回転中心位置として手順1で求めた補正回転量だけ回転することになる。ここで、本実施例では回転中心位置を刷版上のカラコンマークの位置としたが、手順3−1及び手順3−2の組合せによれば、カラコンマークの位置以外の刷版上の任意の位置を回転中心位置として、手順1で求めた補正回転量だけ回転させることができる。本実施例において回転中心位置をカラコンマークの位置とした理由は、カラコンマークは輪転機において様々な制御に利用されているので、この手順3によりカラコンマークの位置がずれないようにすることが好ましいと考えられるからである。無論、他の事情によりカラコンマークの位置以外の位置を回転中心位置としてもよい。
【0025】
なお、上記では説明の便宜上、手順3−1と手順3−2を分けて示したが、実際は、制御手段70が位置決め手段30の前後左右方向(xy方向)の動作と回転方向(θ方向)の動作を同時に制御して、手順3−1と手順3−2を同時に実行することができる。また、図2及び図3では、回転及び平行移動の動作を分かりやすくするために各動作を誇張して示したが、実際はわずかな動作量であり、後述する位置決め孔及び係止片の加工に支障を来すことはない。
【0026】
(4)手順4(従来技術)
従来技術に従い、パンチユニット50A,50Bによって刷版の地側及び天側にそれぞれ位置決め孔を加工する。
【0027】
(5)手順5(従来技術)
従来技術に従い、曲げユニット60A,60Bによって刷版の地側及び天側にそれぞれ係止片を加工する。
【0028】
以上のとおり本発明によれば、V字ねじれ現象に対して刷版加工装置側で対応し、ねじれを刷版単位で補正することができる。しかも、ねじれを補正するための刷版の回転は当該刷版上の任意の位置から選択される回転中心位置を中心として行われ、その回転量も予め求めておいたねじれ量に対応する任意の回転量であるため、刷版の大きさや画像の内容(見開き等)にかかわらず、また、いかなる刷版加工装置よっても同様にねじれを補正することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 刷版
11 刷版内の各頁の画像(紙面)
12 基準マーク(トンボ)
13 カラコンマーク
20 搬送手段
30 位置決め手段
40A,40B 撮影手段
50A,50B パンチユニット
60A,60B 曲げユニット
70 制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6