特許第6821187号(P6821187)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6821187ランジュバン型超音波振動子の支持構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6821187
(24)【登録日】2021年1月8日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】ランジュバン型超音波振動子の支持構造体
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/06 20060101AFI20210114BHJP
【FI】
   B06B1/06 Z
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-84044(P2017-84044)
(22)【出願日】2017年4月4日
(65)【公開番号】特開2018-176136(P2018-176136A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】305027353
【氏名又は名称】有限会社UWAVE
(74)【代理人】
【識別番号】100074675
【弁理士】
【氏名又は名称】柳川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】大西 一正
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 実開平6−26398(JP,U)
【文献】 特開平6−34084(JP,A)
【文献】 特開2010−38259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側から、リアマス、分極処理済の圧電素子、支持体、そしてフロントマスがこの順に積み重ねられ、ボルト締めにより固定されてなるランジュバン型超音波振動子を、下側で開口した支持用シリンダの内部に固定してなるランジュバン型超音波振動子の支持構造体であって、
上記支持体が、フロントマスの側面から横方向に突き出すようにして一体として形成された環状体で、その外周面の上側表面の端面がテーパ形状とされた支持枠体とされ、
上記支持用シリンダは、外周面下端部には雄ネジ部が形成され、内周面下端部がテーパ形状とされ、
そして
別に用意した相対的に小径の内径部を下側に、そして相対的に大径の雌ネジ部を上側に持つ振動ナットの該内径部の上側に、フロントマスの支持枠体が位置するように配置した状態で、フロントマスの支持枠体の上側表面のテーパ面と支持用シリンダ内周面下端部のテーパ面とが接するようにして、支持用シリンダの外周面下端部の雄ネジ部と振動ナットの雌ネジ部とをネジ結合により互いに固定してなることを特徴とするランジュバン型超音波振動子の支持構造体。
【請求項2】
フロントマスの振動方向と振動ナットの振動方向とが逆となる請求項1に記載のランジュバン型超音波振動子の支持構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランジュバン型超音波振動子の支持構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子を超音波発生源として利用する超音波振動子は各種の構成のものが知られているが、その代表的な構成として、金属製のフロントマスと金属製のリアマスの間に固定された圧電素子から構成されたランジュバン型超音波振動子が知られている。なかでも、圧電素子をフロントマスとリアマスの間でボルトにより接続し、高圧で締付け固定した構造のボルト締めランジュバン型超音波振動子は高エネルギーの超音波振動が可能なため、各種材料の切削加工、塑性加工、砥粒加工などを行うための工具に付設して用いる超音波加工での利用が検討されている。
【0003】
ボルト締めランジュバン型超音波振動子を含め各種の超音波振動子の構成は既に知られているが、念のため、代表的なボルト締めランジュバン型超音波振動子の構成の形態を添付の図1図2を参照して以下に簡単に説明する。
【0004】
図1は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子1の代表的な構造の例を示す図である。ボルト締めランジュバン型超音波振動子1は、金属製のフロントマス2と金属製のリアマス3の間に、支持体8そして圧電素子5a、5b、5c、5d(例:圧電セラミック板)を挟み、ボルト6を用いてフロントマス2、リアマス3を互いに締付けた構造を有する。図1において、圧電素子5a、5b、5c、5dに記入されている矢印は分極方向を示す。なお、圧電素子5a、5b、5c、5dには、電気エネルギーを印加するための端子として利用する電極片(通常はリン青銅などの電極片を用いる)7a、7b、7c、7dが接続されている。
【0005】
図2は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子の代表的な別の構造の例を示す図である。ボルト締めランジュバン型超音波振動子1は、まずフロントマス2とホーン4そして支持体8が一体で製作されている。そして、フロントマス2、リアマス3の間に、圧電素子5a、5b(例:圧電セラミック板)、電極片7a、7bを挟み、ボルト6とナット9を用いて締付けた構造を有する。
【0006】
図3は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子を超音波振動源として用いる超音波研削加工装置(研磨機)の構成例を示す図である。図3において、超音波研削加工装置13は、支持用シリンダ10内の下端部にホーン4を介して接続された研削具14を備えたランジュバン型超音波振動子1を収容し、このランジュバン型超音波振動子1を軸受により回転可能に支持されている。ランジュバン型超音波振動子1の回転は、サーボユニットに接続されたACスピンドルモータに駆動される。図3の装置では、ランジュバン型超音波振動子の超音波振動のための電気エネルギーは、外部に設けた電気エネルギー供給源15に接続しているカーボンブラシとスリップリングとから構成されている接触型給電装置を介して供給される。
【0007】
ところで、超音波加工装置において各種工具に超音波振動を与えることにより期待される効果は、当該工具による切削抵抗の削減、加工速度の向上、加工精度の向上などである。しかし、これまでに製造され、実際の加工作業に使用されてきた超音波加工装置ではその期待された効果が充分に得られていない。このため現在の時点では超音波加工装置の普及はあまり進んでいない。従って、超音波加工の充分な普及を進めるためには、超音波加工作業の実施において超音波振動子の支持剛性と、支持位置の精度を高めそして超音波振動の安定性の改良が必要であるとされている。
【0008】
本発明の発明者は、これまでに超音波振動子の支持剛性の向上が期待できる超音波振動子の改良発明を案出し、特許出願を行ってきた。たとえば、それらの改良発明の内最近の発明は特許文献1に開示されている。
【0009】
特許文献1には、工具と超音波振動体との振動複合体を高い安定性を以って支持、かつ超音波振動体において発生する超音波エネルギーの該複合体の支持体(固定支持体)への露出を低いレベルに抑制することによって、振動エネルギーの工具への高い効率での印加を可能にする支持構造として、工具を備えた超音波振動体にフランジを付設し、フランジの片側面を、別に用意した固定体の支持面に応力を掛けた状態で接触させることにより係合支持する支持構造(但し、超音波振動体のフランジは、固定体のフタンジ支持面には接合されてなく、また固定体の支持面に接触して係合支持された超音波振動体のフランジは、該超音波振動体が振動状態にある時にはフランジの厚み方向に超音波振動する構造とされる)が開示されている。
【0010】
また、非特許文献1においては、振動系の支持について記述されている。そこには「振動子とホーンは一体に接合されているが加工のためにはどこかに固定せねばならぬ、支持方法については幾つかあるが、いずれもホーンまたは振動子の節部を利用して固定する方式をとっている。しかし、振動系の共振周波数は加工時に、常に変動しているのと工具端で加工によりエネルギーが消費されるため、節点部分も僅かながら振動する。したがって、支持方法を合理的にすることが本加工法の加工精度、能率を向上する大きな要素である。実際には振動子の冷却をも含めて種々の方式がとられている。」と記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開 WO 2014/017460 AI
【特許文献2】特開 2007−1005
【特許文献3】特開平7−222468
【特許文献4】特開 2006−142469
【特許文献5】特開 2016−93855
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】実吉純一、「超音波技術便覧」、日刊工業新聞社、昭和60年12月、pp1928
【非特許文献2】岩田佳雄ほか、「機械振動学」、株式会社 数理工学者、2011年5月、p112〜p119
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
機械加工に用いるランジュバン型超音波振動子には、大きな機械的負荷が加わる。これに対して現在まで、ランジュバン型超音波振動子は、無負荷の状態での設計を行って、製作している。したがって、負荷が加わった時には、その性能を充分に発揮できないという大きな問題が存在する。
【0014】
機械加工に用いるランジュバン型超音波振動子には、大きな機械的負荷が加わる。そのためランジュバン型超音波振動子を支持固定するため、ランジュバン型超音波振動子にフランジを設けているが、大きな負荷に見合うフランジの剛性を高めるためにフランジの厚さを大きくすると、ランジュバン型超音波振動子の振動がフランジに伝播してしまい、フランジを支持する支持部材と一体で振動する。そこで支持部材をさらに他の支持部材で支持固定すると、ランジュバン型超音波振動子の振動の大きさが減少してしまうという問題が存在する。
【0015】
特許文献1に記載の新たな超音波振動子の支持構造を利用する超音波加工装置により、従来知られていた構造の超音波振動子を用いる超音波加工装置の問題点については少なからず解決が見られている。しかしながら、特許文献1に記載の超音波振動子の支持構造を利用した超音波加工装置についても、実用的に充分に満足できる加工精度の向上が得られないことが判明した。
【0016】
従って、本発明の課題は、ランジュバン型超音波振動子に加わる大きな負荷に適したランジュバン型超音波振動子の支持方法とその駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の発明者は、特許文献1に記載の新たなランジュバン型超音波振動子の支持構造の改良を目的として、改めてランジュバン型超音波振動子における超音波振動の発生メカニズムの検討を行うことにした。そして、まず超音波振動特性を考慮せず、ランジュバン型超音波振動子の中心軸と支持部材の中心軸を一致させ、かつ剛性を高めて支持部材に支持固定する構造を検討した。
【0018】
回転軸に、回転部品を接続する手段として以下のことが一般に知られ、精度の高い要求にはテーパー嵌合が用いられる。「スピンドルやシャフトといった軸回転部品とギヤ/プーリーといった歯車/滑車部品とを接続する際、一般に図11のようにストレートの内外径部品を接続させる場合と、テーパー形状の雄雌を接続させる場合があるが、要求精度が高ければ高いほどテーパー嵌合が採用される傾向がある。ストレートの雄雌で嵌め合わせた上でクサビを差し込んで固定する方法もあるが、精度の面ではテーパー嵌合には及ばない。
ストレート接続の場合、両部品が嵌め合うためのクリアランスが振れの要因となる。さらに、こうした軸部分の振れは、プーリーやギヤにとって最も重要であるプーリー溝や歯のかみ合わせ面において、より増幅された形で現れ、不必要な音や振動を発生さる。また高い嵌合精度で作られた遊びの少ないストレート接続は、双方の部品が食い付いて外れなくなる、いわゆる「カジリ」を生じてしまうことが多く、メンテナンス性の面でも最善であるとは言えない。
ところがテーパー嵌合の場合、しっかりした「ラージ当たり(大端合わせ)」が出ていて、かつ、テーパー基準で溝や歯が仕上げられていれば、不必要な音や振動の発生を激減させることができる。」
【0019】
そこで、本発明にはテーパー嵌合(あるいは、テーパ嵌合)を用いることにした。本発明では、回転軸が支持用シリンダに相当し、回転部品が支持体に相当する。支持体とフロントマスの中心軸を一致させるため、支持体のテーパー基準により支持体とフロントマスを一体で製作する。すなわち、支持体を、フロントマスの頂部付近にて環状に突出した形態の支持枠体として形成する。またテーパー基準となる支持体は、高い精度のテーパー嵌合するための形状と剛性が必要である。また、テーパー嵌合の効果を生じさせるためにはテーパー部の長さが必要であるため、支持体の厚さを3mm以上とすることが望ましい。これにより、支持体の曲げ剛性も向上する。
これまでに記載した要件を考慮して、本発明は、上側から、リアマス、分極処理済の圧電素子、支持体、そしてフロントマスがこの順に積み重ねられ、ボルト締めにより固定されてなるランジュバン型超音波振動子を、下側で開口した支持用シリンダの内部に固定してなるランジュバン型超音波振動子の支持構造体であって、
上記支持体が、フロントマスの側面から横方向に突き出すようにして一体として形成された環状体で、その外周面の上側表面の端面がテーパ形状とされた支持枠体とされ、
上記支持用シリンダは、外周面下端部には雄ネジ部が形成され、内周面下端部がテーパ形状とされ、
そして
別に用意した相対的に小径の内径部を下側に、そして相対的に大径の雌ネジ部を上側に持つ振動ナットの該内径部の上側に、フロントマスの支持枠体が位置するように配置した状態で、フロントマスの支持枠体の上側表面のテーパ面と支持用シリンダ内周面下端部のテーパ面とが接するようにして、支持用シリンダの外周面下端部の雄ネジ部と振動ナットの雌ネジ部とをネジ結合により互いに固定してなることを特徴とするランジュバン型超音波振動子の支持構造体と記述することができる。
なお、本発明のランジュバン型超音波振動子の支持構造体は、フロントマスの振動方向と振動ナットの振動方向とが逆となることが好ましい。
【0020】
まず、図4(A)の平面図とその切断線A−Aで切断した断面で示す図4(B)に示すランジュバン型超音波振動子1を試作した。ランジュバン超音波振動子1は、鋼製のフロントマス2と支持体8を一体で構成した構造にボルト6をねじ込み、それに板厚方向に分極した圧電素子5a、リン青銅製の電極板7a、板厚方向に分極された圧電素子5b、リン青銅製の電極板7bを順に並べ、メネジを持つ鋼製のリアマス3を鋼製のボルト6にねじ込むことにより作成する。フロントマスには、工具を装着するためのテーパー孔25を設けている。なお、支持体8の厚さは5mmであり、従来のフランジに比較して十分に厚い。このように厚い支持体は、振動が支持体に伝播し、その先に接続する支持具に振動が伝播してしまうために従来は使用されてない。ここでは、図面を簡略にするために圧電素子を2個としたが、実際には、それより多く使うことがある。
【0021】
そして、上記ランジュバン型超音波振動子1を支持するために、図5(A)の平面図とその切断線B−Bで切断した断面である図5(B)を用いて、支持用シリンダ、ランジュバン超音波振動子1の支持体8のそれぞれのテーパー部を嵌合して接続した状態を説明する。ランジュバン超音波振動子1を支持するために鋼製の支持用シリンダ10の外側に雄ネジを設け、支持用シリンダ10の内側に鋼製の支持体8と嵌合するためのテーパー部を設ける。そして、鋼製の振動ナット11を締付けることにより、ランジュバン型超音波振動子1の支持体8と支持用シリンダ10をテーパー嵌合することにより支持固定した。支持用シリンダ10の外側のオネジと振動ナット11のメネジで支持体8を締め付け支持する理由は、支持用シリンダ10のテーパー部と支持体8のテーパー部の全体を均一に締付けるためである。これにより、ランジュバン型超音波振動子の中心軸と同じ軸方向にランジュバン型超音波振動子を振動させることができる。
【0022】
ランジュバン超音波振動子1をその中心軸方向に振動させるためには軸対称の構成が必要である。支持用シリンダに軸対称にランジュバン超音波振動子1を支持するには、一つのナットにより支持用シリンダに締め付け支持固定する必要がある。もし、特許文献4に記載してあるように複数の小さいネジを使い支持体を支持用シリンダ10に支持固定すると、ネジの均一な締付けは困難である。したがって、均一でない接触は、超音波伝播の均一でない伝播になり、ランジュバン超音波振動子1をその中心軸方向に振動させることが困難になる。
【0023】
以上説明したように超音波振動特性を考慮せず、ランジュバン型超音波振動子の中心軸と支持部材の中心軸を一致させ、かつ剛性を高めて支持部材に支持固定する構造は、支持用シリンダ、回転部品としてのランジュバン超音波振動子1の支持体8のそれぞれのテーパー部を嵌合して振動ナットを用いて接続することが望ましい。
【0024】
次に、望ましい支持用シリンダ、ランジュバン超音波振動子1の接続構成を用いた構成で、超音波振動特性について検討した。
【0025】
支持用シリンダ10にランジュバン型超音波振動子1を締付ける手段として、支持用シリンダ10のオネジと振動ナット11を用いた構成は、ランジュバン型超音波振動子、支持用シリンダそして振動ナットが一体の振動体として振動する。したがって、支持用シリンダを他の部材で支持したときは、ランジュバン型超音波振動子の振動は大きく減衰してしまう。
【0026】
そこで、振動ナットをカウンターウェイトとして作用させることで支持用シリンダに伝播する振動を小さくすることを考案した。これを用いれば支持用シリンダを他の支持部材で支持固定した時も、ランジュバン型超音波振動子の振動への影響を小さくすることができることが期待できる。
【0027】
図6を用いて、本発明者が発明した振動ナット11をカウンターウェイトとして用いた縦一次振動モードの振動モードを説明する。環状の支持体8を支持用シリンダ10のオネジと振動ナット11を締付けることによりランジュバン型超音波振動子1を支持する。そして支持用シリンダ10の外側を別の支持部材でさらに図6の斜線で示す部分を支持固定する。ランジュバン型超音波振動子1に縦一次振動モードを励起する交流電圧を印加する。励起された縦一次振動モードは、支持体8に伝播して支持体8が撓み、支持体8に接続した振動ナット11が、ランジュバン型超音波振動子1の中心軸方向に沿って振動する。ここで振動ナット11は、カウンターウェイトとして作用する形状、質量になっている。
【0028】
ランジュバン型超音波振動子1は、支持用シリンダ10、振動ナット11、フロントマス2より大きい外径を持つ部分の支持体そして支持用シリンダ10、振動ナット11、フロントマス2より大きい外径を持つ部分で囲まれた空間に節を持ち、そしてランジュバン型超音波振動子1中に節を持つ。図の中心線は振動の支持体8の円環状の節部の中心を通り、圧電素子の振動の節の中心を通る。また、支持体8と振動ナット11の変位、そしてランジュバン型超音波振動子1の変位を実線と点線で示す。ランジュバン型超音波振動子1が実線の矢印で示す下方向に振動すると、支持体8は節部の内側では下方向に振動し、節部の外側は上方向に振動する。その結果、支持体8に接続するランジュバン型超音波振動子1は、実線で示す下方向に振動し、振動ナット11は、支持体8の節部より外側では実線の矢印で示す上方向に振動する。そして、振動周期の逆位相のときの振動は、点線で示す逆方向の振動をする。ここで、振動ナット11がランジュバン型超音波振動子1と互いに逆方向に振動するには、支持ナット11付近の円環状の節の作る平面にランジュバン型超音波振動子1の節がなく、そしてランジュバン型超音波振動子1の節は、支持ナット付近の円環状の節を持つ面と、ある程度の距離がある条件である。つまり、ランジュバン型超音波振動子1の縦一次振動モードの節と支持体の位置が離れている時である。
【0029】
ランジュバン型超音波振動子1の中の節より下の部分と支持体8の節部より外側の振動ナット11は、互いに反対方向に振動する。つまり、支持体8の節部より外側の振動ナット11は、ランジュバン型超音波振動子1の中の節より下の部分のカウンターウェイトとして作用している。ランジュバン型超音波振動子1の中の節より下の部分の振動と逆方向の振動を、振動ナット11に励起することにより振動のバランスを取ることができるので、支持用シリンダ10に漏れる振動を大幅に小さくすることができる。なお、カウンターウェイトについては、特許文献2に記述してある。
【0030】
ここで、カウンターウェイトの原理を説明する。振動する物体の振動を他の部材に伝播するのを防ぐために、振動する物体と振動方向が逆の振動をする物体(カウンターウェイト)を接続して、振動を相殺することにより他の部材に伝播することを小さくすることである。
【0031】
そして、支持体とフロントマスが別部品であるときは、支持体に曲げ成分の振動があるため、支持体とフロントマスの接触面の接触状態が均一でなく、それが原因でフロントマスに不要な曲げ振動や接触部に熱が発生し、かつフロントマスの振動が小さくなる虞がある。したがって、図6の振動モードを効率よく励起するためには支持体とフロントマスを一体で製作しなければならない。
【0032】
図6の構成のフロントマスの孔にコレットを入れコレットとコレットナットにより直径4mm、長さ60mmの超硬製の棒を装着した。また超硬製の棒はコレット面より約37.1mm先に出ていた。振動ナット11の外径36mm、外径43mm、外径54mmを試作してカウンターウェイトの効果を確かめた。振動ナット11、支持用シリンダ10、フロントマスの外径より大きい支持体の位置そして振動ナット11、支持用シリンダ10、フロントマスの外径より大きい支持体で囲まれた空間である黒丸で示す振動の節を持ち、そしてランジュバン型超音波振動子1の中に節を持つ振動するモードである。そして駆動周波数は、インピーダンスアナライザで求めた共振周波数の付近で、60Vp−pのサイン電圧を印加して、電圧と電流位相が同じになる周波数に設定した。振動変位が駆動電圧の位相と同じときはプラスを逆のときはマイナスを付けた。
【0033】
支持用シリンダ10、振動ナット11、フロントマス2より大きい外径を持つ部分の支持体8そして支持用シリンダ10、振動ナット11、フロントマスより大きい外径を持つ部分で囲まれた空間に節部を持ち、そしてランジュバン型超音波振動子に一つの振動の節を持つ縦一次振動モードである図7の振動モードの測定結果を表1に示す。超硬の棒の前面と振動ナットの測定面(外周より1mmの内部)の振動の変位は逆である。超硬の棒の前面とコレット面の振動変位の位相は、同じでありコレット面と超硬の棒の前面の間には振動の節が無いことがわかる。そして振動ナット11の形状により共振周波数が変化することがわかる。
【0034】
ここで共振周波数とは、インピーダンスアナライザで測定したアドミッタンスピークの周波数を指す。実際に、支持用シリンダを強く支持したときのサイン波駆動電圧60Vp−pの条件で、レーザドップラー振動計により直径36mm、直径43mm、直径54mmの振動ナット11の振動変位量を測定したが、径43mmと直径54mmの振動ナット11は、振動変位量が小さく波形が乱れているため正確な振動位相は測定できなかったため、振動位相は示さない。振動ナットが直径36mmにおいては超硬棒の前面とコレット面の振動変位の位相は同じであり、振動ナット11の振動変位の位相は逆である。振動変位は駆動電圧と位相が同じときはプラスを、逆のときはマイナスを付けた。また、1W当たりの超硬の振動変位量は、直径36mmで3.4μmp−p、直径43mmで1.8μmp−p、直径54mmで1.9μmp−pであった。振動ナットの振動変位量が大きいほど、同じ振動変位量を得るための電力量が小さい。直径36mmの振動ナット11は、他の振動ナット11の約1/2の電力量である。これは、支持用シリンダへの振動の伝播が小さいことに原因すると考察する。
【0035】
【表1】
【0036】
以上のように振動ナットの振動方向とフロントマスの振動方向を逆にすることで、ランジュバン型超音波振動子1をその中心軸方向に振動させ、支持体の振動を支持固定具に伝播することを大きく減少させることができる。縦一次振動モードにおいても、電力量を約1/2にすることができる。本発明によれば、支持体の剛性を高め、支持固定具により剛性の高い支持できると共に、ランジュバン型超音波振動子1の振動を支持固定具に伝播することを大幅に小さくできるので、従来にない、負荷に対して強く、精密な加工が可能で、超音波振動する工具の歪が小さくできるランジュバン型超音波振動子1を実現できた。
【0037】
ここで、フロントマスと振動ナット11の振動方向について説明する。図7は、フロントマスの中に振動の節があり、節の下では下方向に、節の上では上方向に振動する。そして節の上方向にある支持体に矢印方向の振動が伝播すると振動ナットは、振動ナットの側面は、矢印で示す下方向に振動する。振動の逆位相の時は、振動は逆方向となる。つまり、フロントマスの先端部の振動方向と振動ナットの側面の振動方向と同一になる。図中の黒丸は振動の節を示し、支持用シリンダの中にも節があり、点線の矢印で示す方向に支持用シリンダは振動する。支持用シリンダも振動するため、支持用シリンダを支持固定すると、ランジュバン超音波振動子1の振動を小さくしてしまう。そこで、振動ナットが必要となる。
【0038】
上記と比較するため図8を用いて説明する。圧電素子の中に振動の節があり、節の下では下方向に、節の上では上方向に振動する。そして節の下方向にある支持体に矢印方向の振動が伝播すると振動ナットは、振動ナットの側面の矢印で示す上方向に振動する。つまり、フロントマスの先端部の振動方向と振動ナットの側面の振動方向と逆になる。図中の黒丸は振動の節を示し、支持用シリンダの中にも節があり、点線の矢印で示す振動がある。フロントマスには、振動の節が無いため歪みは図7に比較して小さい。したがって図8は、図7に比較してフロントマス中の超音波振動の伝達ロス、接触部の発熱の問題が小さくなる。支持用シリンダも振動しているため、支持用シリンダを支持固定すると、ランジュバン超音波振動子1の振動を小さくしてしまう。そこで、振動ナットが必要となる。
【0039】
ここで、通常のランジュバン型超音波振動子1の支持方法と比較すると、本発明の支持方法では支持体の外周付近にも円環状の節がある。節の数が増えるほど歪みは分散するため節の位置にもよるが節の数が大きくなるほど歪みがより分散して超音波振動の伝達ロス、接触部の発熱の問題が小さくなる。
【0040】
部品の接触部は超音波振動の伝達ロスが大きく振動効率が低下することや、接触部の発熱の問題があると特許文献4に記載されている。また、部品の接触部で摩擦により磨耗粉が発生し、場合によっては超音波振動が部品間でほとんど伝達しないこともわかってきた。ここで接触部の伝達ロスについて考察する。これは部品間の振動変位量の差によるものであるから、その原因となる歪みを小さくすればよい。これには歪みが最大となる節からの距離を大きくすればよいことになる。
【0041】
したがって、コレットを収容するフロントマスに振動の節があり、コレットに大きな歪みを発生する構成は、超音波振動の伝達ロスに関して好ましくない。
【0042】
ランジュバン型超音波振動子1に対して振動ナット11は、カウンターウェイトであり、支持用シリンダから見ると振動ナット11は、動吸振器である。動吸振器とは、補助ウェイト体(振動ナット)が対象物(支持用シリンダ)を肩代わりして振動することで、対象物(支持用シリンダ)が振動しないようにする装置である。なお、ランジュバン型超音波振動子1に動吸振器を用いた例は、特許文献3に記載されている。
【0043】
そして、支持体とフロントマスが別部品であるときは、支持体に曲げ成分の振動があるため、支持体とフロントマスの接触面の接触状態が均一でなく、それが原因でフロントマスに不要な曲げ振動や接触部に熱が発生し、かつフロントマスの振動が小さくなる虞がある。したがって、図6の振動モードを効率よく励起するためには支持体とフロントマスを一体で製作する。
【0044】
支持用シリンダがランジュバン型超音波振動子1より十分大きいウェイトを持つ場合は、特に支持シリンダを他の支持部材で支持しなくても、ランジュバン型超音波振動子1と振動ナット11の逆方向の振動により、支持用シリンダへの振動漏れを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明のランジュバン型超音波振動子の支持構造体では、支持体8の節部より外側の振動ナットをカウンターウェイトとすることで剛性の大きい支持と、支持シリンダに振動を漏らすことを小さくすることを両立させることができ、これを用いた超音波加工方法では、高い負荷に対して強く、支持部材への振動漏れを小さくすることで効率の高い精密な加工と、超音波振動する工具の歪が小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】代表的なボルト締めランジュバン型超音波振動子の構成を示す図である。
図2】ボルト締めランジュバン型超音波振動子の別の構成を示す図である。
図3】ボルト締めランジュバン型超音波振動子を利用する超音波加工装置の構成を示す図である。
図4】本発明のボルト締めランジュバン型超音波振動子の構成を示す図である。
図5】本発明のボルト締めランジュバン型超音波振動子を支持用シリンダに支持用ナットにより支持固定した構成を示す図である。
図6】縦一次振動モード持つランジュバン型超音波振動子の本発明のボルト締めランジュバン型超音波振動子と振動ナットの振動を説明する図である。
図7】縦一次振動モード持つフロントマスに節を持つランジュバン型超音波振動子の本発明のランジュバン型超音波振動子と振動ナットの振動を説明する図である。
図8】縦一次振動モード持つ圧電素子に節を持つランジュバン型超音波振動子の本発明のランジュバン型超音波振動子と振動ナットの振動を説明する図である。
図9】本発明を用いた超音波カッターを説明する図である。
図10】本発明を用いた超音波ドリルを説明する図である。
図11】テーパー嵌合とストレート嵌合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明のランジュバン型超音波振動子とその支持方法は、支持の剛性と加工精度を高めることができ、特に機械的負荷がランジュバン型超音波振動子に加わる時に、その特徴を発揮する。そして本発明のランジュバン型超音波振動子とその支持方法は、ランジュバン型超音波振動子が回転させないで使用する用途と、回転する用途に区分することができる。
【0048】
まず、ランジュバン型超音波振動子を回転させない用途である超音波カッターについて図9を用いて説明する。ランジュバン型超音波振動子は、テーパー環状の支持体8を一体で作成した鋼製フロントマス2に芋ネジをねじ込み、そして芋ネジに圧電素子、電極板、圧電素子、電極板、そして鋼製のリアマス3を通しナット9により締め込み一体にして作成する。
【0049】
支持用シリンダ10のテーパーにランジュバン型超音波振動子のテーパー環状の支持体8のテーパーに合わせ、振動ナットを締め込むことにより、支持用シリンダにランジュバン型超音波振動子を支持固定する。
【0050】
次にフロントマスとホーンをネジにより硬く締め付ける。ホーンの先端には超硬製のカッター刃をロウ付け、ネジなどの方法により取り付ける。また、カッター刃は、用途によりダイヤモンドを電着することもある。
【0051】
前記所望の振動モードについて説明する。黒丸で示す振動の節は、ランジュバン型超音波振動子の圧電素子の中、ホーンの中、そして支持体の外周付近の3箇所にある。図中の矢印は振動方向を示す。圧電素子の節を中心にして上下に伸びる。これにより、振動ナットは、実線の曲線で示すように振動変位してフロントマスと逆方向である上に振動する。フロントマスの振動はホーンに伝播し中心軸方向の振動は拡大され、先端のカッターに伝播される。ホーンの中には節があり、その節の上下では振動方向は逆になる。
【0052】
本振動モードにおいて、図中の支持体の外周付近にある円環状の節を通る平面を2点鎖線示すが、この平面にランジュバン型超音波振動子の黒丸で示す節がない。このため、ランジュバン型超音波振動子の矢印で示す振動に伴い支持体は、支持体の外周の節を持つ上下に振動する。そして支持体に接続した振動ナットに矢印で示すフロントマスと逆方向に振動する。この振動ナットの運動がカウンターウェイトとして作用している。なお、振動ナットの質量とランジュバン型超音波振動子の有効質量がほほ同じであることが望ましい。
【0053】
上記の超音波カッターの運転方法について説明する。例えば、図示しないプラスチック板を切断するため、超音波カッターを三次元加工機に取付けプログラムにより所望の形状に切断する。先ず、超音波カッターにリード線により接続した超音波発振回路12の電源のスイッチを入れ、超音波カッターに所望の振動モードの超音波振動を励起する。その後、三次元加工機のスイッチを入れ、加工プログラムを作動させ、プラスチック板を切断する。切断が終了したら、超音波発振回路12のスイッチを切り、そして三次元加工機の電源を切り、加工を終了する。
【0054】
ここで、ランジュバン型超音波振動子に図6に示す振動モードを励起する方法について説明する。超音波発振回路12は中心周波数と追尾範囲を設定して、目的とする振動モードを追尾する。具体的な追尾方法は、矩形状の駆動電圧波形とサイン波の電流波形の位相差がゼロになるように追尾するものである。また、電流波形を、よりサイン波に近づけるために位相調整用コンデンサ22を持つ。
【0055】
例えばランジュバン型超音波振動子に図6に示す振動モードの共振周波数が約20000Hzであったとすると、超音波発振回路12に中心周波数を20000Hz、追尾範囲は1000Hzを設定して目的とする図6に示す振動モードを自動追尾する
【0056】
本発明のランジュバン型超音波振動子とその支持方法と駆動方法を用いた超音波カッターは、剛性が高く、かつ支持精度が高いため、高精度で大きい負荷に対して用いることができる。
【0057】
ランジュバン型超音波振動子を回転する用途である超音波ドリルについて図10を用いて説明する。テーパー環状の支持体8と一体としたステンレス製のフロントマスのオネジに圧電素子、電極板、圧電素子、電極板の順にいれステンレス製のリアマスをねじ込み一体としてランジュバン型超音波振動子を製作する。
【0058】
一方、スピンドルを次の手順で作成する。支持用シリンダとケースの間に、ベアリング2個を入れ、次いで外側間座、内側間座、ベアリングを挿入し外側間座用リングとトランス台を締め込み、スピンドルを製作する。
【0059】
支持用シリンダの中にランジュバン型超音波振動子の図示しないリード線を2本入れ、トランス台の孔を通す。そして、支持用シリンダのテーパーとテーパー環状の支持体8のテーパーを合わせ、振動ナットを締め込むことにより接続する。その後、ランジュバン型超音波振動子の図示しないリード線とロータリートランスの銅線と接続する。そして、トランス台に回転軸をねじ込む。
【0060】
次にロータリートランス台(固定)にロータリートランス(固定)を接着剤で接着する。その後、スリーブにロータリートランス台(固定)をネジ止めし、支持用シリンダにねじ込み取り付ける。
【0061】
スリーブにモータ台をネジにより取り付け、回転軸にカップリングを取付け、モータ台をスリーブに取り付け、カップリングにモータ軸を入れ、モータも図示しないボルトによりモータ台に固定する。その後、カップリングとモータ軸をネジにより締付ける。以上により超音波スピンドルを製作する。そして、フロントマスのテーパー孔にコレットを入れ、コレットナットを軽く締め、その後ドリルをコレットに入れて締め付け超音波ドリルとする。
【0062】
ここで、上記の超音波ドリルの運転方法について説明する。例えば、図示しない超硬板に穴あけするため、超音波ドリルを三次元加工機に取付けプログラムにより所望の位置に穴あけする。先ず、ドリルを回転させ、次に超音波発振回路の電源のスイッチを入れ、ほぼ同時に切削液をノズルから出し、超音波ドリルに所望の振動モードの超音波振動を励起する。その後、三次元加工機のスイッチを入れ、加工プログラムを作動させ、超硬板を穴あけする。穴あけが終了したら、ドリルの回転を止め、超音波発振回路と切削液の供給装置のモータのスイッチを切り、そして三次元加工機の電源を切り、加工を終了する。
【0063】
ここで、ランジュバン型超音波振動子に所望の振動モードを励起する方法について説明する。超音波発振回路12は中心周波数と追尾範囲を設定して、目的とする振動モードを追尾する。具体的な追尾方法は、矩形状の駆動電圧波形とサイン波の電流波形の位相差がゼロになるように追尾するものである。また、電流波形を、よりサイン波に近づけるために位相調整用コンデンサ22を持つ。
【0064】
例えばランジュバン型超音波振動子に所望の振動モードの共振周波数が約20000Hzであったとすると、超音波発振回路12に中心周波数を20000Hz、追尾範囲は1000Hzを設定して目的とする図6に示す振動モードを自動追尾する
【0065】
超音波ドリルのドリルをエンドミルに交換してエンドミルを回転させながら、水平方向にエンドミルを移動させれば、溝加工できる。本発明のランジュバン型超音波振動子の支持剛性が大きいため、水平方向の力に対しても、通常の支持に比較すると精度高く加工できる。
【0066】
前記所望の振動モードについて説明する。黒丸で示す振動の節は、支持体の外周付近と、ランジュバン型超音波振動子の圧電素子の中、ドリルの3箇所にある。図中の矢印は振動方向を示す。振動ナットの外周付近の円環状の節の中心線に沿って矢印で示すようにランジュバン型超音波振動子は振動する。これにより、振動ナットは、実線の曲線で示すように振動変位してフロントマスと矢印で示す逆方向である上に振動する。そしてフロントマスの振動はドリルに伝播するが、ランジュバン型超音波振動子とドリルを接続した共振周波数を持つドリルの中に黒丸で示す節を持つ縦一次振動をする。これを矢印で示す。
【0067】
ランジュバン型超音波振動子の矢印で示す振動に伴い支持体は、支持体の外周の節を持つ上下に振動する。そして支持体に接続した振動ナットに矢印で示すフロントマスと逆方向に振動する。この振動ナットの運動がカウンターウェイトとして作用している。なお、振動ナットの有効質量とランジュバン型超音波振動子の有効質量がほほ同じであることが望ましい。
【0068】
振動ナットのカウンターウェイトの効果により支持用シリンダへの振動の伝播が大きく減少することにより、剛性の大きい支持方法を使用しても効率の高い超音波加工を実現できる。
【0069】
また、振動ナットのカウンターウェイトの効果は、支持用シリンダを他の支持部材で固定した時に現れる。支持部材で固定された支持シリンダの位置が振動の節になるので、その振動モードでランジュバン型超音波振動子が振動する振動モードになる。そのモードにおいて振動ナットは、ランジュバン型超音波振動子の振動のバランスを向上させる作用を持つ。
【0070】
また工具中の節部付近の歪みは、支持体の外周付近そして圧電素子にも節が存在するため、小さくなる。このため、工具中の歪みによる工具の曲がりや破損の恐れを小さくすることができる。
【0071】
本発明のランジュバン型超音波振動子の支持構造体を用いた超音波ドリルは、剛性が高く、かつ支持精度が高いため、高精度に穴あけでき、かつ大きい負荷に対して用いることができる。
【0072】
本発明のランジュバン型超音波振動子の支持構造体を用いれば、剛性の高い支持固定とランジュバン型超音波振動子の中心軸方向の効率の高い振動を両立させることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 ボルト締めランジュバン型超音波振動子
2 フロントマス
3 リアマス
4 ホーン
5a、5b、5c、5d 圧電素子
6 ボルト
7 リン青銅電極
8 支持体
9 ナット
10 支持用シリンダ
11 振動ナット
12 超音波発振回路
13 超音波研削加工装置
14 研削具
15 電気エネルギー供給源
16 孔
17 基台
18 コレットナット
19 コレット
20 リード線
21 テーパーシャンク
22 位相調整用コンデンサ
23 ロータリートランス(回転側)
24 ロータリートランス(固定側)
25 テーパー孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11