(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハンダ付け部位を通る仮想の基準線を挟んで相対する位置に、鏝先先端の鏝先面同士が互いに近接し且つ向き合うように前記基準線に対して傾斜する姿勢で配設された一対の鏝部材と、該一対の鏝部材を開閉自在に支持する鏝支持機構と、前記一対の鏝部材を開閉させる鏝開閉機構と、ハンダ付け部位に線状ハンダを供給するハンダ供給機構とを有し、
前記鏝支持機構は、前記基準線に沿って可動の支軸ホルダと、該支軸ホルダに1つの共通の支軸で回動自在なるように支持された一対の鏝支持アームとを有し、該一対の鏝支持アームの一方と他方とに前記一対の鏝部材の一方と他方とが支持されており、
前記鏝開閉機構は、前記支軸ホルダを基準線に沿って変位させるホルダ変位機構と、前記支軸ホルダの変位に伴う前記一対の鏝支持アーム及び一対の鏝部材の変位に連動して該一対の鏝部材を開閉させる開閉操作機構とを有している、
ことを特徴とするツイン鏝式ハンダ付け装置。
前記開閉操作機構は、定位置に固定的に配設された開閉操作部材と、前記一対の鏝部材にそれぞれ形成されて前記開閉操作部材に当接する被操作部とを有し、前記一対の鏝部材が変位すると前記被操作部が前記開閉操作部材に押されて該一対の鏝部材が開閉するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のハンダ付け装置。
前記ホルダ変位機構は、回転角度を設定可能なステッピングモータと、該ステッピングモータに駆動されて前記基準線方向に変位するカム部材とを有し、該カム部材と前記支軸ホルダとが前記基準線方向に相互に係合していることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のハンダ付け装置。
前記鏝部材は、鏝軸線に沿って順に、前記鏝支持アームに取り付けるための鏝取付部と、該鏝取付部から延出する中空の鏝胴部と、該鏝胴部に取り付けられた鏝先ホルダと、該鏝先ホルダに取り付けられた前記鏝先と、該鏝先を加熱するヒータとを有していて、前記鏝軸線が前記基準線に対して傾斜する姿勢で前記鏝支持アームに固定的に取り付けられていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のハンダ付け装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図は本発明に係るツイン鏝式ハンダ付け装置の一実施形態を示すものである。このハンダ付け装置は、
図1−
図5に示すように、上端部に設けられたアームホルダ1にハンダ付けロボットのロボットアーム2を連結して使用するもので、ハンダ付け時にハンダ付け部位3(
図12参照)を通る仮想の基準線L1を挟んで相対する位置に、該基準線L1に対して傾斜する姿勢で配設された一対の鏝部材4,4と、該一対の鏝部材4,4を開閉自在に支持する鏝支持機構5と、前記一対の鏝部材4,4を開閉させる鏝開閉機構6と、前記ハンダ付け部位3に線状ハンダ8を供給するハンダ供給機構7とを有している。
【0013】
前記ハンダ付けロボットは、前記ロボットアーム2が多関節アームである多軸型ロボットであっても、前記ロボットアーム2がX軸方向(縦方向)、Y軸方向(横方向)及びZ軸方向(上下方向)に変位する3軸型か、これにθ軸方向(回転方向)を加えた4軸型の卓上型ロボットであっても良い。
【0014】
前記一対の鏝部材4,4は、鏝先10の先端の鏝先面11同士が互いに近接し且つ向き合うような角度に前記基準線L1に対して傾斜しており、各々の鏝部材4の構造は以下の通りである。
即ち、
図6−
図8も参照して、前記鏝部材4は、前記基準線L1に対して傾斜する鏝軸線L2に沿って基端側(上端側)から先端側(下端側)に向けて順に、鏝支持アーム12に取り付けるための鏝取付部13と、該鏝取付部13に上端部を保持された中空の鏝胴部14と、該鏝胴部14に取り付けられた鏝先ホルダ15と、該鏝先ホルダ15に取り付けられた前記鏝先10と、該鏝先10の内部に収容されたヒータ(不図示)とを有し、前記鏝取付部13によって前記鏝支持アーム12の先端に、該鏝支持アーム12との間に一定の角度関係を保った状態で固定的に取り付けられている。
【0015】
前記鏝部材4の鏝先10は、ハンダ濡れ性を有する素材により形成されている。具体的には、銅の外表面に保護皮膜となる鉄メッキ層を被覆することにより形成されている。また、前記鏝先10先端の鏝先面11は、溶融したハンダをハンダ付け部位3に向けて流すための凹溝を持たない平面に形成されている。図示した例では、円柱状をした鏝先10の先端部を、該鏝先10の先端側に向けて次第に鏝軸線L2に近づく方向に傾斜する4つの平面にカットし、一対の鏝先10の互いに向き合う内側の平面を前記鏝先面11としている。前記4つの平面は同一形状をしているとは限らない。
【0016】
前記鏝取付部13は、前記鏝胴部14の上端部を保持する上下一対の鏝ホルダ13aと、該鏝ホルダ13aが前面に固定された取付板13bとを有していて、該取付板13bが前記鏝支持アーム12の先端部に取付板固定螺子13cで固定されている。
【0017】
また、前記鏝部材4の上端にはヒータコネクタ16が接続され、このヒータコネクタ16を介して前記ヒータが、前記鏝胴部14の内部を通るリード線と、前記ヒータコネクタ16から延びるケーブル16aとを通じて、不図示の電源及び制御装置に接続されるようになっている。
【0018】
前記鏝支持機構5は、固定側部材である主基板20に前記基準線L1に沿って上下動自在に保持された支軸ホルダ21と、該支軸ホルダ21の上端部に1つの共通の支軸22で回動自在なるように支持された一対の前記鏝支持アーム12とを有している。
【0019】
前記主基板20は、平板状をした矩形の基板であって、板面をハンダ付け装置の前後方向に向けた縦向きの姿勢で、前記アームホルダ1に固定されたサポート部材23に螺子で取り付けられている。従って、該主基板20は、前記アームホルダ1及びサポート部材23と共に、前記ハンダ付けロボットのロボットアーム2と一体関係にある前記固定側部材を構成するものである。
【0020】
前記主基板20の裏面中央位置には、レール状をしたリニアガイド24が上下方向に延在するように形成され、該リニアガイド24にスライド部材25が上下方向に摺動自在に装着され、該スライド部材25に前記支軸ホルダ21が連結されている。
【0021】
前記支軸ホルダ21は、上下に細長い角形ブロック状の部材であって、該支軸ホルダ21の上端部は前記主基板20の上端部より上方に突出しており、該支軸ホルダ21の上端部前面に、円柱状をした前記支軸22が、前記基準線L1と直交する向きに片持ち状に取り付けられ、該支軸22に一対の前記鏝支持アーム12,12の基端部が回動自在に支持されている。図中の符号27が付された部材は止めボルトで、該止めボルト27は、前記鏝支持アーム12が前記支軸22から脱落するのを防止するため該支軸22の先端に取り付けられたものである。
【0022】
前記一対の鏝支持アーム12,12は、前記支軸22の位置から左方向と右方向とに細長く延びる部材であって、各鏝支持アーム12の基端部には、厚みを半分ほどに減らすための凹段部12aが相互に対面する向きに形成され、該凹段部12a同士を重合させた状態で前記支軸22に支持されることにより、該一対の鏝支持アーム12,12が、前記基準線L1を含む共通の鉛直面に沿って回動し得るようになっている。
【0023】
また、各鏝支持アーム12の長さ方向の中間位置に取り付けられたばね係止螺子28aと、前記主基板20に取り付けられたばね係止螺子28bとに、伸長したコイルばね29の一端と他端とがそれぞれ係止し、このコイルばね29の引張力によって前記一対の鏝支持アーム12,12が、前記一対の鏝部材4,4の鏝先面11,11が閉じる方向に常時付勢されている。また、前記コイルばね29の引張力は、前記鏝支持アーム12を介して前記支軸ホルダ21を下降させる方向にも作用している。
【0024】
一方、前記鏝開閉機構6は、前記支軸ホルダ21を基準線L1に沿って変位(上下動)させるホルダ変位機構31と、前記支軸ホルダ21の変位に伴う前記一対の鏝支持アーム12,12及び一対の鏝部材4,4の変位に連動して該一対の鏝部材4,4を開閉させる開閉操作機構32とを有している。
【0025】
前記ホルダ変位機構31は、回転角度を設定することができるステッピングモータ33と、該ステッピングモータ33によって前記基準線L1方向に変位させられるベアリング製のカム部材34とを有し、該カム部材34が前記支軸ホルダ21の下端面に当接することにより、これらカム部材34と支軸ホルダ21とが、前記基準線L1の方向に相互に係合している。
【0026】
前記ステッピングモータ33は、前記主基板20に連結軸35を介して固定された矩形のモータ基板36に取り付けられている。該ステッピングモータ33の駆動軸33aは、前記モータ基板36を貫通して該モータ基板36と前記主基板20との間の空間内に突出し、該空間内において前記駆動軸33aに、スリット円板37と短円柱状のカム軸38とが連結され、前記スリット円板37には半径方向のスリット37aが1つ形成され、前記カム軸38には、偏心位置に前記カム部材34が取り付けられている。また、前記モータ基板36には、前記スリット円板37のスリット37aを光学的に検出するフォトセンサ39が取り付けられ、このフォトセンサ39で前記スリット円板37のスリット37aを検出した位置(
図1参照)が、前記ステッピングモータ33の原点位置となるように構成されている。
【0027】
前記ホルダ変位機構31において、前記ステッピングモータ33が回転すると、前記カム軸38が回転して前記カム部材34が前記駆動軸33aを中心に偏心回転し、このカム部材34による押し上げ力と前記コイルばね29の引き下げ力とによって前記支軸ホルダ21が昇降し、この支軸ホルダ21の昇降に連動して前記一対の鏝支持アーム12,12及び一対の鏝部材4,4も昇降する。
図1は、前記ステッピングモータ33が原点位置(回転角度が0度の位置)を占めることにより、前記支軸ホルダ21が前記カム部材34に押し上げられて上昇端の位置を占め、前記鏝支持アーム12,12及び鏝部材4,4も上昇端の位置を占めている状態である。この状態から、前記ステッピングモータ33が回転すると、前記カム部材34が偏心回転により下降するため、前記支軸ホルダ21は、前記コイルばね29の引き下げ力により最大で
図4に示す下降端の位置まで変位し、前記鏝支持アーム12,12及び鏝部材4,4も下降端まで変位する。従って、前記ステッピングモータ33の回転角度は、前記支軸ホルダ21が上昇端から下降端まで変位する範囲内、つまり、0−180度の範囲内で設定することができる。
【0028】
前記開閉操作機構32は、前記主基板20に取り付けられた開閉操作部材40と、前記一対の鏝部材4,4の側面にそれぞれ形成されて前記開閉操作部材40で押圧操作される被操作部41,41とを有している。
【0029】
前記開閉操作部材40は、左右に細長いアーム形の部材からなるもので、前記基準線L1を跨ぐように配置されることにより、該開閉操作部材40の一端が一方の鏝部材4側に延出すると共に他端が他方の鏝部材4側に延出しており、前記一端及び他端に、ベアリングカラー43を介してベアリング42がそれぞれ取り付けられ、このベアリング42により、前記鏝部材4の被操作部41に当接する操作部が形成されている。従って、以下の説明においては、前記操作部に符号42を付すものとする。
一方、前記被操作部41は、前記鏝部材4の一部である円柱形の鏝胴部14の内側面(基準線L1側を向く側面)に直接形成されている。
【0030】
この構成により、前記一対の鏝部材4,4が
図1の上昇端の位置にあるとき、該鏝部材4,4は、被操作部41,41の下端部が前記開閉操作部材40の操作部42,42に押されることによって相対する鏝先面11,11が最大限離間する全開位置を占め、この全開位置から、前記鏝部材4,4が
図4の下降端に向けて下降していくと、前記被操作部41,41に対する操作部42,42の当接位置が相対的に上方へと変化するため、該鏝部材4,4は、互いの鏝先面11,11が次第に閉じる方向に同期的に変位し、下降端に達すると、該鏝先面11,11が完全に閉じる全閉位置を占める。このとき、前記鏝先面11,11間の間隔は、前記ステッピングモータ33の回転角度に応じて変化するため、ハンダ付け時における該鏝先面11,11間の間隔は、前記ステッピングモータ33の回転角度を設定することによって必要な大きさに設定することができる。
【0031】
前記開閉操作部材40は、前記主基板20に取付部材44を介して基準線L1方向に位置調整可能なるように取り付けられている。その構成は以下の通りである。
前記取付部材44は、縦方向に細長い部材であって、該取付部材44の前面上端部に前記開閉操作部材40が、操作部材取付螺子45で固定的に取り付けられている。一方、前記主基板20の前面中央位置には、上下方向に細長い取付溝46が形成されていて、この取付溝46内に前記取付部材44が、該取付溝46に沿って変位自在なるように嵌合している。
【0032】
また、前記取付部材44の前面には、螺子孔を備えた矩形のナット部材47が当接し、このナット部材47の螺子孔に、前記主基板20の裏面側から取付部材固定螺子48を、前記主基板20及び取付部材44に形成した螺子挿通孔を通じて螺着することにより、前記取付部材44が前記主基板20に押し付けられて固定されている。この場合、前記取付部材44の螺子挿通孔44bは上下方向に細長い長孔であるため、前記取付部材44の固定位置を、該螺子挿通孔44bの長さの範囲内で調整することができる。
【0033】
前記取付部材44の固定位置を調整するため、該取付部材44の下端のフランジ部44aに螺子孔が形成され、該螺子孔に位置調整螺子49が上向きに螺着され、該位置調整螺子49の先端が前記取付部材44の下端面に当接しており、前記取付部材固定螺子48を緩めた状態で該位置調整螺子49を回して前記取付部材44を上下動させ、必要な位置で前記取付部材固定螺子48を締め込むことにより、前記取付部材44の固定位置を調整することができるようになっている。
なお、図中の符号50が付された部材は、前記主基板20とモータ基板36との間の空間部の側面及び底面を覆うカバーである。
【0034】
前記ハンダ供給機構7は、
図9−
図11に示すように、前記サポート部材23に取り付けられた板状のフィーダーブラケット51と、該フィーダーブラケット51の外面上端部に取り付けられたハンダ送り装置52と、前記フィーダーブラケット51の内面下端部にノズル支持機構54を介して上下動自在且つ上下方向に位置調整自在に支持されたハンダ供給ノズル53とを有している。
【0035】
前記ハンダ送り装置52は、ハウジング56の内部に、互いに当接し合う駆動ローラ(不図示)と従動ローラー(不図示)とを有していて、ハンダリール57に巻かれた線状ハンダ8をハンダ導入口58から前記ハウジング56の内部に導入し、前記駆動ローラと従動ローラとの間に挟持した状態で所定量ずつ搬送し、ハンダ導出口59から外部に送り出すように構成されたものである。このようなハンダ送り装置52の構成は公知であって、本実施形態では公知のハンダ送り装置が使用されているので、その構成についてこれ以上の具体的な説明は省略する。
【0036】
一方、前記ノズル支持機構54は、前記フィーダーブラケット51に固定されたスライドレール60と、該スライドレール60に上下に摺動自在なるように支持されたスライド部材61と、該スライド部材61に取り付けられた側面視形状がL字形をなすノズル台座62と、該ノズル台座62に取り付けられたノズルホルダ63とを有していて、該ノズルホルダ63に前記ハンダ供給ノズル53が、ノズル取付螺子64によって上下に位置調節自在なるように取り付けられている。
【0037】
また、前記フィーダーブラケット51に固定されたばね座65と前記ノズル台座62との間には、左右2つのコイルばね66が介設され、このコイルばね66により、前記ノズル台座62が、常時下向きに付勢されると共に弾性的に上下動自在となっている。
このように、前記ノズル台座62を上下動可能にした理由は、ハンダ付けによって前記鏝部材4の鏝先10に付着したハンダ屑を、不図示の鏝先クリーナーでエアブローにより除去する際に、前記鏝先10を該鏝先クリーナーのハウジングの内部に挿入して鏝先面11をエアノズルに近づけるが、その際、前記ハンダ供給ノズル53が2つの鏝先10,10に近い位置にあって該鏝先10,10を前記鏝先クリーナーの内部に挿入する際の障害になり易いため、前記ノズル台座62を前記鏝先クリーナーの一部に当接させることによって前記ハンダ供給ノズル53をその位置に停止させ、前記コイルばね66を圧縮させながら該ハンダ供給ノズル53を前記鏝先10,10から遠ざけて、該鏝先10,10だけを前記鏝先クリーナーのハウジングの内部に挿入させ得るようにするためである。
【0038】
前記ハンダ供給ノズル53は、先端(下端)に線状ハンダ8を導出するためのニードル53aを備えており、該ハンダ供給ノズル53の上端部と前記ハンダ送り装置52のハンダ導出口59とが、可撓性を有する合成樹脂製のハンダ送りチューブ67で接続されている。また、該ハンダ供給ノズル53は、
図1及び
図4では前記基準線L1上に位置するように配置されているが、線状ハンダ8を何れか一方の鏝部材4の鏝先10に向けて供給することができるように、
図1及び
図4の左右方向に位置調節自在となっていて、ハンダ付けを行う際に、
図12(a)、(b)に示すように、一方の鏝部材4側に片寄った位置に配置される。
前記ハンダ供給ノズル53の位置調整は、例えば、該ハンダ供給ノズル53を保持するノズルホルダ63の前記ノズル台座62に対する取付位置を調整することにより、行うことができる。あるいは、前記ハンダ供給ノズル53を、一方の鏝部材4の鏝先10に向けて傾斜させても良い。
【0039】
なお、図中の符号75が付された部材は、前記ハンダ送り装置52を制御装置に電気的に接続するための電気ケーブルであり、符号76が付された部材はコネクタである。
【0040】
前記構成を有するハンダ付け装置でハンダ付け部位3をハンダ付けするときの動作について説明する。前記ハンダ付け部位3は、
図12に示すように、プリント基板70に形成された環状の端子71と、該端子71の内部に下から挿入された電子部品72のリード73であり、このようなハンダ付け部位3を、プリント基板70の上面側からハンダ付けする。
【0041】
先ず、直線状に並んだ複数のハンダ付け部位3を引きハンダ付けする方法について説明する。
この引きハンダ付けを行う時は、始めに、前記ステッピングモータ33を、
図1及び
図2のように一対の鏝部材4,4が上昇端の位置にある原点位置から、設定された回転角度だけ回転させ、前記一対の鏝部材4,4を支軸ホルダ21及び鏝支持アーム12を介して前記回転角度に応じた分だけ下降させることにより、前記鏝先面11,11間の間隔を、ハンダ付け時の間隔であるハンダ付け間隔G1(
図12(a)参照)に調整する。このハンダ付け間隔G1は、
図12(b)に示すように、前記リード73が、相対する鏝先面11,11間に該鏝先面11,11と非接触の状態で介在することができると共に、該鏝先面11,11の間を非接触のまま通過し得るような間隔である。
【0042】
次に、ロボットアーム2で前記一対の鏝部材4,4を、
図12(a)に示すように、最初にハンダ付けするハンダ付け部位3の上の待機位置まで移動させたあと、
図12(b)に示すように、前記ロボットアーム2を下降させて前記鏝部材4,4をハンダ付け位置まで下降させ、前記鏝先面11,11間の中央に前記リード73を位置させる。このとき、該リード73は前記鏝先面11,11と非接触であり、また、前記鏝先10,10の先端は、前記ハンダ付け部位3の環状端子71に近接するか又は軽く接触した状態にある。
【0043】
そのあと、ハンダ供給ノズル53から線状ハンダ8を一方の鏝部材4の鏝先10に向けて供給することにより、該線状ハンダ8を前記鏝先10の熱で溶融させながら、
図13に示すように、前記一対の鏝部材4,4を複数のハンダ付け部位3に沿って移動させる。このとき、前記鏝先面11,11間の間隔は前記ハンダ付け間隔G1に保ったままである。
【0044】
そうすると、
図12(b)に示すように、溶融したハンダ8aは、ハンダ濡れ性を有する前記鏝先面11,11を濡らしながら両方の該鏝先面11,11に沿って滑らかに流動し、前記リード73及び端子71に供給されてスルーホール71a内に浸入し、
図13の左端のハンダ付けポイント3に示すように、ハンダ付け部位3全体に拡散して該ハンダ付け部位3がハンダ付けされ、同様にして、直線状に並んだ複数のハンダ付け部位3が連続的にハンダ付けされる。このとき、特に、前記溶融したハンダ8aは、ハンダ濡れ性を有する前記鏝先面11,11に対して親和性を有するため、両方の鏝先面11,11に両側から支えられた状態で該鏝先面11,11に沿って流動し、前記リード73及び端子71に正確かつ確実に供給されるため、精度の良いハンダ付けが行われることになる。
【0045】
1つの列のハンダ付け部位3のハンダ付けが終了すると、線状ハンダ8の供給を停止すると共に、ロボットアーム2によって前記鏝部材4,4を
図12(a)の待機位置まで持ち上げ、次の列のハンダ付け部位3の上まで移動させたあと、同様の操作を繰り返す。このようにして、全ての列のハンダ付け部位が引きハンダ付けされる。
【0046】
なお、1つの列のハンダ付け部位のハンダ付けが終了したあと、次の列のハンダ付け部位のハンダ付けを行う前に、必要であれば、鏝先面11,11に付着したハンダ屑を除去することもできる。このハンダ屑の除去は、適宜位置に配置した不図示の鏝先クリーナーの内部に鏝部材4,4の鏝先10,10を挿入し、エアノズルから該鏝先10,10に向けてエアを噴射することにより行う。
【0047】
また、前述した例では、プリント基板70を定位置に保持して鏝部材4を移動させているが、その逆に、鏝部材4を定位置に保持してプリント基板70を移動させても良い。
【0048】
次に、直線状に並んだ複数のハンダ付け部位3を個々にハンダ付けするポイントハンダ付け方法について説明する。
このポイントハンダ付けを行う時は、始めに、
図1の状態から、ステッピングモータ33で一対の鏝部材4,4を閉鎖方向へ変位させることにより、鏝先面11,11間の間隔を待機間隔G2(
図14(a)参照)に調整する。この待機間隔G2は、引きハンダ付けを行うときの前記ハンダ付け間隔G1と同じであっても、異なっていても構わない。
【0049】
次に、
図14(a)に示すように、ロボットアーム2で前記一対の鏝部材4,4を最初にハンダ付けするハンダ付け部位3の上の上昇位置まで移動させたあと、
図14(b)に示すように、該ロボットアーム2を下降させて前記鏝部材4,4を、鏝先面11,11間に前記リード73が介在する下降位置まで下降させ、続いて、前記ステッピングモータ33の作動により、
図14(c)に示すように、前記鏝先面11,11間の間隔を狭めて該鏝先面11,11間に前記リード73を挟持する。
【0050】
そして、その状態でハンダ供給ノズル53から線状ハンダ8を一方の鏝部材4の鏝先10に向けて供給すると、該鏝先10の熱で溶融したハンダ8aは、ハンダ濡れ性を有する鏝先面11,11を濡らしながら、相対する鏝先面11,11により両側からガイドされた状態で該鏝先面11,11に沿って滑らかに流動し、前記リード73及び端子71に供給されてスルーホール内に浸入し、ハンダ付け部位3全体に拡散して該ハンダ付け部位3がハンダ付けされる。
【0051】
そこで、前記溶融したハンダ8aがハンダ付け部位3全体に拡散するのとほぼ同時に、ステッピングモータ33により前記一対の鏝部材4,4を
図14(b)の待機位置に変位させて、前記鏝先面11,11間の間隔を前記待機間隔G2に広げ、そのたあと前記ロボットアーム2で鏝部材4,4を
図14(a)の上昇位置に上昇させることにより、前記ハンダ付け部位3のハンダ付けが終了する。
【0052】
1つのハンダ付け部位3のハンダ付けが終わると、前記一対の鏝部材4,4を次のハンダ付け部位3の上に相対的に移動させ、前述した動作を繰り返す。同様の動作を全てのハンダ付け部位3に対して繰り返すことにより、全てのハンダ付け部位3をハンダ付けすることができる。
【0053】
なお、前述したポイントハンダ付けにおいては、一対の鏝先面11,11間にリード73を挟持した状態で線状ハンダ8を供給するようにしているが、引きハンダ付けの時と同様に、ハンダ付け時における前記一対の鏝先面11,11間の間隔をリード73が接触しない大きさに設定し、該鏝先面11,11間にリード73を非接触の状態に配置した状態で線状ハンダ8を供給するようにしても良い。
【0054】
前記実施形態では、前記鏝先面11が平面に形成されているが、
図15に示すように、前記鏝先10の先端部を先細りをなす円錐に形成して、錐面の一部を前記鏝先面11とすることもできる。
【0055】
また、前記鏝先面11には、
図16(a)、(b)に示すように、溶融したハンダを鏝先10の先端に向けて流すための凹溝74が形成されていても良い。このような凹溝74を鏝先面11に有する鏝部材4は、該凹溝74内にリード73を嵌合させた状態で該凹溝74を通じてリード及び端子に溶融したハンダを供給することができるので、ポイントハンダ付けを行うのに好適である。