特許第6821191号(P6821191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社和泉工業の特許一覧

<>
  • 特許6821191-加熱炉及び加熱方法 図000002
  • 特許6821191-加熱炉及び加熱方法 図000003
  • 特許6821191-加熱炉及び加熱方法 図000004
  • 特許6821191-加熱炉及び加熱方法 図000005
  • 特許6821191-加熱炉及び加熱方法 図000006
  • 特許6821191-加熱炉及び加熱方法 図000007
  • 特許6821191-加熱炉及び加熱方法 図000008
  • 特許6821191-加熱炉及び加熱方法 図000009
  • 特許6821191-加熱炉及び加熱方法 図000010
  • 特許6821191-加熱炉及び加熱方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6821191
(24)【登録日】2021年1月8日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】加熱炉及び加熱方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 21/00 20060101AFI20210114BHJP
   F26B 9/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   F26B21/00 C
   F26B9/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-245016(P2017-245016)
(22)【出願日】2017年12月21日
(65)【公開番号】特開2019-113215(P2019-113215A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2019年6月21日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社和泉工業が、加熱炉を日鉄住金精密加工株式会社に販売し平成29年11月2日に日鉄住金精密加工株式会社本社製造所(大阪府柏原市河原町1番22号)に搬入し、設置した。
(73)【特許権者】
【識別番号】391055092
【氏名又は名称】株式会社和泉工業
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100201684
【弁理士】
【氏名又は名称】橋爪 慎哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100202957
【弁理士】
【氏名又は名称】金森 毅
(72)【発明者】
【氏名】畠中 紀義
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐太郎
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−081393(JP,U)
【文献】 特開2009−092352(JP,A)
【文献】 実開昭58−124791(JP,U)
【文献】 特開2016−176661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 21/00
F26B 9/00
F27B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱した空気を被加熱部材に吹き付けて加熱する加熱炉であって、
空気の流路である第1のダクトと、
空気を前記第1のダクトに送る送風機と、
前記第1のダクト内の空気を加熱するヒーターと、
前記第1のダクトに接続され、加熱された空気を分岐し、加熱された空気を被加熱部材に吹き付けるための吹き出し口を有する複数の第2のダクトと、
前記第1のダクト、前記送風機、複数の前記第2のダクトを内包する筐体と、
を有し、
前記第1のダクトは、それぞれの前記第2のダクトとの接続部分よりも上流側で前記ヒーターよりも下流側の位置に、加熱された空気の一部を、被加熱部材に吹き付けず、前記筐体内に排出する排出口を備える、
加熱炉。
【請求項2】
前記排出口は、前記排出口を覆う蓋を有し、前記排出口の開口面積は、前記蓋の位置が移動されることで、調節される、
請求項1記載の加熱炉。
【請求項3】
第1のダクト、送風機、複数の第2のダクトを内包する筐体の内部で、
前記送風機で空気を前記第1のダクトに送り、
ヒーターで前記第1のダクト内の空気を加熱し、
前記第1のダクトに接続された複数の前記第2のダクトに加熱した空気を分岐し、
前記第1のダクトが備える、それぞれの前記第2のダクトとの接続部分よりも上流側で前記ヒーターよりも下流側の位置の排出口から、加熱した空気の一部を、被加熱部材に吹き付けず、前記筐体内に排出し、
複数の前記第2のダクトが有するそれぞれの吹き出し口から加熱した空気を被加熱部材に吹き付ける、
加熱した空気を被加熱部材に吹き付けて加熱する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉及び加熱した空気を被加熱部材に吹き付けて加熱する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を乾燥させたり硬化させたりするために、加熱炉の中で、加熱した空気を複数の吹き出し口から被加熱部材に吹き付けて、被加熱部材を加熱することが行われている。加熱した雰囲気の中で被加熱部材を加熱するよりも、加熱した空気を被加熱部材に吹き付けて被加熱部材を加熱する方が、加熱時間が短くなる。
【0003】
特許文献1には、乾燥炉の内部に、複数の吹き出し口から熱風を吹き出し、プリント配線基板を乾燥硬化させる乾燥装置が開示されている。
特許文献2には、加熱炉の内部で、複数の吹き出し口から熱風を被加熱部材に高圧噴射して、被加熱部材を加熱(乾燥)するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6―55123号公報
【特許文献2】特開2009―92352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の吹き出し口から、加熱した空気を被加熱部材に吹き付けて、被加熱部材を加熱する場合、それぞれの吹き出し口から吹き付ける空気に温度差があると、被加熱部材を均一に加熱することは出来ない。従って吹き付ける空気に温度差が無いようにすることが求められる。しかし、様々な要因によりその空気の温度差を取り除くことは困難である。そのため被加熱部材を、加熱炉又は乾燥炉内のどこに配置するかによって、被加熱部材に加わる熱の量に差が生じ、均一に加熱することは出来ない。
【0006】
特許文献1に開示された乾燥装置は、ダクトに送られた熱風を複数の孔から吹き出して、プリント配線基板に吹き付けるものである。これは、乾燥炉内部の雰囲気温度のばらつきを防止することが目的である。しかし、各々の孔から吹き出して、プリント配線基板に吹き付ける熱風の温度差を抑える工夫については言及されていない。
【0007】
また、特許文献2に開示された加熱炉システムは、吹き出しダクトに送られた熱風を複数の吹き出しノズルから吹き出して、被加熱部材に吹き付けるものである。このシステムでは、各々の吹き出しノズルから吹き出す熱風の温度差については言及されていない。
【0008】
しかし、実際の加熱炉においては、複数の吹き出し口から吹き出す熱風には温度差がある。そのため、被加熱部材を均一に加熱することは困難である。
【0009】
本発明は、上記実状に鑑みて成されたものであり、被加熱部材を均一に加熱するために、複数の吹き出し口から吹き出して被加熱部材に吹き付ける熱風の、温度差を抑制して被加熱部材を加熱する方法、及びその方法を用いた加熱炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明の第1の観点に係る加熱炉は、
加熱した空気を被加熱部材に吹き付けて加熱する加熱炉であって、
空気の流路である第1のダクトと、
空気を前記第1のダクトに送る送風機と、
前記第1のダクト内の空気を加熱するヒーターと、
前記第1のダクトに接続され、加熱された空気を分岐し、加熱された空気を被加熱部材に吹き付けるための吹き出し口を有する複数の第2のダクトと、
前記第1のダクト、前記送風機、複数の前記第2のダクトを内包する筐体と、
を有し、
前記第1のダクトは、それぞれの前記第2のダクトとの接続部分よりも上流側で前記ヒーターよりも下流側の位置に、加熱された空気の一部を、被加熱部材に吹き付けず、前記筐体内に排出する排出口を備える。
【0011】
前記排出口は、前記排出口を覆う蓋を有し、前記排出口の開口面積は、前記蓋の位置が移動されることで、調節されることが望ましい。
【0012】
本発明の第2の観点に係る加熱した空気を被加熱部材に吹き付けて加熱する方法は、
第1のダクト、送風機、複数の第2のダクトを内包する筐体の内部で、
前記送風機で空気を前記第1のダクトに送り、
ヒーターで前記第1のダクト内の空気を加熱し、
前記第1のダクトに接続された複数の前記第2のダクトに加熱した空気を分岐し、
前記第1のダクトが備える、それぞれの前記第2のダクトとの接続部分よりも上流側で前記ヒーターよりも下流側の位置の排出口から、加熱した空気の一部を、被加熱部材に吹き付けず、前記筐体内に排出し、
複数の前記第2のダクトが有するそれぞれの吹き出し口から加熱した空気を被加熱部材に吹き付ける。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温度差を抑制した熱風を、複数の吹き出し口から被加熱部材に吹き付けることが出来るので、被加熱部材を均一に加熱することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願発明の実施の形態に係る、加熱炉の正面図である。
図2】本願発明の実施の形態に係る、加熱炉の側面図である。
図3】本願発明の実施の形態に係る、BB断面図(図2参照)である。
図4】本願発明の実施の形態に係る、AA断面図(図1参照)である。
図5】本願発明の実施の形態に係る、吹き出しダクトの詳細を表す斜視図である。
図6】本願発明の実施の形態に係る、使用方法を示す斜視図である。
図7】本願発明の実施の形態に係る、使用状態を示す斜視図である。
図8】本願発明の実施の形態に係る、C部拡大図(図7参照)である。
図9】本願発明の実施の形態に係る、加熱炉の底面を表す斜視図である。
図10】本願発明の、変形例に係る、排出口の調整部を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願発明の実施の形態を説明する前に、ダクト内部の加熱した空気を、複数の吹き出し口から吹き出す際に、各吹き出し口から吹き出す空気の間に温度差が生ずる要因について説明する。
ダクト内部の加熱した空気は、ダクト内部を吹き出し口に向かって流れる。一般的にダクトはレイアウトの都合上、屈曲部を持つことが多い。その屈曲部では空気の流れが一律では無くなり、停滞部が発生する。
ダクトの壁の温度は、ダクト内部の加熱した空気よりも低い。そのためダクト内部の空気のうちダクトと接する部分の温度は低下する。特に前述の停滞部では、部分的に空気の流速が低下して、より温度が低下しやすい。これによりダクト内部の空気は一定の温度ではなく、ダクトの壁や停滞部に近い部分が低く、ダクトの中心部の温度が高いという温度勾配を有する。
【0016】
複数の吹き出し口から空気を吹き出して、被加熱部材を加熱するためには、吹き出し口は、被加熱部材に空気を吹き付ける位置及び方向であるように、配置される。その吹き出し口へ空気を送るために、ダクトから分岐して、空気をそれぞれの吹き出し口へ送る分岐ダクトが備えられる。
前述の温度勾配を有する空気が、ダクトの壁に連結した複数の分岐ダクトへの分岐口へ流れ込む場合には、まず、ダクトの壁に近いところに存在する、温度の低い空気が先に流れ込む。そして、下流の分岐口になるに従って、順次ダクト内部から、ダクトの壁に近い、温度の低い空気が減少していく。その結果、ダクト内部には温度の高い空気のみが残ることになる。そして、下流の吹き出し口になるほど、分岐ダクトへの分岐口へ流れ込む空気の温度が高くなる。このように、ダクト内部の加熱した空気を分岐して、複数の吹き出し口から吹き出す際には、上流側と下流側において、吹き出す空気に温度差が生じるのである。
【0017】
本実施の形態に係る、加熱炉を説明する。
(実施の形態)
本実施の形態の加熱炉100は、図1(正面図)、図2(右側面図)、図3(BB断面図)及び図4(AA断面図)に示すように、筐体10、送風機20、加熱ダクト30、ヒーター40、分配ダクト50、分岐ダクト60、吹き出し口70、排気ファン80及び排気管81を主要構成部材とする。加熱ダクト30及び分配ダクト50を第1のダクトとし、分岐ダクト60を第2のダクトとする。
全体の大きさは、幅約1.1m、奥行き約2.2m、高さ約2.4mである。
【0018】
筐体10は、送風機20、加熱ダクト30、ヒーター40、分配ダクト50、分岐ダクト60及び吹き出し口70を内部に収納できる大きさであり、その形状は直方体である。筐体10を構成する部材の材質は加熱炉内部の温度に耐えうるものであり、例えば鉄鋼からなる。また、図9に示すように筐体10の底面には、複数の穴13が空いている。
【0019】
送風機20は、筐体10の内部であって、上方手前側(図2及び図4において上方左側)に配置されるように、筐体10に固定されている。送風機20は、図示しない駆動源によって回転駆動される。送風機20は、内部の羽根が回転して、筐体10の内部の空気を吸気口21から吸気して、その後、奥側の吹き出し口22から、吹き出し口22に連結された加熱ダクト30に送られる。送風機20は、後述する吹き出し口70から吹き出す空気の流量を確保できる送風能力を有する。
【0020】
加熱ダクト30は、送風機20の吹き出し口22に連結され、筐体10の内部であって、上方奥側(図2及び図4において上方右側)に配置されるように、筐体10に固定されている。加熱ダクト30は、手前側から奥側(図2及び図4において左側から右側)に水平方向に延在する水平部と、奥側(図2及び図4において右側)で上方から下方に垂直に延在する垂直部と、水平部と垂直部の間で内部の空気の流れる方向を転換する屈曲部とからなる。上流側である水平部断面及び下流側である垂直部断面は四角形(幅0.5m、高さ0.5m)であり、屈曲部は水平部及び垂直部以上の断面積を持ち、屈曲している。
これらの断面積は、後述する吹き出し口70から吹き出す空気の流量を確保できる大きさである。
【0021】
加熱ダクト30の上流側の端部32は、送風機20の吹き出し口22に連結されている。端部32は、送風機20の吹き出し口22の大きさ及び形状にあわせた形状になるように、接続部近傍で断面形状が徐変している。加熱ダクト30の上流側の内部に、空気を加熱するヒーター40が配置されている。加熱ダクト30の下流側の壁面には排出口31がある。
【0022】
ヒーター40は、加熱ダクト30の内部を流れる空気との接触面積を大きくするように、それぞれが複数回屈曲したシーズヒーターを、複数本配置したものである。ヒーター40のそれぞれの端部は、加熱ダクト30の水平部の上側壁に、発熱部が加熱ダクト30の内部になるように固定されている。当該端部の電極は、加熱ダクト30の外側で配線され、当該配線は配線箱40aに覆われている。ヒーター40が発生する熱量は、後述する吹き出し口70から吹き出す流量の空気を、設定温度に加熱するために十分なものである。
【0023】
分配ダクト50は、上流側の垂直部と下流側の水平部とからなる。垂直部は、連結部53において、上部の加熱ダクト30の連結部33と連結している。下流側の水平部は、筐体10の内部の中段に配置されるように、筐体10に固定されている。水平部は、連結部53から送られた空気を奥側から手前側(図2及び図4において右側から左側)に送るものである。水平部の断面形状は、高さ方向よりも幅方向が大きい四角形である。分配ダクト50の水平部の側壁50aに、分配ダクト50内部の空気を分岐する分岐口51が複数形成されている。分岐口51は、分配ダクト50の水平部の両側壁に、所定の間隔で形成されていて、その間隔は分岐ダクト60を配置する間隔である。
【0024】
分配ダクト50の水平部の側壁50aの、各々の分岐口51の近傍であって、内部を流れる空気の上流側に、排出口52a〜52eが形成されている。排出口52a、52b、52dは、それぞれ1個の長穴であり、排出口52c、52eは、2個の長穴である。各々の排出口52a〜52eには、それぞれの排出口52a〜52eよりも大きく、それぞれの排出口52a〜52eを閉じることが出来る蓋54a〜54eが配置されている。それぞれの蓋は、その固定位置を変更することで開口面積が調整可能となるように、側壁50aに螺子結合されている。なお、筐体10の側面カバーには図示しない調整用窓が設けられている。排出口52a〜52eの開口面積は、当該調整用窓を開けて、蓋54a〜54eを固定する螺子を緩め、蓋54a〜54eの位置を移動して、調整することが出来る。
【0025】
分岐ダクト60は、分配ダクト50の分岐口51に連結され固定されている。図5は複数の分岐ダクト60の一つを抜き出して示した斜視図である。分岐ダクト60の上流側は、分岐口51から筐体10の外側に向かう水平部であって、屈曲部を経た後に下方向に向かう垂直部となり、その終端は閉じている。分岐ダクト60の断面形状は、奥側から手前側(図2及び図4において右側から左側)方向の長さが長手方向となる四角形である。
分岐ダクト60は、分配ダクト50の片面壁に4本、両面壁で8本配置されている。
【0026】
図5に示すように、分岐ダクト60の水平部の内部に調整弁61が配されている。調整弁61は平板形状である。その形状は、分岐ダクト60の上流側水平部の内部断面形状と相似であって、大きさは内部断面形状よりは小さい。調整弁61には、短手方向の中心位置に、水平方向に軸61aが形成されている。軸61aの両端は、分岐ダクト60の側壁に開けられた穴から分岐ダクト60の外部に突出していて、分岐ダクト60の側壁に回転可能に支持されている。軸61aの一方の端には、調整金具62が固定されている。分岐ダクト60の外部にある調整金具62の回転角度を変更して、分岐ダクト60に固定することによって、調整弁61の角度が変わる。これにより分岐ダクト60内部の開口面積が調節可能である。
【0027】
それぞれの分岐ダクト60の垂直部の側壁であって、筐体10の内側へ向かう方向である壁に穴64が形成されている。穴64を覆うように円筒65が結合されている。円筒65内部と分岐ダクト60の垂直部に渡って、部分的に曲げ部を有する導風板63a〜63dが配置されている。導風板63a〜63dは円筒65の内部では水平に配置され、分岐ダクト60の垂直部の内部ではその端部が上側になるように斜めに配置されている。斜め部分の長さは、上側に配置された導風板が最も短く、下部に配置されるものほど長くなるが、最も長いものでも分岐ダクト60の垂直部を塞がない長さである。
【0028】
吹き出し口70は、円筒65の端部を塞ぐように固定された板66に形成されている。吹き出し口70は、上下方向に5段となるように形成されている。各段に形成された穴は、導風板63a〜63dによって形成される空間の空気を、筐体10の内側方向へ吹き出す大きさ及び位置に配置されている。各段の吹き出し口70の個数は、円筒65内側の形状にあわせて略均等に分散されるように配置されている。熱電対71は、その先端が吹き出し口70の中心の穴の延長線上であって、吹き出し口70から所定の間隔をもって、配置されている。
【0029】
吹き出し口70は、後述する被加熱部材93を両側から加熱するように、二つ一組として配置されている。加熱炉100は、被加熱部材93を4個同時に加熱する構造であり、吹き出し口70は、手前側から奥側(図2及び図4において左側から右側)方向に、4組が一列に配置されている。
【0030】
排気ファン80は、筐体10の上壁外側に固定されている。排気管81は、筐体10の上壁に形成された穴と排気ファン80の吸気口とを連結している。排気ファン80の排気口は、上方に解放している。
【0031】
図6に示すように、被加熱部材93は、加熱炉100から引き出した、被加熱部材93の置き台90に載せる。図6は、置き台90を、加熱炉100から引き出した状態を示す。
筐体10の正面の下方中央部に、四角形の穴12が形成されている。穴12の幅及び高さは、被加熱部材93、載置台92及びベース91が通過できる大きさである。
【0032】
置き台90は、上に凸形状のベース91の上部に、被加熱部材93を配置するに適した形状の載置台92が、分岐ダクト60の間隔と一致する間隔で、4個配置されている。載置台92の高さは、被加熱部材93を加熱炉100の内部に配置した際に、被加熱部材93の中心が吹き出し口70の中心に一致する高さである。ベース91の一方の端部には穴12に勘合する形状及び大きさの、蓋95が固定されている。取手94は蓋95のベース91とは反対側面の下部に配置されている。
筐体10の底面内側には、上に凸形状のガイド11が形成されている。ガイド11の幅は、ベース91の内側寸法よりも小さい。
【0033】
被加熱部材93を載置台92に配置した後、置き台90を加熱炉100の内部へ装填する。置き台90は、ガイド11とベース91が勘合して、所定の位置に収納される。置き台90を最後まで押し込むことで、蓋95によって加熱炉100が閉じられる。
図7は、被加熱部材93を加熱炉100内部に配置した状態を示す斜視図であって、筐体10の側面カバーを表示していないものである。被加熱部材93は、両側の吹き出し口70から吹き出す熱風を吹き付けられる位置に配置されている。
【0034】
次に、加熱炉100で被加熱部材93を加熱する方法について説明する。
あらかじめ加熱炉100の内部を加熱しておくと、被加熱部材93を加熱する時間を短縮できるので、この予熱方法について説明する。
【0035】
送風機20の羽根を回転させ、筐体10の内部の空気を吸気口21から取り入れ、加熱ダクト30に空気を送る。ヒーター40は加熱ダクト30に送られた空気を加熱する。加熱した空気は、加熱ダクト30の水平部から屈曲部、さらに垂直部へ送られる。加熱ダクト30の連結部33から分配ダクト50の連結部53へ移動した空気は、分配ダクト50の垂直部から水平部へ送られる。分配ダクト50の水平部へ送られた空気は、それぞれの分岐口51からそれぞれの分岐ダクト60へ送られる。それぞれの分岐ダクト60へ送られた空気は、それぞれの吹き出し口70から、筐体10の内部に吹き出す。筐体内部に吹き出された空気は、筐体10の内部雰囲気温度を上げ、その後また送風機20の吸気口21から吸い込まれる。このように、空気は筐体10の内部で循環する。
加熱炉100の加熱方法は、すでに加熱した筐体10内部の空気を循環して加熱して、被加熱部材93に吹き付ける方法である。この方法は、外気を加熱して被加熱部材93に吹き付ける加熱方法よりも、消費エネルギーを低減することができて、効率的に筐体10内部を予熱することが出来る。
【0036】
ヒーター40で加熱した空気の温度は、筐体10内部の雰囲気温度よりも高温である。そのため、筐体10内部に配置されている加熱ダクト30の壁の温度は、加熱した空気よりも低温である。ヒーター40で加熱した空気は、加熱ダクト30の壁に接した部分の温度が低下する。その温度が低下した空気は、加熱ダクトの壁に形成された排出口31から加熱ダクト30の外部(筐体10の内部)に排出される。この加熱ダクト30の外部に排出された空気も、筐体10内部の雰囲気温度よりは高温であるから、筐体10内部の雰囲気温度を上げるために利用される。
【0037】
予熱完了後に、それぞれの吹き出し口70から吹き出す空気の温度差を抑制する方法を説明する。
吹き出し口70から吹き出した空気の温度は熱電対71でそれぞれが測定される。その測定結果から、その中で最も温度の低い空気を吹き出す吹き出し口70を特定する。例えば最も温度の低い空気を吹き出す吹き出し口が、最も奥側(図2及び図4において右側)に配置された吹き出し口70であったとする。当該吹き出し口70を有する分岐ダクト60は、分配ダクト50の最も奥側(図2及び図4において右側)の分岐口51から空気を分岐させるものである。
【0038】
この分岐口51の上流側に配置された排出口は、排出口52eである。排出口52eは、前述のように、開口面積を大きくすることが出来るように、長穴を2個並べた形状となっている。初期状態では、図8(A)に示すように、排出口52eは、蓋54eによって閉ざされている。筐体10の図示しない側面カバーを開けて、例えば治具などを用いて、この蓋54eの、分配ダクト50の壁面に固定している螺子を緩め、蓋54eを排出口52eが部分的に開口するように移動して、図8(B)に示すように、蓋54eを再度分配ダクト50の壁面に固定する。排出口52eからは、加熱ダクト30の壁面によって冷却された空気が、分配ダクト50の外部(筐体10内部)に排出される。その空気は、筐体10内部の空気よりは高温であるので、筐体10内部の雰囲気温度を上昇させるに役立つものである。
【0039】
その後、該当する吹き出し口70から吹き出す空気の温度を再度測定して、他の吹き出し口70との温度差を計測する。いまだ当該吹き出し口70から吹き出す空気の温度が最も低く、他の吹き出し口70から吹き出す空気の温度との差が、設定範囲を超えているようであれば、再度蓋54eの位置をずらして、排出口52eの開口面積を再調整する。この作業を、必要な排出口52a〜52eの全てに対して行うことで、全ての吹き出し口70から吹き出す空気の温度を、所定の範囲内にする。
全ての吹き出し口70から吹き出す空気の温度が所定の範囲内になれば、調整は完了する。
【0040】
また、別途用意した風量計により、それぞれの吹き出し口70から吹き出す空気の風量を測定して、それぞれの吹き出し口から吹き出す空気の流量を調整する。具体的には、図5に示すように、風量が大きい吹き出し口70を有する分岐ダクト60の、上流に配置した調整弁61の角度を調整して、該当する分岐ダクト60の内部開口面積を小さくする。また、風量が小さい吹き出し口70を有する分岐ダクト60の上流に配置した調整弁61の角度を調整して、分岐ダクト60の内部開口面積を大きくする。これは、分岐ダクト60に取り付ける調整金具62を分岐ダクト60に固定する角度を変更することで可能である。これにより、全ての吹き出し口70から吹き出す空気の風量を所定の範囲内にする。
【0041】
なお、図示していないが、それぞれの調整箇所には筐体10に開けた調整窓を開けることで、例えば治具などを用いて、人の手で調整することが可能である。
【0042】
なお、熱電対71で測定した吹き出し口70から吹き出す空気の温度が、設定値よりも高くなりすぎた場合は、ヒーター40の発熱量を減少させる。また、筐体10内部の雰囲気温度が設定値よりも高くなりすぎた場合は、排気ファン80を作動させて筐体10内部の空気を筐体10の外部に排出する。それによって筐体10の内部の気圧が減少して、筐体10の底面に形成した穴13から外気が取り込まれ、筐体10の内部の雰囲気温度が低下する。
【0043】
筐体10の内部の温度が安定し、それぞれの吹き出し口70から吹き出す空気の温度差が、所定の範囲内に調整された後に、取手94を持って、置き台90を筐体10の外部に引き出す。引き出した載置台92の上に被加熱部材93を置き、置き台90を筐体10の内部に戻す。
【0044】
それぞれの吹き出し口70からそれぞれの被加熱部材93に吹き付ける空気は、温度のばらつきがないので同じ熱量で被加熱部材93を加熱することになる。また、被加熱部材93の温度は、吹き付ける空気の温度より高くなることは無いので、加熱温度の制御も容易となる。
【0045】
以上のように、本願発明の加熱炉では、被加熱部材に吹き付ける空気の温度差を抑制して、被加熱部材を均一に加熱することが出来る。
【0046】
(変形例)
前述の実施の形態では、それぞれの吹き出し口から放出する空気の温度を一定にするために、該当箇所の開口面積を手動で調整していたが、排出口の開口面積を自動で調節する機構を採用してもよい。
【0047】
例えば、図10(A)〜図10(C)に示すように、排出口52aを塞ぐ蓋230が、ガイド240によって、両端を、上下方向にスライド可能に保持されている。蓋230の上部であって、部分的に分配ダクト50の壁面から離した位置に形成された部分には、水平方向に長い長穴231が形成されている。その長穴にピン211が挿入されている。ピン211はクランク210に形成されていて、クランク210には、ピン211とはオフセットした位置にモータ200の回転軸が固定されている。モータ200は、分配ダクト50の壁面に、取り付け金具220を介して固定されている。モータ200の回転軸を回転することで、ピン211の位置がモータ200の回転軸を中心に回転移動する。そのピン211の回転移動によって、蓋230は上下移動する。
【0048】
図10(A)は、排出口52aを全て塞いだ状態である。排出口52aが開いていないので、排出口52aからは空気が排出されない。図10(B)は、排出口52aを約半分開いた状態である。開口面積が半分であるので、この開口面積に応じた量の空気が排出される。図10(C)は、排出口52aを全て開いた状態である。開口面積は図10(B)の約2倍となり、この開口面積に応じた量の空気が排出される。
【0049】
(別の変形例)
前述の実施の形態では、被加熱部材を外気温よりも高くする方法について説明したが、本発明の構成は部材を冷却することにも使用出来る。
ヒーター40の代わりに、冷却器を加熱ダクト30の内部に配置して空気を冷却し、前述のように吹き出し口70から吹き出す冷却した空気の温度を一定にし、被冷却部材に冷却した空気を吹き付けることで、被冷却部材を均等に冷却することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 筐体
20 送風機
30 加熱ダクト
40 ヒーター
50 分配ダクト
60 分岐ダクト
70 吹き出し口
80 排気ファン
90 置き台
100 加熱炉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10