特許第6821240号(P6821240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6821240
(24)【登録日】2021年1月8日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/46 20060101AFI20210114BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   B65D1/46
   B65D1/02 220
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-38392(P2016-38392)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-154767(P2017-154767A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】當麻 徹
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−151488(JP,A)
【文献】 特開平11−130034(JP,A)
【文献】 特開2009−035321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00 − 1/48
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の口部と、該口部に連なる胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを有する容器であって、
該容器は、内容物の収容空間を形成し減容変形可能な内体と、該内体の一部を外側から覆い、該内体よりも大きな厚みを有する外体とを備え、前記内体は、前記外体と前記内体とを接着する接着部以外の領域で前記外体から剥離可能であり、
該外体は、前記胴部において上下方向に延びる柱部を有し、
前記外体の周方向の端部は、平面視において、前記容器の中心軸から外周方向に放射状に延びていることを特徴とする容器。
【請求項2】
前記外体は、前記柱部において前記内体と接着されている、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記柱部は、前記胴部の周方向の複数箇所に設けられている、請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
前記柱部は、前記口部及び前記底部まで延在する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄肉容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な用途に樹脂性容器が用いられるようになっている。例えば特許文献1には、筒状の口部、該口部に連なる胴部、及び該胴部の下端を閉塞する底部を有する樹脂製の容器本体と、口部に対して装着キャップを装着することで、容器本体内に垂下させたシリンダの上部が口部に固定され、シリンダ内より上方に突出したステムの上端に設けられた吐出ヘッドを上方への付勢力に抗して押し下げることで容器本体内の内容物を吐出させる吐出ポンプとを備える吐出ポンプ付き容器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−189317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような用途に用いる樹脂性容器を提供するにあたっては、環境への負荷やコストを低減するために、容器本体に用いる樹脂量を低減することが求められている。そのためには樹脂性容器を薄肉化することが求められるが、例えば特許文献1のように吐出ポンプと組み合わせて用いる場合には、吐出ヘッドの押し下げのための押圧力に耐える必要がある。このような押圧力は、例えば吐出量3gの吐出ポンプでは30N以上となる。しかし、特許文献1に記載されるような従来の吐出ポンプ付き容器では、容器本体の材質によっては、胴部の肉厚が1mmを下回ると上記の押圧力によって容器本体が座屈変形してしまい、スムーズな吐出が困難となる虞があった。なお、これは吐出ポンプ付き容器に限ったものではなく、薄肉容器を採用しポンプを装着しないでそのまま使用する各種ボトルにおいても、内容物の減少に伴い容器が座屈変形をおこしてボトルとしての機能を損ねたり見栄えが悪くなる虞があった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、使用する樹脂量を低減して軽量化を図ることができると共に、座屈変形を抑制することができる容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、筒状の口部と、該口部に連なる胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを有する容器であって、
該容器は、内容物の収容空間を形成し減容変形可能な内体と、該内体の一部を外側から覆い、該内体よりも大きな厚みを有する外体とを備え、前記内体は、前記外体と前記内体とを接着する接着部以外の領域で前記外体から剥離可能であり、
該外体は、前記胴部において上下方向に延びる柱部を有し、
前記外体の周方向の端部は、平面視において、前記容器の中心軸から外周方向に放射状に延びていることを特徴とする容器である。
【0007】
また、前記外体は、前記柱部において前記内体と接着されていることが好ましい。
【0008】
また、前記柱部は、前記胴部の周方向の複数箇所に設けられていることが好ましい。
【0009】
また、前記柱部は、前記口部及び前記底部まで延在することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の容器によれば、使用する樹脂量を低減して軽量化を図ることができると共に、座屈変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る容器の(a)平面一部断面図、及び(b)正面一部断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る容器の斜視図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る容器の(a)平面一部断面図、及び(b)正面一部断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る容器の斜視図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る容器の(a)平面一部断面図、及び(b)正面一部断面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
【0016】
図1(a),(b)、及び図2は、本発明の第1実施形態である容器1を示す。容器1は、内容物の注入及び注出を行う筒状の口部5と、口部5に肩部6を介して連なり、内容物の収容空間Sを形成する胴部7と、胴部7の下端を閉塞する底部8とを有する。なお、本明細書、特許請求の範囲、要約書および図面では、口部5が位置する側を上方(図1(b)における上側)とし、底部8が位置する側を下方(図1(b)における下側)とする。容器1の口部5には、雄ねじ部5aが設けられている。雄ねじ部5aは、図示しない蓋体又は吐出ポンプ等をねじ係合によって固定するために設けられている。容器1は、図1(b)の右半分に示すように、所定の座屈強度を確保可能な厚みを有する外体2と、その内側に設けられた内容物量に応じて減容変形可能な内体3によって構成されている。本実施形態では、内体3は、口部5、肩部6、胴部7、及び底部8の全ての部分に設けられている。一方、外体2は、図1(a)及び図2に示すように、容器1の中心軸周りに所定の角度αをもって放射状に延びる一対(2箇所)の領域にのみ設けられている。そして、この2箇所の領域において、外体2は、内体3と接着部4において接着されている。また、本実施形態では、2つの領域は、容器1の中心軸に関して対称に設けられている。図1(b)に示すように、外体2の厚みは、内体3の厚みよりも大きく設定されている。角度αで延びる2箇所の外体2の胴部7部分は、所定の座屈強度を有する柱部9として設けられている。図2に示すように、柱部9は、容器1の胴部7の鉛直方向にわたって延在し、口部5及び底部8まで角度αを維持しながら延びている。このように、表面積が大きい胴部7において、柱部9以外の内体3が露出している領域に厚みが大きい外体2を配置していないので、樹脂材料の使用量を削減し、容器1を軽量化することができる。また、容器1は、例えば吐出ポンプ付き容器に用いられる場合には、2箇所の柱部9が口部5にかかる押圧力を支持することができるため、吐出ヘッドの押圧力に耐えて座屈変形を生じることがない。特に本実施形態では、柱部9が、容器1の中心軸に関して対称に2箇所設けられているので、口部5にかかる押圧力を均等に支持することができる。また、容器1をポンプを装着しない各種ボトルに使用した場合にも、容器1の自立性が向上する。
【0017】
容器1は、図1(a)、及び図2に示すように、中心軸から角度αをもって放射状に延びる外体2以外の部分は、内体3のみによって構成されている。内体3は、図1(a)に二点鎖線で示すように、容器1の収容空間Sに内容物が収容されていないとき、又は使用によって内容物の体積が減少したときには、接着部4以外が外体2から剥離して減容変形する。従って、内容物を収容していない状態で容器1を梱包し輸送する場合には、容器1の半径方向(図1(a)における上下方向)の幅は、柱部9の幅にほぼ等しくなるため、容器1の収納に要する体積を小さくすることができ、輸送費を削減することができる。また、内容物を消費した後にも、容器1の幅をほぼ柱部9の幅まで抑えることができるため、廃棄の際にもかさばることがない。
【0018】
容器1は、例えば、内体3の合成樹脂素材と、外体2の合成樹脂素材とを積層して形成されるパリソンに対し、押し出しブロー成形を行うことによって形成することができる。そして、容器1を構成する内体3の材料には、例えばエチレン―ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)又はナイロンを用いることができる。また、外体2の材料には、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)又は高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)を用いることができる。
【0019】
なお、本実施形態では、容器1の中心軸から角度αを持って放射状に延びる外体2を中心軸に関して互いに対向する位置に2箇所設けたが、この態様には限定されず、1箇所のみ、又は3箇所以上に設けてもよい。そして、外体2を3箇所以上に設ける場合には、周方向に等間隔で設けることが好ましい。また、外体2は、中心軸から放射状に延びる形状以外でもよく、例えば、一定の幅を有する外体2が、対向する2箇所に設けられるなどしてもよい。
【0020】
また、本実施形態において柱部9は、鉛直方向に一定の幅で延びるように構成したが、この態様には限定されない。柱部9の幅が胴部7内で変化してもよく、また鉛直方向に対して角度を有して延びていてもよい。
【0021】
また、本実施形態では、口部5に雄ねじ部5aを形成して、蓋体等とねじ係合可能に構成したが、この態様には限定されず、例えば口部5の周囲に突部を設け、蓋体側に設けられた突部とアンダーカット係合によって固定可能に構成するなどしてもよい。
【0022】
また、本実施形態では、容器1の胴部7が円柱形状となるように形成しているが、この態様には限定されず、例えば角注形状に形成するなどしてもよい。
【0023】
以上述べたように、本実施形態によれば、容器1を、内容物の収容空間Sを形成し減容変形可能な内体3と、内体3の一部分を外側から覆う内体3よりも厚みが大きい外体2とを備え、外体2が鉛直方向に延びる柱部9を形成して柱部9において内体3と接着されるように構成した。これによって、厚みが大きい外体2は、内体3の一部分のみを覆えばよいため、樹脂材料の使用量を削減し、容器1を軽量化することができる。また、収容空間Sを形成する内体3の厚みが薄く座屈強度が十分ではない場合であっても、厚みが大きい外体2の柱部9が容器1を支持するため、容器1に押圧力を加えたときの座屈を抑制することができる。更に、内容物の充填前、及び内容物を使用した後は内体3が減容変形するので、容器1の体積を減少させることができ、内容物を充填する前の容器1の輸送コストを抑えることができる他、容器1の廃棄時にもかさばることがない。
【0024】
また、本実施形態によれば、外体2が、柱部9において内体3と接着されているため、内体3の形状を外体2に沿った状態に維持することができ、内体3の破損等を防止することができる。
【0025】
また、本実施形態によれば、柱部9が胴部7の周方向の2箇所に中心軸に関して対向して設けられているので、容器1を均等に支持することができ、押圧力に対する座屈強度を高めることができる他、容器1の自立性が高まる。
【0026】
また、本実施形態によれば、柱部9が口部5及び底部8まで延在し、口部5、肩部6及び底部8が外体2によって連結されているため、容器1の局所的な大変形を回避して、座屈強度をより高めることができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、外体2の周方向の端部が、容器1の中心軸から外周方向に放射状に延びるように構成したので、上述の押し出しブロー成形等による容器1の成形が容易となる。また、外体2で覆われていない内体3の部分を減容変形させることにより、容器1の体積を減少させて、内容物を充填する前の容器1の輸送コストを抑えることができる他、容器1の廃棄時にもかさばることがない。
【0028】
なお、本実施形態は、容器1の外体2を比較的硬質の高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)又はポリプロピレン(PP)等の材料によって形成し、内体3を比較的軟質の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)又はエチレン―ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)等の材料によって形成する場合に好適であるが、その他の材料で形成した場合にも適用可能である。
【0029】
図3(a),(b)、及び図4は、本発明の第2実施形態である容器11を示す。なお、本実施形態は、第1実施形態と比較すると、口部15の構成が異なる他は、第1実施形態と差異が無い。従って、ここでは、第1実施形態との差異点に絞って説明する。
【0030】
図3(a),(b)、及び図4に示すように、本実施形態の容器11は、口部15の全ての部分が、内体13より厚みが大きい外体12によって覆われている。従って、口部15の剛性が高まるため、蓋体等を固定したときの口部15のシール性が向上する。また、口部15に吐出ポンプを取り付けた場合にも、口部15の剛性が高まり吐出ポンプがぐらついたりすることがないので、利用者が吐出ヘッドの押し下げ動作をより安定して行うことができる。
【0031】
なお、本実施形態の容器11は、第1実施形態と同様に押し出しブロー成形等によって形成することができる他、外体12と内体13とを別体として形成した後に両者を組み立てて容器11を構成するなどしてもよい。
【0032】
以上述べたように、本実施形態によれば、容器11の口部15の全ての部分が外体12によって覆われるように構成したので、口部15の剛性が高まり、口部15のシール性が向上する。また、口部15に吐出ポンプを取り付けた場合にも、利用者が吐出ヘッドの押し下げ動作をより安定して行うことができる。
【0033】
図5(a),(b)、及び図6は、本発明の第3実施形態である容器21を示す。なお、本実施形態についても、第1実施形態及び第2実施形態との差異点に絞って説明する。
【0034】
図5(a),(b)、及び図6に示すように、本実施形態の容器21は、口部25、肩部26、及び底部28の全てにおいて、内体23が厚みの大きい外体22によって覆われている。また、胴部27には、第1実施形態と同様に鉛直方向に延びる柱部29が設けられている。この柱部29の構成に起因して、容器21は、例えば吐出ポンプ付き容器に用いられる場合には、2箇所の柱部29が口部25にかかる押圧力を支持することができるため、吐出ヘッドの押圧力に耐えて座屈変形を生じることがない。特に本実施形態では、柱部29が、容器21の中心軸に関して対称に設けられているので、口部25にかかる押圧力を均等に支持することができる。また、容器21をポンプを装着しない各種ボトルに使用した場合にも、容器21の自立性が向上する。特に本実施形態では、口部25、肩部26、及び底部28の全てが外体22で覆われているので、第1実施形態と比較して容器21全体の剛性が高まり、口部25にかかる押圧力に対する耐性及び自立性がより高まる。
【0035】
容器21は、図5(b)、及び図6に示すように、胴部27のうち柱部29以外の部分は、概ね内体23のみによって構成されている。従って、内体23が露出している広い領域に厚みが大きい外体22を配置していないので、樹脂材料の使用量を削減し、容器21を軽量化することができる。
【0036】
なお、本実施形態の容器21は、第1実施形態と同様に押し出しブロー成形等によって形成することができる他、外体22と内体23とを別体として形成した後に両者を組み立てて容器21を構成するなどしてもよい。
【0037】
以上述べたように、本実施形態によれば、口部25、肩部26、及び底部28の全てが外体22で覆われているので、容器21全体の剛性が高まり、口部25にかかる押圧力に対する耐性及び自立性がより高まる。従って、口部25に吐出ポンプを取り付けた場合にも、利用者が吐出ヘッドの押し下げ動作をより安定して行うことができる。
【0038】
なお、本実施形態では、柱部29を中心軸に関して対向する位置に2箇所設けたが、この態様には限定されず、1箇所のみ、又は3箇所以上に設けてもよい。そして、外体22を3箇所以上に設ける場合には、周方向に等間隔で設けることが好ましい。
【0039】
また、本実施形態において柱部29は、鉛直方向に一定の幅で延びるように構成したが、この態様には限定されない。柱部29の幅が胴部27内で変化してもよく、また鉛直方向に対して角度を有して延びていてもよい。
【0040】
なお、上述したところは、本発明の実施形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。そして、そのような構成は本発明の範囲内であると理解すべきである。
【符号の説明】
【0041】
1,11,21 容器
2,12,22 外体
3,13,23 内体
4,14,24 接着部
5,15,25 口部
5a,15a,25a 雄ねじ部
6,16,26 肩部
7,17,27 胴部
8,18,28 底部
9,19,29 柱部
S 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6