(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のマスクの実施の形態について、図面を参照して説明する。以下に説明する構成は、本発明の一例(代表例)であり、これに限定されない。
【0011】
なお以下の説明において、内側とは着用者に接触する側をいい、図面中の方向Y1で表す。外側とは内側の反対側をいい、図面中の方向Y2で表す。右とは図面中の方向X1をいい、左とは図面中の方向X2をいう。上とは図面中の方向Z1をいい、下とは図面中の方向Z2をいう。
【0012】
図1は、本実施形態のマスク10の斜視図である。
図2は、マスク10を内側から示す斜視図である。
【0013】
(マスク)
本実施形態のマスク10は、着用者の顔及び口を覆う本体部1と、本体部1を着用者に固定するための耳掛け部2とを備える。
【0014】
(本体部)
図3は、本体部1の層構造を示す。
本体部1は、内側から外側に向かって、第1層11、第3層13及び第2層12をこの順に備える。したがって、マスク10は多層構造を有する。
【0015】
(第1層)
第1層11は、最も内側に配置される編地である。編地である第1層11の柔軟性及び平滑性は不織布よりも高く、着用時の肌触りが良好である。
【0016】
編地の編組織としては、フライス、スムース、天竺、ベア天竺、鹿の子、片袋、ポンチローマ、ミラノリブ、パール編等が挙げられる。着用のしやすさの観点からは、伸度及び弾力性が高い緯編地が好ましい。マスク10のフィット感を高める観点からは、ベア天竺が好ましい。
【0017】
第1層11は、接触冷感を有する編地である。着用者は第1層11と接触することによって冷感を覚えるため、マスク10によって着用者の呼吸器官が覆われていても不快感が少ない。
【0018】
接触冷感を有するとは、接触冷感の指標であるQmaxが100W/m
2・℃以上であることをいう。Qmaxの数値が大きいほど、付与する冷感を高めやすい。冷感を高める観点から、Qmaxは、120W/m
2・℃以上が好ましく、150W/m
2・℃以上がより好ましく、160W/m
2・℃以上がさらに好ましい。Qmaxの上限は特にないが、210W/m
2・℃程度とすることができる。第1層11は第2層12よりも接触冷感に優れることが好ましい。
【0019】
Qmaxは、精密迅速熱物性測定装置(商品名THERMOLABO II、カトーテック社製)を用いて測定できる。具体的には、温度20℃、相対湿度65%RHの環境下で調湿された生地の表面に、30℃に加温された熱板を接触させたときの最大瞬間熱流束(W/cm
2・10℃)を測定する。この測定値を温度差1℃あたり、かつ生地面積1m
2あたりの値に換算することにより、Qmax(W/m
2・℃)が得られる。
【0020】
接触冷感は、使用する繊維、繊維の細さ、又は編組織等を選択することにより高めることができる。接触冷感に優れた繊維としては、例えばナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリウレタン等の合成繊維が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0021】
第1層11は、上述した接触冷感に優れた繊維に肌触りが良好な繊維を組み合わせることもできる。そのような繊維としては、しっとりとした肌触りを付与できるセルロース繊維を好ましく使用できる。セルロース繊維としては、キュプラと呼ばれる銅アンモニアレーヨン(例えば、旭化成かせん社製のベンベルク(登録商標)等)、ビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン、精製セルロース繊維等が挙げられる。
【0022】
接触冷感を高める観点から、第1層11の編地には熱伝導率を高める加工が施されてもよい。熱伝導率を高める加工例としては、編地にキシリトール樹脂を塗布する処理等が挙げられる。
【0023】
第1層11は、吸湿性をさらに有する。編み目内に呼気の水分を吸着することにより、しっとり感を付与することができる。吸湿性を有する第1層11は、繊維の1つとして吸湿性に優れたキュプラを用いることによって得ることができる。
【0024】
第1層11は、消臭機能をさらに有し、編み目内に匂い粒子を吸着する。優れた消臭機能は、編地の編み方、糸の細さ等を調整することによって得ることができる。また金属キレート等の消臭剤が第1層11の繊維に練りこまれるか、第1層11の編地にコートされていてもよい。
【0025】
接触冷感、吸湿性及び消臭機能を有し、かつ肌触りも良好な第1層11としては、例えば特許第61662995号に開示された編地を使用できる。これは、単糸繊度が0.8〜4dtexのセルロース繊維を20質量%以上使用した編地であって、編地の充填密度が0.26〜0.5g/m
3である。
【0026】
特許第6371593号に開示された編地も、第1層11として好適である。この編地は、セルロース繊維と合成繊維とが混繊された複合糸条と、合成繊維の糸条とが交編されたベア天竺の編地であって、編地におけるセルロース繊維の割合が20%以上である。
【0027】
(第2層)
第2層12は、最も外側に配置される編地である。第2層12は、第1層11とは異なる編地であり、通気性を有する。したがって、マスク10内部に呼気がこもりにくく、着用時の不快感が少ない。第2層12は、第1層11よりも通気性に優れることが好ましい。
【0028】
通気性は、使用する繊維、繊維の細さ、編組織等によって高めることができる。例えば、第1層11の編地よりもキュプラ等のセルロース繊維の割合を減らし、ポリエステル等の合成繊維の割合を増やした編地は通気性に優れ、第2層12の編地として好ましく使用することができる。
【0029】
また第1層11の編地の編組織を、第1層11よりも通気性に優れた編組織に変更した編地も通気性に優れるため、第2層12の編地として好ましく使用できる。通気性に優れた編組織としては、例えばハニカムメッシュ、ダブルフェイス、鹿の子等が挙げられる。
【0030】
好ましい一例を挙げると、第1層11は、ナイロン60%、キュプラ30%、ポリウレタン10%のベア天竺の編地であり、第2層12は、ポリエステル75%、キュプラ12%、ポリウレタン13%のハニカムメッシュの編地である。
【0031】
第2層12は、紫外線カット機能を有する。そのため、紫外線による肌のダメージを減らすことができる。紫外線カット機能を有するとは、紫外線の遮蔽率が80%以上であることをいう。遮蔽率は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、98%以上がさらに好ましい。
【0032】
紫外線カット機能を有する第2層12は、ポリエステル等の紫外線の遮蔽性が高い繊維を使用することにより得ることができる。またセラミックス粒子等を合成繊維に練り込むか、編地に紫外線防止剤をコートすることによっても、紫外線カット機能を有する第2層12を得ることができる。
【0033】
(第3層)
第3層13は、第1層11と第2層12との間に配置されるフィルターである。第3層13は、第1層11又は第2層12の編地よりも密度が高い。そのため、柔らかい第1層11又は第2層12を第3層13が支持して本体部1の形状を維持しやすい。
【0034】
第3層13は、単層構造であってもよいし多層構造であってもよい。本実施形態において、第3層13は、内側から外側へ向かって配置された2つのフィルター131及び132の積層体である。
【0035】
内側に配置されるフィルター131は、外側に配置されるフィルター132よりもろ過効率が高いことが好ましい。ろ過効率は、例えばフィルターに用いるファイバー径を細くするか、ファイバーの密度を高めることによって高めることができる。
【0036】
衛生性の観点からは、バクテリア(細菌)ろ過効率(BFE:Bacterial Filtration Efficiency)が高いことが好ましい。BFEは、ASTMF2101に準拠して測定される。
【0037】
花粉拡散を抑える観点からは花粉ろ過率が高いことが好ましい。飛沫拡散を抑える観点からは、微粒子ろ過効率(PFE:Particle Filtration Efficiency)が高いことが好ましい。PFEは、ASTM F2299に準拠して測定される。
【0038】
本実施形態のフィルター131は、nm単位の極細繊維、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のナノファイバーを用いた不織布シートである。またフィルター132は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成繊維の不織布シートである。PTFEのナノファイバーを用いた不織布シートは、通常の合成繊維を用いた不織布シートよりも密度が高く、ろ過効率が高い。
【0039】
本体部1の各層は、2つのパーツに分けられる。2つのパーツは本体部1の前中心か前中心近傍の中心部Mで縫着される。
図4は、本体部1の中心部Mの断面図である。
【0040】
パーツの組み合わせにより、鼻が突出する顔の形状に合わせて本体部1の形状を立体的に形成することができる。これにより、マスク10のフィット感を付与できる。また中心部Mにおけるたるみによる型崩れを防ぐことができる。呼吸による張り付きも抑えることができる。
【0041】
2つのパーツは、中心部Mにおいて複数のステッチ52、54及び55により縫着される。マスク10は、中心部Mにおいて芯材51及び53を備える。芯材51及び53は、本体部1の上端から下端に延在する。
【0042】
芯材51及び53は、例えば綿芯、接着芯、スポンジ、ウーリースピンテープ等である。一定の強度と柔軟性を有するのであれば、芯材51及び53はこれらに限らない。
【0043】
中心部Mにおいて、第1層11は、一方のパーツが芯材51を覆うように折り返され、他方のパーツとともに第1ステッチ52により縫着される。第2層11も、一方のパーツが芯材53を覆うように折り返され、他方のパーツとともに第2ステッチ54により縫着される。
【0044】
中心部Mにおける第1層11と第2層12は、第1ステッチ52と第2ステッチ54との間において、第3層13とともに第3ステッチ55により縫着される。
【0045】
本体部1は、次のように形成され得る。
第1層11の2つのパーツは第3層13の2つのパーツと重ねられる。重ねた各パーツの前中心側の端部が重ねられ、芯材51とともに縫着される。これにより、第1ステッチ52が設けられる。
【0046】
一方、第2層12の2つのパーツの前中心側の端部が重ねられ、芯材53とともに縫着される。これにより、第2ステッチ54が設けられる。
【0047】
第1ステッチ52及び第2ステッチ54は、ほつれを抑えるため、縁かがり縫いにより設けられることが好ましい。また芯材51及び53としてウーリースピンテープを用いると、洗濯による伸び止めも可能であり、好ましい。
【0048】
第3層13が縫着された第1層11の端部は、一方のパーツが芯材51を覆うように折り返される。同様に、第2層12の縫着された端部も、一方のパーツが芯材53を覆うように折り返される。
【0049】
第1層11と第2層12は、折り返されなかった他方のパーツ同士が隣り合わせに配置され、第1ステッチ52と第2ステッチ54との間で縫着される。これにより第3ステッチ55が設けられる。。
【0050】
第1層11の端部と、第2層12の端部とは、第3ステッチ55を境界として左右に分けて倒される。中心部Mが厚くなりすぎないため、縫着部分によるごわつきを避けることができる。各端部は、第1層11と第2層12の間に折り込まれるため、着用時に違和感を与えない。
【0051】
このように本体部1の中心部Mは、本体部1の素材が重なり、芯材51及び53が配置されて適度な強度を有する。したがって、中心部Mの曲線形状が維持されやすく、本体部1の型崩れを抑えやすい。
【0052】
本体部1の上下の端部は、折り曲げられたパイピングテープによって覆われ、パイピングテープと縫着される。
【0053】
本体部1の左右の端部では、第1層11と第3層13とがともに内側に折り返される。同様に第2層12も内側に折り返される。第1層11と第3層13の折り返し部分が第2層12の折り返し部分と縫着される。
【0054】
(識別部)
第1層11は、第1層11の面を示す識別部3を備える。識別部3によって着用者は肌触りの良い第1層11の面を容易に把握することができる。
【0055】
識別部3は、第1層11の面上の一部に印刷された文字、イラスト、ロゴ等のマークであってもよい。また第1層11の全面を第2層12と異なる色に染色することによっても、識別部3を設けることができる。識別部3は、第1層11の面と第2層12の面を識別できるのであればこれらに限定されない。
【0056】
(耳掛け部)
耳掛け部2は、本体部1の左右両端から延びる。耳掛け部2はテープ状の編地であり、一端が本体部1の左右両端の上側に、他端が下側に取り付けられて、ループを形成する。
【0057】
本実施形態において、耳掛け部2は、本体部1の上下の縁を覆うパイピングテープと1つの部材として一体に構成される。
【0058】
本実施形態において、耳掛け部2は第2層12と同じ編地である。肌触りが良い編地であるため、快適に着用できる。また編地は伸縮性を有するため、耳が痛くなりにくい。
【0059】
以上のように、本実施形態によれば、フィルター機能を有し、ごわつきやすい第3層13は、編地である第1層11と第2層12の間に配置され、着用者の肌に直接接触しない。
【0060】
着用者に接する内側には接触冷感を有する編地である第1層11が配置される。そのため、肌触りが良好であり、夏のように気温が高い時期でも快適に着用できる。第2層12は、通気性を有する編地であり、マスク10内の換気が容易である。
【0061】
このような多層構造によって、フィルター機能に優れ、かつ着用時の不快感が少ないマスク10の提供が可能である。
【0062】
第1層11、第2層12及び第3層13は、本体部1の中心部Mにおいて縫着されている。したがって、中心部Mにおけるたるみによる型崩れを抑えることができる。さらに中心部Mには芯材51及び53を縫い合わせるため、立体形状を維持しやすい。
【0063】
マスク10は、本体部1及び耳掛け部2に編地を使用しており、洗濯可能である。汚れを落として衛生性を維持することができる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その発明の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【解決手段】多層構造を有するマスク(10)において、本体部(1)と、耳掛け部(2)とを備える。本体部(1)は、着用者に接する内側に第1層(11)と、外側に第2層(12)と、第1層(11)と第2層(12)の間に第3層(13)とを備える。第1層(11)は、接触冷感を有する編地である。第2層(12)は、通気性を有する編地である。第3層(13)は、フィルターである。