(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
検出対象を流れる電流によって生じる磁界の磁力線が検出面を通過する際の当該磁界を検出して検出信号を出力する検出素子と、当該検出素子から出力された前記検出信号に基づいて前記電流の電流値を算出するためのセンサ信号を出力する信号処理部とを備えた検出センサであって、
前記検出面同士が互いに平行に対向する2つの前記検出素子を1組とする検出素子対を2つ備え、
前記各検出素子対は、1つの当該検出素子対における前記検出面の垂線と他の当該検出素子対における前記検出面の垂線とが同一の平面内で互いに交差するように配置され、かつ当該各検出素子対の一方を構成する前記各検出素子の前記検出面が前記平面上に規定した直交座標の一方の座標軸に沿い、前記各検出素子対の他方を構成する前記各検出素子の前記検出面が前記直交座標の他方の座標軸に沿うように当該各検出素子対が配置され、
前記信号処理部は、前記検出素子対を構成する前記2つの検出素子からそれぞれ出力された前記検出信号の差動信号を前記センサ信号として出力し、
前記各検出素子対についての前記差動信号に基づいて前記電流の電流値および当該電流の方向を算出する第1演算部を備え、当該第1演算部は、前記電流の電流値における前記一方の座標軸の方向に沿った成分である第1成分を前記一方の検出素子対についての前記差動信号に基づいて特定し、前記電流の電流値における前記他方の座標軸の方向に沿った成分である第2成分を前記他方の検出素子対についての前記差動信号に基づいて特定し、前記第1成分と前記第2成分との2乗和平方根を前記電流の電流値として算出すると共に、前記第1成分と前記第2成分との逆正接によって特定される方向を前記電流の方向として算出する検出センサ。
検出対象を流れる電流によって生じる磁界の磁力線が検出面を通過する際の当該磁界を検出して検出信号を出力する検出素子と、当該検出素子から出力された前記検出信号に基づいて前記電流の電流値を算出するためのセンサ信号を出力する信号処理部とを備えた検出センサであって、
前記検出面同士が互いに平行に対向する2つの前記検出素子を1組とする検出素子対を複数組備え、
前記各検出素子対は、1つの当該検出素子対における前記検出面の垂線と他の当該検出素子対における前記検出面の垂線とが同一の平面内で互いに交差するように配置されると共に、当該検出素子対をユニット化した検出素子ユニットとして構成され、
前記検出素子ユニットには、前記検出対象に対して当該検出素子ユニットを位置合わせするための複数の位置合わせ用の標識が設けられ、
前記信号処理部は、前記検出素子対を構成する前記2つの検出素子からそれぞれ出力された前記検出信号の差動信号を前記センサ信号として出力し、
前記標識を撮像する撮像部と、当該撮像部によって撮像された画像に基づいて前記検出素子ユニットを位置させる規定位置と当該検出素子ユニットの実際の位置との位置ずれ量を算出する演算部Aと、前記位置ずれ量が予め決められた基準値以上のときに報知処理を行う報知部とを備えている検出センサ。
前記平面に沿った平面方向に前記検出素子ユニットを移動させると共に前記平面の垂線を軸とする回動方向に当該検出素子ユニットを回動させる第1移動機構を備えている請求項2記載の検出センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の回路基板検査装置には、改善すべき以下の課題がある。すなわち、この回路基板検査装置では、導体パターンに検査用信号が流れることによって発生する磁界を磁界センサを用いて検出することによってパッドと導体パターンとの接続状態の良否を検査している。しかしながら、検査対象の導体パターンとパッドとの接続状態が不良であったとしても、検査対象外の導体パターン等に電流が流れることがあり、このときには検査対象外の導体パターン等で発生する磁界を磁界センサが検出して、その結果、検査対象の導体パターンとパッドとの接続状態が良好との誤った検査がされるおそれがある。また、パッドと導体パターンとの接続状態の良否を正確に検査するには、電流が流れる方向を特定して、図面等によって特定される導体パターンの配置位置と電流が流れる方向とを比較して磁界を発生している導体パターンが検査対象の導体パターンであるか否かを特定する必要がある。しかしながら、従来の回路基板検査装置では、電流が流れる方向を特定することができないため、パッドと導体パターンとの接続状態の良否を正確に検査することが困難となっている。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、検査対象を正確に検査し得る検出センサおよび検査装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載の検出センサは、検出対象を流れる電流によって生じる磁界の磁力線が検出面を通過する際の当該磁界を検出して検出信号を出力する検出素子と、当該検出素子から出力された前記検出信号に基づいて前記電流の電流値を算出するためのセンサ信号を出力する信号処理部とを備えた検出センサであって、前記検出面同士が互いに平行に対向する2つの前記検出素子を1組とする検出素子対を
2つ備え、前記各検出素子対は、1つの当該検出素子対における前記検出面の垂線と他の当該検出素子対における前記検出面の垂線とが同一の平面内で互いに交差するように配置され、
かつ当該各検出素子対の一方を構成する前記各検出素子の前記検出面が前記平面上に規定した直交座標の一方の座標軸に沿い、前記各検出素子対の他方を構成する前記各検出素子の前記検出面が前記直交座標の他方の座標軸に沿うように当該各検出素子対が配置され、前記信号処理部は、前記検出素子対を構成する前記2つの検出素子からそれぞれ出力された前記検出信号の差動信号を前記センサ信号として出力
し、前記各検出素子対についての前記差動信号に基づいて前記電流の電流値および当該電流の方向を算出する第1演算部を備え、当該第1演算部は、前記電流の電流値における前記一方の座標軸の方向に沿った成分である第1成分を前記一方の検出素子対についての前記差動信号に基づいて特定し、前記電流の電流値における前記他方の座標軸の方向に沿った成分である第2成分を前記他方の検出素子対についての前記差動信号に基づいて特定し、前記第1成分と前記第2成分との2乗和平方根を前記電流の電流値として算出すると共に、前記第1成分と前記第2成分との逆正接によって特定される方向を前記電流の方向として算出する。
【0007】
また、請求項2記載の検出センサは、
検出対象を流れる電流によって生じる磁界の磁力線が検出面を通過する際の当該磁界を検出して検出信号を出力する検出素子と、当該検出素子から出力された前記検出信号に基づいて前記電流の電流値を算出するためのセンサ信号を出力する信号処理部とを備えた検出センサであって、前記検出面同士が互いに平行に対向する2つの前記検出素子を1組とする検出素子対を複数組備え、前記各検出素子対は、1つの当該検出素子対における前記検出面の垂線と他の当該検出素子対における前記検出面の垂線とが同一の平面内で互いに交差するように配置されると共に、当該検出素子対をユニット化した検出素子ユニットとして構成され、前記検出素子ユニットには、前記検出対象に対して当該検出素子ユニットを位置合わせするための複数の位置合わせ用の標識が設けられ、前記信号処理部は、前記検出素子対を構成する前記2つの検出素子からそれぞれ出力された前記検出信号の差動信号を前記センサ信号として出力し、前記標識を撮像する撮像部と、当該撮像部によって撮像された画像に基づいて前記検出素子ユニットを位置させる規定位置と当該検出素子ユニットの実際の位置との位置ずれ量を算出する演算部Aと、前記位置ずれ量が予め決められた基準値以上のときに報知処理を行う報知部とを備えている。
【0009】
また、請求項
3記載の検出センサは、請求項
2記載の検出センサにおいて、前記平面に沿った平面方向に前記検出素子ユニットを移動させると共に前記平面の垂線を軸とする回動方向に当該検出素子ユニットを回動させる第1移動機構を備えている。
【0010】
また、請求項
4記載の検出センサは、請求項
2または
3記載の検出センサにおいて、前記磁界を検出する際に前記検出対象に近接する前記検出素子ユニットの先端部に弾性部材が配設されている。
【0011】
また、請求項
5記載の検出センサは、請求項
4記載の検出センサにおいて、前記平面の垂線に沿った方向に前記検出素子ユニットを移動させる第2移動機構を備え、前記第2移動機構は、エアシリンダを備えて構成されている。
【0013】
また、請求項
6記載の検出センサは、請求項
2から5のいずれかに記載の検出センサにおいて、
前記各検出素子対についての前記差動信号に基づいて前記電流の電流値および当該電流の方向を算出する演算部Bを備え、前記検出素子対を2つ備えると共に、当該各検出素子対の一方を構成する前記各検出素子の前記検出面が前記平面上に規定した直交座標の一方の座標軸に沿い、前記各検出素子対の他方を構成する前記各検出素子の前記検出面が前記直交座標の他方の座標軸に沿うように当該各検出素子対が配置され、前記
演算部Bは、
前記電流の電流値における前記一方の座標軸の方向に沿った成分である第1成分を前記一方の検出素子対についての前記差動信号に基づいて特定し、前記電流の電流値における前記他方の座標軸の方向に沿った成分である第2成分を前記他方の検出素子対についての前記差動信号に基づいて特定し、前記第1成分と前記第2成分との2乗和平方根を前記電流の電流値として算出すると共に、前記第1成分と前記第2成分との逆正接によって特定される方向を前記電流の方向として算出し、かつ前記
演算部Aによって算出された前記位置ずれ量に基づいて前記電流の電流値および前記電流の方向を補正する。
【0014】
また、請求項
7記載の検出センサは、請求項
2から
6のいずれかに記載の検出センサにおいて、前記検出素子ユニットには、前記検出素子の動作確認を行う際に動作確認用電流を流す動作確認用導体が配設されている。
【0015】
また、請求項
8記載の検出センサは、請求項
7記載の検出センサにおいて、前記検出信号および前記センサ信号を導通させる導体パターンを有する回路基板を備え、前記動作確認用導体は、前記回路基板に形成されている。
【0016】
また、請求項
9記載の検査装置は、請求項1から
8のいずれかに記載の検出センサと、当該検出センサから出力された前記センサ信号に基づいて前記検出対象を有する検査対象を検査する検査部とを備えている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1
,2記載の検出センサおよび請求項
9記載の検査装置では、検出面同士が互いに平行に対向する2つの検出素子を1組とする検出素子対を複数組備え、信号処理部が、各検出素子対を構成する2つの検出素子からそれぞれ出力された検出信号の差動信号をセンサ信号として出力する。この場合、この構成では、検出素子対を構成する2つの検出素子の各検出面から等距離でかつ各検出面の近くに電流が流れるときには、各検出素子からそれぞれ出力される各検出信号の差動信号であるセンサ信号は1つの検出素子から出力される検出信号よりも大きな値となる結果、磁界検出感度を充分に向上させることができる。また、この構成では、電流が流れる位置が検出素子対を構成する2つの検出素子から遠いときには、各検出素子から出力される検出信号に含まれるこの電流によって生じる磁界に対応する成分を相殺することができる。このため、この検出センサおよび検査装置によれば、検出対象とは異なる部位を流れる電流によって発生する磁界による検査への影響を十分に低減することができる。また、この検出センサおよび検査装置では、検出素子対を複数組備えているため、各検出素子対についてのセンサ信号に基づいて電流が流れる方向を算出することができる。このため、この検出センサおよび検査装置によれば、電流が流れる方向によってその電流が検出対象を流れる電流であるか否かを確実に判別することができる結果、検出対象以外の部位に流れる電流に基づいて誤った検査がされる事態を確実に回避することができる。したがって、この検出センサおよび検査装置によれば、検査対象を正確に検査することができる。
【0018】
また、請求項
1記載の検出センサおよび請求項
9記載の検査装置によれば、2つの検出素子対の一方における各検出素子の検出面を直交座標の一方の座標軸に沿わせ、各検出素子対の他方における各検出素子の検出面を直交座標の他方の座標軸に沿わせ、第1演算部が、各検出素子対についての各差動信号によって特定した一方の座標軸の方向の第1成分と他方の座標軸の方向の第2成分との2乗和平方根を検出対象を流れる電流の電流値として算出すると共に、第1成分と第2成分との逆正接を検出対象を流れる電流の方向として算出することにより、検出対象を流れる電流の電流値および方向を2つの検出素子対だけで特定することができる結果、検出センサおよび検査装置の構成を簡略化することができる。
【0019】
また、請求項
2記載の検出センサおよび請求項
9記載の検査装置によれば、各検出素子をユニット化した検出素子ユニットに位置合わせ用の複数の標識を設けたことにより、検出素子ユニットの位置合わせを容易に行うことができる。
また、演算部Aが撮像部によって撮像された標識の画像に基づいて検出素子ユニットの位置ずれ量を算出し、位置ずれ量が予め決められた基準値以上のときに報知部が報知処理を行うことにより、検出素子ユニットの位置ずれが大きいことを把握することができるため、検出素子ユニットの位置ずれによる検出精度の低下を確実に回避することができる。
【0020】
また、請求項
3記載の検出センサおよび請求項
9記載の検査装置によれば、平面に沿った平面方向に検出素子ユニットを移動させると共に平面の垂線を軸とする回動方向に検出素子ユニットを回動させる第1移動機構を備えたことにより、例えば、検出素子ユニットを支持する支持台の表面に載置した検出センサ全体を表面に沿って手動で移動させて検出素子ユニットの位置合わせを行う構成と比較して、位置合わせを十分正確に行うことができる。
【0021】
また、請求項
4記載の検出センサおよび請求項
9記載の検査装置によれば、検出素子ユニットの先端部に弾性部材を配設したことにより、検出素子ユニットの移動によって先端部が検出対象に当接したとしても、弾性部材が緩衝材として機能して、検出対象および検出素子ユニットの損傷を確実に防止することができる。また、検出素子ユニットの先端部を検出対象に当接させることで、検出対象と検出素子ユニットとの距離を一定に維持することができるため、検出対象と検出素子ユニットとの距離が変化することによる検出精度の低下を確実に防止することができる。
【0022】
また、請求項
5記載の検出センサおよび請求項
9記載の検査装置によれば、平面の垂線に沿った方向に検出素子ユニットを移動させる第2移動機構をエアシリンダを備えて構成したことにより、規定通りの圧力で検出対象に検出素子ユニットを押圧させることができるため、検出対象と検出素子ユニットとの距離を確実に一定に維持することができる結果、検出対象と検出素子ユニットとの距離が変化することによる検出精度の低下をより確実に防止することができる。
【0024】
また、請求項
6記載の検出センサおよび請求項
9記載の検査装置によれば、
演算部Bが位置ずれ量に基づいて電流の電流値および電流の方向を補正することにより、検出素子ユニットに位置ずれが生じている場合においても、その位置ずれによる検出精度の低下を確実に回避することができる。
【0025】
また、請求項
7記載の検出センサおよび請求項
9記載の検査装置によれば、検出素子の動作確認を行う際に動作確認用電流を流す動作確認用導体を検出素子ユニットに配設したことにより、ダミー基板を用いて検出素子の動作確認を行う必要がある構成(動作確認用導体が配設されていない構成)とは異なり、ダミー基板を用いることなく検出素子の動作確認を行うことができるため、検査効率を十分に向上させることができる。
【0026】
また、請求項
8記載の検出センサおよび請求項
9記載の検査装置によれば、検出信号およびセンサ信号を導通させる導体パターンを有する回路基板に動作確認用導体を形成したことにより、回路基板とは別体の動作確認用導体を設ける構成と比較して、検出センサおよび検査装置の製造工程を簡略化することができるため、その分、検出センサおよび検査装置の製造コストを低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、検出センサおよび検査装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0029】
最初に、基板検査装置1の構成について説明する。
図1に示す基板検査装置1は、検査装置の一例であって、例えば、
図7に示す基板70を検査可能に構成されている。この場合、基板70は、導体パターン(例えば同図に示す導体パターン72a,72b等)が形成された矩形の基板本体71と、裏面に配列された複数のパッド(例えば同図に示すパッド74a,74b等)が導体パターンに接続された状態で基板本体71に実装された集積回路73とを備えて構成されている。
【0030】
一方、基板検査装置1は、
図1に示すように、磁気検出センサ2、支持台3、搬送機構4、電流出力部5、プロービング機構6、表示部7および制御部8を備えて構成されている。
【0031】
磁気検出センサ2は、検出センサの一例であって、
図2,3に示すように、検出素子ユニット21、信号処理部22、フレキシブル基板23(
図4も参照)、撮像部24、第1移動機構25、第2移動機構26および演算部27を備えて構成されている。
【0032】
検出素子ユニット21は、
図4に示すように、板状に形成された検出素子としての4つの磁気検出素子31a〜31d(以下、区別しないときには「磁気検出素子31」ともいう)と、角柱状に形成された支持部材32と、弾性部材33とを備えて構成されている。
【0033】
各磁気検出素子31は、互いに同じ電気的特性を有し、
図7に示す検出対象としての基板70の導体パターン72a,72bや集積回路73内の素子73aに流れる電流によって生じる磁界(例えば、
図8に示す磁界Ma)の磁力線(例えば、同図に示す磁力線Lma)が検出面31f(同図参照)を通過したときに、その磁界を検出して検出信号Sdを出力する。
【0034】
また、
図4に示すように、磁気検出素子31a,31bは各々の検出面31f同士が互いに平行に対向するように、支持部材32における対向する2つの側面にそれぞれ固定されている。また、磁気検出素子31c,31dは各々の検出面31f同士が互いに平行に対向するように、支持部材32における対向する2つの側面(磁気検出素子31a,31bが固定されている2つの側面とは異なる2つの側面)にそれぞれ固定されている。
【0035】
また、各磁気検出素子31は、
図5に示すように、角柱状の支持部材32の各側面に固定されることにより、磁気検出素子31a,31bにおける検出面31fの垂線Lpと、磁気検出素子31c,31dにおける検出面31fの垂線Lpとが平面Fs(検査の際に基板70の表面と平行となる平面)内で互いに交差(例えば、直交)するように配置されている。なお、以下の説明において、磁気検出素子31a,31bによって構成される1組の検出素子対を「検出素子対30a」ともいい、磁気検出素子31c,31dによって構成される1組の検出素子対を「検出素子対30b」ともいう。また、検出素子対30a,30bを区別しないときには「検出素子対30」ともいう。
【0036】
また、
図4に示すように、各磁気検出素子31における検出素子ユニット21の先端部21t(検出対象の電流を検出する際に検出対象に近接する端部)側の端面には、基板70に対する検出素子ユニット21の位置合わせをする際に用いる3つの標識31mが設けられている。
【0037】
弾性部材33は、
図4に示すように、検出素子ユニット21の先端部21t(支持部材32の先端部)に配設されている。また、弾性部材33は、一例として、弾性を有し、かつ非導電性を有する非磁性材料(例えば、シリコーンゴム)で板状に形成されている。
【0038】
信号処理部22は、
図2に示すように、各磁気検出素子31から出力された検出信号Sdに基づいて、電流出力部5から出力される電流Stに起因して検出対象を流れる電流の検出に用いるセンサ信号Ssを出力する。この場合、信号処理部22は、検出素子対30aを構成する2つの磁気検出素子31a,31bからそれぞれ出力された検出信号Sdの差動信号をセンサ信号Ssとして出力すると共に、検出素子対30bを構成する2つの磁気検出素子31c,31dからそれぞれ出力された検出信号Sdの差動信号をセンサ信号Ssとして出力する。
【0039】
フレキシブル基板23は、回路基板に相当し、検出素子ユニット21の各磁気検出素子31から出力された検出信号Sdや信号処理部22から出力されたセンサ信号Ssを導通させる導体パターンを有して、
図4に示すように、先端部側(
図6における上側)が各磁気検出素子31に取り付けられている。また、
図6に示すように、フレキシブル基板23の先端部には、図外の導体パターンに接続された動作確認用導体23aが形成されている。この場合、検出対象を検査するのに先立ち、導体パターンを介してこの動作確認用導体23aに動作確認用電流を流した状態で各磁気検出素子31から出力された検出信号Sdの信号の大きさを調べることによって各磁気検出素子31の動作確認をすることが可能となっている。なお、この例では、信号処理部22を構成する図外の回路がフレキシブル基板23に実装されている。
【0040】
撮像部24は、検出素子ユニット21の各磁気検出素子31に設けられている標識31mを撮像する。
【0041】
第1移動機構25は、
図2,3に示すように、XY移動機構25aおよび回動機構25bを備えて構成されている。XY移動機構25aは、操作に応じて、上記した平面Fs(
図5参照)に沿った平面方向(X方向およびY方向:
図3参照)に検出素子ユニット21を移動させる。また、回動機構25bは、操作に応じて、平面Fsの垂線を軸とする回動方向(θ方向:
図7参照)に検出素子ユニット21を回動させる。
【0042】
第2移動機構26は、平面Fsの垂線に沿った方向(Z方向:
図3参照)に検出素子ユニット21を移動させる。この場合、第2移動機構26は、
図2,3に示すように、エアシリンダ26a、レギュレータ26b、および図外のエア供給装置を備え、レギュレータ26bによって規定される圧力で検出素子ユニット21を押圧するように構成されている。
【0043】
演算部27は、第1演算部
および演算部Bとして機能し、各検出素子対30についてのセンサ信号Ssに基づいて検出対象を流れる電流の電流値Imおよび電流の方向(後述するX軸に対する角度ψ)を算出する。また、演算部27は、
演算部Aとして機能し、撮像部24によって撮像された画像に基づいて検出素子ユニット21を位置させるべき位置として予め決められた規定位置と検出素子ユニット21が実際に位置している実位置との位置ずれ量Aを算出する。また、演算部27は、算出した位置ずれ量Aのうちの回動方向(θ方向)の位置ずれ量Aθに基づいて電流値Imを補正する。
【0044】
支持台3は、
図3に示すように、上面に載置された検出素子ユニット21を支持可能に構成されている。
【0045】
搬送機構4は、基板70が供給される供給位置Ps(
図3参照)と基板70に対する検査が行われる検査位置Pe(同図参照)との間で基板70を搬送する。
【0046】
電流出力部5は、制御部8の制御に従って検査用の電流Stを生成して出力する。
【0047】
プロービング機構6は、制御部8の制御に従ってプローブ51(
図1参照)を移動させることにより、基板70におけるプロービングポイント(例えば、
図7に示すプロービングポイントPp1,Pp2)にプローブ51をプロービング(接触)させる。
【0048】
表示部7は、制御部8の制御に従って各種の画像を表示する。この場合、表示部7は、報知部として機能し、磁気検出センサ2の演算部27によって算出された上記の位置ずれ量Aが予め決められた基準値Ar以上のときにその旨を報知する(報知処理を行う)。
【0049】
制御部8は、基板検査装置1を構成する各部を制御する。また、制御部8は、検査部として機能し、磁気検出センサ2の演算部27によって算出された電流の電流値Imおよび方向に基づいて基板70を検査する。
【0050】
次に、基板検査装置1を用いて基板70を検査する検査方法について、図面を参照して説明する。
【0051】
検査に先立ち、検出素子ユニット21における各磁気検出素子31の動作確認を行う。具体的には、フレキシブル基板23に形成されている各動作確認用導体23aにフレキシブル基板23の導体パターンを介して動作確認用電流を流す。この際に、各動作確認用導体23aに磁界が発生し、この磁界の磁力線が各検出面31fの検出面31fを通過する。ここで、磁気検出素子31が正常に動作しているときには、予め規定された規定値以上の大きさの検出信号Sdが磁気検出素子31から出力される。このため、検出信号Sdの大きさを規定値と比較することによって各磁気検出素子31の動作確認をすることが可能となっている。
【0052】
この場合、動作確認用導体23aが検出素子ユニット21に配設されていない構成では、例えば、動作確認用のダミー基板に磁気検出センサ2を近接させてダミー基板の導体パターンにプローブ51を介して電流を供給して磁気検出素子31の動作確認を行う必要がある。これに対して、この磁気検出センサ2では、ダミー基板を用いることなく磁気検出素子31の動作確認を行うことができるため、検査効率を十分に向上させることが可能となっている。また、動作確認用導体23aがフレキシブル基板23に形成されているため、動作確認用導体23aをフレキシブル基板23とは別に設ける構成と比較して、磁気検出センサ2の製造工程を簡略化することができるため、その分製造コストを低減させることが可能となっている。
【0053】
次いで、各磁気検出素子31が動作が正常であると確認したときには、支持台3に磁気検出センサ2を載置し、続いて、磁気検出センサ2における検出素子ユニット21の先端部21tと規定位置との位置合わせを行う。具体的には、各磁気検出素子31に設けられている標識31mを撮像部24に撮像させる。この際に、撮像部24が画像データを出力し、制御部8が、画像データに基づく標識31mの撮像画像を表示部7に表示させる。また、制御部8は、検出素子ユニット21が規定位置に位置したときの標識31mの位置を示す画像(以下、「参照画像」ともいう)を撮像画像と共に表示部7に表示させる。
【0054】
次いで、撮像画像および参照画像における標識31mの画像位置が一致するように、磁気検出センサ2における第1移動機構25のXY移動機構25aを操作して検出素子ユニット21をXY方向に移動させると共に、第1移動機構25の回動機構25bを操作して検出素子ユニット21をθ方向に回動させる。以上により、磁気検出センサ2の位置合わせが終了する。この場合、
図7に示すように、矩形の基板70における隣り合う2辺における一方の辺の方向をX軸とすると共に他方の辺の方向をY軸とするXY座標(基板70の表面に平行な平面Fs上に規定した直交座標に相当する)のX軸(一方の座標軸)に磁気検出素子31a,31bの検出面31fが沿い、XY座標のY軸(他方の座標軸)に磁気検出素子31c,31dの検出面31fが沿い、かつ検出対象の集積回路73の中心と各磁気検出素子31によって囲まれる矩形の領域の中心とが一致するように磁気検出センサ2を位置合わせしたものとする。
【0055】
上記したように、磁気検出素子31a,31bの検出面31fがX軸に沿い、磁気検出素子31c,31dの検出面31fがY軸に沿うように磁気検出センサ2を配置した状態では、
図8に示すように、X軸方向に電流が流れたときに生じる磁界(同図に示す磁界Ma)を検出素子対30aを構成する磁気検出素子31a,31bが検出し、
図9に示すように、Y軸方向に電流が流れたときに生じる磁界(同図に示す磁界Ma)を検出素子対30bを構成する磁気検出素子31c,31dが検出する。
【0056】
続いて、図外の操作部を操作して基板70の搬送を指示する。これに応じて、制御部8が搬送機構4を制御して基板70を供給位置Psから検査位置Peに移動させる(
図3参照)。次いで、磁気検出センサ2の第2移動機構26を操作して、レギュレータ26bを介してエアシリンダ26aにエアを供給させる。この際に、エアシリンダ26aが検出素子ユニット21を基板70に向けて移動させ、レギュレータ26bによって規定される圧力で基板70に検出素子ユニット21を押圧する。
【0057】
この場合、この磁気検出センサ2では、検出素子ユニット21の先端部21tに弾性部材33が配設されているため、検出素子ユニット21の移動によって先端部21tが基板70(基板本体71)に当接したとしても、弾性部材33が緩衝材として機能して、基板70および検出素子ユニット21の損傷が確実に防止される。また、検出素子ユニット21の先端部21tを基板70に当接させることで、基板70と検出素子ユニット21(各磁気検出素子31)との距離を一定に維持することができるため、基板70と検出素子ユニット21との距離が変化することによる検出精度の低下を確実に防止することが可能となっている。また、この磁気検出センサ2では、エアシリンダ26aおよびレギュレータ26bを備えて第2移動機構26が構成されているため、簡易な構成でありながら、規定通りの圧力で基板70に検出素子ユニット21を押圧させることができる結果、基板70と検出素子ユニット21との距離を確実に一定に維持することが可能となっている。
【0058】
続いて、測定開始を指示する。これに応じて、制御部8は、電流出力部5を制御して検査用の電流Stを出力させる。この場合、電流出力部5は、一例として、交流電流に直流電流を重畳した電流Stを出力する。続いて、制御部8は、プロービング機構6を制御して、
図7に示すプロービングポイントPp1,Pp2にプローブ51をプロービングさせる。この際に、電流出力部5から出力された電流Stがプローブ51を介してプロービングポイントPp1,Pp2間に供給される。
【0059】
ここで、
図7に示すように、基板70の集積回路73のパッド74aと導体パターン72aとの接続状態およびパッド74bと導体パターン72bとの接続状態が共に良好で、各パッド74a,74bに接続されている集積回路73内の素子(例えば、同図に示す素子73a)に保護ダイオードや寄生ダイオードが存在するときには、同図に矢印で示すように、プロービングポイントPp1,Pp2間に供給された電流Stがその素子73aを流れる。また、
図8,9に示すように、素子73aを流れる電流によって磁界Maが生じる。
【0060】
この際に、
図8,9に示すように、磁気検出センサ2の検出素子ユニット21における各磁気検出素子31の検出面31fを磁界Maの磁力線Lmaが通過したときには、各磁気検出素子31が磁界Maを検出して検出信号Sdを出力する。
【0061】
次いで、信号処理部22が、検出素子対30aを構成する2つの磁気検出素子31a,31bからそれぞれ出力された検出信号Sdの差動信号をセンサ信号Ssとして出力すると共に、検出素子対30bを構成する2つの磁気検出素子31c,31dからそれぞれ出力された検出信号Sdの差動信号をセンサ信号Ssとして出力する。この場合、
図8,9に示すように、検出素子対30を構成する2つの磁気検出素子31の各検出面31fから等距離でかつ各検出面31fの近くに電流Stが流れるときには、各磁気検出素子31の検出面31fを通過する磁力線Lmaの向きが逆向きのため、各磁気検出素子31からは、大きさが等しく極性が互いに逆の検出信号Sdがそれぞれ出力される。この結果、各磁気検出素子31からそれぞれ出力される各検出信号Sdの差動信号であるセンサ信号Ssは、1つの磁気検出素子31から出力される検出信号Sdよりも大きな値(例えば、2倍の大きさ)となる。つまり、この磁気検出センサ2では、1つの磁気検出素子31で磁界を検出する構成と比較して、十分に大きなセンサ信号Ssを得ることが可能となっている。
【0062】
一方、例えば、基板70に複数の集積回路73が配設され、検出対象としている素子73aとは異なる集積回路の素子73bに導体パターン72a,72bを介して電流Stが流れているときには、
図10に示すように、素子73aに流れる電流Stによって生じる磁界Maの磁力線Lmaに加えて、素子73bに流れる電流Stによって生じる磁界Mbの磁力線Lmbが検出素子対30を構成する2つの磁気検出素子31(同図では、磁気検出素子31a,31bだけを図示している)の検出面31fを通過することがある。この場合、素子73bを流れる電流Stの位置が磁気検出素子31a,31bから遠いときには、同図に示すように、磁気検出素子31a,31bの検出面31fを通過する磁力線Lmaの向きが同じ向きで、磁気検出素子31a,31bの位置における磁界Mbの大きさが同程度のため、磁気検出素子31a,31bから出力される検出信号Sdに含まれる磁界Mbに対応する成分は、信号処理部22によって差動信号に変換される際に相殺(ほぼ相殺)されることとなる。このため、この磁気検出センサ2では、上記したように、検出対象の素子73aとは異なる素子73bに流れる電流Stによる磁界Mbの影響を十分に低減することが可能となっている。
【0063】
続いて、演算部27が、各検出素子対30についてのセンサ信号Ssに基づいて検出対象を流れる電流の電流値Imおよび電流の方向を算出する。具体的には、演算部27は、
図11に示すように、検出素子対30a(磁気検出素子31a,31b)についてのセンサ信号Ssの電流値を第1成分Im1として特定すると共に、検出素子対30b(磁気検出素子31c,31d)についてのセンサ信号Ssの電流値を第2成分Im2として特定する。次いで、演算部27は、第1成分Im1と第2成分Im2との2乗和平方根(√(Im1
2+Im2
2))を検出対象としての集積回路73に流れる電流の電流値Imとして算出する。また、演算部27は、第1成分Im1と第2成分Im2との逆正接(arctan(Im1/Im2))によって特定される角度(
図11に示す角度ψ)を検出対象としての集積回路73に流れる電流の方向として算出する。
【0064】
この場合、上記したようにX軸方向に電流が流れたときに生じる磁界を検出素子対30a(磁気検出素子31a,31b)が検出し(
図8参照)、Y軸方向に電流が流れたときに生じる磁界を検出素子対30b(磁気検出素子31c,31d)が検出する(
図9参照)。このため、例えば、
図7に示すように、X軸に対して45°傾斜した向きに電流Stが流れるときには、
図11に示すように、検出素子対30aについての第1成分Im1と検出素子対30bについての第2成分Im2とが同じ大きさとなる結果、角度ψとして45°が算出される。
【0065】
また、演算部27は、撮像部24によって撮像された標識31mの撮像画像に基づいて検出素子ユニット21の実位置と規定位置との位置ずれ量Aを特定する。この場合、位置ずれ量Aが基準値Ar以上のときには、その旨を示す信号を制御部8に出力し、これに応じて制御部8が表示部7を制御して位置ずれしていることを示す画像を表示させる(報知処理の実行)。また、演算部27は、位置ずれ量Aに含まれるθ方向の位置ずれ量Aθが存在するときには、上記のようにして特定した集積回路73を流れる電流の電流値Imおよび電流の方向を補正する。具体的には、演算部27は、例えば、電流がX方向に流れているとして、検出素子ユニット21がXY座標におけるX軸に対して回動方向にθ1の角度だけ位置ずれしているときには、第1成分Im1にsecθ1を乗じた値(第1成分Im1’)を算出し、第1成分Im1’と第2成分Im2との2乗和平方根を補正後の電流値Imとして算出する。
【0066】
次いで、制御部8は、プロービング機構6を制御して他のプロービングポイントにプローブ51をプロービングさせる。この際に、磁気検出センサ2における検出素子ユニット21の各磁気検出素子31が検出信号Sdを出力し、信号処理部22がセンサ信号Ssを出力し、演算部27が電流値Imおよび角度ψを算出して制御部8に出力する。以下、同様にしてプロービングポイントを変更してプローブ51のプロービングを行い、これに応じて磁気検出センサ2が電流値Imおよび角度ψを算出して制御部8に出力する。
【0067】
続いて、全てのプロービングポイントについての電流値Imおよび角度ψの出力が終了したときには、制御部8は、各電流値Imおよび各角度ψに基づいて基板70を検査する。この場合、各電流値Imが予め規定された規定値以上のときには、集積回路73のパッドと導体パターンとの接続状態が良好であると推定される。一方、電流値Imが規定値以上であったとしても、電流Stの流れる方向がプロービングポイント(パッド)の位置から想定される方向とは異なるときには、集積回路73のパッドと導体パターンとの接続状態が不良で電流Stが他の経路を流れているおそれがある。このため、制御部8は、電流値Imが規定値以上で、かつ角度ψが予め規定された規定範囲内のときに、集積回路73のパッドと導体パターンとの接続状態が良好であると判定する。また、制御部8は、集積回路73の全てのパッドと導体パターンとの接続状態が良好であると判定したときには、基板70を良好と判定する。
【0068】
このように、この磁気検出センサ2および基板検査装置1では、検出面31f同士が互いに平行に対向する2つの磁気検出素子31を1組とする検出素子対30を2組(複数組の一例)備え、信号処理部22が、各検出素子対30を構成する2つの磁気検出素子31からそれぞれ出力された検出信号Sdの差動信号をセンサ信号Ssとして出力する。この場合、この構成では、検出素子対30を構成する2つの磁気検出素子31の各検出面31fから等距離でかつ各検出面31fの近くに電流Stが流れるときには、各磁気検出素子31からそれぞれ出力される各検出信号Sdの差動信号であるセンサ信号Ssは1つの磁気検出素子31から出力される検出信号Sdよりも大きな値となる結果、磁界検出感度を充分に向上させることができる。また、この構成では、電流Stが流れる位置が検出素子対30を構成する2つの磁気検出素子31から遠いときには、各磁気検出素子31から出力される検出信号Sdに含まれるこの電流Stによって生じる磁界に対応する成分を相殺することができる。このため、この磁気検出センサ2および基板検査装置1によれば、検出対象とは異なる部位を流れる電流Stによって発生する磁界Mbによる検査への影響を十分に低減することができる。また、この磁気検出センサ2および基板検査装置1では、検出素子対30を2組備えているため、各検出素子対30についてのセンサ信号Ssに基づいて電流Stが流れる方向を算出することができる。このため、この磁気検出センサ2および基板検査装置1によれば、電流Stが流れる方向によってその電流Stが検出対象を流れる電流Stであるか否かを確実に判別することができる結果、検出対象以外の部位に流れる電流Stに基づいて誤った検査がされる事態を確実に回避することができる。したがって、この磁気検出センサ2および基板検査装置1によれば、検査対象の基板70を正確に検査することができる。
【0069】
また、この磁気検出センサ2および基板検査装置1によれば、検出素子対30aにおける各磁気検出素子31の検出面31fをXY座標のX軸に沿わせ、検出素子対30bにおける各磁気検出素子31の検出面31fをXY座標のY軸に沿わせ、演算部27が、検出素子対30a,30bについての各差動信号によって特定したX軸方向の第1成分Im1とY軸方向の第2成分Im2との2乗和平方根を検出対象を流れる電流Stの電流値Imとして算出すると共に、第1成分Im1と第2成分Im2との逆正接を検出対象を流れる電流Stの方向として算出することにより、検出対象を流れる電流Stの電流値Imおよび方向を2つの検出素子対30だけで特定することができる結果、磁気検出センサ2および基板検査装置1の構成を簡略化することができる。
【0070】
また、この磁気検出センサ2および基板検査装置1によれば、各磁気検出素子31をユニット化した検出素子ユニット21に位置合わせ用の複数の標識31mを設けたことにより、検出素子ユニット21の位置合わせを容易に行うことができる。
【0071】
また、この磁気検出センサ2および基板検査装置1によれば、平面Fsに沿った平面方向に検出素子ユニット21を移動させると共に平面Fsの垂線を軸とする回動方向に検出素子ユニット21を回動させる第1移動機構25を備えたことにより、例えば、支持台3の表面に載置した磁気検出センサ2全体を表面に沿って手動で移動させて検出素子ユニット21の位置合わせを行う構成と比較して、位置合わせを十分正確に行うことができる。
【0072】
また、この磁気検出センサ2および基板検査装置1によれば、検出素子ユニット21の先端部21tに弾性部材33を配設したことにより、検出素子ユニット21の移動によって先端部21tが基板70に当接したとしても、弾性部材33が緩衝材として機能して、基板70および検出素子ユニット21の損傷を確実に防止することができる。また、検出素子ユニット21の先端部21tを基板70に当接させることで、基板70と検出素子ユニット21との距離を一定に維持することができるため、基板70と検出素子ユニット21との距離が変化することによる検出精度の低下を確実に防止することができる。
【0073】
また、この磁気検出センサ2および基板検査装置1によれば、平面Fsの垂線に沿ったZ方向に検出素子ユニット21を移動させる第2移動機構26をエアシリンダ26aで構成したことにより、規定通りの圧力で基板70に検出素子ユニット21を押圧させることができるため、基板70と検出素子ユニット21との距離を確実に一定に維持することができる結果、基板70と検出素子ユニット21との距離が変化することによる検出精度の低下をより確実に防止することができる。
【0074】
また、この磁気検出センサ2および基板検査装置1によれば、演算部27が撮像部24によって撮像された標識31mの撮像画像に基づいて検出素子ユニット21の位置ずれ量を算出し、位置ずれ量が予め決められた基準値以上のときに表示部7が報知処理を行うことにより、検出素子ユニット21の位置ずれが大きいことを把握することができるため、検出素子ユニット21の位置ずれによる検出精度の低下を確実に回避することができる。
【0075】
また、この磁気検出センサ2および基板検査装置1によれば、演算部27が回動方向の位置ずれ量Aθに基づいて電流値Imを補正することにより、検出素子ユニット21に位置ずれが生じている場合においても、その位置ずれによる検出精度の低下を確実に回避することができる。
【0076】
また、この磁気検出センサ2および基板検査装置1によれば、磁気検出素子31の動作確認を行う際に動作確認用電流を流す動作確認用導体23aを検出素子ユニット21に配設したことにより、ダミー基板を用いて磁気検出素子31の動作確認を行う必要がある構成(動作確認用導体23aが配設されていない構成)とは異なり、ダミー基板を用いることなく磁気検出素子31の動作確認を行うことができるため、検査効率を十分に向上させることができる。
【0077】
また、この磁気検出センサ2および基板検査装置1によれば、検出信号Sdおよびセンサ信号Ssを導通させる導体パターンを有するフレキシブル基板23に動作確認用導体23aを形成したことにより、フレキシブル基板23とは別体の動作確認用導体23aを設ける構成と比較して、磁気検出センサ2および基板検査装置1の製造工程を簡略化することができるため、その分、磁気検出センサ2および基板検査装置1の製造コストを低減させることができる。
【0078】
なお、検出センサおよび基板検査装置の構成は、上記の構成に限定されない。例えば、2組の検出素子対30を備えた例について上記したが、検出素子対30の数は、2組に限定されず、2よりも大きい任意のn組(nは、3以上の整数)に規定することができる。この場合、各検出素子対30を構成する各磁気検出素子31を平面視状態において正m角形(mは、n/2)をなすように配置することで、上記した各効果を実現することができる。
【0079】
また、第1移動機構25や第2移動機構26を手動で操作する構成例について上記したが、第1移動機構25や第2移動機構26を自動的に駆動する構成を採用することもできる。この場合、第1移動機構25や第2移動機構26の駆動を制御する制御部を備え、その制御部が撮像部24による標識31mの撮像画像に基づいて信号処理部22の位置合わせを自動的に行うように構成することもできる。
【0080】
また、エアシリンダ26aおよびレギュレータ26bを備えた第2移動機構26を採用した例について上記したが、回転モータおよびボールねじを有する直動機構で構成した第2移動機構や、リニアモータ式の直動機構で構成した第2移動機構を採用することもできる。
【0081】
また、動作確認用導体23aが形成されたフレキシブル基板23を用いる例について上記したが、フレキシブル基板23とは別体に設けた動作確認用導体23aを用いる構成を採用することもできる。
【0082】
また、基板70における導体パターンと集積回路73のパッドとの接続状態の良否を基板検査装置1を用いて検査する例について上記したが、導体パターンの断線や短絡を検査する際に基板検査装置1を用いることもでき、この場合においても、上記した各効果を実現することができる。また、基板検査装置1の検査対象は、集積回路73が実装された上記の基板70に限定されず、例えば、集積回路73が実装されていない基板などが含まれ、この基板を検査する際にも上記した各効果を実現することができる。