(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凸部は、前記ストラットの軸線方向一方側の前縁の位置を基準として、前記ストラットの軸線方向の全長の±5%の領域内に配置されている請求項1に記載のディフューザ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タービンから排出される燃焼ガスの流れには、軸線方向成分と、軸線を中心とした周方向に旋回する旋回流成分(スワール成分)とが含まれている。そのため、排気ガスの流れがストラットの周囲を通過する際に、ストラットによって形状抵抗が生じたり、流れの剥離が生じたりする。これら形状抵抗や流れの剥離は、圧力損失を増加させる要因となる。この圧力損失の増加は、ディフューザの静圧回復量を低下させて、ガスタービン全体の効率を低下させる可能性が有る。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、圧力損失を抑制して性能向上を図ることができるディフューザ、タービン及びガスタービンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
この発明の第一態様によれば、ディフューザは、軸線回りに回転するタービンの下流側に設けられるディフューザであって、前記軸線に沿って延びる内筒と、前記内筒を外周側から覆うとともに、前記内筒との間に排気流路を形成する外筒と、前記排気流路内で周方向に間隔をあけて設けられ、前記内筒と前記外筒とを接続するとともに、径方向内側から外側に向かうにしたがって前記タービンの回転方向前方側に延びる複数のストラットと、前記内筒の外周面に形成され、前記周方向で隣り合う一対のストラット間の中央に配置されるとともに、前記ストラットの軸線方向一方側の前縁の位置を基準として前記ストラットの軸線方向の全長の±10%の領域内に配置された凸部と、を備え、前記凸部は、前記軸線に沿って形成されて軸線方向一方側である上流側から、軸線方向他方側である下流側に向かうにしたがって、径方向の外側に向かう突出量が増加するように、軸線を中心とする径方向の外側に向かうにしたがって先細りに形成され
、前記軸線を中心とした周方向で前記凸部と同位置で、前記凸部の下流側に間隔をあけて軸線方向に延びるガイド板を更に備えている。
ディフューザにおいて、軸線を中心とした周方向で隣り合うストラットの間の流れは、一般に、内筒の外周面において境界層を形成する。ディフューザ流れは、逆圧力勾配であるため、境界層流れにおいて運動量が低下し易い。そのため、局所的な運動量欠損による剥離領域が生じると、流れの下流に向けて剥離が進展して大規模化する可能性がある。
一般に、ストラットよりも上流側では、回転体とディフューザとの隙間からのシールガスの流入により、境界層に擾乱が発生し、不安定となる。また、流れ方向に対して垂直方向の渦度が増した状態となる。この境界層内に、上記の凸部を配置することで、境界層内の流体が凸部に巻きつく形となり、凸部の周方向両側に流体の流れ方向に渦軸を有する縦渦が形成される。この縦渦は、凸部よりも下流側に延びて渦管(馬蹄渦)を形成する。これにより、内筒の外周面において、安定した縦渦を生成できるため、縦渦により境界層内の流体に運動量を与えて、境界層の発達による剥離が生じることを抑制できる。その結果、圧力損失を抑制して性能向上を図ることができる。
さらに、ディフューザの主流に対して形状抵抗が増加することを抑制できる。その結果、圧力損失を低減できる。
【0007】
さらに、凸部によって形成された縦渦を下流側まで維持させるとともに、縦渦の乱れを整える(整流する)ことができる。
【0008】
この発明の第
二態様によれば、第一態様に係る凸部は、前記ストラットの軸線方向一方側の前縁の位置を基準として、前記ストラットの軸線方向の全長の±5%の領域内に配置されていてもよい。
このように構成することで、ストラットの前縁の位置により近い位置に凸部を配置することができる。これにより、境界層が発達する前に、凸部によって縦渦を生じさせて、境界層内の流体に対して運動量を与えることができる。その結果、境界層の発達を安定して抑制できる。
【0011】
この発明の第
三態様によれば、タービンは、軸線に沿って延びるとともに、前記軸線の周方向一方側に向かって回転可能なタービンロータと、前記タービンロータを外周側から覆うタービンケーシングと、前記タービンロータの外周面上で前記軸線の周方向に配列された複数のタービン動翼と、前記タービンケーシングの内周面上で前記タービン動翼に対して前記軸線方向に隣り合うように設けられるとともに、周方向に配列された複数のタービン静翼と、第一
又は第二態様に係るディフューザと、を備える。
このように構成することで、ディフューザにおける流体の剥離を抑制できるため、タービンの圧力損失を抑制できる。その結果、タービンから排出される排気ガスの運動エネルギーを効率よく圧力エネルギーに変換することができる。
【0012】
この発明の第
四態様によれば、ガスタービンは、空気を圧縮した圧縮空気を生成する圧縮機と、前記圧縮空気に燃料を混合させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼ガスにより駆動される第
三態様に係るタービンと、を備える。
このように構成することで、タービンの圧力損失を抑制できるため、ガスタービンの性能を向上することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記ディフューザ、タービン及びガスタービンによれば、圧力損失を抑制して性能向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第一実施形態)
次に、この発明の第一実施形態のタービン及びガスタービンを図面に基づき説明する。
図1は、この発明の第一実施形態におけるガスタービンの概略構成を示す構成図である。
図1に示すように、この第一実施形態に係るガスタービン100は、圧縮機1と、燃焼器3と、タービン2Aと、を備えている。
【0016】
圧縮機1は、高圧空気を生成する。圧縮機1は、圧縮機ロータ11と、圧縮機ケーシング12と、を備えている。圧縮機ケーシング12は、圧縮機ロータ11を外周側から覆っており、軸線Amに沿って延びている。
【0017】
圧縮機ロータ11の外周面には、軸線Am方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機動翼段13が設けられている。これら圧縮機動翼段13は、複数の圧縮機動翼14をそれぞれ備えている。各圧縮機動翼段13の圧縮機動翼14は、圧縮機ロータ11の外周面上で軸線Amの周方向に間隔をあけて配列されている。
【0018】
圧縮機ケーシング12の内周面には、軸線Am方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機静翼段15が設けられている。これら圧縮機静翼段15は、軸線Am方向で上記圧縮機動翼段13と交互に配置されている。これら圧縮機静翼段15は、複数の圧縮機静翼16をそれぞれ備えている。各圧縮機静翼段15の圧縮機静翼16は、圧縮機ケーシング12の内周面上で軸線Amの周方向に間隔をあけて配列されている。
【0019】
燃焼器3は、圧縮機1で生成された高圧空気に燃料を混合して燃焼させることで燃焼ガスを生成する。燃焼器3は、圧縮機ケーシング12とタービン2Aのタービンケーシング22との間に設けられている。この燃焼器3によって生成された燃焼ガスは、タービン2Aに供給される。
【0020】
タービン2Aは、燃焼器3で生成された燃焼ガスによって駆動する。このタービン2Aは、タービンロータ21と、タービンケーシング22と、ディフューザ4Aと、を有している。
タービンロータ21は、軸線Amに沿って延びている。このタービンロータ21の外周面には、軸線Am方向に間隔をあけて配列された複数のタービン動翼段23が設けられている。これらタービン動翼段23は、複数のタービン動翼24をそれぞれ備えている。各タービン動翼段23のタービン動翼24は、タービンロータ21の外周面上で軸線Amの周方向に間隔をあけて配列されている。
【0021】
複数のタービン動翼段23のうち、最も下流側に配置された最終段のタービン動翼段23を構成するタービン動翼24は、その軸線Am方向他方側の部分が軸線Amを中心とした周方向の一方側から他方側に向かって湾曲している。言い換えれば、最終段のタービン動翼段23のタービン動翼24は、その下流側のエッジ部分(後縁)が、タービンロータ21の回転方向の後方側を向くように湾曲している。なお、少なくとも最終段のタービン動翼段23のタービン動翼24のみが上述したように湾曲して形成されればよく、上記構成に限られるものではない。例えば、他のタービン動翼段23のタービン動翼24についても、最終段のタービン動翼段23のタービン動翼24と同様に湾曲させても良い。
【0022】
タービンケーシング22は、タービンロータ21を外周側から覆っている。このタービンケーシング22の内周面には、軸線Am方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼段25が設けられている。タービン静翼段25は、軸線Am方向で上記タービン動翼段23と交互に配置されている。これらタービン静翼段25は、複数のタービン静翼26をそれぞれ備えている。各タービン静翼段25のタービン静翼26は、タービンケーシング22の内周面上で軸線Amの周方向に間隔をあけて配列されている。
【0023】
圧縮機ロータ11とタービンロータ21とは、軸線Am方向に一体に接続されている。これら圧縮機ロータ11とタービンロータ21とによって、ガスタービンロータ91が構成されている。同様に、圧縮機ケーシング12とタービンケーシング22とは、軸線Amに沿って一体に接続されている。これら圧縮機ケーシング12とタービンケーシング22とによってガスタービンケーシング92が構成されている。
ガスタービンロータ91は、ガスタービンケーシング92の内部で軸線Am回りに一体に回転可能とされている。
【0024】
ガスタービン100を運転するに当たっては、まず外部の駆動源によって圧縮機ロータ11(ガスタービンロータ91)を回転駆動する。圧縮機ロータ11の回転に伴って外部の空気が順次圧縮され、高圧空気が生成される。この高圧空気は、圧縮機ケーシング12を通じて燃焼器3内に供給される。燃焼器3内では、燃料がこの高圧空気に混合されて燃焼し、高温高圧の燃焼ガスが生成される。燃焼ガスはタービンケーシング22を通じてタービン2A内に供給される。タービン2A内では、タービン動翼段23、及びタービン静翼段25に燃焼ガスが順次衝突することで、タービンロータ21(ガスタービンロータ91)に対して回転駆動力が与えられる。この回転エネルギーは、例えば、軸端に連結された発電機G等の駆動に利用される。タービン2Aを駆動した燃焼ガスは、排気ガスとしてディフューザ4Aを通過する際に圧力(静圧)が高められた後、外部に排出される。
【0025】
図2は、この発明の第一実施形態におけるディフューザの軸線に沿う断面図である。
図2に示すように、ディフューザ4Aは、タービンケーシング22(ガスタービンケーシング92)に一体に設けられている。このディフューザ4Aは、内筒41と、外筒42と、第一ストラット43と、第二ストラット44と、凸部50(
図3参照)と、を備えている。
【0026】
内筒41は、軸線Amに沿って延びる筒状に形成されている。内筒41は、その外周面41Aが、軸線Am方向一方側から他方側に向かうにしたがって次第に縮径するように形成されている。この内筒41の内側には、ガスタービンロータ91の軸端部91Aを回転可能に支持する軸受装置30が設けられている。この軸受装置30は、軸受31と、軸受ハウジング32と、を備えている。軸受ハウジング32は、主に、第一ストラット43によって外筒42に支持されている。
【0027】
外筒42は、内筒41を外周側から覆う筒状に形成されている。外筒42は、内筒41との間に、タービン2Aから排出された排気ガスが流れる排気流路Cを形成している。外筒42は、その内周面42Aが、軸線Am方向一方側から他方側に向かうにしたがって次第に拡径するように形成されている。すなわち、外筒42と内筒41との間に形成される排気流路Cの断面積(軸線Amに直交する断面積)は、軸線Am方向一方側から他方側に向かうにしたがって、次第に拡径している。このように排気流路Cの断面積が次第に拡径することで、排気流路C内を流れる排気ガスの運動エネルギーが、漸次圧力エネルギーに変換(圧力回復)される。
【0028】
第一ストラット43は、高温の排気ガスにさらされないようにストラットカバー45によって覆われている。この第一ストラット43は、内筒41の外周面41Aの法線に対して傾斜したいわゆるタンジェンシャルストラットを用いることができる。このようなタンジェンシャルストラットを採用することで、熱伸びによる軸心のずれを少なくすることが可能となる。
【0029】
第二ストラット44は、第一ストラット43の荷重負担を分散するとともに、例えばガスタービン100の軸受31への人の進入を可能にする通路として機能する。この第二ストラット44は、軸線Amを中心とした径方向に延びる筒状に形成されている。第二ストラット44は、第一ストラット43から軸線Am方向他方側に離間した位置に設けられている。
【0030】
この第一実施形態におけるストラットカバー45及び第二ストラット44は、排気ガスに対する形状抵抗を低減可能な形状となっている。排気ガスに対する形状抵抗を低減可能な形状としては、例えば、排気ガスの流れる方向に長い断面長円形状や、排気ガスの流れる方向に翼弦が延びる翼型を例示できる。
【0031】
ガスタービン100は、シール機構(図示せず)を備えている。このシール機構は、圧縮機1により生成した圧縮空気の一部をシールガスとして上述したディフューザ4Aの内筒41と、タービンロータ21との隙間から、排気流路Cの内側に向かって流入させている。このシール機構によって、上記隙間から排気ガスが流出しないようになっている。
【0032】
図3は、この発明の第一実施形態における隣り合う第一ストラットの間の内筒の斜視図である。
図3に示すように、ディフューザ4Aは、軸線Amを中心とした周方向で隣り合う第一ストラット43(ストラットカバー45)の間に、凸部50を備えている。凸部50は、周方向に並んで配置された複数の第一ストラット43の間にそれぞれ一つずつ設けられている。凸部50は、内筒41の外周面41Aから突出している。この第一実施形態における凸部50は、外周面41Aから軸線Amを中心とした径方向の外側に向けて突出している。
【0033】
ここで、凸部50の突出量(言い換えれば、径方向の高さ)は、内筒41の外周面41Aに排気ガスの流れによって形成される境界層(図示せず)の厚さよりも僅かに低くすることができる。より具体的には、凸部50の突出量は、軸線Amを中心とする径方向における第一ストラット43の高さ(翼高さ)に対して5%の突出量にしても良い。さらに、凸部50の突出量は、第一ストラット43の高さに対して3%の突出量にしても良い。また、凸部50の突出量は、第一ストラット43の高さに対して1%としても良い。なお、境界層の厚さは、ディフューザ4Aの仕様に応じて変化するため、凸部50の突出量は、境界層の厚さに応じて適宜調整してもよい。
【0034】
この第一実施形態における凸部50は、軸線Amを中心とした周方向において、隣り合う第一ストラット43の間の距離を100%とすると、隣り合う第一ストラット43の中央(50%)の位置から、±30%の範囲に形成することができる。さらに、凸部50は、軸線Amを中心とした周方向において、上記中央(50%)の位置から±20%の位置に配置しても良い。さらに、凸部50は、軸線Amを中心とした周方向において、上記中央(50%)の位置から±10%の位置に配置しても良い。
【0035】
さらに、凸部50は、第一ストラット43の軸線Am方向の全長を100%とした場合、軸線Am方向における第一ストラット43の前縁(言い換えれば、軸線Am方向一方側の縁部)43aの位置(以下、単に「前縁の位置」と称する。
図3中、二点鎖線Fで示す位置)を基準として上記第一ストラット43の全長の±10%の領域内に配置することができる。さらに、凸部50は、軸線Am方向において上記前縁の位置を基準として±5%の領域内に配置しても良い。さらに、凸部50は、軸線Am方向において上記前縁の位置を基準として±3%の領域内に配置しても良い。さらに、凸部50は、軸線Am方向において上記前縁の位置を基準として±2%の領域内に配置しても良い。
【0036】
軸線Am方向における凸部50の長さは、前縁43aの位置を基準とした上記領域内に入る長さであれば、どのような長さであっても良い。例えば、軸線Am方向における上記領域の長さと同等の長さに形成しても良い。
【0037】
凸部50は、軸線Amを中心とする径方向の外側に向かうにしたがって先細りに形成されていてもよい。
図3においては、先細りの形状として、軸線Am方向の一方側(上流側)から他方側(下流側)に向かうにしたがって、凸部50の突出量が増加するように形成される場合を例示しているが、先細りであれば、この形状に限られるものではない。
【0038】
ところで、ガスタービン100の運転時、ディフューザ4Aの入口において軸線Amを中心とする径方向の内側に向かってシールガスが流入する場合がある。このシールガスは、内筒41の外周面41Aに形成される不安定な境界層内の流れに干渉する。ここで、境界層内の流れは、そもそも第一ストラット43と内筒41の外周面41Aとの接合部に生じる馬蹄渦を代表とした二次流れや、第一ストラット43の周方向傾斜による圧力勾配により、三次元的な流れとなり、擾乱が拡大すると剥離が生じ易い。この境界層内の流れは、上記シールガスの流入により垂直方向の渦度が増すようになる。つまり、境界層内の流れには、主に軸線Amを中心とする周方向の渦軸を有する渦V2(
図3参照)が含まれることとなる。この垂直方向の渦度が増した境界層は、シールガスが流入しない場合と比較して、下流側に進むにしたがって大きく発達してしまう。特に、第一ストラット43の後縁43bの位置を境にして、流路断面積が急拡大するため、更に流速が低下して、境界層剥離が生じる可能性が有る。
【0039】
上述したように第一実施形態のディフューザ4Aは、軸線Amを中心とする周方向で隣り合う第一ストラット43の間に凸部50が配置されている。これら凸部50は、軸線Am方向において第一ストラット43の前縁43aの位置の近くに配置されている。上述したシールガスが干渉して垂直方向の渦度を有した境界層内の流れは、第一ストラット43の前縁43aの位置の近傍で凸部50に巻きつく形となる。
【0040】
これにより、凸部50の周方向両側に排気ガスの流れる方向に渦軸を有する縦渦V3が形成される。この縦渦V3は、凸部50よりも下流側に延びて、渦管を形成する。この縦渦V3は、第一ストラット43の前縁43a付近よりも下流の境界層内の排気ガスに運動量を与える。そのため、上述したようにシールガスが流入する場合であっても、境界層が発達する前に境界層内の流れに運動量を与えて、境界層が発達していわゆる境界層剥離が生じることを抑制できる。その結果、ディフューザ4Aの圧力損失を抑制して性能向上を図ることができる。
【0041】
図4は、この発明の第一実施形態における凸部の周囲の渦を軸線方向の一方側から見た図である。
図4に示すように、縦渦V3は、隣り合う馬蹄渦V1と逆方向に回転する。このように縦渦V3と馬蹄渦V1との回転方向が互いに逆方向となることで、上記の縦渦V3の流れと馬蹄渦V1の流れとが、隣接する場所において同方向に流れるため、互いの回転を阻害せず促進する方向に作用し、縦渦V3と馬蹄渦V1とが安定する。そのため、第一ストラット43の下流においても縦渦V3と馬蹄渦V1とが維持され易くなり、より一層、境界層の発達を抑制できる。
【0042】
(第二実施形態)
次に、この発明の第二実施形態を図面に基づき説明する。この第二実施形態は、上述した第一実施形態にガイド板を設けた点でのみ相違する。そのため、上述した第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
この第二実施形態のガスタービン100は、上述した第一実施形態と同様に、圧縮機1と、燃焼器3と、タービン2Bと、を備えている。さらに、タービン2Bは、タービンロータ21と、タービンケーシング22と、ディフューザ4Bと、を有している。
【0043】
図5は、この発明の第二実施形態における
図3に相当する図である。
図5に示すように、この第二実施形態におけるディフューザ4Bは、内筒41と、外筒42(
図5に図示せず)と、第一ストラット43と、第二ストラット44と、凸部50と、ガイド板51と、を備えている。
凸部50は、第一実施形態と同様の構成であり、軸線Amを中心とする周方向に並んで配置された複数の第一ストラット43の間にそれぞれ一つずつ設けられている。これら凸部50は、内筒41の外周面41Aからそれぞれ突出している。
【0044】
ガイド板51は、凸部50で生じた縦渦V3を下流側に案内する。ガイド板51は、凸部50と同様に、軸線Amを中心とする周方向に並んで配置された複数の第一ストラット43の間にそれぞれ一つずつ設けられている。これらガイド板51は、軸線Am方向に延びるように形成され、凸部50に対して、排気ガスの流れる方向における下流側に間隔をあけて配置されている。
【0045】
ガイド板51は、更に、内筒41の外周面41Aから、軸線Amを中心とする径方向外側に向かって突出するように形成されている。この第二実施形態で例示するガイド板51は、上記径方向外側に向かって延びる平板状に形成されている。また、この第二実施形態で例示するガイド板51は、軸線Am方向の一方側から他方側に向かって徐々に突出量が増加するように形成されている。ガイド板51は、その最大突出量が凸部50の突出量と同等になるようにしてもよい。
【0046】
この第二実施形態で例示するガイド板51は、第一ストラット43の前縁43aを基準として第一ストラット43の翼弦長に対して50%の位置(言い換えれば、軸線Am方向で、前縁43aと後縁43bの中間位置)から第一ストラット43の後縁43bの位置まで延びている。
図5中、後縁43bの位置を符号「R」、前縁43a及び後縁43bの中間位置を符号「M」で示す。
【0047】
軸線Amを中心とする周方向におけるガイド板51の厚さ(寸法)は、軸線Amを中心とする周方向における凸部50の寸法と同等に形成されている。
なお、
図5に破線で示すように、ガイド板51は、後縁43bの位置よりも下流側まで延びていても良い。このようにすることで、第一ストラット43の後縁43bの位置よりも下流側において、排気ガスの流路断面積が急拡大することを抑制できる。また、第二実施形態におけるガイド板51の軸線Am方向における上流側の端部と下流側の端部との各位置は一例であって、凸部50により形成された縦渦V3を案内できる位置であれば上記の位置に限られない。
【0048】
上述した第二実施形態によれば、第一実施形態と同様に、凸部50によって縦渦V3を形成することができる。さらに、ガイド板51を備えていることで、凸部50によって形成された縦渦V3をより下流側まで維持させるとともに、この縦渦V3の乱れを整える(整流する)ことができる。
【0049】
(第三実施形態)
次に、この発明の第三実施形態を図面に基づき説明する。この第三実施形態は、上述した第二実施形態の凸部とガイド板とを一体に設けた点でのみ相違する。そのため、上述した第二実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
この第三実施形態のガスタービン100は、上述した第一実施形態と同様に、圧縮機1と、燃焼器3と、タービン2Cと、を備えている。さらに、タービン2Cは、タービンロータ21と、タービンケーシング22と、ディフューザ4Cと、を有している。
【0050】
図6は、この発明の第三実施形態における
図3に相当する図である。
図6に示すように、この第三実施形態におけるディフューザ4Cは、内筒41と、外筒42(
図6に図示せず)と、第一ストラット43と、第二ストラット44と、ガイド凸部52と、を備えている。
【0051】
ガイド凸部52は、軸線Amを中心とする周方向に並んで配置された複数の第一ストラット43の間にそれぞれ一つずつ設けられている。
この第三実施形態におけるガイド凸部52は、軸線Amを中心とした周方向において、隣り合う第一ストラット43の間の距離を100%とすると、隣り合う第一ストラット43の中央(50%)の位置から、±30%の範囲に形成することができる。さらに、ガイド凸部52は、軸線Amを中心とした周方向において、上記中央(50%)の位置から±20%の位置に配置しても良い。さらに、凸部50は、軸線Amを中心とした周方向において、上記中央(50%)の位置から±10%の位置に配置しても良い。
【0052】
これらガイド凸部52は、上述した第二実施形態のガイド板51の上流端(軸線Am方向の端部)を、軸線Am方向における上述した第一ストラット43の前縁43a付近の位置に配置されるように、軸線Am方向の長さを延長したような形状となっている。すなわち、これらガイド凸部52は、軸線Am方向に延びるように形成されている。
【0053】
ガイド凸部52は、軸線Am方向で第一ストラット43の前縁43aの位置を基準としてストラット43の軸線Am方向の全長の±10%の領域内から第一ストラット43の後縁43bの位置に向かって延びている。なお、ガイド凸部52は、の前縁43aの位置を基準として第一ストラット43の軸線Am方向の全長の±5%の領域内から第一ストラット43の後縁43bの位置に向かって延びていても良い。さらに、ガイド凸部52は、第一ストラット43の前縁43aの位置を基準として第一ストラット43の軸線Am方向の全長の±3%の領域内から第一ストラット43の後縁43bの位置に向かって延びていても良い。
【0054】
ガイド凸部52は、更に、内筒41の外周面41Aから、軸線Amを中心とする径方向外側に向かって突出するように形成されている。この第三実施形態で例示するガイド凸部52は、上記径方向外側に向かって延びる平板状に形成されている。また、この第三実施形態で例示するガイド凸部52は、軸線Am方向の一方側(上流側)から他方側(下流側)に向かって徐々に突出量が増加するように形成されている。ガイド凸部52の最大突出量は、上述した第一実施形態の凸部50と同程度に形成することができる。
【0055】
したがって、第三実施形態によれば、シールガスが干渉して垂直方向の渦度を有した境界層内の流れがガイド凸部52に巻きつく形となり、縦渦V3を形成することができる。更に、ガイド凸部52が、軸線Am方向における第一ストラット43の後縁43bの位置まで延びていることで、ガイド凸部52によって形成された縦渦V3をガイド凸部52に沿って下流側まで維持させるとともに、この縦渦V3の乱れを整えることができる。
【0056】
この発明は上述した各実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した第二、第三実施形態では、ガイド板51、ガイド凸部52がそれぞれ板状の場合について説明した。しかし、板状に限られず、例えば、翼型を有していたり、軸線Amを中心とする径方向外側に向かって先細りに形成されていたりしてもよい。
さらに、ガイド板51、ガイド凸部52が、軸線Am方向の一方側(上流側)から他方側(下流側)に向かって徐々に突出量が増加するように形成されている場合について説明したが、この形状に限られない。例えば、突出量が上流側から下流側に向かって均一であっても良い。
【0057】
また、上述した各実施形態では、周方向で隣り合う第一ストラット43の間にそれぞれ一つずつ凸部50、ガイド板51、ガイド凸部52が形成されている場合について説明した。しかし、周方向で隣り合う第一ストラット43の間にそれぞれ2つ以上の凸部50、ガイド板51、ガイド凸部52が形成されるようにしてもよい。
【0058】
さらに、第一実施形態では、一つのディフューザ4Aに設けられる複数の凸部50が全て同一の構成である場合について説明した。しかし、これら複数の凸部50は、それぞれ異なる構成(形状、配置等)であっても良い。例えば、凸部50の位置、長さ、高さ、幅は、それぞれ上記複数の凸部50毎に異なっていても良い。同様に、一つのディフューザに設けられる第二実施形態の複数のガイド板51、第三実施形態の複数のガイド凸部52も、それぞれ異なる構成(形状、配置等)であっても良い。