特許第6821488号(P6821488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6821488
(24)【登録日】2021年1月8日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】シール部材及びインテークマニホールド
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/104 20060101AFI20210114BHJP
   F02M 35/112 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   F02M35/104 B
   F02M35/104 E
   F02M35/104 A
   F02M35/104 R
   F02M35/104 N
   F02M35/112
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-61849(P2017-61849)
(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公開番号】特開2018-162780(P2018-162780A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 嶺介
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 泰啓
(72)【発明者】
【氏名】木ノ下 浩
(72)【発明者】
【氏名】横尾 健志
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−151078(JP,A)
【文献】 実開昭63−160359(JP,U)
【文献】 特表2003−515027(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10112070(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/104
F02M 35/112
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃焼室に吸気を供給するためのインテークマニホールドと吸気ポートとの合わせ面に設けられた溝に装着されるシール部材であって、
弾性体からなり開口部を有する環状の枠体と、
前記枠体の内壁に接続されるとともに前記枠体の前記開口部を仕切るように配置され、前記枠体の前記合わせ面と平行な方向の厚みより薄く形成された仕切板と、を備え、
前記吸気ポート側となる前記仕切板の端面は、前記吸気ポート側となる前記枠体の端面に対して所定長さ低くされていることを特徴とするシール部材。
【請求項2】
前記枠体は、前記吸気ポート側となる前記仕切板の端面を覆うように形成された帯部を有することを特徴とする請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
出口部において近接した少なくとも2つの吸気管、及び前記出口部に形成され吸気ポートとの合わせ面を有する取付フランジを具備し、請求項1又は2に記載のシール部材を前記合わせ面に装着したインテークマニホールドであって、
前記取付フランジには、前記2つの吸気管を囲むように形成され前記シール部材の前記枠体が取り付けられた溝部と、
前記2つの吸気管の前記出口部の間を仕切るように形成され前記シール部材の前記仕切板が挿入された仕切溝と、を備えたことを特徴とするインテークマニホールド。
【請求項4】
前記吸気ポート側となる前記仕切板の端面は、前記吸気ポート側となる前記枠体の端面に対して所定長さ低くされていることを特徴とする請求項に記載のインテークマニホールド。
【請求項5】
前記枠体は、前記吸気ポート側となる前記仕切板の端面を覆うように形成された帯部を有することを特徴とする請求項又はに記載のインテークマニホールド。
【請求項6】
前記2つの吸気管は、それぞれ異なる燃焼室に導入するための吸気を前記吸気ポートに供給する請求項乃至のいずれかに記載のインテークマニホールド。
【請求項7】
前記2つの吸気管には、流入する吸気量を制御する弁が設けられている請求項に記載のインテークマニホールド。
【請求項8】
前記弁は、エンジンが所定回転数未満で閉弁され、前記所定回転数以上で開弁される請求項に記載のインテークマニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材及びインテークマニホールドに関する。詳しくは、狭い間隔で隣接されている複数の吸気管の出口部において吸気管毎のシール性を高めるシール部材及びインテークマニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインテークマニホールドとして、例えば、サージタンクと内燃機関の複数の吸気ポートとを接続する複数の吸気管が、一体に形成されている合成樹脂製のインテークマニホールドが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このようなインテークマニホールドは、吸気ポートと接続する箇所がフランジになっており、このフランジには吸気管内を流れる吸気の漏れを防ぐためのシール部材が配設されている。シール部材はゴムや合成樹脂等の弾性体であり、シール材としての性能を保つためには一定の厚みが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−70671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンに取り付けられるインテークマニホールドの多くは合成樹脂製であり、サージタンクからの吸気を供給する複数の吸気管が一体に形成されている。各吸気管はエンジンの燃焼室に吸気を導入するための複数の吸気ポートとそれぞれ接続される。このような複数の吸気管をエンジンに接続するため、インテークマニホールドには、エンジン側の吸気ポートとの合わせ面となる取付フランジが設けられている。そして、取付フランジに形成されている吸気管の出口部と吸気ポートとの合わせ面には、それぞれの吸気管から供給される吸気の漏れを防ぐために弾性体からなるシール部材が配設される。ところが、エンジンによっては複数の吸気ポートを隣接して設ける必要があり、隣り合う吸気ポートの間隔が狭くなる。それに対応して、インテークマニホールドの隣り合う吸気管の配置間隔もまた狭くなる。そのため、取付フランジにおいては各吸気管の出口部が近接することとなり、隣り合う吸気管の管壁が1つの仕切壁によって構成されるような場合も生じる。
しかし、上記のように吸気管の出口部が近接する場合には、吸気ポートとの合わせ面に弾性体からなる一定の厚みのシール部材を配設することが不可能となる。このため、吸気ポートとの合わせ面において隣接する吸気管の相互間で吸気のリークを生じるおそれがあった。また、吸気管に弁等を配設し、その弁等により吸気量の制御を行う場合には、隣接する吸気管の間に生じる通気によって、目標とする吸気量の制御が難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、狭い間隔で隣接されている複数の吸気管の出口部において吸気管毎のシール性を高めるシール部材及びインテークマニホールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、エンジンの燃焼室に吸気を供給するためのインテークマニホールドと吸気ポートとの合わせ面に設けられた溝に装着されるシール部材であって、弾性体からなり開口部を有する環状の枠体と、前記枠体の内壁に接続されるとともに前記枠体の前記開口部を仕切るように配置され、前記枠体の前記合わせ面と平行な方向の厚みより薄く形成された仕切板と、を備え前記吸気ポート側となる前記仕切板の端面は、前記吸気ポート側となる前記枠体の端面に対して所定長さ低くされていることを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記枠体は、前記吸気ポート側となる前記仕切板の端面を覆うように形成された帯部を有することを要旨とする。
請求項に記載の発明は、出口部において近接した少なくとも2つの吸気管、及び前記出口部に形成され吸気ポートとの合わせ面を有する取付フランジを具備し、請求項1又は2に記載のシール部材を前記合わせ面に装着したインテークマニホールドであって、前記取付フランジには、前記2つの吸気管を囲むように形成され前記シール部材の前記枠体が取り付けられた溝部と、前記2つの吸気管の前記出口部の間を仕切るように形成され前記シール部材の前記仕切板が挿入された仕切溝と、を備えたことを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記吸気ポート側となる前記仕切板の端面は、前記吸気ポート側となる前記枠体の端面に対して所定長さ低くされていることを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項又はに記載の発明において、前記枠体は、前記吸気ポート側となる前記仕切板の端面を覆うように形成された帯部を有することを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項乃至5のいずれかに記載の発明において、前記2つの吸気管は、それぞれ異なる燃焼室に導入するための吸気を前記吸気ポートに供給することを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記2つの吸気管には、流入する吸気量を制御する弁が設けられていることを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、前記弁は、エンジンが所定回転数未満で閉弁され、前記所定回転数以上で開弁されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシール部材は、エンジンの燃焼室に吸気を供給するためのインテークマニホールドと吸気ポートとの合わせ面に設けられた溝に装着されるシール部材であって、弾性体からなり開口部を有する環状の枠体と、前記枠体の内壁に接続されるとともに前記枠体の前記開口部を仕切るように配置され、前記枠体の前記合わせ面と平行な方向の厚みより薄く形成された仕切板と、を備えたため、近接して配設されている吸気管の出口部において、その全体を弾性体からなり一定の厚みのある枠体によってシールすると共に、隣り合う吸気管の出口部の間の連通を仕切板によって抑制することができる。出口部において近接する吸気管の間の管壁が1つの薄い仕切壁により共有され、その仕切壁とエンジンとの間に一定の厚みのシール材を配設する幅が確保できない場合であっても、厚さが薄い仕切板により、各吸気管の出口部の間の通気を抑制することができる。
【0008】
前記吸気ポート側となる前記仕切板の端面は、前記吸気ポート側となる前記枠体の端面に対して所定長さ低くされている場合には、エンジンとの合わせ面において枠体が押圧され圧縮された状態において仕切板の当該端面がエンジン側に当接するため、近接する吸気管の出口部の間の通気を効果的に抑制することができる。また、枠体が圧縮されるまでに仕切板に過度な力が加わらないため、仕切板の異常な変形や破損を防ぐことができる。
前記枠体は、前記吸気ポート側となる前記仕切板の端面を覆うように形成された帯部を有する場合には、仕切板の当該端面が弾性体からなる帯部を挟んでエンジン側に当たることとなるため、仕切板の端面とエンジンとの間の隙間を抑制することができ、より効果的に近接する吸気管の出口部の通気を抑制することができる。また、帯部により仕切板に過度な力が加わることを防ぎ、仕切板の異常な変形や破損を防ぐことができる。
【0009】
本発明のインテークマニホールドは、出口部において近接した少なくとも2つの吸気管、及び前記出口部に形成され吸気ポートとの合わせ面を有する取付フランジを具備し、請求項1乃至3のいずれかに記載のシール部材を前記合わせ面に装着したインテークマニホールドであって、前記取付フランジには、前記2つの吸気管を囲むように形成され前記シール部材の前記枠体が取り付けられた溝部と、前記2つの吸気管の前記出口部の間を仕切るように形成され前記シール部材の前記仕切板が挿入された仕切溝と、を備えたため、前記シール部材を取付フランジの吸気ポート側との合わせ面に最適に装着することができる。これにより、近接した吸気管の出口部の全体を、溝部に取付けた弾性体からなる枠体によってシールすることができる。また、吸気管の出口部の間の連通を、仕切溝に挿入された仕切板によって抑制することができる。各吸気管の出口部の間が薄い仕切壁により構成され、その仕切壁とエンジンとの間に一定の厚みのシール材を配設する幅が確保できない場合であっても、厚さが薄い仕切板により、各吸気管の出口部の間の通気を抑制することができる。
【0010】
前記吸気ポート側となる前記仕切板の端面は、前記吸気ポート側となる前記枠体の端面に対して所定長さ低くされている場合には、インテークマニホールドをエンジンに取り付け、締めつけることによってシール部材の枠体が圧縮された状態において、仕切板の当該端面がエンジン側に当接するため、近接する吸気管の出口部の間の通気を効果的に抑制することができる。また、枠体が圧縮されるまでに仕切板に過度な力が加わらないため、仕切板の異常な変形や破損を防ぐことができる。
前記シール部材の前記帯部は、前記吸気ポート側となる前記仕切板の端面を覆うように形成されている場合には、仕切板の当該端面が弾性体からなる帯部を挟んでエンジン側に当たることとなるため、仕切板の端面とエンジンとの間の隙間を抑制することができ、より効果的に近接する吸気管の出口部の通気を抑制することができる。また、帯部により仕切板に過度な力が加わることを防ぎ、仕切板の異常な変形や破損を防ぐことができる。
【0011】
前記2つの吸気管は、それぞれ異なる燃焼室に導入するための吸気を前記吸気ポートに供給する場合には、シール部材の仕切板により各吸気管からそれぞれの燃焼室に供給すべき吸気のリークを抑制することができる。
前記2つの吸気管には、流入する吸気量を制御する弁が設けられている場合には、弁による吸気量の制御性を向上させることができる。すなわち、シール部材により各吸気管は外部との通気及び各吸気管の間の通気が抑制されているため、弁により目標となる吸気量とするための制御を精度よく行うことができる。
前記弁は、エンジンが所定回転数未満で閉弁され、前記所定回転数以上で開弁される場合には、シール部材により各吸気管は外部との通気及び各吸気管の間の通気が抑制されているため、開弁時に目標とする吸気量を燃焼室に導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
図1】シール部材を配設したインテークマニホールドを説明するための斜視図である。
図2】実施例に係るシール部材の外観を示す斜視図である。
図3図2のシール部材のA−A断面図である。
図4】シール部材を装着した取付フランジを示す正面図である。
図5図4におけるA−A断面図である。
図6図4におけるB−B断面図である。
図7図4に示す取付フランジをエンジンに取り付けた状態におけるA−A断面図である。
図8図4に示す取付フランジをエンジンに取り付けた状態におけるB−B断面図である。
図9】帯部を有するシール部材の外観を示す斜視図である。
図10】帯部を有するシール部材が取付フランジに装着されている状態を示す部分断面図である。
図11図10に示す取付フランジを吸気ポートが形成されたエンジンに取付けた状態を示す部分断面図である。
図12】吸気管に設けられている弁(閉じた状態)を示す模式的な部分断面図である。
図13】吸気管に設けられている弁(開いた状態)を示す模式的な部分断面図である。
図14】他の吸気管のシール部材と一体にされたシール部材を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0014】
図1は、エンジンの燃焼室に吸気を供給するためのインテークマニホールドの一例を示している。このインテークマニホールド1はポリアミド系樹脂(ナイロン等)等の合成樹脂製であり、サージタンク13内の混合気をエンジンの4つの吸気ポート(図示せず)に供給する。このため、インテークマニホールド1は、1列に並んだ4本の吸気管31〜34を備えている。吸気管の出口部側には取付フランジ41が設けられており、その合わせ面42により吸気ポートが形成されたエンジンに取付けられる。各吸気管と各吸気ポートとは、それぞれシール部材を挟んで接続される。他の吸気管とは離れて配設されている吸気管31及び34の出口部には、それぞれ弾性体からなる環状のシール部材59が装着されている。
【0015】
本例のインテークマニホールド1においては、2つの吸気管32と33とが狭い間隔で設けられているため、それらの出口部36と37とは近接している。吸気管32及び33の各壁面は、出口部36、37において、両者間が1つの仕切壁43によって共有されて構成されている。すなわち、取付フランジ41の合わせ面42において、吸気管の出口部36と37とは薄い仕切壁43を挟み、近接して開口している。仕切壁43の厚さは弾性体のシール部材を設置できない程薄いため、2つの吸気管の出口部36及び37には、1つのシール部材51が装着されている。
【0016】
(シール部材)
以下、前記インテークマニホールド(1)を例として、近接した2つの吸気管(32、33)の出口部(36、37)の間の連通を抑制するためのシール部材(51)について説明する。なお、以下の実施形態に記載する各構成の括弧内の符号は、実施例に挙げる具体的構成との対応関係を示すものである。
本実施形態に係るシール部材(51)は、エンジンの燃焼室に吸気を供給するためのインテークマニホールド(1)と吸気ポートとの合わせ面(42)に設けられた溝に装着して使用されるシール部材である。インテークマニホールド(1)は、シール部材(51)を挟んで、吸気ポート(82、83)が形成されたエンジン(81)に取り付けられる(図8参照)。
シール部材(51)は、弾性体からなり開口部(55)を有する環状の枠体(52)と、枠体(52)の内壁(53)に接続されるとともに枠体(52)の開口部(55)を仕切るように配置され、枠体(52)の合わせ面(42)と平行な方向の厚み(T)より薄く形成された仕切板(61)と、を備えている(図2参照)。仕切板(61)により2つに仕切られた開口部(55)は、それぞれ吸気管の出口部(36、37)に対応するように形成されている。
【0017】
枠体(52)の材質は弾性体である限り問わず、例えば、ゴム等のエラストマーや合成樹脂等を採用することができる。枠体(52)の寸法や形状は特に限定されず、吸気管の近接した出口部(36、37)や取付フランジ(41)の大きさ、形状、配置等に応じて設定することができる。合わせ面(42)と平行な方向の枠体(52)の幅をTとする(図3(a)参照)。
【0018】
仕切板(61)は、枠体(52)のように使用時に圧縮変形させる必要がないため、枠体(52)より小さな弾性率の硬質の材質とすることができる。好ましくは、ステンレス、アルミニウム等の金属、硬質の合成樹脂等を使用することができる。これら硬質の材質を用いることで、枠体(52)より薄くても曲がったり捩れたりする変形を起こすことなく、近接した吸気管の出口部(36、37)の間に隙間が生じないようにすることができる。
仕切板(61)の具体的な構成は適宜決められればよく、例えば、短冊状の仕切板本体(62)と、仕切板本体(62)の両端にそれぞれ設けられ、枠体(52)の内壁(53)に接続される端部(63、64)と、を具備し、それらは一体に形成することができる(図2参照)。
仕切板本体(62)の厚さは、枠体(52)の幅Tより薄くされる(図3(a)参照)。また、仕切板本体(62)の厚さは、取付フランジ(41)に設けられる仕切溝(47)の幅との関係で適宜設定することができる(図6参照)。仕切板(61)と枠体(52)の内壁(53)との接続方法は特に問わない。
【0019】
仕切板61は種々の態様で設けることができる。例えば、吸気ポート側となる仕切板(61)の端面(61b)は、吸気ポート側となる枠体(52)の端面(52b)に対して所定長さd低く形成することが好ましい(図3(a)参照)。このようにすれば、エンジン(81)との間で枠体(52)が押圧され圧縮された状態において仕切板の端面(61b)がエンジン側に当接するため、近接する吸気管の出口部(36、37)の間の通気を抑制することができる。また、枠体(52)が圧縮されるまでに仕切板(61)に過度な力が加わらないため、仕切板(61)の異常な変形や破損を防ぐことができる。長さdは、枠体52の寸法や弾性等に応じて設定されればよい。
なお、シール部材(51)からみて、吸気ポート(82、83等)が形成されているエンジン(81)側を、「吸気ポート側」又は「エンジン側」といっている。すなわち、「吸気ポート側」(エンジン側)は、シール部材(51)の取付フランジ(41)への取付面とは反対側となる。
【0020】
また、枠体(52)は、吸気ポート側となる仕切板(61)の端面(61b)を覆うように形成された帯部(67)を有するようにしてもよい(図3(b)、図9参照)。このようにすれば、仕切板の当該端面(61b)が弾性体からなる帯部(67)を挟んでエンジン側に当たることとなるため、仕切板の端面(61b)とエンジンとの間の隙間を抑制することができ、より効果的に近接する吸気管の出口部(36、37)の間の通気を抑制することができる。また、帯部(67)により仕切板に過度な力が加わることを防ぎ、仕切板の異常な変形や破損を防ぐことができる。
【0021】
(インテークマニホールド)
本実施形態に係るインテークマニホールド(1)は、出口部(36、37)において近接した少なくとも2つの吸気管(32、33)、及び出口部(36、37)に形成され吸気ポート(82、83)との合わせ面(42)を有する取付フランジ(41)を具備しており、前記シール部材(51)が合わせ面(42)に装着されている。
このため、取付フランジ(41)には、2つの吸気管(32、33)の出口部(36、37)を囲むように形成されシール部材(51)の枠体(52)が取り付けられた溝部(46)と、2つの吸気管(32、33)の出口部(36、37)の間を仕切るように形成されシール部材(51)の仕切板(61)が挿入された仕切溝(47)、を備えている(図4〜6参照)。
【0022】
取付フランジ(41)はインテークマニホールド(1)に一体に形成されており、エンジン(81)の吸気ポート(82、83)に接続される2つの吸気管(32、33)の出口部(36、37)が形成されている。そして、取付フランジ(41)の合わせ面(42)には、2つの吸気管の出口部(36、37)全体を囲むように形成され、シール部材(51)の枠体(52)が取り付けられた溝部(46)が備えられている。
また、吸気管の出口部(36、37)において、2つの出口部(36と37)は1つの仕切壁(43)を共有するようにして仕切られている。2つの吸気ポート(82、83)は狭い間隔で隣接しているため、2つの出口部(36、37)は近接することとなり、仕切壁(43)の厚さは薄い。このため、仕切壁(43)のエンジン(81)側の端面(44)の幅が狭くなり、シール部材(51)の枠体(52)の厚みTと同等の幅の弾性体を嵌合させるために必要な幅の溝部を形成することは困難である。よって、取付フランジ(41)には、2つの吸気管の出口部(36と37)の間を仕切るように形成され、シール部材(51)の仕切板(61)が挿入された仕切溝(47)が備えられている。すなわち、仕切溝(47)は、仕切壁(43)のエンジン(81)側の端面(44)に形成される。
【0023】
インテークマニホールド(1)をエンジン(81)に取り付け、締めつけると、取付フランジ(41)の溝部(46)に取付けたシール部材(51)の枠体(52)が押圧により圧縮されて、枠体(52)はエンジン(81)側に密着する。これにより、近接した吸気管の出口部(36、37)の全体を、溝部(47)に取付けた弾性体からなる枠体(52)によってシールすることができる。
また、枠体(52)が圧縮されるに伴い、取付フランジ(41)の仕切溝(47)に挿入されたシール部材(51)の仕切板(61)がエンジン(81)側に当接する。これにより、2つの吸気管の出口部(36と37)の間の連通を、仕切板(61)によって抑制することができる。仕切壁(43)のエンジン(81)側の端面(44)の幅が狭く、弾性体からなるシール材を取り付ける溝部が形成できない場合であっても、硬く厚さが薄い仕切板(61)により、吸気管の出口部(36と37)の間の通気を抑制することができる。
【実施例】
【0024】
以下、図面を参照してシール部材及びインテークマニホールドについてより具体的に説明する。
【0025】
(シール部材)
図2は、吸気ポート側(エンジン81側)からシール部材51を斜視した外観を示している。シール部材51は、弾性体からなり開口部55を有する環状の枠体52と、枠体52の内壁53に接続されるとともに枠体52の開口部55を仕切るように配置され、合わせ面42と平行な方向の枠体52の厚みTより薄く形成された仕切板61と、を備えている。仕切板61により2つに仕切られた開口部55は、それぞれ吸気管の出口部(36、37)に対応するように形成されている(図1参照)。
シール部材51は、その一方の端面51b側がエンジン81に当接するように使用される。シール部材51の他方の端面51a側は、インテークマニホールド1の取付フランジ41に形成された溝(溝部46及び仕切溝47)に装着される。シール部材51の両端面(51a、51b)は、取付フランジ41の合わせ面42と平行な方向となる。枠体52の前記方向の厚みはTである。また、短冊状の仕切板61は、合わせ面42と垂直な方向に設けられている。
【0026】
仕切板61は、金属、硬質の合成樹脂等を用いて形成することができる。本例の仕切板61は、短冊状の仕切板本体62、及び枠体52の内壁53に接続される端部(63、64)から構成されている。仕切板61の端部(63、64)は仕切板本体62から折曲がった形状となるよう、仕切板本体62と一体に形成することができる。仕切板61の端部(63、64)のサイズや形状等は、枠体52の内壁53に接続可能である限り問わない。例えば、金属製の仕切板61と樹脂製の枠体52は、インサート成形等により一体とすることができる。その他、枠体52に仕切板61の端部(63、64)を嵌合させるための溝等を設け、端部(63、64)を嵌合させてもよい。
【0027】
仕切板61は種々の態様で設けることができる。例えば、図3(a)は、図2のA−A断面を表している。仕切板61の厚さは、枠体52の厚さTより薄く形成されている。インテークマニホールド1をエンジン81に取付けた状態では、仕切板61の端面61a側が取付フランジ41に形成された仕切溝47に挿入され、端面61b側がエンジン81に当接することになる(図8参照)。
また、同図に示されているように、吸気ポート側(エンジン81側)となる仕切板61の端面61bは、吸気ポート側となる枠体52の端面52bに対して長さdだけ低くされている。このようにすれば、インテークマニホールド1とエンジン81との間で弾性体からなる枠体52が押圧されて圧縮された状態において、仕切板61の端面61bをエンジン81側に当接させるようにすることができる。
【0028】
また、図3(b)に示すように、枠体52は、吸気ポート側となる仕切板61の端面61bを覆うように形成された帯部67を有するようにしてもよい。このようにすれば、仕切板61の端面61bが弾性体からなる帯部67を挟んでエンジン側に当たることとなるため、仕切板61の端面61bとエンジン81との間の隙間を抑制することができる。
帯部67は、仕切板61の端面61bに接する位置を中心として所定の幅とすることができる。例えば、帯部67の幅は、仕切壁43の端面44の幅(厚み)未満とすることができる(図10参照)。また、帯部67の厚さは、適宜設定することができる。
【0029】
(インテークマニホールド)
図4は、シール部材51を装着したインテークマニホールド1の取付フランジ41(合わせ面42側)を表す正面図である。また、図5は、図4におけるA−A断面図であり、図6はB−B断面図である。図5及び6は、シール部材51が取付フランジ41の合わせ面42に装着されたのみの状態、すなわちシール部材51が押圧により圧縮されていない状態を表している。
インテークマニホールド1は、出口部(36、37)において近接した2つの吸気管(32、33)と、出口部(36、37)に形成され吸気ポート(82、83)との合わせ面42を有する取付フランジ41とを具備しており、前記シール部材51が合わせ面42に装着されている。
シール部材51を装着するため、取付フランジ41には、2つの吸気管(32、33)の出口部(36、37)を囲むように形成されシール部材51の枠体52が取り付けられた溝部46と、2つの吸気管(32、33)の出口部(36、37)の間を仕切るように形成されシール部材51の仕切板61が挿入された仕切溝47、を備えている。
【0030】
図6に示すように、インテークマニホールド1とエンジン81の間で枠体52が圧縮されていない状態において、仕切板61の端面61bは、枠体52の端面52bに対して所定長さdだけ低くされている。長さdは、インテークマニホールド1がエンジン81に締め付けられることによって枠体52が圧縮される長さから、仕切板61の端面61bをエンジン81に押圧するために必要な長さを引いた長さである。
【0031】
図7は、図4に示した取付フランジ41を、吸気ポート(82、83)を備えるエンジン81に取付けた状態におけるA−A断面図であり、図8はB−B断面図である。
シール部材51を挟んで、取付フランジ41をエンジン81に取付けると、弾性体からなるシール部材51の枠体52は取付フランジ41に設けられている溝部46内に収容される方向に圧縮される。これによって、インテークマニホールド1の吸気管(32、33)とエンジン81の吸気ポート(82、83)とはそれぞれ連通し、枠体52の端面52bはエンジン81と密着する。
【0032】
また、取付フランジ41とエンジン81との間で枠体52が圧縮されるに伴い、図8に示すように、シール部材51に設けられている仕切板61は仕切溝47の底部に向かって押される。金属等からなる仕切板61は変形しないため、仕切板61の端面61bは、吸気ポート82と83とを隔てるエンジン81側の仕切壁に圧接される。これによって、吸気管32及び吸気ポート82と、吸気管33及び吸気ポート83との間の通気は抑制される。
【0033】
図8に表されているように、仕切溝47は、枠体52がエンジン81側からの押圧により圧縮されたときの仕切板61の端面61aよりも深く形成しておくことが好ましい。このように構成すれば、仕切板61の端面61bがエンジン81側に当接された後、仕切板61は仕切溝47の底側の隙間に沈むように押し込まれ、仕切板61の端面61bがエンジン81側に圧接される。また、仕切板61や仕切溝47に無理な力が加わり変形されることを防ぐことができる。仕切板61の端面61aが仕切溝47の底部まで到達していなくても、仕切板61が一定の長さ仕切溝47に挿入されていれば、仕切溝47を介した通気を抑制することができる。
【0034】
図9に示すように、シール部材51の枠体52の端面52b側に、仕切板61の端面61bに被さる所定幅の帯部67を設けることができる。図10は、帯部67を設けたシール部材51を取付フランジ41に装着した状態を表している。シール部材51の仕切板61は、取付フランジ41の仕切壁43の端面44に形成されている仕切溝47に挿入されており、仕切板61の端面61bには帯部67が当接している。
帯部67の材料としては、ゴム等のエラストマー、合成樹脂等の任意の弾性体を用いることができる。帯部67は、枠体52と同じ又は異なる材料により、枠体52と一体に形成することができる。これによって、仕切板61の端面61bが弾性体からなる帯部67を挟んでエンジン81側に当たることとなるため、仕切板61とエンジン81との間隙を抑制すると共に、仕切板61に過度な力が加わることを防ぐことができる。
【0035】
図11は、前図のシール部材51が装着された取付フランジ41をエンジン81に取付けた状態を表している。シール部材51の枠体52は取付フランジ41に設けられている溝部46と嵌合し、溝部46内に収容されるように圧縮されると共に、端面52bがエンジン81と密着する。また、枠体52が圧縮されるに伴い、帯部67はエンジン81に当接し、圧縮される。そして、仕切板61は帯部67を挟んでエンジン81に押され、仕切溝47の中を下方に移動する。これによって、吸気管(32、33)と吸気ポート(82、83)とは連通されると共に、吸気管の間の合わせ面42での通気は抑制される。
【0036】
仕切板61及び仕切溝47を備えるシール構造は、取付フランジ41が合成樹脂製である場合にも容易に適用することができる。取付フランジ41の材料が合成樹脂であっても、幅の狭い仕切壁43の端面44に幅の狭い仕切溝47を形成することが可能である。例えば、仕切壁43の端面44の幅が3〜5mm程度であれば、厚さ1mm程度の仕切板61を挿入可能な幅の仕切溝47を形成することができる。仕切板61の高さ方向(合わせ面42と垂直方向)の寸法は、例えば3〜4mmとすることができる。
【0037】
インテークマニホールド1により、以上のように吸気管毎に吸気のリークが抑制されるため、隣接する2つの吸気管(32、33)は、異なる燃焼室に導入するための吸気を、それぞれ吸気ポート(82、83)に安定に供給することができる。
図12は、隣接する吸気管32及び33に設けられた弁38及び39(閉弁された状態)を模式的に表した図である。別途備えられる制御手段は、弁38及び39により吸気量を制御することができる。従来、吸気管に弁等を設けて燃焼室に導入される吸気量の制御を行う場合に、近接する吸気管の出口部の間に生じる吸気のリークによって、目標の吸気量とするように制御することが困難であるという問題があった。インテークマニホールド1では、各吸気管の出口部が近接していても仕切板61により相互間の吸気のリークが抑制されるため、隣接する吸気管(32、33)内に吸気量を制御する弁(38、39)を設け、弁(38、39)により目標とする吸気量とするための制御を精度よく行うことができる。
弁(38、39)の開度等の制御は特に問わず、例えば、弁(38、39)はエンジンが所定回転数未満のとき閉弁され(図12)、前記所定回転数以上のとき開弁されるように制御することができる(図13)。これにより、開弁時に必要とされる量の吸気を燃焼室内に導入することができる。前記所定回転数は、エンジンの特性や必要とする走行特性に応じて適宜設定されればよい。
【0038】
なお、図1に示したインテークマニホールド1の吸気管31及び34は、他の吸気管とは離れて設けられているため、それぞれ弾性体からなる環状のシール部材59を配設することによってシールすることができる。取付フランジ41の合わせ面42において、吸気管31及び34の出口部の外周部には、それぞれシール部材59を嵌合させる溝部を形成しておくことができる。よって、図14に示すように、インテークマニホールド1に用いるシール部材として、吸気管32及び33のシールに用いるシール部材51と、吸気管31及び34のシールに用いる2つのシール部材59とを一体に形成することも可能である。
【0039】
尚、本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1;インテークマニホールド、
31〜34;吸気管、36、37;出口部、38、39;弁、
41;取付フランジ、42;合わせ面、43;仕切壁、46;溝部、47;仕切溝、
51;シール部材、52;枠体、53;内壁、55;開口部、59;他のシール部材、
61;仕切板、67;帯部、
81;エンジン、82、83;吸気ポート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14