特許第6821511号(P6821511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6821511
(24)【登録日】2021年1月8日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】変位記録装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20210114BHJP
   G01B 5/30 20060101ALI20210114BHJP
   E01D 19/04 20060101ALI20210114BHJP
   E01D 1/00 20060101ALI20210114BHJP
   E04H 9/02 20060101ALN20210114BHJP
【FI】
   G01M99/00 Z
   G01B5/30
   E01D19/04
   E01D1/00 Z
   !E04H9/02 331A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-107134(P2017-107134)
(22)【出願日】2017年5月30日
(65)【公開番号】特開2018-204986(P2018-204986A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2019年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長弘 健太
【審査官】 森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−161116(JP,A)
【文献】 特開平05−280911(JP,A)
【文献】 特開2002−267404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00−99/00
G01H 1/00 −17/00
G01B 5/00 −5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に変位可能な第1部材および第2部材と、
第1箇所で前記第1部材に対して固定され、かつ、中間箇所で前記第2部材に巻き掛けまたは回し掛けられ ている長尺部材 と、
前記長尺部材の前記中間箇所を挟んで前記第1箇所とは反対側にある第2箇所において前記長尺部材に対して固定され、かつ、前記長尺部材の前記第1箇所および前記中間箇所の間で前記長尺部材に対して変位可能に設けられている第1要素と、
前記長尺部材に対して変位する前記第1要素との相互作用により視認可能な痕跡を前記長尺部材に残存させるように、前記長尺部材に設けられている第2要素と、を備えていることを特徴とする変位記録装置。
【請求項2】
請求項1記載の変位記録装置において、
前記第2要素が、前記長尺部材に沿って離散的に取り付けられ、前記長尺部材に沿って変位する前記第1要素から作用する外力にしたがって変位し、かつ、当該外力から解放された際にその箇所で停留する複数の標識部材により構成されていることを特徴とする変位記録装置。
【請求項3】
請求項1記載の変位記録装置において、
前記第2要素が、前記長尺部材に沿って離散的に付された複数の標識と、前記複数の標識とは異なる色を有し、前記複数の標識を覆い、前記長尺部材に沿って変位する前記第1要素により剥離される被覆と、により構成されていることを特徴とする変位記録装置。
【請求項4】
請求項1記載の変位記録装置において、
前記第2要素が、前記長尺部材の下地とは異なる色を有し、前記長尺部材に沿って変位する前記第1要素により剥離される断続的な複数の被覆要素により構成されていることを特徴とする変位記録装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1つに記載の変位記録装置において、
前記第1部材が前記第2部材に対して相互に反対向きの第1方向および第2方向のそれぞれに相対的に変位可能であり、
前記長尺部材の前記第1箇所が、 前記中間箇所よりも前記第1方向に離間して配置されていることを特徴とする変位記録装置。
【請求項6】
請求項5記載の変位記録装置において、
前記第1箇所が、当該第1箇所に最も近い前記中間箇所よりも前記第1方向に離間して配置されている第1長尺部材と、前記第1箇所が、当該第1箇所に最も近い前記中間箇所よりも前記第2方向に離間して配置されている第2長尺部材と、を前記長尺部材として備えていることを特徴とする変位記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2物体間の相対変位量を記録 する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
低コストでかつ簡便に2物体間の相対変位量を記録する装置が提案されている(特許文献1および2参照)。この装置によれば、第1部材および第2部材が相対的に離間する方向 に変位した場合、第1部材および第2部材の間に介在する紐状の第3部材が伸長する。その一方、第1部材および第2部材が相対的に移動しない場合または相互に近接する方向に移動した場合、第3部材の当該伸長状態が維持される。そして、第3部材の伸長量が、当該第3部材に付されている目盛りの視認によって記録される。これにより、例えば、上部構造物と下部構造物との間に取り付けられる免震装置において、免震装置に設けられる積層ゴム体が経験した上部および下部構造物間の相対変位量が記録される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−040736号公報
【特許文献2】特開2015−040737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、変位記録装置が長期間にわたって外気に曝されているため、汚れが付着して目盛りの視認作業が困難になる場合がある。また、地震動により、変位記録装置が取り付けられている構造物またはその周辺の状態が変化することで、目盛りを視認可能な位置まで作業者が接近することが困難になる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、2物体間の相対変位量の視認による記録容易性の向上を図り得る変位記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様としての変位記録装置は、相対的に変位可能な第1部材および第2部材と、第1箇所で前記第1部材に対して固定され、かつ、中間箇所で前記第2部材に巻き掛けまたは回し掛けられている長尺部材と、前記長尺部材の前記中間箇所を挟んで前記第1箇所とは反対側にある第2箇所において前記長尺部材に対して固定され、かつ、前記長尺部材の前記第1箇所および前記中間箇所の間で前記長尺部材に対して変位可能に設けられている第1要素と、前記長尺部材に対して変位する前記第1要素との相互作用により視認可能な痕跡を前記長尺部材に残存させるように、前記長尺部材に設けられている第2要素と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明の第1態様としての変位記録装置によれば、長尺部材の第1箇所と中間箇所(複数の中間箇所が存在する場合には第1箇所に最も近い第1中間箇所)との間隔が長くなるように第1部材および第2部材が相対的に変位した場合、長尺部材の緊張力により第2箇所、ひいては第2箇所に固定されている第1要素が中間箇所(複数の中間箇所が存在する場合には第2箇所に最も近い第2中間箇所)に接近するように変位する。この際、長尺部材に設けられている第2要素が第1要素と相互作用することにより、第1要素の変位の痕跡を長尺部材に残存させる。よって、第1部材(またはこれに固定されている第1物体)および第2部材(またはこれに固定されている第2物体)の相対的な変位量が、当該痕跡(ひいてはこの視認結果に応じた長尺部材の第1箇所およびこれに最も近い中間箇所の間隔の最大変化量)の視認が容易な形で記録されうる。
【0008】
本発明の第1態様としての変位記録装置において、前記第2要素が、前記長尺部材に沿って離散的に取り付けられ、前記長尺部材に沿って変位する前記第1要素から作用する外力にしたがって変位し、かつ、当該外力から解放された際にその箇所で停留する複数の標識部材により構成されていることが好ましい。
【0009】
当該構成の変位記録装置によれば、第2要素を構成する複数の標識部材のうち、元の場所から中間箇所に接近するように変位したうえで停留している部材が第1要素の変位の痕跡として長尺部材に残存する。よって、複数の標識部材のそれぞれの元の場所からの変位状態を通じて第1部材および第2部材の相対的な変位量が容易に視認可能な形で記録されうる。
【0010】
本発明の第1態様としての変位記録装置において、前記第2要素が、前記長尺部材に沿って離散的に付された複数の標識と、前記複数の標識とは異なる色を有し、前記複数の標識を覆い、前記長尺部材に沿って変位する前記第1要素により剥離される被覆と、により構成されていることが好ましい。
【0011】
当該構成の変位記録装置によれば、第2要素を構成する複数の標識のうち、同じく第2要素を構成する被覆が剥離されることによって露出された標識が第1要素の変位の痕跡として長尺部材に残存する。被覆の色および当該被覆が剥離されることにより露出される標識の色は相違するため、両者の視認による識別の容易が図られている。よって、複数の標識のそれぞれの露出状態または被覆状態を通じて、第1部材および第2部材の相対的な変位量が視認容易な形で記録されうる。
【0012】
本発明の第1態様としての変位記録装置において、前記第2要素が、前記長尺部材の下地とは異なる色を有し、前記長尺部材に沿って変位する前記第1要素により剥離される断続的な複数の被覆要素により構成されていることが好ましい。
【0013】
当該構成の変位記録装置によれば、第2要素を構成する複数の被覆要素のうち、長尺部材から剥離された被覆要素が第1要素の変位の痕跡として長尺部材に残存する。被覆要素の色および長尺部材の下地の色は相違するため、両者の視認による識別の容易が図られている。複数の被覆要素のそれぞれの剥離状態を通じて、第1部材および第2部材の相対的な変位量が視認容易な形で記録されうる。
【0014】
本発明の第1態様としての変位記録装置において、前記第1部材が前記第2部材に対して相互に反対向きの第1方向および第2方向のそれぞれに相対的に変位可能であり、前記長尺部材の前記第1箇所が、当該第1箇所に最も近い前記中間箇所よりも前記第1方向に離間して配置されていることが好ましい。
【0015】
当該構成の変位記録装置によれば、第1部材が第2部材に対して第1方向に相対的に変位した場合は長尺部材の第1箇所とこれに最も近い中間箇所との間隔が長くなる一方、第1部材が第2部材に対して第2方向に相対的に変位した場合は当該間隔が短くなる(ただし、その後で当該間隔が長くなる可能性がある)。このため、前者の場合は第2要素により長尺部材に第1要素の変位の痕跡が残される一方、後者の場合は長尺部材に当該痕跡は残されない。よって、長尺部材の痕跡の状態に基づき、第1部材の第2部材に対する第1方向への相対的な変位量が視認容易な形で記録されうる。
【0016】
本発明の第1態様としての変位記録装置において、前記第1箇所が、当該第1箇所に最も近い前記中間箇所よりも前記第1方向に離間して配置されている第1長尺部材と、前記第1箇所が、当該第1箇所に最も近い前記中間箇所よりも前記第2方向に離間して配置されている第2長尺部材と、を前記長尺部材として備えていることが好ましい。
【0017】
当該構成の変位記録装置によれば、第1長尺部材および第2長尺部材のそれぞれにおける痕跡の状態を通じて、第1部材の第2部材に対する第1方向および第2方向のそれぞれについて相対的な変位量が視認容易な形で記録されうる。
【0018】
本発明の第2態様としての変位記録装置は、相対的に変位可能な第1部材および第2部材と、一の箇所で前記第1部材に対して固定されている長尺部材と、前記第2部材に対して固定され、前記長尺部材を他の箇所で変位可能に支持する第1要素と、前記長尺部材が前記第1要素に対して変位する際に、前記第1要素との相互作用により視認可能な痕跡を前記長尺部材に残存させるように、前記長尺部材に設けられている第2要素と、を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明の第2態様としての変位記録装置によれば、長尺部材の一の箇所と他の箇所(複数の他の箇所が存在する場合には当該一の箇所に最も近い他の箇所)との間隔が長くなるように第1部材および第2部材が相対的に変位した場合、長尺部材がその緊張力により、第2部材に固定されている第1要素に対して変位する。この際、長尺部材に設けられている第2要素が第1要素と相互作用することにより、第1要素の変位の痕跡を長尺部材に残存させる。よって、第1部材(またはこれに固定されている第1物体)および第2部材(またはこれに固定されている第2物体)の相対的な変位量が、当該痕跡(ひいてはこの視認結果に応じた長尺部材の一の箇所およびこれに最も近い他の箇所の間隔の最大変化量)が視認容易な形で記録されうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態としての変位記録装置の構成に関する説明図。
図2A】本発明の第1実施形態としての変位記録装置の作用に関する説明図。
図2B】本発明の第1実施形態としての変位記録装置の効果に関する説明図。
図3】本発明の第2実施形態としての変位記録装置の構成に関する説明図。
図4A】第2要素の構成に関する説明図(実施例1)。
図4B】第2要素の作用に関する説明図(実施例1)。
図4C】第2要素の構成に関する説明図(実施例2)。
図4D】第2要素の作用に関する説明図(実施例2)。
図5】本発明の第2実施形態としての変位記録装置の作用に関する説明図。
図6】本発明の第3実施形態としての変位記録装置の作用に関する説明図。
図7A】本発明の第3実施形態としての変位記録装置の作用に関する説明図。
図7B】本発明の第3実施形態としての変位記録装置の作用に関する説明図。
図8】本発明の第4実施形態としての変位記録装置の作用に関する説明図。
図9】本発明の第5実施形態としての変位記録装置の作用に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
(構成)
図1に示されている本発明の第1実施形態としての変位記録装置は、相対的に変位可能な第1部材11および第2部材12と、長尺部材20(ワイヤ(線状部材)、チェーン、ベルト(帯状部材) など)と、第1要素21と、第2要素22と、を備えている。変位記録装置は、例えば免震装置を構成する上側フランジプレートおよび下側フランジプレートの相対変位量(最大値)を記録するために用いられる。
【0022】
第1部材11が下側フランジプレートにより構成され、第2部材12は上側フランジプレートにより構成されている。免震装置を構成する上側フランジプレートおよび下側フランジプレートの間には積層ゴム体10が介装されている。第1部材11が下側フランジプレートに固定されている部材により構成されてもよい。同様に、第2部材12が上側フランジプレートに固定されている部材により構成されていてもよい。
【0023】
長尺部材20は、金属ワイヤのように長手方向に伸縮しにくい 部材により構成されている。長尺部材20は、第1箇所P1(第1端部)で第1部材11に対して固定された固定部材112に対して固定されている。長尺部材20は、中間箇所P0で第2部材12 に固定された支持部材122に回し掛けられている。支持部材122がプーリにより構成され、長尺部材20が中間箇所P0において支持部材122に巻き掛けられていてもよい。
【0024】
第1要素21は、長尺部材20の中間箇所P0を挟んで第1箇所P1とは反対側にある第2箇所P2(第2端部)において長尺部材20に対して固定されている。その一方、第1要素21は、長尺部材20の第1箇所P1および中間箇所P0の間で長尺部材20に対して変位可能に設けられている。第1要素21は、例えばコードストッパーのように、第1基体および第2基体と、第2基体を第1基体に引き寄せるように付勢する弾性要素(ばね部材)と、を備えている。長尺部材20が第1箇所P1および中間箇所P0の間で弾性要素の付勢力によって第1基体および第2基体に挟み込まれている。第1要素21は、当該付勢力よりも強い一定の外力を受けた際、当該外力にしたがって長尺部材20に沿って変位またはスライドすることができる。第1要素21は、中間箇所P0に接近するように変位した後で、外力が弱まった場合、長尺部材20に沿ってスライドすることなくその場に停留する。
【0025】
第2要素22は、長尺部材20に対して変位する第1要素21との相互作用により視認可能な痕跡を長尺部材20に残存させるように、長尺部材20に設けられている。本実施形態では、第2要素22が、長尺部材20に離散的に取り付けられている複数(例えば5つ)の標識部材221により構成されている。隣り合う標識部材221の間隔は、第1要素21の変位量の目標記録精度に応じて設定されている。標識部材221の個数および間隔はさまざまに変更されてもよい。各標識部材221は、長尺部材20に沿って変位する第1要素21から作用する外力にしたがって変位し、かつ、当該外力から解放された際にその箇所で停留する。標識部材221は、例えば穴あきビーズのように長尺部材20の径とほぼ同径の貫通孔を有し、当該貫通孔に長尺部材20が挿通された状態で、長尺部材20に対して取り付けられている。
【0026】
(作用・効果)
前記構成の変位記録装置によれば、図2Aに示されているように第1部材11 が第2部材12に対して相対的に変位した場合(黒矢印参照)、長尺部材20がその緊張力によって第1箇所P1と中間箇所P0との間隔が長くなり、第2箇所P2に固定されている第1要素21が中間箇所P0に接近するように変位する(白矢印参照)。この際、第1要素21により直接的または間接的に押されることで、複数の 標識部材221のそれぞれの元の場所からの変位の有無が第1要素21の変位の痕跡として長尺部材20に残される。図2Bに示されているように第1部材11および第2部材12の相対的な位置が元に戻った後、元の場所からの各標識部材221の変位状態を通じて、長尺部材20の第1箇所P1と中間箇所P0との間隔の最大変化量、ひいては第1部材11および第2部材12の相対的な変位量(最大変位量)が視認容易な形で記録されうる。
【0027】
(第2実施形態)
(構成)
図3に示されている本発明の第2実施形態としての変位記録装置は、第1部材11が上側フランジプレートにより構成され、第2部材12は下側フランジプレートにより構成されている。図4Aおよび図4Cに示されているように、第2要素22が、長尺部材20に沿って離散的に付された複数の標識222と、複数の標識222を覆う被覆224と、により構成されている。複数の標識222は、塗料が長尺部材20にコーティングされることで長尺部材20に付されている。被覆224は、例えば合成樹脂、具体的にはフッ素樹脂、エポキシ樹脂及び塩化ビニル樹脂等が長尺部材20にコーティングまたはライニングされることで標識222を覆うように長尺部材20に付されている。 複数の標識222の色と被覆224の色とは相違している。その他の構成は、第1実施形態と同様であるため、同一の構成または対応する構成に関しては同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0028】
図4Aに示されている実施例1の第2要素22において、複数の標識222は相互に離間している。隣り合う標識222の間隔は、第1要素21の変位量の目標記録精度に応じて設定されている。標識222の個数、幅および間隔はさまざまに変更されてもよい。隣り合う標識222の色は同一であってもよいし相違していてもよい。複数の標識22のそれぞれの色が、第1要素21の変位距離の長短に応じて差別化されていてもよい。
【0029】
図4Cに示されている実施例2の第2要素222 において、複数の標識222は相互に隣接している。各標識222の幅は、第1要素21の変位量の目標記録精度に応じて設定されている。標識222の個数、幅および間隔はさまざまに変更されてもよい。隣接する標識222の色は相違している。複数の標識222 のそれぞれの色が、第1要素21の変位距離の長短に応じて差別化されていてもよい。
【0030】
(作用・効果)
前記構成の変位記録装置によれば、図5に示されているように第1部材11が第2部材12に対して相対的に変位した場合(黒矢印参照)、長尺部材20がその緊張力によって第1箇所P1と中間箇所P0との間隔が長くなり、第2箇所P2に固定されている第1要素21が中間箇所P0に接近するように変位する(白矢印参照)。この際、第1要素21により長尺部材20から被覆224が剥離されることにより、図4Bおよび図4Dに示されているように露出された標識222が第1要素21の変位の痕跡として長尺部材20に残存する。被覆224の色および当該被覆224が剥離されることにより露出される標識222の色は相違するため、両者の視認による識別の容易が図られている。よって、複数の標識222のそれぞれの露出状態または被覆状態を通じて、第1部材11および第2部材12の相対的な変位量が視認容易な形で記録されうる。
【0031】
(第3実施形態)
(構成)
図6に示されている本発明の第3実施形態としての変位記録装置は、第1部材11が第2部材12に対して相互に反対向きの第1方向X1および第2方向X2のそれぞれに相対的に変位可能である(この点は第1および第2実施形態と同様である。)。長尺部材20の第1箇所P1は、 中間箇所P0の垂直位置 よりも第1方向X1に離間して配置されている。すなわち、中間箇所P0を通り、第1方向X1および第2方向X2を垂線 方向とする仮想的な平面Sを基準として、第1箇所P1が第1方向X1に離間するように長尺部材20が第1部材11に固定され、かつ、第2部材122 に回し掛けされている。その他の構成は、第2実施形態と同様であるため、同一の構成または対応する構成に関しては同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0032】
(作用・効果)
前記構成の変位記録装置によれば、図7Aに示されているように第1部材11が第2部材12に対して第1方向X1に相対的に変位した場合(黒矢印参照)、長尺部材20の第1箇所P1と中間 箇所P0との間隔が長くなり、第2箇所P2に固定されている第1要素21が中間箇所P0に接近するように変位する(白矢印参照)。その一方、図7Bに示されているように第1部材11が第2部材12に対して第2方向X2に相対的に変位した場合(黒矢印参照)、当該間隔が短くなり、長尺部材20が撓んで第1要素21は変位しない。このため、前者の場合は第2要素22により長尺部材20に第1要素21の変位の痕跡が残される一方(図4Bおよび図4D参照)、後者の場合は長尺部材20に当該痕跡は残されない。よって、長尺部材20の痕跡の状態を通じて、第1部材11の第2部材12に対する第1方向X1への相対的な変位量が視認容易な形で記録されうる。
【0033】
(第4実施形態)
(構成)
図8に示されている本発明の第4実施形態としての変位記録装置は、第2部材12に第1支持部材122および第2支持部材124が取り付けられている。長尺部材20は、第1箇所P1(第1端部)に 第1中間箇所P01で第1支持部材122に回し掛けられている。長尺部材20は、第2箇所P2(第2端部)に 第2中間箇所P02で第2支持部材124に回し掛けられている。
【0034】
第2箇所P2(第2端部)において長尺部材20に対して固定されている第1要素21は、長尺部材20の第1中間箇所P01および第2中間箇所P02 の間で長尺部材20に対して変位可能に設けられている。その他の構成は、第3実施形態と同様であるため、同一の構成または対応する構成に関しては同一の符号を用いるとともに説明を省略する。
【0035】
(作用・効果)
第2部材12の上面視において、その輪郭または境界線の内側に収まるように変位記録装置を配置することができるので、工事期間中に変位記録装置が損傷しにくい。また、変位記録装置が第2部材12に固定されていることから、風等によって損傷しにくい。
【0036】
(第5実施形態)
(構成)
図9に示されている本発明の第5実施形態としての変位記録装置は、一の箇所Q1で第1部材11に対して固定されている長尺部材20と、第2部材12に対して固定され、長尺部材20を他の箇所Q2で変位可能に支持する第1要素21と、長尺部材20が第1要素21に対して変位する際に、第1要素21との相互作用により視認可能な痕跡を長尺部材20に残存させるように、長尺部材20に設けられている第2要素22と、を備えている。
【0037】
第1要素21には、貫通孔または上下に開口しているスリットが形成され、当該貫通孔の内周面に対して摺動可能に挿通され、または、当該スリットの対向する一対の側面に対して摺動可能に挟持されている。第2要素22は、第2実施形態と同様に、長尺部材20に沿って離散的に付された複数の標識222と、複数の標識222を覆う被覆224と、により構成されている(図4Aおよび図4C参照)。第2要素22は、長尺部材20の一の箇所Q1から見て第1要素21の反対側にのみ設けられていてもよい。
【0038】
第1部材11および第2部材12の上下関係が逆転していてもよい。第1要素21は、第2部材12 の一部により構成されていてもよい。第2要素22は、第1実施形態と同様に、長尺部材20の一の箇所Q1から見て第1要素21の反対側に離散的に取り付けられている複数の標識部材221により構成されていてもよい(図1参照)。
【0039】
(作用・効果)
本発明の第5実施形態としての変位記録装置によれば、長尺部材20の一の箇所Q1と他の箇所Q2との間隔が長くなるように第1部材11および第2部材12が相対的に変位した場合、長尺部材20がその緊張力により、第2部材12に固定されている第1要素21に対して変位する。この際、長尺部材20に設けられている第2要素22が第1要素21と相互作用することにより、第1要素21の変位の痕跡を長尺部材20に残存させる(図4Bおよび図4D参照)。よって、第1部材11および第2部材12の相対的な変位量が、当該痕跡(ひいてはこの視認結果に応じた長尺部材の一の箇所およびこれに最も近い他の箇所の間隔の最大変化量)の視認が容易な形で記録されうる。
【0040】
(本発明の他の実施形態)
第2要素22が、長尺部材20の下地とは異なる色を有し、長尺部材20に沿って変位する第1要素21により剥離される断続的な複数の被覆要素により構成されていてもよい。
【0041】
当該構成の変位記録装置によれば、第2要素22を構成する複数の被覆要素のうち、長尺部材から剥離された被覆が第1要素の変位の痕跡として長尺部材20から除去される。被覆要素の色および長尺部材20の下地の色は相違するため、両者の視認による識別の容易が図られている。複数の被覆要素のそれぞれの剥離状態を通じて第1部材11および第2部材12の相対的な変位量が視認容易な形で記録されうる。
【0042】
本発明の第3実施形態および第4実施形態の変位記録装置が、長尺部材20(第1長尺部材)のほか、第1箇所P1が、当該第1箇所P1に最も近い中間箇所よりも第2方向X2に離間して配置されている第2長尺部材をさらに備えていてもよい。
【0043】
当該構成の変位記録装置によれば、第1長尺部材および第2長尺部材のそれぞれにおける痕跡の状態を通じて、第1部材11の第2部材12に対する第1方向X1および第2方向X2のそれぞれについて相対的な変位量が視認容易な形で記録されうる。
【0044】
本発明の第3実施形態および第4実施形態としての変位記録装置において、第2要素22が、本発明の第1実施形態としての変位記録装置と同様に複数の標識部材221により構成されていてもよい。
【0045】
前記実施形態において、支持部材122が貫通孔を有し、当該貫通孔に長尺部材20が通されるように回し掛けされることで、当該支持部材122により長尺部材20が支持されていてもよい。これにより、長尺部材20がその撓みなどにより、支持部材122に回し掛けされた状態が解除されてしまう事態が確実に防止できる。
【符号の説明】
【0046】
11‥第1部材、12‥第2部材、20‥長尺部材、21‥第1要素、22‥第2要素、221‥複数の標識部材、222‥標識、224‥被覆、P0‥中間箇所、P01‥第1中間箇所、P02‥第2中間箇所、P1‥第1箇所、P2‥第2箇所、X1‥第1方向、X2‥第2方向。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9