(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分極抵抗と容量成分との並列接続で表わされる分極成分と、二次電池の内部抵抗成分Rと、を少なくとも有する等価回路から前記二次電池の第1開回路電圧OCVを求め、前記第1開回路電圧OCV、および、前記二次電池の充電率との関係から前記二次電池の充電率SOCvを求める二次電池制御装置であって、
前記二次電池制御装置は、前記二次電池の実測電圧の値から、前記第1開回路電圧OCVとは異なる方法で演算された第2開回路電圧の値、前記二次電池の電流情報に応じて演算される前記分極成分の電圧値Vp、および前記内部抵抗成分Rと前記二次電池の電流値Iの積にて表される値RI、を引いた値を演算する二次電池制御装置。
分極抵抗と容量成分との並列接続で表わされる分極成分と、二次電池の内部抵抗成分と、を少なくとも有する等価回路から前記二次電池の第1開回路電圧を求め、前記第1開回路電圧と前記二次電池の充電率SOCとの対応関係から前記二次電池の充電率SOCvを求めるSOCv演算部と、
前記第1開回路電圧とは異なる第2開回路電圧、前記二次電池の電流情報に応じて演算される前記分極成分の電圧値、および前記内部抵抗成分と前記二次電池の電流値の積で表される値を元に電池電圧を推定する電池電圧推定部と、
前記電池電圧推定部で推定された電池電圧と前記二次電池の実測電圧との誤差を演算する誤差演算部と、
を備える二次電池制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
-第1の実施形態-
以下、第1の実施形態について、
図1〜
図7を参照して説明する。
図1は、電池システムの構成を示す図である。
図1で示す構成は、移動体向け蓄電装置、系統連系安定化用蓄電装置等幅広い用途で使用される形態であり、電力を蓄える電池システム1と、電池システム1に対し充放電を行うインバータ104と、インバータ104に接続された負荷105と、電池システム1やインバータ104を制御する上位コントローラ103より構成される。
【0010】
電池システム1は、二次電池100に対する電力の蓄電や放電、及びこれらに必要な制御値である充電率SOCや、二次電池100の現在の性能把握に必要な制御値である劣化度SOHの演算を行う。上位コントローラ103は、負荷105の状態や電池システム1が出力した二次電池100の制御値とその他外部からの指令とに応じ二次電池100の制御や、インバータ104に対する電力の入出力指令を行う。インバータ104は上位コントローラ103からの指令に従い、二次電池100及び負荷105に対して電力の入出力を行う。負荷105は例えば三相交流モータや電力系統である。
【0011】
二次電池100の出力する電圧は充電率SOCに応じて変化する直流電圧であり、多くの場合、交流を必要とする負荷105へ電力を直接提供することはできない。そこで、インバータ104は必要に応じ直流から交流への変換や電圧の変換を行う。このような構成にすることで、電池システム1は負荷に適した出力を適宜供給することが可能となる。以下、この構成を実現するための電池システム1の構成について述べる。
【0012】
電池システム1は、二次電池100と、電池情報取得部101と、二次電池制御装置102から構成され、電力の蓄電・放電を行い、SOC・許容電流といった二次電池100の制御値を演算する。
【0013】
二次電池100は複数の電池セルより構成される。各電池セルは、二次電池100に要求される出力電圧や容量に応じ、直列、又は並列に接続されている。
電池情報取得部101は、二次電池100に流れる電流値を測定する電流センサ106、二次電池100の表面温度を測定する温度センサ107、二次電池100の電圧を測定する電圧センサ108を有する。
【0014】
電流センサ106は、二次電池100と外部との間に1つ、もしくは複数設置する場合がある。1つ設置した場合にはコストを最小限に抑えることが可能である。複数設置した場合には並列接続している電池セル間の電流配分を把握することが可能である。
【0015】
温度センサ107は、二次電池100の温度を把握するために1つ、もしくは複数設置する。1つ設置した場合には、最小限のコストで二次電池100内の最高温度になる予測できる地点の温度を計測できる。複数設置した場合には、電池セルの温度ばらつきを計測することで、最低温度や最高温度を考慮した制御が可能となる。
【0016】
電圧センサ108は、各電池セルに1つ設置する。これにより各電池セル間の電圧差の測定が可能となり、これを元に各電池セルの電圧の均等化制御が可能となる。電流センサ106、温度センサ107、電圧センサ108で計測された電池情報I、T、Vは二次電池制御装置102へ入力される。
【0017】
二次電池制御装置102は、SOC演算部109、SOH演算部110、許容電流演算部111を有する。SOC演算部109は、電流積算量からSOCiを演算するSOCi演算部112と、電池情報から推定したOCVを元にSOCvを演算するSOCv演算部113を有する。SOCiとSOCvは後で説明する。
【0018】
SOH演算部110は、容量の劣化率であるSOHQを演算するSOHQ演算部115を有する。また、電池情報取得部101からの電池情報と充電率SOCを元に、抵抗の劣化率であるSOHRを演算するSOHR演算部を有する構成であってもよい。
【0019】
許容電流演算部111は、SOH演算部110からのSOH及び電池情報取得部101からの電池情報を元にして充放電可能な最大電流である許容電流Ilimitを演算する。
【0020】
二次電池制御装置102は、SOC演算部109、SOH演算部110、及び許容電流演算部111がそれぞれ演算したSOC、SOH、及び許容電流Ilimitを上位コントローラ103へ出力する。上位コントローラ103は二次電池100の状態を考慮した上で、負荷105に対応した電力出力指令を二次電池制御装置102に送る。
【0021】
[SOC演算部109の動作]
SOC演算部109は、SOCi演算部112で求められたSOCiと、SOCv演算部113で求められたSOCvを元に、次式(1)により、SOCを演算する。この演算において、SOCiとSOCvを重み付け加算するための重み係数Wを用いる。一般に、重み係数Wは、電流Iの絶対値が小さいときはSOCvを主に用いてSOCを算出し、電流Iの絶対値が大きいときはSOCiを主に用いてSOCを算出するように、重み係数Wを設定する。また、二次電池100の内部抵抗Rが小さいときはSOCvを主に用いてSOCを算出し、内部抵抗Rが大きいときはSOCiを主に用いてSOCを算出するように、重み係数Wを設定する。
SOC=W×SOCi+(1−W)×SOCv ・・・(1)
ここで、重み係数Wは0以上1以下の値である。
【0022】
[SOCi演算部112の動作]
SOCi演算部112の動作について説明する。SOCi演算部112は、二次電池100が充放電する電流Iを次式(2)にしたがって積算することにより、二次電池100のSOCiを求める。式(2)において、Qmaxは二次電池100の満充電容量であり、予め図示省略した記憶部に格納されている。SOColdは、前回の演算周期において式(1)により算出されたSOCの値である。
SOCi=SOCold+100×∫I/Qmax ・・・(2)
【0023】
[SOCv演算部113の動作]
次に、SOCv演算部113の動作について
図2を参照して説明する。SOCv演算部113は二次電池100の等価回路を用いてSOCvを演算する。演算に用いる二次電池100の等価回路モデルを
図2に示す。この等価回路モデルは、開回路電圧OCVを電圧源200で表現し、電解液の抵抗等を表現する直流抵抗を抵抗201(二次電池の内部抵抗R)で表現している。更に、分極抵抗と容量成分との並列接続で表わされる分極成分は、電解液中のイオンの濃度分極等に由来する分極の抵抗成分である抵抗202と、分極の容量成分であるキャパシタ203とにより表現している。そして、二次電池100の開回路電圧OCV,二次電池100の内部抵抗による電圧V
0,分極成分による電圧(以下、分極電圧)Vpを足し合わせることで二次電池100の現在の電圧(Closed circuit voltage、以下CCVと略す)を表現する。なお、本実施形態では抵抗202とキャパシタ203からなる分極項が1個の例を示したが、複数個用いて等価回路モデルの高精度化を図ってもよい。
【0024】
二次電池100に電流Iを印加すると、二次電池100の端子間電圧である閉回路電圧CCVは次式(3)で表される。式(3)において、Vpは分極電圧であり、I・Rは抵抗202とキャパシタ203の並列接続対の両端電圧に相当する。
CCV=OCV+I・R+Vp ・・・(3)
【0025】
SOCvの算出には開回路電圧OCVが用いられるが、二次電池100が充放電している間は直接測定することができない。そこで、SOCv演算部113は、次式(4)のように閉回路電圧CCVからIRドロップと分極電圧Vpを差し引くことにより、開回路電圧OCVを求める。
OCV=CCV−I・R−Vp ・・・(4)
【0026】
開回路電圧OCVとSOCとの対応関係は二次電池100の特性によって定まるものであり、図示省略した記憶部には、その対応関係を定義するデータがSOCテーブルとして予め格納されている。SOCv演算部113は、上述の式(4)を用いて開回路電圧OCVを算出し、これをキーにしてSOCテーブルを参照することにより、二次電池100のSOCvを算出する。
【0027】
図3は、SOH演算部110の構成を示す図である。
SOH演算部110は、SOHQ演算部115と同様に、容量劣化率であるSOHQを算出するように構成される例で説明する。SOHQ演算部115は、電池電圧推定部303、SOCv誤差演算部304、SOCv2点選択部300、電流積算部301、Qmax
SOCv演算部302、最終的なQmax’演算部305、SOHQ変換部306を有する。
【0028】
電池電圧推定部303は、電池の等価回路モデルの情報を元に電池電圧を推定する。推定電池電圧V
calcの演算例は後述する。SOCv誤差演算部304は、電圧センサ108より入力する電池電圧Vから推定電池電圧V
calcを引いた値、すなわち電池電圧Vと推定電池電圧V
calcとの誤差αを演算する。SOCv2点選択部300は、誤差αの絶対値が所定値V
threshold以下の場合、SOCvの2点、すなわちSOCv1、2を選択する。2点選択の具体例は後述するが、電流センサ106で検出されている電流Iも参照する場合がある。電流積算部301は、電流積算部301は、選択されたSOCv1、2間で流れた電流値を積算し、SOCv1、2間の充放電容量∫Idtを演算する。Qmax
SOCv演算部302は、SOCv1、2と∫Idtを用いて満充電容量Qmax
SOCvを演算する。最終的なQmax’演算部305は、入力される満充電容量Qmax
SOCvとQmax’演算の前回結果Qmax_zとを用いた平均化処理を行うことで最終的なQmax’を演算する。SOHQ変換部306は、最終的なQmax’を新品時の満充電容量Qmaxと比較することでSOHQを演算する。
【0029】
次に、SOH演算部110の動作について説明する。
SOCv2点選択部300は、SOCv演算部113より逐次出力されるSOCvの中から演算に適切な2点のSOCv1、SOCv2を選択する。前述したようにSOCv演算部113は二次電池100の等価回路モデルを用いてOCVを推定してSOCvを算出している。この電池の等価回路モデルに誤差が少なく、SOC真値とSOCvが近い値を選択し、且つSOCvの適切な2点を選択することが重要になる。
【0030】
以下では、SOCvを2点選択するための選択条件として、電池の等価回路モデルの演算している電圧値と実測電池電圧の差が小の点を選択する選択条件1について述べる。なお、選択条件2から選択条件7については後述する。
【0031】
[選択条件1:電池の等価回路モデルの演算している電圧値と実測電池電圧の差が小の点を選択する]
電池電圧推定部303は、以下の式(5)により電池の等価回路モデルの情報を元に電池電圧を推定する。
【数1】
【0032】
OCV(SOC)は、予め記憶部に記憶されているSOCとOCVの対応関係(SOCテーブル)に基づいて、SOC演算部109により式(1)に基づいて求めたSOCを参照して求めたOCVである。内部抵抗電圧V
0と分極電圧Vpは二次電池100の等価回路モデルで示した値である。電池電圧推定部303は、式(5)で推定した電池電圧V
calcをSOCv誤差演算部304に出力する。
なお、式(5)に記載のOCV(SOC)は、SOCi演算部112により式(2)に基づいて求めたSOCiを元に、予め記憶部に記憶されているSOCとOCVの対応関係(SOCテーブル)から求めたOCVを用いてもよい。本実施形態では、これらのOCVを第2開回路電圧と称する。
【0033】
SOCv誤差演算部304は、電圧センサ108から入力する電池電圧VとV
calcとの差をとり、誤差αを演算する。以下の式(6)が誤差αの演算式である。
【数2】
【0034】
この誤差αの絶対値が所定値V
threshold以下の場合、SOCv2点選択部300を有効化し、2点のSOCv1、SOCv2を選択して、以降の各演算部に出力する。一方、この誤差αの絶対値が所定値V
thresholdより大きい場合は、2点のSOCvを選択せず以降の各演算部には出力しない。このような構成にすることで誤差の少ないSOCvを選択することができる。
【0035】
図4(a)は、電圧センサから入力する実測電池電圧Vとモデル推定電圧V
calcの推移を示している。
図4(b)は、誤差αの推移を示している。
図4(b)において、点線は正負側の判定所定値V
thresholdを示している。
図4(a)に示すように、V
calcは大電流が入力されて急激な電圧変動が生じた時刻t1や、電流が長時間の通電した時刻t2で実測電圧から乖離する。誤差αはこのようなタイミングを捉え、精度の悪いSOCvを選択しないようにしている。所定値V
thresholdを小さくすることでSOHQの精度は向上するため、所定値V
thresholdは許容できるSOHQ誤差を元に決定する。
【0036】
図5(a)、(b)は、誤差αとSOCv演算誤差の関係を示す図である。
図5(a)は、SOC真値とSOCvの推移を示している。
図5(b)は、誤差αを示している。図中の点線の丸で囲った部分はSOCvが真値から乖離している部分である。同じタイミングにおいて、
図5(b)に示すように、誤差αの値も増大し、誤差αが閾値以上となっていることが確認できる。このことから、誤差αを判定することでSOCvの誤差を捉え、誤差の少ないSOCv1、SOCv2を選択する事が可能である。
【0037】
電流積算部301は、上記条件で選択されたSOCv1、SOCv2間で流れた電流値を積算し、SOCv1、SOCv2間の充放電容量∫Idtを演算する。Qmax
SOCv演算部302は、SOCv1、SOCv2と∫Idtを用いて満充電容量Qmax
SOCvを以下の式(7)により演算する。
【数3】
ここで、ΔSOCv=|SOCv1−SOCv2|である。
【0038】
このようにして演算されたQmax
SOCvは最終的なQmax’演算部305に出力される。最終的なQmax’演算部305では、Qmax’演算の前回結果Qmax_zと式(8)で示す平均化処理を行うことで最終的なQmax’を演算する。
【数4】
ここで、Nとは平均化のサンプリング数である。Qmax’は急激に変動しないため、前回値とNを使用し、演算値の平滑化を図っている。
【0039】
図6は、Qmax’の推移を示す図である。この図において、横軸は時間、縦軸はQmax’であり、図中の点線は本実施形態を適用する前の場合、図中の実線は本実施形態を適用した場合を示す。本実施形態を適用する前はSOCv演算誤差の大きなSOCvを選択することで誤差が大きくなり真値から大きく乖離してしまっていた。本実施形態の適用後は精度の良いSOCvのみを選択したため、Qmax’の演算が高精度化していることが確認できる。
【0040】
SOHQ変換部306は、平滑化されたQmax’が入力され、Qmax’を新品時の満充電容量Qmaxと比較することでSOHQを演算する。演算式は以下の式(9)である。
【数5】
【0041】
このような構成にすることで、SOCv演算誤差の少ない点を選択しSOHQを演算できるため、高精度なSOHQ演算が可能である。
【0042】
以上の説明では、SOCvを2点選択するための選択条件として、電池の等価回路モデルの演算している電圧値と実測電池電圧の差が小の点を選択する選択条件1について述べた。SOCvを2点選択するための条件として、以下に述べる選択条件2から選択条件7のいずれか1つ、もしくは2つ以上を追加して選択しても良い。これにより、満充電容量を精度良く算出することが可能となる。
【0043】
[選択条件2:電流の絶対値が小の条件で選択する]
二次電池100に流れる電流が大の場合、SOCv演算部113は電流Iと抵抗201の積を算出するため、算出結果である誤差が拡大してしまう。SOCv1とSOCv2を選択する場合、それぞれ電流が小の条件で選択することで電流Iと抵抗201の積の誤差が小、すなわちSOCv誤差の小さい点を選択することが出来る。よって、SOCv1とSOCv2は電流小となる点をそれぞれ選択する。
【0044】
[選択条件3:電池温度が所定値以内の2点を選択する]
電池温度によって抵抗201、分極部抵抗202の値は変化する。特に温度が低い場合には抵抗が大きくなり、電流Iと抵抗201の積の誤差の拡大が懸念される。また、低温領域では、電流に依存して抵抗が変化する挙動が知られており、考慮すべき誤差条件が増える。温度は室温程度の2点を選択するのが良い。また、電池の本来使用すべき温度よりも高い状態で演算すると想定外の誤差が発生し得るので適切ではない。よって、SOCv1とSOCv2は温度が所定値範囲内の点をそれぞれ選択する。
【0045】
[選択条件4:ΔSOCvが所定値以上である2点を選択する]
SOCv1、SOCv2それぞれの誤差が大きい場合でも、ΔSOCv=|SOCv1−SOCv2|が大きい2点を選択できれば各SOCvの誤差の影響は小さくなり、満充電容量の演算精度が向上する。よって、SOCvの2点はΔSOCvが所定値よりも大きい2点を選択する。
【0046】
[選択条件5:SOCv1とSOCv2の電流の符号が同一である2点を選択する]
二次電池100の等価回路モデルにおいて抵抗201や分極部抵抗202の値は充電と放電で異なる場合がある。そのため、SOCv1の電流符号とSOCv2の電流符号が同一になるように選択することで、この充電抵抗と放電抵抗の差による誤差を除外することができる。よって、SOCvの2点の電流の符号は同一の点を選択する。
【0047】
[選択条件6:SOCv1とSOCv2までの時間が所定値以下となる2点を選択する]
SOCv1からSOCv2に至るまでの時間が長い場合、電流センサ106のオフセット誤差等の蓄積により誤差が発散してしまう危険性がある。よって、SOCv1とSOCv2の検出時間が所定時間t
threshold以上離れていない点を選択する。
【0048】
[選択条件7:電池の等価回路モデルの演算している電圧値と実測電池電圧の誤差αの符号が同一の2点を選択する]
電池の等価回路モデルの演算している電圧値と実測電池電圧の誤差αの符号が同一のSOCvを2点選択する方が、満充電容量の演算精度が向上する。
図7は、充放電時におけるOCV近似曲線を示す図である。この図において、横軸はSOCを、縦軸はOCVを、aは充電分極による誤差を含むOCV近似曲線を、bは放電分極による誤差を含むOCV近似曲線を示す。電池の等価回路モデルが実電池を正しく表現できず、放電側に分極が残った状態や充電側に分極が残った状態でSOCvを選択してしまうことが想定される。放電側同士でSOCvを2点選択すれば、放電分極由来の誤差方向が一致するため2点間で誤差は打ち消しあう。しかし充電と放電で取得してしまうと分極由来の誤差が残ってしまう。このため、誤差方向が揃い誤差を打ち消しあうことが望ましい。二次電池100の等価回路モデルの演算している電圧値と実測電池電圧の誤差αの符号は誤差方向に対応している。よつて、電池の等価回路モデルの演算している電圧値と実測電池電圧の誤差αの符号が同一の2点を選択する。
【0049】
第1の実施形態によれば、電池の等価回路モデルから演算したSOCvの誤差を実測電圧と電池の等価回路モデルの電圧の比較により、判定することが可能である。これにより、SOHQ演算に使用するSOCvとして高精度な2点を選択することが可能になる。
【0050】
-第2の実施形態-
図8は、第2の実施形態によるSOH演算部の構成を示す図である。
図3に示した第1の実施形態によるSOH演算部の構成と同一の箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。第1の実施形態との差異は重み演算部400と重み付け演算平均化Qmax’演算部401を追加している点である。第1の実施形態ではSOCv選択部300で精度の良いSOCvを2点選択しているが
、SOCvの2点の選択条件によっては期待される精度に差がある。精度が高い条件で選択された演算結果が精度良く満充電容量を演算できるため、最終結果に大きく反映することが望ましい。そのため、SOCv2点選択部300での2点の選択条件を元に、重み演算部400で以下の重みWを演算し、重み付け演算平均化Qmax’演算部401で重み付け平均を行うことで精度の高い結果を最終結果に大きく反映できるようにしている。
【0051】
以下に重みWに関して述べる。
[重み1:電池の等価回路モデルの演算している電圧値と実測電池電圧の差αの大きさに基づいて重みを設定する]
第1の実施形態の選択条件1で述べたように、SOCv誤差演算部304で演算した誤差αが小さいほどSOCvの誤差は小さくなり、満充電容量の精度は向上する。よって、誤差αに基づいて重みを設定する。例えば以下の式(10)式で示す重み1を導入する。
【数6】
【0052】
重み1に代えて以下に示す重み2、重み3のいずれかを選択して用いても良い。以降の重みを追加することで、満充電容量を精度良く算出することが可能となる。これらの重みを用いる際には、例えばこれらの重みの積を最終的な重みWとしてもよい。
【0053】
[重み2:ΔSOCvに基づいて重みを設定する]
第1の実施形態の選択条件4で述べたように、ΔSOCv=|SOCv1−SOCv2|が大きいほどSOHQ演算の精度は向上する。よって、ΔSOCvに基づいて重みを設定する。例えば以下の式(11)で示す重みを導入する。
【数7】
【0054】
[重み3:SOCv1とSOCv2までの時間に基づいて重みを設定する]
第1の実施形態の選択条件6で述べたように、SOCv1とSOCv2間の時間は短い方が、電流センサ106のオフセット誤差等の影響を受けにくく高精度化が可能である。よって、SOCv1とSOCv2間の時間に基づいて重みを設定する。例えば以下の式(12)で示す重みを導入する。t
thresholdは第1の実施形態の選択条件6で示した所定時間を示している。
【数8】
【0055】
このようにして、重み演算部400で演算された重みWは、重み付け平均化Qmax’演算部401に出力する。重み付け平均化Qmax’演算部401ではQmax
SOCv演算部302でのQmax
SOCv演算結果と、その演算時の条件で演算した重みWにて重み付け平均を行う。重み付け平均は以下の式(13)により行う。
【数9】
ここで、Qmax’_zは、式(13)の前回の演算結果である。
【0056】
第2の実施形態によれば、重み付け平均化により、信頼のできるデータが大きく反映されることで高精度化できるとともに、真値への収束を早めることが可能となる。
【0057】
-第3の実施形態-
図9は、第3の実施形態による第2のSOC演算部114の構成を示す図である。
第3に実施の形態にあっては、SOC演算部として、第1の実施形態におけるSOC演算部109に代えて第2のSOC演算部114を備えている。その他の構成は
図1と同様であり、その説明を省略する。
第2のSOC演算部114は、第1のSOC演算部109Aと、電池電圧推定部303と、SOCv誤差演算部304と、最終的なSOC演算部500とを有する。
【0058】
第1のSOC演算部109Aは、第1の実施形態で説明したSOC演算部109と同様であり、SOCi演算部112とSOCv演算部113とを備え、第1の実施形態で説明した式(1)により、SOCを演算する。演算されたSOCは電池電圧推定部303に送信される。
【0059】
SOCi演算部112は、第1の実施形態で説明した内容と同様であり、二次電池100が充放電する電流Iを式(2)にしたがって積算することにより、二次電池100のSOCiを求め、最終的なSOC演算部500へ出力する。
【0060】
SOCv演算部113は、第1の実施形態で説明した内容と同様であり、二次電池100の等価回路モデルからSOCvを演算し、V0、Vpを電池電圧推定部303に、SOCvを最終的なSOC演算部500へ出力する。
【0061】
電池電圧推定部303は、第1の実施形態で説明した内容と同様であり、式(5)で推定した電池電圧V
calcをSOCv誤差演算部304に出力する。OCV(SOC)は、SOC演算部109により式(1)に基づいて求めたSOCを元に、予め記憶部に記憶されているSOCとOCVの対応関係(SOCテーブル)から求めたOCVである。V
0とVpは二次電池100の等価回路モデルで示した値である。
なお、式(5)に記載のOCV(SOC)は、SOCi演算部112により式(2)に基づいて求めたSOCiを元に、予め記憶部に記憶されているSOCとOCVの対応関係(SOCテーブル)から求めたOCVを用いてもよい。本実施形態では、これらのOCVを第2開回路電圧と称する。
【0062】
SOCv誤差演算部304は、電圧センサ108から入力する電池電圧VとV
calcと差をとり誤差αを式(6)に基づいて演算し、最終的なSOC演算部500に誤差αを出力する。
【0063】
最終的なSOC演算部500にはSOCvとSOViが入力され、最終的なSOC演算部500は誤差αの値に基づいて、最終的なSOCを演算する。例えば、誤差αが所定値V
threshold以下であれば、SOCvの誤差が小さいと判断しSOCvを最終的なSOCとして後段に出力する。誤差αが所定値V
thresholdより大きい場合は、充電率SOCiを最終的なSOCとして後段に出力する。
なお、誤差αの値によって重みW1を式(10)により演算し、W1=Wとして式(1)により重み付け平均化しても良い。
【0064】
本実施形態によれば、最終的なSOCを誤差αに基づいてSOCvとSOCiから選択して、決定することで、信頼できる演算結果を反映できるため、SOCの演算の高精度化が可能である。
【0065】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)二次電池制御装置102は、分極抵抗と容量成分との並列接続で表わされる分極成分と、二次電池100の内部抵抗成分Rと、を少なくとも有する等価回路から二次電池100の第1開回路電圧OCVを求め、第1開回路電圧OCV、および、二次電池100の充電率との関係から二次電池100の充電率SOCvを求める。そして、二次電池制御装置102は、二次電池100の実測電圧の値から、第1開回路電圧OCVとは異なる方法で演算された第2開回路電圧の値、二次電池100の電流情報に応じて演算される分極成分の電圧値Vp、および内部抵抗成分Rと二次電池100の電流値Iの積にて表される値RI、を引いた値を演算する。これにより、二次電池100の実測電圧の値とSOCvの演算の値との差を求めることができる。
【0066】
(2)二次電池制御装置102は、分極抵抗と容量成分との並列接続で表わされる分極成分と、二次電池100の内部抵抗成分と、を少なくとも有する等価回路から二次電池100の第1開回路電圧OCVを求め、第1開回路電圧OCVと二次電池の充電率SOCとの対応関係から二次電池の充電率SOCvを求めるSOCv演算部113と、第1開回路電圧OCVとは異なる第2開回路電圧OCV、二次電池の電流情報に応じて演算される分極成分の電圧値Vp、および内部抵抗成分Rと二次電池の電流値Iの積で表される値RIを元に電池電圧を推定する電池電圧推定部303と、電池電圧推定部303で推定された電池電圧V
calcと二次電池の実測電圧との誤差αを求めるSOCv誤差演算部304と、を備える。これにより、SOCvの演算の誤差を演算することができる。
【0067】
(3)二次電池制御装置102は、二次電池100が充放電する電流を積算して求めた二次電池100の充電率SOCiを演算するSOCi演算部112を備え、電池電圧推定部303は、第2開回路電圧の値を、第1開回路電圧と二次電池の充電率SOCとの対応関係に基づいて、充電率SOCiを参照して求める。これにより、SOCvの演算の誤差を演算することができる。
【0068】
(4)二次電池制御装置102は、充電率SOCiと充電率SOCvを重み付け加算して充電率SOCを求め、電池電圧推定部303は、第2開回路電圧の値を、第1開回路電圧と二次電池の充電率SOCとの対応関係に基づいて、重み付け加算した充電率SOCを参照して求める。これにより、SOCvの演算の誤差をより高精度に演算することができる。
【0069】
(5)二次電池制御装置102は、充電率SOCvの少なくとも2点の充電率SOCv1、充電率SOCv2を示す間で二次電池に流れた電流値を積算して充放電容量を演算する電流積算部301と、少なくとも2点の充電率SOCv1、充電率SOCv2と二次電池の電流積分値を用いて二次電池の容量劣化率SOHQを演算するSOHQ演算部115と、を備え、SOHQ演算部115は、誤差演算部304が演算した誤差が所定値以下の場合に、容量劣化率SOHQを演算する、または、演算した容量劣化率SOHQを有効とする。これにより、SOHQ演算に使用するSOCvとして高精度な2点を選択することが可能になる。
【0070】
(6)二次電池制御装置102において、SOCv演算部113より出力される充電率SOCvの中から2点の充電率SOCv1、充電率SOCv2を選択する選択部300を備え、選択部300は、誤差が小さい場合に、2点の充電率SOCv1、充電率SOCv2を選択する。これにより、SOCvの演算の誤差をより高精度に演算することができる。
【0071】
(7)二次電池制御装置102において、SOCv演算部113より出力される充電率SOCvの中から2点の充電率SOCv1、充電率SOCv2を選択する選択部300を備え、選択部300は、二次電池100に流れる電流の絶対値が小さい場合に、前記2点の充電率SOCv1、充電率SOCv2を選択する。これにより、SOCvの演算の誤差をより高精度に演算することができる。
【0072】
(8)二次電池制御装置102において、SOCv演算部113より出力される充電率SOCvの中から2点の充電率SOCv1、充電率SOCv2を選択する選択部300を備え、選択部300は、二次電池100の温度が所定値以内の場合に、2点の充電率SOCv1、充電率SOCv2を選択する。これにより、SOCvの演算の誤差をより高精度に演算することができる。
【0073】
(9)二次電池制御装置102において、SOCv演算部113より出力される充電率SOCvの中から2点の充電率SOCv1、充電率SOCv2を選択する選択部300を備え、選択部300は、充電率SOCv1と充電率SOCv2の差が大きい2点の充電率SOCv1、充電率SOCv2を選択する。これにより、SOCvの演算の誤差をより高精度に演算することができる。
【0074】
(10)二次電池制御装置102において、SOCv演算部113より出力される充電率SOCvの中から2点の充電率SOCv1、充電率SOCv2を選択する選択部300を備え、選択部300は、二次電池100の放電時における充電率SOCv1及び充電率SOCv2、もしくは二次電池100の充電時における充電率SOCv1及び充電率SOCv2の2点を選択する。これにより、SOCvの演算の誤差をより高精度に演算することができる。
【0075】
(11)二次電池制御装置102において、SOCv演算部113より出力される充電率SOCvの中から2点の充電率SOCv1、充電率SOCv2を選択する選択部300を備え、選択部300は、充電率SOCv1と充電率SOCv2の検出時間が所定時間以上離れていない2点の充電率SOCv1、充電率SOCv2を選択する。これにより、SOCvの演算の誤差をより高精度に演算することができる。
【0076】
(12)二次電池制御装置102において、SOCv演算部113より出力される充電率SOCvの中から2点の充電率SOCv1、充電率SOCv2を選択する選択部300を備え、選択部300は、誤差の符号が同一である場合に2点の充電率SOCv1、充電率SOCv2を選択する。これにより、SOCvの演算の誤差をより高精度に演算することができる。
【0077】
(13)二次電池制御装置102は、容量劣化率SOHQの重み付け平均化を行う重み付け平均化Qmax’演算部401を備え、重み付け平均化Qmax’演算部401は、誤差に基づく重み付けにより容量劣化率SOHQを演算する。これにより、信頼のできるデータが大きく反映されることで高精度化できるとともに、真値への収束を早めることが可能となる。
【0078】
(14)二次電池制御装置102は、二次電池100が充放電する電流を積算して求めた二次電池100の充電率SOCiを演算するSOCi演算部112と、充電率SOCiと充電率SOCvを重み付け加算して充電率SOCを求める第1のSOC演算部109Aと、電池電圧推定部303は、第2開回路電圧の値を、二次電池100の開回路電圧OCVと二次電池の充電率SOCとの対応関係より、充電率SOCを参照して求め、第2のSOC演算部114は、誤差が所定値以下の場合は、充電率SOCvを適正値として出力し、誤差が所定値より大きい場合は、充電率SOCiを適正値として出力する。これにより、信頼できる演算結果を反映できるため、SOCの演算の高精度化が可能である。
【0079】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。