(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記デバイスがY字形構成を含み、前記デバイスが、前記Y字形構成を受け入れるように構成されたハウジングを更に備え、前記ハウジングは廃棄物収集容器及び通気孔を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のデバイス。
前記不織布物品を前記少なくとも1種類の検出試薬と前記接触させる工程が、前記少なくとも1種類の検出試薬に対する前記不織布物品の上下又は前後運動を含む、請求項7又は請求項8に記載の方法。
前記有腔又は有管デバイスが、前記アダプタの前記開口部を通して前記有腔又は有管デバイスを挿入することによって、前記デバイスと流体連通させて配置され、前記有腔又は有管デバイスの長さの少なくとも25ミリメートルが前記アダプタの内部に配置される、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
前記デバイスを通過する前記流体試料の流量が少なくとも2ミリリットル/分であり、前記デバイスに入り、前記デバイスから出ていく前記流体試料の圧力差が20キロパスカル以下である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
流体試料の微生物的質の監視のためのデバイス、キット、及びシステムが提供される。本方法は、少なくとも1種類の微生物又は標的細胞検体を濃縮する不織布物品を包含するデバイスと流体連通した有腔又は有管デバイスと、微生物又は標的細胞検体の検出とを組み合わせる。不織布物品は、微生物及び/又は標的細胞検体を濃縮するために、多量の流体試料と接触させられ得る。本開示に係る方法は、流体試料中の細菌汚染を約15分で容易に検出する能力を有する。したがって、これらの不織布物品及び方法は、有腔又は有管デバイスと接触した流体試料中の微生物及び標的細胞検体の臨床検出に適し得る。
【0014】
以下の定義された用語の用語集に関して、異なる定義が特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において与えられていない限り、これらの定義が本出願全体のために適用されるものとする。
【0015】
用語集
明細書及び特許請求の範囲の全体を通して特定の用語が使用されており、大部分は周知であるが、いくらか説明を必要とするものもある。以下のことを理解されたい。本明細書で使用される場合:
用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、「少なくとも1つの」と同義に使用され、記載される要素のうちの1つ以上を意味する。
用語「及び/又は(and/or)」は、一方又は両方を意味する。例えば「A及び/又はB」は、Aのみ、Bのみ、又はA及びBの双方を意味する。
【0016】
本明細書で使用するとき、末端値による数値範囲での記述には、その範囲内に包含されるあらゆる数値が含まれる(例えば1〜5には1、1.5、2、2.75、3、3.8、4、及び5が含まれる)。
【0017】
特に指示がない限り、本明細書及び実施形態で使用する量又は成分、特性の測定値などを表す全ての数は、全ての場合、「約」という用語によって修飾されていると解するものとする。したがって、特に指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態の列挙において示す数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に依存して変化しうる。最低でも、請求項記載の実施形態の範囲への均等論の適用を限定する試みとしてではなく、報告される有効桁の数に照らして、通常の四捨五入を適用することにより、各数値パラメータは少なくとも解釈されるべきである。
【0018】
用語「含む(comprises)」及びその変化形は、それらの用語が記載及び特許請求の範囲に現れる場合、限定的な意味を有するものではない。
【0019】
用語「〜から本質的になる」は、所与の組成物又は生成物の所望の特性に著しく影響しない追加の材料の存在を除外しない。
【0020】
「好ましい」及び「好ましくは」という言葉は、特定の状況下で特定の利益を提供することが可能な、本開示の実施形態を指す。しかしながら、同じ又は他の状況下で、他の実施形態がまた好ましくてもよい。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0021】
用語「有管(cannulated)デバイス」は、狭いフレキシブル管などの、管を含むデバイスを意味する。
【0022】
用語「細胞検体」は、細胞起源の検体(即ち、微生物又はその構成要素(例えば、細胞又は細胞要素、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)若しくはリボ核酸(RNA)、タンパク質、アデノシン三リン酸(ATP)などのヌクレオチド、及び同様のもの、並びにこれらの組み合わせ))を意味し、本明細書全体を通じた微生物又は微生物株への言及は、あらゆる細胞検体により一般的に適用されることが意図されている。
【0023】
用語「濃縮剤」は、流体試料から微生物及び/又は細胞検体を拘束し、これにより、微生物及び/又は細胞検体を、流体試料中に存在する場合よりも小さい体積に濃縮する材料又は組成物(好ましくは、少なくとも約60パーセント、又は少なくとも約70パーセント、又は少なくとも約80パーセント、又は少なくとも約90パーセントの細胞検体捕捉又は拘束効率を有する)を意味する。
【0024】
用語「検出」は、細胞検体の同定を意味する(例えば、少なくとも標的微生物の構成要素の同定を意味し、これにより、その標的微生物が存在すると判定される)。
【0025】
用語「内視鏡検査」は、医療用デバイス(例えば、検査鏡)を体内に導入し、体の1つ以上の内部部分の視像を与える手順を意味する。
【0026】
(繊維性多孔質マトリックス中の粒子に関する)用語「捕らえられている(enmeshed)」は、粒子が、単に繊維性多孔質マトリックスの表面上に保持されているのではなく、繊維性多孔質マトリックスの内部及びその上に閉じ込められている(及び、好ましくは、その中に分散している)ことを意味する。
【0027】
(繊維又は繊維性材料に関する)用語「フィブリル化された」とは、繊維の本幹に結合しているフィブリル又は枝を形成するように(例えば、叩解によって)処理されることを意味する。
【0028】
用語「繊維性多孔質マトリックス」は、絡み合った繊維を含む、不織布ウェブ又は媒体(即ち、織物又は編物でないもの)、例えば、メルトブロー法、スパンボンド法、又は他のエアレイ加工技法;カーディング法;湿式堆積法;又は同様のものによって絡み合わされた繊維を含むウェブを意味する。典型的には、繊維は100ミリメートル未満の長さを有し、非捲縮性である。
【0029】
用語「流体」は、液体、溶液、又は液体中の固体若しくは液体の分散系を意味する。
【0030】
用語「有腔(lumened)デバイス」は、管状の内部又は外部形状を含むデバイスを意味する。
【0031】
用語「微生物」は、分析又は検出に適した遺伝物質を有する任意の細胞又は粒子を意味する(例えば、細菌、酵母、ウイルス、及び細菌内生胞子が挙げられる)。
【0032】
用語「微生物株」は、検出方法によって区別可能な特定のタイプの微生物(例えば、異なる属、属内の異なる種、又は種内の異なる分離株の微生物)を意味する。
【0033】
「ポリマー」及び「ポリマー材料」なる用語は、互換可能に用いられ、1つ以上のモノマーを反応させることによって形成された材料を指す。
【0034】
用語「試料」は、(例えば分析のために)収集された物質又は材料を意味する。
【0035】
用語「試料マトリックス」は、微生物及び/又は細胞検体以外の試料の構成成分を意味する。
【0036】
用語「標的細胞検体」は、検出したい任意の細胞検体を意味する。
【0037】
用語「標的微生物」は、検出したい任意の微生物を意味する。
【0038】
本明細書全体を通し、「1つの実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は「実施形態」への言及は、「実施形態」という用語の前に「例示的(代表的)」という用語が含まれているかどうかに関わらず、その実施形態と共に記載される、ある特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の特定の例示的な実施形態の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。それゆえ、本明細書全体を通して様々な箇所にある「1つ以上の実施形態では」、「一部の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」、「多くの実施形態では」又は「実施形態では」などの表現の出現は、必ずしも本開示の特定の例示的な実施形態の同じ実施形態に言及しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な仕方で組み合わせられてもよい。
【0039】
ここで本開示の様々な実施形態が記述される。本開示の代表的な実施形態は、開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正や変更が可能である。したがって、本開示の実施形態は以下に記述する例示的実施形態に限定されず、請求項及びそれと同等の任意のものに定められた制限によって支配されるものと理解されたい。
【0040】
内視鏡検査手法は、体内に挿入されると、潜在的な病原体を含む、患者の生体物質及び微生物によって激しく汚染され得る、複雑で、再使用可能な、フレキシブルな機器を用いて実行される。患者間における軟性内視鏡の注意深い再処理は、相互汚染、及び病原体のあり得る伝染のリスクを低減するために極めて重要である。これらのデバイスのための洗浄は通例、物体及び表面からの汚れ(例えば、有機物及び無機物)の除去として定義され、それは、水を洗浄剤又は酵素製品とともに用いることによって、手作業で、又は機械的に達成される。適切な洗浄を実行できなければ、消毒プロセスに干渉し得る有機残留物及び無機残留物が残ってしまい、再処理の失敗及び患者の感染のリスクが増大する。それゆえ、洗浄及び消毒の有効性を評価する必要性は、軟性内視鏡の再処理の重要な部分として認識されている。しかし、軟性内視鏡に適用される場合には、これらのデバイス内の複雑な狭い内腔を直接目視検査することができないため、目視に基づく検証方法は厳しい制約を有する。洗浄後に機器からのすすぎ液を試験するための、リアルタイムで実行され得る、本開示に係るデバイス、方法、キット、及びシステムの使用は、再洗浄及び再処理などの、必要とされる任意の是正措置をとる機会を提供する。本開示のデバイス、方法、キット、及びシステムを用いて、少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を含有する疑いがある流体試料を医療機器から直接試験することが可能であることが発見された。直接試験の利点は、流体試料が追加の操作工程を受ける試験と比べて、流体試料の汚染の機会を低減することである。
【0041】
デバイス
第1の態様では、デバイスが提供される。デバイスは、先端部分を含むフィルタホルダ、フィルタホルダの先端部分上に配置された不織布物品、及びフィルタホルダに取り付けられたアダプタであって、開口部を画定するアダプタを含む。
図1A及び
図1Bを参照すると、デバイス100は、先端部分104を含むフィルタホルダ102、フィルタホルダ102の先端部分104上に配置された不織布物品106、及びフィルタホルダ102に(取り外し可能に)取り付けられたアダプタ108であって、開口部110を画定するアダプタ108を含む。不織布物品については以下において詳述する。
【0042】
特定の実施形態では、フィルタホルダ102とアダプタ108とは一体的に形成され、その一方で、他の実施形態では、フィルタホルダ102とアダプタ108とは着脱可能である。フィルタホルダ102とアダプタ108とを一体的に形成することは潜在的に、デバイス100の製造の単純性を高める結果をもたらし、その一方で、アダプタ108と別個の部品であるフィルタホルダ102を提供することは、2つの部品を、特定の工程の間には取り付けさせ、他の工程の間には取り外させるなど、デバイス100の利用の自由度を高めることを可能にする。
【0043】
フィルタホルダ102及びアダプタ108の各々は任意選択的に、比較的剛性の高い材料(例えば、ナイロン、ポリスルホン、ポリカーボネート、又はこれらの組み合わせ)から少なくとも一部製作されるか、あるいはそれは、シリコーンなどの、より柔軟なポリマーを用いて形成されてもよい。フィルタホルダ102及びアダプタ108のための例示的な材料としては、限定するものではないが、例えば、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリ(塩化ビニル)、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ナイロン、及び同様のものを含む、鋳造、異形押出、成形(例えば、射出成形)又はエンボス加工のために適した任意の熱可塑性材料が挙げられる。
【0044】
任意の実施形態では、アダプタ108は任意選択的に、開口部110を画定するエラストマー部分107を含む。開口部を画定するアダプタの少なくとも一部分のためにエラストマー材料を採用することは、エラストマー材料の伸縮性のおかげで、異なる幅の様々な有腔又は有管デバイスのために単一のサイズの開口部を有するアダプタを用いる選択肢を提供し得る。加えて、エラストマー材料は、アダプタと、開口部を通して配置された有腔又は有管デバイスとの間の耐圧シールの形成を支援し得る。好適なエラストマー材料としては、例えば、限定するものではないが、シリコーン類、ポリオレフィンエラストマー類、スチレンブロックコポリマー類、天然ゴム類、及びポリウレタン類が挙げられる。代替的に、開口部を画定するアダプタ部分は、特定の有腔又は有管デバイスにちょうど合うサイズに作られた、より剛性の高い材料で形成され、及び/又はアダプタ108と、開口部を通して配置された有腔又は有管デバイスとの間の耐圧シールを形成するように構成された弾性ガスケット109(例えば、
図2参照)を含んでもよい。
【0045】
図1Aに示されるように、一部の実施形態では、フィルタホルダ102とアダプタ108とは直列に取り付けられる(例えば、フィルタホルダ102の端部がアダプタ108の端部に取り付けられる)。このような実施形態では、不織布物品106は典型的には、アダプタ108から遠位側の先端部分104上に配置される。
図1Bを参照すると、多くの実施形態では、不織布物品106は、管形状を有するように構成されている。任意選択的に、不織布物品106は、不織布物品106の外表面の少なくとも一部分の周りに配置された弾性部材105(例えば、oリング又はカラー)を用いてフィルタホルダ102の先端部分104に固定される。不織布物品106が管形状を有する場合には、それは、デバイス100内を流れながら不織布物品106と接触する流体試料の接線流を可能にし得る。接線流を用いる利点は、或る体積の流体試料が、典型的には、同じ体積の流体試料が不織布物品106の一方の主表面から不織布物品の反対側の主表面へ通過する場合よりも長い時間、不織布物品106の少なくとも一方の主表面と接触することになることである。より長い接触時間は、不織布物品による任意の微生物株及び/又は標的細胞検体のより多量の捕捉をもたらし得る。
【0046】
図2を参照すると、多くの実施形態では、アダプタ108は、アダプタ108の内表面103上に形成された少なくとも1つのリブ101を更に含む。有利に、1つ以上のリブを含むことにより、有腔又は有管デバイスの開放端とアダプタの内表面との間の接触を効果的に最小限に抑え、これにより、流体試料有腔又は有管デバイスから出てくる流体試料の流れを遮ることを最小限に抑えることができる。このような1つ以上のリブは、アダプタの製作の間にアダプタの内表面上に一体的に成形されてもよい。選択実施形態では、フィルタホルダ102は、長さL及び幅Wを備える管状形状を含み、長さLは幅Wよりも少なくとも3倍長い。長い管状形状を提供することにより、デバイスが、市販の検出システム、例えば、管状のキュベットと連絡するように構成された照度計内で使用されることが可能になり得る。
【0047】
アダプタのサイズは特に限定されない。アダプタは通常、少なくとも5ミリリットル、又は少なくとも10ミリリットル、又は少なくとも15ミリリットル、又は少なくとも20ミリリットルの容積を備える。アダプタの容積は、デバイス内に挿入されるべき有腔又は有管デバイスの長さのため、及び流体試料がアダプタからフィルタホルダ内へ通過していく際に流体試料の体積を保持するための空間を提供する。デバイスは、有腔又は有管デバイスがアダプタ内へ少なくとも最小量挿入されると、例えば、アダプタの端部内の開口部を通してアダプタ内へ少なくとも15ミリメートル、又は少なくとも20ミリメートル、又は少なくとも25ミリメートル、又は少なくとも30ミリメートル挿入されると、流体試料をデバイスに通過させている間における(又は他の再処理工程の最中における)有腔又は有管デバイスの望ましくない動きを低減又は防止するのに効果を有する傾向があることが見いだされた。このような実施形態では、アダプタは、有腔又は有管デバイスの長さを収容するために、少なくとも20ミリメートル、又は少なくとも30ミリメートル、又は少なくとも35ミリメートルの長さを備える。
【0048】
次に
図3A及び
図3Bを参照すると、アダプタ108に取り付けられたフィルタホルダ102を含み、キュベット112を更に備えるデバイス100が示されている。フィルタホルダの先端部分は、キュベット112内に挿入されるように構成されている。大部分の実施形態では、デバイス100は、キュベット内に配置された少なくとも1種類の検出試薬114を含む。キュベット112は、立方体、直方体、円筒、円錐、切頭円錐、他の好適な幾何学形状、及びこれらの組み合わせ等、様々な幾何学形状で形成され得る。典型的には、キュベット112は、フィルタホルダ102の長さの一部又は全てが挿入され得る外部アッセイ管を一体的に提供する。キュベット112の壁の少なくとも一部分は、キュベット112に入る及び/又はキュベット112から出る光(例えば、可視光)の通過を可能にするように構成されている。例えば、キュベットは典型的には、光透過性材料(単数又は複数)(例えば、ガラス、あるいは例えば、ポイエチレン(poyethylene)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、又はポリスチレンなどのポリマー材料)から製作され、この材料は、検出反応の生成物として放射された光がそれを通って透過することを可能にする。
【0049】
図3B、
図4及び
図5を参照すると、一部の実施形態では、フィルタホルダ102は、フィルタホルダ102内/上に配置されたスリーブ116を更に含む。このようなスリーブ116は、先端部分104及び不織布物品106を、デバイスの使用(例えば、フィルタホルダ102の取り扱いなど)の最中における汚染から保護するように構成されている。
図4は、スリーブ116が、フィルタホルダ102の外側に存在する任意の材料の先端部分104への直接接触を防止する様子を示し、それに対して、
図5は、フィルタホルダ102の先端部分104がキュベット112内に配置され、スリーブ116が先端部分104から距離を置いて位置付けられている様子を示す。それゆえ、特定の実施形態では、スリーブ116は、先端部分104及び不織布物品106(
図3B、
図4、又は
図5には示されていない)の保護を可能にし、且つキュベット112内の検出試薬114との接触(及び検出試薬中へのスリーブ116上の任意の汚染物質の移動)を回避するべく先端部分104及び不織布物品106から遠ざけられるように、フィルタホルダ102内に摺動自在に配置されている。
【0050】
図3B及び
図5を参照すると、多くの実施形態では、デバイス100は、フィルタホルダ102の開放端111内に挿入されるように構成された柄118を更に備える。特定の実施形態では、柄118は、柄118の端部120から距離を置いて配置された特徴部119(又は図示されていない、標示)を含む。このような特徴部又は標示は有利に、不織布物品を検出試薬と接触させる際に柄をフィルタホルダ内で動かす好適な距離をユーザに指示する。柄118の少なくとも一部分が製作され得る好適な材料としては、フィルタホルダ102及びアダプタ108に関して上述された材料が挙げられる。多くの場合、柄118の端部120の少なくとも一部分は、柄118をフィルタホルダ102内に挿入し、そこから取り出すのを容易にするために、柔軟なポリマー(例えば、シリコーン)を含む。
【0051】
次に
図6を参照すると、アダプタ108内に(即ち、開口部110を通して)挿入された有腔又は有管デバイス122を含む、デバイス100が示されている。本実施形態におけるデバイス100は、流体試料121を、デバイス100を通過する間に、有腔又は有管デバイス122を通り、アダプタ108を通り、フィルタホルダ102を通り、不織布物品(図示されていない)と接触するよう促すように構成された、差圧源124を更に含む。差圧源124は特に限定されず、通常、シリンジ(
図6に示される)、ポンプ、又はアスピレータを含む。都合よく、特定の実施形態では、流体試料121の適切な処分のために、流体試料121がフィルタホルダ102の先端部分104から出た後に流体試料121を収集するための廃棄物容器126が用いられてもよい。
【0052】
図7A及び
図7Bを参照すると、少なくとも1つの実施形態では、デバイス100は、Y字形構成で互いに取り付けられたフィルタホルダ102及びアダプタ108を含む。Y字構成の使用は、デバイス100が、フィルタホルダ102上に一体的に形成され、先端部分104に取り付けられた柄118を含み、同時に、有腔又は有管デバイス122がアダプタ108の開口部110内に挿入されることを可能にする。フィルタホルダ102の先端部分104上に不織布物品106が配置されている。フィルタホルダ102は、柄118がフィルタホルダ104から取り外される際に不織布物品106を接触汚染から保護することができるスリーブ116を更に任意選択的に含み、典型的には、スリーブ116は、フィルタホルダ102が容器125内に挿入されると、柄118を滑り上がり、不織布物品106から遠ざかるように構成されている。特定の実施形態では、フィルタホルダは、流体試料が、不織布物品から遠ざかる方向にフィルタホルダを登ることを防止するシールを提供するための少なくとも1つのシール機構を更に含む。それゆえ、デバイス100は、1)先端部分104を含むフィルタホルダ102と、2)フィルタホルダ106の先端部分104上に配置された不織布物品106と、3)フィルタホルダ102を保持するように構成された容器125と、4)容器125にY字形構成で取り付けられたアダプタ108であって、アダプタ108は開口部110を画定する、アダプタ108とを備える。
【0053】
容器125は、流体試料121は容器125から流出することができるが、容器125内へは何も流入することができない、一方向弁132(例えば、一方向逆止弁)を更に含む。
図7A及び
図7Bに示されるように、デバイス100は、Y字形に構成されたデバイス100を受け入れ、これを支持するように構成されたハウジング113を更に備えてもよい。便宜のため、ハウジング113は任意選択的に、廃棄物収集容器126、及び差圧源からの圧力がハウジング113から抜け出ることを可能にする通気孔128を更に含む。一実施形態では、廃棄物収集容器は、使用及び処分の最中におけるデバイスからの流体試料の漏れを防止するための吸収性材料(例えば、超吸収性ポリマー)を含む。更に、試料採取後における生きた微生物株及び/又は細胞検体の存在を最小限に抑えるために、廃棄物収集容器内に抗菌材料を組み込むこともできるであろう。
【0054】
方法
第2の態様では、流体試料中の少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を検出する方法が提供される。本方法は、デバイスを入手する工程と、有腔又は有管デバイスをデバイスと流体連通させて配置する工程と、有腔又は有管デバイスからの少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を含有する疑いがある流体試料をデバイスに通過させ、不織布物品と接触させる工程とを含む。本方法は、不織布物品を少なくとも1種類の検出試薬と接触させる工程と、不織布物品によって濃縮された少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体の存在を検出する工程とを更に含む。デバイスは、以上において詳述された第1の態様の様々な実施形態に係るものである。
図8を参照すると、本方法は、デバイスを入手する工程810と、有腔又は有管デバイスをデバイスと流体連通させて配置する工程820と、有腔又は有管デバイスからの少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を含有する疑いがある流体試料をデバイスに通過させ、不織布物品と接触させる工程830と、不織布物品を少なくとも1種類の検出試薬と接触させる工程840と、不織布物品によって濃縮された少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体の存在を検出する工程850とを含む。
【0055】
図1A、
図1B、
図3A、及び
図4〜
図7を再び参照すると、特定の実施形態では、本方法は、デバイス100を入手する工程と、有腔又は有管デバイス122をデバイス100と流体連通させて配置する工程と、有腔又は有管デバイス122からの少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を含有する疑いがある流体試料121をデバイス100に通過させ、不織布物品106と接触させる工程とを含む。本方法は、不織布物品106を少なくとも1種類の検出試薬114と接触させる工程と、不織布物品116によって濃縮された少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体の存在を検出する工程とを更に含む。デバイス100は、1)先端部分104を含むフィルタホルダ102、2)フィルタホルダ102の先端部分104上に配置された不織布物品106、及び3)フィルタホルダ102に取り付けられたアダプタ108であって、開口部110を画定するアダプタ108を備える。
【0056】
特定の実施形態では、有腔又は有管デバイス122は、アダプタ108の開口部110を通して有腔又は有管デバイス122を挿入することによって、デバイス100と流体連通させて配置され、有腔又は有管デバイス122の少なくとも所定の長さがアダプタ108の内部に配置される(例えば、少なくとも25ミリメートル)。フィルタホルダ102とアダプタ108とが直列に取り付けられる構成では、典型的には、不織布物品106を少なくとも1種類の検出試薬114と接触させる前に、有腔又は有管デバイス122が、デバイス100と流体連通した状態から取り外され、アダプタ108がフィルタホルダ102から切り離され、柄118がフィルタホルダ102内に挿入され、フィルタホルダ102の先端部分104に取り付けられる。
【0057】
大部分の実施形態では、デバイス100は、少なくとも1種類の検出試薬114を包含するキュベット112を更に備える。キュベット112は、不織布物品106によって濃縮された少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体の存在を検出する前に、照度計50に動作可能に連結される(
図9も参照)。市販の照度計は、本開示の任意の実施形態に使用するのに好適である。好適な照度計の非限定例は、3M Company,St.Paul,MNから市販されている3M CLEAN−TRACE NG照度計である。典型的には、キュベット112は、フィルタホルダ102の一部分(例えば、キュベット部)又はフィルタホルダ102全体を照度計50の対応する受容区画内に挿入することによって、動作可能に連結される。
【0058】
デバイス100に通過させられる流体試料121の典型的な体積は、少なくとも20ミリリットル、又は少なくとも30ミリリットル、又は少なくとも40ミリリットル、又は少なくとも50ミリリットル、又は少なくとも75ミリリットル、又は少なくとも100ミリリットル、又は更には、少なくとも125ミリリットルの流体試料121である。流体試料121の体積が大きいほど、試料採取される流体が多くなり得、その一方で、流体試料121の体積が小さいほど、流体試料121の全体積が速くデバイス100に通過させられ得る。
【0059】
多くの実施形態では、流体試料121は有腔又は有管デバイス122からのすすぎ液を含む。上述されたように、有腔又は有管デバイスからのすすぎ液は、有腔又は有管デバイスが十分に洗浄されたか否か(例えば、所定の清浄度基準を満たすほど十分に洗浄されたか否か)を判定するために用いることができる。すすぎ液は、洗浄プロセス(例えば、医療機器の再処理)後に得られるか、又は再処理された有腔又は有管デバイスが保管された後、更なる使用の前に得られたすすぎ液であってもよい。一部の実施形態では、有腔又は有管デバイス122は、再処理を受ける医療用デバイスを含む。好適な有腔又は有管デバイスは、軟性内視鏡、半硬性内視鏡、硬性内視鏡、腹腔鏡検査機器、又は有管ロボット手術機器を含む。
【0060】
本開示に従って、例えば、グラム陰性細菌類、グラム陽性細菌類、酵母菌類、真菌類、及びこれらの組み合わせなどの、細菌類、真菌類、酵母菌類、原生動物類、ウイルス類(非エンベロープウイルス類及びエンベロープウイルス類の両方を含む)、真菌胞子類、細菌内生胞子類(例えば、バシラス属(炭疽菌、セレウス菌、及び枯草菌を含む)及びクロストリジウム属(ボツリヌス菌、ディフィシル菌、及びウェルシュ菌を含む))、及び同様のもの、並びにこれらの組み合わせを含む、種々の微生物を濃縮し、検出することができる。本開示の方法を用いることによって濃縮し、検出することができる標的細胞検体としては、核酸類、タンパク質類、アデノシン三リン酸(ATP)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0061】
特定の実施形態では、本方法は、少なくとも1種類の微生物株又は細胞検体が拘束された不織布物品を少なくとも1種類の検出試薬と接触させる工程の前に、少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体が拘束された不織布物品を洗浄する工程を更に含む。残留試料マトリックスなどの汚染物質が、拘束又は捕捉された微生物及び/又は細胞検体の大幅な損失を伴うことなく、不織布物品から除去され得ることが発見された。特定の実施形態では、洗浄する工程は、例えば、限定するものではないが、滅菌脱イオン水又は瓶入り飲料水を用いたすすぎ、あるいは食塩水又は緩衝溶液を用いたすすぎを含む。不織布物品を洗浄する工程は、採用された特定の検出方法によっては、さもなければ、拘束された微生物及び/又は細胞検体の存在を検出する工程に干渉し得るであろう成分を除去することに資する。
【0062】
本開示の実施形態の利点は、不織布物品106が流体試料121からの微生物株及び/又は標的細胞検体を濃縮し、うまく検出することができる流体試料121中のこのような株及び/又は検体の最小濃度を減少させることである。少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を検出するために、不織布物品106は、少なくとも1種類の検出試薬114と接触させて配置される。不織布物品106を検出試薬114と接触させる方法は検出の感度に影響を与えることができることが見いだされた。不織布物品を少なくとも1種類の検出試薬と接触させる好適な方法としては、少なくとも1種類の検出試薬に対する不織布物品の上下若しくは前後運動、少なくとも1種類の検出試薬及び不織布物品をボルテックスすること、不織布物品及び少なくとも1種類の検出試薬の手動攪拌、あるいはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。以下の実施例21L〜21Oは、特定の接触条件に係る接触(例えば、攪拌)方法の相違を示す。熟練した施術者は、不織布物品上で濃縮された少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体のうちの十分な部分を少なくとも1種類の検出試薬へ効果的に移動させるために、これらの開示された接触方法のうちの1つ以上を選択する能力を有する。
【0063】
上述されたように、流体試料121は任意選択的に、シリンジ124、ポンプ、又はアスピレータを用いるなど、差圧を用いてデバイス100に通過させられる。特定のデバイス構成に依存して、差圧は正圧又は陰圧のどちらかを含み得る。本デバイスの使用は、流体試料121がデバイス100を通過する間の圧力降下の低減の達成を可能にすることが発見された。例えば、デバイス100に入り、デバイス100から出ていく流体試料121の圧力差は任意選択的に、20キロパスカル以下である。同様に、低い圧力降下のおかげで速い流量が部分的に達成され得る。特定の実施形態では、デバイス100を通過する流体試料121の流量は、少なくとも2ミリリットル/分、又は少なくとも5ミリリットル/分、又は少なくとも7ミリリットル/分、又は少なくとも10ミリリットル/分、又は少なくとも15ミリリットル/分、又は少なくとも40ミリリットル/分、又は少なくとも60ミリリットル/分、又は少なくとも80ミリリットル/分であり、デバイス100に入り、デバイス100から出ていく流体試料121の圧力差は20キロパスカル以下である。本開示の一実施形態では、流体試料をデバイスに通過させる工程は、14.7ポンド/平方インチ(psi)(101.3キロパスカル(kPa))以下、若しくは4.0ポンド/平方インチ(psi)(27.58キロパスカル(kPa))以下、若しくは3.0psi(20.68kPa)、若しくは2.0psi(13.79kPa)、若しくは1.0psi(6.9kPa)、若しくは0.9psi(6.21kPa)、若しくは0.8psi(5.52kPa)、若しくは0.7psi(4.83kPa)、若しくは0.6psi(4.14kPa)、若しくは更には0.5psi(3.45kPa)以下の圧力、並びに少なくとも0.4psi(2.76kPa)、若しくは少なくとも0.5psi(3.45kPa)の圧力で行われる。
【0064】
特定の実施形態では、微生物株又は標的細胞検体が拘束された不織布物品を試薬と接触させて配置する工程は、フィルタホルダの少なくとも一部分(フィルタホルダの先端部分上の不織布物品を含む)を、材料であって、それを通じて検出信号が検出されることができる材料を含むレセプタクル内に配置する工程を含み、レセプタクルは少なくとも1種類の試薬を包含する。例えば、微生物株又は標的細胞検体が拘束された不織布物品を試薬と接触させて配置する工程は任意選択的に、フィルタホルダを、照度計に動作可能に接続されるように構成されたレセプタクル(例えば、キュベット)内に配置する工程を含み、レセプタクルは少なくとも1種類の試薬を包含する。それゆえ、このような実施形態では、拘束された微生物株及び/又は標的細胞検体の、少なくとも1種類の試薬との反応から発生された光の測定のために、レセプタクルを照度計内に配置することによって、検出が促進される。同様に、レセプタクルは、特定の検出方法に依存した他の種類の器具と連絡させることもできる。微生物株及び/又は標的細胞検体を、不織布物品による捕捉からの除去を必要とすることなく、検出することができることが発見された。不織布物品に付着した微生物株及び/又は標的細胞検体を検出する能力は、検出前に微生物株及び/又は標的細胞検体が不織布物品から溶出される必要がある方法と比べて、必要な方法の工程数を減少させるため、有利である。更に、不織布物品は、微生物株及び/又は標的細胞検体を、通例、不織布物品と接触させられた流体試料の体積よりも大幅に小さい、物品の体積に濃縮する。
【0065】
第5の態様では、
図7A及び
図7Bを再び参照すると、流体試料中の少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を検出する方法であって、Y字形構成を備えるデバイス100を入手する工程を含む、方法が提供される。デバイスは、1)先端部分104を含むフィルタホルダ102、2)フィルタホルダ102の先端部分104上に配置された不織布物品106、3)フィルタホルダ102を保持するように構成された容器125、及び4)容器125にY字形構成で取り付けられたアダプタ108であって、開口部110を画定するアダプタ108を備える。本方法は、有腔又は有管デバイス122をデバイス100と流体連通させて配置する工程と、有腔又は有管デバイスからの少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を含有する疑いがある流体試料を、アダプタ108に通過させるなど、デバイス100に通過させ、フィルタホルダ102内に入れ、不織布物品106と接触させる工程とを更に含む。本方法は、不織布物品を少なくとも1種類の検出試薬と接触させる工程と、不織布物品によって濃縮された少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体の存在を検出する工程とを追加的に含む。典型的には、不織布物品は、フィルタホルダをデバイスから取り外し、フィルタホルダを、少なくとも1種類の検出試薬を保持する容器内に挿入することによって、検出試薬と接触させられる。採用される容器の種類は検出方法に依存することになる(例えば、ルミネセンスベースの方法のためのキュベット)。
【0066】
不織布物品によって(例えば、吸着、吸収によって、又は篩い分けによって)捕捉又は拘束された微生物及び/又は細胞検体は、現在知られている、又は今後開発される本質的に任意の所望の方法によって検出可能である。このような方法としては、例えば、培養による方法、顕微鏡(例えば透過光型顕微鏡又は落射蛍光顕微鏡(蛍光染料で標識した微生物を可視化するために使用することができる))及びその他の画像手法、免疫学的検出方法、並びに遺伝子学的検出方法が挙げられる。微生物及び/又は細胞検体の捕捉の後の検出プロセスは任意選択的に、試料マトリックス成分を除去するための洗浄、染色、煮沸、又は溶出緩衝剤若しくは溶解剤を用いて濃縮デバイスから細胞検体を解離させること、あるいは同様のことを含むことができる。
【0067】
免疫学的検出は、標的生物に由来する抗原物質の検出であり、これは一般的に、細菌又はウイルス粒子の表面にあるマーカーとして作用する生物学的分子(例えばタンパク質又はプロテオグリカン)である。抗原物質の検出は、典型的には、抗体、ファージディスプレイなどの方法から選択されるポリペプチド、又はスクリーニング方法から得られたアプタマーによるものであり得る。
【0068】
免疫学的検出方法は周知であり、例えば、免疫沈降及び酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)が挙げられる。抗体結合は、様々な方法で(例えば一次抗体又は二次抗体のいずれかを、蛍光染料で、量子ドットで、又は化学発光若しくは着色基質を生成し得る酵素で標識し、かつプレートリーダー又はラテラルフローデバイスのいずれかを使用することによって)検出され得る。
【0069】
検出は、遺伝子学的アッセイによって(例えば、核酸ハイブリッド形成又はプライマーを用いた増幅によって)実行することもできる。捕捉又は拘束された微生物を溶解し、それらの遺伝物質(例えば、細胞検体)をアッセイのために利用可能にすることができる。溶解方法は周知であり、これには例えば、超音波処理、浸透性ショック、高温処理(例えば約50℃〜約100℃)、及びリゾチーム、グルコラーゼ、チモラーゼ(zymolose)、リチカーゼ、プロテイナーゼK、プロテイナーゼE、及びウイルスエンドリシン(enolysins)などの酵素と共にインキュベーションすることが挙げられる。
【0070】
多くの一般的に使用されている遺伝子学的検出アッセイは、DNA及び/又はRNAを含む、特定の微生物の核酸を検出する。遺伝子学的検出方法に使用される条件の厳密性は、検出される核酸配列の変異レベルに相関する。塩濃度及び温度の非常に厳密な条件は、検出を標的の正確な核酸配列に限定することができる。このように、標的核酸配列において小さな変異を有する微生物株は、非常に厳密な遺伝子学的アッセイを使用して区別することができる。遺伝子学的検出は、一本鎖核酸プローブが微生物の変性核酸にハイブリッド化してプローブ鎖を含む二本鎖核酸が生成される、核酸ハイブリダイゼーションに基づいて行われる。当業者であれば、ゲル電気泳動、細管式電気泳動、又はその他の分離方法の後でハイブリッドを検出するための、放射性、蛍光、及び化学発光標識などのプローブ標識に精通している。
【0071】
特に有用な遺伝子学的検出方法は、プライマーを用いた核酸増幅に基づくものである。プライマーを用いた核酸増幅方法としては、例えば、温度サイクル方法(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、及びリガーゼ連鎖反応(LCR))、並びに等温方法及び鎖置換増幅(SDA)(及びこれらの組み合わせ、好ましくはPCR又はRT−PCR)が挙げられる。増幅された生成物を検出するための方法としては、例えばゲル電気泳動分離及び臭化エチジウム染色、並びに生成物中に組み込んだ蛍光標識又は放射性標識の検出が挙げられるが、これらに限定されない。増幅生成物の検出前に分離工程を必要としない方法(例えば、リアルタイムPCR又はホモジニアス検出法)も使用することができる。
【0072】
生物発光検出法は周知であり、例えば米国特許第7,422,868号(Fan et al.)に記述されているものを含むアデノシン(adensosine)三リン酸(ATP)検出法が挙げられる。ATPのための生物発光検出方法は、多くの場合、ルシフェラーゼ酵素がATP及び二価陽イオン(マグネシウム若しくはカルシウムなど)の存在下でルシフェリンの酸化を触媒する、周知のルシフェリン−ルシフェラーゼ系を含む。他の発光に基づく検出方法も利用され得る。
【0073】
多くの実施形態では、検出は、培養ベースの検出方法、画像検出方法、蛍光ベースの検出方法、比色分析的検出方法、免疫学的検出方法、遺伝子学的検出方法、生物発光ベースの検出方法、又はこれらの組み合わせを含む。
【0074】
キット及びシステム
第3の実施形態では、キットが提供される。キットは、デバイスと、少なくとも1種類の検出試薬を包含するキュベットと、フィルタホルダ内に挿入されるように構成された柄とを含む。デバイスは、以上において詳述された第1の態様の様々な実施形態に係るものである。
図1A、
図1B、
図3A、及び
図4〜
図7を再び参照すると、キットは、デバイス100と、少なくとも1種類の検出試薬114を包含するキュベット112と、デバイス100のフィルタホルダ102内に挿入されるように構成された柄118とを含む。デバイスは、1)先端部分104を含むフィルタホルダ102と、2)フィルタホルダ102の先端部分104上に配置された不織布物品106とを含む。
【0075】
図6に示されるように、特定の実施形態では、キットは、デバイス100を保持するように構成されたスタンド130を更に含む。スタンド130はデバイス100のユーザの手を解放するだけでなく、デバイス100を望ましい姿勢で(例えば、有腔又は有管デバイス122の相当な曲げを必要としない角度で)固定することもできる。更に、一部の実施形態では、キットは差圧源(例えば、シリンジ124、ポンプ、又はアスピレータ)を含む。キットは通例、キットを用いて流体試料中の少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を検出するための使用説明書を更に含む。
【0076】
第4の態様では、システムが提供される。システムは、デバイスと、少なくとも1種類の検出試薬を包含するキュベットと、フィルタホルダ内に挿入されるように構成された柄と、照度計とを含む。デバイスは、以上において詳述された第1の態様の様々な実施形態に係るものである。
図1A、
図1B、
図3A、
図4〜
図7、及び
図9を再び参照すると、システムは、デバイス100と、少なくとも1種類の検出試薬114を包含するキュベット112と、フィルタホルダ102内に挿入されるように構成された柄118と、照度計50とを含む。システムは通例、システムを用いて流体試料中の少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を検出するための使用説明書を更に含む。
【0077】
特定の実施形態では、システムは、有腔又は有管デバイス122、デバイス100を保持するように構成されたスタンド130、並びに差圧源(例えば、シリンジ124、ポンプ、若しくはアスピレータを含む)のうちの1つ以上を更に含む。
【0078】
第6の態様では、別のキットが提供される。キットは、Y字形構成を備えるデバイスと、少なくとも1種類の検出試薬を包含するキュベットと、フィルタホルダ内に挿入されるように構成された柄とを備える。例えば、
図7A及び
図7Bを再び参照すると、キットは、Y字形構成を備えるデバイス100と、フィルタホルダ102内に挿入されるように構成された柄118とを含む。第7の態様では、別のシステムが提供される。システムは、Y字形構成を備えるデバイスと、少なくとも1種類の検出試薬を包含するキュベットと、フィルタホルダ内に挿入されるように構成された柄と、照度計とを備える。デバイスは、1)先端部分104を含むフィルタホルダ102、2)フィルタホルダ102の先端部分104上に配置された不織布物品106、3)フィルタホルダ102を保持するように構成された容器125、及び4)容器125にY字形構成で取り付けられたアダプタ108であって、開口部110を画定する、アダプタ108を備える。
【0079】
多くの実施形態では、キット及び/又はシステムは、フィルタホルダ102及びアダプタ108の各々を保持するように構成されたハウジング113を更に含む。このようなハウジングを採用する利点は、デバイスをハウジング内で自己完結した状態で保持し、フィルタホルダ及び有腔又は有管デバイスを使用中/後にデバイスから取り外すだけですむ能力である。特定の実施形態では、キット及び/又はシステムは、シリンジ(
図7Bに示される)、ポンプ、又はアスピレータを含む差圧源124を更に備える。多くの場合、キット又はシステムを用いて流体試料中の少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を検出するための使用説明書が含まれる。
【0080】
不織布物品
特定の実施形態では、不織布物品は繊維性多孔質マトリックスを含む。特定の実施形態では、不織布物品は、a)繊維性多孔質マトリックス、及びb)繊維性多孔質マトリックス内に捕らえられた複数の濃縮剤粒子を含む。繊維性多孔質マトリックスは任意選択的に、無機繊維及びポリマー繊維から本質的になる。不織繊維性多孔質マトリックスは、多くの場合、紡織又は編み合わせではなく、織り交ぜた(interlaid)繊維の層の形態である。不織繊維性多孔質マトリックスは、例えば、エアレイド技術、メルトブロー加工又はスパンボンド加工の他、毛羽立て加工、湿式積層、及びこれらの組み合わせのようなスパンボンド積層技術などの任意の好適なプロセスにより、調製することが可能である。多くの実施形態では、繊維性不織布マトリックスは湿式載置技法によって調製される。
【0081】
不織繊維性多孔質マトリックスの調製において使用するのに適した繊維は通常、放射線及び/又は種々の溶媒に対して安定したものなどのパルプ化可能又は押し出し成形可能な繊維である。任意選択的に、ポリマー繊維のうちの少なくともいくつかは、ある程度の親水性を呈するように選択され得る。有用な繊維としては、ポリマー繊維、無機繊維、及びこれらの組み合わせが挙げられる。より具体的には、これらの繊維は、ポリオレフィン繊維及び繊維ガラス繊維を含む、複数の異なる種類の繊維を含む。
【0082】
好適なポリマー繊維としては、熱可塑性及び溶媒分散性ポリマー類などの、天然ポリマー類(動物源若しくは植物源に由来するもの)及び/又は合成ポリマー類から作製されたものが挙げられる。有用なポリマー類としては、以下のものが挙げられる:ポリオレフィン類(例えば、ポリ(エチレン)(例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、エチレンとプロピレンとのコポリマー類、ポリ(エチレン−コ−1−ブテン)、ポリ(エチレン−コ−1−ブテン−コ−1−ヘキセン)、及び同様のものなどの、エチレン若しくはプロピレンと1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び1−デセンとのコポリマー類などのαオレフィンコポリマー類);ポリ乳酸;ポリ(イソプレン);ポリ(ブタジエン類);ポリアミド類(例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,12、ポリ(イミノアジポイルイミノヘキサメチレン)、ポリ(イミノアジポイルイミノデカメチレン)、ポリカプロラクタムなど);ポリイミド類(例えば、ポリ(ピロメリットイミド)及び同様のもの);ポリエーテル類;ポリ(エーテルスルホン)(例えば、ポリ(ジフェニルエーテルスルホン)、ポリ(ジフェニルスルホン−co−ジフェニレンオキシドスルホン)など);ポリ(スルホン類);ポリ(酢酸ビニル類)などのポリ(ビニルエステル類);酢酸ビニルのコポリマー(例えば、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、及びアセテート基の少なくとも一部が加水分解されていることでポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)などの種々のポリ(ビニルアルコール)を与えるコポリマーなど);ポリ(ホスファゼン類);ポリ(ビニルエーテル類);ポリ(ビニルアルコール類);ポリアラミド(例えば、ポリ(パラフェニレンテレルタルアミド)などのpara−アラミド、及びDuPont Co.(Wilmington,DE)より「KEVLAR」の商品名で販売される繊維(そのパルプは、パルプを構成する繊維の長さに基づいて「KEVLAR 1F306」及び「KEVLAR 1F694」などの様々なグレードで市販されており、これらはいずれも少なくとも4ミリメートルの長さのアラミド繊維を含んでいる)など);毛;絹;セルロース系ポリマー類(例えば、セルロース、レーヨンのようなセルロース誘導体など);アクリル系ポリマー類(例えば、ポリアクリロニトリル);ポリエステル類(例えば、ポリエチレンテレフタレート);フッ素化ポリマー(例えば、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンのコポリマー(例えば、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)など)、クロロトリフルオロエチレンのコポリマー(例えば、ポリ(エチレン−co−クロロトリフルオロエチレン)など)など;塩素化ポリマー類;ポリ(カーボネート類);及び同様のもの;並びにこれらの組み合わせ。特定の実施形態では、ポリマー繊維は、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリアミド、又はこれらの組み合わせを含む。
【0083】
好適な無機繊維としては、ガラス、セラミックス、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種類の無機材料を含むものが挙げられる。これらの繊維を加えることにより、多くの場合、繊維性多孔質マトリックスを強化することが可能である。例えば、無機繊維を含有する多孔質マトリックス層は、多くの場合、壊れることなく、屈曲、折り畳み、又はプリーツ状にすることが可能である。有用な無機繊維としては、例えば、繊維ガラス(例えば、Eガラス、Sガラスなど)、セラミック繊維(例えば、金属酸化物(アルミナなど)、炭化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ホウ素などで製造された繊維)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。有用なセラミック繊維は、少なくとも部分的に結晶性であり得る(認識可能なX線粉末回折図形を示す、又は結晶質相及び非晶質(ガラス)相の両方を含有する)。いくつかの用途では、無機繊維は繊維ガラスを含む。
【0084】
濃縮剤粒子の閉じ込めを促進するため、及び/又は大きな表面積を確保するために、不織繊維性多孔質マトリックスの形成に用いる繊維は、多くの場合、(例えば、主繊維が多くのより小さな結合フィブリルで取り囲まれた形態の)少なくとも1つのフィブリル化繊維を含有する。主繊維は、一般に、0.5ミリメートル〜5ミリメートルの範囲内の長さ、及び1マイクロメートル〜20マイクロメートルの範囲内の直径を有し得る。フィブリルは、典型的には、μm未満の直径を有し得る。多くの実施形態では、フィブリル化繊維は、ポリ(エチレン)又はポリプロピレンなどのポリオレフィン、あるいはポリアクリロニトリルなどのアクリル系ポリマーから調製される。
【0085】
好適なポリマー繊維としては、2成分繊維が更に挙げられる。2成分繊維は、典型的には、2成分繊維内の材料の一方の融点の差によって、マトリックス繊維の全てを一体に束ねるのを支援する。2成分繊維は、例えば、コア−シース構造、横並び(side−by−side)構造、アイランド・イン・ザ・シー(islands−in−the−sea)構造、又は区分化パイ(segmented−pie)構造、あるいは同様のものを有することができる。並列2成分繊維の例には、ポリオレフィン、熱結合された2成分繊維、Chisso Corporation(Osaka,Japan)からCHISSO(例えば、CHISSO ES)という商品名で市販されているものがある。コア−シース2成分繊維の例には、Unitika Ltd.(Osaka,Japan)からMELTY(例えば、MELTY 4080)という商品名で市販されているもの、並びにMinifibers,Inc.(Johnson City,TN)から市販されている、エチルビニルアセテート(シース)及びポリプロピレン(コア)で作製されたもの、又はポリエステルとポリエチレンテレフタレート(PET)とのコポリエステル(シース)及びポリエステル(コア)で作製されたものがある。
【0086】
不織繊維性多孔質マトリックスは、複数の異なる種類の繊維を含有する。一部の実施形態では、多孔質マトリックスは、3、4種類、又は更にはより多くの異なる種類の繊維を使用して形成され得る。例えば、強度及び一体性をもたせるために繊維ガラス繊維を加えることができる一方、粒子を閉じ込めるためにフィブリル化ポリ(エチレン)を加えることができる。加えて、ナイロン繊維が親水性特性をもたらすのに対して、フィブリル化ポリ(エチレン)繊維は多孔質マトリックスに疎水性特性をもたらす。フィブリル化繊維及び非フィブリル化繊維を組み合わせて使用した場合、フィブリル化繊維と非フィブリル化繊維との重量比は、多くの場合、少なくとも1:2、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも5:1、又は更には少なくとも8:1である。幾つかの実施形態では、疎水性及び親水性ポリマー繊維の混合物が使用される。例えば、繊維性多孔質マトリックスは、ポリオレフィンなどの疎水性繊維と、ポリスルホンなどの親水性繊維との混合物を含み得る。いくつかの特定の例では、ポリマー繊維は、ポリオレフィン繊維、2成分繊維、及び繊維ガラス繊維を含む。
【0087】
特定の実施形態では、繊維性多孔質マトリックスはポリアミド繊維を含まない。繊維性多孔質マトリックス内にナイロン繊維を含めると、生物発光ATP検出方法のために、ナイロン繊維を有しない繊維性多孔質マトリックスよりも低い発光量を生じさせ得ることが発見された。
【0088】
好ましくは、不織繊維性多孔質マトリックスを形成するために用いられる繊維は非捲縮性である。非捲縮繊維と対照的に、捲縮繊維は、特徴の反復(例えば、波状、ぎざぎざ、正弦波形状等の繊維の外観の形で現れる)を呈すること、螺旋形の外観を有すること(例えば、特に、2成分繊維の熱活性化によって得られる捲縮繊維の場合)等で識別することができ、当業者によって容易に認識可能である。例示的な捲縮繊維が、Hauserに対する米国特許第4,118,531号、Pikeらに対する米国特許第5,597,645号、及びSommerらに対するカナダ特許第2612854号に記載されている。
【0089】
不織繊維性多孔質マトリックスの形成に用いられる繊維は、特定の用途(例えば、流体試料をマトリックスに通過させること)のために十分な構造的一体性及び十分な多孔性を有する多孔質マトリックスを提供できる長さ及び直径のものであることができる。繊維の長さは、多くの場合、少なくとも約0.5ミリメートル、少なくとも1ミリメートル、少なくとも2ミリメートル、少なくとも3ミリメートル、少なくとも4ミリメートル、少なくとも6ミリメートル、少なくとも8ミリメートル、少なくとも10ミリメートル、少なくとも15ミリメートル、若しくは少なくとも20ミリメートル、並びに最大50ミリメートル、最大40ミリメートル、最大30ミリメートル、若しくは最大25ミリメートルである。繊維の直径は、例えば、少なくとも10マイクロメートル、少なくとも20マイクロメートル、又は少なくとも30マイクロメートルであることができる。繊維の長さ及び直径は、繊維の性質及び用途のタイプなどの因子に応じて異なることになる。
【0090】
不織繊維性多孔質マトリックスは、多くの場合、ポリオレフィン繊維、ガラス繊維、及び2成分繊維の混合物を含む。いくつかの特定の実施形態では、不織繊維性多孔質マトリックスは、フィブリル化ポリエチレン繊維、ガラス繊維、及びシース−コア2成分繊維を含有する。一部の実施例では、不織繊維性多孔質マトリックスは、40〜80重量パーセントのフィブリル化ポリエチレン繊維、5〜20重量パーセントのガラス繊維、及び5〜20重量パーセントの2成分繊維を含有する。一部の実施例では、不織繊維性多孔質マトリックスは、40〜80重量パーセントのフィブリル化ポリエチレン繊維、10〜30重量パーセントのナイロン繊維、5〜20重量パーセントのガラス繊維、及び5〜20重量パーセントの2成分繊維を含有する。他の実施例では、不織繊維性多孔質マトリックスは、50〜70重量パーセントのフィブリル化ポリエチレン繊維、5〜15重量パーセントのガラス繊維、及び5〜20重量パーセントの2成分繊維を含有する。更に他の実施例では、繊維性多孔質マトリックスは、55〜65重量パーセントのフィブリル化ポリエチレン繊維、0〜20重量パーセントのナイロン繊維、5〜15重量パーセントのガラス繊維、及び10〜20重量パーセントの2成分繊維を含有する。
【0091】
上述されたように、繊維性多孔質マトリックスは、多くの場合、無機繊維及びポリマー繊維から本質的になる。したがって、大部分の実施形態では、繊維性多孔質マトリックスは繊維のみを含有する。例えば、乾燥繊維性多孔質マトリックスの少なくとも90重量パーセント、少なくとも95重量パーセント、少なくとも98重量パーセント、少なくとも99重量パーセント、又は少なくとも99.5重量パーセントは、繊維である。特定の実施形態では、不織布物品は、少なくとも0.1ミリメートル、又は少なくとも0.15ミリメートル、又は少なくとも0.2ミリメートル、又は少なくとも0.3ミリメートル、又は少なくとも0.4ミリメートル、又は少なくとも0.5ミリメートル、又は少なくとも0.6ミリメートルの厚さを備える。不織布物品は通常、最大1ミリメートル、又は最大0.9ミリメートル、又は最大0.8ミリメートル、又は最大0.7ミリメートル、又は最大0.55ミリメートルの厚さを備える。別の言い方をすれば、不織布物品は、0.15ミリメートル〜1ミリメートル、又は0.15ミリメートル〜0.8ミリメートル、又は0.1ミリメートル〜0.7ミリメートルの厚さを備えてもよい。特定の実施形態では、試薬が不織布物品内へ拡散するために要する時間を減少させること、又は発生された検出信号の遮断を減少させることなど、微生物及び/又は細胞検体の検出への干渉を最小限に抑えるために、厚さ範囲の下端の方の厚さを有する不織布物品が選択される。
【0092】
不織布物品は、典型的には、繊維性多孔質マトリックス、及び繊維性多孔質マトリックス内に分散した濃縮剤粒子の両方を含む。大部分の実施形態では、不織布物品は、不織布物品の総乾燥重量に基づいて少なくとも10重量パーセントの濃縮剤粒子を含有する。濃縮剤粒子の量が約10重量パーセントよりも低い場合には、不織布物品は、微生物又は細胞検体を流体試料から効果的に捕捉するのに十分な濃縮剤粒子を含有していない可能性がある。一部の実施例では、不織布物品は、不織布物品の総乾燥重量に基づいて少なくとも15重量パーセント、少なくとも20重量パーセント、少なくとも25重量パーセント、又は少なくとも30重量パーセントの濃縮剤粒子を含有する。
【0093】
他方、不織布物品は、通常、不織布物品の総乾燥重量に基づいて55重量パーセント以下の濃縮剤粒子を含有する。濃縮剤粒子の量が約55重量パーセントを超える場合には、不織布物品は十分な量の繊維性多孔質マトリックスを含有していない可能性がある。即ち、微生物株及び/又は標的細胞検体を捕捉するために採用されると、不織布物品の強度は、一つにまとまるのに不十分になる可能性がある。一部の実施例では、不織布物品は、不織布物品の総重量に基づいて50重量パーセント以下、45重量パーセント以下、又は40重量パーセント以下の濃縮剤粒子を含有する。
【0094】
言い方を変えれば、不織布物品は、多くの場合、10〜55重量パーセントの濃縮剤粒子及び45〜90重量パーセントの繊維性多孔質マトリックス、15〜50重量パーセントの濃縮剤粒子及び50〜85重量パーセントの繊維性多孔質マトリックス、20〜50重量パーセントの濃縮剤粒子及び50〜80重量パーセントの繊維性多孔質マトリックス、20〜45重量パーセントの濃縮剤粒子及び55〜80重量パーセントの繊維性多孔質マトリックス、25〜40重量パーセントの濃縮剤粒子及び60〜75重量パーセントの繊維性多孔質マトリックス、又は30〜40重量パーセントの濃縮剤粒子及び60〜70重量パーセントの繊維性多孔質マトリックスを含有する。これらの量は、不織布物品の総乾燥重量に基づく。
【0095】
多くの実施形態では、不織布物品(乾燥時)は、濃縮剤粒子及び繊維性多孔質マトリックスのみを含有する。例えば、不織布品は、典型的には、乾燥時、少なくとも90重量パーセント、少なくとも95重量パーセント、少なくとも98重量パーセント、少なくとも99重量パーセント、又は少なくとも99.5重量パーセントの複合した濃縮剤粒子及び繊維性多孔質マトリックスを含有する。
【0096】
濃縮剤粒子は、微生物及び/又は細胞検体を含有する流体試料と接触させられると、微生物株、細胞検体、又はこれらの組み合わせを非特異的に捕捉するために採用された非水溶性微粒子材料である。濃縮剤粒子は典型的にはマイクロ粒子を含む。濃縮剤粒子は、典型的には、非晶質金属ケイ酸塩類、グアニジン官能化金属ケイ酸塩類、珪藻土、表面修飾珪藻土、グアニジン官能化珪藻土、γ−FeO(OH)、金属炭酸塩類、金属リン酸塩類、シリカ、パーライト、グアニジン官能化パーライト、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される粒子を含む。
【0097】
一実施形態では、濃縮剤粒子は、非晶質球状化ケイ酸マグネシウム、非晶質球状ケイ酸アルミニウム、又はこれらの組み合わせなどの、非晶質金属ケイ酸塩類の粒子を含む。ケイ酸金属塩の非晶質の少なくとも部分溶融した粒子形状は、比較的小さい供給粒子(例えば、平均粒径が約25マイクロメートルまでのもの)を、概ね回転楕円体又は球の形状の粒子(すなわち、真に又は実質的に円及び楕円の形状及び任意の他の丸い又は曲がった形状を含む、概ね丸く、鋭利な角又は縁を含まない、拡大された二次元像を有する粒子)を作製するための制御された条件下で融解又は軟化させる既知の任意の方法によっても調製可能である。このような方法には微粒化、ファイアポリッシュ、直接溶融などが挙げられる。好ましい方法は、固体フィード粒子の直接溶融又はファイアポリッシュにより、少なくとも部分的に溶融した、実質的にガラス状粒子が形成される、火焔溶融(例えば、米国特許第6,045,913号(Castleら)に述べられている方法におけるような)である。最も好ましくは、このような方法は、不規則な形状の供給粒子の相当部分(例えば、約15〜約99体積パーセント、好ましくは、約50〜約99体積パーセント、より好ましくは、約75〜約99体積パーセント、最も好ましくは、約90〜約99体積パーセント)を概ね楕円体又は回転楕円体の粒子に変換することによって、非晶質球状化金属ケイ酸塩を生成するために利用することができる。
【0098】
いくつかの非晶質ケイ酸金属塩は市販されている。例えば、非晶質球状化ケイ酸マグネシウムは、化粧料における使用のために市販されていた(例えば、3M Company(St.Pau、MN)より入手可能な、「3M COSMETIC MICROSPHERES CM−111」)。3M COSMETIC MICROSPHERES CM−111は、2.3g/ccの粒子密度、3.3m
2/gの表面積を有し、粒径は:90パーセントが11マイクロメートル未満(即ち、D
90=11)、50パーセントが5マイクロメートル未満、かつ10パーセントが2マイクロメートル未満である。非晶質球状ケイ酸アルミニウムは、ペンキ、プライマー、粉末コーティング、及び他のコーティングでの使用向けに市販されており、例えば、3M Company(St.Paul、MN)製の「3M CERAMIC MICROSPHERES」などがある。この3M CERAMIC MICROSPHERESは、粒子密度2.4g/ccの中実の球体として成形されているアルカリ・アルミノ・シリケート系セラミックマイクロスフィアであり、W−210、W−410、及びW0610の3つの等級で市販されている。W−210粒子は、5m
2/ccの表面積、並びに95パーセントの約12マイクロメートル未満(即ち、D
95=12)、90パーセントの約9マイクロメートル未満、50パーセントの約3マイクロメートル未満、及び10パーセントの約1マイクロメートル未満の粒径を有する。W−410粒子は、3m
2/ccの表面積、並びに95パーセントの約24マイクロメートル未満(即ち、D
95=24)、90パーセントの約15マイクロメートル未満、50パーセントの約4マイクロメートル未満、及び10パーセントの約1マイクロメートル未満の粒径を有する。W−610粒子は、3m
2/ccの表面積、並びに95パーセントの約40マイクロメートル未満(即ち、D
95=40)、90パーセントの約28マイクロメートル未満、50パーセントの約10マイクロメートル未満、及び10パーセントの約1マイクロメートル未満の粒径を有する。
【0099】
特定の実施形態では、濃縮剤粒子はパーライト粒子を含む。パーライトは、約70〜75%の二酸化ケイ素及び12〜15%の酸化アルミニウム、並びに酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化鉄、酸化マグネシウム、及び酸化カルシウムを含む、より少量の他の金属酸化物を含有する、自然に形成される非晶質火山ガラスである。パーライトが熱によって膨張させられると、それは軽量骨材を形成する。好適なパーライト粒子の例としては、Dicaperl Minerals Corporation(Crawfordsville,IN)から全て市販されている、4106グレード材料、4156グレード材料及び476グレード材料が挙げられる。
【0100】
特定の実施形態では、濃縮剤粒子は、グアニジン官能化金属ケイ酸塩粒子、グアニジン官能化珪藻土粒子、又はグアニジン官能化パーライト粒子を含む。グアニジン官能化粒子は、例えば、本願と同一譲受人に譲渡された国際出願PCT/US2014/040861号(Kshirsagarら)に開示されている方法に従って作製することができる。グアニジン官能化金属ケイ酸塩粒子、グアニジン官能化珪藻土粒子、又はグアニジン官能化パーライト粒子は、少なくとも1つのグアニジン含有リガンドを含む。グアニジン含有リガンドは、金属ケイ酸塩又はパーライトの粒子を、式1に示される構造を有するグアニジン含有シランで修飾することによって、形成される。
【化1】
【0101】
式1において、Siは、ケイ素原子であり、Gは、式−NH−C(=NH)−NH
2で表されるグアニジン基を示す。Yは、一端においてケイ素原子と共有結合し、他端においてG基と共有結合する2価の基である。各R
a基は、存在する場合には、独立してアルキル、アラルキル、又はアリール基であり、ケイ素原子と結合している。各Xは、ケイ素原子と共有結合した脱離基であり、かつ独立してアルコキシ又はアシルオキシであり、nは、0、1、又は2である。典型的なアルキレンは、2価の基の末端原子を含めて、最大20個、最大16、12、10、8、7、6、5、4個、又は最大3個の炭素原子、又は2個の炭素原子を有していてよい。特定の実施形態においては、Yは、3〜6個の炭素原子を有するアルキレンを含む2価の基である。好ましい一実施形態においては、Yは、3個の炭素原子を有する2価の基(すなわち、プロピル)である。
【0102】
式1においては、各脱離基Xは、独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9個、若しくは最大10個の炭素原子を有するアルコキシ基であるか、又は2個、若しくは3、4、5、6、7、8、9個、若しくは最大10個の炭素原子を有するアシルオキシ基であり、アルコキシ基、又はアシルオキシ基は、酸素原子を介してケイ素原子と結合している。
【0103】
一部の実施形態では、nは0である。nが0のとき、R
a基は存在しないため、式1は、式2に示すように、より単純化することができる(ここで、Si、G、Y、及びXは、式1で定義したとおりである)。
【化2】
【0104】
式1(又は式2)のシランが金属ケイ酸塩、珪藻土、又はパーライト粒子の表面上の−OH基と反応する際、少なくとも1つのX脱離基が、ケイ素原子と金属ケイ酸塩又はパーライト粒子の表面上の酸素原子との間の共有結合により置き換えられる。式1で表される一般形式のうち、n=0(すなわち、式2の場合)の場合の、特定の例示的なグアニジン含有リガンドを含む、グアニジン官能化金属ケイ酸塩、珪藻土又はパーライト粒子の実施形態を、式3に示す(式3の円は金属ケイ酸塩又はパーライト粒子を表す)。
【化3】
【0105】
式3は、nが3であり、かつYが3個の炭素原子を有するアルキレンである2価の基である場合の特定の実施形態を表すものであることが理解されるであろう。式1〜3の各々では、グアニジン基のイオン化状態は省略されているが、様々な環境により、例えば、グアニジン基が存在する液体媒体のpHに応じて、このようなグアニジン基は、荷電していてもよいし、荷電していなくてもよい(例えば、プロトン化していてもよいし、脱プロトン化していてもよい)ことが理解されるであろう。
【0106】
例えば、グアニジン含有前駆体のSiに結合した加水分解性基を粒子のヒドロキシル基と反応させることにより、リガンドの酸素(単数又は複数)と粒子との間に、共有結合(単数又は複数)を簡便に得ることができる。式3の例示的な構造では、結合したこのような酸素原子が3つ示されている(すなわち、式1においてn=3)が、様々な実施形態において、結合したこのような酸素原子は1つであっても、2つであっても、又は3つであってもよいことが理解されるであろう。ケイ素原子に結合するこのような酸素原子が3つ未満の場合、ケイ素原子には他の置換基が存在し得る(例えば、粒子と結合しない置換基など、この置換基は式1に示されていない)。例えば、グアニジン含有リガンドは、2つ以上のグアニジン含有リガンド前駆体間で形成されるSi−O結合に起因する、Si−O−Si(すなわち、シロキサン)基の形成を含むポリマー構造を含み得る。理論に束縛されるものではないが、粒子に付加されたより複雑なグアニジン含有リガンド構造を生じさせるために、Si−O−Si基は、追加された水、若しくは他の水性溶媒、又はSi−O−R基内の結合を加水分解することができる他の薬剤の存在下で形成され得ると考えられる。
【0107】
重合したグアニジン含有リガンドのネットワークは、金属ケイ酸塩、珪藻土、又はパーライト粒子の表面上のコーティングを形成することができる。一部の実施形態においては、金属ケイ酸塩、珪藻土、又はパーライト粒子の表面上への窒素含有グアニジン基の付与を増加させる手段として、(例えば、重合したグアニジン含有リガンド内に少なくとも1つのSi−O−Si基を有する)重合したグアニジン含有リガンドにより官能化された粒子を得ることが望ましい場合がある。少なくともこれらの種類の重合では、金属ケイ酸塩、珪藻土、又はパーライト粒子の表面上への窒素含有グアニジン基の付与により、表面窒素含有量は、例えば、X線光電子分光法により測定可能な場合に、1〜10原子パーセントの水準に達し得ると考えられる。
【0108】
本開示のグアニジン官能化粒子は、金属ケイ酸塩粒子、珪藻土粒子、及びパーライト粒子を含む。有用な金属ケイ酸塩としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、チタン、及び同様のもの(好ましくは、マグネシウム及びアルミニウム)、並びにこれらの組み合わせなどの金属のケイ酸塩類が挙げられる。好ましくは、少なくとも部分的に溶融した粒子の形態の非晶質金属ケイ酸塩である。特定の実施形態においては、非晶質の、球状化された金属ケイ酸塩がより好ましく、また、非晶質の、球状化されたケイ酸マグネシウムが更により好ましい。特定の実施形態においては、非晶質ケイ酸アルミニウムがより好ましい。ケイ酸金属塩は既知であり、公知の方法によって化学的に合成するか、又は天然に生じる未加工鉱石の採鉱及び処理によって入手することができる。ケイ酸マグネシウム粒子などの、金属ケイ酸塩粒子は、所望の数のグアニジン含有リガンドを粒子に共有結合することを可能にするために十分な表面ヒドロキシル基(典型的には、Si−OH基)を有する。有用なパーライトとしては、Dicaperl Minerals Corporation(Crawfordsville,IN)からの4106、4156、及び476グレード材料が挙げられる。有用な珪藻土粒子は天然源から得ることができ、Alfa Aesar(A Johnson Matthey Company,Ward Hill,MA)又はDicaperl Minerals Corporation(Crawfordsville,IN)から市販されている。
【0109】
本開示の不織布物品において使用されるグアニジン官能化金属ケイ酸塩、珪藻土、又はパーライト粒子は、本質的に、繊維とブレンドして本開示の不織布物品を形成することに適した、任意の粒子形態(好ましくは、比較的乾燥しているか、又は揮発性成分を含まない形態)で使用することができる。好ましくは、グアニジン官能化粒子は、粉末の形態で使用される。有用な粉末としては、マイクロ粒子(好ましくは、約1マイクロメートル(より好ましくは、約2マイクロメートル、更により好ましくは、約3マイクロメートル、最も好ましくは、約4マイクロメートル)〜約100マイクロメートル(より好ましくは、約50マイクロメートル、更により好ましくは、約25マイクロメートル、最も好ましくは、約15又は20マイクロメートルの範囲内の粒径を有するマイクロ粒子。ここで、任意の下限を、以上において言及されたとおりの、範囲の任意の上限と対にすることができる)を含むものが挙げられる。
【0110】
XPSは、固体表面上に存在する元素濃度及び化学(酸化状態及び/又は官能基)濃度に関する情報を提供することが可能な技術である。XPSは、典型的には、試験片表面上の最も外側の3〜10ナノメートル(nm)の分析を提供する。XPSは、水素及びヘリウムを除き、周期表中の全ての元素に対して感度がよく、ほとんどの種について0.1〜1原子パーセントの濃度範囲の検出限界を有する。一部の場合、例えばCM−111粒子の場合は、XPSの好ましい表面組成評価条件には、受光立体角±10度で試料表面に対して測定される取り出し角度90度が含まれ得る。当業者であれば、本開示の粒子の分析のために好適な機器のセッティングを選択できる。
【0111】
本開示の実施形態では、グアニジン官能化金属ケイ酸塩粒子は、XPSで測定した際に、表面窒素含有量が1原子パーセント〜20原子パーセントの範囲内である。特定の実施形態においては、グアニジン官能化ケイ酸金属塩粒子は、XPSで測定した際の表面窒素含有量が、少なくとも1原子パーセント、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、又は少なくとも5原子パーセントである。特定の実施形態においては、グアニジン官能化ケイ酸金属塩粒子は、XPSで測定した際の表面窒素含有量が、最大20原子パーセント、最大15、最大10、最大9、最大8、最大7、又は最大6原子パーセントである。XPSによって測定された際の、グアニジン官能化金属ケイ酸塩粒子の表面窒素含有量は、これらの下限値と上限値との、これらの値を含む任意の組み合わせであり得る。当業者であれば、特定の実施形態においては、所望の用途に応じて、これらの範囲内にてより高い又はより低い表面窒素含有量を選択することが好ましい場合があることを理解するであろう。本開示に係る使用に適したグアニジン官能化パーライト粒子としては、パーライトを含み、且つXPSによって決定された際に、2よりも大きく、且つ約12以下である表面窒素含有量を有するものが挙げられる。本開示に係る使用に適したグアニジン官能化珪藻土粒子としては、珪藻土を含み、且つ2よりも大きく、且つ約12以下である表面窒素含有量を有する表面組成を有するものが挙げられる。
【0112】
一部の実施形態においては、グアニジン官能化ケイ酸マグネシウム粒子が特に好ましい。本開示に係る使用に適したグアニジン官能化ケイ酸マグネシウム粒子としては、非晶質ケイ酸マグネシウムを含み、且つX線光電子分光法(「XPS」、化学分析用電子分光法(Electron Spectroscopy forChemical Analysis、「ESCA」)としても知られる)によって決定された際に、0.01よりも大きく、且つ約0.5以下(好ましくは、約0.4以下、より好ましくは、約0.3以下、最も好ましくは、約0.2以下)の金属原子対ケイ素原子の比を有する表面組成を有するものが挙げられる。一部の実施形態においては、グアニジン官能化ケイ酸アルミニウム粒子が特に好ましい。本開示に係る使用に適したグアニジン官能化ケイ酸アルミニウム粒子としては、非晶質ケイ酸アルミニウムを含み、且つXPS(ESCAとしても知られる)によって決定した際に、6.7よりも大きく、且つ約17.3以下の金属原子対ケイ素原子の比を有する表面組成を有するものが挙げられる。一部の実施形態では、特に好ましいのは、グアニジン官能化パーライト粒子である。
【0113】
一実施形態では、濃縮剤粒子は、珪藻土の粒子、例えば、表面修飾珪藻土の粒子を含む。珪藻土(別名キーゼルグール)は、海生微生物綱である珪藻の残存物から生じた、天然のシリカ物質である。それゆえ、それは天然源から得ることができ、(例えば、Alfa Aesar,A Johnson Matthey Company,Ward Hill,MAから)市販もされている。珪藻土粒子は一般に、対称な立方体、円筒形、球形、プレート状、矩形の箱形、及び同様の形態の、小さな開放網状構造を含む。これらの粒子内の細孔構造は概して著しく一様であることができる。
【0114】
珪藻土は、原材料として、粉砕した材料として、又は精製及び所望により粉砕した粒子として、本発明のプロセスの実施に使用することができる。好ましくは珪藻土は、直径約1マイクロメートル〜約50マイクロメートル(より好ましくは約3マイクロメートル〜約10マイクロメートル)の範囲にある寸法の粉砕粒子形状である。珪藻土は、任意選択的に、有機残渣のあらゆる痕跡を除去するために、使用前に熱処理することができる。加熱処理を使用する場合は、高温になるほど好ましくない結晶シリカが高比率で生じ得るため、加熱処理は500℃以下で行うことが望ましい。
【0115】
表面修飾珪藻土は、その表面の少なくとも一部分上に、二酸化チタン、酸化第二鉄、微細ナノスケール金若しくは白金、又はこれらの組み合わせを含む表面処理剤を有する珪藻土を含む。有用な表面修飾剤としては、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、少なくとも1種類の金属酸化物(好ましくは、二酸化チタン、酸化第二鉄、若しくはこれらの組み合わせ)と組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、少なくとも1種類の他の(即ち、二酸化チタン以外の)金属酸化物と組み合わせた二酸化チタン、及び同様のもの、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい表面修飾剤としては、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、少なくとも酸化第二鉄若しくは二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、少なくとも酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。表面修飾珪藻土は、例えば、本願と同一譲受人に譲渡された国際公開第2009/046191号(Kshirsagarら)に開示されている方法に従って作製することができる。
【0116】
一実施形態では、濃縮剤粒子はγ−FeO(OH)(鱗鉄鉱としても知られている)の粒子を含む。このような濃縮剤粒子の具体例が、本願と同一譲受人に譲渡された国際公開第2009/046183号(Kshirsagarら)に開示されている。γ−FeO(OH)粒子は、人間の細菌感染において重大な懸念となり得る、グラム陰性細菌を捕捉するうえで他の鉄含有濃縮剤粒子よりも驚くほど効果的であることが見いだされている。
【0117】
γ−FeO(OH)は既知のものであり、公知の方法によって(例えば、米国特許第4,729,846号(Matsui ら)(この記載内容は本明細書において参照により組み込まれている)において磁気テープ製造を目的として記載されているように、中性又は弱酸性pHにおける水酸化第一鉄の酸化によって)化学的に合成することができる。γ−FeO(OH)は(例えば、Alfa Aesar,A Johnson Matthey Company,Ward Hill,Mass.、及びSigma−Aldrich Corporation,St.Louis,Mo.から)市販もされている。
【0118】
一実施形態では、濃縮剤粒子はシリカの粒子を含む。濃縮剤シリカ粒子の具体例は、PolySciences,Inc.,(Warrington,PA)から市販されている約2.5マイクロメートルの平均直径を有する二酸化ケイ素マイクロスフェアである。
【0119】
一実施形態では、濃縮剤粒子は金属炭酸塩の粒子を含む。濃縮剤金属炭酸塩粒子の具体例は、Sigma−Aldrich,(St.Louis,MO)から市販されている2.5〜10マイクロメートルの直径範囲を有する炭酸カルシウム粒子などの、炭酸カルシウムである。
【0120】
一実施形態では、濃縮剤粒子は金属リン酸塩の粒子を含む。濃縮剤金属リン酸塩粒子の具体例は、ヒドロキシアパタイト、Sigma−Aldrich、(St.Louis,MO)及びBioRad(Hercules,CA)から市販されている2〜8マイクロメートルの粒子サイズを有するこのようなタイプ1ヒドロキシアパタイト粒子である。
【0121】
1つの特定の方法では、不織布物品は、湿式積層又は「湿式載置」プロセスを使用して調製される。このプロセスでは、(a)複数の繊維、(b)複数の濃縮剤粒子、(c)ポリマーバインダー繊維(例えば、2成分繊維)、(d)並びに水、水混和性の有機溶剤、若しくはこれらの混合物などの分散用液を含有する分散系が形成される。繊維及び濃縮剤粒子は分散用液中でともに分散させることができる。幾つかの実施形態において、繊維(例えば、疎水性繊維)は、添加剤、表面処理剤、又は化学基を有し、分散用液中での繊維の分散を容易にする。例えば、ポリオレフィン系繊維は、無水マレイン酸若しくは無水コハク酸官能基を有することができるか、又はポリエチレン系繊維を調製するための溶解プロセス中に、好適な界面活性剤を添加することができる。
【0122】
湿式載置プロセスは追加的に脱水を含み、それに続き、脱水を仕上げ、任意選択的に、繊維の一部を一体に結合するための加熱を含む。
【0123】
1種類以上の補助剤又は添加剤が、この種の不織布物品を調製する際に任意選択的に使用される。有用な補助剤としては、加工助剤、界面活性剤、溶剤、分散剤、凝集助剤、歩留まり向上剤、又は結果として得られる不織布物品の全体的性能を向上させることができる他の材料が挙げられる。使用される際には、このような補助剤の量は、例えば、不織布物品(例えば、繊維及び濃縮剤粒子)の総乾燥重量に基づいて、最大5重量パーセント、最大4重量パーセント、最大3重量パーセント、最大1重量パーセント、又は最大0.5重量パーセントの量で存在することができる。不織布物品中に含まれ得る濃縮剤粒子の量を最大限にするために、補助剤の総量は、典型的には、可能な限り少量に抑えられるように選択される。
【0124】
もう1つの特定の湿式載置プロセスでは、分散用液(例えば、水、水混和性の有機溶剤、例えばアルコール、又はこれらの混合物)の存在下で繊維(例えば、短繊維)が容器内でブレンドされて、スラリーを形成することができる。スラリーが形成された後、濃縮剤粒子、及び任意選択的な沈降剤(例えば、ミョウバンなどのpH調整剤)がスラリーに添加され得る。
【0125】
湿式載置プロセスが、当技術分野において既知のハンドシート法(hand−sheet method)を用いて実行される場合、構成成分(即ち、繊維、及び濃縮剤粒子)を分散系に添加する順序が濃縮デバイスの最終的な性能に重大な影響を及ぼすことは見いだされなかった。形成後、分散混合物は、型に注がれてもよく、この型の底部はスクリーンで被覆されてもよい。分散用液は、(濡れたシートの形態の)混合物からスクリーンを通して排水させることができる。十分な液体が流出した後に、通常、この濡れたシートを成形型から取り外して、加圧、加熱、又はこの2つの組み合わせにより乾燥させることができる。一般的に、圧力は、約300〜約600kPaの範囲内である。濡れたシートを乾燥させるために、90℃〜200℃の範囲内、100℃〜175℃の範囲内、100℃〜150℃の範囲内、又は90℃〜120℃の範囲内の温度を用いることができる。乾燥によって、多くの場合、全ての又は大部分の分散用液(例えば、分散液を形成するために加えられた分散液の量に基づいて最大85重量%、最大90重量%、最大95重量%、最大98重量%、又は最大99重量%の分散用液)が除去される。
【0126】
結果として得られる不織布物品は、少なくとも0.1ミリメートル、少なくとも0.2ミリメートル、少なくとも0.5ミリメートル、少なくとも0.8ミリメートル、少なくとも1ミリメートル、少なくとも2ミリメートル、少なくとも4ミリメートル、又は少なくとも5ミリメートルの平均厚さを有する乾燥シートである。平均厚さは、多くの場合、最大20ミリメートル、最大15ミリメートル、最大12ミリメートル、又は最大10ミリメートルである。所望される場合、カレンダ加工を用いることにより、乾燥シートの加圧又は溶着を更に行うことが可能である。不織布物品(シート材料の形態のもの)の坪量は、約100〜約350グラム/平方メートル(g/m
2)の範囲内、好ましくは、約250g/m
2などの、約200〜約300g/m
2の範囲内であることができる。
【0127】
不織布物品において、濃縮剤粒子は、利用される繊維の性質に応じて、化学的相互作用(例えば、化学結合)又は物理的相互作用(例えば、吸着若しくは機械的閉じ込め)のいずれかにより、繊維性多孔質マトリックス内に閉じ込めることができる。濃縮剤粒子は、多くの場合、不織布物品内の繊維性多孔質マトリックス全体に本質的に均一に分散されることが好ましい。
【0128】
概して、乾燥不織布物品の平均細孔径は、走査電子顕微鏡(scanningelectron microscopy、SEM)で測定した場合、0.1〜10マイクロメートルの範囲内であり得る。20〜80体積パーセントの範囲内又は40〜60体積パーセントの範囲内の空隙容量が有用であり得る。乾燥不織布物品の多孔性は、繊維混合物中に直径又は剛性がより大きい繊維を使用することによって変更する(増加させる)ことができる。
【0129】
有利に、本開示の少なくとも特定の態様に係る不織布物品は、不織布物品への損傷を最小限にとどめる程度から損傷を全く伴わない程度で滅菌プロセスを受けることができる。好適な滅菌方法は熟練した施術者に知られており、例えば、限定するものではないが、摂氏121度の温度における少なくとも15分間の水蒸気処理、エチレンオキシドへの曝露、及び不織布物品のガンマ線照射が挙げられる。
【0130】
デバイス、方法、キット、及びシステムを含む様々な実施形態が提供される。
【0131】
実施形態1は、先端部分を含むフィルタホルダ、フィルタホルダの先端部分上に配置された不織布物品、及びフィルタホルダに取り付けられたアダプタであって、開口部を画定するアダプタを備えるデバイスである。
【0132】
実施形態2は、アダプタが、アダプタの内表面上に形成された少なくとも1つのリブを更に含む、実施形態1に記載のデバイスである。
【0133】
実施形態3は、フィルタホルダとアダプタとが一体的に形成されている、実施形態1又は実施形態2に記載のデバイスである。
【0134】
実施形態4は、フィルタホルダとアダプタとが着脱可能である、実施形態1又は実施形態2に記載のデバイスである。
【0135】
実施形態5は、フィルタホルダとアダプタとが直列に取り付けられている、実施形態1〜4のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0136】
実施形態6は、デバイスがY字形構成を備える、実施形態1〜4のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0137】
実施形態7は、デバイスが、フィルタホルダ内に配置され、先端部分に取り付けられている柄を更に備える、実施形態6に記載のデバイスである。
【0138】
実施形態8は、デバイスが、Y字形構成を受け入れるように構成されたハウジングを更に備え、ハウジングは廃棄物収集容器及び通気孔を含む、実施形態6又は実施形態7に記載のデバイスである。
【0139】
実施形態9は、不織布物品がアダプタから遠位側の先端部分上に配置されている、実施形態1〜8のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0140】
実施形態10は、不織布物品が、管形状を有するように構成されている、実施形態1〜9のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0141】
実施形態11は、フィルタホルダが、長さ及び幅を備える管状形状を備え、長さは幅よりも少なくとも3倍長い、実施形態1〜10のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0142】
実施形態12は、アダプタが少なくとも10ミリリットルの容積部を備える、実施形態1〜11のいずれか1つ記載のデバイスである。
【0143】
実施形態13は、アダプタが少なくとも35ミリメートルの長さを備える、実施形態1〜12のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0144】
実施形態14は、キュベットを更に備え、フィルタホルダの先端部分が、キュベット内に挿入されるように構成されている、実施形態1〜13のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0145】
実施形態15は、キュベット内に配置された少なくとも1種類の検出試薬を更に備える、実施形態14に記載のデバイスである。
【0146】
実施形態16は、フィルタホルダが、フィルタホルダ内に配置されたスリーブを更に含む、実施形態1〜15のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0147】
実施形態17は、スリーブがフィルタホルダ内に摺動自在に配置されている、実施形態16に記載のデバイスである。
【0148】
実施形態18は、アダプタが、開口部を画定するエラストマー部分を含む、実施形態1〜17のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0149】
実施形態19は、不織布物品が繊維性多孔質マトリックスを含む、実施形態1〜18のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0150】
実施形態20は、不織布物品が、繊維性多孔質マトリックス内に捕らえられた複数の濃縮剤粒子を更に含む、実施形態19に記載のデバイスである。
【0151】
実施形態21は、濃縮剤粒子が、非晶質金属ケイ酸塩類、グアニジン官能化金属ケイ酸塩類、珪藻土、表面修飾珪藻土、グアニジン官能化珪藻土、γ−FeO(OH)、金属炭酸塩類、金属リン酸塩類、シリカ、パーライト、グアニジン官能化パーライト、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態20に記載のデバイスである。
【0152】
実施形態22は、繊維性多孔質マトリックスが、非捲縮ポリマー繊維を含む不織布繊維層である、実施形態19〜21のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0153】
実施形態23は、差圧源を更に備える、実施形態1〜22のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0154】
実施形態24は、差圧源がシリンジ、ポンプ、又はアスピレータを含む、実施形態23に記載のデバイスである。
【0155】
実施形態25は、フィルタホルダ内に挿入されるように構成された柄を更に備え、柄は、柄の端部から距離を置いて配置された特徴部又は標示を含む、実施形態1〜6又は8〜24のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0156】
実施形態26は、流体試料中の少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を検出する方法である。本方法は、デバイスを入手する工程と、有腔又は有管デバイスをデバイスと流体連通させて配置する工程と、有腔又は有管デバイスからの少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を含有する疑いがある流体試料をデバイスに通過させ、不織布物品と接触させる工程とを含む。本方法は、不織布物品を少なくとも1種類の検出試薬と接触させる工程と、不織布物品によって濃縮された少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体の存在を検出する工程とを更に含む。デバイスは、1)先端部分を含むフィルタホルダ、2)フィルタホルダの先端部分上に配置された不織布物品、及び3)フィルタホルダに取り付けられたアダプタであって、開口部を画定するアダプタを備える。
【0157】
実施形態27は、流体試料が有腔又は有管デバイスからのすすぎ液を含む、実施形態26に記載の方法である。
【0158】
実施形態28は、不織布物品を少なくとも1種類の検出試薬と接触させる前に、有腔又は有管デバイスが、デバイスと流体連通した状態から取り外され、柄がフィルタホルダ内に挿入され、フィルタホルダの先端部分に取り付けられる、実施形態26又は実施形態27に記載の方法である。
【0159】
実施形態29は、不織布物品を少なくとも1種類の検出試薬と接触させる工程が、少なくとも1種類の検出試薬に対する不織布物品の上下又は前後運動を含む、実施形態26〜28のいずれか1つに記載の方法である。
【0160】
実施形態30は、不織布物品を少なくとも1種類の検出試薬と接触させる工程が、少なくとも1種類の検出試薬及び不織布物品をボルテックスする工程を含む、実施形態26〜29のいずれか1つに記載の方法である。
【0161】
実施形態31は、不織布物品を少なくとも1種類の検出試薬と接触させる工程が、不織布物品及び少なくとも1種類の検出試薬の手動攪拌を含む、実施形態26〜30のいずれか1つに記載の方法である。
【0162】
実施形態32は、流体試料が、差圧を用いてデバイスに通過させられる、実施形態26〜31のいずれか1つに記載の方法である。
【0163】
実施形態33は、差圧が、シリンジ、ポンプ、又はアスピレータを用いて提供される、実施形態32に記載の方法である。
【0164】
実施形態34は、差圧が正圧を含む、実施形態26〜33のいずれか1つに記載の方法である。
【0165】
実施形態35は、差圧が陰圧を含む、実施形態26〜33のいずれか1つに記載の方法である。
【0166】
実施形態36は、有腔又は有管デバイスが、アダプタの開口部を通して有腔又は有管デバイスを挿入することによって、デバイスと流体連通させて配置され、有腔又は有管デバイスの長さの少なくとも25ミリメートルがアダプタの内部に配置される、実施形態26〜35のいずれか1つに記載の方法である。
【0167】
実施形態37は、デバイスが、少なくとも1種類の検出試薬を包含するキュベットを更に備え、キュベットは、不織布物品によって濃縮された少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体の存在を検出する前に、照度計内に挿入される、実施形態26〜36のいずれか1つに記載の方法である。
【0168】
実施形態38は、デバイスに入り、デバイスから出ていく流体試料の圧力差が20キロパスカル以下である、実施形態26〜37のいずれか1つに記載の方法である。
【0169】
実施形態39は、デバイスを通過する流体試料の流量が少なくとも2ミリリットル/分であり、デバイスに入り、デバイスから出ていく流体試料の圧力差が20キロパスカル以下である、実施形態26〜38のいずれか1つに記載の方法である。
【0170】
実施形態40は、有腔又は有管デバイスが、再処理を受ける医療用デバイスを含む、実施形態26〜39のいずれか1つに記載の方法である。
【0171】
実施形態41は、有腔又は有管デバイスが、軟性内視鏡、半硬性内視鏡、硬性内視鏡、腹腔鏡検査機器、又は有管ロボット手術機器を含む、実施形態26〜40のいずれか1つに記載の方法である。
【0172】
実施形態42は、デバイスと、少なくとも1種類の検出試薬を包含するキュベットと、フィルタホルダ内に挿入されるように構成された柄とを備えるキットである。デバイスは、1)先端部分を含むフィルタホルダ、2)フィルタホルダの先端部分上に配置された不織布物品、及び3)フィルタホルダに取り付けられたアダプタであって、開口部を画定するアダプタを含む。
【0173】
実施形態43は、デバイスを保持するように構成されたスタンドを更に備える、実施形態42に記載のキットである。
【0174】
実施形態44は、キットを用いて流体試料中の少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を検出するための使用説明書を更に備える、実施形態42又は実施形態43に記載のキットである。
【0175】
実施形態45は、シリンジ、ポンプ、又はアスピレータを含む差圧源を更に備える、実施形態42〜44のいずれか1つに記載のキットである。
【0176】
実施形態46は、デバイスと、少なくとも1種類の検出試薬を包含するキュベットと、フィルタホルダ内に挿入されるように構成された柄と、照度計とを備えるシステムである。デバイスは、1)先端部分を含むフィルタホルダ、2)フィルタホルダの先端部分上に配置された不織布物品、及び3)フィルタホルダに取り付けられたアダプタであって、開口部を画定するアダプタを備える。
【0177】
実施形態47は、有腔又は有管デバイスを更に備える、実施形態46に記載のシステムである。
【0178】
実施形態48は、システムを用いて流体試料中の少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を検出するための使用説明書を更に備える、実施形態46又は実施形態47に記載のシステムである。
【0179】
実施形態49は、デバイスを保持するように構成されたスタンドを更に備える、実施形態46〜48のいずれか1つに記載のシステムである。
【0180】
実施形態50は、シリンジ、ポンプ、又はアスピレータを含む差圧源を更に備える、実施形態46〜49のいずれか1つに記載のシステムである。
【0181】
実施形態51は、流体試料中の少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を検出する方法である。本方法は、Y字形構成を備えるデバイスを入手する工程を含む。本方法は、有腔又は有管デバイスをデバイスと流体連通させて配置する工程と、有腔又は有管デバイスからの少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を含有する疑いがある流体試料をデバイスに通過させ、不織布物品と接触させる工程とを更に含む。本方法は、不織布物品を少なくとも1種類の検出試薬と接触させる工程と、不織布物品によって濃縮された少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体の存在を検出する工程とを追加的に含む。デバイスは、1)先端部分を含むフィルタホルダ、2)フィルタホルダの先端部分上に配置された不織布物品、3)フィルタホルダを保持するように構成された容器、及び4)容器にY字形構成で取り付けられたアダプタであって、開口部を画定するアダプタを備える。
【0182】
実施形態52は、流体試料が有腔又は有管デバイスからのすすぎ液を含む、実施形態51に記載の方法である。
【0183】
実施形態53は、デバイスが、フィルタホルダに一体的に取り付けられた柄を更に備える、実施形態51又は実施形態52に記載の方法である。
【0184】
実施形態54は、不織布物品を少なくとも1種類の検出試薬と接触させる工程が、少なくとも1種類の検出試薬に対する不織布物品の上下又は前後運動を含む、実施形態51〜53のいずれか1つに記載の方法である。
【0185】
実施形態55は、不織布物品を少なくとも1種類の検出試薬と接触させる工程が、少なくとも1種類の検出試薬及び不織布物品をボルテックスする工程を含む、実施形態51〜54のいずれか1つに記載の方法である。
【0186】
実施形態56は、不織布物品を少なくとも1種類の検出試薬と接触させる工程が、不織布物品及び少なくとも1種類の検出試薬の手動攪拌を含む、実施形態51〜55のいずれか1つに記載の方法である。
【0187】
実施形態57は、流体試料が、差圧を用いてデバイスに通過させられる、実施形態51〜56のいずれか1つに記載の方法である。
【0188】
実施形態58は、差圧が、シリンジ、ポンプ、又はアスピレータを用いて提供される、実施形態57に記載の方法である。
【0189】
実施形態59は、差圧が正圧を含む、実施形態51〜58のいずれか1つに記載の方法である。
【0190】
実施形態60は、差圧が陰圧を含む、実施形態51〜58のいずれか1つに記載の方法である。
【0191】
実施形態61は、有腔又は有管デバイスが、アダプタの開口部を通して有腔又は有管デバイスを挿入することによって、デバイスと流体連通させて配置され、有腔又は有管デバイスの長さの少なくとも25ミリメートルがアダプタの内部に配置される、実施形態51〜60のいずれか1つに記載の方法である。
【0192】
実施形態62は、フィルタホルダを、少なくとも1種類の検出試薬を包含するキュベット内に挿入する工程を更に含み、キュベットは、不織布物品によって濃縮された少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体の存在を検出する前に、照度計内に挿入される、実施形態51〜61のいずれか1つに記載の方法である。
【0193】
実施形態63は、デバイスに入り、デバイスから出ていく流体試料の圧力差が20キロパスカル以下である、実施形態51〜62のいずれか1つに記載の方法である。
【0194】
実施形態64は、デバイスを通過する流体試料の流量が少なくとも2ミリリットル/分であり、デバイスに入り、デバイスから出ていく流体試料の圧力差が20キロパスカル以下である、実施形態51〜63のいずれか1つに記載の方法である。
【0195】
実施形態65は、有腔又は有管デバイスが、再処理を受ける医療用デバイスを含む、実施形態51〜64のいずれか1つに記載の方法である。
【0196】
実施形態66は、有腔又は有管デバイスが、軟性内視鏡、半硬性内視鏡、硬性内視鏡、腹腔鏡検査機器、又は有管ロボット手術機器を含む、実施形態51〜65のいずれか1つに記載の方法である。
【0197】
実施形態67は、デバイスが、フィルタホルダ及びアダプタの各々を保持するように構成されたハウジングを更に備える、実施形態51〜66のいずれか1つに記載の方法である。
【0198】
実施形態68は、Y字形構成を備えるデバイス、少なくとも1種類の検出試薬を包含するキュベット、及びフィルタホルダ内に挿入されるように構成された柄を備えるキットである。デバイスは、1)先端部分を含むフィルタホルダ、2)フィルタホルダの先端部分上に配置された不織布物品、3)フィルタホルダを保持するように構成された容器、及び4)容器にY字形構成で取り付けられたアダプタであって、開口部を画定するアダプタを備える。
【0199】
実施形態69は、フィルタホルダ及びアダプタの各々を保持するように構成されたハウジングを更に備える、実施形態68に記載のキットである。
【0200】
実施形態70は、キットを用いて流体試料中の少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を検出するための使用説明書を更に備える、実施形態68又は実施形態69に記載のキットである。
【0201】
実施形態71は、シリンジ、ポンプ、又はアスピレータを含む差圧源を更に備える、実施形態68〜70のいずれか1つに記載のキットである。
【0202】
実施形態72は、Y字形構成を備えるデバイス、少なくとも1種類の検出試薬を包含するキュベット、フィルタホルダ内に挿入されるように構成された柄、及び照度計を備えるシステムである。デバイスは、1)先端部分を含むフィルタホルダ、2)フィルタホルダの先端部分上に配置された不織布物品、3)フィルタホルダを保持するように構成された容器、及び4)容器にY字形構成で取り付けられたアダプタであって、開口部を画定するアダプタを備える。
【0203】
実施形態73は、有腔又は有管デバイスを更に備える、実施形態72に記載のシステムである。
【0204】
実施形態74は、システムを用いて流体試料中の少なくとも1種類の微生物株又は標的細胞検体を検出するための使用説明書を更に備える、実施形態72又は実施形態73に記載のシステムである。
【0205】
実施形態75は、フィルタホルダ及びアダプタの各々を保持するように構成されたハウジングを更に備える、実施形態72〜74のいずれか1つに記載のシステムである。
【0206】
実施形態76は、シリンジ、ポンプ、又はアスピレータを含む差圧源を更に備える、実施形態72〜75のいずれか一項に記載のシステムである。
【実施例】
【0207】
特に指示がない限り、実施例において使用される全ての化学物質はSigma−Aldrich Corp.(Saint Louis、MO)から得ることができる。本明細書において別途記載のない限り、全ての微生物学的な補給品及び試薬は、Sigma−Aldrich又はVWRのいずれかから標準製品として購入されたものである。
【表1】
【0208】
か焼ケイ酸マグネシウムを含有する不織繊維性多孔質マトリックスの調製
実施例1、2及び3:下表1に示すようなそれぞれ異なる量の繊維1、繊維2、繊維3、及び繊維4を混合することにより、3種類の繊維プレミックスを調製した。4Lのブレンダー(VWR(Radnor,PA)より「WARING COMMERCIAL HEAVY DUTY BLENDER、モデル37BL84」の商品名で販売されるもの)中で、繊維を3リットルの冷たい脱イオン水に加え、低速で30秒間ブレンドした。この混合物を塊(nit)又は凝集(clump)のない均一な繊維分散体となっているかどうかについて検査した。添加剤粒子、CM−111を更に1Lの脱イオン水と共に加え、低速で15秒間混合した。
【0209】
底部の細かいメッシュスクリーンとドレイン弁を備える、約30センチメートル(12インチ)平方及び高さ30センチメートル(〜12インチ)という寸法の箱を有する、パッド作製装置(Williams Apparatus,Watertown,NYから商品名「TAPPI」で入手)を使用して、不織繊維性多孔質フェルトを調製した。このスクリーン上に、〜14インチ(36cm)×12インチ(30cm)のポリエチレンスパンボンド(Fiberweb,Cincinnati,OHより入手したPET Lutradur7240)をスクリーン上のスクリムとして堆積させた。この箱のスクリーンの上方約1センチメートルの高さにまで水道水を満たした。各繊維及び粒子混合物を箱に注ぎ入れ、弁を直ちに開くと真空が形成されこれにより箱から水が引き出された。
【0210】
繊維性不織布フェルトを各々、装置から、20センチメートル平方の吸取紙のシート(96ポンド白色紙、Anchor Paper,St.Paul,MNから入手)上に移した。各フェルトを2〜4層の吸取紙の間に挟み、余分な水を吸い取らせた。続いて、プレス後のフェルトを吸取紙の新たなシート上に移し、110℃に設定したオーブン(SPX Thermal Product Solutions,White Deer,PAから、商品名「BLUE M STABIL−THERM OVEN,MODEL OV−560A2」で入手)内に約3時間置いて残りの水分を除去し、不織繊維性多孔質マトリックスを形成した。実施例1及び2の結果として得られた繊維性多孔質マトリックスは厚さ約0.8〜1ミリメートルであった。実施例3の繊維性多孔質マトリックスは厚さ約0.8〜0.9ミリメートルであった。
【0211】
図1〜3は、それぞれ、実施例1〜3の例示的な不織布物品の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【表2】
【0212】
グアニル化ケイ酸マグネシウムを含有する不織繊維性多孔質マトリックスの調製
実施例4、5、6、7及び8:上述された手順を用いて実施例4、5、6、7、及び8の不織繊維性多孔質マトリックスを作製した。配合を下表2に示す。
【表3】
【0213】
実施例4の繊維性多孔質マトリックスの厚さは約0.8〜0.9ミリメートルであり、実施例5は厚さ約0.6〜0.8ミリメートルであり、実施例6〜8は各々厚さ約0.8〜1.0ミリメートルであった。
【0214】
実施例9:実施例11において使用された細菌
実施例11で使用された様々な細菌(下表3参照)は、ATCC(Manassas,VA)から入手した。
【表4】
【0215】
細菌株の純粋培養物をトリプチックソイブロス(TSB、Becton,Dickinson and Company,Franklin Lakes,NJ)中に接種し、37℃で一晩成長させた。培養物をバターフィールドリン酸塩緩衝液(3M Co.,St.Paul,MN)中で連続的に希釈し、水試料中へのスパイクのための所望の量のコロニー形成単位(cfu)/mLを得た。大腸菌及びエンテロバクター・アエロゲネスを、製造業者の使用説明書に従い、3M PETRIFILM大腸菌/大腸菌群計数プレート(3M Company)上に適切な希釈溶液を播種することによって定量化し、37℃で一晩インキュベートした。黄色ブドウ球菌及び緑膿菌を、3M PETRIFILM好気性菌計数プレート(3M Company)上に適切な希釈溶液を播種することによって定量化し、37℃で一晩インキュベートした。プレートは、3M PETRIFILMプレートリーダー(3M Co.)を使用して読み取られ、コロニー形成単位(cfu)が決定された。
【0216】
実施例11:ATP生物発光による不織繊維性多孔質マトリックス内の細菌の検出。
拘束された細菌を含有する各不織繊維性多孔質マトリックスをSWINNEXフィルタホルダから取り出し、1.5mLのマイクロチューブ(Plastibrandマイクロチューブ、Brand GmbH&Co.KG,Wertheim,Germany)へ無菌的に移した。細菌溶解試薬を含有する200マイクロリットルのCLEAN−TRACE溶解試薬)を管に加え、1分間ボルテックスし、室温で更に1分間寝かせた。250マイクロリットルのCLEAN−TRACEルシフェリン−ルシフェラーゼ酵素試薬)を管に加え、混合した。管をベンチトップ型照度計(20/20n単管照度計、Turner Biosystems,Sunnyvale,CA)内に直ちに配置し、RLUの測定を記録した。発光量の測定値は、照度計から、照度計と共に提供されているスプレッドシートインターフェースPCソフトウェアを用いて得た。10,000cfuの細菌を含有する100マイクロリットルの緩衝液をピペットで1.5mLのマイクロチューブ(Plastibrandマイクロチューブ)内に移し、溶解混合物(200マイクロリットル)及びATP試薬(250マイクロリットル)を加えるとすぐに、発光量を測定した。10,000cfuから得た相対発光単位を用いて不織繊維性多孔質マトリックス内のATPの回収率を算出した(下表4及び5参照)。無切断材料ではATP回収は30から68%まで変化し、繊維2を有しないマトリックスが最大の回収(60〜68%)を与えた。
【表5】
【表6】
【0217】
別の実験では、不織繊維性多孔質マトリックスを小片に無菌的に切断し、その後、1.5mLのマイクロチューブ(Plastibrandマイクロチューブ)へ移した。細菌溶解試薬を含有する200マイクロリットルの溶解混合物を管に加え、1分間ボルテックスし、室温で更に1分間寝かせた。ルシフェリン及びルシフェラーゼを含有する250マイクロリットルのATP試薬を管に加え、混合した。上述したように発光量を測定した。不織繊維性多孔質マトリックス内のATPの回収率を下表6及び7に示す。無切断材料ではATP回収は55から77%まで変化し、繊維2を有しない湿式載置のものが最大の回収(70〜77%)を与えた。
【表7】
【表8】
【0218】
実施例12〜14:か焼ケイ酸マグネシウムを有する不織繊維性多孔質マトリックスの作製
下表8に示すとおりの異なる量の繊維1、繊維2、繊維4、繊維5及び繊維6を混合することによって、3種類の繊維プレミックスを調製した。
【0219】
実施例12については、4Lのブレンダー(VWR(Radnor,PA)より「WARING COMMERCIAL HEAVY DUTY BLENDER、モデル37BL84」の商品名で販売されるもの)中で、繊維を3リットルの冷たい脱イオン水に加え、低速で30秒間ブレンドした。この混合物を塊(nit)又は凝集(clump)のない均一な繊維分散体となっているかどうかについて検査した。添加剤粒子、CM−111を更に1Lの脱イオン水とともに加え、低速で15秒間混合した。
【0220】
実施例13及び14については、繊維5を3Lの冷たい脱イオン水中で中速で30秒間ブレンドした。全ての他の繊維を加え、低速で30秒間ブレンドした。添加剤粒子、CM−111を更に1Lの脱イオン水とともに加え、低速で15秒間混合した。
【0221】
底部の細かいメッシュスクリーンとドレイン弁を備える、約30センチメートル(12インチ)平方及び高さ30センチメートル(12インチ)という寸法の箱を有する、パッド作製装置(Williams Apparatus,Watertown,NYから商品名「TAPPI」で入手)を使用して、不織繊維性多孔質フェルトを調製した。このスクリーン上に、〜14インチ(36cm)×12インチ(30cm)のポリエチレンスパンボンド(Fiberweb,Cincinnati,OHより入手したPET Lutradur7240)をスクリーン上のスクリムとして堆積させた。この箱のスクリーンの上方約1センチメートルの高さにまで水道水を満たした。各繊維及び更なる混合物を箱に注ぎ入れ、バルブを直ちに開くと真空が形成されこれにより箱から水が引き出された。
【0222】
繊維性不織布フェルトを、装置から、20センチメートル平方の吸取紙のシート(96ポンド白色紙、Anchor Paper,St.Paul,MNから入手)上に移した。各フェルトを2〜4層の吸取紙の間に挟み、余分な水を吸い取らせた。続いて、実施例12のプレス後のフェルトを吸取紙の新たなシート上に移し、130℃に設定したオーブン(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MAから入手したHERATHERMオーブンシリーズOMS100)内に約3時間置いて残りの水分を除去し、不織繊維性多孔質マトリックスを形成した。実施例13及び14のフェルトを125℃で約3時間乾燥させ、残りの水分を除去し、不織繊維性多孔質マトリックスを形成した。実施例12及び14の結果として得られた繊維性多孔質マトリックスは厚さ約1.30〜1.40ミリメートルであった。実施例13の繊維性多孔質マトリックスは厚さ1.45〜1.55ミリメートルであった。
【表9】
【0223】
大腸菌の細菌捕捉のための金属ケイ酸塩を有する不織繊維性多孔質マトリックスの試験
大腸菌(ATCC11229、グラム陰性菌)の画線培養物からの単一のコロニーを10mLのTSB(Difcoからのトリプチックソイブロス、3重量%)中に接種し、37度Cで約20時間一晩インキュベートした。結果として得られた細菌原料は約1×10
9cfu/mLを含有した。その原料を脱イオン水中で連続的に希釈し、1×10
2cfu/mLの作業用原料を作製した。
【0224】
実施例15〜17:それぞれ、実施例12〜14の不織繊維性多孔質マトリックスの14ミリメートルディスクを各々打ち抜き、13ミリメートルフィルタホルダ(Milliporeから入手したSwinnexホルダ)内に挿入した。10ccシリンジを用いて10mLの上述の作業用原料をディスクに通して濾過した。濾過後に、ディスクを廃棄した。滅菌した15mLポリプロピレン管内に濾液を収集した。各濾液のうちの1mLの体積をPACプレート上に播種し、大腸菌の捕捉について試験した。
【0225】
原液もPAC上に播種した。これが「100%対照標準」であった。PETRIFILMプレートリーダーを用いて製造業者の使用説明書に従って平板菌数を測定した。以下の式を用いて捕捉効率を算出した。結果を表19に示す。
%対照標準=(播種した濾液中のCFU)×100/100%対照標準中のCFU
%捕捉効率=100−%対照標準
【表10】
【0226】
黄色ブドウ球菌の細菌捕捉のための金属ケイ酸塩を有する不織繊維性多孔質マトリックスの試験
黄色ブドウ球菌(ATCC6538、グラム陽性菌)の画線培養物からの単一のコロニーを10mLのTSB(Difcoからのトリプチックソイブロス、3重量%)中に接種し、37度Cで約20時間一晩インキュベートした。結果として得られた細菌原料は約1×10
9cfu/mLを含有した。その原料を脱イオン水中で連続的に希釈し、1×10
2cfu/mLの作業用原料を作製した。
【0227】
実施例18〜20:それぞれ、実施例12〜14の各々の不織繊維性多孔質マトリックスの14ミリメートルディスクを打ち抜き、13ミリメートルフィルタホルダ(Milliporeから入手したSwinnexホルダ)内に挿入した。10ccシリンジを用いて10mLの上述の作業用原料をディスクに通して濾過した。濾過後に、ディスクを廃棄した。滅菌した15mLポリプロピレン管内に濾液を収集した。各濾液のうちの1mLの体積をPACプレート上に播種した。各ディスクを黄色ブドウ球菌の捕捉について試験した。
【0228】
原液もPAC上に播種した。これが「100%対照標準」であった。PETRIFILMプレートリーダーを用いて製造業者の使用説明書に従って平板菌数を測定した。以下の式を用いて捕捉効率を算出した。結果を表20に示す。
%対照標準=(播種した濾液中のCFU)×100/100%対照標準中のCFU
%捕捉効率=100−%対照標準
【表11】
【0229】
フィルタホルダ組立体の調製
図1Bに示されるとおりのフィルタホルダ組立体の調製は、超音波処理又は熱溶着のいずれかを用いて、所与の不織布物品(実施例12〜14の手法に従って調製され、下表11に示される組成を有する実施例21〜23)からソックス(
図1Bにおける106)を形成することより開始した。その後、個々のソックスを、特注の射出成形されたフィルタホルダ部品(
図1Bにおける102)の先端部分(
図1Bにおける104)上に履かせた。その後、短い熱収縮管部品(
図1Bにおける105、3M,St.Paulから入手可能)を用いて不織布物品のソックスをプラスチック先端部分に固定した。
【0230】
細菌試料の調製
ASTM−E2315方法に従って、リン酸緩衝水(Phosphate Buffered Water、PBW)(Sigma−Aldrichから入手可能)中において、成長プレートから〜10
8CFU/mLの濃度で原料細菌懸濁液を調製した。懸濁液の初期細菌濃度を数え、検証するために、調製された懸濁液の10
−6及び10
−7希釈溶液をPETRIFILM AC(3M,St.Paul,MNから入手可能)上に播種し、数え上げのために摂氏37度で一晩インキュベートした。原料細菌懸濁液をミリQ水中で希釈することによって、試験用の希釈溶液を調製した。
【0231】
アデノシン三リン酸(ATP)試料の調製
滅菌水(Baxterから入手可能)中でATP(Sigma−Aldrichから入手可能)チャレンジ溶液を調製した。使用したチャレンジ溶液は、5、10、100、500、1000及び5000フェムトモル/mLの濃度を有した。
【0232】
血液試料の調製
羊全血試料(Fisher Scientificから入手可能)を食塩水中で5倍に希釈して10
−5希釈血液溶液を得ることによって、血液チャレンジ溶液を調製した。
【0233】
試験手順
滅菌済み60ccシリンジ(BD,East Rutherford,NJから入手可能)に、以上において調製されたとおりの所与の試料を40mL充填し、その後、1本のシリコーン管(Cole−Parmerから入手可能)に接続し、内視鏡の存在を模擬した。
図4に示されるとおりの、上述されたように調製されたフィルタホルダ組立体をシリコン(silicon)管の他方の端部に接続した。シリンジを用いて細菌懸濁液を約80mL/分の流量でフィルタホルダに押し通した(先端部分及び不織布物品ソックスに通すことを含む)。全ての細菌試料をフィルタホルダに押し通して、シリンジを切り離し、60ccの空気を再充填し、シリコーン管に再接続した。空気を管及びフィルタホルダに押し通して、その後、接続された組立体内に残っている液体試料が全てフィルタホルダに通過させられたことを確実にした。その後、フィルタホルダをシリコーン管から切り離し、
図5に示されるように、変更された3M Clean Trace Water Test(3M,St.Paul,MNから入手可能)内に導入した。3M Clean Trace Water Testは、135μLのCLEAN−TRACE溶解試薬を二重フィルム密閉ポット(
図5における127)内に配置することによって、市販されているバージョンから変更した。フィルタホルダ(
図4における102)に接続された柄(
図5における118)を用いて、不織布物品ソックスを含む先端部分を、総量のATPを検出するために用いられるルシフェリン/ルシフェラーゼ酵素試薬を包含するキュベット(
図5における112)内に押し込み、そこから出すことを合計5回行った。その後、3M Clean Trace Water Testの管を3M NGi照度計(3M,St.Paul,MNから入手可能)内に配置し、フィルタ先端内に収集された試料中に存在するATPの量を、相対発光単位(RLU)を単位として測定した。
【0234】
ATP試験の前に試料を濃縮せず、製造業者の使用説明書に従って、変更されていない3M Clean Trace Water Testを用いて同じ試料を試験する比較例を実行した。
【0235】
10
5CFU/mLの黄色ブドウ球菌細菌を有する実施例21の不織布物品を用い、ルシフェリン/ルシフェラーゼ酵素試薬に対する不織布物品の特定の攪拌方法を変更して試験を繰り返すことによって、様々な攪拌(例えば、接触)方法の効果を評価した。試験した攪拌方法には、10秒間の手動攪拌(例えば、振盪)、10秒間のボルテックス、30秒間のボルテックス、及び不織布物品に取り付けられたフィルタホルダの柄を上下に3回引くことが含まれていた。
【0236】
実施例21〜23に関する試験結果
【表12】
【0237】
全ての値は少なくとも10個の複製の平均である。全ての誤差は±1の平均の標準誤差である。
【表13】
【0238】
全ての値は少なくとも5個の複製の平均である。全ての誤差は±1の平均の標準誤差である。
【表14】
【0239】
選択した1%の偽陽性及び偽陰性率について感度分析を実行した。
【表15】
【0240】
全ての値は少なくとも10個の複製の平均である。全ての誤差は±1の平均の標準誤差である。
【0241】
本明細書では、特定の例示的実施形態が詳細に説明されてきたが、当業者には、上述の説明を理解した上で、これらの実施形態の代替物、変更物、及び等価物を容易に想起することができる点が、理解されるであろう。更には、本明細書で参照される全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物又は特許を参照により組み込むことが、詳細かつ個別に指示されている場合と同じ程度で、それらの全容が参照により組み込まれる。様々な例示的実施形態が説明されてきた。これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれるものである。