(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6821592
(24)【登録日】2021年1月8日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】尿素合成反応器およびプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 273/04 20060101AFI20210114BHJP
C07C 275/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
C07C273/04
C07C275/00
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-550914(P2017-550914)
(86)(22)【出願日】2016年4月1日
(65)【公表番号】特表2018-511603(P2018-511603A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(86)【国際出願番号】IB2016051885
(87)【国際公開番号】WO2016157154
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2019年3月29日
(31)【優先権主張番号】MI2015A000485
(32)【優先日】2015年4月3日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516208282
【氏名又は名称】サイペム エスピーアー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アバグリアーノ,ウゴ
(72)【発明者】
【氏名】チッキネッリ,ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】カルレッシ,リノ
【審査官】
阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第1224635(CN,A)
【文献】
特表2008−511649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 273/04
C07C 275/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアと二酸化炭素の直接二相性反応による尿素の合成のための尿素合成反応器(1)であって、軸(A)に沿って延び、かつ2つのエンド・キャップによって対向する軸方向端部のそれぞれが閉じられた本質的に円筒状の主部(4)を有するケーシング(2)と、前記ケーシング(2)のそれぞれの貫通開口(11、12)を通して挿入され、前記ケーシング(2)の内側において、二酸化炭素を含む軽い相およびアンモニアを含む重い相を前記反応器(1)にそれぞれ別々に供給するための軽い相の分配器(15)および重い相の分配器(16)に、それぞれ別々に接続される第1および第2の送入管(13、14)と、を包含し、前記開口(11、12)は、前記主部(4)と前記ケーシング(2)のドーム形状の底部(5)を結合する円周のエッジ(9)の上方において、前記ケーシング(2)の前記主部(4)の円筒状の側壁(6)を通して形成され、前記軽い相の分配器(15)が、前記反応器(1)内において前記軸(A)に関して横広がりに分配された複数の吸入ポイントに前記軽い相が分配されるように、前記反応器(1)の断面内に、かつ前記軸Aに関して延び、かつ/または分配され、かつ互いに間隔が空けられた吸入孔(21)が備えられている1つまたは複数の管状要素(20)を包含し、前記重い相の分配器(16)は、下向きに、前記ケーシング(2)の底部(5)に向かって曲げられた垂直の管部分(26)を有するL字形状の管状本体(24)を包含し前記管部分(26)は、複数の側方貫通孔(29)を有することを特徴とする、尿素合成反応器(1)。
【請求項2】
前記軽い相の分配器(15)の前記管状要素(20)は、前記第1の送入管(13)から突出し、かつ前記ケーシング(2)の側壁(6)に沿って前記軸(A)を中心に配置され、かつ好ましくは前記側壁(6)から半径方向に間隔が空けられる環状要素(20a)を包含し、前記環状要素(20a)は、前記環状要素(20a)に沿って前記環状要素(20a)の側壁(23)に形成され、かつ前記環状要素(20a)に沿って互いに前記軸(A)に関して横広がりの角度的に間隔が空けられた複数の吸入貫通孔(21)が備えられている、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記軽い相の分配器(15)の前記管状要素(20)は、前記環状要素(20a)から突出し、かつさらなる吸入貫通孔(21)が横広がりに備えられた複数のアーム(20b)を包含する、請求項2に記載の反応器。
【請求項4】
前記アーム(20b)は、前記環状要素(20a)によって半径方向に区切られる空間(35)内に延びる、請求項3に記載の反応器。
【請求項5】
前記アーム(20b)は、前記環状要素(20a)から前記軸(A)に向かって半径方向に突出し、かつオプションとして、前記軸(A)に沿って配置された中心接合部(38)内において互いに中心で結合する、請求項3または4に記載の反応器。
【請求項6】
前記軽い相の分配器(15)の前記管状要素(20)は、前記軸(A)に関して同心の一連の環状要素(20a、20c)を包含し、前記環状要素は、それぞれに吸入孔(21)が備えられ、かつオプションとして半径方向アーム(20b)によって接続される、請求項1から5のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項7】
前記貫通孔(29)は、前記ケーシング(2)のドーム形状の底部(5)内の、前記ケーシング(2)の前記底部(5)と前記主部(4)を結合する円周のエッジ(9)の下方に少なくとも部分的に位置決めされる、請求項1から6のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項8】
前記管部分(26)は、前記ケーシング(2)内の中心に、かつ前記軸Aに沿って位置決めされる、請求項7に記載の反応器。
【請求項9】
前記ケーシング(2)のドーム形状の底部(5)に形成された補助開口(34)を通過する補助送入管(31)によって定義される軽い相の追加送入口(30)を有し、前記追加送入口(30)が、前記底部(5)の中心に位置決めされる、請求項1から8のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項10】
アンモニアと二酸化炭素の直接二相性反応のステップを包含する尿素合成プロセスにおける、請求項1から9のいずれか一項に記載の尿素合成反応器の使用。
【請求項11】
アンモニアと二酸化炭素の直接二相性反応による尿素合成プロセスであって、軸(A)に沿って延び、かつ反応室(3)を定義する反応器(1)内において、二酸化炭素を含む軽い相およびアンモニアを含む重い相を供給するステップ、を包含し、前記プロセスが、前記反応器(1)のケーシング(2)の主部(4)と前記ケーシング(2)のドーム形状の底部(5)を結合する円周のエッジ(9)の上方において、前記主部(4)の円筒状の側壁(6)を通して形成された開口(11、12)を介して前記反応器(1)内に前記軽い相および前記重い相を供給するステップと、前記反応器(1)内において前記軸(A)に関して横広がりに分配された複数の吸入ポイントにおいて、前記軽い相を、前記反応器(1)の断面内に、かつ前記軸(A)に関して、一様に分配するステップとを包含し、前記重い相を供給する前記ステップは、前記重い相を前記軸(A)に沿って中心に、かつ下向きに指向させるステップと、前記反応室(3)内において前記重い相を半径方向に分配するステップと、を包含することを特徴とする、尿素合成プロセス。
【請求項12】
前記吸入ポイントは、前記軸(A)に関して少なくとも1つのリングに沿って設定される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記吸入ポイントの少なくともいくつかは、前記軸(A)に関して位置決めされた少なくとも1つの環状要素(20a)上において互いに角度的に間隔が空けられたそれぞれの吸入孔(21)によって定義される、請求項11または12に記載のプロセス。
【請求項14】
そのほかの吸入ポイントは、前記環状要素(20a)によって半径方向に区切られる空間(35)内において前記環状要素(20a)から突出するアーム(20b)上に位置決めされたそれぞれの吸入孔(21)によって定義される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記軽い相および前記重い相は、前記軸(A)に沿って異なる高さにおいて前記反応器(1)の内側の前記反応室(3)内に供給される、請求項11から14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記重い相は、前記反応器(1)のドーム形状の底部(5)を円筒状の主部(4)と結合する円周のエッジ(9)の下方において前記反応室(3)内に供給される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記反応室(3)内において追加の軽い相の流れを供給するステップを包含し、前記追加の軽い相の流れは、前記軸(A)に沿って中心に、かつ上向きに循環される、請求項11から16のいずれかに記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素合成反応器およびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、尿素は、通常、高温および高圧の条件下におけるアンモニアと二酸化炭素の直接二相性反応を介して工業規模で製造される。
【0003】
尿素プラントの典型的な尿素合成反応器は、本質的にガス流の二酸化炭素および本質的に液体流のアンモニア/アンモニウムカルバメートが供給される。反応剤が、反応器の底部を通り、それぞれの分配器を介して下方から反応器内に供給される。
【0004】
図1は、周知のタイプの典型的な尿素合成反応器1の下側部分を単純化した態様で略図的に示している。
【0005】
概して言えば、反応器1は、垂直軸Aに沿って延びており、内的に反応室3を定義するケーシング2を包含し、ケーシング2は、基本的に円筒状の主部4およびドーム形状(とりわけ、実質的に半球状)の底部5を有する。底部5は、軸Aと実質的に直交する平面内に横たわる本質的に円周のエッジ9に沿って主部4に結合される。
【0006】
ケーシング2は、とりわけ、底部5と機械的に接続される支持フレーム10によって支持される。
【0007】
反応剤(二酸化炭素およびアンモニア/アンモニウムカルバメート)が、それぞれ別々の専用の分配器15および16を通じて反応器1に供給される。
【0008】
分配器15および16は、それぞれ実質的に垂直の管状要素によって構成され、反応器1の壁に作られたそれぞれの開口内において前記壁を通過し、底部5に的確に配置される。
【0009】
分配器15および16を構成する管状要素は、底部5の壁から上向きに突出し、いわゆる穴あきパイプを形成し、各管状要素は、閉じた自由端(反応器1の内側に位置する)および自由端に近い所定の縦方向の長さにわたって管状要素の側壁に作られた複数の側方貫通孔を有する。
【0010】
分配器15および16は、たとえば、反応器1の中心軸Aに関して直径方向に対向する偏心位置に配置され、いずれの場合においても反応器1の軸Aを通る垂直中心平面上において概して対向する側にある。
【0011】
分配器15および16は、エルボー形状で曲げられたそれぞれの送入管の端部を構成し、反応器の外側において、各管は、垂直の管状要素を、フレーム10を通る水平の部分に接続するエルボー形状の曲りを包含する。
【0012】
すぐ上で述べたような反応剤供給システムを伴う反応器は、欠点を有する。
【0013】
関連する構造的な複雑性は別にしても、主としてエルボー形状の送入管(通常、鍛造しなければならない)の使用、および反応器の底部に穿孔する必要性に起因して、この分配器の垂直アレンジメントが反応器の全断面にわたる反応剤の一様な分配を可能にしないというところにその最大の欠点がある。
【0014】
特に、二酸化炭素は、その密度に起因して尿素合成反応において軽い相を構成するが、関連する分配器の上方に垂直の柱を形成する傾向にあり、それが、反応器の全断面にわたる二酸化炭素の微小気泡の一様な分配が好ましいとされる反応動力学を著しく制限する。アンモニアおよびアンモニウムカルバメートで形成される(液体の)重い相の分配でさえ、完全に満足のいくものではない。
【0015】
反応剤、とりわけ、二酸化炭素におけるこの不充分な分配は、反応器の体積の一部、特に反応器の反応剤送入ゾーン内の体積の一部を未使用なままに残すが(2つの相の間における不充分な接触に起因する)、むしろこの部分は、反応剤の濃度が最大となることから、非常に生産性が高くなり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の1つの目的は、上で指摘した周知技術の欠点の克服を可能にする尿素合成反応器およびプロセスを提供することであり、とりわけ、本発明は、周知の尿素合成反応器およびプロセスの効率を改善することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明は、付随する特許請求の範囲の請求項1および13のそれぞれに記載されている本質的な項目に定義されたとおりの尿素合成反応器およびプロセスに関する。
【0018】
本発明の追加の好ましい特徴は、従属請求項に示されている。
【0019】
伝統的な構成に関して言えば、本発明は、軽い相(二酸化炭素)と重い相(アンモニア/アンモニウムカルバメート)の、より良好であり、かつより迅速な混合を得ることを可能にする。
【0020】
特に本発明は、反応器の断面にわたる二酸化炭素のより良好な分配を達成し、結果として生じる、尿素合成プロセスの全体的な効率における利点を伴う。
【0021】
さらにまた、より小さい直径の二酸化炭素の気泡が形成され、それもまた反応効率の視点から好都合である。
【0022】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面の図を参照した以下の非限定的実施態様の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】周知の構成の尿素合成反応器の下側部分の縦方向の略図的な部分断面図である。
【
図2】本発明に従った尿素合成反応器の縦方向の断面内の部品を伴う略図的な側面図である。
【
図4】
図2の反応器の変形の略図的な断面図である。
【
図5】
図2の反応器の変形の略図的な断面図である。
【
図6】本発明の尿素合成反応器のさらなる実施態様の縦方向の断面内の部品を伴う略図的な側面図である。
【
図8】
図6の反応器の変形の略図的な断面図である。
【
図9】
図6の反応器の変形の略図的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図2に、簡略化した略図的な形式で、特に、二酸化炭素およびアンモニアから開始し、中間的なアンモニウムカルバメートの形成を伴う高温高圧における尿素の直接合成のための二相性反応を実施することが指定された尿素合成反応器1の下側部分を示す。
【0025】
概して言えば、反応器1は、垂直軸Aに沿って延びており、内的に反応室3を画定するケーシング2を包含する。
【0026】
ケーシング2は、実質的に円筒状であり、2つの、たとえば実質的に半球形状のエンド・キャップによって対向する軸方向端部のそれぞれが閉じられている。
図2は、反応器1の下側部分のみ、したがって、反応器1の底端に配置されたエンド・キャップのみを示しており、上端に配置され、反応器のヘッドを形成するエンド・キャップは示されていない。
【0027】
本発明に関して言えば、ケーシング2は、本質的に円筒状の主部4および、反応器1の底側キャップを定義するドーム形状の底部5(とりわけ、実質的に半球状)を有する。
【0028】
主部4は、軸Aに関して円筒状の側壁6によって区切られる。
【0029】
底部5は、ドーム形状の壁8を有し、軸Aと実質的に直交する平面内に横たわる本質的に円周のエッジ9(溶接ライン)に沿って主部4に結合される。
【0030】
ケーシング2は、とりわけ、底部5と機械的に接続される支持フレーム10によって支持される。
【0031】
併せて
図3も参照すると、主部4は、側壁6のエッジ9の上方、すなわちケーシング2の(円筒状の)主部4と(ドーム形状の)底部5の間の継ぎ目の上方に作られた側方貫通開口11および12のペアを有する。
【0032】
好ましくは、開口11および12が、反応器1の軸Aを通る垂直中心平面の両側に配置され、とりわけ、開口11および12は、直径上で対向する。
【0033】
図2および3の非限定的な例においては、開口11および12が、実質的に互いに心合わせされ、エッジ9から(開口11および12の中心まで測定したとき)概ね等距離に配置される。
【0034】
尿素合成反応の反応剤を反応器1に供給するべくそれぞれの送
入管13、14が、開口11、12を通して挿入され、周知の態様で開口11、12と流体密に接続され、とりわけ、送入管13は、二酸化炭素を含んだ(本質的にガス状の)軽い相を反応器1に供給し、送入管14は、アンモニアおよび概してアンモニウムカルバメートも含んだ(本質的に液体状の)重い相を供給する。
【0035】
図2および3の非限定的な例においては、送入管13、14が平行であり、実質的に互いに心合わせされる。
【0036】
送入管13、14には、ケーシング2の内側で反応剤分配器15、16のそれぞれが接続されている。
【0037】
分配器15(軽い相の分配器)は、反応器1内において軸Aに関して横広がりに分配された複数の吸入ポイントに軽い相が分配されるように、互いに、および/または送入管13に接続された、反応器1の断面にわたり、かつ軸Aに関して延び/分配され、かつ互いに間隔が空けられた吸入孔21が備えられている1つまたは複数の管状要素20を包含している。
【0038】
特に、分配器15の管状要素20は、送入管13から突出し、かつ側壁6に沿って軸Aを中心に配置され、かつ好ましくは側壁6から半径方向に間隔が空けられる環状要素20aを包含する。
【0039】
送入管13は、環状要素20aから半径方向外向きに突出し、かつ環状要素20aと実質的に共平面であり、言い換えると送入管13と環状要素20aは、軸Aに沿って実質的に同一の高さ、すなわちエッジ9から同一の距離にある。
【0040】
これにおいて、またこのほかの箇所において、管状構成要素の高さまたは距離と言うときには、この高さまたは距離が、その管状構成要素の長さ方向の中心軸に関して測定されることが意図されている。
【0041】
環状要素20aは、閉じていること(すなわち、完全なリングの形状を有すること)、または
図2および3に示されているとおり、途切れていること(すなわち、開いたリングの形状を有すること)のいずれとすることもできる。
【0042】
ここに示されている非限定的な例においては、環状要素20aが、とりわけ、実質的に円形断面を伴う本質的にトロイダル形状を有し、また環状要素20aは、平面内において実質的に円形の形状を有するが、完全に閉じたリングではなく、途切れたリングを形成し、角度的に360°に満たない大きさまで広がる。
【0043】
環状要素20aは、送入管13とは直径方向に反対側の位置が途切れており、そこで送入管14を間に置いて対向する2つの対向端22を有する。
【0044】
端22は、好ましくはブラインド(閉じた)エンドであり、環状要素20aには、横に広がった複数の吸入貫通孔21が備わり、それらは、環状要素20aに沿って環状要素20aの側壁(ラテラル壁)23に作られ、環状要素20aに沿って互いに軸Aに関して角度的に間隔が空けられている。好ましくは、孔21が環状要素20aに沿って一様に分配され、とりわけ、環状要素20aに沿って互いから一様な間隔が空けられている。
【0045】
概して言えば、孔21は、側壁23の任意の位置に配置(アレンジ)することが可能であり、したがって、孔21は、上向きに、および/または下向きに、および/またはケーシング2の側壁6に向かって面することが可能である。
【0046】
孔21は、環状要素20aに沿って1つまたは複数の行で系統化することが可能であり、かつ/または互いに関して互い違いにすることが可能である。
【0047】
分配器16(重い相の分配器)は、本質的にL字形状の管状本体24を包含し、管状本体24は、開口12から側壁6に対して実質的に直角をなして突出する実質的に水平の第1の管部分25(送入管14によって、またはそれの延長によって構成される)および管部分25から突出し、下向きに、すなわちケーシング2の底部5に向かって曲げられた第2の管部分26を包含する。
【0048】
図2に示されている例においては、管部分25に関して管部分26が90°に曲げられ、したがって、実質的に垂直であり、それに加えて管部分26は、ケーシング2の中心において、実質的に軸Aに沿って配置されている。
【0049】
エルボー継手27が、管部分25を管部分26に接続し、管部分26は、エルボー継手27とは反対側に自由端28を有し、好ましくは端28が、孔(図示せず)を備えることも可能な横広がりの壁によって閉じられたブラインド・エンドであり、管部分26は、端28に近い管部分26の側壁に作られた複数の側方貫通孔29を有する。
【0050】
好都合には、側孔29を伴う端28が、エッジ9より下のケーシング2の底部5内に少なくとも部分的に(好ましくは全体が)配置される。
【0051】
管状要素20(とりわけ、環状要素20a)および/または管状本体24、またはより一般的に、分配器15および16の多様な構成要素を支持する、存在が見込まれる機械的支持部材(たとえば、ケーシング2の側壁6に固定されたアンカー・ブラケット)は、簡略のために示されていない。
【0052】
反応器1は、オプションとして、軽い相の追加の送入30をも含む。
【0053】
送入30は、少なくとも1つの吐出孔32が備えられた補助送入管31によって定義され、たとえば、吐出孔32は、送入管31の開いた自由端33に配置される。
【0054】
送入管31は、小サイズであり、特に、送入管13、14より、とりわけ、軽い相の送入管13より小さい流路部分(断面)を有する。
【0055】
送入管31は、底部5のドーム形状の壁8に作られた補助開口34を通して配置される。
【0056】
好ましくは送入30が、底部5の中心に配置され、送入管31が実質的に垂直であり、かつ軸Aに沿って延びる。送入管31は、管状本体24の管部分26とも整列され、吐出孔32は、軸Aに沿って、管状本体24の(すなわち、重い相の分配器16の)管部分26の端28に面し、かつそれと整列される。
【0057】
好ましくは送入管31の端33および吐出孔32が、反応器1を空にしなければならないときに反応器1の排水口としても作用するように、底部5のドーム形状の壁8に、またはその近くにある。
【0058】
使用においては、反応器1が、次のとおりに本発明のプロセスを実装するべく動作する。
【0059】
反応器1に、送入管13および分配器15を介して、尿素合成反応の(本質的にガス状の)軽い相を構成する二酸化炭素流が供給され、送入管14および分配器16を介して、当該反応の(本質的に液体状の)重い相を構成するアンモニア/アンモニウムカルバメートの溶液が供給される。
【0060】
分配器15は、反応器1内において軸Aに関して横広がりに分配された複数の吸入ポイント(孔21によって定義される)において、反応器1の断面にわたって軽い相(二酸化炭素)を実質的に一様に分配する。
【0061】
前述した従来の解決策に関しては、分配器15の環状(トロイダル)のジオメトリおよび孔21の分配が、反応器1の断面にわたって二酸化炭素のより一様な分配を保証する。この分配は、さらに、下向きに面する重い相の分配器16を用いて達成されるアンモニア/カルバメート溶液の一様な流動場に利する。
【0062】
分配器16が下向きに向けられていること、および反応器1の中心軸Aに沿った反応器1の断面の中心にそれが位置決めされていることは、反応器1の体積全体を通じて(アンモニア/カルバメートの)重い相の一様な分配を保証し、この方法においては、反応室3の内側のアンモニアの流動場が、前述した伝統的な(オフセットされ上向きに面する送入を伴う)解決策に関してより一様かつ一定になる。
【0063】
追加の送入30を介した軽い相のオプションの追加の供給は、さらに、反応剤の間に最初の接触が生じる反応器1の下側領域内における2つの相の混合を改善する。
【0064】
図4および5の変形においては、送入管13から突出し、かつ側壁6に沿って配置された環状要素20aに加えて、軽い相の分配器15が、さらに、環状要素20aから突出するそれぞれのアーム20bによって構成される管状要素20を包含する。
【0065】
好ましくは、必須ではないが、アーム20bが、環状要素20aと実質的に共平面になる(すなわち、それらが、軸Aに沿って、環状要素20aと実質的に同一の高さにある)。
【0066】
たとえば(必須ではないが)実質的に直線とするアーム20bは、環状要素20aによって半径方向に区切られる空間35内において延びる。特に、各アーム20bは、環状要素20aの側壁23上において互いに面する環状要素20aの半径方向内側の接合部36のペアを接続する。
【0067】
環状要素20aと同様に、各アーム20bもまた、アーム20bの側壁37に形成され、かつアーム20bに沿って横広がりの間隔が(好ましくは一様に)空けられた吸入貫通孔21を備える。
【0068】
図4の例においては、分配器15が、送入管14の両側に配置された、互いに、および送入管13に対して平行な直線アーム20bのペアを包含する。
【0069】
各アーム20bは、環状要素20aの端22の近くにある接合部36と、それに対向する、送入管13の近くにあり、かつ送入管13に関して横にある接合部36の間に延びる。
【0070】
図5の例においては、分配器15が、互いに直角をなし、かつ中心で十字に結合された直線アーム20bのペアを包含する。特に、アーム20bは、環状要素20aのそれぞれの直径に沿って延び、環状要素20aの側壁23上の直径方向に対向するそれぞれの接合部36を接続する。
【0071】
言い換えると分配器15は、軸Aに向かって環状要素20aから突出し、好ましくは軸Aに沿って配置された中心接合部38において中心で互いに結合する複数の半径方向に内的なアーム20bを包含する。
【0072】
この構成においては、重い相の分配器16が、好ましくは反応器1の中心軸Aに関して中心から逸らされ、言い換えると、反応器1の中心に軸Aに沿って配置されることに代えて、軸Aに関してオフセットされた位置に置かれる。特に、孔29が備えられた管部分26が、軸Aに関して半径方向に変位される。
【0073】
開口11、12、および送入管13、14は、
図2および3を参照して前述したとおり、軸Aに沿って同じ高さとすることが可能であり、その場合には、前述したとおりに環状要素20aが分断される。
【0074】
それに代わるものとして、開口11、12が整列されず、送入管13、14も整列されない。特に、開口11、したがって送入管13が、開口12および送入管14に関して異なる高さに、たとえば、より低い高さに(すなわち、エッジ9からより小さい距離で)配置され、その場合には送入管14が環状要素20aの上方に配置され、環状要素20aを閉じた、完全なリングのような形状にすることが可能である。
【0075】
図6および7の実施態様においては、すでに述べたものと同一または類似の詳細が同一の参照番号を用いて示されているが、この場合の反応器1もまた、エッジ9の上方においてケーシング2の側壁6に作られた直径方向に対向する側方貫通開口11、12のそれぞれを通って挿入され、かつケーシング2の内側においてそれぞれの反応剤分配器15、16に接続される直径方向に対向する一対の送入管13、14を備える。
【0076】
この場合においては、開口1、12が整列されず、軸Aに沿って軸方向に段違いになり、軸Aに沿って異なる高さに、すなわちエッジ9から(開口11、12の中心まで測定したとき)異なる距離に配置される。特に、開口11が開口12より高く配置される。
【0077】
それぞれの送入管13、14は、整列される代わりに、常に実質的に互いに平行になり、また軸Aに沿って段違いで、軸Aに沿って異なる高さに、すなわちエッジ9から異なる距離に配置される。特に、重い相の送入管14は、軽い相の送入管13の下方に(よりエッジ9の近くに)配置される。
【0078】
分配器15、16は、前述した全般構成を受け継ぐ。送入管13、14が軸方向に段違いになることから、軽い相の分配器15の環状要素20aを、軸Aに関して閉じられた完全なリングの形状にすることが可能である。
【0079】
図8の変形においては、送入管13から突出し、側壁6に沿って配置される環状要素20aに加えて、軽い相の分配器15が、互いに直角をなして中心で十字に結合される直線アーム20bのペア、すなわち、環状要素20aから軸Aに向かって突出し、軸Aに沿って配置された中心接合部38において中心で結合する複数の半径方向に内的なアーム20bを包含する。
【0080】
図5を参照して説明した例と同様に、アーム20bは、環状要素20aと実質的に共平面である。しかしながら、
図5の例とは異なり、この構成においては、重い相の分配器16(厳密に述べれば、孔29を伴う管状本体24の管部分26)が反応器1の中心に、軸Aに沿って、アーム20bを結合している中心接合部38の下方に配置される。
【0081】
図9の変形においては、軽い相の分配器15が、環状要素20aに加えて、空間35内に、環状要素20aと同心であり、かつ環状要素20aの半径方向内側に配置される1つまたは複数のさらなる環状要素20c、および複数の半径方向に内的なアーム20bを包含する。
【0082】
環状要素20cもまた、アーム20bと同様に吸入孔21が備えられる。
【0083】
アーム20bは、たとえば実質的に直線であり、環状要素20aから軸Aに向かって突出し、環状要素20a、20cを接続し、かつ好ましくは、軸Aに沿って配置された中心接合部38において互いに中心で結合する。
【0084】
理解されるものとするが、以上の本発明の実施態様の中で例証した解決策は、多様な方法で互いに組み合わせることが可能である。
【0085】
最後に、付随する特許請求の範囲からの逸脱を伴うことなく、この中で説明し、例証してきた反応器および尿素合成プロセスに対して、さらなる修正および変形が適用可能であることは理解されるものとする。
【符号の説明】
【0086】
1 尿素合成反応器
2 ケーシング
3 反応室
4 主部
5 底部
6 側壁
8 ドーム形状の壁
9 エッジ
10 支持フレーム
11 開口
12 開口
13 送入管
14 送入管
15 分配器
16 分配器
20 管状要素
20a 環状要素
20b アーム
20c 環状要素
21 孔
22 端
23 側壁
24 管状本体
25 第1の管部分
26 第2の管部分
27 エルボー継手
28 自由端
29 孔
30 追加の送入
31 補助送入管
32 吐出孔
33 自由端
34 補助開口
35 空間
36 接合部
37 側壁
38 中心接合部
A 軸