特許第6821595号(P6821595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6821595蓄電装置用電極板及びそれを備える蓄電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6821595
(24)【登録日】2021年1月8日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】蓄電装置用電極板及びそれを備える蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20210114BHJP
   H01G 11/22 20130101ALI20210114BHJP
   H01M 4/13 20100101ALN20210114BHJP
   H01M 4/133 20100101ALN20210114BHJP
【FI】
   H01M4/02 Z
   H01G11/22
   !H01M4/13
   !H01M4/133
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-551526(P2017-551526)
(86)(22)【出願日】2016年11月9日
(86)【国際出願番号】JP2016004838
(87)【国際公開番号】WO2017085917
(87)【国際公開日】20170526
【審査請求日】2019年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2015-228011(P2015-228011)
(32)【優先日】2015年11月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀川 晃宏
(72)【発明者】
【氏名】上田 智通
(72)【発明者】
【氏名】仲村 昌弘
【審査官】 渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−196760(JP,A)
【文献】 特開2014−29852(JP,A)
【文献】 特開2010−250994(JP,A)
【文献】 特開2008−159331(JP,A)
【文献】 特開2002−124252(JP,A)
【文献】 実開昭57−199956(JP,U)
【文献】 特開平7−14570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02
H01G 11/22
H01M 4/13
H01M 4/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形の集電体と、
前記集電体の少なくとも一方の面に設けられた活物質層と、
を備え、
前記集電体は、電極リードが接続される無地部を長手方向の一部領域における幅方向の一端部に有し、
前記活物質層が設けられた領域において、前記無地部に前記幅方向に隣り合う第1領域の弾性係数が前記無地部及び前記第1領域が占める領域に前記長手方向に隣り合う第2領域の弾性係数よりも大きい、蓄電装置用電極板。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電装置用電極板において、
前記第1領域の弾性係数を、Eb〔N/m〕とし、前記第2領域の弾性係数を、Ec〔N/m〕としたとき、
1.1×Ec≦Eb≦5.5×Ecである、蓄電装置用電極板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蓄電装置用電極板において、
前記第1領域に設けられた前記活物質層の密度が、前記第2領域に設けられた前記活物質層の密度よりも高い、蓄電装置用電極板。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の蓄電装置用電極板を備える、蓄電装置。
【請求項5】
請求項4に記載の蓄電装置において、
前記蓄電装置用電極板が正極板であり、
さらに、活物質として黒鉛を含む負極板と、
前記正極板と前記負極板との間に配置されたセパレータと、
を備える、蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電装置用電極板及びそれを備える蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のポータブル化やコードレス化が急速に進むにしたがって、電子機器の駆動用電源として使用する二次電池を高容量化することへの要請が高まっている。また、自動車用蓄電池や電力貯蔵用蓄電池への二次電池の適用も進みつつあり、この観点からも二次電池の高容量化が求められている。
【0003】
このような背景において、特許文献1の非水電解質二次電池では、正極集電体上に正極活物質スラリーが塗布されて正極活物質層が形成された後、平面視における正極活物質層の矩形の一部領域が剥離される。そして、正極活物質層の剥離箇所に正極活物質が存在しない矩形の無地部が形成され、正極リードが無地部に溶接される。無地部の幅を正極板幅よりも短くすることによって、無地部が正極板の幅方向の一部にのみに形成されるため、正極活物質層領域が増大する。このようにして、充放電反応が行われる領域を増大させて高容量化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−68271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池などの蓄電装置用電極板を製造する場合、フープ状に巻き取られた長尺の集電体が用いられる。その長尺の集電体に活物質層を設けた後に、長尺の集電体を長手方向に沿ってスリットして1列又は複数列の極板材が作製される。活物質層が設けられた極板材はフープ状に巻き取られて、フープ状の極板材が巻回工程などの蓄電装置の製造工程に投入される。このように、蓄電装置の製造工程ではフープ状に巻き取られた長尺の極板材が用いられるため、蓄電装置の生産性を高めるために長尺の極板材を高速で走行させることが好ましい。極板材を高速で走行させる場合、極板材のしわや蛇行を防止するために極板材に高いテンションをかける必要がある。
【0006】
しかし、特許文献1に記載されているように幅方向の一部にのみ無地部が形成された極板材に高いテンションをかけた場合、次の問題が生じることが本発明者らによって見出された。すなわち、無地部とその無地部に長手方向に隣り合う正極活物質層との境界部分を起点として破断が生じやすい。極板材が高いテンションに耐えられずに破断が生じると、不良箇所の廃棄や生産性の低下により蓄電装置用電極板の製造コストが増加する。
【0007】
本開示の課題は、高容量化とともに、生産性の向上によるコストの低減が可能な蓄電装置用電極板及びそれを備える蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の蓄電装置用電極板は、略矩形の集電体と、集電体の少なくとも一方の面に設けられた活物質層と、を備え、集電体は、電極リードが接続される無地部を長手方向の一部領域における幅方向の一端部に有し、活物質層が設けられた領域において、無地部に幅方向に隣り合う第1領域の弾性係数が、無地部及び第1領域が占める領域に長手方向に隣り合う第2領域の弾性係数よりも大きい。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る蓄電装置用電極板及び蓄電装置によれば、活物質量の充填量の増加による高容量化とともに、生産性の向上によるコストの低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は一実施形態に係る非水電解質二次電池の構造を示す図である。
図2図2(a)は一実施形態に係る正極板の平面図であり、図2(b)は図2(a)のA−A線断面図であり、図2(c)は図2(a)のB−B線断面図であり、図2(d)は正極リードが接続された正極板の平面図である。
図3図3は一実施形態に係る正極板の製造方法の一例を示す模式図である。図3(a)及び図3(b)は所定寸法に切断される前の長尺の正極集電体に正極活物質スラリーを塗布している様子を示す模式図であり、図3(c)は乾燥させた正極活物質スラリーをロールで圧縮している様子を示す模式図である。
図4図4は高いテンションがかけられて破断が生じるまでの様子を時系列で示す比較例1に係る極板材の部分平面図である。図4(a)はテンションがかけられる直前の極板材の部分平面図であり、図4(b)は変形が生じた極板材の部分平面図であり、図4(c)は破断が生じた極板材の部分平面図である。
図5図5は高いテンションがかけられて破断が生じた比較例2に係る極板材の部分平面図である。
図6図6は比較例1と一実施形態を対比するための極板材の部分平面図である。図6(a)は比較例1に係る極板材の部分平面図であり、図6(b)は一実施形態に係る極板材の部分平面図である。
図7図7は破断が生じた実験例10に係る極板材の部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る実施の形態(以下、実施形態という)について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。また、実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは現物と異なる場合がある。本明細書において「略**」との記載は、略全域を例に挙げて説明すると、全域はもとより実質的に全域と認められる場合を含む意図である。
【0012】
図1は、本開示の一実施形態である非水電解質二次電池の構造を示す図である。非水電解質二次電池は蓄電装置の一つである。
【0013】
この非水電解質二次電池(以下、単に電池という)10は、正極板1、正極リード2、負極板3、負極リード4、セパレータ5、電池ケース6、ガスケット7、正極蓋8及び封口板9を備える。正極板1及び負極板3がセパレータ5を介して巻回され、円筒形の電池ケース6内に電解液と共に収容される。電池ケース6の開口部はガスケット7を介して封口板9で封口され、電池ケース6内は密閉される。正極板1は正極リード2により封口板9上に配設された正極蓋8に接続され、正極蓋8は電池の正極端子となる。また、負極板3は負極リード4により電池ケース6に接続され、電池ケース6は電池の負極端子となる。
【0014】
正極板1は、次のように作製される。正極活物質に導電剤や結着剤等を混合し、その混合物を分散媒中で混練することによってペースト状の正極活物質スラリーを作製する。その後、正極活物質スラリーをアルミニウム等の金属箔で形成したフープ材からなる長尺の正極集電体上に塗布する。続いて、正極集電体に塗布された正極活物質スラリーを乾燥、及び圧縮することによって正極集電体上に正極活物質層を設ける。最後に正極活物質層が設けられた正極集電体を所定寸法に切断することによって正極板1を作製する。
【0015】
正極活物質スラリーには、例えば、正極活物質としてリチウムニッケル酸化物を、導電剤としてアセチレンブラック(以下、AB)を、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(以下、PVDF)を、分散媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いることができる。
【0016】
負極板3は、次のように作製される。負極活物質に導電剤や結着剤等を混合し、その混合物を分散媒中で混練することによってペースト状の負極活物質スラリーを作製する。その後、負極活物質スラリーを銅等の金属箔で形成したフープ材からなる長尺の負極集電体上に塗布する。続いて、負極集電体に塗布された負極活物質スラリーを乾燥、及び圧縮することによって負極集電体上に負極活物質層を設ける。最後に負極活物質層が設けられた負極集電体を所定寸法に切断することによって負極板3を作製する。
【0017】
負極活物質スラリーには、例えば、負極活物質として黒鉛を、結着剤としてスチレンーブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(SBR)を、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を、分散媒として水を用いることが好ましい。
【0018】
図2(a)は正極板1の平面図である。図2(b)は図2(a)の無地部40を横断しないA−A線断面図である。図2(c)は図2(a)の無地部40を横断するB−B線断面図である。図2(d)は正極リード2が接続された正極板1の平面図である。
【0019】
図2(a)に示すように、正極板1は略矩形の平面形状を有する。図2(b)に示すように、正極板1は、正極集電体20と、正極集電体20の両面に設けられた正極活物質層30を有する。図2(a)及び(c)に示すように、正極板1は無地部40を有する。無地部40は、正極集電体20の表側面21及び裏側面22の長手方向Xの中央部における幅方向Yの一端部に存在する。正極活物質層30が正極集電体20の両面に設けられている場合に、無地部40は正極板1の片側の面にのみ設けることもできる。正極活物質層は正極集電体20の片面のみに設けることもできる。
【0020】
図2(d)に示すように、正極板1の無地部40には正極リード2が接合されている。無地部40は、正極リード2が接続されるリード接続部を構成する。負極板3も負極活物質スラリーが塗布されない無地部を有する。負極板3の無地部には負極リード4が接合されている。負極板3の無地部は、負極リード4が接続されるリード接続部を構成する。正極リード及び負極リードの接合方法としてはスポット溶接、超音波溶接、及びカシメが例示される。
【0021】
図2(a)に示すように、無地部40は平面視において略矩形の形状を有する。そして、正極活物質層30が設けられた領域が、第1領域30aと第2領域30b,30cに分割されている。本開示では、第1領域30a及び第2領域30b,30cを次のように定義する。まず、無地部40に幅方向Yに隣り合う領域を第1領域30aとする。幅方向Yから見て、第1領域30aは無地部40に重なっている。次に、無地部40及び第1領域30aが占める領域に長手方向Xに隣り合う領域を第2領域30b,30cとする。第2
領域30b,30cの間に無地部40及び第1領域30aが存在している。
【0022】
第1領域30aの弾性係数Eb1は、第2領域30b,30cの弾性係数Ec1よりも大きい。第2領域30b,30cの弾性係数Ec1は、無地部40の弾性係数Eaよりも大きい。
【0023】
図3は、正極板1の製造方法の一例を示す模式図である。詳しくは、図3(a)及び図3(b)は、所定寸法に切断される前の長尺の正極集電体20に正極活物質スラリー64を塗布している様子を示す模式図である。図3(c)は、乾燥した正極活物質スラリー64をロール85で圧縮している様子を示す模式図である。
【0024】
正極集電体20への正極活物質スラリー64の塗布は、吐出口80を有する第1吐出ノズルと、吐出口81を有する第2吐出ノズルを用いて行われる。図3(a)に示すように、第1吐出ノズルの吐出口80及び第2吐出ノズルの吐出口81は正極集電体20に対向するように配置されている。また、長手方向Xから見て吐出口80,81はそれらの間に隙間ができないように配置されている。正極活物質スラリー64を塗布する際、吐出口80,81を正極集電体20に対して矢印Aの方向に相対移動させる。このとき、第1吐出ノズルから正極活物質スラリー64が連続的に吐出され、第2吐出ノズルから正極活物質スラリー64が間欠的に吐出される。このようにして無地部40が設けられる。また、第1領域30aにおける正極活物質スラリー64の塗布量が第2領域30b,30cの塗布量より大きくなるように、第1領域30aにおける正極活物質スラリー64の吐出量が制御される。
【0025】
正極活物質スラリー64の塗布後、塗布された正極活物質スラリー64を乾燥する。続いて、図3(c)に示すように、正極集電体20の幅方向Yに延在しているロール85を正極集電体20に対して矢印Bで示す方向に相対移動させて、所定厚みに圧縮された正極活物質層を有する極板材70が形成される。
【0026】
上記の製法によって、無地部40を、極板材70の幅方向一端部のみに形成し、第1領域30aの活物質充填密度を第2領域30b,30cの活物質充填密度より高くすること
ができる。第1領域30aの活物質充電密度を高くすることにより、第1領域30aの弾性係数Eb1を第2領域の弾性係数Ec1よりも大きくすることができる。
【0027】
圧縮された長尺の極板材70の幅方向Yの両端部が長手方向Xに沿ってスリットされて、正極集電体が露出している部分が取り除かれる。スリットされた長尺の極板材70は、長手方向Xに隣り合う無地部40間の中点を通る中心線に沿って切断される。
【0028】
以下、本開示の一実施形態とは異なり、正極活物質層が設けられた全領域が均一の弾性係数を有する比較例1及び比較例2を説明し、それらを本開示の一実施形態と対比する。
【0029】
まず、図4(a)を参照して比較例1を説明する。比較例1に係る極板材170は第1領域130aの弾性係数Eb2〔N/m〕と第2領域130b,130cの弾性係数Ec2〔N/m〕が等しい。その点を除くと、比較例1に係る極板材170は一実施形態に係る極板材70と同じ構成を有する。
【0030】
図4に示すように、力F〔N〕のテンションが加えられた極板材170の無地部140と第2領域130b,130cとの境界部分に力Fa2〔N〕が作用する。無地部140及び第1領域130aが弾性を有し、長手方向Xに対して並列に接続されているため、以下の式(1)が導かれる。
Fa2=F×〔(Aa×Ea)/(Ab×Eb2+Aa×Ea)〕…(式1)
【0031】
式(1)において、Ea〔N/m〕は、無地部140の弾性係数であり、正極集電体20の弾性係数に等しい。EaはEb2より小さい。極板材170の長手方向Xに垂直な切断面の面積を極板材170の断面積としたとき、Aa〔m〕は無地部140における極板材170断面積を表し、Ab〔m〕は第1領域130aにおける極板材170の断
面積を表す。
【0032】
長手方向Xに力Fのテンションが加えられると、極板材170は長手方向Xに引っ張られて図4(a)に示す状態から図4(b)に示す状態に移行する。加えられたテンションが極板材170の破断強度を超えると、図4(c)に示すように、無地部140と第2領域130b,130cの境界部分を起点として破断が生じる。極板材170の圧縮時に、無地部の内部は圧力を受けないが、境界部分は圧力を受ける。そのため、無地部140と第2領域130b,130cの境界部分の破断強度が無地部140の内部に比べて低下している可能性がある。
【0033】
次に、図5を参照して比較例2について説明する。比較例2に係る極板材270は正極活物質層230の活物質密度が比較例1の正極活物質層130の活物質密度より高いこと以外は比較例1と同じ構成を有する。つまり、比較例2に係る極板材270において、第1領域230aの弾性係数Eb3と第2領域230b,230cの弾性係数Ec3は等しく、それらは比較例1の弾性係数Eb2及びEc2より大きい。図5は破断が生じた比較例2に係る極板材270を示す模式図である。比較例1と同様に極板材270を高いテンションをかけながら走行させた場合に図5に示す破断が生じる。
【0034】
図4及び図5に示すように、比較例1及び比較例2の第1領域130a,230aの弾性係数はそれぞれEb2,Eb3である。式(1)において、右辺のEb2をEb3に置き換えると、左辺のFa2は比較例2の無地部240と第2領域230b,230cの境界部分に作用する力Fa3に置き換えられる。上記のとおり、Eb2とEb3はEb2<Eb3の関係式を満たすため、Fa2>Fa3の関係式が成り立つ。そのため、正極活物質層全体の活物質密度を大きくすることで極板材の破断が防止されるように思われる。しかしながら、正極活物質層全体の活物質密度を大きくすることは破断の防止に必ずしも効果的ではない。比較例2では正極活物質層230が比較例1より大きい圧力で圧縮されているため、無地部240と第2領域230b,230cの境界部分の破断強度が比較例1より低下している可能性がある。
【0035】
図6は、比較例1に係る極板材と一実施形態に係る極板材の間の弾性係数の対応関係を示すための極板材の部分平面図である。図6(b)に示す一実施形態では、図6(a)に示す比較例1との対比において、無地部40と幅方向Yに隣り合う第1領域30aの活物質充填密度を第2領域30b,30cの活物質充填密度よりも高くしている。このようにして、第1領域30aの弾性係数Eb1を第2領域30b,30cの弾性係数Ec1よりも大きくしている。式(1)において、右辺のEb2を一実施形態のEb1に置き換えると左辺のFa2は一実施形態のFa1に置き換えられる。Eb2とEb1はEb2<Eb1の関係式を満たすため、Fa2>Fa1の関係式が成り立つ。すなわち、一実施形態のように第1領域30aの弾性係数Eb1を正極活物質層が設けられた他の領域を構成する第2領域30b,30cの弾性係数Ec1より大きくすることにより、無地部40と第2領域30b,30cの境界部分に作用する力Fa1を低減することができる。また、比較例2とは異なり、第1領域30aの活物質密度を高めるだけでよいため、無地部40と第2領域30b,30cとの境界部の機械的強度が低下するおそれがない。
【0036】
以下、本開示の実施形態について具体的な実験例を用いてより詳細に説明する。なお、本発明は下記の実験例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0037】
(実験例)
(正極活物質スラリーの作製)
正極活物質としてのリチウムニッケル複合酸化物と、導電剤としてのアセチレンブラック(AB)と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを所定の割合で混合した。その混合物を分散媒としてのN−メチル−ピロリドン(NMP)中で混練することによって正極活物質スラリーを作製した。
【0038】
(正極極板材の作製)
上記のようにして作製した正極活物質スラリーを本開示の一実施形態として説明した方法に従ってアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布し、乾燥した。乾燥した正極活物質スラリーを所定厚みに圧縮して正極活物質層を形成し、正極集電体の幅方向の両端部をスリットして長尺の正極極板材を作製した。正極活物質スラリーを塗布する際、正極極板材の無地部と正極集電体の幅方向に隣り合う第1領域の塗布量を調整して、第1領域の活物質密度が互いに異なる実験例1〜10に係る正極極板材を作製した。得られた長尺の正極極板材はフープ状に巻き取った。正極極板材の無地部と正極集電体の幅方向に隣り合う第1領域の弾性係数をEb、第1領域を除く正極活物質層が設けられた領域を構成する第2領域の弾性係数をEcとした。実験例1〜10の第1領域の弾性係数Ebを、第2領域の弾性係数Ecを用いた式で表1に示す。弾性係数Ecの具体的な値は30kN/mmであった。
【0039】
(負極活物質スラリーの作製)
負極活物質として人造黒鉛と、結着剤としてのスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを所定の割合で混合した。その混合物を分散媒としての水中で混練することによって負極活物質スラリーを作製した。
【0040】
(負極極板材の作製)
上記のようにして作製した負極活物質スラリーを銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、乾燥した。塗布方法としては、完成した負極板の長手方向に一端部に無地部が設けられるように従来技術の間欠塗布を採用した。乾燥した負極活物質スラリーを所定厚みに圧縮して負極活物質層を形成し、負極集電体の幅方向の両端部をスリットして長尺の負極極板材を作製した。得られた長尺の負極極板材はフープ状に巻き取った。
【0041】
(電極群の作製)
実験例1〜10に係る各正極極板材と上記の負極極板材と組み合わせて、次のように実験例1〜10に係る電極群を作製した。まず、正極極板材、負極極板材及びポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを巻取装置に取り付けた。巻取装置では、正極極板材と負極極板材の端部を巻芯の位置まで引き出して、正極極板材と負極極板材をそれらの間にセパレータが介在するように巻回した。巻回後に正極極板材と負極極板材を切断し、電極群の最外周の端部をテープで固定して係る電極群を作製した。このように、正極極板材と負極極板材を巻取装置で切断してそれぞれ正極板と負極板を形成した。また、巻取装置内で正極極板材と負極極板材の走行が停止したタイミングで、正極極板材と負極極板材の無地部にリードを接合した。正極板の幅方向の長さを60mm、長手方向の長さを1000mmとした。正極板の無地部の幅方向の長さを5mm、長手方向の長さを6mmとした。そして、負極板の幅方向の長さを61mm、長手方向の長さを1050mmとした。
【0042】
上記のようにして作製した電極群を、金属製の有底筒状の外装缶に非水電解質とともに挿入して本開示の一実施形態として説明した非水電解質二次電池を作製することができる。
【0043】
(破断の有無の確認)
電極群の作製する際の正極極板材の走行条件として、正極極板材にかけられるテンション及び正極極板材の走行速度を以下のように二つの条件を採用し、それぞれの条件に基づいて電極群を作製した。
条件1 : テンション 13N、走行速度 50m/分
条件2 : テンション 18N、走行速度 60m/分
【0044】
上記の条件1に基づいて正極極板材を走行させて実験例1〜10に係る電極群をそれぞれ2000個作製した。さらに、上記の条件2に基づいて正極極板材を走行させて実験例1〜10に係る電極群をそれぞれ2000個作製した。得られた電極群を解体して、正極板の破断の有無を目視で確認した。条件1及び2のいずれにおいても破断が確認されなかった場合を「○」、破断が確認された場合を「×」とした。また、条件2においてのみ破断が確認された場合を「△」とした。その結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
正極活物質層の第1領域の弾性係数Eb及び第2領域の弾性係数Ecが等しい実験例1は条件1及び2のいずれにおいても正極板の破断が確認された。実験例1の破断は、図4で示したように無地部と第2領域との境界部分を起点として生じていた。一方、第1領域の弾性係数Ebを第2領域の弾性係数Ecより大きくすることにより正極板の破断が抑制されることを表1の結果は示している。これは、本開示の一実施形態において説明したように、第1領域の弾性係数Ebを大きくすることにより、無地部と第2領域との境界部分に作用する力Faが低減されたためだと考えられる。
【0047】
実験例2において、条件2に基づいて正極極板材を走行させた場合にのみ正極板に破断が確認された。実験例2は実験例1に比べると、正極板の破断が抑制されているが、第1領域の弾性係数Ebと第2領域の弾性係数Ecの差が小さいため、無地部と第2領域との境界部分に作用する力Faが十分に低減されていない。実験例2〜9の結果から、第1領域の弾性係数Ebを第2領域の弾性係数Ecの1.1倍以上とすることが好ましいことがわかる。
【0048】
実験例2と同様に、実験例10においても条件2に基づいて正極極板材を走行させた場合にのみ正極板に破断が確認された。実験例10の正極板の破断は、図7に示すように第1領域と第2領域の境界部分を起点として生じていた。つまり、第1領域の弾性係数Ebと第2領域の弾性係数Ecの差が大きすぎると、第1領域と第2領域の境界部分に作用する力Fbが大きくなって破断が生じやすくなる。実験例3〜10の結果から、第1領域の弾性係数Ebを第2領域の弾性係数Ecの5.5倍以下とすることが好ましいことがわかる。
【0049】
以上の結果をまとめると次の通りである。実験例2〜10のように第1領域の弾性係数Ebを第2領域の弾性係数より大きくすることにより正極板の破断が抑制される。さらに、第1領域の弾性係数Ebと第2領域の弾性係数Ecが1.1×Ec≦Eb≦5.5×Ecの関係式を満たすことがより好ましい。実験例2〜10はいずれも本開示の一実施形態に含まれる。すなわち、本開示の一実施形態によれば電極板の破断が抑制されるため、不良を削減することができる。また、本開示の一実施形態によれば切断前の長尺の電極板を蓄電装置の製造工程において高速で走行させることができるため、蓄電装置の生産性を高めることができる。このように不良を削減し、生産性を向上することで蓄電装置のコストが低減される。
【0050】
本開示の一実施形態では、蓄電装置用電極板の一例として非水電解質二次電池用正極板を詳細に説明した。しかし、本開示の蓄電装置には非水電解質二次電池だけでなく、ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池などの他の電池が含まれる。さらに、蓄電装置には電池以外にキャパシタも含まれる。そのため、本開示の蓄電装置用電極板には電池やキャパシタの正極板や負極板が含まれ、被塗布物及び塗布物の材料は上記実施形態に記載された材料に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示によれば、高容量で低コストの蓄電装置を実現できる。本開示の蓄電装置は、ノート型パソコン等の民生用モバイルツールの主電源や電気自動車(EV)等の大型機器の主電源に好適に適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 正極板、2 正極リード、3 負極板、5 セパレータ、10 非水電解質二次電池、20 正極集電体、21 正極集電体の表側面、22 正極集電体の裏側面、30 正極活物質層、30a 第1領域、30b, 30c 第2領域、40 無地部、Eb1 第1領域の弾性係数、Ec1 第2領域の弾性係数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7