特許第6821597号(P6821597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6821597
(24)【登録日】2021年1月8日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】EMI保護スリーブおよびその構築方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 1/00 20060101AFI20210114BHJP
   D03D 11/00 20060101ALI20210114BHJP
   D03D 15/47 20210101ALI20210114BHJP
   D03D 15/37 20210101ALI20210114BHJP
【FI】
   D03D1/00 Z
   D03D11/00 Z
   D03D15/00 D
   D03D15/00 B
【請求項の数】18
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-554347(P2017-554347)
(86)(22)【出願日】2016年4月18日
(65)【公表番号】特表2018-513284(P2018-513284A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】US2016028026
(87)【国際公開番号】WO2016168794
(87)【国際公開日】20161020
【審査請求日】2019年4月15日
(31)【優先権主張番号】62/149,200
(32)【優先日】2015年4月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/130,076
(32)【優先日】2016年4月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503170721
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル・パワートレイン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL−MOGUL POWERTRAIN LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シモン−セジェール,アメリー
(72)【発明者】
【氏名】ウッドラフ,アレクサ・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ファタラー,アメル
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ティアンキ
(72)【発明者】
【氏名】デルター,ジュリアン
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−526218(JP,A)
【文献】 特表2009−529101(JP,A)
【文献】 特開平11−269732(JP,A)
【文献】 特表2008−537641(JP,A)
【文献】 特表2009−529100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/00
D03D 11/00
D03D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EMI、RFIまたはESDの少なくとも1つから細長い部材を保護するための巻付可能な織物スリーブであって、
複数本の縦糸フィラメントと、
少なくとも1本の横糸フィラメントとを備え、
前記縦糸フィラメントは前記少なくとも1本の横糸フィラメントとともに織られて織基板を形成しており、前記基板は両端の間を縦方向に延びる両側部を有しており、前記両側部は、互いに重なり合う関係になるように前記スリーブの中心長手方向軸の周りに巻付可能であり、
前記縦糸フィラメントの少なくともいくつかは、概して平坦な導電性フィラメントとして提供され
概して平坦な導電性の前記縦糸フィラメントの少なくともいくつかは、互いに重なり合う関係で積み重なっている複数本の概して平坦な導電性フィラメントを含む、織物スリーブ。
【請求項2】
前記横糸フィラメントの少なくともいくつかはヒートセットされて、前記両側部を互いに重なり合う関係になるように付勢する、請求項1に記載の織物スリーブ。
【請求項3】
前記横糸フィラメントの少なくともいくつかは導電性フィラメントとして提供される、請求項1に記載の織物スリーブ。
【請求項4】
導電性の前記横糸フィラメントの少なくともいくつかは、個別に提供されるか、または、ヒートセットされた前記横糸フィラメントのうちの個別のフィラメントに絡ませられる、請求項3に記載の織物スリーブ。
【請求項5】
前記縦糸フィラメントの少なくともいくつかは非導電性フィラメントとして提供される、請求項1に記載の織物スリーブ。
【請求項6】
前記縦糸フィラメントの少なくともいくつかは円形の導電性フィラメントとして提供される、請求項1に記載の織物スリーブ。
【請求項7】
前記円形の導電性フィラメントの少なくともいくつかは、実質的に平坦なバンドルにグループ分けされた複数本の円形の導電性フィラメントとして提供される、請求項6に記載の織物スリーブ。
【請求項8】
前記実質的に平坦なバンドルを貫通する縫目を介して前記織基板に固定された少なくとも1つの層をさらに含む、請求項7に記載の織物スリーブ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの層は、前記織基板の内向き表面に固定された内側層と、前記織基板の外向き表面に固定された外側層とを含む、請求項8に記載の織物スリーブ。
【請求項10】
前記横糸フィラメントを用いて織られており、前記概して平坦な導電性フィラメントに重なり合う関係で前記両端の間を延びている、少なくとも一対の接地部材をさらに含み、前記接地部材は、接地への動作可能な接続のために、前記両端を超えて軸方向に延長可能である、請求項1に記載の織物スリーブ。
【請求項11】
前記概して平坦な導電性フィラメントの少なくともいくつかは互いに重なる関係で積み重なっており、前記接地部材は、積み重なっている前記概して平坦な導電性フィラメントのうちの1本によって提供される、請求項10に記載の織物スリーブ。
【請求項12】
EMI、RFIまたはESDの少なくとも1つから細長い部材を保護するための巻付可能な織物スリーブを構築する方法であって、
複数本の縦糸フィラメントを少なくとも1本の横糸フィラメントとともに織って、両端の間を縦方向に延びる両側部を有する織基板を形成することを備え、前記両側部は、互いに重なり合う関係になるように中心長手方向軸の周りに巻付可能であり、前記方法はさらに、
前記縦糸フィラメントの少なくともいくつかを、概して平坦な導電性フィラメントとして織ることと、
前記概して平坦な導電性フィラメントの少なくともいくつかをバンドルとして織ることとを備え、各バンドルは、積み重なった、互いに重なる関係にある複数本の前記概して平坦な導電性フィラメントを含む、方法。
【請求項13】
前記縦糸フィラメントの少なくともいくつかを円形の導電性フィラメントとして織ることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
なくとも1つの層を前記織基板に縫合わせることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの層を、前記織基板の内向き表面に固定された内側層と、前記織基板の外向き表面に固定された外側層として提供することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも一対の接地部材を、前記横糸フィラメントと織り合わせられた関係で織ることをさらに含み、前記接地部材は、前記概して平坦な導電性フィラメントに重なり合う関係で前記両端の間を延びており、前記接地部材は、接地への動作可能な接続のために、前記両端を超えて軸方向に延長可能である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
記接地部材を、積み重なっている前記概して平坦な導電性フィラメントのうちの1本として提供することとをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
EMI、RFIまたはESDの少なくとも1つから細長い部材を保護するための巻付可能な織物スリーブであって、
複数本の縦糸フィラメントと、
少なくとも1本の横糸フィラメントとを備え、
前記縦糸フィラメントは前記少なくとも1本の横糸フィラメントとともに織られて織基板を形成しており、前記基板は両端の間を縦方向に延びる両側部を有しており、前記両側部は、互いに重なり合う関係になるように前記スリーブの中心長手方向軸の周りに巻付可能であり、
前記縦糸フィラメントの少なくともいくつかは、概して平坦な導電性フィラメントとして提供され、
前記縦糸フィラメントの少なくともいくつかは円形の導電性フィラメントとして提供され、
前記円形の導電性フィラメントの少なくともいくつかは、実質的に平坦なバンドルにグループ分けされた複数本の円形の導電性フィラメントとして提供され、
前記織物スリーブは、前記実質的に平坦なバンドルを貫通する縫目を介して前記織基板に固定された少なくとも1つの層をさらに含む、織物スリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2015年4月17日に出願された米国仮出願連続番号第62/149,200号、および2016年4月15日に出願された米国実用出願連続番号第15/130,076号の利益を主張し、上記両出願の全体を本明細書に引用により援用する。
【0002】
発明の背景
1.技術分野
本発明は一般に、細長い部材を保護するためのスリーブに関し、より特定的には、スリーブ内に含まれている細長い部材に、電磁干渉、無線周波数干渉、および静電気放電の少なくとも1つに対する保護を与える巻付可能なスリーブに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
電磁干渉(electromagnetic interference:EMI)、無線周波数干渉(radio frequency interference:RFI)および静電気放電(electrostatic discharge:ESD)は、近傍の導電体間の誘導結合および電磁波の伝播による干渉に起因する、電子部品の適切な機能に対して潜在的な問題をもたらすことが知られている。たとえば、自動車における電力システムに関連付けられる導体内の電流は、エンジンの機能を制御する電子モジュールなどのさまざまな電子部品においてスプリアス信号を引起す可能性がある。このような干渉は、車両内の制御モジュールまたは他の部品の性能を低下させる恐れがあり、それによって所望の態様以外の態様で車両を機能させることになる。
【0004】
同様に、コンピュータネットワークまたは他の通信システムにおける電気配線とデータを搬送する線との間の誘導結合は、ネットワークを介して伝送されるデータに対して破損的な影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
EMI、RFIおよびESDの悪影響は、EMI、RFIおよびESDに敏感な部品の適切な遮蔽および接地によって、効果的に取除くことができる。たとえば、望ましくない干渉を受ける可能性がある制御信号を搬送するワイヤは、保護スリーブを使用することによって遮蔽され得る。スリーブは少なくとも部分的に、標準的な円形の(横方向の断面で見た場合)導電性部材から形成されており、導電性部材は典型的に、スリーブの製造時にスリーブと織り合わせられたドレインワイヤを介して接地されている。典型的に、導電性部材は、銀などの導電性金属でコーティングされた、ナイロンなどの円形のポリマーフィラメントの形態を取る。接地部材は、スリーブの長さに沿って撚り合わせられた後、接地源への取付けのためにスリーブの壁から引離されることが知られている。しかし、接地部材をスリーブから外向きに引張ると、EMI、RFIおよび/またはESDが通過可能な開口部がスリーブの壁に形成されることから、潜在的な問題が生じる。
【0006】
このようなRFI、EMI、およびESDスリービングは電気的干渉を取除くことに概して効果的であるが、スリービングは、特に銀などの高価なコーティングが用いられる場合は製造コストが比較的高くなる場合があり、円形の導電性ファイバ構成要素間の導電性接続においていくらかの非効率を示し得る。さらに、コーティングされた部材を用いる場合は、導電性コーティングがすり減ることによって、スリービングのRFI、EMI、および/またはESD保護を与える能力に影響を及ぼし得る。さらに、円形ワイヤまたは円形導体を用いてスリーブのRFI、EMIおよびESDに対する保護バリア全体を構築する場合、円形の導電性部材は典型的に細いワイヤとして提供されるため、引張強度が低く、したがって、使用時に損傷および破損する傾向にあるため、スリーブの遮蔽有効性を低下させ、スリーブ内の保護ワイヤに対する摩耗を引起こして潜在的なアーク放電源をもたらす可能性がある。また、ワイヤは円形であり、さらに比較的小さい直径を有しているので、RFI、EMI、ESDに対する効果的なバリアを作るには多数のワイヤおよび/またはワイヤの巻数/通過回数が必要であり、したがって、スリーブ壁の質量および厚みが一般に大幅に増加し、さらに、スリーブの可撓性も一般に大幅に減少する。したがって、製造コストがより安価であり、可撓性を有しており、軽量であり、小型化されており、効率的に使用でき、摩耗に対する信頼性が高められた、耐用寿命が延びたRFI、EMI、ESD遮蔽が必要である。
【0007】
本発明に従って製造されたスリーブは、本明細書の開示を考慮すると当業者によって容易に認識されるように、上述のスリーブの少なくともそれらの制約を克服するかまたは大幅に最小化し、とりわけ上述の望ましい目標を達成する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
EMI、RFIまたはESDの少なくとも1つから細長い部材を保護するための巻付可能な織物スリーブが提供される。スリーブは、互いに織られて織基板を形成する、複数本の縦糸フィラメントと、少なくとも1本の横糸フィラメントとを含む。織基板は、両端の間を縦方向に延びる両側部を有する。両側部は、スリーブの空洞内の細長い部材の境界を付けるように、互いに重なり合う関係になるように中心長手方向軸の周りに巻付可能である。EMI、RFIおよび/またはESD保護を細長い部材に与えるために、縦糸フィラメントの少なくともいくつかは、概して平坦な薄い導電性フィラメントとして提供される。
【0009】
本発明のさらなる局面に従うと、横糸フィラメントの少なくともいくつかはヒートセットされて、両側部を互いに重なり合う関係になるように付勢することによって、細長い部材の周りのスリーブの組立を容易にし得る。
【0010】
本発明のさらなる局面に従うと、横糸フィラメントの少なくともいくつかは導電性フィラメントとして提供されることによって、スリーブによって与えられるEMI、RFIおよび/またはESD保護をさらに高め得る。
【0011】
本発明のさらなる局面に従うと、縦糸フィラメントの各々は、概して平坦な薄い導電性フィラメントとして提供されることによって、スリーブによって与えられるEMI、RFIおよび/またはESD保護を高め得る。
【0012】
本発明のさらなる局面に従うと、縦糸フィラメントの少なくともいくつかは非導電性フィラメントとして提供されることによって、コストを削減し、スリーブの製造性、カバレージおよび可撓性を高め得る。
【0013】
本発明のさらなる局面に従うと、非導電性の縦糸フィラメントはマルチフィラメントとして提供されることによって、カバレージおよび可撓性を高め得る。
【0014】
本発明のさらなる局面に従うと、非導電性の縦糸フィラメントはモノフィラメントとして提供されることによって、耐摩滅性を高め得る。
【0015】
本発明のさらなる局面に従うと、概して平坦な薄い導電性の縦糸フィラメントの少なくともいくつかは、円形の導電性の縦糸フィラメントによって互いに離間されることによって、内側および/または外側層を織基板に縫合わせる能力を高め得る。
【0016】
本発明のさらなる局面に従うと、円形の導電性の縦糸フィラメントは、複数本の円形の導電性の縦糸フィラメントを含む、概して平坦な編組みバンドルとして提供されることによって、低プロファイルを有するスリーブを維持するために織ることを容易にし得る。
【0017】
本発明のさらなる局面に従うと、縦糸フィラメントおよび横糸フィラメントは、平織パターン、バスケット織パターン、綾織パターン、および模紗織パターンからなるグループの少なくとも1つから選択されるパターンで織られている。
【0018】
本発明の別の局面に従うと、概して平坦な薄い導電性の縦糸フィラメントの少なくともいくつかは、互いに重なり合う関係で積み重なっている複数本の概して平坦な薄い導電性フィラメントを含むことによって、概して平坦な薄い導電性フィラメントの別個のバンドルを形成して、両側部の間を延びるスリーブの幅を増加させる必要なしに、スリーブのEMI、RFIおよび/またはESD保護を高め得る。
【0019】
本発明の別の局面に従うと、束ねられた、概して平坦な薄い導電性フィラメントの少なくとも1本は、接地部材として用いるために延長可能である。
【0020】
本発明の別の局面に従うと、接地部材は、残りの束ねられた、概して平坦な薄い導電性フィラメントとは異なる織パターンで織られることによって、残りの束ねられた、概して平坦な薄い導電性フィラメントから外向きに接地部材を引張ることを容易にし得る。
【0021】
本発明の別の局面に従うと、接地部材は、概して平坦な薄い導電性フィラメントの上に重なる関係で織られることによって、接地への取付けのために接地部材を操作した際に開口部が形成されることを防止し得る。
【0022】
本発明の別の局面に従うと、少なくとも1つの層が織基板に固定されることによって、スリーブの空洞に含まれている細長い部材にさらなる保護を与え得る。
【0023】
本発明の別の局面に従うと、少なくとも1つの層は、円形の導電性の縦糸フィラメントの実質的に平坦な編組みバンドルを貫通する縫目を介して織基板に縫合わされ得る。
【0024】
本発明の別の局面に従うと、織基板に固定された少なくとも1つの層は、織基板の内向き表面に固定された内側層と、織基板の外向き表面に固定された外側層とを含み、それによって、織基板を内側層と外側層との間に挟み得る。
【0025】
本発明の別の局面に従うと、内側層は不透過性シート材として提供されることによって、流体がスリーブの空洞に浸入することに対する高められた保護を与え、それによって、空洞に含まれている細長い部材に高められた保護を与え得る。
【0026】
本発明の別の局面に従うと、内側層はPTFE膜の不透過性シートとして提供され得る。
【0027】
本発明の別の局面に従うと、外側層は、織り合わせられた材料の織物層として提供されることによって、摩滅、熱、流体および/またはアーク抵抗に対する高められた保護を与え得る。
【0028】
本発明の別の局面に従うと、外側層は、一例としておよび非限定的に、ノーメックスなどの難燃性フィラメントを含む織物層として提供され得る。
【0029】
本発明の別の局面に従うと、外側層は、一例としておよび非限定的に、PEEKを含む織物層として提供され得る。
【0030】
本発明の別の局面に従うと、外側層は、モノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントを含む、強固な耐摩滅性糸の織層であり得る。
【0031】
本発明のさらなる局面に従うと、EMI、RFIまたはESDの少なくとも1つから細長い部材を保護するための巻付可能な織物スリーブを構築する方法が提供される。当該方法は、複数本の縦糸フィラメントを少なくとも1本の横糸フィラメントとともに織って、両端の間を縦方向に延びる両側部を有する織基板を形成することを含み、両側部は、互いに重なり合う関係になるように中心長手方向軸の周りに巻付可能である。当該方法はさらに、縦糸フィラメントの少なくともいくつかを、概して平坦な薄い導電性フィラメントとして織ることによって、スリーブの空洞に含まれている細長い部材にEMI、RFIおよび/またはESD保護を与えることを含む。
【0032】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、横糸フィラメントの少なくともいくつかをヒートセットして、両側部を互いに重なり合う関係になるように付勢することをさらに含み得る。
【0033】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、横糸フィラメントの少なくともいくつかを導電性フィラメントとして織ることをさらに含み得る。
【0034】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、横糸フィラメントの少なくともいくつかを、導電性フィラメントとともに提供されるかまたは導電性フィラメントに絡ませられるヒートセット可能な糸として織ることをさらに含み得る。
【0035】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、縦糸フィラメントの各々または実質的にすべてを、概して平坦な薄い導電性フィラメントとして織ることをさらに含み得る。
【0036】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、複数本の概して平坦な薄い導電性の縦糸フィラメントを互いに積み重なった関係で織ることによって、両側部の間を延びるスリーブの幅を増加させる必要なしに、スリーブのEMI、RFIおよび/またはESD保護を高めることをさらに含み得る。積み重なった縦糸フィラメントは、概して平坦な薄い導電性の縦糸フィラメントの2つ以上を含んで積み重ねられ得る。概して平坦な薄い導電性の縦糸フィラメントの少なくともいくつかは互いに積み重ねられ得るが、残りはフィラメントの単一ストリップのままであってもよいことが認識されるべきである。
【0037】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、積み重なった縦糸フィラメント内の概して平坦な薄い導電性フィラメントの少なくとも1本を、延長可能な接地部材として提供することをさらに含み得る。
【0038】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、接地部材を、概して平坦な薄い導電性フィラメントの少なくとも1本の上に重なる関係で織ることをさらに含み得る。
【0039】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、縦糸フィラメントの少なくともいくつかを非導電性の縦糸フィラメントとして織ることをさらに含み得る。
【0040】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、非導電性の縦糸フィラメントをマルチフィラメントとして織ることをさらに含み得る。
【0041】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、非導電性の縦糸フィラメントをモノフィラメントとして織ることをさらに含み得る。
【0042】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、縦糸フィラメントの少なくともいくつかを円形の導電性フィラメントとして織ることと、概して平坦な薄い導電性フィラメントのうちの隣接しているフィラメント同士を、円形の縦糸導電性フィラメントによって互いに離間させることとをさらに含み得る。
【0043】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、円形の導電性の縦糸フィラメントを、概して平坦な編組み導電性フィラメントのバンドルとして織ることをさらに含み得る。
【0044】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、縦糸フィラメントおよび横糸フィラメントを、平織パターン、バスケット織パターン、綾織パターン、および模紗織パターンからなるグループから選択されるパターンで織ることをさらに含み得る。
【0045】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、複数本の概して平坦な薄い導電性の縦糸フィラメントを互いに積み重なった関係で織ることによって、両側部の間を延びるスリーブの幅を増加させる必要なしに、スリーブのEMI、RFIおよび/またはESD保護を高めることをさらに含み得る。積み重なった縦糸フィラメントは、概して平坦な薄い導電性の縦糸フィラメントの2つ以上を含んで積み重ねられ得る。概して平坦な薄い導電性の縦糸フィラメントの少なくともいくつかは互いに積み重ねられ得るが、残りはフィラメントの単一ストリップのままであってもよいことが認識されるべきである。
【0046】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、少なくとも1つの追加の層を織基板の外側および/または内側面に固定することによって、スリーブの空洞に含まれている細長い部材にさらなる保護を与えることをさらに含み得る。
【0047】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、内側層を織基板の内向き表面に固定し、外側層を織基板の外向き表面に固定し、それによって、織基板を内側層と外側層との間に挟むことをさらに含み得る。
【0048】
本発明の別の局面に従うと、当該方法は、内側および/または外側層を、縦糸モノフィラメントのバンドルを貫通して織基板に縫合わせることを含み得る。
【0049】
本発明の別の局面に従うと、当該方法は、内側および/または外側層を、両側部に隣接している縦糸モノフィラメントのバンドルを貫通して織基板に縫合わせることを含み得る。
【0050】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、内側層を不透過性シート材として提供することによって、スリーブの空洞への流体の進入に対する高められた保護を提供し、それによって、空洞に含まれている細長い部材に高められた保護を与えることをさらに含み得る。
【0051】
本発明のさらなる局面に従うと、当該方法は、外側層を、織り合わせられた材料の織物層として提供することによって、摩滅、熱、流体および/またはアーク抵抗に対する高められた保護を与えることをさらに含み得る。
【0052】
したがって、少なくとも部分的に本発明に従って平坦な薄い導電性の縦糸フィラメントを用いて作成された織スリーブは、細長い部材をEMI、RFIおよび/またはESDから遮蔽するのに有用であり、当該スリーブは、平坦であろうと、円筒形状であろうと、ボックス形状であろうと、またはその他の形状であろうと、任意の所望の形状を有して構築され得る。さらに、当該スリーブを、製造時に織基板の製作幅および長さを調整することによって事実上いかなるパッケージサイズにも対応させることができ、所望であれば、さまざまな閉止機構を備え付けることができる。さらに、本発明に従って薄い平坦な導電性の縦糸フィラメントを用いて製造されたスリーブは、スリーブの保護強度、導電率、ならびにしたがってEMI、ESDおよび/またはRFIに対する遮蔽能力に影響を及ぼすことなく、3Dにおいて少なくともある程度は可撓性を有しており、それによって、必要に応じてスリーブを少なくともわずかに曲げることによって、スリーブによって与えられるEMI、ESDおよび/またはRFI保護に影響を及ぼすことなく細長い部材を最良に引回すことができる。
【0053】
これらのおよび他の特徴および利点は、以下の現状の好ましい実施形態および最良の実施態様の詳細な説明、添付の特許請求の範囲ならびに添付の図面に鑑みて、当業者に容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】保護すべき細長い部材の周りに巻付けられて示されている、本発明の現状の好ましい一実施形態に従って構築された巻付可能なスリーブの概略斜視図である。
図1A】保護すべき細長い部材の周りに巻付けられて示されている、本発明の現状の好ましい別の実施形態に従って構築された巻付可能なスリーブの概略斜視図である。
図1B】概して線1B〜1Bに沿った図1のスリーブの断面図である。
図1C】概して線1C〜1Cに沿った図1Aのスリーブの断面図である。
図2A】本発明の実施形態に従って構築されたスリーブの縦糸フィラメントパターンの実施形態を示す概略平面図であり、横糸フィラメントは明確にするために仮想線で示されている。
図2B】本発明の実施形態に従って構築されたスリーブの縦糸フィラメントパターンの実施形態を示す概略平面図であり、横糸フィラメントは明確にするために仮想線で示されている。
図2C】本発明の実施形態に従って構築されたスリーブの縦糸フィラメントパターンの実施形態を示す概略平面図であり、横糸フィラメントは明確にするために仮想線で示されている。
図2D】本発明の実施形態に従って構築されたスリーブの縦糸フィラメントパターンの実施形態を示す概略平面図であり、横糸フィラメントは明確にするために仮想線で示されている。
図3A図2Aの縦糸フィラメントパターンを有するスリーブの織壁の概略断面図である。
図3B図2Bの縦糸フィラメントパターンを有するスリーブの織壁の概略断面図である。
図3C図2Cの縦糸フィラメントパターンを有するスリーブの織壁の概略断面図である。
図3D図2Dの縦糸フィラメントパターンを有するスリーブの織壁の概略断面図である。
図3E】本発明のさらなる局面に従って織られた壁の概略断面図である。
図3F】本発明のさらに別の局面に従って織られた壁の概略断面図である。
図3G】本発明のさらに別の局面に従って織られた壁の概略断面図である。
図3H】本発明のさらに別の局面に従って織られた壁の概略断面図である。
図4A】全体的に図1Aに示されているスリーブの対応する図3Aの中間織層に固定された内側層および外側層を示す図3Aと同様の図である。
図4B】全体的に図1Aに示されているスリーブの対応する図3Bの中間織層に固定された内側層および外側層を示す図3Bと同様の図である。
図4C】全体的に図1Aに示されているスリーブの対応する図3Cの中間織層に固定された内側層および外側層を示す図3Cと同様の図である。
図4D】全体的に図1Aに示されているスリーブの対応する図3Dの中間織層に固定された内側層および外側層を示す図3Dと同様の図である。
図5】本発明の一局面に従って示される横糸フィラメントの部分側面図である。
図6A】本発明の局面に従ってスリーブを構築するために用いる織パターンを示す図である。
図6B】本発明の局面に従ってスリーブを構築するために用いる織パターンを示す図である。
図6C】本発明の局面に従ってスリーブを構築するために用いる織パターンを示す図である。
図6D】本発明の局面に従ってスリーブを構築するために用いる織パターンを示す図である。
図6E】本発明の局面に従ってスリーブを構築するために用いる織パターンを示す図である。
図6F】本発明の局面に従ってスリーブを構築するために用いる織パターンを示す図である。
図6G】本発明の局面に従ってスリーブを構築するために用いる織パターンを示す図である。
図6H】本発明の局面に従ってスリーブを構築するために用いる織パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
好ましい実施形態の詳細な説明
より詳細に図面を参照して、図1は、本発明の現状の好ましい一実施形態に従って構築された巻付可能な保護スリーブ(以下、単にスリーブ10と称する)を全体的に示す。スリーブ10は、互いに織られてEMI、RFIおよび/またはESD保護織基板(単に壁16とも称する)を形成する、複数本の縦糸フィラメント12と、少なくとも1本または複数本の横糸フィラメント14とを含む。壁16は、両端24,26の間を中心長手方向軸22と概して平行に縦方向に延びる両側部18,20を有する。両側部18,20は、スリーブ10の円周方向に囲まれた空洞30内の保護すべき細長い部材28の境界を付けるように、互いに重なり合う関係になるように中心長手方向軸22の周りに巻付可能である。縦糸フィラメント12の少なくともいくつかは、中心長手方向軸22を概して横切る横方向の断面で見た場合に概して直線的なプロファイルを有する、概して平坦な薄い導電性フィラメント12′として提供されて、スリーブ10の内部に束ねられている細長い部材28のための電磁干渉(EMI)、無線周波数干渉(RFI)、および/または静電気放電(ESD)保護能力の少なくとも1つをスリーブ10に与える。電気ケーブルまたはバンドルワイヤなどの細長い部材28は、囲まれると、誘導干渉などの任意の望ましくない干渉からの最大の保護を受け、それによって、たとえばワイヤ28のバンドルに接続された制御モータなどの任意の電気部品に最大の動作性能を与える。さらに、スリーブ10は、束ねられたワイヤ28がいずれかの隣接する電気部品に干渉することを防止する。壁16の縦糸および横糸フィラメント12,14は、図6A図6Hに示されるような個別のパターンまたはパターンの組合せを含む、以下により詳細に記載するようなさまざまな構成およびパターンで織られ得るため、図1は主に壁16の巻付可能な性質を示すことを意図している。
【0056】
本発明のさらなる局面に従うと、スリーブ10は、壁16が中心長手方向軸22の周りに巻かれるように自動的に付勢されて、両側部18,20を互いに重なり合う関係にするように、自己巻付型スリーブとして構築され得る。自己巻付の付勢は、少なくとも1本の横糸フィラメント14または複数本の横糸フィラメント14をヒートセットすることによってスリーブ10の壁16内に付与され得る。したがって、横糸フィラメント14の少なくとも1本または複数本は、ヒートセット可能な1本または複数本のポリマーフィラメントとして提供され得、ヒートセット可能な1本または複数本の横糸フィラメント14は、一部であろうとすべてであろうと、好ましくは、一例としておよび非限定的に、ポリエステルなどの熱可塑性物質のモノフィラメントであり、それによって、スリーブ10をヒートセットするかまたは他の方法で付勢して筒状にすることができる。
【0057】
本発明のさらなる局面に従うと、縦糸および/または横糸フィラメント12,14の少なくともいくつかは、主に壁16の耐摩滅性を高めるモノフィラメントであろうと、および/または、主に壁16に、空洞30内への汚染物質の浸入を抑制するカバレージとも称される高められたバリア保護、軟らかい質感、高められたドレープ、および高められたノイズ抑制特性を与えるマルチフィラメントであろうと、非導電性フィラメント12″′として提供され得る。用途によっては、非導電性フィラメントは、一例としておよび非限定的に、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、綿、レーヨン、および上記の全ての材料の難燃性(fire retardant:FR)バージョンから形成され得るが、FR材料として提供される場合は、高い温度定格は一般に必要とされない。FR特性とともに高い温度定格が望まれる場合には、いくつかの現状の好ましい非導電性部材は、たとえば、m−アラミド(ノーメックス、コーネックス、ケルメル)、p−アラミド(ケブラー、トワロン、テクノーラ)、PEI(ウルテム)、PPS、およびPEEKを含む。
【0058】
本発明のさらなる局面に従うと、横糸フィラメント14の少なくともいくつかは導電性の横糸フィラメント14′として提供されて、EMI、RFIおよび/またはESD保護をさらに高め得る。横糸フィラメント14の少なくともいくつかが導電性の横糸フィラメント14′として提供される場合、導電性の横糸フィラメント14′は好ましくは、一例としておよび非限定的に、金属化糸などの、比較的細い円形のワイヤフィラメントまたは導電性糸として提供されて、スリーブの筒状構成への自己巻付能力および軽量化能力を促進する。強度および製造性を高めるために、導電性の横糸フィラメント14′は、その両方がヒートセット可能なフィラメント29(図5)として提供され得る非導電性モノフィラメントまたは非導電性マルチフィラメントなどの、非導電性の横糸フィラメント14の周りに提供されるかまたはその周りに絡ませられる細いワイヤフィラメント31をさらに含み得、それによって、導電性ワイヤ31を介したさらなるEMI、RFIおよび/またはESD保護と、ヒートセット可能な非導電性フィラメント29を介した壁16に対するヒートセット可能な自己巻付能力とを含む2つの機能を1本の糸内に提供する。両フィラメント29,31を含むハイブリッド糸は本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて用いられ得ること、または、導電性の横糸フィラメント14′およびヒートセット可能な横糸フィラメント29は本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて互いに別々に組込まれ得ることが認識されるべきである。さらに、スリーブの主な強度は、平坦な比較的薄い導電性の縦糸フィラメント12′の強度の増加によって提供されること、および、導電性の横糸フィラメント14′は、強度が比較的増加した、平坦な比較的薄い導電性の縦糸フィラメント12′を有する結果として、比較的小径のワイヤとして提供され得ることも理解されるべきである。
【0059】
平坦な比較的薄い導電性の縦糸フィラメント12′に加えて、本発明のさらなる局面に従うと、縦糸フィラメント12の少なくともいくつかは細いワイヤの円形の導電性の縦糸フィラメント12″として提供され得、さらに、縦糸フィラメント12の少なくともいくつかは、モノフィラメントであろうと、および/またはマルチフィラメントであろうと、壁16の製造性を向上させることが分かっている非導電性の縦糸フィラメント12″′として提供され得る。平坦な導電性の縦糸フィラメント12′は約90〜100パーセントの含有量で提供され、それによって、EMI、RFIおよび/またはESD保護の大部分をスリーブ10に与えることができ、導電性の円形の縦糸フィラメント12″は約10〜0パーセントの含有量で提供されて、以下にさらに記載されるように、主に多層スリーブの製造を容易にし得る。図2Aおよび図3Aでは、実質的にすべての縦糸フィラメント12が平坦な比較的薄い導電性の縦糸フィラメント12′として提供されており、側部18,20は1本の非導電性糸または複数本の非導電性糸12″′を有している。図2Bおよび図3Bでは、平坦な比較的薄い導電性の縦糸フィラメント12′は両側部18,20の間で中央領域CR全体にわたって織られているのに対して、細い導電性の円形の縦糸フィラメント12″は両側部18,20の各々に隣接して織られており、別個のバンドル33内に織られているとして示されている。各バンドル33は、互いに編まれることによってなどで互いに織り合わせられた複数本の細い導電性の円形の縦糸フィラメント12″(ミニブレードとも称する)を含んでおり、バンドル33を、平坦な比較的薄い導電性の縦糸フィラメント12′と概して同様の形状で、概して平坦であるように形成している。非導電性の縦糸フィラメント12″′は、側部18,20の少なくとも一方に沿って織られ得、一例としておよび非限定的に、外側および内側部18,20の両方を形成するとして示されている。図2Cおよび図3Cでは、壁16は図2Bの壁と同様に構築されているが、壁16の中央領域CRの一部は導電性の円形の縦糸フィラメント12″を用いて織られており、残りはすべて図2Bで記載したのと同じままであるかまたは実質的に同じままである。図2Dおよび図3Dでは、導電性の平坦な薄い縦糸フィラメント12′、導電性の円形の縦糸フィラメント12″、および非導電性の縦糸フィラメント12″′の混合が、示されるように、両側部18,20の間で壁16の幅全体にわたって織られている。当然のことながら、さまざまな種類の縦糸フィラメント12′,12″,12″′が織られるパターンは、意図される用途について所望通りに選択され得ることを認識すべきである。
【0060】
図3E図3Hには、対応する図3A図3Dと同様の織パターンが示されているが、平坦な比較的薄い導電性の縦糸フィラメント12′の少なくともいくつかは、互いに重なる関係で積み重なっている複数本の平坦な比較的薄い導電性の縦糸フィラメント12′を含む別個のバンドル35として提供されるとして示されている。示される実施形態では、一例としておよび非限定的に、3本の導電性の縦糸フィラメント12′が両側部18,20の間で壁16のかなりの部分にわたって互いに積み重なった関係で示されており、複数本の束ねられた導電性の円形の縦糸フィラメント12″は、両側部18,20に直接隣接して両側部18,20まで延びる両方のエッジ領域内に織られている。両方のエッジ領域の各々の内部の複数本の導電性の円形の縦糸フィラメント12″は上述のようにフィラメント12″の個別の別個のバンドル33として織られ得、各バンドル33は複数本の導電性の円形のワイヤフィラメント12″を含んでおり、これらのワイヤフィラメントは、共通のバンドル33内の各フィラメント12″が共通の横糸フィラメント14の上下で波打つように織られるように、並んだ、互いに概して平面の関係で織り合わせられている。
【0061】
図3G図3Hでは、図3C図3Dと同様の織パターンが一例としておよび非限定的に示されており、複数本の導電性の縦糸フィラメント12′が互いに積み重なった関係にあり、中間領域MRの両側に別個のバンドル35を形成するとして示されている。中間領域MR、および両側部18,20の各々に隣接した領域は、各々が、複数本の導電性の円形の縦糸フィラメント12″を含んで織られている。各中間領域MR内の、および両エッジ領域内の、複数本の導電性の円形の縦糸フィラメント12″はフィラメント12″の個別の別個のバンドル33として織られ得、各バンドル33は複数本の導電性の円形のワイヤフィラメント12″を含んでおり、これらのワイヤフィラメントは、共通のバンドル33内の各フィラメント12″が共通の横糸フィラメントの上下で波打つように織られるように、互いに緩く編まれて並んでいる関係にある。複数本の単一の平坦な導電性の縦糸フィラメント12′が、平坦な導電性フィラメント12′の積み重なったバンドル35と導電性の円形フィラメント12″のバンドル35との間を延びるとして示されている。単一の平坦な導電性の縦糸フィラメント12′を、壁16をその筒状構成になるように巻付けたときに互いに重なり合う関係にし、それによって、単一の平坦な導電性の縦糸フィラメント12′の二重層を効果的に形成して、重なり合っている領域ORにおけるEMI、RFIおよび/またはESD保護を高めることができる。一方、導電性の縦糸フィラメント12′の積み重なったバンドル35は、高められたEMI、RFIおよび/またはESD保護を既に提供しており、同時に、平坦なフィラメント12′の薄い形状のため、低プロファイルおよび低重量を維持している。
【0062】
上記に記載した、図2A図2Dおよび図3A図3Dに示される各実施形態は、導電性の円形の縦糸フィラメント12″のこのようなバンドル33を含み得ることが認識されるべきであり、円形の縦糸フィラメント12″は記載され図示されている。導電性の円形のワイヤフィラメント12″のバンドル33は、内側および外側層32,34などの追加の層を壁16に取付けて、図1A図1Cおよび図4A図4Dに示されるような、本発明の別の局面に従うスリーブ10′を形成することを容易にする。バンドル33は、層16,32,34を互いに針で縫合わせて、バンドル33の内部および導電性の円形の縦糸フィラメント12″のうちの隣接するフィラメント間を容易に貫通して、互いに層を固定する縫目38を形成することを自由に可能にする。内側層32は、中間織基板16の内向き表面に固定されて示されており、外側層34は、縫目38を介して中間織基板16の外向き表面に固定されて示されている。内側層32は、一例としておよび非限定的に、PTFE膜などの不透過性シート材として提供されて、流体がスリーブ10′の空洞30に浸入することを防止し得る。外側層34は、難燃性フィラメント、PEEKフィラメント、または所望通りの他のフィラメントを含む、織られたモノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントを含む、織り合わせられた糸の強固な耐摩滅性の織物層として提供され得る。
【0063】
薄い平坦な導電性の縦糸フィラメント12′は、任意の好適な固体の、平坦化された金属材料の導電性ストリップまたはバンドとして提供され得、EMI、ESD、RFI機能を実行する際に銅が特に効果的な材料であることが分かっている。可撓性および軽量化を促進するために、厚みが約0.01〜0.06mmであり幅が約0.1〜1.2mmである薄い平坦な導電性の縦糸フィラメント12′が一例としておよび非限定的に提供され得る。
【0064】
スリーブ10はさらに、縦糸部材として織られた、最後に両端24,26の間を延びる、複数のドレイン部材(接地部材36とも称する)を含む。接地部材36は、絡ませられた円形ワイヤ、編まれた円形ワイヤ、平坦なワイヤなどの、意図される用途について所望通りのワイヤ材料として提供され得、一例としておよび非限定的に、錫コーティングされた銅またはニッケルコーティングされた銅材料を含み得、一例としておよび非限定的に、約0.1〜2mmなどの任意の所望の直径を有して提供され得る。複数の接地部材36は1つのグループで、または互いに並んで当接関係にある2つ以上の織られた接地部材36の複数のグループで、提供される。複数のグループで提供される場合、当該グループは、所望通りにスリーブ10,10′の周囲に分散され得る。接地部材36がグループで、または2つ以上の接地部材36で形成されるため、適用時、その全体を本明細書に引用により援用する米国特許番号第6,639,148号に記載されているように、特に接地部材36のうちの別々の接地部材の端を互いに反対の軸方向に引張って、接地源への取付けのために当該別々の接地部材の自由端をスリーブ10の端24,26から軸方向外向きに延ばしても、グループ分けされた接地部材36は常に互いに接触し続ける。重要な向上は、接地部材36が、導電性の縦糸フィラメント12′,12″とは別々にであろうと導電性の縦糸フィラメント12′,12″と組合わされてであろうと、導電性の縦糸フィラメント12′,12″の上または下に重なる関係で織られている結果として提供される。導電性の縦糸フィラメント12′,12″の少なくとも1本と径方向に並んでいる結果として、個別の接地部材36をそれらの軸方向に延びた設置位置まで引張っても、EMI、RFI、ESDが通過可能となる開口部または空隙はスリーブ10の壁16に形成されない。したがって、下または上に重なる導電性の縦糸フィラメント12′,12″が存在する結果として、接地部材をそれらの延びた使用位置まで延ばしても、EMI、RFI、ESDに対する高められた保護が壁16によって提供される。
【0065】
上述のように接地部材36を別々のワイヤとして提供することに加えて、接地部材36は、導電性の縦糸フィラメント12′の積み重なったバンドル35内に織られた、概して平坦な薄い導電性フィラメント12′のうちの1本を介して提供され得る。壁16を長さ切断すると、平坦な導電性フィラメント12′のうちの1本を、接地への取付けのために各端24,26から軸方向外向きに引張ることができる。接地への取付けのために接地部材36を外向きに引張ることをさらに容易にするために、バンドル35内の接地部材36として用いられる導電性フィラメント12′は、バンドル35内に残っている平坦な導電性フィラメント12′とは異なる織パターンを有して織られ得る。一例としておよび非限定的に、接地部材36として用いられることが意図されている、選択された平坦な導電性フィラメント12′は綾織、バスケット織または朱子織パターンで織られ得るのに対して、積み重なったバンドル35内に残っている1本または複数本の平坦な導電性フィラメント12′は平織パターンなどのさらに目の詰んだ織パターンで織られ得、さまざまな種類の織パターンが図6A図6Hに示されている。当然のことながら、当業者は、本明細書の開示を考慮すると、意図されるように非接地部材を壁16内に維持しつつ、意図される接地部材36をスリーブ10から軸方向外向きにより容易に引張ることを可能にする異なるパターンを容易に認識するであろう。接地部材36は、平坦な導電性フィラメント12′とは別の円形の接地部材として提供される場合、残りの縦糸部材とは異なる織パターンを有して織られて、接地への取付けのために接地部材36を外向きに引張ることを容易にし得ることを認識すべきである。
【0066】
本発明に従って構築されたスリーブ10は、たとえば、概して平坦な、または円形の、などの、任意の所望の保護スリーブの形態を取るように構築され得ることを認識すべきである。したがって、本発明はスリーブのプロファイルに限定されず、ゆえに、ケーブルおよび配線などの細長い部材28を組織化してEMI、RFIおよび/またはESDから保護するための安全な、耐久性のある、可撓性を有する覆いを提供する任意のプロファイルスリーブの製造および構築を考えている。図6A図6Hは、本発明の異なる実施形態に従ってスリーブを構築するために用いる異なる織パターンを示す。図6Aは平織パターンを示しており、図6Bおよび図6Cは異なる綾織パターンを示しており、図6D図6Eは異なるバスケット織パターンを示しており、図6Dは標準的な(2×1)のバスケット織と称されることが多く、図6Eは(3×1)のバスケット織であり、図6F図6Hは異なる模紗織パターンを示している。描かれている織パターンの変更例も可能であり、ゆえに、示されている織パターンは例示的かつ非限定的であることが意図されていると考えられる。さらに、本発明に従って構築されたスリーブは、一例としておよび非限定的に、両側部18,20に隣接した平織パターン、ならびに、綾織および/またはバスケット織パターンなどの中央領域CR全体にわたる異なる1つまたは複数の織パターンなどの、異なる織パターンの1つ以上を含み得ると考えられる。
【0067】
本発明に従って構築されたスリーブ10は、スリーブ10内に含まれている細長い部材28に低周波数および高周波数において最適な抵抗率およびEMI、ESD、RFI遮蔽を与え、同時に、EMI、ESDおよび/またはRFIに対する高レベルの表面カバレージおよび保護を与える平坦な薄い導電性の縦糸フィラメント12′の結果として、低質量、減少した断面プロファイル、および増加した可撓性を有することが経験的に分かっている。質量の減少および可撓性の増加は、EMI、ESDおよび/またはRFIに対する同程度の保護を与える円形ワイヤと比較して、増加した表面積カバレージ、ならびに平坦な薄い導電性の縦糸フィラメント12′の減少した相対的な厚みおよび質量から得られる。さらに、平坦な薄い導電性の縦糸フィラメント12′は、細い円形ワイヤと比較して引張強度が増加しており、それによって、使用時の損傷および起こり得るアーク放電のリスクを低下させる。本発明に従って構築されたスリーブ10,10′は製造コストがさらに安価であり、さまざまな用途における使用のための多数の幅、高さおよび長さおよび構成に適合させることができる。
【0068】
明らかに、上記の教示に鑑みて、本発明の多くの変形例および変更例が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲内で、本発明は、具体的に記載されている態様とは異なった態様で実施されてもよいことが理解されるべきである。
図1
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H