(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0004】
上述した従来の採血回路セットでは、血液成分採取用バッグ等を含む複数のバッグは、遠心分離装置に設けられたフックに1つずつ個別に吊り下げる必要がある。また、バッグを吊り下げるためのフックは、遠心分離装置の後側の高い位置に設けられており、小柄な作業者にとっては、遠心分離装置に対するバッグの取外しが容易ではなかった。
【0005】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、採血回路セットにおける複数のバッグを血液成分分離装置に簡単に取り付けることを可能にする医療用バッグハンガー及び採血機器パッケージを提供することを目的とする。
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、吊下げ可能な複数のバッグを有する採血回路セットの前記複数のバッグを吊下げる医療用バッグハンガーであって、血液成分分離装置に吊下げ可能に構成されたハンガー本体と、前記ハンガー本体に設けられ、前記複数のバッグが引っ掛けられたフック部と、を備え、前記ハンガー本体は、前記フック部が設けられたベースプレートを有し、前記複数のバッグは、前記ベースプレートの表面に並べて配置されていることを特徴とする。
【0007】
上記の構成を採用した本発明の医療用バッグハンガーによれば、採血回路セットを構成する複数のバッグが予めまとまっているため、使用に際しては医療用バッグハンガーをそのまま血液成分分離装置に吊り下げるだけで、複数のバッグを血液成分分離装置に簡単に取り付けることができる。また、血液成分分離装置における手の届きやすい場所に医療用バッグハンガーを引っ掛けるフックを設けておくことにより、小柄な作業者でも楽に取り外しを行うことができる。また、採血回路セットを収容するパッケージ内において、採血回路セットにおけるチューブ等がベースプレートの背面側に収納されることで、チューブ等の痕がバッグに付くことを防止することができる。
【0008】
上記の医療用バッグハンガーにおいて、前記フック部は、前記ベースプレートの上部表面に設けられており、前記ハンガー本体は、初期状態で前記ベースプレートの前記上部表面及び前記フック部を覆うカバー部をさらに有し、前記カバー部を開けることにより、前記フック部から前記複数のバッグを取り外すことが可能に構成されていてもよい。
【0009】
この構成により、初期状態ではカバー部は閉じているため、医療用バッグハンガーを血液成分分離装置に吊り下げる際に意図せずにバッグがハンガー本体から外れてしまうことがない。また、血液処理後においてはカバー部を開くことによりフック部が露出するため、複数のバッグを容易にハンガー本体から取り外すことができる。
【0010】
上記の医療用バッグハンガーにおいて、前記フック部は、前記複数のバッグの各々が引っ掛けられ且つ前記複数のバッグが個別に取り外し可能に構成された複数のフックを有していてもよい。
【0011】
この構成により、採血後における複数のバッグの取り扱いをより簡単にすることができる。
【0012】
上記の医療用バッグハンガーにおいて、前記採血回路セットは、前記複数のバッグにそれぞれ接続された複数のチューブを有し、前記ハンガー本体は、前記複数のチューブをまとめて留めることが可能な引っ掛け部を有していてもよい。
【0013】
この構成により、複数のチューブがまとまり、採血回路セットの他の部分の取付けを容易にすることができる。
【0014】
また、本発明は、複数のバッグを有する採血回路セットと、前記複数のバッグが取り付けられた医療用バッグハンガーと、前記採血回路セット及び前記医療用バッグハンガーを収容したパッケージ本体と、を備え、前記医療用バッグハンガーは、上記いずれかの医療用バッグハンガーであることを特徴とする。
【0015】
このような構成を採用した本発明の採血機器パッケージによれば、パッケージ本体から医療用バッグハンガーを取り出して、医療用バッグハンガーを血液成分分離装置に吊り下げるだけで、複数のバッグを血液成分分離装置に簡単に取り付けることができる。
【0016】
上記の採血機器パッケージにおいて、前記採血回路セットは、複数のチューブを介して前記複数のバッグと接続されたカセットと、送液ラインを介して前記カセットに接続され、血液が流入及び流出するように構成されたチャネルとを有し、前記パッケージ本体は、底壁部及び周壁部を有する箱状のケースと、前記ケースの前記周壁部の上端部に接合された蓋材とを備え、前記パッケージ本体内において、前記医療用バッグハンガーは、前記カセット及び前記チャネルの上に載せられていてもよい。
【0017】
この構成により、採血回路セットをパッケージ本体から取り出す際には、第1ステップとして複数のバッグが取り付けられた医療用バッグハンガーを取り出し、次に、第2ステップとしてカセットを取り出し、第3ステップとしてチャネルを取り出すことができる。これにより、取付け手順が分かりやすく、取付作業者は、一層簡単に採血回路セットを血液成分分離装置に取り付けることができる。特に、血液成分分離装置の本体上に採血機器パッケージを載せて、当該本体上で採血機器パッケージを開封して採血
回路セットを取り出す場合に、上記手順で取り付けることにより、スムーズに取り付けることができる。
【0018】
上記の採血機器パッケージにおいて、前記医療用バッグハンガーは、折り畳み可能に構成されており、折り畳まれた状態で前記パッケージ本体内に収容されていてもよい。
【0019】
この構成により、医療用バッグハンガーのサイズが大きくなってしまう場合でも、採血機器パッケージをコンパクトに構成することができる。
【0020】
上記の採血機器パッケージにおいて、前記パッケージ本体は、前記血液成分分離装置の側面に引っ掛けて吊下げ可能に構成されていてもよい。
【0021】
この構成により、取付作業者の手の届きやすい範囲に省スペースで採血機器パッケージを用意しておくことができる。
【0022】
上記の採血機器パッケージにおいて、前記パッケージ本体は、前記採血回路セットを収容したバッグ部を備え、前記バッグ部は、開口部を介して互いに連通した複数の収容室を有し、前記採血回路セットの構成要素が前記複数の収容室に分けて収容されていてもよい。
【0023】
この構成により、採血回路セットを血液成分分離装置に取り付ける際には、バッグ部の複数の収容室から採血回路セットの構成要素を順次取出して、効率的に取付け作業を行うことができる。
【0024】
上記の採血機器パッケージにおいて、前記バッグ部は、前面壁に前記開口部が形成されたバッグ本体部と、前記開口部を覆い且つ前記バッグ本体部の前記前面壁に少なくとも部分的に剥離可能に取り付けられたカバーシート部材とを有し、前記複数の収容室は、前記バッグ本体部の前記前面壁と前記カバーシート部材との間に形成される第1収容室と、前記バッグ本体部内に形成された第2収容室とを有していてもよい。
【0025】
この構成により、まず、カバーシート部材をバッグ本体部から少なくとも部分的に剥がすことにより第1収容室から採血回路セットの一部を取り出し、次に、開口部を介して第2収容室から採血回路セットの残りの部分を取り出すことができる。従って、簡易構成であり、且つ採血回路セットを簡単に取り出すことができる。
【0026】
上記の採血機器パッケージにおいて、前記採血回路セットは、複数のチューブを介して前記複数のバッグと接続されたカセットと、送液ラインを介して前記カセットに接続されたチャネルと、前記カセットに接続された採血針とを有し、前記複数のバッグが取り付けられた前記医療用バッグハンガーは、前記第1収容室に収容されており、前記カセット、前記チャネル及び前記採血針は、前記第2収容室に収容されており、前記第2収容室において、前記カセットは、前記チャネル及び前記採血針よりも前側に収容されていてもよい。
【0027】
この構成により、採血回路セットをバッグ部から取り出す際には、第1ステップとして第1収容室から医療用バッグハンガーを取り出し、第2ステップとして第2収容室の手前側からカセットを取り出し、第3ステップとして第2収容室からチャネル及び採血針を取り出すことができる。これにより、取付け手順が分かりやすく、取付作業者は、一層簡単に採血回路セットを血液成分分離装置に取り付けることができる。
【0028】
本発明の医療用バッグハンガー及び採血機器パッケージによれば、採血回路セットにおける複数のバッグを血液成分分離装置に簡単に取り付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る医療用バッグハンガー及び採血機器パッケージについて好適な複数の実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1において、採血システム10は、供血者から血液(全血)を連続的に取り出して体外で遠心分離することにより、特定の血液成分(本実施形態では、血小板)を採取し、残りの血液成分を供血者に戻す血液アフェレーシスシステムとして構成されている。なお、採血システム10は、適宜の改変を施すことにより、全血の採血を行うシステムにも適用可能である。
【0032】
まず、
図1に示す採血システム10の概略を説明する。この採血システム10は、血液成分を貯留及び流動するための採血回路セット12と、採血回路セット12に遠心力を付与する遠心分離装置14とを備える。採血回路セット12は、供血者から取り出された全血が導入され全血を複数の血液成分に遠心分離する1次分離器としてのチャネル18を有する。
【0033】
遠心分離装置14は、チャネル18に遠心力を付与するためのロータ78を有する。ロータ78の上面82aには、ロータ78の回転軸心aを中心に周方向に延在する装着溝86が形成されており、チャネル18は当該装着溝86に装着可能である。以下、採血回路セット12及び遠心分離装置14について詳細に説明する。
【0034】
採血回路セット12は、汚染防止や衛生のため、1回の使用毎に使い捨てにされる。採血回路セット12は、採血針25を有する採血・返血部26と、抗凝固剤導入部24と、チャネル18と、複数のバッグ16と、これらに接続されたカセット22とを備える。
【0035】
チャネル18は、送液ライン17を介してカセット22に接続されている。一方、複数のバッグ16は、複数のチューブ20を介してカセット22に接続されている。複数のバッグ16は、補助バッグ28と、PPP用バッグ30と、保存液用バッグ32と、血小板用バッグ34とを含む。
【0036】
チャネル18は、帯状の袋に形成されており、遠心分離装置14のロータ78に設けられた装着溝86に装着され、血液が導入し、流動し及び流出するように構成されている。また、チャネル18は、供血者の全血が供給される第1チャンバ40(血液分離部)を内部に有する軟質バッグであり、容易に折り曲げたり、畳んだり、丸めたりすることが可能である。第1チャンバ40は、チャネル18の一端部18aから他端部18bまで延在している。遠心分離処理時において、第1チャンバ40に導入された全血は、一端部18aから他端部18bまで流動する間に遠心力によって遠心分離される。
【0037】
チャネル18の一端部18aには、導入チューブ46が連結されている。導入チューブ46は、カセット22を介して採血・返血部26に接続されている。採血・返血部26には、供血者からの初流血を採取するサンプリング部49が接続されている。また、採血・返血部26は、カセット22を介して、抗凝固剤導入部24に接続されている。
【0038】
抗凝固剤導入部24は、ACD液保存バッグ87(
図3参照)と接続可能に構成されている。採血回路セット12の使用時には、初期操作として、ACD液保存バッグ87から抗凝固剤導入部24を介して、抗凝固剤であるACD液がチャネル18に供給され、これにより、全血の凝固が抑制される。
【0039】
採血回路セット12を使用した成分採血においては、供血者から採血針25を介して取り出された全血は、導入チューブ46が接続する一端部18aから装着溝86に装着されたチャネル18の第1チャンバ40に流入する。流入した全血は、チャネル18の延在方向に沿って他端部18b側に向かって流動する。全血は、ロータ78の回転に伴う遠心力を受けることで、その流動中に遠心分離がなされる。本実施形態の場合、全血は、遠心分離によって、軽比重成分(上清成分)である血漿(乏血小板血漿:PPP)と、重比重成分(沈降成分)である濃厚赤血球と、中比重成分であるバフィーコート(BC)とに分離される。
【0040】
チャネル18の他端部18bには、第1〜第3導出チューブ48a〜48cが接続されている。
【0041】
第1導出チューブ48aは、カセット22内に設けられたリザーバ50に接続されている。第1チャンバ40の遠心分離により生成された濃厚赤血球は、第1導出チューブ48aによりリザーバ50へと導かれる。
【0042】
第2導出チューブ48bは、カセット22を介して、PPP用バッグ30に接続されたチューブ52と、カセット22内に設けられたリザーバ50とに接続されている。全血の遠心分離により第1チャンバ40にて生成された血漿は、第2導出チューブ48bを介してカセット22へと導かれ、一部はチューブ52を介してPPP用バッグ30へと導入され、残りの血漿はリザーバ50へと導入される。リザーバ50に貯留された血液成分(濃厚赤血球及び血漿)は、遠心分離処理後に、採血・返血部26へと導出され、採血針25を介して供血者に戻される。
【0043】
第3導出チューブ48cは、第2チャンバ54を有する2次分離器としての濃縮器56に接続されている。全血の遠心分離により第1チャンバ40にて生成されたバフィーコートは、第3導出チューブ48cにより、濃縮器56へと導入される。バフィーコートには、白血球成分と多血小板血漿(血小板含有成分)が含まれる。
【0044】
濃縮器56は、チャネル18からのバフィーコートを第2チャンバ54内に導入し、ロータ78の回転に伴う遠心力によってバフィーコートをさらに遠心分離する。この濃縮器56は、複数の段差付き円錐状に形成されており、ロータ78に取り付けられた状態で、円錐状の頂部側が遠心中心から遠い側に配置され、円錐状の底面側が遠心中心に近い側に配置される。
【0045】
濃縮器56において、バフィーコートは、重比重成分である白血球と、軽比重成分である血小板(具体的には、血漿及び血小板を含む血小板含有成分)とに分離させられる。白血球は、濃縮器56に形成された複数の段差によって捕捉される。血小板は、濃縮器56の出口(底面側)に接続された中継チューブ58へと流出し、カセット22及びチューブ60を介して血小板用バッグ34へと導入される。また、血小板用バッグ34には、血小板の導入に伴って、保存液用バッグ32からチューブ62、カセット22及びチューブ60を介して、血小板保存液(PAS液)が供給される。
【0046】
なお、導入チューブ46、第1導出チューブ48a、第2導出チューブ48b及び中継チューブ58は、結束シース64によって束ねられている。本実施形態において、送液ライン17は、導入チューブ46、第1〜第3導出チューブ48a〜48c、濃縮器56及び中継チューブ58により構成されている。以下、採血回路セット12のうち、チャネル18及び送液ライン17により構成される部分を「チャネルセット36」という。
【0047】
遠心分離装置14は、成分採血において繰り返し使用される機器であり、例えば、医療施設や採血用車両等に備えられる。遠心分離装置14は、高さ方向に比較的長く形成された箱状の装置本体70と、装置本体70の上部後方側から上方に突出した支柱88に支持されたモニター74と、採血回路セット12のカセット22が取り付け可能に構成された取付部76と、装置本体70内に収容された遠心ユニット72と、装置本体70の前面側を開閉可能な扉81とを備える。
【0048】
装置本体70は、採血回路セット12の複数のバッグ16を内部に収容し又は外部に保持するとともに、採血回路セット12に取り込まれた血液の遠心分離を制御する機能を有している。
【0049】
モニター74は、タッチパネル式であり、血液の遠心分離を行う際の装置本体70の動作状態等を表示する表示手段としてだけでなく、装置本体70の操作をするための指示を入力する入力手段を兼ねている。モニター74の下部近傍にはフック90が設けられている。具体的に、フック90は、モニター74が支持された支柱88の上端付近の前側に設けられている。このフック90は、小柄な者でも手が届きやすい場所に位置している。
【0050】
取付部76は、装置本体70の上部側に配置され、カセット22を嵌め込み保持するように構成される。また、詳細は図示していないが、取付部76は、複数のポンプ、複数のクランプ及び複数のセンサを備える。取付部76へのカセット22の取り付けに伴い、採血回路セット12のチューブ20やカセット22が構成する経路上には、これらのポンプ、クランプ及びセンサが配置される。
【0051】
遠心ユニット72は、鉛直な軸心を中心に回転可能なロータ78と、このロータ78を回転駆動する駆動部80(モータ)とを有する。ロータ78は、チャネル18が装着されるように構成された上側ロータ82と、上側ロータ82と同軸に回転可能な下側ロータ84とを有する。上側ロータ82は、下側ロータ84に対して相対回転可能であり、その上面82aには、チャネル18を装着するための装着溝86が設けられている。
【0052】
下側ロータ84は、駆動部80の出力軸に連結されている。上側ロータ82を下側ロータ84の2倍の速度で回転させるために、上側ロータ82と下側ロータ84とはピニオンアセンブリ85により連結されている。ピニオンアセンブリ85は、例えば、ロータ78の回転軸心aと垂直な軸心を中心に回転可能に下側ロータ84に支持された中間ギヤと、非回転部位に設けられ中間ギヤの下部に噛合う下側ギヤと、回転軸心aを中心に上側ロータ82に設けられた上側ギヤとを有する。
【0053】
このようなピニオンアセンブリ85により、下側ロータ84が1回転する毎に、上側ロータ82は2回転する。これにより、遠心分離のためにチャネル18がロータ78によって連続的に回転しても、チャネル18と、このチャネル18に接続された複数のチューブ(導入チューブ46等)との間の捩じれは所定範囲内に収まる。そのため、チャネル18と複数のチューブとの間のロータリーシールは不要とされている。
【0054】
なお、上側ロータ82を下側ロータ84の2倍の速度で回転させるための手段は、上記のピニオンアセンブリ85に限られず、他の構成であってもよい。例えば、上側ロータ82と下側ロータ84とをそれぞれ別々のモータで回転させることにより、上側ロータ82を下側ロータ84の2倍の速度で回転させてもよい。
【0055】
図2において、上述した複数のバッグ16は、本発明の実施形態に係る医療用バッグハンガー92(以下、単に「ハンガー92」ともいう)に取り付けられている。このハンガー92は、採血回路セット12に当初から組み合わされている器具である。すなわち、採血回路セット12の初期状態(製品提供状態)において、複数のバッグ16はハンガー92に予め取り付けられている。
【0056】
具体的に、このハンガー92は、遠心分離装置14に吊下げ可能に構成されたハンガー本体94と、ハンガー本体94に設けられたフック部96とを備える。ハンガー本体94は、硬質素材からなる板状あるいはシート状のベースプレート98と、ベースプレート98の上部を覆うカバー部100とを有する。ベースプレート98は、複数のバッグ16を横方向に並べて配置できる大きさを有し、本実施形態では、平面視で角が丸い横長の長方形状に形成されている。
【0057】
フック部96はベースプレート98の上部に設けられている。本実施形態において、フック部96は、複数のバッグ16の各々が引っ掛けられ且つ複数のバッグ16が個別に取り外し可能に構成された複数のフック102を有する。複数のフック102は、横方向(長方形状のベースプレート98の長軸方向)に間隔をおいて配置されており、ベースプレート98の前面側に突出している。また、本実施形態において、複数のフック102のうちの1つのフック102(中央のフック102a)は、ACD液保存バッグ87(
図3参照)を引っ掛けて吊り下げるためのフックである。
【0058】
ベースプレート98の上部中央には、引っ掛け用開口104が設けられている。
図3のように、ハンガー92は、遠心分離装置14に設けられたフック90に引っ掛け用開口104を引っ掛けることで、遠心分離装置14に吊り下げることができる。また、
図2において、ベースプレート98の下部左側及び下部右側には、各バッグ16から延出したチューブ20をまとめて留めるための留め用フック108がそれぞれ設けられている。
【0059】
なお、留め用フック108の個数及び配置位置は、図示例のものに限られない。例えば、留め用フック108は、ベースプレート98の下部左側及び下部右側の一方だけに設けられてもよい。あるいは、ベースプレート98の下部中央(もしくはその付近)に留め用フック108が1つだけ設けられてもよい。
【0060】
カバー部100は、板状又はシート状に形成されており、初期状態でベースプレート98の上部表面及びフック部96を覆っている。
図4のように、カバー部100を開けることにより、フック部96から複数のバッグ16を個別に取り外すことが可能である。具体的に、カバー部100は、ヒンジ部110を介して、ベースプレート98の上端縁と繋がっている。
【0061】
本実施形態ではヒンジ部110は、ベースプレート98及びカバー部100よりも薄肉に形成された薄肉部である。なお、ヒンジ部110は、軸部材によりベースプレート98に対してカバー部100を回動可能に連結した構造であってもよい。
【0062】
このようなハンガー92は、プラスチック等の硬質素材(例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート等)により構成されるとよい。
【0063】
次に、上記のように構成された本実施形態に係るハンガー92の作用及び効果を説明する。
【0064】
図1に示す採血システム10を用いて供血者から成分採血を行うための準備(セットアップ)として、採血回路セット12が遠心分離装置14に装着される。遠心分離装置14への採血回路セット12の装着においては、具体的には、カセット22が取付部76に取り付けられ、複数のバッグ16が遠心分離装置14に吊り下げられ、チャネル18がロータ78に装着される。
【0065】
この場合、本実施形態に係るハンガー92によれば、採血回路セット12を構成する複数のバッグ16が予めまとまっている。このため、使用に際しては、
図3のように、ハンガー92をそのまま遠心分離装置14に設けられたフック90に吊り下げるだけで、複数のバッグ16を遠心分離装置14に簡単に取り付けることができる。また、このフック90は、遠心分離装置14における手の届きやすい場所に設けられているため、小柄な作業者でも楽に取り外しを行うことができる。
【0066】
本実施形態の場合、採血回路セット12にはACD液保存バッグ87が含まれていないが、ハンガー92にはACD液保存バッグ87用のフック102aも設けられている。従って、
図3のように、後からACD液保存バッグ87をハンガー92のフック102aに引っ掛けることができる。なお、ACD液保存バッグ87の口部には、抗凝固剤導入部24が接続される。
【0067】
本実施形態では、ハンガー本体94は、フック部96が設けられた硬質素材からなるベースプレート98を有し、複数のバッグ16は、ベースプレート98の表面に並べて配置されている。この構成により、採血回路セット12を収容するパッケージ内において、採血回路セット12におけるチューブ等がベースプレート98の背面側に収納されることで、チューブ等の痕がバッグ16に付くことを防止することができる。
【0068】
本実施形態では、カバー部100は初期状態でベースプレート98の上部表面及びフック部96を覆い、カバー部100を開けることにより、フック部96から複数のバッグ16を取り外すことが可能に構成されている。この構成により、初期状態ではカバー部100は閉じているため、ハンガー92を遠心分離装置14に吊り下げる際に意図せずにバッグ16がハンガー92から外れてしまうことがない。また、血液処理後においては、
図4のようにカバー部100を開くことによりフック部96が露出するため、複数のバッグ16を容易にハンガー92から取り外すことができる。
【0069】
本実施形態では、フック部96は、複数のフック102を有するため、採血後において複数のバッグ16をより簡単に取り扱うことができる。
【0070】
本実施形態では、ハンガー本体94は、複数のチューブ20をまとめて留めることが可能な留め用フック108を有するため、複数のチューブ20がまとまり、採血回路セット12の他の部分の取付けを容易にすることができる。
【0071】
次に、上述した採血回路セット12と、ハンガー92と、これらを収容したパッケージ本体とを備えた採血機器パッケージについて、いくつかの実施形態を説明する。
【0072】
図5において、本発明の第1実施形態に係る採血機器パッケージ120は、採血回路セット12と、複数のバッグ16が取り付けられたハンガー92と、採血回路セット12及びハンガー92を収容したパッケージ本体122とを備える。採血回路セット12は、このようにハンガー92とともにパッケージ本体122内に収容された状態で、ユーザに提供される。
【0073】
パッケージ本体122は、底壁部124及び周壁部126を有する箱状のケース128と、ケース128の周壁部126の上端部に接合された蓋材130とを備える。底壁部124は、略平坦な四角形状である。周壁部126は、底壁部124の外周縁から上方に突出しており、その上端部内側に開口126aが形成されている。また、周壁部126の上端部には外方に突出するフランジ127が設けられている。ケース128は、比較的硬質の素材(例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート等)により構成されている。また、ケース128は、透明性を有する素材により構成されているとよい。
【0074】
蓋材130は、フランジ127の上面に、例えば、熱シール等により、剥離可能に接合された軟質なシート状の部材である。従って、採血回路セット12を使用する際には、
図6のように、蓋材130をフランジ127から剥がすことにより、パッケージ本体122を開封し、採血回路セット12を容易に取り出すことができる。
【0075】
図5に示すように、初期状態(開封前)のパッケージ本体122内おいて、医療用バッグハンガー92は、カセット22及びチャネル18の上に載せられている。具体的に、ハンガー92は、複数のバッグ16が配置された側を上側にして、カセット22及びチャネル18の上に載せられている。このため、採血回路セット12におけるチューブの大部分は、ハンガー92の下に収容されている。
【0076】
また、本実施形態では、
図5に示すように、初期状態のパッケージ本体122内において、採血針25等を含む採血・返血部26は、ハンガー92に設けられたフック102a(ACD液保存バッグ87用のフック)に引っ掛けて取り付けられている。従って、採血・返血部26は、ハンガー92の上に載せられた状態になっている。なお、
図5において、採血針25にはキャップ25aが装着されている(
図6及び
図11においても同様である)。
【0077】
次に、上記のように構成された採血機器パッケージ120の作用及び効果を説明する。
【0078】
採血機器パッケージ120の使用に際し、
図6のように、ケース128から蓋材130を剥がして、ケース128内に収容された採血回路セット12を露出させる。すなわち、採血機器パッケージ120を開封する。そして、採血回路セット12をパッケージ本体122から取り出す際には、第1ステップとして複数のバッグ16が取り付けられたハンガー92を取り出し、次に、第2ステップとしてカセット22を取り出し、第3ステップとしてチャネル18を取り出す。これにより、取付け手順が分かりやすく、取付作業者は、簡単に採血回路セット12を遠心分離装置14に取り付けることができる。
【0079】
この場合、例えば、
図7のように、遠心分離装置14の装置本体70の上面に採血機器パッケージ120を載せて開封し、採血回路セット12を取り出す。具体的には、上記第1ステップとして、複数のバッグ16が取り付けられたハンガー92をケース128から取り出して、遠心分離装置14に設けられたフック90に引っ掛けることにより、ハンガー92を吊り下げる。このとき、
図7では図示を省略しているが、ハンガー92のフック部96には採血・返血部26が引っ掛けられているため(
図5、
図6参照)、採血・返血部26もハンガー92を介して一時的に遠心分離装置14に取り付けられた状態になる。このため、この後に行うカセット22及びチャネル18の取出しの際に邪魔にならず、作業がしやすい。
【0080】
次に、上記第2ステップとして、ケース128からカセット22を取り出し、カセット22を遠心分離装置14の取付部76に装着する。この場合、パッケージ本体122が邪魔になるようであれば、装置本体70の上面からパッケージ本体122を他の場所に移してからカセット22を取付部76に装着すればよい。
【0081】
次に、上記第3ステップとして、ケース128からチャネル18を取り出し、装置本体70内に設けられたロータ78(
図1参照)に装着する。これにより、
図8のように、採血回路セット12が遠心分離装置14に取り付けられた状態になる。
【0082】
このように、本実施形態に係る採血機器パッケージ120によれば、遠心分離装置14の装置本体70上に採血機器パッケージ120を載せて、当該装置本体70上で採血機器パッケージ120を開封して採血
回路セット12を取り出す場合に、上記手順(第1〜第3ステップ)で取り付けることにより、スムーズに取り付けることができる。
【0083】
なお、ハンガー92のサイズが大きくなってしまう場合には、ハンガー92が半分に折り畳み可能に構成され、折り畳んだ状態のハンガー92がパッケージ本体122内に収容されていてもよい。これにより、ハンガー92のサイズが大きくなってしまう場合でも、採血機器パッケージ120をコンパクトに構成することができる。
【0084】
図9において、本発明の第2実施形態に係る採血機器パッケージ140は、採血回路セット12と、複数のバッグ16が取り付けられたハンガー92と、採血回路セット12及びハンガー92を収容したパッケージ本体142とを備える。採血回路セット12は、このようにハンガー92とともにパッケージ本体142内に収容された状態で、ユーザに提供される。
【0085】
パッケージ本体142は、遠心分離装置14の側面に引っ掛けて吊下げ可能に構成されている。具体的には、パッケージ本体142の上部には吊下げ孔144が設けられており、
図12のように、遠心分離装置14の側面に設けられたフック143に吊下げ孔144を引っ掛けることにより、パッケージ本体142を遠心分離装置14の側面に吊り下げることができるようになっている。
【0086】
図9において、パッケージ本体142は、採血回路セット12を収容したバッグ部146と、バッグ部146の上端に取り付けられた上端部材148とを備える。バッグ部146は、開口部150を介して互いに連通した複数の収容室を有し、採血回路セット12の構成要素が複数の収容室に分けて収容されている。
【0087】
具体的に、バッグ部146は、
図9及び
図10に示すように、前面壁152に開口部150が形成されたバッグ本体部154と、開口部150を覆い且つバッグ本体部154の前面壁152に少なくとも部分的に剥離可能に取り付けられたカバーシート部材156とを有する。
【0088】
図11に示すように、複数の収容室は、バッグ本体部154の前面壁152とカバーシート部材156との間に形成された第1収容室158と、バッグ本体部154内に形成された第2収容室160とを有する。第1収容室158にハンガー92が収容され、第2収容室160にカセット22、チャネル18及び採血・返血部26が収容されている。また、第2収容室160において、カセット22は、チャネル18及び採血・返血部26よりも前側に収容されている。
【0089】
バッグ本体部154は、柔軟な樹脂製素材によって袋状に形成されている。図示例のバッグ本体部154は、上側の奥行が小さく、下方に向かって奥行が大きくなる形状に形成されている。バッグ本体部154からカセット22、チャネル18及び採血・返血部26を取り出しやすいように、バッグ本体部154の開口部150は、バッグ本体部154の高さ方向中央部から上部にかけて比較的大きく形成されている。バッグ本体部154の前面壁152は、第1収容室158と第2収容室160とを仕切る隔壁を構成している。
【0090】
カバーシート部材156は、バッグ本体部154と同様の素材によってシート状に形成されている。カバーシート部材156は、カバーシート部材156の周縁部近傍において、バッグ本体部154及び上端部材148に剥離可能に接合されている。本実施形態では、カバーシート部材156は、熱シールによって、バッグ本体部154及び上端部材148に剥離可能に接合されている。
図9において、熱シールによって形成されたシール部162(クロスハッチングで示された部分)は、カバーシート部材156の周縁部に略沿って正面視で四角形状に周回している。
【0091】
カバーシート部材156の上端部157は、三角形状に形成されており、その三角形状の底辺に相当する箇所に、四角形状のシール部162の一辺162aが形成されている。これにより、カバーシート部材156の上端部157は、容易にめくれるようになっている。シール部162の残りの三
辺162b〜162dは、バッグ本体部154における前面壁152の左右端縁及び下縁と、カバーシート部材156の左右端縁及び下縁とを接合している。
【0092】
なお、開口部150の上端位置を
図10に示す位置よりも下げることにより、バッグ本体部154の上部において上端部材148の下方に前面壁152を残し、その部分にシール部162の一辺162aが形成されてもよい。
【0093】
カバーシート部材156は、バッグ本体部154から完全に分離できる必要はない。少なくともバッグ本体部154からカバーシート部材156を部分的に剥離することで開口部150及びハンガー92を露出できるように、シール部162が形成されていればよい。従って、例えば、シール部162の下辺162dに代えて剥離不可能な固着部が形成され、カバーシート部材156の下縁部はバッグ本体部154から剥離不可能に固着されていてもよい。
【0094】
なお、バッグ本体部154及びカバーシート部材156は、透明性を有する素材により構成されているのがよい。
【0095】
次に、上記のように構成された採血機器パッケージ140の作用及び効果を説明する。
【0096】
図12に示すように、採血機器パッケージ140は、遠心分離装置14の側面に引っ掛けておくことができる。この構成により、取付作業者の手の届きやすい範囲に省スペースで採血機器パッケージ140を用意しておくことができる。
【0097】
採血機器パッケージ140の使用に際しては、
図9において仮想線で示すように、バッグ本体部154からカバーシート部材156を剥がして、ハンガー92及び開口部150を露出させる。すなわち、採血機器パッケージ140を開封する。なお、開封の際、カバーシート部材156の上端部157をつまんで引っ張ることにより、カバーシート部材156を簡単に剥がすことができる。
【0098】
この場合、パッケージ本体142のバッグ部146は、開口部150を介して互いに連通した複数の収容室を有し、採血回路セット12の構成要素が複数の収容室に分けて収容されている。この構成により、採血回路セット12を遠心分離装置14に取り付ける際には、バッグ部146の複数の収容室から採血回路セット12の構成要素を順次取出して、効率的に取付け作業を行うことができる。
【0099】
特に、本実施形態では、複数の収容室は、バッグ本体部154の前面壁152とカバーシート部材156との間に形成される第1収容室158と、バッグ本体部154内に形成された第2収容室160とを有する。この構成により、まず、カバーシート部材156をバッグ本体部154から少なくとも部分的に剥がすことにより第1収容室158から採血回路セット12の一部を取り出し、次に、開口部150を介して第2収容室160から採血回路セット12の残りの部分を取り出すことができる。従って、簡易構成であり、且つ採血回路セット12を簡単に取り出すことができる。
【0100】
また、特に、本実施形態では、複数のバッグ16が取り付けられた医療用バッグハンガー92が第1収容室158に収容されており、カセット22、チャネル18及び採血針25が第2収容室160に収容されており、第2収容室160において、カセット22は、チャネル18及び採血針25よりも前側に収容されている。この構成により、採血回路セット12をパッケージ本体142から取り出す際には、第1ステップとして複数のバッグ16が取り付けられたハンガー92を取り出し、第2ステップとしてカセット22を取り出し、第3ステップとしてチャネル18及び採血針25を取り出すことができる。これにより、取付け手順が分かりやすく、取付作業者は、簡単に採血回路セット12を遠心分離装置14に取り付けることができる。
【0101】
具体的には、上記第1ステップでは、遠心分離装置14の側面に吊り下げられたバッグ部146の第1収容室158から複数のバッグ16が取り付けられたハンガー92を取り出して、遠心分離装置14に設けられたフック90に引っ掛けることにより、ハンガー92を吊り下げる。次に、第2ステップでは、第2収容室160からカセット22を取り出し、カセット22を遠心分離装置14の取付部76に装着する。次に、第3ステップでは、第2収容室160からチャネル18及び採血・返血部26を取り出し、装置本体70内に設けられたロータ78(
図1参照)にチャネル18を装着する。
【0102】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。