特許第6821605号(P6821605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エス.ア.ロイスト ルシェルシュ エ デヴロップマンの特許一覧

<>
  • 特許6821605-排ガスを処理する装置および方法 図000006
  • 特許6821605-排ガスを処理する装置および方法 図000007
  • 特許6821605-排ガスを処理する装置および方法 図000008
  • 特許6821605-排ガスを処理する装置および方法 図000009
  • 特許6821605-排ガスを処理する装置および方法 図000010
  • 特許6821605-排ガスを処理する装置および方法 図000011
  • 特許6821605-排ガスを処理する装置および方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6821605
(24)【登録日】2021年1月8日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】排ガスを処理する装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/83 20060101AFI20210114BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20210114BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20210114BHJP
   B01D 53/70 20060101ALI20210114BHJP
   B01D 53/72 20060101ALI20210114BHJP
   B01D 53/64 20060101ALI20210114BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   B01D53/83
   B01D53/50 100
   B01D53/68 100
   B01D53/68 200
   B01D53/70ZAB
   B01D53/72
   B01D53/64
   F23J15/00 Z
【請求項の数】22
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-564885(P2017-564885)
(86)(22)【出願日】2016年6月21日
(65)【公表番号】特表2018-531144(P2018-531144A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】EP2016064311
(87)【国際公開番号】WO2016207159
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2019年5月10日
(31)【優先権主張番号】2015/5378
(32)【優先日】2015年6月22日
(33)【優先権主張国】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】514311209
【氏名又は名称】エス.ア.ロイスト ルシェルシュ エ デヴロップマン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ ボワ、ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ラルー、ドゥナティアン
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0125749(US,A1)
【文献】 特開2003−159512(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0134086(US,A1)
【文献】 特開2002−263447(JP,A)
【文献】 特開2015−085303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/85
F23J 3/00−99/00
B05B 1/00− 3/18、
7/00− 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスの汚染物質の除害のための粉末状化合物を炉管(500)に注入するための装置(10)であって、
周辺管(220)に接続されたチャンバ(230)であって、周辺ガス(210)を前記チャンバおよび前記周辺管内に送風するように配置された第1の送風要素および前記周辺管を介して前記炉管に接続されるように構成された前記チャンバ(230)と、
前記チャンバに接続された直径DP1を有する第1の部分(221)と、下流端部(222a)を有する、第1の部分とは反対側の、直径DP2を有する第2の部分(222)とを含み、炉管と連通するように意図された前記周辺管(220)と
粉末状化合物を輸送するための輸送管(120)であって、輸送ガス(110)を前記輸送管内に、同時に周辺ガスの噴流に送風するように構成された第2送風要素(100)に接続されるように意図され、前記輸送管は、直径DTおよび下流端部(121)を有する、前記輸送管(120)とを備え、
前記輸送管(120)は、前記チャンバ(230)を不透過的に通過して、前記チャンバ(230)から前記周辺管(220)内に、前記周辺管(220)に同心円状に出て、
前記輸送管の下流端部(121)が、前記周辺管の前記第1の部分と前記第2の部分との間の割線面内に位置するように、前記輸送管(120)は、前記周辺管の前記第1の部分(221)を同心かつ長手方向に貫通する、前記装置(10)において、
前記周辺管の前記第2の部分は、前記周辺管の前記第2の部分の直径(DP2)以上の長さLを有し、前記輸送管(120)の直径(DT)および前記周辺管(222)の前記第2部分の直径(DP2)は、
【数1】
の関係によって結ばれていることを特徴とする粉末状化合物を注入するための装置(10)。
【請求項2】
前記周辺管の前記第2の部分の前記下流端部(222a)は、前記炉管に直接接続されるように配置されている、請求項1に記載の粉末状化合物を注入するための装置。
【請求項3】
前記周辺管は、上流端部(224a)を備えた上流部(224)と、下流端部(225a)を備えた下流部(225)とを含み、前記直径DP2よりも小さい直径DP3を有する第3の部分(223)をさらに含み、前記上流端部は、前記周辺管の前記第2の部分の前記下流端部に接続されるように意図され、前記下流端部は、前記炉管に接続されるように意図される、請求項1に記載の粉末状化合物を注入するための装置。
【請求項4】
前記周辺管の前記第3の部分の前記下流端部(225a)は、前記炉管に直接接続されるように配置されている、請求項3に記載の粉末状化合物を注入するための装置。
【請求項5】
前記周辺管の前記第3の部分の前記上流部分(224)は、円錐台の形状を有する、請求項3または請求項4に記載の粉末状化合物を注入するための装置。
【請求項6】
前記チャンバ(230)に接続され、前記チャンバ内および前記周辺管(220)内に周辺ガス(210)を送風するように構成された第1の送風要素(200)と、
前記輸送管(120)に接続され、前記輸送管に輸送ガス(110)を送風するように構成された第2の送風要素(100)と、
輸送ガスの流れの方向に対して前記第2の送風要素の下流において、粉末状化合物のタンクおよび輸送管に接続され、輸送ガスが投与された粉末状化合物を駆動させるために構成された粉末状化合物を投与するための手段(130)とをさらに含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の粉末状化合物を注入するための装置。
【請求項7】
前記第1の送風要素(200)および前記第2の送風要素(100)は、前記第1送風要素(200)の流量と第2の送風要素(100)の流量を別々に調整することができる流量調整手段を含む、請求項6に記載の粉末状化合物を注入するための装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の粉末状化合物を注入するための少なくとも1つの装置を備えた炉管。
【請求項9】
請求項1に記載の粉末状化合物を注入するための装置を用いた、排ガスの汚染物質の除害用の粉末状化合物による炉管内の排ガスの処理方法であって、
質量流量Qを有する前記排ガス中に前記粉末状化合物を輸送することを意図された質量流量Qを有する輸送ガスの噴流を注入するステップと、
同時に、輸送ガスの噴流に対して周辺にガスの噴流を注入して、質量流量Qを有する周辺ガスの噴流の形成するステップとを含む方法において、
前記排ガスの質量流量に対する前記周辺ガスの質量流量が、0.05%〜0.25%の比Q/Qを形成することを特徴とする炉管内の排ガスの処理方法。
【請求項10】
前記搬送ガスは速度Vを有し、前記周辺ガスは速度Vを有し、前記周辺ガスの速度Vは、2V≦V≦20Vに従って前記輸送ガスの速度Vの2倍〜20倍である、請求項9に記載の炉管内の排ガスの処理方法。
【請求項11】
前記排ガスの質量流量Qに対して前記周辺ガスの質量流量Qに加えられる前記輸送ガスの質量流量Qが、0.1〜0.5%の比(Q+Q)/Qを形成する、請求項9または10に記載の炉管内の排ガスの処理方法。
【請求項12】
前記粉末状化合物が質量流量Qで注入され、前記粉末状化合物の質量流量に対する前記輸送ガスの質量流量Qは、5〜10の比Q/Qを形成する、請求項9から請求項11までのいずれか1項に記載の炉管内の排ガスの処理方法。
【請求項13】
輸送ガスおよび周辺ガスの噴流の注入は、炉管の内面で行われることを特徴とする請求項9から請求項12までのいずれか1項に記載の排ガスの処理方法。
【請求項14】
処理される排ガスの温度は、850℃〜1150℃である、請求項9から請求項13までのいずれか1項に記載の排ガスの処理方法。
【請求項15】
処理される排ガスの速度は、2m/s〜150m/sである、請求項9から請求項14までのいずれか1項に記載の排ガスの処理方法。
【請求項16】
輸送ガスおよび周辺ガスの噴流の速度は、互いに独立して調整される、請求項9から請求項15までのいずれか1項に記載の排ガスの処理方法。
【請求項17】
前記輸送ガスおよび/または前記周辺ガスは、互いに独立した空気である、請求項9から請求項16までのいずれか1項に記載の排ガスの処理方法。
【請求項18】
前記排ガスは、酸性ガス(すなわち、硫化および/またはハロゲン化されたもの)、重金属、フラン、ダイオキシンおよびそれらの混合物からなる群から選択される汚染物質を含む、請求項9から請求項17までのいずれか1項に記載の排ガスの処理方法。
【請求項19】
前記酸性ガスは、SO、SO、HCl、HF、HBr、およびこれらの混合物からなる群から選択される汚染物質を含む、請求項18に記載の排ガスの処理方法。
【請求項20】
前記粉末状化合物は、カルシウムおよびマグネシウムから選択されるアルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物および/または酸化物、またはそれらの混合物を含む、請求項9から請求項19までのいずれか1項に記載の排ガスの処理方法。
【請求項21】
前記粉末状化合物は、式aCaCO・bMgCO・xCaO・yMgO・zCa(OH)・tMg(OH)・ulを有するカルシウム−マグネシウム化合物を含み、ここで、lは不純物を表し、a、b、x、y、z、tおよびuは、前記カルシウム−マグネシウム化合物の全重量に対してそれぞれ0〜100%、u≦5%の質量分率であり、質量分率の合計a+b+x+y+z+t+uは、前記カルシウム−マグネシウム化合物の全重量の100%に等しい、請求項9から請求項20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記粉末状化合物は、50重量%を超えるCa(OH)を含む、請求項9から請求項21までのいずれか1項に記載の排ガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状の化合物を有する炉管内の燃焼排ガス(煙道ガス)を処理する方法(排ガスの処理方法とも呼ばれる)およびその実施のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明では、炉管は、排ガスが通過する後燃焼領域(ボイラーとも呼ばれる)および/または任意の管または任意の装置、後燃焼領域の下流、および前記排ガスを排気するための煙突の上流を意味する。
【0003】
本発明が目的とする方法および装置は、液体または固体の従来の燃料または代替燃料の燃焼からの排ガスの処理に使用することができる。これらの燃焼または熱処理は、チャンバ(例えば、ボイラー、炉、焼却炉)内で実行されるが、これに限定されるものではなく、以下では区別せずに炉と呼ぶものとする。
【0004】
これらの燃焼は、一般的に煙突によって大気中に排出される高温の排ガスを生成する。飛散灰の他に、これらの排ガスは一般的に、酸性ガス(例えば、HCl、HF、SO、SO...)と、他の汚染物質(例えば、重金属(Hg、...)、ダイオキシンおよび/またはフラン)を含む。これらのガスは、環境および健康に有害であり、排ガスを大気中に排気する前にそれらを排除することが望ましい。
【0005】
この目的のために、除害と呼ばれる公知の方法は、炉管内の粉末状の反応物質の排ガスへの注入を含む。このような化合物には、例えば、特にカルシウム−マグネシウム化合物(例えば、粉末状消石灰)または炭素化合物(例えば、活性炭または亜炭コークス)が含まれる。粉末状消石灰(消石灰とも呼ばれる)は、主にCa(OH)水酸化カルシウムからなる固体粒子のセットを意味する。他の鉱物化合物(例えば、ナトリウム化合物(例えば、ナトリウムの炭酸塩または重炭酸塩)、またはダイオキシン、フランおよび/または水銀を含む重金属の除害用に使用される化合物(例えば、セピオライトまたはハロイサイトのようなフィロシリケートを含有するもの、またはこれに相当するものなど)もまた使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0125749号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0337073号明細書
【特許文献3】国際特許出願公開第2007/000433号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような除害方法は、炉管内の粉末状化合物の輸送流量、注入流量および放射状分散の点で、現在のところ調整することが困難である多くの制約を課している。
【0008】
まず第1に、粉末(粉末状化合物)の炉管への注入は、粉末が内部に不十分に分散し、ある場合には、あまりにも大き過ぎるこれらのガスの圧力の効果の下で炉管の壁に凝集することを防止するために、前記炉管内に存在する排ガスの流量よりも多い流量で行われなければならない。そのような排ガスの速度は、30m/s以上、さらには50m/s以上に達する可能性がある。
【0009】
第2に、炉管への注入点への粉末の輸送は、輸送管内の粉末の摩擦/磨耗および/または目詰まりの現象に至る危険性をもたらす速度よりも大きい約15〜20m/sの速度で実施されなければならず、および後者の現象は、粉末が消石灰を含む場合、前記粉末の炭酸化にもつながる。
【0010】
最後に、ガス状汚染物質の均質かつ効率的な除害を可能にするために、粉末は、(炉管内の排ガスの流れに関して)炉管の横断面全体にわたって均等に分散されなければならない。この分散は、特に、炉管の大きさおよびそれを通過するガスの流量に依存する。このような管は、一般的に、その中心に「脈部」(すなわち、排ガスの速度がより速い領域)があり、これは炉管内の粉末の均質な分布に悪影響を及ぼす。これらの分散の問題を克服するために、「貫通ノズル」(すなわち、炉管を貫通し、従って排ガスを全面的に受ける金属ダクト)が現在使用されている。
【0011】
それにもかかわらず、これらの「貫通ノズル」には依然として多くの欠点がある。
【0012】
まず第1に、それらが炉管内で曝される温度および酸性条件に耐えることは非常に困難であり、それらは、非常に限定された耐用年数(特に、それらが高い温度を受ける場合は1ヶ月未満)を有する。従って、それらは、無視できない運転コストを発生させることに加えて、場合によっては数日間、炉を停止する必要がある頻繁な交換が必要となる。貫通ノズルを交換するために、炉の各停止後に燃焼を再開することは、燃焼中にこれらの炉が迅速かつ容易にそれらの平衡に達することがない場合に問題となる。
【0013】
これらの「貫通ノズル」はまた、粉末状化合物の特性およびその凝集力のために内部の目詰まりを起こす。
【0014】
従って、これらの「貫通ノズル」は、炉管内に粉末の良好な分散を可能にするものの、前記ノズルは炉の最適な運転を可能にしないので(特に、メンテナンスの点で)意図された用途にあまり適合しない多くの実施上の問題を提起する。
【0015】
特許文献1には、吸収剤を輸送するためのノズルと周辺空気を注入するためのノズルであって、これらのノズルは同心であり、炉管の内面に開口するノズルを使用して炉管内の酸性ガスおよび重金属を除害する装置および方法が記載されている。しかしながら、この方法およびこの装置には欠点がある。
【0016】
まず第1に、それらは、454℃(850°F)以下の排ガス温度で使用できる。このような温度は、常に最適な除害条件に達することを可能にするとは限らない。実際に、ガス状汚染物質の除害のための最適温度は、特に、除害される汚染物質の性質および使用される粉末状化合物の性質に依存する。例えば、消石灰を含有する粉末状化合物の場合、粉末状消石灰とガス状SOとの間の反応は、特に850℃(1562°F)〜1150℃(2102°F)の温度範囲で促進させることができることが注目された。
【0017】
さらに、この文献は、最大6000m/hの非常に高い周辺空気流量を使用して、排ガスの流量に対する周辺空気の質量流量の比が3〜5%になることを示唆している。このような流量は、排ガスを処理するための設備の全体的な動作を必然的に妨害することになる。
【0018】
実際、排ガスの流量と比較して周囲空気の流量が非常に高いため、排ガスに添加される空気の量は無視できないものであり、特にこれらの排ガスの望ましくない冷却を招き、こうして炉の全体的なエネルギー性能を低下させる。このような装置はまた、前記装置の下流に位置する排ガスの総流量および酸素濃度を増加させる効果を有し、従って、排ガスを処理するためのラインを操作者が変えることを強いる。
【0019】
特許文献2に特に記載されているように、アンモニアの水溶液を使用して排ガスを脱窒素する方法もあり、この方法を実施するための装置もまた開示されている。このタイプの方法は、粉末状製品の注入時と同じ問題を、特に輸送流量の制約に関して、含まないことは明らかである。
【0020】
従って、本発明の目的は、上述した欠点を有さない(すなわち、貫通装置を使用することなく、汚染物質の除害の点で高収率をもたらし、同時に排ガスを処理するための設備の全体的な動作を可能な限り妨害することなく)汚染物質の除害のための粉末状化合物で排ガスを処理するための装置を提供することによって先行技術の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的のために、処理される排ガスの他の特性(特にそれらの流量および温度)を実質的に変えることなく、広い範囲の動作条件(すなわち、処理される排ガスの温度、除害される汚染物質の性質、および使用される粉末状化合物の性質の点で)の適合を可能にする炉管内において排ガスの汚染物質を除害するための粉末状化合物で処理するための装置および方法が開発された。
【0022】
従って、第1の目的によれば、本発明は、排ガスの汚染物質の除害のための粉末状化合物を炉管に注入するための装置に関し、前記装置は、
・周辺管に接続され、周辺ガスを前記チャンバおよび前記周辺管内に送風するように配置された第1の送風要素および前記周辺管を介して前記炉管に接続されるように構成されたチャンバであって、前記周辺管は、チャンバに接続された直径DP1を有する第1の部分と、下流端部を有する、第1の部分とは反対側の、直径DP2を有する第2の部分とを含み、炉管と連通するように意図されたチャンバと、
・粉末状化合物を輸送するための管であって、輸送ガスをこの輸送管内に、同時に周辺ガスの噴流に送風するように構成された第2送風要素に接続されるように意図され、前記輸送管は、直径DTおよび下流端部を有し、前記輸送管の下流端部が、周辺管の第1の部分と第2の部分との間の割線面内に位置するように、輸送管は、周辺管の前記第1の部分を同心かつ長手方向に貫通する管とを含む。
【0023】
本発明に係るこの装置は、周辺管の第2の部分の長さLが、周辺管の第2の部分の直径(DP2)以上であり、輸送管の直径(DT)および周辺管の第2の部分の直径(DP2)は、以下の関係によって結ばれている。
【数1】
【0024】
本発明によれば、「下流」および「上流」という用語は、排ガスの流れの方向に関して使用される。例えば、ガスが一方向の流れで管を通って進む場合、ガスは管の上流端部を介して入り、管の下流端部を介して出る。
【0025】
本発明によれば、輸送ガスおよび/または周辺ガスは、好ましくは、互いに独立した大気の周囲空気である。
【0026】
実際、本発明によれば、輸送ガスとは、粉末状化合物を空気輸送により輸送管内を炉管へ向かって運ぶことを可能にする任意の気体(特に、空気)を意味する。
【0027】
本発明によれば、周辺ガスとは、輸送管の周囲の周辺管に運ばれる任意の期待(特に、空気)を意味する。
【0028】
周辺管に接続されたチャンバの存在と、輸送管がそれを不透過的に通過するという事実により、2つの同軸のガス噴流(粉末状化合物を輸送するための流れと、周辺ガスの流れ)を形成することが可能になる。さらに、周辺管の長さLを有する第2の部分の存在と、輸送管の直径(DT)と周辺管の第2の部分の直径(DP2)との相対的比率の存在により、ベンチュリ効果を生成させ、装置の出力部でガス噴流を加速させることが可能となり、こうして炉管に注入された粉末状化合物の浸透性が改善される。従って、先行技術の「貫通ノズル」とは対照的に、侵入型装置を使用する必要なしに、先行技術の特許文献1の装置および方法とは対照的に、炉管内の粉末状除害化合物の良好な浸透を可能にするために必要な周辺ガスの量を減少させながら、炉管内に粉末を最適な方法で分布させることができる。
【0029】
周辺ガスの量を減らすことにより、周辺空気の非常に高い流量を必要とする特許文献1の装置とは対照的に、排ガスの特性(特に、それらの温度、それらの流量、およびそれらの酸素濃度)の擾乱を制限することが可能になる。
【0030】
従って、本発明はまた、周辺ガスの噴流が回収前に排ガスを遥かに冷やすので、排ガス中に存在する熱量(カロリー)の回収を改善することができる。それはまた、注入された粉末状化合物による汚染物質の除害を促進する最適温度条件に近づき維持されることを可能にする。
【0031】
実際、上述したように、特定の温度の特定の範囲によって、ガス状汚染物質の除害反応は促進可能となる。これらの最適な温度範囲は、特に、除害される汚染物質の性質および使用される粉末状化合物の性質に依存する。本発明は、使用される周囲空気の流量が低いため、(特に、粉末状化合物の注入の時点で)排ガスの温度を実質的に変えることができないので、最適な反応温度が維持されることが保証される。
【0032】
本発明の特定の一実施形態では、直径DP1は、直径DP2以上である。
【0033】
本発明の別の特定の一実施形態では、直径DP1は、直径DP2以下である。
【0034】
有利には、周辺管の第2の部分の下流端部は、炉管に直接接続されている。
【0035】
本発明の別の有利な一実施形態では、周辺管は、上流端部を備えた上流部と、直径DP2より小さい直径DP3を有する下流端部を備えた下流部とを含む第3の部分をさらに含むことができ、前記上流端部は、周辺管の第2の部分の下流端部に接続されるように意図され、前記下流端部は、炉管に接続されることを意図されている。
【0036】
この特定の実施形態は、第2のベンチュリ効果を生成することを可能にし、こうして、装置の出力におけるガス噴流の加速現象をさらに改善し、従って炉管内の粉末状化合物の浸透性をさらに改善する。
【0037】
好ましくは、周辺管の第3の部分の下流端部は、炉管に直接接続される。
【0038】
「炉管に直接接続される」という用語は、周辺管の第2の部分または第3の部分の下流端部が、前記炉管の内壁で最も遠くに終わることを意味する。産業用装置の文脈では、周囲管の第2部分または第3部分の下流端部が、本発明に係る炉管の厚さを通過した後に内壁をわずかに超えて延びないことを完全に排除することはできないが、周辺管の第2の部分または第3の部分の下流端部が炉管の厚さ内で終わること、または周辺管の第2の部分または第3の部分の下流端部が炉管の外面に接続されることが、より意図されている。
【0039】
有利には、周辺管の第3の部分の前記上流部分は、切頭円錐の形状を有する。
【0040】
好ましい一実施形態によれば、前記粉末状化合物は、式aCaCO・bMgCO・xCaO・yMgO・zCa(OH)・tMg(OH)・ulを有するカルシウム−マグネシウム化合物であり、ここで、lは不純物を表し、a、b、x、y、z、tおよびuは、前記カルシウム−マグネシウム化合物の全重量に対してそれぞれ0〜100%、u≦5%の質量分率であり、質量分率の合計a+b+x+y+z+t+uは、前記カルシウム−マグネシウム化合物の全重量の100%に等しい。
【0041】
有利には、前記粉末状除害化合物は、式aCaCO・bMgCO・xCaO・yMgO・zCa(OH)・tMg(OH)・ulを有するカルシウム−マグネシウム化合物であり、ここで、lは不純物を表し、a、b、x、y、z、tおよびuは、前記カルシウム−マグネシウム化合物の全重量に対してそれぞれ0〜100%、u≦3%(好ましくは、u≦2%(特に、u≦1%))の質量分率であり、質量分率の合計a+b+x+y+z+t+uは、前記カルシウム−マグネシウム化合物の全重量の100%に等しい。
【0042】
これらの好ましい実施形態によれば、排ガスの除害装置の性能は、高温での汚染物質(特に、SO)の低減のためにさらに改善される。実際、カルシウム−マグネシウム化合物は、850℃〜1150℃の排ガスの温度範囲で特に効果的であり、特に、しばしば効率よく捕捉することがより困難である酸性汚染物質(例えば、SO)を捕捉する場合に効果的である。対照的に、特許文献1の教示によれば、粉末状化合物が接触する場所に低い温度(454℃未満)が存在するため、この結果は、ともかく得ることができなった。水酸化カルシウムの形態のカルシウム−マグネシウム化合物の場合に、それは特に石灰のCOとの反応が促進される温度である。
【0043】
本発明の別の有利な一実施形態では、粉末状化合物は、上記で定義したカルシウム−マグネシウム化合物、炭素化合物(例えば、活性炭または亜炭コークス)、ナトリウム鉱物化合物(例えば、炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウム)、フィロケイ酸塩を含有する鉱物化合物(例えば、セピオライトまたはハロイサイト)、およびそれらの混合物から選択することができる。
【0044】
有利には、本発明に係る装置は、
・チャンバに接続され、前記チャンバ内および周辺管内に周辺ガスを送風するように構成された第1の送風要素と、
・輸送管に接続され、前記輸送管に輸送ガスを送風するように構成された第2の送風要素と、
・輸送ガスの流れの方向に対して前記第2の送風要素の下流において、粉末状化合物のタンクおよび輸送管に接続され、輸送ガスが投与された粉末状化合物を駆動させるために構成された粉末状化合物を投与するための手段とをさらに含む。
【0045】
有利には、本発明に係る装置では、前記第1の送風要素および第2の送風要素は、第1の送風要素および第2の送風要素の流量を別々に調整できるように、流量の調整手段を含む。
【0046】
この構成は、装置に良好な利用の柔軟性を提供し、排ガスの広い範囲の特性(温度、速度、汚染物質...)、管直径の広い範囲の特性、および使用される粉末状除害化合物の広い範囲の特性に適合させることを可能にする。
【0047】
有利には、粉末状除害化合物のタンクは、式aCaCO・bMgCO・xCaO・yMgO・zCa(OH)・tMg(OH)・ulを有するカルシウム−マグネシウム化合物のタンクとすることができ、ここで、lは不純物を表し、a、b、x、y、z、tおよびuは、前記カルシウム−マグネシウム化合物の全重量に対してそれぞれ0〜100%、u≦5%の質量分率であり、質量分率の合計a+b+x+y+z+t+uは、前記カルシウム−マグネシウム化合物の全重量の100%に等しい。
【0048】
有利には、粉末状除害化合物のタンクは、式aCaCO・bMgCO・xCaO・yMgO・zCa(OH)・tMg(OH)・ulを有するカルシウム−マグネシウム化合物のタンクとすることができ、ここで、lは不純物を表し、a、b、x、y、z、tおよびuは、前記カルシウム−マグネシウム化合物の全重量に対してそれぞれ0〜100%、u≦3%(好ましくは、u≦2%(特に、u≦1%))の質量分率であり、質量分率の合計a+b+x+y+z+t+uは、前記カルシウム−マグネシウム化合物の全重量の100%に等しい。
【0049】
好ましくは、カルシウム−マグネシウムは、少なくとも消石灰を含む。
【0050】
本発明の別の有利な一実施形態では、粉末状除害化合物のタンクは、上記定義されたカルシウム−マグネシウム化合物、炭素化合物(例えば、活性炭または亜炭コークス)、ナトリウム鉱物化合物(例えば、炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウム)、フィロケイ酸塩を含有する鉱物化合物(例えば、セピオライトまたはハロイサイト)、およびそれらの混合物から選択することができる。
【0051】
実際には、粉末状化合物を注入するためのシステムを形成するために、上で定義したような粉末状化合物を注入するための複数の装置を使用することができる。
【0052】
本発明に係る装置の他の構成および利点は、添付の特許請求の範囲に記載される。
【0053】
第2の目的によれば、本発明は、上で定義した粉末状除害化合物を注入するための少なくとも1つの装置を備えた炉管に関する。
【0054】
本発明に係る炉管の他の構成および利点は、添付の特許請求の範囲に記載される。
【0055】
第3の目的によれば、本発明は、排ガスの汚染物質の除害用の粉末状化合物による炉管内の排ガスの処理方法であって、
・排ガス流量Qを有する前記排ガス中に前記粉末状除害化合物を輸送することを意図された質量流量Qを有する輸送ガスの噴流を注入するステップと、
・同時に、輸送ガスの噴流に対して周辺にガスの噴流を注入して、質量流量Qを有する周辺ガスの噴流の形成するステップとを含む。
【0056】
この方法は、前記排ガスの質量流量に対する前記周辺ガスの前記質量流量が、0.05%〜0.25%の比Q/Qを形成することを特徴とする。
【0057】
本発明に係る方法によれば、「貫通ノズル」、すなわち、炉管を貫通する金属ダクト、およびそれに関連するすべての問題を排除することが可能になる。それは、侵襲性装置(例えば、貫通ノズル)を使用する必要なく、炉管内の所望の領域に達するように、粉末の搬送および注入の制約を除去可能とし、前記粉末の半径方向の分布を制御可能とする。
【0058】
さらに、排ガスの質量流量に対する周辺ガスの流量の比が非常に低いため、それは、炉の排ガスの特性(特に温度、流量、および酸素濃度に関して)を実質的に変更させないことが可能であり、こうして、炉の全体的なエネルギー性能が低下することを防止し、これらの排ガスを処理する設備の全体的な運転が妨げられることを防止しつつ、除害反応の最適温度を維持することを確実にする。
【0059】
反対に、特許文献1は、粉末状化合物(混合物)の流れを分散させ、キャリアガスの流れの中に、付随して排ガスの流れの中に粉末状化合物の渦を形成するために、乱流を作り出すために明らかにより大きな流量比を使用することを教示している。
【0060】
本発明に係る方法の好ましい一実施形態では、前記搬送ガスは速度Vを有し、前記周辺ガスは速度Vを有し、周辺ガスの速度Vは、2V≦V≦20Vに従って輸送ガスの速度Vの2倍〜20倍である。
【0061】
本発明の特定の一実施形態では、排ガスの質量流量Qに対して周辺ガスの質量流量Qに加えられる輸送ガスの質量流量Qが、0.1〜0.5%の比(Q+Q)/Qを形成する。従って、排ガスの質量流量に対する輸送ガスと周辺ガスの質量流量の合計の比は0.1〜0.5%である。
【0062】
有利には、粉末状化合物は質量流量Qで注入され、粉末状化合物の質量流量に対する輸送ガスの質量流量Qは、5〜10の比Q/Qを形成する。従って、粉末状化合物の質量流量に対する輸送ガスの質量流量の比は5〜10とすることができる。
【0063】
本発明に係る方法の好ましい一実施形態では、輸送ガスおよび周辺ガスの噴流の注入は、炉管の内面で行われる。
【0064】
有利には、本発明に係る方法では、処理される排ガスの温度は、850℃〜1150℃である。
【0065】
さらに、本発明に係る方法では、処理される排ガスの速度は、2m/s〜150m/s(好ましくは、3〜50m/s(特に、5〜30m/s))である。
【0066】
好ましい一実施形態では、輸送ガスおよび周辺ガスの噴流の速度は、互いに独立して調整される。
【0067】
有利には、本発明に係る方法では、輸送ガスおよび/または周辺ガスは、互いに独立した空気である。
【0068】
汚染物質の除害方法(例えば、本発明に係る方法)において、排ガスは、酸性ガス(すなわち、硫化および/またはハロゲン化されたもの)、重金属、フラン、ダイオキシンおよびそれらの混合物からなる群から選択される汚染物質を含む。
【0069】
より詳細には、本発明に係る方法では、酸性ガスは、SO、SO、HCl、HF、HBr、およびそれらの混合物からなる群から選択される汚染物質を含む。
【0070】
本発明の有利な一実施形態では、粉末状化合物は、カルシウム−マグネシウム化合物、炭素化合物(例えば、活性炭または亜炭コークス)、ナトリウム鉱物化合物(例えば、炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウム)、フィロケイ酸塩を含有する鉱物化合物(例えば、セピオライトまたはハロイサイト)、およびそれらの混合物から選択することができる。
【0071】
有利には、本発明に係る方法において使用される粉末状除害化合物は、カルシウムおよびマグネシウムから選択されるアルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化物および/または酸化物、またはそれらの混合物を含む。
【0072】
好ましくは、粉末状除害化合物は、式aCaCO・bMgCO・xCaO・yMgO・zCa(OH)・tMg(OH)・ulを有するカルシウム−マグネシウム化合物を含み、ここで、lは不純物を表し、a、b、x、y、z、tおよびuは、前記カルシウム−マグネシウム化合物の全重量に対してそれぞれ0〜100%、u≦5%の質量分率であり、質量分率の合計a+b+x+y+z+t+uは、前記カルシウム−マグネシウム化合物の全重量の100%に等しい。
【0073】
有利には、前記粉末状化合物は、式aCaCO・bMgCO・xCaO・yMgO・zCa(OH)・tMg(OH)・ulを有するカルシウム−マグネシウム化合物であり、ここで、lは不純物を表し、a、b、x、y、z、tおよびuは、前記カルシウム−マグネシウム化合物の全重量に対してそれぞれ0〜100%、u≦3%(好ましくは、u≦2%(特に、u≦1%))の質量分率であり、質量分率の合計a+b+x+y+z+t+uは、前記カルシウム−マグネシウム化合物の全重量の100%に等しい。
【0074】
本発明に係る方法の好ましい実施形態によれば、粉末状化合物は、50重量%を超える(すなわち、90重量%を超える)Ca(OH)水酸化カルシウムを含む。
【0075】
本発明に係る方法の他の構成および利点は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0076】
本発明の他の構成、詳細および利点は、以下の記載から、非限定的に、実施例および添付の図面を参照して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】本発明に係る方法が実施されることを可能にする注入装置の一実施形態の機能図を示す。
図1A図1の切断線A−A’に沿った断面図を示す。
図2】本発明に係る方法が実施されることを可能にする注入装置の別の一実施形態の機能図を示す。
図3】パイロット設備の脱硫性能と、先行技術の貫通金属ノズルまたは本発明の注入装置とのいずれかを用いて実施された工業試験との比較を示す。
図4】本発明に係る装置およびその対応する方法(図4)を用いて、同じ炉管内の粉末状除害化合物の分布のデジタルCFD(コンピュータ流体力学)シミュレーションの結果。
図5A】先行技術の特許文献1のシミュレーションの結果。
図5B】先行技術の特許文献1のシミュレーションの結果。
【発明を実施するための形態】
【0078】
図1は、本発明に係る粉末状化合物の注入用の装置10の第1の実施形態の例である。炉(図示せず)は、ガス状汚染物質を含む排ガスを生成し、排ガスは、炉管500によって煙突(図示せず)に運ばれて大気中に排出される。
【0079】
動作中、本発明に係る注入装置は、以下の2つのガスの流れを生成する。
・調節可能な流量を有する送風装置100(図示の例では横方向の送風装置)によって生成された輸送ガス110と呼ばれるガスの流れ。この輸送ガスの流れは、この輸送フローの経路上において、送風装置に接続された輸送管120内を循環し、粉末状化合物(図示せず)のタンクに接続された粉末状化合物を投与するためのシステム130があり、これによって輸送フローに粉末状化合物が充填される。
・調節可能な流量を有する送風装置200によって生成される周辺ガス210と呼ばれるガスの流れ。この周辺ガスの流れは、チャンバ230内に供給され、その後、このチャンバに接続された周辺管220内を循環する。
【0080】
輸送管120は、チャンバ230を不透過的に通過し、そこから周辺管内部で周辺管220に同心円状に出る。これは、周辺管220の第1の部分221と第2の部分222との間の割面内に位置するその上流端部121で中断される。
【0081】
従って、図1Aの断面A−A’によって示されるように、軸方向輸送管120と周辺管の第1の部分221との間には、周辺ガス210の流れが循環する環状空間170が存在し、輸送ガス110の流れは輸送管120内を循環する。従って、装置は、炉管内に2つのガスの噴流(粉末状化合物が充填された輸送ガス110の軸方向噴流、および輸送ガスの噴流を包囲する周辺ガス210の噴流)を提供する。
【0082】
図2に示される本発明の特定の一実施形態では、周辺管220は、上流端部(224a)を備えた上流部分(224)および直径(DP2)よりも小さい直径DP3を有する下流端部(225a)を備えた下流部分(225)を含む第3の部分(223)をさらに含み、前記上流端部は、周辺管の第2の部分の下流端部に接続されるように意図され、前記下流端部は、炉管に接続されるように意図される。
【0083】
有利には、周辺管の第3の部分の前記上流部分(224)は、切頭円錐の形状を有する。
【0084】
第3の部分223内における周辺管220の直径の収縮は、質量の保存によって、輸送ガスおよび周辺ガスの流れのさらなる加速を可能にし、従って、炉管内の粉末状化合物の浸透性のさらなる向上を可能にする第2のベンチュリ効果をもたらす。
【0085】
一般的に、周辺管220は、半径方向に炉管500に接続されている。輸送ガス110の流れの周辺の周辺ガス210の流れは、輸送ガス110の流れおよび周辺ガス210の流れが炉管500を貫通するまで、輸送ガス110のこの流れの形状を維持して、輸送ガス110のこの流れを導き、貫通ノズルを必要とすることなく、炉管500の中心脈部に到達することを可能にする。
【0086】
さらに、送風装置100および200の流量を別々に調整することができるので、装置は、多種多様な使用条件に(すなわち、排ガスの速度、酸性ガスの濃度、管の直径、...に関して)適合可能となる。
【0087】
勿論、本発明は、炉管の入口において、粉末状除害物質が充填された輸送ガス110の噴流と周辺ガス210の噴流とが得られれば、様々な形状の装置を網羅する。例えば、本出願の図1および図3において、周辺管220は、炉管500に垂直に、言い換えれば、2つの管の軸の間は90°の角度で接続されている。あるいはまた、この周辺管220は、明らかに、2本の管の軸の間の角度を90°より大きいか、または90°より小さくして、炉管500に接続することが可能である。
【0088】
デジタルシミュレーション
本発明に係る装置および方法の有効性を実証するために、様々な注入装置を考慮しながら、排ガスを含む炉管内の粉末状の消石灰の分布のデジタルシミュレーションを実施した。より正確には、本発明に係る装置およびその方法を用いて得られた石灰の分布を、同等な操作パラメータを用いて(換言すれば、炉管の形状、それを通過する排ガスの組成および速度、石灰輸送のためのダクトの位置および断面、ならびに理論的に計算される輸送空気の流量および石灰の流量を、排ガス中に存在する汚染物質の量に関して、石灰を捕捉する点における性能に従って設定することによって)、特許文献1の装置および方法で得られたものと比較した。
【0089】
炉管内の石灰の分布は、石灰が横方向に注入される場合、前記管の所与の点で、排ガス中の石灰の濃度に対応する分布係数Phiを用いてCFD(計算流体力学)によって評価される。
【0090】
この分布係数は、特に炉管の幾何学的形状に依存し、以下のように定義される。ただし、Viは粉末状石灰の体積に対応し、Vtotは、粉末状石灰の体積と、排ガス中に存在する全てのガスの体積との合計に対応する。
【数2】
【0091】
実施されたデジタルシミュレーションでは、検討された炉管は、逆U字形(図4および図5参照)の形状であり、長さ4mの正方形の断面を有する。
【0092】
本発明の装置の効率を先行技術の特許文献1の装置の効率と比較することができるようにするために、最適な分布係数Phioptを最初に決定しなければならない。この係数は、検討される炉管の断面の全体を覆うようにこの石灰が最適に分布するために到達すべき排ガス中の石灰の濃度に対応する。
【0093】
この場合、この最適な分布係数は、粉末状化合物の分布の点で現在のところ最も効率的な装置であると考えられている貫通ノズルを含む(従って周辺ガスを含まない)装置をシミュレーションすることによって決定された。ノズルは1mの深さで炉管に挿入される。
【0094】
この構成および検討される炉管について、最適分布係数Phioptは、約7.10−3である。実際、このPhiの値では、この炉管内の石灰の分布は最適であり、注入点の50cm上方で、逆U字形の脚部の断面の全体を覆う横断スクリーンの形態である。従って、この状況(Phiopt=7.10−3)は、達成される最適な分布係数であると考えられている。
【0095】
以下の装置が研究された。
a)本発明に係る装置および方法。
b)特許文献1に従った装置および方法。
【0096】
このシミュレーションの結果は、図4(本発明)および図5(先行技術の特許文献1)に示されている。
【0097】
図4に見られるように、本発明に従って、排ガスの流量に対して0.1〜0.2%の質量流量を有する周辺ガスの流れが使用される場合、最適分布係数(Phi=7.10−3)と同一の分布係数は、注入点より50cm上に位置する横断面で得られる。従って、本発明は、侵襲的な装置を使用することなく、貫通ノズルと同じ貫通性を有する粉末状消石灰を注入することができる。
【0098】
しかしながら、特許文献1に記載の装置および方法を使用する場合、排ガスに対して非常に高い流量を有する周辺ガスの流れ(周辺ガスの質量流量は、本発明のものよりも10倍大きい)が生成され、これは特許文献1によってさらに望まれる大きな乱流を生成する。この場合、石灰が均一に分布する領域は非常に小さく、炉管内の石灰の最適分布係数を達成するためには、この先行技術に係る少なくとも3つの装置を配置する必要がある。
【0099】
実際、図5Aに見られるように、石灰が均一に分布している領域は非常に集中している。この場合、1つのノズルでは、注入点の50cm上にある横断面でPhi=7.10−3を達成することはできない。実際、この横断面において、分布係数Phiは4.10−3に等しい(図5B)。これは、本発明と比較して石灰の分散を1.75倍非効果的にする。
【0100】
実際、先行技術の単一の貫通ノズルのものと同等の分布を得るために、先行技術US2013/0125749による3つの装置を使用しなければならない。
【実施例】
【0101】
本発明に従って得られた分散の効率を評価するために、特許文献3に記載された方法に従って得られるような粉末状消石灰による非常に高い温度でのSOの除害が研究された。
【0102】
850〜1150℃の温度範囲において、Ca(OH)消石灰は、以下の式に従ってCaSOを形成するためにSOと反応する。
【数3】
【0103】
この温度範囲において、水酸化カルシウムとSOとの間の反応は、選択的かつ迅速である。
【0104】
選択的である理由は、SOに加えて、排ガス中に存在する他の化合物(COなど)のいずれもが、上記の温度範囲で安定した反応生成物を有さないからである。実際に、実験の必要性に対しては、たとえ水酸化カルシウムが他の酸性ガスを除害させることができるとしても、反応の生成物(すなわち、CaSO)を投与することができるために、水酸化カルシウムによるSOの中和のみに関心があり、こうして研究された方法の効率、すなわち化学量論比RSに関して効率を達成する。
【0105】
迅速である理由は、アレニウスの法則に従って、消石灰とSOとの間の反応の速度が指数関数的に増加するからである。従って、900℃において、酸性ガスと消石灰との間の接触時間は0.5秒未満となる可能性がある。
【0106】
以下において、以下の3つの条件下で得られた結果を比較した。
・比較例1:完璧な混合状態を表すと考えることができるパイロット設備。
・比較例2および3:先行技術に係る金属貫通ノズルを介して実施された粉末状消石灰を注入した工業設備。
・実施例:本発明の装置を用いて実施した消石灰を注入した工業設備。
【0107】
SOの70%の除害に対して比較が行われ、これはこのタイプの方法に望ましい平均除害を表す。
【0108】
比較例1:パイロット設備
パイロット設備は、完璧な場合、すなわち、測定される塵が存在せず、温度が反応領域全体にわたって完璧に分布し、デッド領域または乱れた領域が存在しない場合、化学量論比RS(投入時の水酸化カルシウムのモル数/SOのモル数)に従って、SOの転化率の変化を可能にした。このようなパイロット設備は、特許文献3にも記載されている。
【0109】
パイロット設備に存在する排ガスのパラメータは、以下の通りである。
・総流量:2Nm/h
・温度:950℃
・SO濃度:1500ppm
・CO濃度:10体積%
・O濃度:6体積%
【0110】
パイロット設備では、SOの70%転化率を得るために、測定された化学量論比(RS)は1.5である。従って、850〜1150℃の温度でのSOの除害の文脈において、完璧な混合物のRSは、SOの70%の転化率に対して1.5に近いと結論づけることができる。
【0111】
排ガスの流れにおける固体粒子の分散の効率を最大にすることを目的とする金属貫通ノズルを使用して、多数の工業的試験が実施されている。
【0112】
以下に示す2つの比較例は、これまでに得られた最高の転化率/RS比を使用する。
【0113】
比較例2−(先行技術に係る)金属貫通ノズルによる工業的試験
燃焼残渣の燃焼が起こる後燃焼室(炉管)内に金属貫通ノズルを用いてパイロット設備で使用したのと同様の消石灰を15m/sの速度で注入した。
【0114】
排ガスのパラメータは、以下の通りである。
・総流量:46750Nm/h
・平均温度:925℃
・平均SO濃度:450ppm
・CO濃度:15体積%
・O濃度:10体積%
【0115】
炉管内の消石灰の滞留時間は、約1〜1.5秒である。比較例2の場合、SOの70%の転化率を得るために、測定された化学量論比は2である。
【0116】
比較例3−(先行技術に係る)金属貫通ノズルによる工業的試験
パイロット設備で使用したのと同様の消石灰を、後燃焼室(炉管)内の金属貫通ノズルを用いて15m/sの速度で注入した。
【0117】
排ガスのパラメータは、以下の通りである。
・総流量:140000Nm/h
・平均温度:925℃
・平均SO濃度:390ppm
・CO濃度:15体積%
・O濃度:8体積%
【0118】
炉管内の消石灰の滞留時間は約1〜1.5秒である。比較例3の場合、SOの70%の転化率を得るために、測定された化学量論比は2.3である。
【0119】
比較例2および3に対する平均化学量論比は、SOの70%転化率に対して2.1である。
【0120】
実施例−本発明の方法に従って実施された工業的試験
本発明の装置を用いて、パイロット設備で使用されたものと同様の消石灰を後燃焼室(炉管)に注入した。
【0121】
排ガスのパラメータは、以下の通りである。
・総流量:82000Nm/h
・平均温度:900℃
・平均SO濃度:395ppm
・O濃度:17体積%
・CO濃度:15体積%
【0122】
注入装置のパラメータは以下の通りである。
・輸送管の直径DT:88.9mm
・周辺管222の第2の部分の直径DP2:107.1mm
・輸送空気の速度V:15m/s
・周辺空気の速度V:44m/s
・輸送空気の流量Q:420Nm/h
・周辺空気の流量Q:290Nm/h
【0123】
炉管内の消石灰の滞留時間は0.1秒である。
【0124】
本発明に係る方法は、SOの70%の除害のために1.6の化学量論比(RS)を得ることを可能にした。
【0125】
図3は、パイロット設備(比較例1)で、本発明の装置(実施例)を使用して、および先行技術の金属貫通ノズル(比較例2および3の平均)を用いて得られた全ての結果を繰り返している。
【0126】
図3から分かるように、本発明の方法によって得られた値は、パイロット設備で得られた値に近い。
【0127】
上述したように、固体粒子の分散の効率が増加すると、現場で測定された値は、パイロットで得られた値に近づく。
【0128】
これらの結果は、本発明に係る装置および方法が、同一の転化率で、先行技術の金属貫通ノズルを用いた場合よりも約23%少ない粉末状消石灰を使用できることを示している。
【0129】
従って、流体混合物中の固体粒子の分散の効率は、本発明の装置および方法によって、先行技術の金属貫通ノズルの使用時よりも、より良好になる。さらに、後者は、粉体の輸送、安全性および設置の容易さの点で他の問題を提起し、これらもまた、本発明に係る装置および方法によって解決される。
図1
図1A
図2
図3
図4
図5A
図5B