特許第6821606号(P6821606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6821606ビーム位置センサを有する走査ヘッドおよび調整装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6821606
(24)【登録日】2021年1月8日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】ビーム位置センサを有する走査ヘッドおよび調整装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/064 20140101AFI20210114BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20210114BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20210114BHJP
   B23K 26/046 20140101ALI20210114BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   B23K26/064 A
   B23K26/00 M
   B23K26/082
   B23K26/046
   G02B26/10 104Z
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-566141(P2017-566141)
(86)(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公表番号】特表2018-525227(P2018-525227A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】EP2016062577
(87)【国際公開番号】WO2016206943
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2019年5月29日
(31)【優先権主張番号】102015109984.5
(32)【優先日】2015年6月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516373764
【氏名又は名称】スキャンラボ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ソンナー, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ラベ, マティアス
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0222143(US,A1)
【文献】 特開2005−118815(JP,A)
【文献】 特開平10−137962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
G02B 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ材料加工用の走査ヘッド(2)を含む走査ヘッド(2)のオフライン調整のための調整装置(1)であって、
前記レーザ材料加工用の走査ヘッド(2)は、
レーザビーム(9)を加工位置(12)に集束させる集束光学系(15)と、
レーザビーム(9)の伝播方向において前記集束光学系(15)の上流に配置され、前記レーザビーム(9)の位置を制御するビーム位置決めシステム(3)と、
前記レーザビーム(9)の伝播方向において前記ビーム位置決めシステム(3)の下流に配置されたビーム位置センサ(4)とを有し、
前記ビーム位置決めシステム(3)は、加工面(13)への前記レーザビーム(9)の入射角を調整可能であり、前記レーザビーム(9)の前記加工面(13)における加工位置(12)を前記加工面(13)内で2次元移動可能に構成された少なくとも2つの制御可能な可動光学素子を備え、
前記調整装置(1)は、前記走査ヘッド(2)の前記ビーム位置センサ(4)および制御ユニット(7)に接続される演算ユニット(5)を備え、
前記ビーム位置センサ(4)は、前記レーザビーム(9)の少なくとも4つの独立した位置パラメータを検出し、および/または、前記位置パラメータから前記レーザビーム(9)の実位置(19)を検出することを特徴とする調整装置(1)。
【請求項2】
前記レーザビーム(9)の伝播方向において前記ビーム位置センサ(4)の上流にビームスプリッタ(20)が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の調整装置(1)。
【請求項3】
前記ビームスプリッタ(20)は、前記ビーム位置決めシステム(3)と前記集束光学系(15)の間の前記レーザビーム(9)の経路内に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の調整装置(1)。
【請求項4】
前記ビーム位置センサ(4)と前記ビームスプリッタ(20)は、前記ビームスプリッタ(20)を透過した前記レーザビーム(9)が前記ビーム位置センサ(4)に導入され、前記ビームスプリッタ(20)で反射された前記レーザビーム(9)が前記集束光学系(15)に導入されるように配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の調整装置(1)。
【請求項5】
前記演算ユニット(5)は、前記走査ヘッド(2)の内部に配置された内部演算ユニット(5)、または、前記走査ヘッド(2)の外部に配置され、前記走査ヘッド(2)に設けられた外部インターフェース(22)を介して前記ビーム位置センサ(4)と前記制御ユニット(7)に接続された外部演算ユニット(5)として構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の調整装置(1)。
【請求項6】
前記演算ユニット(5)が前記内部演算ユニット(5)として構成されたとき、前記ビーム位置センサ(4)、前記内部演算ユニット(5)、前記制御ユニット(7)および前記ビーム位置決めシステム(3)は、前記走査ヘッド(2)の内部に配置され、前記走査ヘッド(2)の調整装置を構成することを特徴とする請求項5に記載の調整装置(1)。
【請求項7】
前記レーザビーム(9)の目標位置(21)を記憶する記憶ユニット(6)をさらに有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の調整装置(1)。
【請求項8】
前記演算ユニット(5)は、前記レーザビーム(9)の前記実位置(19)と前記目標位置(21)とを比較することで前記ビーム位置決めシステム(3)の補正値を算出し、および/または、算出した前記補正値を前記制御ユニット(7)に送信することを特徴とする請求項7に記載の調整装置(1)。
【請求項9】
前記演算ユニット(5)と前記制御ユニット(7)は、演算/制御ユニットとして一体的に構成されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の調整装置(1)。
【請求項10】
前記ビーム位置決めシステム(3)は、少なくとも4つの回転可能な光学素子を備え、
前記光学素子の少なくとも1つは、ガルバノメータによって移動可能であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の調整装置(1)。
【請求項11】
前記ビーム位置決めシステム(3)は、前記レーザビーム(9)の入射角を設定する平行オフセットユニット(10)と、前記レーザビーム(9)を2次元移動させる偏向ユニット(11)とを備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の調整装置(1)。
【請求項12】
前記レーザビーム(9)の伝播方向において前記ビーム位置センサ(4)の上流に配置され、前記レーザビーム(9)の焦点位置をz方向に移動可能な焦点設定ユニット(17)をさらに有し、または、前記集束光学系(15)が、前記レーザビーム(9)の焦点位置をz方向に移動させるために、前記集束光学系(15)の光軸方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の調整装置(1)。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の調整装置(1)を用いて実行される走査ヘッド(2)のオフライン調整のための調整方法であって、
レーザビーム(9)の伝播方向における前記走査ヘッド(2)のビーム位置決めシステム(3)の下流において、前記レーザビーム(9)の少なくとも4つの独立した位置パラメータを検出することで前記レーザビーム(9)の実位置(19)を検出するステップと、
前記レーザビーム(9)の実位置(19)と目標位置(22)を比較し、補正値を算出するステップと、
前記補正値に基づいて前記ビーム位置決めシステム(3)を再調整するステップとを含むことを特徴とする調整方法。
【請求項14】
前記レーザビーム(9)の目標位置(22)は、前記走査ヘッド(2)の工場較正プロセスによって決定され、記憶ユニット(6)に記憶されることを特徴とする請求項13に記載の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束光学系と、レーザビームの伝播方向において集束光学系の上流に配置され、レーザビームの位置を制御するビーム位置決めシステムとを有し、ビーム位置決めシステムは、加工面へのレーザビームの入射角を動的に調整し、レーザビームの加工位置を加工面上で2次元移動させる少なくとも2つの制御可能な可動光学素子を備えることを特徴とするレーザ材料加工用走査ヘッドに関する。さらに、本発明は、上記走査ヘッドを有する調整装置および調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走査ヘッドは、特にマーキング、ラベリング、研磨および/または構造加工、切断、穿孔、焼結および溶接等、様々な目的に使用される。走査ヘッドをレーザ材料加工に用いる際、レーザ焦点の位置を所定の経路に導くとともに、被加工物へのレーザビームの入射角を制御することが好ましい。これにより、被加工物を任意の形状に加工したり、被加工物の端部を被加工物の表面に対して所望の角度傾斜させたりすることができる。レーザビームの入射角の調整は、焦点位置の調整とは独立して行われることが好ましい。これらの調整を個別に高精度かつ高速に行うことで、レーザ材料加工の高速化を図ることができる。
【0003】
ドイツ特許出願公開第102013222834号には、レーザビームの案内装置および案内方法が開示されている。本装置は、被加工物上のレーザビームの横方向オフセットを調整するための集束光学系においてレーザビームの迎角を生成し、かつ被加工物上のレーザビームの入射角を調整するための集束光学系においてレーザビームの横方向オフセットを生成する可動ミラーを備えたミラー装置を有する。レーザビームの伝播方向において、レーザ光源とミラー装置の間に第1ビームスプリッタが配置されている。第1ビームスプリッタには第1センサ素子が配置されている。第1センサ素子は、ビーム形状およびビーム位置を監視する機能を有する。これにより、ミラー装置の上流におけるビーム位置を検出することができる。本装置の欠点は、レーザビームの調整が、ビームの伝播方向においてミラー装置の上流に配置された構成要素のみによって行われることである。通常、これらの構成要素は、走査ヘッドの一部ではない。そのため、調整が非常に複雑で、時間とコストを要する。
【0004】
さらに、ドイツ特許出願公開第102004053298号には、レーザ穿孔切断装置の一部としての走査ヘッドが開示されている。本走査ヘッドは、レーザビームの平行移動を制御するウォブルユニットと一体化された強度調整ビーム減衰ユニットと、レーザビームの断面積を増大させるビーム拡大望遠鏡と、レーザビームの焦点を案内する走査ブロックと、レーザビームを試料に集束させる作業ユニットと、任意で追加可能な検査および制御ユニットとがレーザ光路上に配列されていることを特徴とする。ビーム減衰ユニットは、光路上に連続して配列されたリターダ、第1ブリュースター窓および第2ブリュースター窓を備えており、リターダおよび/または2つのブリュースター窓の少なくとも一方は、光軸を中心に回転可能に構成されている。ウォブルユニットは、光路内に配置された2つの平行平面窓によって構成されており、第1平行平面窓の回転軸と、第2平行平面窓の回転軸と、レーザビームの伝播方向とは互いに直交している。リターダまたは平行平面窓は、ガルバノメータユニットによって適宜移動される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、レーザビームの伝播方向において走査ヘッドの上流に配置された構成要素に影響を与えることなく、オフラインで(すなわち、実際の加工プロセスに先立って)高効率および/または高精度にビームの調整を行うことができる走査ヘッド、調整装置および調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、独立請求項に記載の特徴を有する走査ヘッド、調整装置および調整方法によって解決される。
【0007】
本発明は、集束光学系とビーム位置決めシステムとを有するレーザ材料加工用走査ヘッドを提供する。集束光学系は、レーザビームを加工位置、特に被加工物の加工面または加工位置の近傍に集束させる。ビーム位置決めシステムは、被加工物の加工面におけるレーザビームの位置を制御する。レーザビームの位置は、4つの独立した幾何学的パラメータによって決定される。幾何学的パラメータには、例えば、加工面に対するレーザビームの通過点を定義するx座標およびy座標や、第1および/または第2立体角等によって画定された空間におけるレーザビームの伝播方向が含まれる。ビーム位置決めシステムは、レーザビームの伝播方向において集束光学系の上流に配置される。さらに、ビーム位置決めシステムは、特に制御ユニットによって制御可能な少なくとも2つの可動光学素子を備える。ビーム位置決めシステムは、加工面へのレーザビームの入射角を調整可能に構成される。入射角の調整は、例えば、レーザビームを集束光学系の光軸に対して垂直方向に平行移動させることによって行われる。さらに、ビーム位置決めシステムは、レーザビームの加工位置を加工面において2次元(特にx-y平面)移動可能に構成される。レーザビームの加工位置の移動は、例えば、レーザビームを集束光学系の光軸に対して偏向(傾斜)させることによって行われる。
【0008】
本発明に係る走査ヘッドは、さらにビーム位置センサを有する。ビーム位置センサは、レーザビームの伝播方向においてビーム位置決めシステムの下流に配置される。また、ビーム位置センサは、例えばビーム位置決めシステムのオフライン調整のために、レーザビームの少なくとも4つの独立した位置パラメータ、特に、少なくとも1つの並進および/または回転位置パラメータを検出可能に構成される。また、ビーム位置センサは、間接的および/または直接的にレーザビームの実際の位置を検出できるように構成される。レーザビームの実位置は、少なくとも4つの独立した位置パラメータによって決定される。ビーム位置センサは、少なくとも4つの独立した位置パラメータ、および/または位置パラメータによって決定されるレーザビームの実位置を、走査ヘッドのハウジング内部および/またはビーム位置決めシステムの下流において検出するように構成されることが好ましい。この場合、レーザビームの実位置は、少なくとも4つの独立した位置パラメータに基づいて間接的に検出される。
【0009】
ビーム位置センサによるレーザビームの位置検出は、レーザビームの伝播方向、および/または、ビーム位置決めシステムと集束光学系の間におけるビーム経路に関して行われる。レーザビームの実位置の検出がビーム位置決めシステムの下流でのみ行われる場合、ビーム位置決めシステムにおいて、走査ヘッドの上流の構成要素によって生じる外部誤差の補正が行われることが好ましい。外部誤差を走査ヘッドによって補正可能である場合、外部の構成要素に変更を加える必要がない。また、走査ヘッドにおいて、ビーム位置決めシステムを適切に再調整することで、ビームのオフライン調整を高速、高精度かつ低コストで行うことができる。
【0010】
ビーム位置センサは、並進位置パラメータ(特に、2次元位置)および/または回転位置パラメータ(特に、2次元位置角度)を検出可能に構成されることが好ましい。並進位置パラメータは、x-y平面に対するレーザビームの理論的な通過点のx座標および/またはy座標を検出したものである。したがって、位置パラメータが検出されるx-y平面は、ビーム経路に対して斜めに、あるいは垂直に配置されることが好ましい。また、ビーム位置センサは、レーザビームのx-z平面における第1傾斜角および/またはy-z平面における第2傾斜角を検出可能であることが好ましい。そのために、ビーム位置センサは、少なくとも2つのセンサ、特に2次元センサを備えることが好ましい。例えば、2つの並進位置パラメータは、2つの平面のビーム経路内に配置された2つの2次元センサによって決定される。すなわち、各センサ平面における通過点と、センサ平面間の距離とに基づいて、レーザビームの正確な実位置を決定または検出することができる。回転位置パラメータを決定するために、例えば、入射角の関数としてのレーザビームの所定の偏向を引き起こし、および/または、位置検出センサを用いて回転位置パラメータを測定することが可能なセンサレンズをビーム位置センサの2次元センサの前に配置することができる。
【0011】
ビーム位置センサは、ビーム経路内の異なる位置における1つまたは複数の位置パラメータを決定可能に構成された複数(特に、2つ、3つまたは4つ)のセンサユニットを備えており、4つの独立した位置パラメータは、各センサユニットにおける測定結果の組み合わせにより決定される。この場合、各センサユニットは、別体として構成されてもよい。例えば、4つのスロットダイオードを用いて、ビーム経路内の複数のビーム位置に関する4つの1次元情報を検出し、これらをセンサの位置および測定されたビーム位置までの距離とオフセットしてもよい。
【0012】
さらに、ビームの位置や伝播方向などの幾何学的情報を検出可能なビーム位置センサとしては、象限ダイオード、カメラ要素、PSD(位置検出装置)または波面センサなどが挙げられる。
【0013】
ビーム位置センサは、走査ヘッドと一体的に構成することができる。また、ビーム位置センサは、走査ヘッドに取り外し可能に設置され、および/または、走査ヘッドの調整のために走査ヘッドに取り外し可能に接続されてもよい。
【0014】
レーザビームは、ビーム位置決めシステムの下流で分離された後、ビーム位置センサによって検出される。分離後のビーム位置と分離点におけるビーム位置は一定の関係にあるため、ビーム位置センサの測定結果から、分離点におけるビーム位置を検出することができる。レーザビームの分離は、レーザビームの伝播方向においてビーム位置センサの上流に配置された半透明ミラー等のビームスプリッタによって行われる。ビームスプリッタは、ビーム経路の内外に旋回可能に構成される。ビームスプリッタは、例えば、加工プロセス前の(すなわち、オフライン)調整においてはビーム経路内に旋回され、加工プロセス中の(すなわち、オンライン)調整においてはビーム経路外に旋回される。
【0015】
ビーム位置センサは、ビーム位置決めシステムと集束光学系との間の領域におけるレーザビームの実位置を検出可能に構成されることが好ましい。そのため、ビームスプリッタは、ビーム位置決めシステムと集束光学系の間のビーム経路内に配置されることが好ましい。
【0016】
加工位置に向かうビーム経路からビーム位置センサに向かうレーザビームを分離するために、ビーム位置センサとビームスプリッタは、ビームスプリッタを透過したレーザ光がビーム位置センサに導入され、ビームスプリッタで反射されたレーザ光が集束光学系に導入されるように配置されることが好ましい。
【0017】
走査ヘッドは、センサによって検出されたデータの分析を行う演算ユニットを有することが好ましい。演算ユニットは、例えば走査ヘッドのハウジング内部に配置される。また、ビーム位置センサの演算ユニットおよび/またはビーム位置決めシステムの制御ユニットは、ビーム位置センサに接続されることが好ましい。なお、これらの接続は、有線接続によって行われることが好ましい。
【0018】
走査ヘッドは、走査ヘッドの外部に設けられた外部演算ユニットをビーム位置センサおよび/または制御ユニットに接続するための外部インターフェースを有することが好ましい。外部演算ユニットが外部インターフェースを介してビーム位置センサおよび/または制御ユニットと接続可能に構成されることで、複数の走査ヘッドの間で1つの演算ユニットを流用することができるため、走査ヘッドの製造コストを低減することができる。
【0019】
走査ヘッドは、レーザビームのオフライン調整を行うための調整装置を有するか、または、上記調整装置の一部として構成されることが好ましい。この場合、調整装置は、レーザビームの実位置を検出するビーム位置センサと、補正値を算出する演算ユニットと、補正値に基づいてビーム位置決めシステムに制御信号を送信する制御ユニットと、および/または、制御信号に基づいて新たなレーザビーム位置を設定するビーム位置決めシステムとを有する。演算ユニットが走査ヘッドの内部に設けられている(内部演算ユニット)場合、調整装置は走査ヘッドと完全に一体化されている。演算ユニットが走査ヘッドの外部に設けられている(外部演算ユニット)場合、走査ヘッドは調整装置の一部を構成する。このような調整装置を用いることにより、走査ヘッドの設置時に、またはドリフト誤差(例えば、温度によって引き起こされる誤差)を除去するために、各加工プロセスの前に、または所定の時間間隔で、レーザビームのビーム経路の上流側に配置されたレーザビーム源などの外部構成要素に影響を与えることなく、ビームの調整を行うことができる。
【0020】
走査ヘッドまたは外部演算ユニットは、レーザビームの目標位置を記憶する記憶ユニットを有することが好ましい。記憶ユニットは、例えば、演算ユニットに接続され、または演算ユニットと一体化された別個の構成要素である。レーザビームの目標位置は、少なくとも4つの独立した目標位置パラメータとして間接的に記憶される。レーザビームの目標位置は、工場において、各走査ヘッドに対して個別に決定され、記憶ユニットに記憶される。
【0021】
演算ユニットは、レーザビームの実位置と目標位置を比較することによって、ビーム位置決めシステムの少なくとも1つの補正値を算出可能に構成されることが好ましい。そのために、演算ユニットは、反復近似法または確率的探索法を使用または実行することが好ましい。また、上記補正値は、多次元であることが好ましい。すなわち、補正値は、ビーム位置決めシステムの複数の調整次元における目標位置と実位置のずれを表す。したがって、補正値は、ビーム位置決めシステムの少なくとも2つの光学素子に対する再調整値を含む。また、演算ユニットは、補正値を制御ユニットに自動的に送信するように構成されることが好ましい。
【0022】
走査ヘッドは、ビーム位置センサの動作が停止している間に、材料加工プロセスを実行可能に構成されることが好ましい。これにより、ビーム位置センサを動作させることなく材料加工プロセスを行うことができる。
【0023】
演算ユニットと制御ユニットは、別個の構成要素であってもよいし、演算/制御ユニットとして一体的に構成されてもよい。
【0024】
ビーム位置決めシステムは、少なくとも4つの回転可能なミラーを備えることが好ましい。これらのミラーは、それぞれ単一の回転軸を中心に回転可能に構成される。各ミラーの回転軸は、少なくとも部分的に互いに異なっている(すなわち、空間内で互いに異なる方向を向いている)。各ミラーは、制御ユニットによって制御されることが好ましい。各ミラーが単一軸の周りを回転可能に配置されることで、ビーム位置を迅速に変更することが可能である。
【0025】
ビーム位置決めシステムは、レーザビームの少なくとも1つの入射角を設定するための平行オフセットユニットを備えることが好ましい。また、ビーム位置決めシステムは、レーザビームを2次元移動させるための偏向ユニットを備えることが好ましい。平行オフセットユニットは、ビームの伝播方向において偏向ユニットの上流に配置される。レーザビームの位置調整を迅速に行うために、平行オフセットユニットおよび/または偏向ユニットの各々が単一の回転軸を中心に回転可能な2つのミラーを備えることが好ましい。この場合、各ミラーによって位置パラメータの調整が行われる。また、設定パラメータと位置パラメータは、工場較正プロセスにおいて決定される座標変換によって、加工領域内で互いに結合される。平行オフセットユニットによって、レーザビームを集束光学系の光軸に対して垂直方向に配置された変位軸上で変位させることができる。これにより、加工面へのレーザビームの入射角を変更することができる。
【0026】
走査ヘッドは、ビーム位置センサの上流に配置された焦点設定ユニットをさらに有することが好ましい。焦点設定ユニットにより、レーザビームの焦点位置をz方向に移動させることができる。そのために、焦点設定ユニットは、光軸に沿って移動可能な少なくとも1つのレンズを備えたビーム拡大望遠鏡ユニットを有することが好ましい。
【0027】
また、レーザビームの焦点位置をz方向に移動させるために、集束光学系がその光軸方向に移動可能に構成されてもよい。なお、上述の焦点設定ユニットは、制御ユニットに接続され、制御ユニットによって制御されることが好ましい。
【0028】
また、本発明は、走査ヘッドをオフライン調整することが可能な調整装置を提供する。本発明に係る調整装置は、レーザ材料加工用の走査ヘッドを有する。走査ヘッドは、加工位置においてレーザビームを被加工物の加工面に集束させる集束光学系を備える。さらに、走査ヘッドは、レーザビームの位置を制御するビーム位置決めシステムを備える。ビーム位置決めシステムは、レーザビームの伝播方向において集束光学系の上流に配置される。また、ビーム位置決めシステムは、少なくとも2つの制御可能および/または可動の光学素子を備える。さらに、ビーム位置決めシステムは、制御ユニットによって制御可能な少なくとも2つの可動光学素子を備える。加工面へのレーザビームの入射角は、ビーム位置決めシステムによってレーザビームを集束光学系の光軸に垂直な方向に平行移動させることで変更することができる。また、ビーム位置決めシステムは、レーザビームの加工位置を加工面上で2次元移動させることができる。調整装置は、走査ヘッドに加えて、演算ユニットを有する。演算ユニットは、外部演算ユニットとして構成され、および/または、走査ヘッドの外部インターフェースを介して走査ヘッドのビーム位置センサおよび/または制御ユニットに接続される。走査ヘッドは、上述した個々の特徴またはこれらの組み合わせにより構成される。本発明に係る調整装置によれば、走査ヘッドのオフライン調整を高速かつ高精度に行うことができる。また、本発明に係る調整装置によれば、走査ヘッドの上流に設けられたレーザビーム源等の外部ユニットに対して何ら影響を与えることなく調整を行うことができる。すなわち、本発明に係る調整装置では、すべてのデータが走査ヘッド、特にビーム位置決めシステムによって決定、設定および/または調整される。したがって、本発明に係る走査ヘッドまたは調整装置は、使用者の環境条件に関わらず独立して設置および調整が可能である。
【0029】
また、本発明は、走査ヘッドおよび/または調整装置をオフライン調整ことが可能な調整方法を提供する。走査ヘッドおよび/または調整装置は、上述した個々の特徴またはこれらの組み合わせにより構成される。調整処理が行われると、レーザビームの実際の位置がオフラインで、すなわち、加工プロセスの前に検出される。レーザビームの実位置は、レーザビームの少なくとも4つの独立した位置パラメータを検出可能なビーム位置センサによって検出または決定される。また、レーザビームの実位置の検出は、レーザビームの伝播方向において走査ヘッドのビーム位置決めシステムの下流で実行される。ビーム位置センサは、外的要因によって発生したレーザビーム位置の変化に加えて、ビーム位置決めシステムによるレーザビーム位置の変更も検出することが好ましい。ビーム位置センサによってレーザビームの実位置を検出した後、演算ユニットは、記憶ユニットに記憶された目標位置に基づき、検出されたレーザビームの実位置を補正する。実位置と目標位置の間に差がある場合、演算ユニットは、ビーム位置決めシステムに対する補正値を算出する。続いて、制御ユニットが、算出された補正値に基づいてビーム位置決めシステムを調整する。上述の調整プロセスは、1回または複数回行うことができ、調整処理が複数回行われる場合は制御ループとなる。
【0030】
レーザビームの目標位置は、工場較正プロセスによって決定されることが好ましい。また、レーザビームの目標位置は、走査ヘッドの製造時に個別に決定され、記憶ユニットに記憶されることが好ましい。
【0031】
本発明では、走査ヘッドの工場較正プロセスにより、レーザビームの目標位置が決定および記憶される。したがって、走査ヘッドの始動時に、較正パラメータが決定されたビーム位置を復元することができる。そのため、工場での較正時と使用時に、走査ヘッドに同じビーム位置を入力する必要がない。加えて、始動後に高精度に調整および較正された状態を実現するために、工場の較正装置または使用者のシステムにおいて特定のビーム位置が必要とされない。
【0032】
例えば、工場較正プロセスを用いて、座標変換パラメータを決定することができ、この座標変換のパラメータを用いて、走査ヘッドの動作中に、加工領域内のビーム位置および焦点位置の座標からビーム位置決めシステムの可動光学素子の制御値および焦点調整システムの制御値が算出される。
【0033】
調整プロセスにおいて決定された補正値は、座標変換後の制御値に加算されるオフセット値であってもよい。特に、補正値は、ビーム位置決めシステムの4つの回転可能な光学素子の4つの角度制御値に加えられる4つの角度補正値であってもよい。
【0034】
ビーム位置センサと、ビーム位置の補正とを通じたビーム位置の測定に加えて、本発明に係る走査ヘッドは、適切な技術的設計に基づいて構成され、好ましくはビーム位置に加えて、レーザビームに関する追加の測定値を決定することができる1つまたは複数の適切なセンサユニットまたはビーム位置センサを介して、空間ビームプロファイルおよび/またはビーム広がり角の測定を行うことができるように構成されてもよい。レーザビームに関する追加の測定値には、例えば、レーザの強度、偏光状態またはスペクトル特性が含まれる。これらの測定値は、必要に応じ、上述の調整プロセスと併せて使用することができる。したがって、演算ユニットにおいて走査ヘッドの可動素子の設定パラメータを算出する際に、ビーム位置の補正値に加えて、ビーム位置以外の誤差を補正するための追加の情報を使用することも可能である。
【0035】
例えば、演算ユニットにおいて測定されたビームの広がり角と目標広がり角との差は、焦点設定ユニットおよびビーム位置決めユニットの設定パラメータの計算方法に基づいて補正することができる。したがって、ビームの広がり角が異なる場合であっても、ビームの迎角を所定値に維持しながら、焦点を所望の加工経路に導くことができる。ビーム位置の補正値は、例えば、演算ユニットにおいてさらなる補正プロセスに導入され、他の補正値でオフセットされてもよい。
【0036】
本発明のさらなる利点は、以下の実施形態の記載において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明に係る調整装置の第1実施形態(すべての構成要素が走査ヘッドに含まれている)を示す概略図である。
図2図2は、本発明に係る調整装置の第2実施形態(演算ユニットが外部インターフェースを介して走査ヘッド内部の構成要素に接続されている)を示す概略図である。
図3図3は、本発明に係るビーム位置センサの第1実施形態を示す概略図である。
図4図4は、本発明に係るビーム位置センサの第2実施形態を示す概略図である。
図5図5は、本発明係るビーム位置決めシステムの第1実施形態を示す概略図である。
図6図6は、本発明に係るビーム位置決めシステムの第2実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、レーザ材料加工のために走査ヘッド2のビーム位置決めシステム3を調整可能に構成された調整装置1の概略図である。調整装置1は、ビーム位置決めシステム3に加えて、ビーム位置センサ4、演算ユニット5、記憶ユニット6および/または制御ユニット7を有する。図1に示す実施形態では、調整装置1は、走査ヘッド2と完全に一体化され、スキャナハウジング8内に収容されている。
【0039】
レーザビーム9の位置は、ビーム位置決めシステム3によって制御される。そのために、ビーム位置決めシステム3は、制御ユニット7によって制御可能な少なくとも2つの光学素子(不図示)を備える。これらの光学素子は、好ましくは、回転可能に設けられ、アクチュエータによって制御可能なミラーを備える。
【0040】
本実施形態において、ビーム位置決めシステム3は、偏向ユニット11を備えている。偏向ユニット11は、レーザビーム9が被加工物14の加工面13に入射する加工位置12を加工面13上で2次元的に、すなわち、x-y方向に移動させることができるように構成されている。そのために、偏向ユニット11は、好ましくは、それぞれ単一の回転軸を中心に回転可能な2つのミラーを備える。2つのミラーは、加工面13上の加工位置12をx方向に調整する第1ミラーと、y方向に調整する第2ミラーとにより構成される。
【0041】
さらに、ビーム位置決めシステム3は、平行オフセットユニット10を備える。平行オフセットユニット10は、レーザビーム9の伝播方向において、偏向ユニット11の上流に配置されることが好ましい。平行オフセットユニット10によって、加工面13へのレーザビーム9の入射角を調整することができる。レーザビーム9の入射角の調整は、レーザビーム9を集束光学系15の光軸16に垂直な方向に平行移動することによって行われる。したがって、集束光学系15は、レーザビーム9の伝播方向において、ビーム位置決めシステム3、特に平行オフセットユニット10の下流に配置される。集束光学系15は、レーザビーム9を被加工物14の加工面13上の加工位置12に集束させる。
【0042】
平行オフセットユニット10は、レーザビーム9を平行移動させるために、少なくとも2つの回転可能なミラーを備える。これらのミラーを用いることにより、レーザビーム9の傾斜角αを制御することができる。したがって、例えば、x-z平面内の第1可動ミラーによって第1傾斜角度を調整し、y-z平面内の第2可動ミラーによって第2傾斜角度を調整することができる。なお、レーザビーム9の平行移動は、2つの連続した可動の(特に、回転または傾斜可能な)光ディスクによっても行うことができる。
【0043】
図1に示すレーザ材料加工用走査ヘッド2は、焦点設定ユニット17をさらに備えている。これにより、レーザビーム9をz方向に移動させることができる。そのために、焦点設定ユニット17のレンズは、例えば、レーザビーム9の伝播方向において光軸方向に移動可能に構成されている。本実施形態では、焦点設定ユニット17がビーム位置決めシステム3と集束光学系15の間に配置されているが、他の実施形態では、焦点設定ユニット17は集束光学系15によって構成されてもよい。この場合、レーザビーム9の焦点位置を光軸16に対してz方向に移動させるために、集束光学系15が光軸方向に移動可能に構成される。
【0044】
前述のように、走査ヘッド2は、制御ユニット7を備えている。本実施形態では、制御ユニット7は走査ヘッド2の内部に配置されている。図1に示すように、制御ユニット7は、ビーム位置決めシステム3、特に、平行オフセットユニット10および偏向ユニット11に接続されている。制御ユニット7により、不図示の可動光学素子(ミラー等)を制御することができる。したがって、平行オフセットユニット10によってレーザビーム9の入射角を調整し、偏向ユニット11によって加工位置12をx-y平面内で調整することができる。また、制御ユニット7は、焦点設定ユニット17に電気的に接続されており、焦点設定ユニット17を介して、焦点位置をz方向に調整可能である。
【0045】
走査ヘッド2の使用を開始する際の問題点は、レーザ光源18によって生成され、走査ヘッド2に入射するレーザビーム9が、誤差を含むことである。したがって、工場で適切に較正されたビーム位置決めシステム3であっても、このような調整誤差は、走査ヘッド2の構成要素、すなわち、平行オフセットユニット10および偏向ユニット11を通過するレーザビーム9の伝播方向において継続的に発生し得る。本発明では、ビーム位置決めシステム3に到達する前に生じた上記調整誤差を補正するために、調整装置1の少なくとも一部、好ましくは、図1に示す第1実施形態のように、調整装置1の全体が走査ヘッド2と一体化されている。
【0046】
調整装置1は、ビーム位置センサ4を有する。ビーム位置センサ4によって、ビーム位置決めシステム3と集束光学系15との間のビーム経路の領域におけるレーザビーム9の実位置19を検出することができる。そのために、ビーム位置センサ4は、レーザビーム9の伝播方向において、ビーム位置決めシステム3の下流であって、集束光学系15の上流に配置される。すなわち、ビーム位置センサ4は、ビーム位置決めシステム3と集束光学系15の間のビーム経路におけるレーザビーム9の実位置19を検出することができるように、走査ヘッド2の内部に配置されている。
【0047】
ビーム位置決めシステム3と集束光学系15との間には、ビームスプリッタ20が配置される。ビームスプリッタ20は、好ましくは、半透明ミラーにより構成される。ビームスプリッタ20により、実位置19を変更することなく、レーザビーム9を集束光学系15に至るビーム経路外に分離することができる。分離されたレーザビーム9の一部は、ビーム位置センサ4によって検出される。図1に示すように、ビーム位置センサ4とビームスプリッタ20は、ビームスプリッタ20を透過したレーザ光がビーム位置センサ4に導導入され、ビームスプリッタ20で反射されたレーザ光が集束光学系15に導入されるように配置される。
【0048】
レーザビーム9の実位置19は、レーザビーム9の少なくとも4つの独立した位置パラメータによって決定される。ビーム位置センサ4は、これらの位置パラメータを検出することによって、ビーム位置決めシステム3と集束光学系15との間のビーム経路の領域におけるレーザビーム9の実位置19を間接的に検出することができる。レーザビーム9の実位置19を決定するための位置パラメータには、並進および/または回転位置パラメータが含まれる。
【0049】
図1に示すように、ビーム位置センサ4は、走査ヘッド2の内部に配置された演算ユニット5に接続されている。そのため、ビーム位置センサ4は、検出したレーザビーム9の位置パラメータまたは実位置19を演算ユニット5に送信することができる。
【0050】
調整装置1は、レーザビーム9の目標位置21が記憶された記憶ユニット6をさらに備える。目標位置21は、ビーム位置決めシステム3と集束光学系15の間においてレーザビーム9が通過する位置を含む。目標位置21は、調整プロセスにおいて設定および/または調整される。そのために、レーザビーム9の目標位置21、または目標位置21を決定する少なくとも4つの位置パラメータが、走査ヘッド2の出荷前に工場で決定される。したがって、このような工場較正プロセスでは、ビーム位置決めシステム3および/または焦点設定ユニット17の製造公差が考慮される。工場で決定されたレーザビーム9の目標位置21は、記憶ユニット6に記憶される。記憶ユニット6は、別体であってもよいし、演算ユニット5と一体化されていてもよい。
【0051】
演算ユニット5は、ビーム位置センサ4によって検出された実位置19と、工場で決定および/または記憶ユニット6に記憶されたレーザビーム9の目標位置21とを比較する。ビーム位置決めシステム3の上流に調整誤差が存在する場合、演算ユニット5は、実位置19と所望の目標位置21との差から、補正値を算出する。上記補正値によって、ビーム位置決めシステム3、特に平行オフセットユニット10および/または偏向ユニット11の再調整量が決定される。演算ユニット5は、反復近似法および/または確率的探索法を用いて補正値を算出する。演算ユニット5で算出された補正値は、演算ユニット5に接続された制御ユニット7に送信される。制御ユニット7では、上記補正値を用いて、ビーム位置決めシステム3、特に平行オフセットユニット10および/または偏向ユニット11の少なくとも1つの光学素子の再調整が行われる。
【0052】
本発明では、ビーム位置決めシステム3を適切に再調整することで、調整後の実位置19が目標位置21と一致するようにビーム位置決めシステム3の上流の調整誤差を補正することができる。上記調整プロセスは、制御ループとして構成されてもよく、その場合、補正値によって再調整されたレーザビーム9の実位置19は、ビーム位置センサ4によって再検出され、演算ユニット5によって、追加の実位置/目標位置の比較に基づいて検査される。上記プロセスは、実位置19が所定の許容範囲内になるまで実行することができる。
【0053】
上記の調整プロセスは、オンライン(すなわち、加工プロセス中)ではなく、オフライン(すなわち、加工プロセスの開始前)で行われる。例えば、走査ヘッドの使用設定時に、および/または、所定の時間間隔内でオフライン調整を行うことで、温度または摩耗によって引き起こされる誤差を補正することができる。
【0054】
図2は、本発明の第2実施形態に係る調整装置1を示す。なお、本実施形態では、図1に示された第1実施形態と同一のおよび/または少なくとも構造および/または機能が対応する構成要素には、同一の参照符号が使用される。すなわち、特段の説明がない限り、第1実施形態と同一の参照符号が使用された構成要素は、これらと構造および/または機能が対応している。
【0055】
図2に示す調整装置1は、図1に示す第1実施形態と同様に、レーザビーム9の実際の位置19を検出するビーム位置センサ4と、実位置/目標位置の比較および/または補正値の算出を行う演算ユニット5と、少なくとも1つの補正値とレーザビーム9の位置を制御するビーム位置決めシステム3とを考慮して、ビーム位置決めシステム3を再調整する制御ユニット7とを有する。
【0056】
他方、本実施形態に係る調整装置1は、演算ユニット5が走査ヘッド2の外部に設けられている点で第1実施形態と異なる。走査ヘッド2は、演算ユニット5を走査ヘッド2、特にビーム位置センサ4および/または制御ユニット7と接続するための外部インターフェース22を備える。外部インターフェース22は、例えば、有線および/または無線インターフェースを備えるにより構成される。レーザビーム9の目標位置が記憶された記憶ユニット6は、図2に示すように、走査ヘッド2の内部に配置されることが好ましい。この場合、工場で決定された目標位置21が、各走査ヘッド2について個別に決定される。なお、目標位置21が記憶された記憶ユニット6は、走査ヘッド2の外部に設けられた外部演算ユニット5に組み込まれていてもよい。
【0057】
図3および図4は、ビーム位置センサ4の2つの代替的な実施形態を示す。上述したように、ビーム位置センサ4は、レーザビーム9の少なくとも4つの位置パラメータを検出可能に構成される。したがって、ビーム位置センサ4は、4Dセンサと呼ぶこともできる。レーザビーム9の実位置19は、少なくとも4つの位置パラメータによって決定される。すなわち、ビーム位置センサ4は、4つの位置パラメータによってレーザビーム9の実位置19を間接的に検出する。この場合、位置パラメータには、並進および/または回転位置パラメータが含まれる。
【0058】
図3に示す第1実施形態では、第1の2次元センサ23によって2つの並進位置パラメータが決定される。並進位置パラメータは、例えば、ビーム位置センサ座標系におけるx座標およびy座標に相当する。ビーム位置センサ4は、空間におけるレーザビーム9の角度位置を決定する第2の2次元センサ24を備える。すなわち、第2センサ24によって、2つの回転位置パラメータが決定される。そのために、レーザビーム9の伝播方向における第2センサ24の上流にセンサレンズ25が配置される。これにより、レーザビーム9に所定の偏向が生じる。第1および第2センサ23、24の上流には、ビーム位置センサ4に入射したレーザビーム9を第1および第2センサ23、24に導入するためのセンサビームスプリッタ26が配置されている。
【0059】
図4に示す実施形態では、センサビームスプリッタ26に対して異なる距離27、28に配置された第1および第2センサ23、24によって実位置19が決定される。この場合、第1センサ23によって第1のx座標およびy座標が検出され、第2センサ24によって第2のx座標およびy座標が検出される。基準平面に対して既知の距離27、28に基づいて、基準平面に対するレーザビーム9のx座標、y座標および入射角を算出することができる。
【0060】
両実施形態において、第1および第2センサ23、24は、例えば、カメラチップなどの撮像センサにより構成される。また、第1および第2センサ23、24は、位置検出多面ダイオード(象限ダイオード)および/または波面センサであってもよい。
【0061】
図5は、4つの回転可能な単軸ミラー29a、29b、29c、29dによってビーム位置を調整可能に構成されたビーム位置決めシステム3の第1実施形態を示す。単軸ミラー29a、29b、29c、29dは、単一の回転軸の周りを回転可能に構成されている。これらの回転軸は互いに平行ではなく、また、各ミラー(29a、29b、29c、29d)は異なる位置に配置されるため、回転軸の4つの設定自由度が、ビーム位置に対して4つの設定自由度をもたらす。本実施形態に係るビーム位置決めシステム3は、2つの別個のサブシステム(すなわち、平行オフセットユニット10と偏向ユニット11)ではなく、ビームの平行移動と傾斜を同時に行う単一のシステムによって構成されている。
【0062】
図6は、2つの回転軸の周りで傾斜可能な2つの2軸ミラー30a、30bによってビーム位置を調整可能に構成されたビーム位置決めシステム3の第2実施形態を示す。傾斜ミラーの4つ(2×2)の設定自由度が、ビーム位置に対して4つの設定自由度もたらす。本実施形態に係るビーム位置決めシステム3は、2つのサブシステムではなく、ビームの平行移動と傾斜を同時に行う単一のミラーユニットによって構成されている。
【0063】
前述の実施形態では、ガルバノメータを用いてミラーを駆動することで、ビーム位置をより動的かつ高精度に調整することができる。ビーム位置決めシステム3のガルバノメータは、オンライン動作、好ましくはビーム位置センサ4とは独立して実行される閉ループ位置制御によって動作する。したがって、本実施形態に係るビーム位置決めシステム3は、ビーム位置センサ4とは独立したガルバノメータによる位置測定に基づいている。
【0064】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。例えば、上述の説明、特許請求の範囲および図面に示された構成を組み合わせることで、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1:調整装置
2:走査ヘッド
3:ビーム位置決めシステム
4:ビーム位置センサ
5:演算ユニット
6:記憶ユニット
7:制御ユニット
8:ハウジング
9:レーザビーム
10:平行オフセットユニット
11:偏向ユニット
12:加工位置
13:加工面
14:被加工物
15:集束光学系
16:光軸
17:焦点設定ユニット
18:レーザ光源
19:実位置
20:ビームスプリッタ
21:目標位置
22:外部インターフェース
23:第1センサ
24:第2センサ
25:センサレンズ
26:センサビームスプリッタ
27:第1距離
28:第2距離
29:単軸ミラー
30:2軸ミラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6