(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6821789
(24)【登録日】2021年1月8日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】自動臨床分析装置内で使用される試薬容器用の試薬組成物分注キャップ
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20210114BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
G01N35/02 B
G01N35/00 C
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-504772(P2019-504772)
(86)(22)【出願日】2017年8月7日
(65)【公表番号】特表2019-525177(P2019-525177A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】US2017045695
(87)【国際公開番号】WO2018031449
(87)【国際公開日】20180215
【審査請求日】2019年3月28日
(31)【優先権主張番号】15/234,111
(32)【優先日】2016年8月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506391864
【氏名又は名称】インストゥルメンテーション ラボラトリー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブランケンスタイン,ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】ツェン,ハンソン
【審査官】
岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−519298(JP,A)
【文献】
特表2000−501191(JP,A)
【文献】
特開2004−083022(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/069731(WO,A1)
【文献】
特開昭61−178852(JP,A)
【文献】
特表2005−525975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
G01N 1/04
B65D 51/20,51/28
B65D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動臨床分析装置における試薬組成物の貯蔵のための装置であって、
試薬分注キャップを備え、
前記試薬分注キャップは、
長軸の周囲に配置され、ルーメンを画定する、ハウジングと、
前記ハウジングの第1端部にある前記ルーメンの第1開口と、
前記ハウジングの第2端部にある前記ルーメンの第2開口と、
1つ又は複数の試薬組成物を貯蔵するためのチャンバを画定する、前記ルーメンの一部と、
前記ハウジングに含まれ、前記ハウジングの前記第1端部から前記ハウジングの前記第2端部まで延在する雌ねじ部と、
前記ルーメンの内部に配置されている円筒状部材であって、前記円筒状部材は、前記ハウジングの前記雌ねじ部と螺合するように配置されている雄ねじ部を有し、前記雌ねじ部と前記雄ねじ部との螺合によって、前記ルーメンの内部において前記長軸に沿って移動され、前記雌ねじ部と前記雄ねじ部との前記螺合は、前記ルーメンの前記第1開口部と前記チャンバとの間のシール構成を形成し、前記ルーメンの前記第1開口部と前記チャンバとの間の前記シール構成は、前記チャンバの内部にある試薬内容物が外部の酸素及び/又は水分との接触を有効に防ぐ、円筒状部材と、
前記ハウジングの前記第2端部に配置されているシールであって、前記シールは、前記ルーメンの前記第2開口を横断するように広がり、前記チャンバは、前記ハウジング、前記円筒状部材及び前記シールによって囲まれている、シールと、
前記ハウジングの前記第2端部に嵌合されている取付片であって、前記取付片は、容器の開口部で前記容器の嵌合部と係合するための形状をなしている係合部を有し、前記容器の前記開口が前記シールによって封止されるように、前記ハウジング及び前記シールを前記容器に対して固定位置に保持する、取付片と、を含む、
装置。
【請求項2】
自動臨床分析装置における試薬組成物の貯蔵及び分注のための装置であって、
第1端部及び隣接する第1開口部と、第2端部及び隣接する第2開口部と、ハウジングの内表面に沿って延在する雌ねじ部と、を有し、前記ハウジングの前記第1端部及び前記第2端部の間に位置するルーメンを有するチャンバを画定する、ハウジングと、
前記ハウジングの前記第1端部に配置されている第1端部と、第2端部と、前記ハウジングの少なくとも前記雌ねじ部と螺合する雄ねじ部と、を有し、前記ハウジングの前記雌ねじ部上で回転可能であるとともに、前記ハウジングの前記第1端部から前記ハウジングの前記第2端部に向かって並進可能である、円筒状部材と、
前記ハウジングの前記第2端部と、前記円筒状部材の前記第2端部との間で前記チャンバの前記ルーメンを横断するように配置されている、シールと、
を備え、
前記シールは、前記円筒状部材の前記第2端部と一体になり、前記円筒状部材の前記第2端部に接合される、装置。
【請求項3】
前記取付片は、ねじ山と、スナップロックと、メイティングリングと、受容溝と、摩擦嵌合機構と、ルアーロックと、1つ又は複数のタブとを有するグループから選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記試薬分注キャップは、前記容器に可逆的に取り付け可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ハウジングの前記第1端部に配置されているシールキャップをさらに備え、
前記シールキャップは、前記円筒状部材を閉じ込めるとともに、前記ルーメンの前記第1開口を封止する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記取付片を介して前記試薬分注キャップに連結されている前記容器をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記試薬分注キャップの前記チャンバに貯蔵されている第1試薬組成物と、
接合容器内に別々に貯蔵されている第2試薬組成物と、
をさらに備え、
前記第1試薬組成物及び前記第2試薬組成物は、前記シールによって互いに分離されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1試薬組成物は、前記円筒状部材が前記長軸に沿って前記シールに向かって移動することに応じて、前記シールを破り、前記第2試薬組成物と混合することができる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記円筒状部材から前記シールに向かって伸びる穿刺プローブ、をさらに備え、
前記穿刺プローブは、前記円筒状部材が前記長軸に沿って前記シールに向かって移動することに応じて、前記シールを穿刺するように設けられている尖った先端を有する、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外診断(IVD)検査手順に関する。より詳細には、本発明は、診断検査で使用され、自動臨床分析装置において実施される試薬の試薬組成物の貯蔵及び混合のための試薬容器用の試薬組成物分注キャップを提供する。本発明はさらに、試薬分注キャップの使用方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
現在利用可能な体外診断(IVD)検査手順では、試薬が液状及び/又は粉末状での使用のために調製され得る前に人手の介入を伴う非常に多くのステップが負担となっている。例えば、診断検査室において、一般的には、全血、血漿、血清、尿、脳脊髄液などの患者の体液の試料検査のために試薬を使用する前に、医療従事者は、別個のバイアル/ボトルから異なる試薬組成物を収集し、ピペットを使用して一定量の希釈剤を粉末試薬のバイアル又は濃縮液試薬のバイアルに移して、一定時間、再構成するのを待ち、最後に、例えば、手で振る、かき混ぜる、又は回転させることによって試薬を混合する。この手動プロセスは、診断検査完了速度を低下させ、人為的ミス及び潜在的有毒化学物質による作業者の汚染のリスクを高め、包装にかかるコストを上昇させる。
【0003】
試薬の調製における上記の欠点に加えて、試薬容器(例えば、バイアル又はボトル)内の試薬組成物は、試薬容器が臨床分析装置内に配置されたときに蒸発しやすい。試薬(単数又は複数)の蒸発は、試薬安定性の一貫性を損ない、試薬を無駄にしてしまう。
【0004】
さらに重要なことには、試薬の蒸発は、臨床分析装置によって得られた結果の一貫性を損ない、結果は信頼性を欠いたものとなってしまう。したがって、自動臨床分析装置内で実施される診断検査で使用するための試薬の組成物を貯蔵及び混合するための試薬容器を改良する必要がある。さらに、試薬調製プロセスを改善し、自動臨床分析装置におけるIVD用途の試薬容器の使用効率を高める必要もある。上記の不利点に対処する試薬の包装の解決策について、後述する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書で説明するのは、複数の組成物の貯蔵、自動再構成ならびに貯蔵組成物の混合、及び貯蔵組成物の蒸発防止に関する試薬包装の解決策である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、自動臨床分析装置における試薬組成物の貯蔵及び分注のための装置を対象とする。本発明のこの態様の装置は、第1端部及び隣接する第1開口部と、第2端部及び隣接する第2開口部と、雌ねじ部とを有するハウジングを備え、雌ねじ部はハウジングの内表面の少なくとも一部に沿って延在する。ハウジングは、ハウジングの第1端部と第2端部との間に配置されたルーメンを有するチャンバを画定する。ハウジングの第1端部に配置された円筒状部材は、第1端部と第2端部とを備える。円筒状部材は、ハウジングの少なくとも雌ねじ部と螺合する雄ねじ部を有する。円筒状部材は、ハウジングの雌ねじ部上で回転可能であり、ハウジングの第1端部から前記ハウジングの第2端部に向かって並進可能である。本発明のこの態様の一実施形態では、ハウジングの第2端部と円筒状部材の第2端部との間でチャンバの第2端部のルーメンを横断するようシールが配置されている。
【0007】
本発明のこの態様の一実施形態では、該装置は、シールと円筒状部材の第2端部との間のチャンバのルーメン内に収容されている試薬組成物を含む。一実施形態では、円筒状部材の第1端部に、アクチュエータが動作可能に配置される。アクチュエータは、ラム、ニードル、又は回転可能な円筒状部材を特徴とし得る。
【0008】
本発明のこの態様のさまざまな実施形態では、該装置は、円筒状部材と一体になって、円筒状部材に接合され得るシールを含む。ハウジングの第2端部に、容器に嵌合させるための取付片が配置され得る。さまざまな実施形態の取付片は、ねじ山、スナップロック、メイティングリング、受容溝、摩擦嵌合機構、ルアーロック、もしくは1つ又は複数のタブから成り得る。容器と螺合するための複数の雄ねじ部は、ハウジングの第1端部の外表面に配置され得る。該装置はさらに、ハウジングの第1開口部を可逆的に封止するためのキャップを特徴とし得る。
【0009】
別の態様では、本発明は、試薬を貯蔵及び分注するための装置であって、長軸と、第1端部及び隣接する第1開口部と、第2端部及び隣接する第2開口部とを有するハウジングを備える装置を対象とする。ハウジングは、第1端部と第2端部とに間に配置されたルーメンを有するチャンバと、チャンバのルーメンを横断するように配置された変形可能部材とを画定する。変形可能部材は、ハウジングの第2端部に最も近い変形可能な膜の側に配置された尖った先端を含む穿刺プローブを含む。本発明のこの態様では、チャンバのルーメンを封止するためのシールが、ハウジングの第2端部と穿刺プローブの先端との間のチャンバのルーメン内に配置される。試薬を貯蔵するためのチャンバは、シールと変形可能部材との間に配置される。本発明のこの態様の装置は、前記ハウジングの第2端部に、容器に嵌合させるための取付片を含む。取付片は、スナップロック機構、摩擦嵌合機構、ねじ山、1つ又は複数のタブ、受容溝、メイティングリング、ルアーロック、もしくは1つ又は複数の溝であり得る。本発明のこの態様の装置はさらに、ハウジングの第1開口部を可逆的に封止するためのキャップと、該装置を作動させるためのラムとを特徴とし得る。
【0010】
別の態様では、本発明は、試薬を貯蔵及び分注するための装置であって、上述したような円筒状ハウジングと、チャンバのルーメン内に配置されて横方向に摺動可能なプラグとを備える装置を対象とする。プラグは、プラグ内に、ハウジングの長軸に平行な貫通孔を画定する。貫通孔は、試薬組成物のような物質を貯蔵するためのリザーバを含む。物質は、貫通孔がチャンバのルーメンと位置合わせされたときに、リザーバから放出される。本発明のこの態様の装置は、前記ハウジングの第2端部に、容器に嵌合させるための取付片を含む。取付片はさまざまな実施形態では、スナップロック機構、摩擦嵌合機構、ねじ山、1つ又は複数のタブ、受容溝、メイティングリング、ルアーロック、もしくは1つ又は複数のタブである。
【0011】
別の態様では、本発明は、本明細書で記載されている装置のさまざまな実施形態に従って自動臨床分析装置内で診断試薬を調製するために、試薬組成物を試薬分注キャップ内に貯蔵し、試薬組成物を自動混合する方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】本発明の一実施形態に係る、容器に解除可能に接合された例示的な試薬分注キャップの長手方向断面図である。
【
図1B】本発明の一実施形態に係る、
図1Aの試薬分注キャップのハウジング及び円筒状部材の分解断面図である。
【
図1C】本発明の一実施形態に係る、容器の上部に接合された例示的なシールを含む
図1Aの試薬分注キャップのハウジングの部分断面図である。
【
図2A】本発明の一実施形態に係る、円筒状部材の第2端部とシールとの間に位置するチャンバ内に配置された第1試薬組成物を示す例示的な試薬分注キャップの部分断面図である。
【
図2B】本発明の一実施形態に係る、円筒状部材の第2端部とシールとの間に位置するチャンバ内に配置された第1試薬組成物を入れたブリスターパック示す例示的な試薬分注キャップの部分断面図である。
【
図2C】本発明の一実施形態に係る、円筒状部材の端部に第1試薬組成物が配置された状態の例示的な試薬分注キャップの部分断面図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る、円筒状部材の第1端部にラムを当てることによって生じる
図1Aに示されているシールと円筒状部材の第2端部との間に収容された第1試薬組成物に向けた円筒状部材の軸方向回転を示す本発明の試薬分注キャップの断面図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る、針を含む変形可能な膜とシールとの間に位置するチャンバ内に配置された第1試薬組成物を示す例示的な試薬分注キャップの部分断面図である。
【
図4A】本発明の一実施形態に係る、円筒状部材の第2端部に軸方向に配置された針を含む例示的な試薬分注キャップの断面図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係る、円筒状部材の第1端部にラムを当てることによって生じる
図4Aに示されているシールと円筒状部材の第2端部との間に収容された第1試薬組成物に向けた円筒状部材の軸方向回転を示す本発明の試薬分注キャップの部分断面図である。
【
図5A】ねじなしハウジングとねじなし円筒状部材とを含む本発明の試薬分注キャップの別の実施形態を示す図である。
【
図5B】ラムを円筒状部材の第1端部に当てて円筒状部材の反対側端部を取り付け容器のルーメンへと押し込むことにより第1試薬組成物を容器内に分注するための
図5Aの試薬分注キャップの動作を示す図である。
【
図6A】ハウジングがスライダを含む本発明の試薬分注キャップのさらに別の実施形態を示す図である。
【
図6B】第1試薬組成物を取り付け容器のルーメンへと放出するための
図6Aのスライダの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
診断分析に使用される試薬を作製するために別の貯蔵組成物と組み合わせるべき少なくとも1つの貯蔵組成物を別々に貯蔵して自動的に分注するための自動試薬分注キャップ、及び血液凝固分析装置、免疫分析装置、化学分析装置などを含む自動臨床分析装置内で使用するときに貯蔵組成物を分注する方法について後述する。貯蔵される試薬組成物(単数又は複数)(すなわち、試薬組成物の1つ又は複数)は、自由に、又は膜(例えば、穿刺可能な膜)を使用する小袋、ブリスターパック、ピル、バッグのような一次包装の形で、又は1つ又は複数の試薬組成物を含むアンプルの形で、試薬分注キャップ内に収容される。貯蔵試薬組成物は、液状(例えば、濃縮物)、ゲル状、又は乾燥組成物の形態(例えば、粉末、タブレット、凍結乾燥形態、又は粒状形態)であり得る。
【0014】
[0026] 本発明の試薬分注キャップ内の貯蔵試薬組成物(単数又は複数)は、酸素又は水分が貯蔵試薬組成物(単数又は複数)の化学的又は物理的性質に影響を及ぼすのを防ぐ方法で貯蔵される。一実施形態では、キャップ内に貯蔵されている試薬組成物(単数又は複数)とキャップの周囲の外部環境との接触を最小限に抑えるために、キャップの一端にシールキャップが設けられる。このように試薬組成物(単数又は複数)を貯蔵することにより、蒸発による試薬組成物(単数又は複数)の損失が最小限に抑えられる。
【0015】
[0027] 本発明の試薬分注キャップは、液体、ゲル、又は乾燥組成物(例えば、粉末、タブレット、凍結乾燥形態、又は粒状形態)の形態で第2試薬組成物を収容する容器上に配置される。試薬分注キャップの内容物は、例えば、これに限定されないが、ラムのようなプランジャによって作動されるキャップ又はキャップの一部を回転させる又は押圧することによって分注キャップと容器との間のエラストマー膜のようなシールを破り、キャップから貯蔵組成物を接合容器内に放出するような開封機構によって接合容器内へ分注される。試薬分注キャップ内の組成物と、試薬キャップの組成物と混合される容器内の組成物とのさまざまな組み合わせ及び調整が本発明によって想定される。
【0016】
上記ならびに他の目的は、本明細書に示す本発明の利点及び特徴と共に、以下の説明及び特許請求の範囲を参照することで明らかになるであろう。さらに、本明細書に示されているさまざまな構成要素の特徴は、相互排他的ではなく、さまざまな組み合わせ及び置換形態で存在可能であることを理解されたい。
【0017】
一態様では、本発明は、自動臨床分析装置、例えば、血液凝固分析装置(ACLTOP(登録商標)(Instrumentation Laboratory Company、ベッドフォード、マサチューセッツ州))内で使用するための診断試薬を作製するために容器内の別の組成物と組み合わせるべき少なくとも1つの試薬の貯蔵及び容器への自動分注のための装置を対象とする。
【0018】
図1A〜
図1Cを参照すると、本発明の自動試薬分注キャップ10は、第1端部20及び隣接する第1開口部21と、第2端部22及び隣接する第2開口部23とを有する円筒状ハウジング12を含む。ハウジング12は、第1端部20と第2端部22との間にルーメン24を有するチャンバ62を画定する。チャンバ62は、ハウジング12の第1端部20から第2端部22まで延在し得る、又は以下でさらに詳細に説明するように、ハウジング12の第2端部22に向けて閉じ込められ得る。本発明の一実施形態では、シールキャップ100は、ハウジング12の第1端部20に配置される。
【0019】
本発明の一実施形態では、チャンバ62は、第1試薬組成物を貯蔵し、第1試薬組成物は、接合容器72内に貯蔵されている第2試薬組成物(単数又は複数)と混合されたときに、診断分析用の試薬となる。ハウジング12はさらに、ハウジングの内壁に沿って延在し、好ましくは、これに限定されないが、ハウジング10の第1端部20から第2端部22まで延在する雌ねじ部30を含む。
【0020】
続いて
図1A及び
図1Bを参照すると、本発明の一実施形態では、試薬分注キャップ10はさらに、長軸と、ハウジング12の第1開口部21の近くの第1端部42と、第1端部42の反対側の第2端部44とを有する円筒状部材40を含む。円筒状部材40は、ルーメン24内に配置され、ハウジング12の長軸に沿って配置される。円筒状部材40は、ハウジング12の雌ねじ部30と螺合するように配置された雄ねじ部50を含む。円筒状部材40は、ハウジング12の雌ねじ部30上で雌ねじ部30を中心として回転可能である。円筒状部材40の雄ねじ部50とハウジング12のねじ部30との螺合は、キャップ10内の試薬内容物が水分又は酸素のような外部要素に触れるのを防ぎ、さらにハウジング12内の試薬内容物の蒸発を防ぐ。
【0021】
図1A〜
図1Cを参照すると、さらにシールキャップ100が、チャンバ62内の試薬組成物(単数又は複数)がキャップ10の周囲の外部環境の酸素又は水分と接触するのを防ぐ、又は最小限に抑える。シールキャップ100はさらに、試薬分注キャップ10内の試薬組成物(単数又は複数)の蒸発を最小限に抑える。
【0022】
図1Cに示されているように、本発明の一実施形態では、試薬分注キャップ10はさらに、円筒状ハウジング12のチャンバ62の第2端部22に配置された脆弱膜のようなシール60を含む。シール60は、チャンバ62の内容物が、接合容器72内に貯蔵されている第2試薬組成物(単数又は複数)と混ざるのを防ぐ。この実施形態では、円筒状部材40の第2端部44とシール60との間の空間は、チャンバ62の境界を画定する。
【0023】
図2Aに示されているように、一実施形態では、チャンバ62は、自由に配置された液状又は粉末状の第1試薬組成物を収容する。あるいは、
図2Bを参照すると、チャンバ62は、第1試薬組成物を入れたパック(例えば、ブリスターパック又はアンプル)のようなパケット64を収容する。あるいは、
図2Cに示されているように、第1試薬組成物は、例えば、第2端部44の表面に塗ることによって、又は試薬組成物を円筒状部材40の第2端部44に接合されたフォイル43内に閉じ込めることによって、円筒状部材40の第2端部44上に配置される。
【0024】
図3A及び
図3Bを参照すると、他の実施形態では、1つ又は複数の試薬組成物は、試薬分注キャップ内に、例えば、小袋、ピル、又はバッグのようなパケット内に配置される。1つ又は複数の試薬組成物がパケット内に貯蔵される場合、パケットは、ピストン、例えば、円筒状部材40、穿刺プローブ74(例えば、針)によって、又は以下でさらに詳細に説明するように、試薬分注キャップ10を捻ること(例えば、キャップ10の回転運動)によって破られ得る。
【0025】
ここで
図3Aを参照すると、本発明の一実施形態では、試薬分注キャップ10の円筒状部材40は、ラム70を円筒状部材40の第1端部42に当てることによって、螺合した円筒状部材の雄ねじ部50とハウジング12の雌ねじ部30を介して、接合される容器72に向けて軸方向に回転するように作動される。
図3Aに示されているように、円筒状部材40は、チャンバ62の内容物を圧縮し、そのことによりシール60を破って、チャンバ62の内容物を容器72内へと放出し、そこで内容物が第2試薬組成物と接触する。
【0026】
あるいは、
図3Bを参照すると、試薬組成物を貯蔵するためのチャンバ62は、円筒状部材40の第2端部44側のチャンバ62の片側の変形可能なダイアフラム80と、チャンバ62の反対側のシール60(例えば、穿刺可能な膜)とによって囲まれる。本発明の一実施形態では、変形可能なダイアフラム80は、軸方向にシール60に向けて延びる鋭く尖った先端(例えば、針)を備える穿刺プローブ74を含む。
【0027】
図4A及び
図4Bに示されている本発明の一実施形態では、円筒状部材40は、円筒状部材40の第2端部44に軸方向に配置された鋭く尖った先端(例えば、針)を備える穿刺プローブ74を含む。
図4Bに最もわかりやすく示されているように、円筒状部材40はラム70によってシール60に向けて回転されるので、シール60、又はパケット(例えば、ブリスターパックもしくは小袋64)が穿刺され、その内容物が容器72内へと放出され、そこで内容物は容器72内に入れられている第2試薬組成物と接触する。
【0028】
図5A及び
図5Bを参照すると、試薬分注キャップ10のさらに別の実施形態では、ハウジング12及び円筒状部材40は、ねじ部を備えない。この実施形態では、円筒状部材40は、ハウジング12の第2端部22の一部に一体チャンバ80を含む。一体チャンバ80は、第1試薬組成物を収容する。シール60は、ハウジング12の第2端部22において、チャンバ80の容器側に配置される。ラム70は、円筒状部材40の第1端部42に当てられて、チャンバ80のシール60が容器72のルーメンへと導入されるまで、円筒状部材40を軸方向に容器72に向けて軸方向に押圧し、チャンバ80の内容物は放出されて、容器72の内容物と接触する。
【0029】
図6A〜
図6Bは、円筒状部材を含まない試薬分注キャップ10の一実施形態を示す。
図6Aを参照すると、この実施形態の試薬分注キャップ10は、中央で軸方向に配置されたルーメン11を有するハウジング12を含む。ハウジング12は、横方向に(矢印7)、すなわち、ハウジング12のルーメン11に垂直な方向に、移動可能なスライダ9(例えば、摺動可能なプラグ)を含む。スライダ9は、例えば、円盤状、長方形又は円筒形であり得る。スライダ9は、試薬組成物を試薬分注キャップ10内に収容するためのチャンバ5のような1つ又は複数の貫通孔を含む。チャンバ5は、試薬分注キャップ10に接合される容器72に面するチャンバ5の端部で開口している。
図6Bを参照すると、チャンバ5は、スライダ9が臨床分析装置内のアクチュエータ(図示せず)によって横方向に押された、又は引っ張られたときに、ハウジング12のルーメン11内へと横方向に摺動可能である。チャンバ5がルーメン11内に配置されるときに、
図6Bに示されているように、チャンバ5内に収容されている試薬組成物が、試薬分注キャップ10に接合されている容器72内へと放出される。
【0030】
試薬分注キャップ10は、容器72に可逆的に取り付け可能である。例えば、再び
図1A及び
図1Bを参照すると、試薬分注キャップ10のハウジング12の第2端部22は、試薬分注キャップ10を容器72に接合するための取付具75を含む。取付片75は、例えば、容器の開口端部の雄ねじ部と螺合するハウジング12の第2端部22の雌ねじ部、又はスナップロック、受容溝、摩擦嵌合部、ルアーロック、もしくは1つ又は複数のタブであり得る。
【0031】
試薬分注キャップ10の不注意による作動を防止するために、例えば、
図5Aに示されているような不正開封防止開封帯76が、試薬分注キャップ10と容器72との間に配置される場合がある。
【0032】
本発明は、キャップ10内のセクション(例えば、ハウジング12)を利用して、試薬組成物の化学的もしくは物理的性質又はその両方の性質を変化させてしまうような水分又は酸素に試薬組成物を触れさせることなく、そしてキャップ10内の試薬組成物を接合容器72内の試薬組成物と混合させずに、液状又は乾燥形態の1つ又は複数の試薬組成物を別々に貯蔵するために、複数の組成物の試薬を貯蔵するという利点を提供する。試薬組成物は予め混合されず、試薬の劣化をもたらすようなより長期間貯蔵されるので、必要に応じてキャップ10内に貯蔵されている試薬組成物を接合容器72内の試薬組成物と混合することで、信頼性の高い結果ももたらすという追加の利益が得られる。
【0033】
1つ又は複数の試薬組成物を接合容器72内へと自動分注する前にキャップ10のセクション(例えば、ハウジング12)内に貯蔵することで、ハウジング10内の組成物及び接合容器72内の組成物の蒸発を最小限に抑えられる。ハウジング12及び容器72内に別々に貯蔵されている試薬組成物の放出及び混合が自動化されるので、偶発的な人の介入が最小限に抑えられる。本明細書に示されている本発明は、調製された試薬の長期貯蔵及び劣化によって引き起こされる分析結果の誤り、及び人の介入によって引き起こされる試薬組成物の偶発的損失を最小限に抑える。これらの特徴は、試薬のコスト効率及び患者試料の分析を向上させる。
【実施例】
【0034】
自動臨床血液凝固分析機器における血液凝固検査用の例示的なデュアルチャンバ試薬混合容器
【0035】
上述した本発明の試薬分注キャップの特定の非限定的な例は、自動血液凝固分析機器によるプロトロンビン時間(PT)検査用の試薬分注キャップである。PT検査用の試薬は、希釈剤と濃縮PT試薬との2つの組成物を含む。希釈剤とPT試薬との容積比は、19:1である。個々のPT検査には、100μlの希釈PT試薬が必要である。自動臨床分析装置におけるPT検査に有用な試薬分注キャップでは、一般に、約500〜1000回のPT検査が必要である。1000回のPT検査用の試薬分注キャップでは、約100mlの希釈PT試薬、すなわち、95mlの希釈剤と5mlの濃縮PT試薬とが必要である。本明細書に開示されている例示的な試薬キャップ(例えば、
図1に示されている試薬キャップ及び容器)では、試薬分注キャップが試薬を放出する先の容器72は、100mlより多い容積容量を有し、最初に95mlの希釈剤を含む。試薬キャップのチャンバは、5mlの濃縮PT試薬を含む。上述の実施形態に示されている円筒状部材によって作動されると、5mlの濃縮PT試薬は容器内へと導入され、容器72内に入れられている第2試薬組成物と接触する。したがって、約1000回のPT分析に対して持続可能な自動試薬調製式の自己完結型PT試薬分注キャップ10が実現される。
【0036】
自動臨床分析装置における分析検査用の例示的なデュアルチャンバ試薬混合容器
【0037】
本発明の試薬分注キャップの第2非限定的な例は、例えば、血液凝固の品質管理(QC)試薬用の分注キャップである。既知の分析検査結果を有する特別に調製された凍結乾燥血漿試料が、QC試薬となる。QC試薬は、試薬分注キャップが接合される容器内に貯蔵される。試薬分注キャップのチャンバには、脱イオン水が貯蔵される。使用前に、脱イオン水が試薬分注キャップのチャンバから凍結乾燥QC試薬を入れた容器へと導入される。