(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のウェルが開口するマイクロウェルアレイと、前記マイクロウェルアレイ上に流路を形成するように配置され、第一貫通孔および第二貫通孔を有する蓋部材と、を備えるマイクロ流体デバイスに粒子を収容する粒子の収容方法であって、
溶媒流体、多数の粒子及び検出試薬を含む粒子含有流体を前記第一貫通孔から注入し、前記流路および前記ウェル内に満たした上で前記第二貫通孔に到達させる注入工程と、
前記注入工程の後に、前記第二貫通孔内に前記粒子含有流体を残しつつ前記第一貫通孔から前記粒子含有流体を吸い上げる吸い上げ工程と、
を含み、
前記溶媒流体が液体である、
粒子の収容方法。
前記ウェルが開口する面に直交する方向における前記流路の高さ寸法が、前記粒子の直径の1倍よりも大きく100倍以下である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の粒子の収容方法。
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の粒子の収容方法の後に、液体である前記溶媒流体を含む前記粒子含有流体と混ざり合わない封止液を前記流路に流して、前記粒子含有流体の上層に封止液の層を形成させ、前記粒子を前記溶媒流体及び前記検出試薬と共に前記ウェルに封入する粒子の封入方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態について、
図1から
図12を参照して説明する。本明細書において、各図面における寸法比は、説明のため誇張している部分があり、必ずしも実際の寸法比とは一致しない。
【0020】
〔マイクロ流体デバイス〕
はじめに、本実施形態に係る粒子の収容方法及び封入方法に用いるマイクロ流体デバイスについて説明する。
図1,2に示すように、マイクロ流体デバイス1は、流路2と、流路2に開口する複数のウェル3とを有する。本実施形態のマイクロ流体デバイス1は、複数のウェル3を有するマイクロウェルアレイ4と、マイクロウェルアレイ4と共に流路2を構成する蓋部材5と、を備えている。
【0021】
マイクロウェルアレイ4の複数のウェル3は、
図3(a)に例示するように、アレイ状に配列されている。複数のウェル3が開口するマイクロウェルアレイ4の面(開口面6)は平坦となっている。複数のウェル3は、例えばマイクロウェルアレイ4の開口面6全体に形成されてもよいが、本実施形態では、
図4に例示するように、マイクロウェルアレイ4の開口面6のうち周縁領域7を除く領域(ウェル形成領域8)に形成されている。ウェル形成領域8の周縁形状は任意であってよいが、本実施形態では長方形となっている。
【0022】
図3に例示するように、各ウェル3は、有底の穴であり、後述する粒子含有流体20に含まれる粒子21(
図7等参照)を少なくとも1個以上収容可能である。
ウェル3の形状は、任意であってよく、例えば円筒形、複数の面により構成される多面体(例えば、直方体、六角柱、八角柱等)、逆円錐形、逆角錐形(逆三角錐形、逆四角錐形、逆五角錐形、逆六角錐形、七角以上の逆多角錐形)等であってもよい。逆円錐形、逆角錐形とは、円錐や角錐の底面がウェル3の開口部となるようなウェル3の形状を意味する。ウェル3の形状が逆円錐形、逆角錐形である場合には、例えば円錐や角錐の頂部を切り取り、ウェル3の底面9を平坦にしてもよい。他の例として、ウェル3の底面9を、ウェル3の開口部に向けて凸または凹となる曲面状に形成してもよい。
ウェル3の形状は、例えば上述の形状を二つ以上組み合わせたような形状であってもよい。例えば、一部が円筒形であり、残りが逆円錐形であってもよい。
【0023】
ウェル3の形状が円筒形である場合、ウェル3の直径は、例えば0.1μm〜100μm、好ましくは1μm〜10μmの範囲で設定することができる。
ウェル3の直径が0.1μm(又は1μm)よりも小さいと、ウェル3に収容される粒子21の直径も0.1μm(又は1μm)よりも小さくする必要がある。この場合には、粒子21がウェル3に収容されている様子を光学的に観察し難しくなってしまう。すなわち、ウェル3の直径が0.1μm(又は1μm)以上であれば、粒子21がウェル3に収容されている様子を光学的に観察しやすくなる程度に、粒子21の直径を設定できる。
ウェル3の直径が100μm(又は10μm)よりも大きいと、ウェル3の体積が過度に大きくなってしまう。その結果、デジタルカウント法でバイオマーカーなどの検出対象の有無を検出する際、蛍光などのシグナルが小さくなってしまう。また、ウェル3内でシグナルを発生させるための化学反応が遅くなるなどのデメリットも発生してしまう。すなわち、ウェル3の直径が100μm(又は10μm)以下であれば、検出対象の有無を検出するためのシグナルを十分な大きさとすることができる。また、ウェル3内でシグナルを発生させるための化学反応が遅くなることを好適に抑制できる。
【0024】
マイクロウェルアレイ4は、光を通すように構成されてもよいが、これに限ることはない。マイクロウェルアレイ4を構成する材料は、ウェル3(特にウェル3の内面)に求める特性を考慮し、親水性材料又は疎水性材料の何れかを選択すればよい。マイクロウェルアレイ4を構成する材料としては、例えばガラス、樹脂、金属の少なくとも1つ、又は、複数を混合した材料が挙げられる。
以下、本実施形態のマイクロウェルアレイ4の構成について、より具体的に説明する。
【0025】
本実施形態のマイクロウェルアレイ4は、
図2,3に示すように、板状の底部層11と、底部層11上に重ねて形成された板状の壁部層12とを備える。
底部層11のうち壁部層12が配置される面は、ウェル3の底面9を構成する。底部層11には、例えばガラスや樹脂を用いることができる。
壁部層12は、その厚さ方向に貫通し、厚さ方向から見てアレイ状に配列された複数の孔部を有する。各孔部の内面は、ウェル3の内周面10を構成する。壁部層12には、例えば樹脂を用いることができる。
【0026】
底部層11及び壁部層12は、
図2,3に例示するように別個に形成されてもよいし、例えば樹脂の射出成形等によって一体に形成されてもよい。マイクロウェルアレイ4のウェル3は、例えばフォトリソグラフィを使って形成されてもよいし、上記した射出成形等の際に同時に形成されてもよい。
【0027】
図1,2に示すように、蓋部材5は、板状又はシート状に形成された部材であり、マイクロウェルアレイ4の開口面6に対向して配置されている。
マイクロウェルアレイ4と蓋部材5との間には隙間が存在する。この隙間は、複数のウェル3が開口するマイクロ流体デバイス1の流路2として機能する。
【0028】
蓋部材5は、その厚さ方向に貫通する複数の貫通孔15を有する。各貫通孔15は、マイクロ流体デバイス1の流路2に連通し、流路2内に流体を供給する入口や、流体を排出する出口として機能する。
本実施形態において、蓋部材5は二つの貫通孔15A,15B(第一貫通孔15A及び第二貫通孔15B)を有する。二つの貫通孔15A,15Bは、長方形とされたウェル形成領域8のうち互いに向かい合う二つの角部に対応する位置に配されている。
【0029】
本実施形態において、各貫通孔15は、小孔部16と、貫通方向から見た大きさが小孔部16よりも大きな大孔部17とを有する。小孔部16と大孔部17とは、貫通孔15の貫通方向に並んでいる。小孔部16は、マイクロ流体デバイス1の流路2側に開口する貫通孔15の開口端を構成している。大孔部17は、マイクロ流体デバイス1の流路2と反対側に開口する貫通孔15の開口端を構成している。大孔部17は、例えばマイクロ流体デバイス1の流路2から溢れた流体(後述の粒子含有流体20等)を貯留する流体貯留部として機能する。
上記した複数の貫通孔15は、例えば同じ形状、大きさに形成されてもよし、互いに異なる形状、大きさに形成されてもよい。
【0030】
蓋部材5は、例えば光を通すように構成されてもよいが、これに限ることはない。
例えば、ウェル3に収容された粒子21や、バイオマーカー等の検出対象が存在することによる蛍光などのシグナルを光学的手法で検出する場合には、蓋部材5及び前述のマイクロウェルアレイ4の少なくとも一方が、光を通すように構成されているとよい。また、ウェル3に収容された粒子21や、バイオマーカー等の検出対象が存在することによる蛍光などのシグナルを光学的手法以外の手法で検出する場合には、蓋部材5及びマイクロウェルアレイ4は、例えば光を通すように構成されなくてもよい。
蓋部材5を構成する材料としては、例えばガラス、樹脂、金属のうち少なくとも1つ、又は、複数を混合した材料が挙げられる。蓋部材5は、粒子含有流体20等が流路2において流れる際に変形しない程度の剛性を有してもよい。
【0031】
本実施形態のマイクロ流体デバイス1は、マイクロウェルアレイ4と蓋部材5との間に介在し、マイクロウェルアレイ4のウェル形成領域8を囲むスペーサ18を備える。スペーサ18は、前述したマイクロウェルアレイ4と蓋部材5との隙間を確保し、マイクロウェルアレイ4及び蓋部材5と共にマイクロ流体デバイス1の流路2を構成する。
スペーサ18は、例えば前述のマイクロウェルアレイ4や蓋部材5と一体に形成されてもよいが、本実施形態では別個に形成されている。スペーサ18の材質等に特に制限はないが、例えばシリコーンゴムやアクリル発泡体からなる芯材フィルムの両面に粘着剤(例えばアクリル系粘着剤)が積層された両面粘着テープ、接着剤を両面に塗布した紙等が挙げられる。
【0032】
ウェル3が開口するマイクロウェルアレイ4の開口面6に直交する方向における流路2の高さ寸法(マイクロウェルアレイ4と蓋部材5との隙間寸法)は、上記したスペーサ18によって設定される。本実施形態において、流路2の高さ寸法は、後述する粒子21の直径の1倍よりも大きく100倍以下とすることができる。
流路2の高さ寸法が粒子21の直径の1倍よりも小さいと、粒子21を流路2においてスムーズに流すことが難しくなってしまう。一方、流路2の高さ寸法が粒子21の直径の100倍よりも大きいと、流路2のうちマイクロウェルアレイ4の開口面6から過度に離れた領域で粒子21が流れる場合があり、その結果、粒子21がウェル3に収容され難くなってしまう。
【0033】
〔粒子〕
次に、本実施形態に係る粒子の収容方法及び封入方法に用いる粒子21について説明する。
粒子21は、バイオマーカーなどの等の検出対象を捕捉可能なものであればよい。粒子21としては、ビーズ、磁性ビーズ、エクソソームなどが挙げられる。粒子21の表面には、検出対象を捕捉可能な有機物質や無機物質が付着又は結合していてもよい。有機物質としては、プラスチック、ストレプトアビジン、カルボキシル基、アビジン、アミノ基、糖鎖、糖たんぱく質、核酸からなる群から選択された1つ又は複数の物質を含むものが挙げられる。無機物としては、鉄、銅などの金属等が挙げられる。
【0034】
粒子21の直径は、少なくともウェル3に収容可能な大きさであれば、任意であってよいが、好ましくは0.1μm〜10μmの範囲で設定することができる。
粒子21の直径が0.1μmよりも小さいと、粒子21を光学的に検出、観察することが難しくなってしまう。すなわち、粒子21の直径が0.1μm以上であれば、粒子21を容易に光学的に検出、観察できる。
粒子21の直径が10μmよりも大きいと、マイクロウェルアレイ4のアレイのサイズも大きく設定する必要がある。このため、同一数のウェル3を有するマイクロウェルアレイ4のサイズが過度に大きくなってしまい、マイクロウェルアレイ4の製造コスト(特に材料コスト)が高くなってしまう。すなわち、粒子21の直径が10μm以下であれば、マイクロウェルアレイ4の製造コストを抑えることができる。
【0035】
〔粒子の収容方法〕
次に、本実施形態に係る粒子の収容方法について説明する。
粒子の収容方法では、
図7に示すように、前述した粒子21が含まれる粒子含有流体20を用いる。粒子含有流体20は、溶媒流体22に、多数の粒子21を分散し、さらに、検出対象を検出するための検出試薬を含ませたものである。
粒子含有流体20に含まれる粒子21には、検出対象が結合されていてもよい。検出対象は、任意のものであってよいが、例えばバイオマーカーであってもよい。バイオマーカーとしては、例えばDNAやRNA等の核酸、タンパク質などが挙げられる。
【0036】
溶媒流体22は、例えば気体であってもよいが、液体であってもよい。溶媒流体22が液体である場合、溶媒流体22としては、粒子21との親和性が高い液体を選択するとよい。
粒子21が親水性である場合、溶媒流体22として親水性の液体を選択するとよい。親水性の液体としては、例えば、水、親水性アルコール、親水性エーテル、ケトン、ニトリル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択された1つ又は複数を含むものが挙げられる。
粒子21が疎水性である場合、溶媒流体22として疎水性の液体を選択するとよい。疎水性の液体としては、例えば、オイル、疎水性アルコール、液化炭化水素からなる群から選択された1つ又は複数を含むものが挙げられる。
【0037】
溶媒流体22の比重は、例えば粒子21の比重と異なってもよい。すなわち、溶媒流体22の比重は、例えば粒子21よりも小さくてもよいし、粒子21よりも大きくてもよい。
【0038】
検出試薬としては、例えば、蛍光発生基質(RGP)、TaqManプローブ法試薬、インベーダー(登録商標)反応試薬、LAMP法反応試薬などが挙げられるが、等温反応で検出対象を検出できる試薬が好ましい。検出試薬は、粒子21との親和性が高いものであるとよい。
【0039】
そして、本実施形態の粒子の収容方法においては、
図7から
図10に示すように、粒子21が含まれる粒子含有流体20を、複数のウェル3が開口する流路2において2回以上流して、粒子21が含まれる粒子含有流体20をマイクロ流体デバイス1のウェル3に収容する。
【0040】
収容方法において、粒子21の比重が溶媒流体22よりも大きい場合には、
図7から
図10に示すように、ウェル3の開口が鉛直方向において上向きとなるようにマイクロ流体デバイス1を配置するとよい。また、粒子21の比重が溶媒流体22よりも小さい場合には、ウェル3の開口が鉛直方向において下向きとなるようにマイクロ流体デバイス1を配置するとよい。
【0041】
収容方法においては、はじめに、
図7に示すように、粒子含有流体20を一の貫通孔15(例えば第一貫通孔15A)からマイクロウェルアレイ4と蓋部材5との間の流路2に注入する(注入工程)。注入工程では、粒子含有流体20を流路2において流し、他の貫通孔15(例えば第二貫通孔15B)に到達させる。粒子含有流体20の溶媒流体22が液体である場合には、注入工程において例えば一部の粒子含有流体20を他の貫通孔15内に流入させてもよい。
このように粒子含有流体20が流路2において流れることで、粒子21が一部のウェル3に入り込む。
【0042】
次いで、
図8に示すように、一の貫通孔15(例えば第一貫通孔15A)から流路2内の粒子含有流体20を吸い上げる(吸い上げ工程)。吸い上げ工程では、粒子含有流体20を流路2において流す。これにより、注入工程とは別のウェル3に粒子21を入り込ませることができる。
粒子含有流体20の溶媒流体22が液体である場合には、吸い上げ工程後の状態において吸い上げに用いない他の貫通孔15に粒子含有流体20が残るように、吸い上げ工程を実施してもよい。この場合、吸い上げ工程を実施しても、吸い上げの際に気体が流路2に入り込むことを防止できる。
【0043】
本実施形態の収容方法は、上記の吸い上げ工程を実施することで完了してもよいが、
図9に例示するように、吸い上げ工程後に、再び注入工程を実施し、粒子含有流体20を流路2において流してもよい。すなわち、収容方法では、注入工程及び吸い上げ工程を少なくとも1回ずつ以上実施すればよい。2回目以降の注入工程や吸い上げ工程を実施する場合には、
図10に例示するように、最初の注入工程及び吸い上げ工程とは別のウェル3に粒子21を入り込ませることができる。
粒子含有流体20の溶媒流体22が液体である場合、上記した収容方法では、例えば、最後に注入工程を実施してもよい。この場合、収容方法が完了した後の状態において、流路2を確実に粒子含有流体20で満たすことができ、流路2に気泡が残ることを好適に抑制できる。
【0044】
上記した収容方法では、例えば、全ての注入工程や吸い上げ工程において同一の貫通孔15(例えば第一貫通孔15A)を使って粒子含有流体20の注入や吸い上げを行ってもよい。この場合、吸い上げ工程において粒子含有流体20を流す方向は、
図7,8に例示するように注入工程において粒子含有流体20を流す方向と逆向きとなる。
【0045】
また、上記した収容方法では、例えば、注入工程や吸い上げ工程毎に別の貫通孔15を使って粒子含有流体20の注入や吸い上げを行ってもよい。具体的には、1回目の注入工程及び吸い上げ工程において使用する貫通孔15と、2回目の注入工程及び吸い上げ工程において使用する貫通孔15とが異なってもよい。また、吸い上げ工程において使用する貫通孔15は、吸い上げ工程の直前の注入工程において使用した貫通孔15と異なってもよい。このような場合、注入工程や吸い上げ工程において、粒子含有流体20を逆向きに限らず様々な方向に流すことができる。
【0046】
粒子含有流体20の溶媒流体22が液体である場合、上記した収容方法は、例えば、注入工程や吸い上げ工程の後に所定時間静置する静置工程を含んでもよい。静置工程は、例えば最後の注入工程(又は吸い上げ工程)を行った後、すなわち粒子含有流体20を流路2において複数回流した後に実施してもよい。
この場合、静置工程において溶媒流体22中に浮遊する粒子21に重力(又は浮力)が作用することで、粒子21をウェル3に収容することができる。したがって、収容方法が静置工程を含む場合には、静置工程を含まない場合と比較して、粒子21をより多くのウェル3に収容することができる。
静置工程における所定時間(静置時間)は、例えば3秒以上900秒以下であるとよい。3秒以上である理由は、流路2内の粒子含有流体20の対流を抑えて粒子21をウェル3に沈降させやすくするためである。900秒以下が良い理由は、900秒より長く静置すると、単位時間あたりに粒子21が入るウェル3の数が減るためである。
【0047】
また、上記した収容方法は、例えば、粒子21がウェル3に向かうように遠心力や磁力等の外力を積極的に付与する外力付与工程を含んでもよい。
外力が遠心力である場合、外力付与工程は、例えば注入工程や吸い上げ工程の後に実施してもよい。より具体的に、外力付与工程は、例えば、注入工程とその後の吸い上げ工程との間や、吸い上げ工程とその後の注入工程との間に実施してもよい。すなわち、外力付与工程は、粒子含有流体20を流路2において1回流すごとに実施してもよい。また、外力付与工程は、最後の注入工程(又は吸い上げ工程)の後に実施してもよい。
また、外力が磁力である場合、粒子21は磁性ビーズ等のように磁性を有していればよい。この場合、外力付与工程は、例えば注入工程と吸い上げ工程との間に実施してもよいし、注入工程や吸い上げ工程の最中に実施してもよい。また、外力付与工程は、最後の注入工程(又は吸い上げ工程)の後に実施してもよい。
収容方法が外力付与工程を含む場合、外力付与工程を含まない場合と比較して、粒子21をより多くのウェル3に収容することができる。
【0048】
また、粒子含有流体20の溶媒流体22が液体である場合、上記した収容方法においては、例えば
図5〜7に示すように、最初の注入工程を実施する前に、粒子21を含まない粒子無し流体23を一の貫通孔15(例えば第一貫通孔15A)から流路2に注入する液体注入工程を実施してもよい。液体注入工程では、前述した最初の注入工程の場合と同様に、粒子無し流体23を流路2において流し、他の貫通孔15(例えば第二貫通孔15B)に到達させ、一部の粒子無し流体23を他の貫通孔15内に流入させてもよい。
【0049】
粒子無し流体23としては、粒子含有流体20の溶媒流体22と同様に、粒子21との親和性が高い液体を選択するとよい。すなわち、粒子21が親水性である場合には粒子無し流体23として親水性の液体を選択するとよく、粒子21が疎水性である場合、粒子無し流体23として疎水性の液体を選択するとよい。粒子無し流体23は、例えば粒子含有流体20の溶媒流体22と異なっていてもよいが、粒子含有流体20の溶媒流体22と同じであることがより好ましい。
【0050】
上記の液体注入工程を実施する場合には、注入工程や吸い上げ工程(特に最初の注入工程)を実施する際に、粒子21が含まれる粒子含有流体20をより多くのウェル3上に容易に行き渡らせることができる。
液体注入工程においては、例えば粒子無し流体23を注入した後に、ウェル3内に残っている空気を抜く脱気工程を実施してもよい。
【0051】
また、粒子含有流体20の溶媒流体22が液体である場合、上記した収容方法において粒子含有流体20や粒子無し流体23を流路2において流す流速は、例えば0.4mm/sec以上であってもよい。
例えば、流路2における粒子含有流体20や粒子無し流体23の流速が0.4mm/secよりも小さい場合には、粒子含有流体20や粒子無し流体23が流路2全体に行き渡らない可能性が高まり、その結果として流路2中に気体(気泡)が残る場合がある。これに対し、粒子含有流体20や粒子無し流体23の流速が0.4mm/sec以上である場合には、流路2に気泡が残ることを好適に抑制することができる。
【0052】
また、粒子含有流体20の溶媒流体22が液体である場合、上記した収容方法において粒子含有流体20を流路2において流す流速は、例えば25mm/sec以下であってもよい。
例えば、流路2における粒子含有流体20の流速が25mm/secよりも大きい場合には、粒子含有流体20に含まれる粒子21がウェル3に収容され難くなる。また、ウェル3内の粒子21が粒子含有流体20の流れによってウェル3から抜け出してしまう可能性が高くなる。これに対し、粒子含有流体20の流速が25mm/sec以下である場合には、粒子含有流体20に含まれる粒子21がウェル3に収容され易くなり、また、ウェル3内の粒子21が粒子含有流体20の流れによってウェル3から抜け出すことも好適に抑制できる。
【0053】
また、上記した収容方法では、例えば
図7〜9に示すように、流路2における粒子含有流体20の流れ方向が水平方向であってもよいが、例えば水平方向に対して傾斜してもよい。例えば、流路2における粒子含有流体20の流れ方向は、水平方向に対して鉛直方向上側に傾斜しているとよい。流路2における粒子含有流体20の流れ方向が水平方向に対して傾斜している場合には、傾斜していない場合と比較して、粒子21を容易にウェル3に収容し、保持することができる。
【0054】
上記した収容方法において、粒子含有流体20や粒子無し流体23を流路2に注入したり吸い上げたりする道具は、任意であってよい。粒子含有流体20の溶媒流体22が液体である場合の道具としては、例えばマイクロピペットなどが挙げられる。粒子含有流体20の溶媒流体22が気体である場合の道具としては、例えばポンプや吸引器等が挙げられる。
【0055】
〔粒子の封入方法〕
本実施形態では、上記した粒子の収容方法の後に、
図11,12に示すように、粒子含有流体20の上層に封止液24の層を形成させ、ウェル3に収容された粒子21を溶媒流体22及び検出試薬と共にウェル3に封入する粒子の封入方法を実施する。
【0056】
封入方法において用いる封止液24は、粒子21及び溶媒流体22との親和性が低く、粒子含有流体20と混ざり合わない液体である。
粒子21や溶媒流体22が親水性である場合、封止液24として疎水性の溶液を選択するとよい。疎水性溶液としては、例えば、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、シリコンオイル、パーフルオロカーボン、ハロゲン系溶媒からなる群から選択された1つ又は複数を含むものが挙げられる。
粒子21や溶媒流体22が疎水性である場合、封止液24として親水性の溶液を選択するとよい。親水性溶液としては、例えば、水、親水性アルコール、親水性エーテル、ケトン、ニトリル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択された1つ又は複数を含むものが挙げられる。親水性アルコールとしては、例えばメタノールやエタノールなどが挙げられる。
【0057】
封入方法においては、上記した封止液24を一の貫通孔15(例えば第一貫通孔15A)から流路2に注入し、封止液24を流路2において流し、他の貫通孔15(例えば第二貫通孔15B)に到達させる。これにより、流路2に存在する粒子含有流体20(特に粒子21)が他の貫通孔15から流路2の外側に排出され、流路2が封止液24で満たされる。また、封止液24は粒子21や溶媒流体22と混合しないため、各ウェル3に収容された粒子21や溶媒流体22は、他のウェル3に収容された粒子21や溶媒流体22と混合しない状態で隔離される。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の粒子の収容方法によれば、粒子含有流体20をウェル3上の流路2において2回以上流すことで、より多くのウェル3に粒子21を効率よく収容できる。
また、粒子含有流体20が検出試薬を含むことで、粒子21がウェル3に収容されると同時に検出試薬もウェル3に収容される。このため、粒子21に結合した検出対象と検出試薬とを確実に反応させることができる。すなわち、検出対象を確実に検出することができる。
【0059】
また、本実施形態の粒子の収容方法において、粒子21の比重が溶媒流体22の比重と異なる場合には、粒子含有流体20を流路2において流す際に、粒子21に作用する重力や浮力によって粒子21を効率よくウェル3に収容することができる。
【0060】
また、本実施形態の粒子の収容方法において、粒子含有流体20を流路2において複数回流した後に、所定時間静置した場合には、静置した状態で流路2に浮遊する粒子21を重力や浮力によってウェル3に効率よく収容することができる。
【0061】
また、本実施形態の粒子の収容方法において、粒子含有流体20を流路2において複数回流している最中や複数回流した後に、粒子21がウェル3に向かうように遠心力や磁力を付与した場合には、流路2に浮遊している粒子21を好適にウェル3に収容することができる。したがって、より多くのウェル3に粒子21を収容することができる。
【0062】
また、本実施形態の粒子の収容方法において、液体である粒子含有流体20や粒子無し流体23を流路2で流す流速を0.4mm/sec以上とした場合には、粒子含有流体20や粒子無し流体23を流路2全体に行き渡らせることができ、流路2に気泡が残ることを好適に抑制することができる。
また、液体である粒子含有流体20の流速を25mm/sec以下とした場合には、粒子含有流体20を流路2において流す際に、粒子21がウェル3に収容されやすくなる。すなわち、粒子21をより多くのウェル3に収容することができる。また、ウェル3内の粒子21が粒子含有流体20の流れによってウェル3から抜け出すことも好適に抑制できる。
【0063】
また、本実施形態の粒子の収容方法において、流路2の高さ寸法を粒子21の直径の1倍よりも大きくした場合には、粒子含有流体20に含まれる粒子21を流路2においてスムーズに流すことができる。
また、流路2の高さ寸法を粒子21の直径の100倍以下とした場合には、流路2のうちマイクロウェルアレイ4の開口面6から過度に離れた領域において粒子21が流れることを抑制できるため、より多くのウェル3に粒子21を収容することができる。
【実施例】
【0064】
本発明の粒子の収容方法について、下記の2つの検討を実施した。
【0065】
≪検討1≫
まず、粒子含有流体20をマイクロ流体デバイス1の流路2において複数回流すことの優位性について検討した(検討1)。検討1では、以下のマイクロ流体デバイス1、粒子含有流体20、粒子無し流体23、封止液24を用いた。
【0066】
〔マイクロ流体デバイス〕
検討1で用いたマイクロ流体デバイス1のマイクロウェルアレイ4は、以下のように作製した。
まず、マイクロウェルアレイ4の底部層11として厚さ0.5mmのガラス板を準備した。
次いで、底部層11の一方の面に、無色透明で自家蛍光が低く抑えられた熱硬化樹脂(旭硝子社製のCYTOP)からなる壁部層12を形成した。壁部層12を形成する際には、はじめに、底部層11の一方の面に、熱硬化樹脂をスピンコートにより塗布し、180℃で1時間ベークして硬化させた。硬化後における熱硬化樹脂(壁部層12)の厚さは3μmだった。次いで、熱硬化樹脂上にポジ型のフォトレジストを塗布し、フォトマスクを用いてフォトレジストに壁部層12の複数の開口孔に対応する微小孔のパターンを形成した。その後、O
2(酸素)プラズマによって熱硬化性樹脂をドライエッチングした。これにより、壁部層12に複数の開口孔(マイクロウェルアレイ4のウェル3)が形成された。最後に、アセトン及びエタノールによって熱硬化樹脂の表面を洗浄、リンスし、フォトレジストを除去した。
【0067】
作製されたマイクロウェルアレイ4における各ウェル3は、
図3に示すように、円筒形とし、各ウェル3の直径Wdは5μmとした。また、各ウェル3の深さ寸法は3μmとした。
ウェル3は、横方向(
図3において左右方向)に間隔をあけて複数並べた。横方向に隣り合うウェル3同士の間隔S1は5μmとした。また、横方向に並んだ複数のウェル3からなる横配列ウェル群30を、縦方向(
図3において上下方向)に複数並べた。第一横配列ウェル群30Aのウェル3と、第一横配列ウェル群30Aに隣り合う第二横配列ウェル群30Bのウェル3とは、横方向においてこれらのウェル3の中心間距離S2が5μmとなるように、かつ、縦方向においてこれらのウェル3の中心間距離S3が8.5μmとなるように配した。
【0068】
また、
図4に示すように、作製されたマイクロウェルアレイ4におけるウェル形成領域8は、横10.18mm、縦8.75mmの長方形の領域とした。また、ウェル形成領域8は、縦に10個、横に10個並ぶ合計100個のウェル区画80に区画した。各ウェル区画80には、1万個のウェル3を前述した配列法則にしたがって配列した。このため、ウェル形成領域8には100万個のウェル3が存在する。
【0069】
検討1で用いたマイクロ流体デバイス1の蓋部材5には、ヌンク社製の96穴プレートを用いた。蓋部材5の貫通孔15は、96穴プレートの穴を利用して二つ形成した。96穴プレートの穴を各貫通孔15の大孔部17とし、96穴プレートの穴の底部に貫通して形成した孔を各貫通孔15の小孔部16とした。
【0070】
検討1で用いたマイクロ流体デバイス1のスペーサ18には、厚さ100μmの両面テープを用いた。両面テープを、マイクロウェルアレイ4の開口面6のうち長方形とされたウェル形成領域8を囲む矩形環状に形成し、マイクロウェルアレイ4の開口面6の周縁領域7に貼り付けた。
【0071】
そして、蓋部材5の各貫通孔15の小孔部16側がマイクロウェルアレイ4のウェル形成領域8に対向するように、また、二つの貫通孔15が長方形とされたウェル形成領域8のうち互いに向かい合う二つの角部に対応する位置に配されるように、蓋部材5を両面テープに貼り付けた。両面テープの厚さを100μmとすることで、マイクロウェルアレイ4及び蓋部材5を重ね合せた方向におけるマイクロ流体デバイス1の流路2の高さ寸法を100μmとした。
以上により、マイクロ流体デバイス1の作製を完了した。
【0072】
〔粒子含有流体〕
検討1では、粒子含有流体20の粒子21として、直径3μmの磁性ビーズの表面をストレプトアビジンでコーティングしたもの(具体的には、JSR株式会社製のMagnosphere(登録商標) MS300/Streptavidin(容量2ml、品番MSP―S300―SAJSR))を用いた。
また、検討1では、粒子含有流体20の溶媒流体22として、SIGMA―ALDRIC社製の塩化マグネシウム(MgCl
2)、SIGMA―ALDRIC社製のTween20、及び、AXYGEN社製のMOPS pH7.9、Lonza社製のMolecular Biology Grade Water(以下「DW」と呼ぶ)を含むものを用いた。
【0073】
検討1の粒子含有流体20は、以下のように調製した。
はじめに、磁性ビーズが含まれるビーズ溶液(Magnosphere(登録商標) MS300/Streptavidin)をボルテックスミキサーで撹拌して磁性ビーズを分散させた後、磁性ビーズが1×10
6個含まれているビーズ溶液をピペットマンによりマイクロチューブに分注した。次いで、マイクロチューブを磁気スタンドに1分間セットして、磁性ビーズをマイクロチューブ内で集め、ビーズ溶液の上清をマイクロチューブから取り除いた。その後、マイクロチューブにTE bufferを1μl加え、調製用ビーズ溶液を調製した。
【0074】
また、液体である粒子含有流体20の溶媒流体22(10mM MOPS pH7.9、10mM MgCl
2、0.05% Tween20、DW)を20μl調製した。溶媒流体22の比重は1.0mg/mm
3とし、磁性ビーズの比重1.1mg/mm
3よりも小さくした。
そして、20μlから1μl減らした19μlの上記溶媒流体22に、調製用ビーズ溶液を1μl加えることで、20μlの粒子含有流体20(磁性ビーズ:5×10
4個/μl)を調製した。
また、検討1では、検出対象としてヒトゲノム上にある遺伝子T790、及び、検出試薬としてインベーダー(登録商標)反応試薬(1μM インベーダープローブ、1μM アレルプローブ、2μM FRETプローブ、1000U/μl cleavase)を、上記の粒子含有流体20に加えた。
【0075】
〔粒子無し流体〕
検討1では、粒子無し流体23として、前述した粒子含有流体20の溶媒流体22を用いた。
【0076】
〔封止液〕
検討1では、封止液24として、SIGMA社製のFluorinert(登録商標)FC40を用いた。
【0077】
〔粒子の収容方法〕
検討1では、上記したマイクロ流体デバイス1及び粒子含有流体20を用い、粒子21をマイクロ流体デバイス1のウェル3に収容する粒子の収容方法を、以下のように実施した。
はじめに、
図5〜10に示すように、流路2における粒子含有流体20、粒子無し流体23、封止液24の流れ方向が水平方向となるように、また、ウェル3の開口が鉛直方向において上側を向くように、マイクロ流体デバイス1を配置した。
【0078】
次いで、
図5に示すように、液体である粒子無し流体23を、マイクロ流体デバイス1の第一貫通孔15Aから流路2に20μl注入し、流路2を粒子無し流体23で満たした。粒子無し流体23は、流路2において流れる粒子無し流体23の流速が2.0mm/secとなるように、流路2に注入した。
【0079】
次に、各ウェル3内に残っている空気を抜くための脱気を行った。脱気は、ウェル3の開口が鉛直方向において上側を向くようにマイクロ流体デバイス1を配置した状態で1分間行った。脱気を行った後の状態では、
図6に示すように、流路2及び全てのウェル3が粒子無し流体23で満たされた。
【0080】
その後、
図7,8に示すように、液体である粒子含有流体20を、マイクロ流体デバイス1の第一貫通孔15Aから流路2に20μl注入して流路2において1回流した。これにより、流路2を粒子含有流体20で満たした。すなわち、流路2内の粒子無し流体23を粒子含有流体20に置換した。粒子含有流体20は、流路2における流速が2.0mm/secとなるように、流路2に注入した。
【0081】
その後、粒子含有流体20を流路2において再度流す場合には、
図8に示すように、マイクロ流体デバイス1の第一貫通孔15Aから流路2内の粒子含有流体20を吸い上げて流路2において注入の際と逆向きに1回流した。粒子含有流体20の吸い上げは、空気が第二貫通孔15Bから流路2内に入り込まないように、すなわち粒子含有流体20が第二貫通孔15Bに残るように行った。吸い上げの際に流路2において流れる粒子含有流体20の流速は、2.0mm/secとなるようにした。
【0082】
さらに、上記の吸い上げ後に粒子含有流体20を流路2において再度流す場合には、
図9に示すように、流路2の外側に吸い上げられた粒子含有流体20を、マイクロ流体デバイス1の第一貫通孔15Aから流路2に再び注入して流路2において1回流した。粒子含有流体20を再度注入する際には、空気が第一貫通孔15Aから流路2内に入り込まないようにした。また、流路2において流れる粒子含有流体20の流速は、最初に粒子含有流体20を注入した際と同様に2.0mm/secとなるようにした。
【0083】
そして、流路2において粒子含有流体20を所定回数流した後に、ウェル3の開口が鉛直方向において上側を向くようにマイクロ流体デバイス1を配置した状態で所定時間静置した。これにより、検討1での粒子の収容方法を完了した。
【0084】
〔粒子の封入方法〕
検討1では、上記した収容方法の後に、ウェル3に収容された粒子21を溶媒流体22及び検出試薬と共にウェル3に封入する粒子の封入方法を実施した。
検討1の封入方法では、
図11,12に示すように、封止液24を、マイクロ流体デバイス1の第一貫通孔15Aから流路2に100μl注入し、流路2を封止液24で満たした。すなわち、流路2内の粒子含有流体20を封止液24に置換した。封止液24は、注入を開始してから流路2が封止液24で満たされるまで30秒程度かかるように、流路2に注入した。注入する際には、流路2に存在していた粒子21(ウェル3に収容されなかった粒子21)を排出した。
最後に、ウェル3の開口が鉛直方向において上側を向くようにマイクロ流体デバイス1を配置した状態で1分間静置した。これにより、検討1での粒子の封入方法を完了した。
【0085】
〔実施例1〕
検討1では、上記した粒子の収容方法において、粒子含有流体20の注入を4回、吸い上げを3回実施することで、粒子含有流体20を流路2において7回流した後、20秒間静置したもの(実施例1)を用意した。実施例1では、粒子の収容方法の実施後に、上記した粒子の封入方法を実施した。
【0086】
〔比較例1〜3〕
また、検討1では、比較例として、上記した粒子の収容方法において、粒子含有流体20の注入を1回実施することで、粒子含有流体20を流路2において1回流した後、ウェル3の開口が鉛直方向において上側を向くようにマイクロ流体デバイス1を配置した状態で1分間静置したもの(比較例1)、15分間静置したもの(比較例2)、30分間静置したもの(比較例3)の3種類を用意した。比較例1〜3では、実施例1と同様に、粒子の収容方法の実施後に、上記した粒子の封入方法を実施した。
【0087】
〔粒子が入ったウェル数の評価〕
検討1では、上記した実施例1及び比較例1〜3について、マイクロ流体デバイス1のマイクロウェルアレイ4側から顕微鏡(KEYENCE社製)で観察した。観察した箇所は、ウェル形成領域8のうち同一のウェル区画80(1万個のウェル3が形成された領域)とした。観察箇所を撮影した画像を
図13〜16に示す。各画像においては、粒子21が黒い点として現れた。
そして、検討1では、実施例1及び比較例1〜3について、
図13〜16の各画像を基に、粒子21が入ったウェル3の数を数えた。その結果を
図17の表に示す。
【0088】
図17に示すように、粒子含有流体20を流路2において7回流した実施例1では、粒子含有流体20を流路2において1回だけ流した比較例1〜3と比べて、粒子21が入ったウェル3の数が多かった。
比較例1〜3のように、粒子含有流体20を流路2において1回だけ流す場合には、粒子21が入るウェル3の数を増やすために、粒子含有流体20を流した後に長時間静置する必要がある。
これに対し、実施例1のように、粒子含有流体20を流路2において複数回流す場合には、粒子含有流体20を流した後の静置時間が短くても、より多くのウェル3に粒子21を入り込ませることができる。すなわち、粒子含有流体20を流路2において複数回流すことで、短時間で効率よく、多くのウェル3に粒子21を入り込ませることができる。
【0089】
≪検討2≫
次に、粒子含有流体20をマイクロ流体デバイス1の流路2において流した回数と、粒子21が入ったウェル3の数との関係について検討した(検討2)。
検討2では、検討1と同様のマイクロ流体デバイス1、粒子含有流体20、粒子無し流体23、封止液24を用い、検討1と同様の粒子の収容方法、及び、粒子の封入方法を実施した。
【0090】
検討2では、粒子の収容方法において、粒子含有流体20を流路2において流す回数を、1回(最初の注入のみ)、3回(2回の注入及び1回の吸い上げ)、5回(3回の注入及び2回の吸い上げ)、7回(4回の注入及び3回の吸い上げ)、9回(5回の注入及び4回の吸い上げ)とした5種類のパターンを用意した。
【0091】
〔粒子が入ったウェル数の評価〕
検討2では、これら5種類のパターンについて、検討1と同様に、顕微鏡によってマイクロ流体デバイス1のマイクロウェルアレイ4側からウェル形成領域8の同一のウェル区画80を観察、撮影した。5種類のパターンについて撮影した画像を
図18〜22に示す。各画像においては、粒子21が黒い点として現れた。
そして、検討2では、5種類のパターンについて、
図18〜22の各画像を基に、粒子21が入ったウェル3の数、及び、粒子21が1個のみ入ったウェル3の数を数えた。その結果を
図23,24に示す。
図23は、粒子含有流体20を流路2において流した回数と、粒子21が入ったウェル3の数との関係を示すグラフである。
図24は、粒子含有流体20を流路2において流した回数と、粒子21が入ったウェル3の数N(総収容ウェル数N)、粒子21が1個のみ入ったウェル3の数M(1個収容ウェル数M)、及び、これらの比(M/N)との関係を示す表である。
【0092】
図23,24に示すように、粒子含有流体20を流路2において流した回数が増えるほど、総収容ウェル数N、及び、1個収容ウェル数Mが、共に増加した。すなわち、粒子含有流体20を流路2において流す回数を増やすことで、より多くのウェル3に粒子21を入り込ませることができる。
【0093】
また、
図24に示すように、総収容ウェル数Nに対する1個収容ウェル数Mの割合(M/N)は、粒子含有流体20を流した回数が3回である場合に最も多かった。また、粒子含有流体20を流した回数が3回よりも少なくなったり、多くなったりすると、総収容ウェル数Nに対する1個収容ウェル数Mの割合(M/N)が減少した。すなわち、粒子含有流体20を流す回数を調整することで、粒子21が1個のみ入ったウェル3の比率を増やすことができる。
バイオマーカー等の検出対象を測定する方法としてデジタルカウント法を採用する場合には、各ウェル3に粒子21が1個だけ入ることが好ましい。このため、粒子含有流体20を流す回数を調整し、粒子21が1個のみ入ったウェル3の数を増やすことは有効である。
【0094】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0095】
本発明の粒子の収容方法及び封入方法において、粒子含有流体、粒子無し流体、封止液を流す流路は、少なくとも複数のウェルが開口する面上で確保されていればよい。すなわち、マイクロ流体デバイスは、例えば蓋部材を備えなくてもよい。
【0096】
本発明の粒子の収容方法において、粒子含有流体を流路で流す流速は、粒子含有流体を複数回流す中で互いに異なってもよい。例えば、粒子含有流体を流路において第一方向に流す流速と、第一方向と逆向きの第二方向に流す流速とが、互いに異なってもよい。
【0097】
本発明の粒子の収容方法において、粒子含有流体を流路で流す方向は、粒子含有流体を複数回流す中で互いに異なってもよい。例えば、所定の回において粒子含有流体を流す方向が第一方向である場合、所定の回とは別の回において粒子含有流体を流す方向は、第一方向と逆向きであってもよいし、第一方向に交差する方向であってもよい。
【0098】
本発明の粒子の収容方法において、粒子含有流体における粒子の含有率(粒子含有率)は、粒子含有流体を複数回流す中で互いに異なってもよい。