(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外側周方向溝の間に区画される領域をセンター領域とし、当該センター領域のタイヤ幅方向寸法Wfと、前記周方向ベルトのタイヤ幅方向寸法Wgとの関係が、Wg/Wf≧1.03である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
前記陸部は、タイヤ幅方向で隣接する2本の前記周方向溝およびタイヤ周方向で隣接する2本の前記横溝で区画される複数のブロックが形成されており、各前記ブロックのタイヤ周方向寸法Lと、タイヤ幅方向寸法Weとのアスペクト比が、1.2≦L/We≦2.0である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トラックやバスなどに装着される重荷重用の空気入りタイヤであって、特に、低い偏平率の空気入りタイヤは、トレッド部の形状保持を目的として、特許文献1の低角度ベルトや特許文献2の周方向ベルト(以下、総称して周方向ベルトという)が適用される。
【0006】
周方向ベルトがある領域のタイヤ赤道面付近では、周方向ベルトにより周剛性が大きいため、新品時および経時の径成長を抑えることができる。その反面、周方向ベルトのタイヤ幅方向外側では、タイヤ赤道面付近と比較して相対的に周剛性が小さく、径成長が大きくなるため、これに起因して偏摩耗が発生する問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、周方向ベルトを有する構成であっても耐偏摩耗性能を向上することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る空気入りタイヤは、トレッド部においてタイヤ周方向に沿って延在するコードがタイヤ幅方向に並設されてなりタイヤ赤道面の位置を含みタイヤ幅方向に配置された周方向ベルトと、前記トレッド部のトレッド面においてタイヤ周方向に沿って延在してタイヤ幅方向に並んで設けられ、タイヤ赤道面上に配置された中央周方向溝、タイヤ幅方向最外側に配置された外側周方向溝、前記中央周方向溝および前記外側周方向溝の間に配置された中間周方向溝を含む周方向溝と、前記中央周方向溝および前記外側周方向溝の間において前記中間周方向溝によりタイヤ幅方向に分断された少なくとも3本の陸部と、各前記陸部においてタイヤ幅方向に隣接する前記周方向溝に両端が開口してタイヤ周方向に対して傾斜しタイヤ幅方向に複数並んで設けられた横溝と、を備え、前記横溝のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度が、前記タイヤ赤道面に近い前記陸部において最も小さく、タイヤ幅方向外側に近い前記陸部ほど大きい。
【0009】
この空気入りタイヤによれば、横溝のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度により、最もタイヤ赤道面に近い陸部の剛性を低減し、タイヤ幅方向外側に向かって陸部の剛性を漸次高くする。このため、周方向ベルトにより周剛性を大きくして新品時および経時の径成長を抑える効果を得つつ、周方向ベルトにより生じるタイヤ赤道面付近とタイヤ幅方向外側との剛性差を抑制する。この結果、トレッド部のタイヤ幅方向での周剛性の均一化を図って偏摩耗の発生を抑制することができ、周方向ベルトを有する構成であっても耐偏摩耗性能を向上することができる。
【0010】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記横溝は、タイヤ幅方向で隣接する2つの前記陸部における前記傾斜角度の差が、タイヤ赤道面に近いほど大きく、タイヤ幅方向外側に近いほど小さいことが好ましい。
【0011】
この空気入りタイヤによれば、タイヤ幅方向で隣接する2つの陸部における横溝のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度の差は、隣接する2つの陸部の剛性差となる。従って、横溝のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度の差をタイヤ赤道面に近いほど大きく、タイヤ幅方向外側に近いほど小さくすることで、タイヤ赤道面に近いほどタイヤ幅方向で隣接する陸部の剛性差が大きくなるため、周方向ベルトによるタイヤ赤道面付近の周剛性の過多を抑制することができる。この結果、トレッド部のタイヤ幅方向での周剛性の均一化をより図って偏摩耗の発生を抑制することができ、周方向ベルトを有する構成であっても耐偏摩耗性能を向上する効果を顕著に得ることができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記外側周方向溝の間に区画される領域をセンター領域とし、当該センター領域のタイヤ幅方向寸法Wfと、前記周方向ベルトのタイヤ幅方向寸法Wgとの関係が、Wg/Wf≧1.03であることが好ましい。
【0013】
周方向ベルトのタイヤ幅方向外側の領域では周剛性が高くならないことから、当該領域では横溝のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度による剛性の均一化は必要がない。このため、周方向ベルトの範囲内にセンター領域全体を配置することが好ましい。
【0014】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、正規リムに組み付け正規内圧を充填した無負荷状態において、前記陸部のタイヤ幅方向両端のタイヤ径方向寸法差が、タイヤ赤道面に近いほど小さく、タイヤ幅方向外側に近いほど大きく、かつ最もタイヤ幅方向外側の前記陸部のタイヤ径方向寸法差Doと、そのタイヤ幅方向内側に隣接する前記陸部のタイヤ径方向寸法差Dmとの関係が、Do/Dm≧1.5であることが好ましい。
【0015】
この空気入りタイヤによれば、陸部におけるタイヤ幅方向両端のタイヤ径方向寸法差が小さいほど周剛性が小さく、逆に大きいほど周剛性が大きくなり、かつ最もタイヤ幅方向外側の陸部のタイヤ径方向寸法差Doと、そのタイヤ幅方向内側に隣接する陸部のタイヤ径方向寸法差Dmとが、タイヤ幅方向外側のタイヤ径方向寸法差Doの方が大きいほど剛性差が大きくなる。従って、周方向ベルトによりタイヤ赤道面に近い周剛性が大きくなることに対して陸部において周剛性を小さくし、周方向ベルトによりタイヤ幅方向外側で周剛性が小さくなることに対して陸部において周剛性を大きくして、かつタイヤ幅方向外側付近での陸部の剛性差をDo/Dmの関係により規定することで、陸部において周方向ベルトによるタイヤ幅方向での周剛性差を抑制することができる。この結果、トレッド部のタイヤ幅方向での周剛性の均一化をより図って偏摩耗の発生を抑制することができ、周方向ベルトを有する構成であっても耐偏摩耗性能を向上する効果を顕著に得ることができる。
【0016】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記陸部は、タイヤ幅方向で隣接する2本の前記周方向溝およびタイヤ周方向で隣接する2本の前記横溝で区画される複数のブロックが形成されており、かつタイヤ周方向で隣接する2本の前記横溝に両端が開口する細溝により前記ブロックがタイヤ幅方向に分断された小ブロックが形成され、前記ブロックにおいて、最も前記タイヤ赤道面に近い前記小ブロックの表面積S
Iと、最もタイヤ幅方向外側に近い前記小ブロックの表面積S
Oとの関係が、S
O/S
I≧1.01であることが好ましい。
【0017】
この空気入りタイヤによれば、ブロックにおいて、最もタイヤ幅方向外側に近い小ブロックの表面積S
Oが、最もタイヤ赤道面に近い小ブロックの表面積S
Iよりも大きいことから、ブロック内においてよりタイヤ幅方向外側に近い側の剛性を大きくすることができる。この結果、トレッド部のタイヤ幅方向での周剛性の均一化をより図って偏摩耗の発生を抑制することができ、周方向ベルトを有する構成であっても耐偏摩耗性能を向上する効果を顕著に得ることができる。
【0018】
また、本発明の一態様に係る空気入りタイヤでは、前記陸部は、タイヤ幅方向で隣接する2本の前記周方向溝およびタイヤ周方向で隣接する2本の前記横溝で区画される複数のブロックが形成されており、各前記ブロックのタイヤ周方向寸法Lと、タイヤ幅方向寸法Weとのアスペクト比が、1.2≦L/We≦2.0であることが好ましい。
【0019】
この空気入りタイヤによれば、ブロックのタイヤ周方向寸法Lと、タイヤ幅方向寸法Weとのアスペクト比を上記範囲とすることでブロックによる剛性差を生じさせ易くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、周方向ベルトを有する構成であっても耐偏摩耗性能を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0023】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤの一部の子午断面図であり、
図2は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の平面図である。
図3は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の拡大平面図である。
図4および
図5は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の断面拡大図である。
【0024】
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の前記回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
【0025】
本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、トラックやバスなどに適用される重荷重用空気入りタイヤである。
図1に示すように、この空気入りタイヤ1は、トレッド部21と、そのタイヤ幅方向両外側のショルダー部22と、各ショルダー部22から順次連続するサイドウォール部およびビード部とを有している。なお、
図1においては、サイドウォール部およびビード部を省略している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層24と、ベルト層25とを含み構成されている。
【0026】
トレッド部21は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部21の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21Aが形成されている。
【0027】
ショルダー部22は、トレッド部21のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部は、図には明示しないが、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部は、図には明示しないが、ビードコアとビードフィラーとを有する。ビードコアは、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラーは、カーカス層24のタイヤ幅方向端部がビードコアの位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
【0028】
カーカス層24は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコアでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層24は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。
【0029】
ベルト層25は、本実施形態では4層のベルト25A,25B,25C,25Dをタイヤ径方向に積層した多層構造をなし、トレッド部21においてカーカス層24の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層24をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト25A,25B,25C,25Dは、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、タイヤ周方向に対して45°以上90°以下)のコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。各ベルト25A,25B,25C,25Dは、タイヤ径方向における積層においてコードを交差して設けられている。なお、ベルト層25は、タイヤ径方向に積層される少なくとも2つのベルトがコードを交差して設けられていればよい。
【0030】
また、ベルト層25は、周方向ベルト26が設けられている。周方向ベルト26は、タイヤ周方向に対して0°(±5°を含む)の角度のコード(図示せず)が、タイヤ幅方向に並設されてコートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。この周方向ベルト26は、ベルト層25のベルトの間でタイヤ赤道面CLの位置を含みタイヤ幅方向に配置されている。本実施形態では、周方向ベルト26は、ベルト25B,25Cの間に配置されている。すなわち、周方向ベルト26は、ベルト層25においてコードを交差して設けられている2つのベルトのタイヤ径方向の内側または外側に重ねて配置されている。
【0031】
また、トレッド部21は、
図2〜
図5に示すように、トレッド面21Aにおいて、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なストレート溝である周方向溝3が7本以上の奇数本(本実施形態では7本)設けられている。周方向溝3は、8mm以上15mm以下の溝幅(
図3および
図5のWa)で、10mm以上28mm以下の溝深さ(トレッド面21Aの開口位置から溝底までの寸法:
図4および
図5のHa)の溝である。そして、トレッド面21Aは、各周方向溝3により、タイヤ周方向に沿って延在し、タイヤ幅方向に8本以上の偶数本(本実施形態では8本)並ぶリブ状の陸部5が形成されている。
【0032】
周方向溝3は、真中がタイヤ赤道面CL上に配置された中央周方向溝3Aと、タイヤ幅方向最外側に配置された外側周方向溝3Cと、中央周方向溝3Aおよび外側周方向溝3Cの間に配置された中間周方向溝3Bと、を含む。また、陸部5は、両外側周方向溝3Cのタイヤ幅方向内側に配置された内側陸部5Aと、両外側周方向溝3Cのタイヤ幅方向外側に配置された外側陸部5Bと、を含む。また、内側陸部5Aが配置された両外側周方向溝3Cのタイヤ幅方向内側の領域をセンター領域Ceという。すなわち、内側陸部5Aは、センター領域Ce内に配置されている。
【0033】
また、トレッド部21は、
図2〜
図5に示すように、トレッド面21Aにおけるセンター領域Ceの各内側陸部5Aにおいて、タイヤ幅方向に隣接する2本の周方向溝3に両端が開口する横溝(幅方向溝ともいう)4が設けられている。横溝4は、1mm以上4mm以下の溝幅(
図3のWb)で、1mm以上5mm以下の溝深さ(トレッド面21Aの開口位置から溝底までの寸法:
図4のHb)の溝をいう。そして、内側陸部5Aは、隣接する周方向溝3により区画形成された各陸部5が横溝4により分割されたブロック51が形成される。なお、横溝4は、
図2に示すように、周方向溝3への開口部分が周方向溝3のタイヤ幅方向の両溝壁において対向するように設けられ、タイヤ幅方向において連続するように配置されているが、これに限らず、タイヤ幅方向において連続しなくてもよい。
【0034】
また、トレッド部21は、
図2〜
図5に示すように、周方向溝3および横溝4により区画形成されたブロック51において、タイヤ周方向で隣接する2本の横溝4に両端が開口する細溝6が設けられている。細溝6は、1mm以上4mm以下の溝幅(
図3および
図5のWc)で、1mm以上5mm以下の溝深さ(トレッド面21Aの開口位置から溝底までの寸法:
図5のHc)の溝をいう。そして、ブロック51は、細溝6によりタイヤ幅方向に分断された小ブロック51Aが形成されている。
図2〜
図5において細溝6は、1つのブロック51においてタイヤ幅方向に2本並んで設けられているため、小ブロック51Aは、タイヤ幅方向中央の中央小ブロック51Aaと、そのタイヤ幅方向両側の2つの外側小ブロック51Abと、を含む。また、
図3に示す細溝6は、中間に屈曲部6Aが形成されているが、屈曲部6Aは形成されず細溝6が直線状に延在して形成されていてもよい(
図9参照)。また、細溝6は、ブロック51に対して少なくとも1つ設けられていればよく(
図10参照)、この場合、小ブロック51Aは、中央小ブロック51Aaが存在せずタイヤ幅方向両側の2つの外側小ブロック51Abを含む。
【0035】
また、トレッド部21は、
図2〜
図5に示すように、トレッド面21Aにおいて一端が周方向溝3に連通し他端が細溝6に交差することなく陸部5(小ブロック51A(外側小ブロック51Ab))内で終端して形成されたサイプ7を有していてもよい。サイプ7は、陸部5(小ブロック51A(外側小ブロック51Ab))の剛性低下を図り、接地圧が緩和されるため、耐偏摩耗性能を向上することができる。サイプ7は、1つのブロック51に同数設けられ、全てのサイプ7は、溝幅Wd、溝深さHd、溝長さLdが同じである。よって、サイプ7は、各陸部5において剛性を変化させることに起因しない。サイプ7の溝幅Wd、溝深さHd、溝長さLdは、陸部5のタイヤ幅方向寸法We、周方向溝3の溝深さHaに対し、0.3mm≦Wd≦2.0mm、0.3≦Hd/Ha≦1.0、0.03≦Ld/We≦0.2の関係を満たす溝である。
【0036】
また、トレッド部21は、
図3および
図4に示すように、横溝4が周方向溝3に対して傾斜して開口した鋭角側となる陸部5(ブロック51)の角部に面取4Aが形成されていてもよい。面取4Aを設けることで、陸部5(ブロック51)のもげ・欠けが発生し難くなり、耐久性を維持することができる。
【0037】
図6は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の拡大平面図である。
図7は、本実施例に係る空気入りタイヤの子午断面拡大図である。
図8〜
図10は、本実施例に係る空気入りタイヤのトレッド部の拡大平面図である。
【0038】
本実施形態の空気入りタイヤ1では、
図3および
図6に示すように、横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θが、タイヤ赤道面CLに近い陸部5(内側陸部5A)において最も小さく、タイヤ幅方向外側に近い陸部5(内側陸部5A)ほど大きい。本実施形態では、
図6に示すように、タイヤ赤道面CL(中央周方向溝3A)を境とした一方のタイヤ幅方向外側に陸部5(内側陸部5A)が3本設けられている。この3本の陸部5(内側陸部5A)において、最もタイヤ赤道面CLに近い陸部5(内側陸部5A)における横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θ1と、タイヤ幅方向の中間の陸部5(内側陸部5A)における横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θ2と、最もタイヤ幅方向外側の陸部5(内側陸部5A)における横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θ3と、が存在する。そして、これらの傾斜角度θ1,θ2,θ3の関係が、θ1<θ2<θ3を満足する。
【0039】
この空気入りタイヤ1によれば、横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θ1,θ2,θ3により、最もタイヤ赤道面CLに近い陸部5(内側陸部5A)の剛性を低減し、タイヤ幅方向外側に向かって陸部5(内側陸部5A)の剛性を漸次高くする。このため、周方向ベルト26により周剛性を大きくして新品時および経時の径成長を抑える効果を得つつ、周方向ベルト26により生じるタイヤ赤道面CL付近とタイヤ幅方向外側との剛性差を抑制する。この結果、トレッド部21のタイヤ幅方向での周剛性の均一化を図って偏摩耗の発生を抑制することができ、周方向ベルト26を有する構成であっても耐偏摩耗性能を向上することができる。
【0040】
なお、横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θは、50°以上80°以下であることが好ましい。横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θが0°に近づくと鋭角部の剛性が弱まり、もげや欠けの原因になる。また、横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θが90°に近づくと剛性が強くなり過ぎ、タイヤ赤道面CL側のブロック51と幅方向外側のブロック51に剛性差がつき難くなり、耐偏摩耗性が低下する。以上により、横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θが50°以上80°以下であるとブロックの剛性を適度に保つうえで好ましい。また、横溝4は、
図2に示すように、周方向溝3への開口部分が周方向溝3のタイヤ幅方向の両溝壁において対向するように設けられており、タイヤ赤道面CLを境にタイヤ幅方向外側に上記傾斜角度θ(θ1,θ2,θ3)の関係を有する。このことから、横溝4は、タイヤ幅方向の端から端のセンター領域Ce全体において略S字形状に配置されている。さらに、ブロック51も横溝4と同様にタイヤ幅方向の端から端のセンター領域Ce全体において略S字形状に配置されていることになる。このように、横溝4およびブロック51をタイヤ幅方向に連続して略S字形状に配置することで、上述したトレッド部21のタイヤ幅方向での周剛性の均一化を図り易くなる。なお、横溝4およびブロック51は、タイヤ幅方向において連続していなくてもタイヤ幅方向での周剛性の均一化を図ることができる。
【0041】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、タイヤ幅方向で隣接する2つの陸部5(内側陸部5A)における横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θの差が、タイヤ赤道面CLに近いほど大きく、タイヤ幅方向外側に近いほど小さいことが好ましい。本実施形態では、
図6に示すように、タイヤ赤道面CL(中央周方向溝3A)を境とした一方のタイヤ幅方向外側に陸部5(内側陸部5A)が3本設けられている。この3本の陸部5(内側陸部5A)において、最もタイヤ赤道面CLに近い陸部5(内側陸部5A)における横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θ1と、タイヤ幅方向の中間の陸部5(内側陸部5A)における横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θ2と、最もタイヤ幅方向外側の陸部5(内側陸部5A)における横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θ3と、が存在する。そして、タイヤ幅方向で隣接する2つの陸部5(内側陸部5A)における横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θの差は、θ2−θ1およびθ3−θ2が存在する。そして、これらθ2−θ1およびθ3−θ2の関係が、θ2−θ1>θ3−θ2を満足する。
【0042】
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ幅方向で隣接する2つの陸部5(内側陸部5A)における横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θの差は、隣接する2つの陸部5(内側陸部5A)の剛性差となる。従って、横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θの差をタイヤ赤道面CLに近いほど大きく、タイヤ幅方向外側に近いほど小さくすることで、タイヤ赤道面CLに近いほどタイヤ幅方向で隣接する陸部5(内側陸部5A)の剛性差が大きくなるため、周方向ベルト26によるタイヤ赤道面CL付近の周剛性の過多を抑制することができる。この結果、トレッド部21のタイヤ幅方向での周剛性の均一化をより図って偏摩耗の発生を抑制することができ、周方向ベルト26を有する構成であっても耐偏摩耗性能を向上する効果を顕著に得ることができる。
【0043】
なお、θ2−θ1およびθ3−θ2の関係は、1°≦(θ2−θ1)−(θ3−θ2)≦5°を満足することが、横溝4によってトレッド部21のタイヤ幅方向での周剛性の均一化をさらに図るうえで好ましい。
【0044】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、
図1に示すように、内側陸部5Aが配置された両外側周方向溝3C,3Cのタイヤ幅方向内側の領域をセンター領域Ceとし、当該センター領域Ceのタイヤ幅方向寸法Wfと、周方向ベルト26のタイヤ幅方向寸法Wgとの関係が、Wg/Wf≧1.03であることが好ましい。
【0045】
周方向ベルト26のタイヤ幅方向外側の領域では周剛性が高くならないことから、当該領域では横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θによる剛性の均一化は必要がない。このため、周方向ベルト26の範囲内にセンター領域Ce全体を配置することが好ましい。
【0046】
なお、各タイヤ幅方向寸法Wf,Wgの関係は、Wg/Wf≧1.05を満足することが、横溝4のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θによる剛性の均一化の範囲を周方向ベルト26の範囲内に十分に配置することができるうえで好ましい。
【0047】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、正規リムに組み付け正規内圧を充填した無負荷状態において、陸部5(内側陸部5A)のタイヤ幅方向両端のタイヤ径方向寸法差が、タイヤ赤道面CLに近いほど小さく、タイヤ幅方向外側に近いほど大きく、かつ最もタイヤ幅方向外側の陸部5(内側陸部5A)のタイヤ径方向寸法差Doと、そのタイヤ幅方向内側に隣接する陸部5(内側陸部5A)のタイヤ径方向寸法差Dmとの関係が、Do/Dm≧1.5であることが好ましい。本実施形態では、
図7に示すように、タイヤ赤道面CL(中央周方向溝3A)を境とした一方のタイヤ幅方向外側に陸部5(内側陸部5A)が3本設けられている。この3本の陸部5(内側陸部5A)において、最もタイヤ赤道面CLに近い陸部5(内側陸部5A)におけるタイヤ幅方向両端のタイヤ径方向寸法差D1と、タイヤ幅方向の中間の陸部5(内側陸部5A)におけるタイヤ幅方向両端のタイヤ径方向寸法差D2と、最もタイヤ幅方向外側の陸部5(内側陸部5A)におけるタイヤ幅方向両端のタイヤ径方向寸法差D3と、が存在する。そして、これらのタイヤ径方向寸法差D1,D2,D3の関係が、D1<D2<D3で、かつ最もタイヤ幅方向外側の陸部5(内側陸部5A)のタイヤ径方向寸法差Do(D3)と、そのタイヤ幅方向内側に隣接する陸部5(内側陸部5A)のタイヤ径方向寸法差Dm(D2)との関係が、D3/D2≧1.5を満足する。
【0048】
ここで、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。
【0049】
この空気入りタイヤ1によれば、陸部5(内側陸部5A)におけるタイヤ幅方向両端のタイヤ径方向寸法差が小さいほど周剛性が小さく、逆に大きいほど周剛性が大きくなり、かつ最もタイヤ幅方向外側の陸部5(内側陸部5A)のタイヤ径方向寸法差Doと、そのタイヤ幅方向内側に隣接する陸部5(内側陸部5A)のタイヤ径方向寸法差Dmとが、タイヤ幅方向外側のタイヤ径方向寸法差Doの方が大きいほど剛性差が大きくなる。従って、周方向ベルト26によりタイヤ赤道面CLに近い周剛性が大きくなることに対して陸部5(内側陸部5A)において周剛性を小さくし、周方向ベルト26によりタイヤ幅方向外側で周剛性が小さくなることに対して陸部5(内側陸部5A)において周剛性を大きくして、かつタイヤ幅方向外側付近での陸部5(内側陸部5A)の剛性差をDo/Dmの関係により規定することで、陸部5(内側陸部5A)において周方向ベルト26によるタイヤ幅方向での周剛性差を抑制することができる。この結果、トレッド部21のタイヤ幅方向での周剛性の均一化をより図って偏摩耗の発生を抑制することができ、周方向ベルト26を有する構成であっても耐偏摩耗性能を向上する効果を顕著に得ることができる。
【0050】
なお、タイヤ径方向寸法差Do,Dmの関係は、Do/Dm≧2.0を満足することが、周剛性差が大きい周方向ベルト26のタイヤ幅方向外側端付近でタイヤ幅方向外側の陸部5(内側陸部5A)の剛性差を大きくすることでトレッド部21のタイヤ幅方向での周剛性の均一化をさらに図ることができ好ましい。
【0051】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、陸部5(内側陸部5A)は、
図3に示すように、タイヤ幅方向で隣接する2本の周方向溝3およびタイヤ周方向で隣接する2本の横溝4で区画される複数のブロック51が形成されており、かつタイヤ周方向で隣接する2本の横溝4に両端が開口する細溝6によりブロック51がタイヤ幅方向に分断された小ブロック51Aが形成されている。そして、
図8〜
図10に示すように、ブロック51において、最もタイヤ赤道面CLに近い外側小ブロック51Abの表面積S
Iと、最もタイヤ幅方向外側に近い外側小ブロック51Abの表面積S
Oとの関係が、S
O/S
I≧1.01であることが好ましい。
【0052】
この空気入りタイヤ1によれば、ブロック51において、最もタイヤ幅方向外側に近い外側小ブロック51Abの表面積S
Oが、最もタイヤ赤道面CLに近い外側小ブロック51Abの表面積S
Iよりも大きいことから、ブロック51内においてよりタイヤ幅方向外側に近い側の剛性を大きくすることができる。この結果、トレッド部21のタイヤ幅方向での周剛性の均一化をより図って偏摩耗の発生を抑制することができ、周方向ベルト26を有する構成であっても耐偏摩耗性能を向上する効果を顕著に得ることができる。
【0053】
なお、表面積S
I,S
Oの関係は、1.03≦S
O/S
I≦1.10を満足することが、ブロック51内におけるタイヤ幅方向の剛性差を過多とならない範囲にするうえで好ましい。また、表面積S
I,S
Oは、上述したサイプ7を含まないこととする。つまり、サイプ7は、剛性を変化させることに起因しない。このため、上述したようにサイプ7は、1つのブロック51に同数設けられ、全てのサイプ7は、溝幅Wd、溝深さHd、溝長さLdが同じである。
【0054】
また、本実施形態の空気入りタイヤ1では、陸部5(内側陸部5A)は、
図3に示すように、タイヤ幅方向で隣接する2本の周方向溝3およびタイヤ周方向で隣接する2本の横溝4で区画される複数のブロック51が形成されており、各ブロック51のタイヤ周方向寸法Lと、タイヤ幅方向寸法Weとのアスペクト比が、1.2≦L/We≦2.0であることが好ましい。
【0055】
この空気入りタイヤ1によれば、ブロック51のタイヤ周方向寸法Lと、タイヤ幅方向寸法Weとのアスペクト比を上記範囲とすることでブロック51による剛性差を生じさせ易くすることができる。
【0056】
なお、ブロック51のタイヤ周方向寸法Lと、タイヤ幅方向寸法Weとのアスペクト比は、1.4≦L/We≦1.8の範囲を満足することが、ブロック51による剛性差を過多とならない範囲にするうえでより好ましい。
【実施例】
【0057】
本実施例では、条件が異なる複数種類の試験タイヤについて、耐偏摩耗性能に関する性能試験が行われた(
図11参照)。
【0058】
この性能試験では、タイヤサイズ445/50R22.5の空気入りタイヤ(重荷重用空気入りタイヤ)を、TRAで規定する正規リム(22.5“×14.00”)に組み付け、正規内圧(830kPa)を充填し、試験車両(6×4トラクタートレーラ)のトレーラ軸に装着した。
【0059】
耐偏摩耗性能に関する性能試験では、試験車両が10kmを走行した後、内側周方向溝および外側周方向溝の溝深さを計測し、その差が偏摩耗量として測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は数値が大きいほど耐偏摩耗性能に優れ好ましい。
【0060】
図11に示す従来例および実施例1〜実施例18の空気入りタイヤは、周方向ベルトと、中央周方向溝および外側周方向溝の間において中間周方向溝によりタイヤ幅方向に分断された3本の陸部と、各陸部においてタイヤ幅方向に隣接する周方向溝に両端が開口してタイヤ周方向に対して傾斜しタイヤ幅方向に複数並んで設けられた横溝と、を備える。そして、従来例の空気入りタイヤは、最もタイヤ赤道面CLに近い陸部における横溝のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θ1と、タイヤ幅方向の中間の陸部における横溝のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θ2と、最もタイヤ幅方向外側の陸部における横溝のタイヤ周方向に対する鋭角の傾斜角度θ3と、の関係が、θ1=θ2=θ3である。一方、実施例1〜実施例18の空気入りタイヤは、θ1<θ2<θ3を満足する。また、従来例、実施例1〜実施例10の空気入りタイヤは細溝を有しておらず、実施例11〜実施例18の空気入りタイヤは細溝を有して小ブロックの表面積S
O,S
Iの関係が規定されている。
【0061】
図11の試験結果に示すように、実施例1〜実施例18の空気入りタイヤは、耐偏摩耗性能が改善されていることが分かる。