【実施例】
【0022】
タイヤトレッド用ゴム組成物
表2に示す配合を共通処方とする、表1に示す配合からなる9種類のタイヤトレッド用ゴム組成物(実施例1〜3、標準例、比較例1〜5)を、硫黄、加硫促進剤を除く成分を1.8Lの密閉型ミキサーで5分間混練し放出しマスターバッチとした。得られたマスターバッチに、硫黄、加硫促進剤を加えてオープンロールで混合することにより、9種類のタイヤトレッド用ゴム組成物を調製した。なお表2に示す配合は、表1に記載したジエン系ゴム100質量部に対する配合量(質量部)を意味する。
【0023】
得られた9種類のタイヤトレッド用ゴム組成物を使用して所定形状の金型中で、170℃、10分間加硫して加硫試験片を作製し、下記に示す方法によりウェットグリップ性能(0℃のtanδ)および低温脆化特性(脆化温度)の評価を行った。
【0024】
ウェットグリップ性能
得られたゴム組成物の加硫試験片を使用し、JIS K6394:2007に準拠して、粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件でtanδを測定した。標準例の値を100とする指数として、表1の「ウェットグリップ性能」の欄に示した。この指数が大きいほど0℃のtanδが大きく、タイヤにしたときウェットグリップ性能が優れることを意味する。
【0025】
脆化温度
得られたゴム組成物の加硫試験片を用いて、JIS K6261「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム‐低温特性の求め方」の低温衝撃ぜい化試験に準拠し、脆化温度を測定した。得られた結果は、標準例の値を100とする指数として、表1の「低温脆化特性」の欄に記載した。この指数が大きいほど脆化温度が低く、低温下での耐クラック性に優れることを意味する。
【0026】
【表1】
【0027】
なお、表1において使用した原材料の種類を下記に示す。
・ハロゲン化ブチルゴム:臭素化イソブチレンイソプレンラバー、EXXON CHEMICAL社製
・SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol NS116R
・カーボンブラック:キャボットジャパン社製ショウブラックN339、N
2SAが88m
2/g
・シリカ:ローディア社製ZEOSIL 1165MP、CTAB吸着比表面積が159m
2/g
・C5系樹脂:トーネックス社製、エスコレッツ1102石油樹脂
・C9系樹脂−1:東ソー社製ペトコール、GC−MSの組成分析は、スチレンが33%、α−メチルスチレンが15%、ビニルトルエンが20%、インデンが30%
・C9系樹脂−2:ARIZONA CHEMICAL製SYLVARES SA140、GC−MSの組成分析は、スチレンが44%、α−メチルスチレンが56%
・C9系樹脂−3:三井化学社製FTR 2140、GC−MSの組成分析は、スチレンが31%、α−メチルスチレンが69%
・テルペン系樹脂:ヤスハラケミカル社製YSレジンTO−125
・アロマオイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
【0028】
【表2】
【0029】
なお、表2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
・老化防止剤−1:Solutia Europe社製SANTOFLEX 6PPD
・老化防止剤−2:NOCIL LIMITED社製PILNOX TDQ
・シランカップリング剤:Evonik Degussa社製Si69
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄(硫黄の含有量95.24質量%)
・加硫促進剤−1:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
・加硫促進剤−2:住友化学株式会社製ソクシノールD-G
【0030】
表1から明らかなように実施例1〜3のタイヤトレッド用ゴム組成物は、ウェットグリップ性能および低温脆化特性を従来レベル以上に向上することが確認された。
【0031】
比較例1のタイヤトレッド用ゴム組成物は、ハロゲン化ブチルゴムが50質量%以上であるので、ウェットグリップ性能が低下する。
比較例2のタイヤトレッド用ゴム組成物は、ハロゲン化ブチルゴムが10質量%未満であるので、低温脆化特性が低下する。
比較例3のタイヤトレッド用ゴム組成物は、C9系樹脂が30質量部を超えるので、低温脆化特性が低下する。
比較例4のタイヤトレッド用ゴム組成物は、α−メチルスチレンが40%未満のC9系樹脂およびC5系樹脂を配合したので、ウェットグリップ性能が低下する。
比較例5のタイヤトレッド用ゴム組成物は、C9系樹脂を配合せず、代わりにテルペン系樹脂を配合したので、低温脆化特性が低下する。