(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
  本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、加熱調理後の食感が低下することなくカードが抑制された魚肉加工食品を提供することにある。
 
【課題を解決するための手段】
【0007】
  本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、魚肉にトランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを接触させることにより、並びに、これらに加えてクエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムを接触させることにより、当該魚肉を改質して、加熱調理後の食感を低下させることなくカードを抑制し得ることを見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を進めることによって本発明を完成するに至った。
  すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
[1]トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを含む、魚肉改質剤。
[2]さらにクエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムを含む、[1]記載の剤。
[3]魚肉改質が、魚肉のカード抑制である、[1]又は[2]記載の剤。
[4]トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを含有する、魚肉改質用液体組成物。
[5]さらにクエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムを含有する、[4]記載の液体組成物。
[6]トランスグルタミナーゼの含有量が、液体組成物1gあたり0.0001〜1000Uである、[4]又は[5]記載の液体組成物。
[7]炭酸ナトリウムの含有量が、液体組成物に対し、0.1〜10重量%である、[4]〜[6]のいずれか一つに記載の液体組成物。
[8]魚肉改質が、魚肉のカード抑制である、[4]〜[7]のいずれか一つに記載の液体組成物。
[9]魚肉に、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを接触させることを含む、魚肉改質方法。
[10]魚肉とトランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムとの接触を、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを含む液体組成物に魚肉を浸漬させることによって行う、[9]記載の方法。
[11]魚肉に、クエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムを接触させることをさらに含む、[9]又は[10]記載の方法。
[12]魚肉改質が、魚肉のカード抑制である、[9]〜[11]のいずれか一つに記載の方法。
[13]魚肉に、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを接触させることを含む、魚肉加工食品の製造方法。
[14]魚肉とトランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムとの接触を、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを含む液体組成物に魚肉を浸漬させることによって行う、[13]記載の製造方法。
[15]魚肉に、クエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムを接触させることをさらに含む、[13]又は[14]記載の製造方法。
 
【発明の効果】
【0009】
  本発明によれば、魚肉が改質された魚肉加工食品、例えば、カードが抑制された魚肉加工食品、好ましくは、加熱調理後の食感が低下することなくカードが抑制された魚肉加工食品、より好ましくは、加熱調理後の食感が向上し且つカードが抑制された魚肉加工食品等を提供できる。
  また本発明によれば、魚肉を改質すること、例えば、魚肉のカードを抑制すること、好ましくは、加熱調理された魚肉の食感を低下させることなくカードを抑制すること、より好ましくは、加熱調理された魚肉の食感を向上させ且つカードを抑制すること等ができる、魚肉改質剤、魚肉改質用液体組成物及び魚肉改質方法を提供できる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.魚肉改質剤
  本発明の魚肉改質剤(以下、単に「本発明の剤」と称する場合がある)は、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを含むことを主たる特徴とする。
 
【0011】
  トランスグルタミナーゼは、タンパク質やペプチド中のグルタミン残基を供与体とし、リジン残基を受容体とするアシル転移反応を触媒する活性を有する酵素であり、例えば、哺乳動物由来のもの、魚類由来のもの、微生物由来のもの等、種々の起源のものが知られている。本発明において用いられるトランスグルタミナーゼは、上述の活性を有すればその起源は特に制限されず、いかなる起源のトランスグルタミナーゼであっても使用でき、また組み換え酵素を使用してもよい。本発明において用いられるトランスグルタミナーゼは市販品であってもよく、具体例としては、味の素株式会社より「アクティバ」TGという商品名で市販されている微生物由来のトランスグルタミナーゼ等が挙げられる。
 
【0012】
  本発明においてトランスグルタミナーゼの活性単位は、次のように測定され、かつ、定義される。
  すなわち、温度37℃、pH6.0のトリス緩衝液中、ベンジルオキシカルボニル−L−グルタミルグリシン及びヒドロキシルアミンを基質とする反応系で、トランスグルタミナーゼを作用せしめ、生成したヒドロキサム酸をトリクロロ酢酸存在下で鉄錯体を形成させた後、525nmにおける吸光度を測定し、ヒドロキサム酸量を検量線により求め、1分間に1μモルのヒドロキサム酸を生成せしめる酵素量を1ユニット(1U)とする(特開昭64−27471号公報参照)。
 
【0013】
  本発明の剤に含まれるトランスグルタミナーゼの量は、本発明の剤1g当たりの酵素活性が、好ましくは0.001U以上であり、より好ましくは0.01U以上であり、特に好ましくは0.1U以上であり、最も好ましくは1U以上である。また本発明の剤に含まれるトランスグルタミナーゼの量は、本発明の剤1g当たりの酵素活性が、好ましくは100000U以下であり、より好ましくは10000U以下であり、特に好ましくは100U以下である。例えば、本発明の剤に含まれるトランスグルタミナーゼの量は、本発明の剤1g当たり、好ましくは0.001〜100000Uであり、より好ましくは0.01〜10000Uであり、特に好ましくは0.1〜100Uである。
 
【0014】
  本発明の剤に含まれるトランスグルタミナーゼの量は、本発明の剤に含まれる炭酸ナトリウム1g当たりの酵素活性が、好ましくは0.01U以上であり、より好ましくは0.1U以上であり、特に好ましくは1U以上であり、最も好ましくは10U以上である。また本発明の剤に含まれるトランスグルタミナーゼの量は、本発明の剤に含まれる炭酸ナトリウム1g当たりの酵素活性が、好ましくは100000U以下であり、より好ましくは10000U以下であり、特に好ましくは1000U以下であり、最も好ましくは100U以下である。例えば、本発明の剤に含まれるトランスグルタミナーゼの量は、本発明の剤に含まれる炭酸ナトリウム1g当たり、好ましくは0.01〜100000Uであり、より好ましくは0.1〜10000Uであり、特に好ましくは1〜1000Uであり、最も好ましくは10〜100Uである。
 
【0015】
  本発明の剤に含まれる炭酸ナトリウムの量は特に制限されないが、本発明の剤に対して、好ましくは0.1〜99重量%であり、より好ましくは0.5〜70重量%である。
 
【0016】
  本発明の剤は、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムに加え、さらにクエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムを含んでよい。
 
【0017】
  本発明の剤が、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムに加え、さらにクエン酸三ナトリウムを含む場合、本発明の剤に含まれるクエン酸三ナトリウムの量は特に制限されないが、本発明の剤に対して、好ましくは0.1〜99重量%であり、より好ましくは10〜95重量%である。
 
【0018】
  本発明の剤が、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムに加え、さらにクエン酸三ナトリウムを含む場合、本発明の剤における炭酸ナトリウムとクエン酸三ナトリウムとの重量比(炭酸ナトリウム:クエン酸三ナトリウム)は、1:0.1〜10が好ましく、1:1〜5がより好ましい。
 
【0019】
  本発明の剤が、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムに加え、さらに酸化カルシウムを含む場合、本発明の剤に含まれる酸化カルシウムの量は特に制限されないが、本発明の剤に対して、好ましくは0.1〜99重量%であり、より好ましくは1〜20重量%である。
 
【0020】
  本発明の剤が、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムに加え、さらに酸化カルシウムを含む場合、本発明の剤における炭酸ナトリウムと酸化カルシウムとの重量比(炭酸ナトリウム:酸化カルシウム)は、1:0.01〜10が好ましく、1:0.1〜3がより好ましい。
 
【0021】
  本発明の剤は、トランスグルタミナーゼ、炭酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム及び酸化カルシウム以外の成分を含んでよい。当該成分は、本発明の目的を損なわない限り特に制限されないが、例えば、製剤素材として慣用の添加物(例、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、担体等)、調味料等が挙げられる。
 
【0022】
  本発明の剤の剤形は特に制限されず、例えば、本発明の剤は、固形状(例、粉末、微粒、細粒、顆粒、ペレット、錠、カプセル等)又は液状(スラリー状、ペースト状を含む)等であってよい。
 
【0023】
  本発明の剤に含まれるトランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムは、全てが一つの製剤に含有されてもよいし、又は、各成分が単独で二つ以上の製剤に含有されてもよい。
  本発明の剤に含まれるトランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムが、単独で二つ以上の製剤に含有される場合、本発明の剤に含まれるトランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムの量は、各製剤における含有量を合計して算出される。
 
【0024】
  本発明の剤が、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムに加え、さらにクエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムを含む場合、これらは単独で又は任意の組み合わせで二つ以上の製剤に含有されてもよいし、あるいは、全てが一つの製剤に含有されてもよい。
  本発明の剤に含まれるトランスグルタミナーゼ、炭酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムが、単独で又は任意の組み合わせで二つ以上の製剤に含有される場合、本発明の剤に含まれるトランスグルタミナーゼ、炭酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム及び酸化カルシウムの量は、各製剤における含有量を合計して算出される。
 
【0025】
  本発明の剤は、製剤技術分野において慣用の方法又はそれに準ずる方法により製造することができる。
 
【0026】
  本発明の剤の使用方法は、その剤形等に応じて適宜選択すればよく特に制限されないが、例えば、本発明の剤を水に溶解又は分散させて得られる水溶液又は水分散液に、魚肉を浸漬させることや、本発明の剤を直接魚肉に添加すること等が挙げられる。本発明の剤が液状である場合は、水で希釈して又はそのまま、魚肉を浸漬させてもよく、魚肉に噴霧してもよく、又はインジェクター等の機材を用いて魚肉に注入してもよい。
 
【0027】
  本発明の剤が用いられ得る魚の種類は特に制限されないが、例えば、鮪(マグロ)、鰹(カツオ)、鰺(アジ)、鰯(イワシ)、狭腰(サゴシ)、鯖(サバ)、鰤(ブリ)等の赤身魚;鮭(サケ)、鱈(タラ)、鰈(カレイ)、鯛(タイ)等の白身魚等が挙げられ、本発明によって外観が顕著に改善し得る点で、赤身魚及び鮭が好ましく、鮭が特に好ましい。本発明における魚肉としては、例えば、これらの魚から自体公知の方法又はそれに準ずる方法により、所望の形状(例えば、チャンク状、ブロック状、ステーキ状等)に切り出した切り身等を用いることができる。本発明における魚肉には、筋繊維が細かく裁断されたペースト状乃至ミンチ状の魚肉(例、すり身等)等は含まれない。
 
【0028】
  本発明の剤によれば、魚肉を改質すること、例えば、魚肉のカードを抑制すること、好ましくは、加熱調理された魚肉の食感を低下させることなくカードを抑制すること、より好ましくは、加熱調理された魚肉の食感を向上させ且つカードを抑制すること等ができる。本発明において、魚肉の「改質」には、魚肉同士を接着すること又は魚肉と他の食材とを接着することは含まれない。
  本発明において、魚肉の「カード」とは、魚肉より流出した肉汁が加熱されて生じる白色の凝固物をいう。魚肉のカードは、それ自体見た目が良いものでなく、また魚肉本来の色調を変化させる場合があるため、魚肉の商品価値を低下させる一因となり得る。本発明の剤は、魚肉のカードを抑制し得るため、加熱調理後の魚肉の外観を、カードを抑えて改善することができ、また魚肉本来の好ましい色調にすることができる。魚肉のカードの有無及び程度、並びに、加熱調理後の魚肉の色調は、専門パネルによる官能評価によって評価できる。
  また、本発明の剤は、カードを抑制しても、加熱調理された魚肉の食感を低下させることがなく、好ましくは、カードを抑制し且つ加熱調理された魚肉の食感を向上し得る。魚肉は、短い筋繊維が集合した層状構造(筋節)を有するが、本発明によれば、加熱調理された魚肉の筋繊維がばらけやすくなることなく、筋節はほぐれやすくなり得る。筋繊維がばらけることが抑えられることで、加熱調理された魚肉はふっくらとした好ましい食感を有し得、また加熱調理後に冷めてもしっとりとした食感を保持し得る。尚、加熱調理された魚肉は、筋繊維が細かくばらけると、パサついた食感となる傾向がある。加熱調理された魚肉の食感は、専門パネルによる官能評価によって評価できる。本発明において、魚肉の加熱調理方法は特に制限されず、自体公知の方法(例えば、焼成、油ちょう、ボイル、蒸し、過熱水蒸気加熱等)又はこれに準ずる方法で加熱調理すればよい。
 
【0029】
  本発明において「魚肉改質」には、「魚肉のカード抑制」が含まれ、本発明の魚肉改質剤は、一態様として、魚肉のカード抑制剤であってよい。
 
【0030】
2.魚肉改質用液体組成物
  本発明の魚肉改質用液体組成物(以下、単に「本発明の液体組成物」と称する場合がある)は、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを含有することを主たる特徴とする。
 
【0031】
  本発明の液体組成物におけるトランスグルタミナーゼの含有量は、本発明の液体組成物1g当たりの酵素活性が、好ましくは0.0001U以上であり、より好ましくは0.001U以上であり、特に好ましくは0.01U以上であり、最も好ましくは0.1U以上である。また本発明の液体組成物におけるトランスグルタミナーゼの含有量は、本発明の液体組成物1g当たりの酵素活性が、好ましくは1000U以下であり、より好ましくは100U以下であり、特に好ましくは10U以下であり、最も好ましくは1U以下である。例えば、本発明の液体組成物におけるトランスグルタミナーゼの含有量は、本発明の液体組成物1g当たり、好ましくは0.0001〜1000Uであり、より好ましくは0.001〜100Uであり、特に好ましくは0.01〜10Uであり、最も好ましくは0.1〜1Uである。
 
【0032】
  本発明の液体組成物におけるトランスグルタミナーゼの含有量は、本発明の液体組成物に含有される炭酸ナトリウム1g当たりの酵素活性が、好ましくは0.01U以上であり、より好ましくは0.1U以上であり、特に好ましくは1U以上であり、最も好ましくは10U以上である。また本発明の液体組成物におけるトランスグルタミナーゼの含有量は、本発明の液体組成物に含有される炭酸ナトリウム1g当たりの酵素活性が、好ましくは100000U以下であり、より好ましくは10000U以下であり、特に好ましくは1000U以下であり、最も好ましくは100U以下である。例えば、本発明の液体組成物におけるトランスグルタミナーゼの含有量は、本発明の液体組成物に含有される炭酸ナトリウム1g当たり、好ましくは0.01〜100000Uであり、より好ましくは0.1〜10000Uであり、特に好ましくは1〜1000Uであり、最も好ましくは10〜100Uである。
 
【0033】
  本発明の液体組成物における炭酸ナトリウムの含有量は、本発明の液体組成物に対して、好ましくは0.1〜10重量%であり、より好ましくは1〜3重量%である。
 
【0034】
  本発明の液体組成物は、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムに加え、さらにクエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムを含有してよい。
 
【0035】
  本発明の液体組成物が、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムに加え、さらにクエン酸三ナトリウムを含有する場合、本発明の液体組成物におけるクエン酸三ナトリウムの含有量は、本発明の液体組成物に対して、好ましくは0.5〜15重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。
 
【0036】
  本発明の液体組成物が、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムに加え、さらにクエン酸三ナトリウムを含有する場合、本発明の液体組成物に含有される炭酸ナトリウムとクエン酸三ナトリウムとの重量比(炭酸ナトリウム:クエン酸三ナトリウム)は、1:0.1〜10が好ましく、1:1〜5がより好ましい。
 
【0037】
  本発明の液体組成物が、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムに加え、さらに酸化カルシウムを含有する場合、本発明の液体組成物における酸化カルシウムの含有量は、本発明の液体組成物に対して、好ましくは0.01〜3重量%であり、より好ましくは0.1〜0.5重量%である。
 
【0038】
  本発明の液体組成物が、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムに加え、さらに酸化カルシウムを含有する場合、本発明の液体組成物に含有される炭酸ナトリウムと酸化カルシウムとの重量比(炭酸ナトリウム:酸化カルシウム)は、1:0.01〜10が好ましく、1:0.1〜3がより好ましい。
 
【0039】
  本発明の液体組成物は、トランスグルタミナーゼ、炭酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム及び酸化カルシウム以外の成分を含有してよい。当該成分の例としては、本発明の剤が、トランスグルタミナーゼ、炭酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム及び酸化カルシウム以外に含み得る成分として例示したものと同様のものが挙げられる。
 
【0040】
  本発明の液体組成物のpHは、通常5〜13であり、好ましくは8〜13である。
 
【0041】
  本発明の液体組成物は、自体公知の方法又はこれに準ずる方法により製造することができる。
  例えば、本発明の液体組成物は、水に、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウム、あるいは、トランスグルタミナーゼ、炭酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムを添加し、適宜撹拌すること等により製造できる。また、本発明の剤を水に添加し、適宜撹拌すること等によっても製造できる。本発明の剤が液状である場合は、これを水で希釈して又はそのまま、本発明の液体組成物として用いることができる。
 
【0042】
  本発明の液体組成物が用いられ得る魚の種類は特に制限されないが、その具体例としては、本発明の剤が用いられ得る魚の種類として例示したものと同様のものが挙げられ、好適な種類も同様である。
 
【0043】
  本発明の液体組成物に浸漬させる魚肉の量は特に制限されないが、液体組成物1重量部当たり、0.01〜10重量部(より好ましくは0.1〜5重量部、特に好ましくは0.5〜3重量部)の魚肉を浸漬させることが好ましい。
 
【0044】
  本発明の液体組成物に魚肉を浸漬させる時間は特に制限されないが、通常30分間〜48時間であり、好ましくは1〜24時間である。
 
【0045】
  本発明の液体組成物によれば、魚肉を改質すること、例えば、魚肉のカードを抑制すること、好ましくは、加熱調理された魚肉の食感を低下させることなく魚肉のカードを抑制すること、より好ましくは、加熱調理された魚肉の食感を向上させ且つ魚肉のカードを抑制すること等ができる。本発明において、魚肉の「改質」には、魚肉同士を接着すること又は魚肉と他の食材とを接着することは含まれない。
 
【0046】
  本発明の魚肉改質用液体組成物は、一態様として、魚肉のカード抑制用液体組成物であってよい。本発明の液体組成物は、魚肉のカードを抑制し得る(好ましくは、加熱調理された魚肉の食感を低下させることなくカードを抑制し得る、より好ましくは、加熱調理された魚肉の食感を向上させ且つカードを抑制し得る)ため、加熱調理後の魚肉の外観を、カードを抑えて改善させることができ、また魚肉本来の好ましい色調にすることができる。
 
【0047】
3.魚肉改質方法
  本発明の魚肉改質方法(以下、単に「本発明の方法」と称する場合がある)は、魚肉に、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを接触させることを含むことを主たる特徴とする。
 
【0048】
  本発明の方法が用いられ得る魚の種類は特に制限されないが、その具体例としては、本発明の剤が用いられ得る魚の種類として例示したものが挙げられ、好適な種類も同様である。
 
【0049】
  魚肉にトランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを接触させる方法は特に制限されず、例えば、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを含有する液体組成物に魚肉を浸漬させること、魚肉にトランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを直接添加すること、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを含有する液体組成物を魚肉に噴霧すること、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを含有する液体組成物を魚肉にインジェクター等の機材を用いて注入すること等によって行い得る。中でも、魚肉とトランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムとの接触は、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを含有する液体組成物に魚肉を浸漬させることによって行うことが好ましい。  
 
【0050】
  魚肉とトランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムとの接触を、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを含有する液体組成物に魚肉を浸漬させることによって行う場合、当該液体組成物におけるトランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムの含有量は、それぞれ本発明の液体組成物におけるトランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムの含有量と同様の範囲に設定でき、好適な範囲も同様である。
 
【0051】
  本発明の方法は、魚肉に、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを接触させることを含むことに加え、魚肉に、クエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムを接触させることをさらに含んでよい。
 
【0052】
  魚肉に、クエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムを接触させる方法は特に制限されず、例えば、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを含有する液体組成物に魚肉を浸漬させる際、当該液体組成物にクエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムも含有させ、魚肉とクエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムとの接触を、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムとの接触と同時に行ってよく、あるいは、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを含有する液体組成物に魚肉を浸漬させる前又はその後に、当該魚肉を、クエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムを含有する液体組成物に浸漬させてもよい。トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを含有する液体組成物に、クエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムも含有させる場合、当該液体組成物におけるクエン酸三ナトリウム及び酸化カルシウムの含有量、炭酸ナトリウムとクエン酸三ナトリウム又は酸化カルシウムとの重量比は、それぞれ本発明の液体組成物におけるクエン酸三ナトリウム及び酸化カルシウムの含有量、炭酸ナトリウムとクエン酸三ナトリウム又は酸化カルシウムとの重量比と同様の範囲に設定でき、好適な範囲も同様である。
 
【0053】
  魚肉とトランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムとの接触を、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを含有する液体組成物に魚肉を浸漬させることによって行う場合、あるいは、当該液体組成物にさらにクエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムも含有させる場合、当該液体組成物は、水、トランスグルタミナーゼ、炭酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム及び酸化カルシウム以外の成分を含有してよい。当該成分の例としては、本発明の剤が、トランスグルタミナーゼ、炭酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム及び酸化カルシウム以外に含み得る成分として例示したものと同様のものが挙げられる。
 
【0054】
  魚肉とトランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムとの接触を、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを含有する液体組成物に魚肉を浸漬させることによって行う場合、あるいは、当該液体組成物にさらにクエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムも含有させる場合、当該液体組成物に浸漬させる魚肉の量、当該液体組成物に魚肉を浸漬させる時間、及び、当該液体組成物のpHは、いずれも特に制限されないが、それぞれ本発明の液体組成物に浸漬させる魚肉の量、本発明の液体組成物に魚肉を浸漬させる時間、及び、本発明の液体組成物のpHと同様の範囲に設定でき、好適な範囲も同様である。
 
【0055】
  本発明の方法によれば、魚肉を改質すること、例えば、魚肉のカードを抑制すること、好ましくは、加熱調理された魚肉の食感を低下させることなくカードを抑制すること、より好ましくは、加熱調理された魚肉の食感を向上させ且つカードを抑制すること等ができる。本発明において、魚肉の「改質」には、魚肉同士を接着すること又は魚肉と他の食材とを接着することは含まれない。
 
【0056】
  本発明の魚肉改質方法は、一態様として、魚肉のカード抑制方法であってよい。本発明の方法によれば、魚肉のカードを抑制し得る(好ましくは、加熱調理された魚肉の食感を低下させることなく魚肉のカードを抑制し得る、より好ましくは、加熱調理された魚肉の食感を向上させ且つ魚肉のカードを抑制し得る)ため、加熱調理後の魚肉の外観を、カードを抑えて改善することができ、また魚肉本来の好ましい色調にすることができる。
 
【0057】
4.魚肉加工食品の製造方法
  本発明の魚肉加工食品の製造方法は(以下、単に「本発明の製造方法」と称する場合がある)は、魚肉に、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを接触させることを含むことを主たる特徴とする。
  本発明の製造方法において、魚肉とトランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムとの接触は、本発明の方法と同様に実施し得、好ましい態様も同様である。
 
【0058】
  本発明の製造方法は、魚肉に、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを接触させることを含むことに加え、魚肉に、クエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムを接触させることをさらに含んでよい。
 
【0059】
  本発明の製造方法において、魚肉とクエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムとの接触は、本発明の方法と同様に実施し得、好ましい態様も同様である。
 
【0060】
  本発明の製造方法は、魚肉に、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを接触させることを含むこと、また所望により、魚肉に、クエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムを接触させることをさらに含み得ること以外は、特に制限されず、製造する魚肉加工食品の種類等に応じて、自体公知の方法又はそれに準ずる方法を適宜用いることができる。
 
【0061】
  本発明の製造方法は、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムに接触させ、また所望によりクエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムにさらに接触させた魚肉を、製造する魚肉加工食品の所望の流通形態等に応じて、更に加熱処理、冷凍処理等に供してもよい。従って、本発明の製造方法によって得られる魚肉加工食品は、未加熱であっても又は加熱されていてもよく、あるいは、それらの冷凍品(冷凍食品)等であってもよい。
 
【0062】
  本発明の製造方法において、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムに接触させ、また所望によりクエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムにさらに接触させた魚肉を加熱する場合、加熱方法は特に制限されず、自体公知の方法(例えば、焼成、油ちょう、ボイル、蒸し、過熱水蒸気加熱等)又はこれに準ずる方法で加熱できる。加熱温度及び加熱時間等の各条件は、原料の種類、加熱方法等に応じて適宜調整し得るが、加熱温度は通常50〜300℃であり、加熱時間は通常30秒間〜3時間である。
 
【0063】
  本発明の製造方法において、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムに接触させ、また所望によりクエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムにさらに接触させた魚肉を冷凍する場合、冷凍条件(例えば、冷凍温度等)は、適宜調整すればよいが、冷凍温度は通常−10℃以下であり、好ましくは−15℃以下である。冷凍処理に供される魚肉は、加熱されたものであっても、未加熱のものであってもよい。冷凍処理によって得られる冷凍品(冷凍食品)の解凍方法は特に制限されず、冷凍食品分野における公知の解凍方法(例えば、電子レンジ加熱、オーブン加熱、過熱水蒸気加熱、自然解凍等)又はこれに準ずる方法を適宜用い得る。
 
【0064】
  本発明の製造方法によって得られる魚肉加工食品としては、喫食前に加熱調理(例えば、焼成、油ちょう、ボイル、蒸し、過熱水蒸気加熱等)されるものが好ましく、例えば、焼き魚(その冷凍品を含む)、フライ(その冷凍品を含む)、ムニエル(その冷凍品を含む)、煮魚(その冷凍品を含む)等が挙げられ、好ましくは焼き魚(その冷凍品を含む)である。
 
【0065】
  本発明の製造方法によれば、魚肉が改質された魚肉加工食品、例えば、カードが抑制された魚肉加工食品、好ましくは、加熱調後の食感が低下することなくカードが抑制された魚肉加工食品、より好ましくは、加熱調理後の食感が向上し且つカードが抑制された魚肉加工食品等を製造できる。本発明において、魚肉の「改質」には、魚肉同士を接着すること又は魚肉と他の食材とを接着することは含まれない。
 
【0066】
  以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
 
【実施例】
【0067】
(実施例1)
  3%食塩水50重量部に、トランスグルタミナーゼ0.25重量部及び炭酸ナトリウム1重量部を混合及び溶解させた後、そこに厚さ1.5cmにカットした鮭の切り身100重量部を浸漬させ、真空パウチして一晩静置した。一晩静置した鮭の切り身を、5分間の液切りの後、スチームコンベクションオーブンを用いて、180℃で13分間加熱して焼成し、焼き鮭を作製した。原料の一つであるトランスグルタミナーゼには、味の素株式会社製のトランスグルタミナーゼ(商品名:「アクティバ」TG、100U/g)を用いた。
【0068】
(実施例2)
  3%食塩水50重量部に、下表1に示されるように、トランスグルタミナーゼ0.25重量部、炭酸ナトリウム1重量部及び酸化カルシウム0.15重量部を混合及び溶解させたこと以外は実施例1と同様の手順で、焼き鮭を作製した。
【0069】
(実施例3)
  3%食塩水50重量部に、下表1に示されるように、トランスグルタミナーゼ0.25重量部、炭酸ナトリウム1重量部及びクエン酸三ナトリウム2.3重量部を混合及び溶解させたこと以外は実施例1と同様の手順で、焼き鮭を作製した。
【0070】
(比較例1)
  3%食塩水50重量部に、下表1に示されるように、トランスグルタミナーゼ0.25重量部を混合及び溶解させたこと以外は実施例1と同様の手順で、焼き鮭を作製した。
【0071】
(比較例2)
  3%食塩水50重量部に、下表1に示されるように、炭酸ナトリウム1重量部を混合及び溶解させたこと以外は実施例1と同様の手順で、焼き鮭を作製した。
【0072】
(比較例3)
  3%食塩水50重量部に、下表1に示されるように、酸化カルシウム0.15重量部を混合及び溶解させたこと以外は実施例1と同様の手順で、焼き鮭を作製した。
【0073】
(比較例4)
  3%食塩水50重量部に、下表1に示されるように、クエン酸三ナトリウム2.3重量部を混合及び溶解させたこと以外は実施例1と同様の手順で、焼き鮭を作製した。
【0074】
(比較例5)
  3%食塩水50重量部に、下表1に示されるように、トランスグルタミナーゼ0.25重量部及び酸化カルシウム0.15重量部を混合及び溶解させたこと以外は実施例1と同様の手順で、焼き鮭を作製した。
【0075】
(比較例6)
  3%食塩水50重量部に、下表1に示されるように、トランスグルタミナーゼ0.25重量部及びクエン酸三ナトリウム2.3重量部を混合及び溶解させたこと以外は実施例1と同様の手順で、焼き鮭を作製した。
【0076】
(比較例7)
  3%食塩水50重量部に、下表1に示されるように、トランスグルタミナーゼ0.25重量部、酸化カルシウム0.15重量部及びクエン酸三ナトリウム2.3重量部を混合及び溶解させたこと以外は実施例1と同様の手順で、焼き鮭を作製した。
【0077】
(コントロール)
  3%食塩水50重量部に、下表1に示されるように、トランスグルタミナーゼ、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム及びクエン酸三ナトリウムをいずれも添加しなかったこと以外は実施例1と同様の手順で、焼き鮭を作製した。
【0078】
  実施例1〜3、比較例1〜7及びコントロールにおける、鮭の切り身100重量部に対する3%食塩水、トランスグルタミナーゼ、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム及びクエン酸三ナトリウムの量(単位:重量部)を、下表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
(官能評価)
<食感>
  食感の評価は、実施例1〜3及び比較例1〜7の各焼き鮭を常温(20℃)で5時間静置して放冷した後、4名の専門パネルが各焼き鮭を食して、下記の評価基準に基づいて評点付けし、その平均点を算出することにより行った。
【0081】
[食感の評価基準]
    3点:コントロールに比べ、より好ましい
    2点:コントロールに比べ、好ましい
    1点:コントロールに比べ、やや好ましい
    0点:コントロールと同等
  −1点:コントロールに比べ、やや好ましくない
  −2点:コントロールに比べ、好ましくない
  −3点:コントロールに比べ、より好ましくない
【0082】
<外観>
  外観の評価は、実施例1〜3及び比較例1〜7の各焼き鮭の色調(赤みの強さ)及びカードの量について、4名の専門パネルが目視で、下記の評価基準に基づいて評点付けし、その平均点を算出することにより行った。
[色調(赤み)の評価基準]
    3点:コントロールに比べ、より強い
    2点:コントロールに比べ、強い
    1点:コントロールに比べ、やや強い
    0点:コントロールと同等
  −1点:コントロールに比べ、やや弱い
  −2点:コントロールに比べ、弱い
  −3点:コントロールに比べ、より弱い
【0083】
[カードの評価基準]
    3点:コントロールに比べ、より少ない
    2点:コントロールに比べ、少ない
    1点:コントロールに比べ、やや少ない
    0点:コントロールと同等
  −1点:コントロールに比べ、やや多い
  −2点:コントロールに比べ、多い
  −3点:コントロールに比べ、より多い
【0084】
(浸漬歩留り及び焼成歩留りの算出)
  実施例1〜3及び比較例1〜7の各焼き鮭の浸漬歩留り及び焼成歩留りを、それぞれ下記式より算出した。
  浸漬歩留り(%)=[液切り後に測定した鮭の切り身の重量]÷[浸漬前に測定した鮭の切り身の重量]×100
  焼成歩留り(%)=[焼成後に測定した鮭の切り身の重量]÷[液切り後に測定した鮭の切り身の重量]×100
【0085】
  結果を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
  表2に示される結果から明らかなように、実施例1〜3の本発明の魚肉加工食品(焼き鮭)は、カードが抑制されて外観が改善し、且つ、食感も向上したことが確認された。
  一方、比較例1及び3〜7の魚肉加工食品は、いずれも外観が改善されず、また比較例2の魚肉加工食品は、外観は改善したが、食感が低下した。
  従って、魚肉に、トランスグルタミナーゼ及び炭酸ナトリウムを接触させることや、これらと併せてクエン酸三ナトリウム及び/又は酸化カルシウムを接触させることにより得られる本発明の効果は、トランスグルタミナーゼ、炭酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム及び酸化カルシウムをそれぞれ単独で用いることや、トランスグルタミナーゼとクエン酸三ナトリウム又は酸化カルシウムとを併用することによっては得られない優れた効果であることが確認された。
【0088】
  また、鮭以外の魚、具体的には狭腰、鰺及び鯖について、上記と同様に、これらの魚肉にトランスグルタミナーゼ、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム及びクエン酸三ナトリウムを接触させ、得られた魚肉加工食品の食感及び外観を、トランスグルタミナーゼ等と接触させていないコントロールと比べて評価した。その結果、狭腰、鰺及び鯖のいずれについても、カードが抑制されて外観が改善し、且つ、食感も向上したことが確認された。