特許第6822099号(P6822099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6822099光ファイバ素線の製造方法、光ファイバ素線の製造装置、及び光ファイバ素線の検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822099
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】光ファイバ素線の製造方法、光ファイバ素線の製造装置、及び光ファイバ素線の検査装置
(51)【国際特許分類】
   C03C 25/12 20060101AFI20210114BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20210114BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20210114BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20210114BHJP
   C03C 25/10 20180101ALI20210114BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   C03C25/02 C
   G01M11/00 G
   G01N21/88 K
   G02B6/44 301B
   G02B6/44 331
   G02B6/44 336
   C03C25/02 A
   G01N21/892 C
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-229290(P2016-229290)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2018-83744(P2018-83744A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】耕田 浩
【審査官】 大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−310447(JP,A)
【文献】 特開平04−080632(JP,A)
【文献】 特開平06−080444(JP,A)
【文献】 特開平10−267859(JP,A)
【文献】 特開平04−054427(JP,A)
【文献】 特開平10−282016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/00−25/70
G01N 21/88−21/892
G01M 11/00
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料または染料を含んで着色されている紫外線硬化型の被覆樹脂をガラス線の表面に塗布する第1工程と、
前記被覆樹脂に紫外線を照射する第2工程と、
前記紫外線の照射によって前記被覆樹脂の内部から発する蛍光の強さを測定し、前記ガラス線の長手方向における前記蛍光の強さの変化を検知する第3工程と、
を含む、光ファイバ素線の製造方法。
【請求項2】
前記第3工程において、前記ガラス線の走行ラインに沿った所定長さの区間にわたって前記蛍光の強さを測定し、
前記所定長さは50mm以上300mm以下である、請求項1に記載の光ファイバ素線の製造方法。
【請求項3】
前記第3工程において、前記ガラス線に積分球の内部を通過させ、前記積分球の内部において前記蛍光を測定する、請求項1または2に記載の光ファイバ素線の製造方法。
【請求項4】
前記第3工程において、前記ガラス線の走行ラインに沿って複数の光電センサを並置するとともに前記走行ラインに沿って光反射部材を配置し、前記光反射部材にて反射した前記蛍光と、前記被覆樹脂から直接到達する前記蛍光とを前記複数の光電センサに入射させる、請求項1または2に記載の光ファイバ素線の製造方法。
【請求項5】
顔料または染料を含んで着色されている紫外線硬化型の被覆樹脂をガラス線の表面に塗布する被覆樹脂塗布部と、
前記被覆樹脂に紫外線を照射する紫外線照射部と、
前記紫外線の照射によって前記被覆樹脂の内部から発する蛍光の強さを測定する蛍光測定部と、
前記蛍光測定部から出力された測定結果に基づいて、前記ガラス線の長手方向における前記蛍光の強さの変化を検知する信号処理部と、
を備える、光ファイバ素線の製造装置。
【請求項6】
顔料または染料を含んで着色され、ガラス線の表面に塗布されて紫外線を照射された紫外線硬化型の被覆樹脂の内部から前記紫外線の照射によって発する蛍光の強さを測定する蛍光測定部と、
前記蛍光測定部から出力された測定結果に基づいて、前記ガラス線の長手方向における前記蛍光の強さの変化を検知する信号処理部と、
を備える、光ファイバ素線の検査装置。
【請求項7】
前記蛍光測定部は、前記ガラス線が内部を通過する積分球を有しており、前記積分球の内部において前記蛍光を測定する、請求項6に記載の光ファイバ素線の検査装置。
【請求項8】
前記蛍光測定部は、前記ガラス線の走行ラインに沿って並置された複数の光電センサと、前記走行ラインに沿って配置された光反射部材とを有し、前記光反射部材にて反射した前記蛍光と、前記被覆樹脂から直接到達する前記蛍光とを前記複数の光電センサにおいて受ける、請求項6に記載の光ファイバ素線の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ素線の製造方法、光ファイバ素線の製造装置、及び光ファイバ素線の検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ファイバ被覆層内の欠陥検出装置が開示されている。この装置は、光ファイバの軸線に対して所定の角度で光を光ファイバの被覆層に結合する光源と、光が被覆層に結合される点から所定の距離だけ離れて配置された光検出器とを備える。光源から被覆層に入射した光は被覆層内の欠陥において反射し、その反射光が光検出器において検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−267859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ファイバ素線を製造する際には、まずガラス母材からコア及びクラッドを含むガラス線を線引きし、そのガラス線の外周に被覆樹脂を塗布・硬化させる。そのような工程において被覆樹脂に気泡や空隙、剥離、樹脂瘤、或いは異物混入といった異常が生じると、光ファイバの光伝送特性が劣化する。従って、異常が生じていないか、光ファイバ素線を検査することが望ましい。そして、この検査は、製造ラインを走行する光ファイバ素線のライン途中において行われることが望ましい。
【0005】
なお、特許文献1に記載された装置では、光ファイバ素線の外部から光を照射し、その反射光を検出することにより欠陥を検出している。しかしながら、被覆樹脂が着色されている場合には、樹脂内の顔料による光の散乱が常に生じ、その散乱光がノイズとなって検出精度を低下させてしまう。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、被覆樹脂に生じた異常を精度良く検知することができる光ファイバ素線の製造方法、光ファイバ素線の製造装置、及び光ファイバ素線の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る光ファイバ素線の製造方法は、顔料または染料を含んで着色されている紫外線硬化型の樹脂をガラス線の表面に塗布する第1工程と、樹脂に紫外線を照射する第2工程と、紫外線の照射によって樹脂の内部から発する蛍光の強さを測定し、蛍光の強さの変化を検知する第3工程と、を含む。
【0008】
また、本発明の一実施形態に係る光ファイバ素線の製造装置は、顔料または染料を含んで着色されている紫外線硬化型の樹脂をガラス線の表面に塗布する樹脂塗布部と、樹脂に紫外線を照射する紫外線照射部と、紫外線の照射によって樹脂の内部から発する蛍光の強さを測定する蛍光測定部と、蛍光測定部から出力された測定結果に基づいて蛍光の強さの変化を検知する信号処理部と、を備える。
【0009】
また、本発明の一実施形態に係る光ファイバ素線の検査装置は、顔料または染料を含んで着色され、ガラス線の周囲に塗布されて紫外線を照射された紫外線硬化型の樹脂の内部から紫外線の照射によって発する蛍光の強さを測定する蛍光測定部と、蛍光測定部から出力された測定結果に基づいて蛍光の強さの変化を検知する信号処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明による光ファイバ素線の製造方法、光ファイバ素線の製造装置、及び光ファイバ素線の検査装置によれば、ガラス線または被覆樹脂に生じた気泡等を精度良く検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る製造装置の構成を示す。
図2図2(a)は、セカンダリ樹脂が顔料や染料を含んで着色されている場合の光ファイバ素線の構造を示す断面図である。図2(b)は、セカンダリ樹脂層上に着色層が設けられる場合の光ファイバ素線の構造を示す断面図である。
図3図3は、図2(a)に示される光ファイバ素線の製造工程図を示す。
図4図4は、図2(b)に示される光ファイバ素線の製造工程図を示す。
図5図5は、一実施形態の検査装置の構成を示す。
図6図6は、測定信号の時間変化の例を示すグラフである。
図7図7は、一実施形態による光ファイバ素線の製造方法を示すフローチャートである。
図8図8は、一変形例に係る検査装置の構成を示す斜視図である。
図9図9は、図8に示された検査装置のIX−IX線に沿った断面図である。
図10図10(a)〜図10(c)は、3つの光電センサから出力される測定信号の時間変化を示すグラフである。図10(d)は、合成された測定信号の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の一実施形態に係る光ファイバ素線の製造方法は、顔料または染料を含んで着色されている紫外線硬化型の被覆樹脂をガラス線の表面に塗布する第1工程と、被覆樹脂に紫外線を照射する第2工程と、紫外線の照射によって被覆樹脂の内部から発する蛍光の強さを測定し、ガラス線の長手方向における蛍光の強さの変化を検知する第3工程とを含む。
【0013】
また、本発明の一実施形態に係る光ファイバ素線の製造装置は、顔料または染料を含んで着色されている紫外線硬化型の被覆樹脂をガラス線の表面に塗布する被覆樹脂塗布部と、被覆樹脂に紫外線を照射する紫外線照射部と、紫外線の照射によって被覆樹脂の内部から発する蛍光の強さを測定する蛍光測定部と、蛍光測定部から出力された測定結果に基づいて、ガラス線の長手方向における蛍光の強さの変化を検知する信号処理部と、を備える。
【0014】
また、本発明の一実施形態に係る光ファイバ素線の検査装置は、顔料または染料を含んで着色され、ガラス線の表面に塗布されて紫外線を照射された紫外線硬化型の被覆樹脂の内部から紫外線の照射によって発する蛍光の強さを測定する蛍光測定部と、蛍光測定部から出力された測定結果に基づいて、ガラス線の長手方向における蛍光の強さの変化を検知する信号処理部と、を備える。
【0015】
また、上記の製造方法では、第3工程において、ガラス線の走行ラインに沿った所定長さの区間にわたって蛍光の強さを測定し、所定長さは50mm以上300mm以下であってもよい。
【0016】
また、上記の製造方法では、第3工程において、ガラス線に積分球の内部を通過させ、積分球の内部において蛍光を測定してもよい。同様に、上記の検査装置において、蛍光測定部は、ガラス線が内部を通過する積分球を有しており、積分球の内部において蛍光を測定してもよい。
【0017】
また、上記の製造方法では、第3工程において、ガラス線の走行ラインに沿って複数の光電センサを並置するとともに走行ラインに沿って光反射部材を配置し、光反射部材にて反射した蛍光と、被覆樹脂から直接到達する蛍光とを複数の光電センサに入射させてもよい。同様に、上記の検査装置において、蛍光測定部は、ガラス線の走行ラインに沿って並置された複数の光電センサと、走行ラインに沿って配置された光反射部材とを有し、光反射部材にて反射した蛍光と、被覆樹脂から直接到達する蛍光とを複数の光電センサにおいて受けてもよい。
【0018】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光ファイバ素線の製造方法、光ファイバ素線の製造装置、及び光ファイバ素線の検査装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る製造装置1Aの構成を示す。図1に示されるように、製造装置1Aは、コア及びクラッドを含むガラス線F11と被覆樹脂とを有する光ファイバ素線Fを製造するための装置であって、線引炉11、強制冷却装置12、第1の樹脂塗布部14、第2の樹脂塗布部15、UV炉17、検査装置19A、ガイドローラ20、キャプスタン21、及び巻き取りボビン22を、ガラス線F11及び光ファイバ素線Fの通過経路に沿って順に備えている。
【0020】
この製造装置1Aにおいては、ガラス線F11の初期の走行方向が鉛直方向に設定され、検査装置19Aの下部のガイドローラ20より後段では、光ファイバ素線Fの走行方向が水平方向や斜め方向に設定される。線引炉11は、石英ガラスを主成分とするプリフォーム(ガラス母材)10を線引きして、コア及びクラッドを含むガラス線F11を形成する。線引炉11は、線引炉11内にセットされるプリフォーム10を挟んで(或いは囲んで)配置されるヒータを有する。プリフォーム10は、その端部がヒータにより加熱されて溶融し、線引きされてガラス線F11となる。線引きされたガラス線F11は、所定の走行ラインに沿って移動する。
【0021】
強制冷却装置12は、線引きされたガラス線F11を冷却する。強制冷却装置12は、ガラス線F11を十分に冷却するために走行ラインに沿って十分な長さを備えている。強制冷却装置12は、ガラス線F11を冷却するために例えば図示しない吸気口及び排気口を備え、この吸気口及び排気口から冷却用ガスを導入することによってガラス線F11を冷却する。
【0022】
樹脂塗布部14,15は、ガラス線F11の表面に紫外線硬化型の被覆樹脂を塗布する。樹脂塗布部14,15には、紫外線によって硬化する液状の樹脂が注入されており、樹脂塗布部14に注入される樹脂の種類と、樹脂塗布部15に注入される樹脂の種類とは互いに異なる。樹脂塗布部14,15の樹脂中をガラス線F11が順に通過することによって、ガラス線F11の表面に内層樹脂(プライマリ樹脂14A)と外層樹脂(セカンダリ樹脂15A)とが順に塗布される。
【0023】
UV炉17は、ガラス線F11の表面に塗布された被覆樹脂(プライマリ樹脂及びセカンダリ樹脂)に紫外線を照射して硬化させる紫外線照射部である。表面に被覆樹脂が塗布されたガラス線F11がUV炉17を通過すると、被覆樹脂が硬化を開始する。UV炉17は例えば紫外線ランプ若しくはLEDなどの半導体発光素子を含んで構成される。UV炉17から照射される紫外線の波長は、例えば310〜405nmである。
【0024】
検査装置19Aは、UV炉17から延出するガラス線F11の表面に塗布された被覆樹脂の検査を行い、被覆樹脂に生じた気泡や空隙、剥離、樹脂瘤、或いは異物混入といった異常を検知する。後述するように、検査装置19Aは、UV炉17における紫外線の照射の直後に被覆樹脂が発する蛍光の強度を検出することにより、異常の存在を検知する。検査装置19Aの位置は、蛍光強度が大きいUV炉17の直下が好ましい。
【0025】
ガイドローラ20は、被覆樹脂が硬化した光ファイバ素線Fが所定の走行ラインに沿って移動するように光ファイバ素線Fを案内する。光ファイバ素線Fは、ガイドローラ20により走行方向が変更されて、キャプスタン21に引き取られ、巻き取りボビン22へ送られる。巻き取りボビン22は、完成した光ファイバ素線Fを巻き取る。
【0026】
本実施形態の光ファイバ素線Fでは、被覆樹脂が着色層を含む。図2(a)は、セカンダリ樹脂層35Aが顔料や染料を含んで着色されている場合の光ファイバ素線Fの構造を示す断面図である。この光ファイバ素線Fは、ガラス線F11と、ガラス線F11の周囲に設けられた被覆樹脂33Aとを備え、被覆樹脂33Aは、プライマリ樹脂層34及び着色されたセカンダリ樹脂層35Aによって構成される。そして、光ファイバ素線Fは、セカンダリ樹脂層35A上の着色層を有していない。
【0027】
また、図2(b)は、セカンダリ樹脂層上に着色層が設けられる場合の光ファイバ素線Fの構造を示す断面図である。この光ファイバ素線Fは、コア31及びクラッド32を含むガラス線F11と、ガラス線F11の周囲に設けられた被覆樹脂33Bとを備える。被覆樹脂33Bは、プライマリ樹脂層34、セカンダリ樹脂層35B、及び着色層36によって構成される。
【0028】
図3は、図2(a)に示される光ファイバ素線Fの製造工程図を示す。同図に示される製造工程では、ガラス母材を線引きしてガラス線F11を形成し(工程S11)、プライマリ樹脂及びセカンダリ樹脂を塗布する(工程S12)。一方、図4は、図2(b)に示される光ファイバ素線Fの製造工程図を示す。同図に示される製造工程では、図3に示される製造工程に、インク樹脂を塗布して着色する工程S13が追加されている。なお、インク樹脂の塗布部は、図1の樹脂塗布部15と偏肉測定器16との間に設けられる。図2(a)に示される光ファイバ素線Fのように、セカンダリ樹脂層を着色して着色層を省くことにより、工程S13を省略して製造工程数を削減することができる。
【0029】
図5は、本実施形態の検査装置19Aの構成を示す。紫外線硬化型の被覆樹脂に紫外線を照射すると、被覆樹脂はその直後に蛍光を発する。この蛍光の波長は例えば400〜700nmであり、一例では黄色の可視光である。この蛍光は、被覆樹脂の内部から放出される。図5に示されるように、検査装置19Aは、蛍光測定部23と、信号処理部24とを有する。蛍光測定部23は、UV炉17によって紫外線を照射された直後に被覆樹脂が発する蛍光の強さを測定する。
【0030】
被覆樹脂が発する蛍光は微弱であるため、蛍光測定部23は、被覆樹脂が塗布されたガラス線F11(すなわち光ファイバ素線F)の走行ラインに沿った所定長さLの区間にわたって、蛍光の強さを測定する。所定長さLは、例えば50mm以上であり、300mm以下である。より好ましくは、所定長さLは例えば50mm以上150mm以下である。なお、図5には、蛍光測定部23における走行ラインが直線状である場合が例示されているが、蛍光測定部23における走行ラインは曲がっていてもよい。
【0031】
本実施形態の蛍光測定部23は、積分球25及び光電センサ26を有し、積分球25の内部において蛍光を測定する。積分球25は、全方向に放出される蛍光を集めるための光学系であって、光ファイバ素線Fの所定長さLの区間を覆っている。光ファイバ素線Fは、積分球25の上端に形成された開口部25aを通って積分球25の内部に導入され、積分球25の内部を走行したのち、積分球25の下端に形成された開口部25bを通って積分球25の外部へ移動する。被覆樹脂が発する蛍光は、積分球25の内壁面25cにおいて反射を繰り返す。光電センサ26の受光面26aは、積分球25の内部に配置され、被覆樹脂から直接到達する蛍光R1、及び積分球25の内壁面25cにおいて反射したのちに到達する蛍光R2を受ける。光電センサ26は、受光面26aに入射した蛍光R1,R2の光強度に応じた電気的な測定信号を生成する。測定信号は、蛍光強度の測定結果として、配線41を介して信号処理部24に提供される。なお、例えば光ファイバ素線Fの線速が2400m/分であり、所定長さLが100mmである場合、光ファイバ素線Fの或る点が該所定長さLの通過に要する時間は2.5ミリ秒である。光電センサ26には、その2.5ミリ秒間にわたって当該点から出力される蛍光が入射する。
【0032】
積分球25の内壁面25c(反射面)は例えばフロストガラスといった材料により構成される。また、光電センサ26は例えばフォトダイオード(一例では、可視光域に感度を有するSiフォトダイオード)である。
【0033】
信号処理部24は、蛍光測定部23から提供された測定信号に基づいて、ガラス線F11の長手方向(すなわち光ファイバ素線Fの長手方向)における蛍光の強さの変化を検知する。図6は、測定信号の時間変化の例を示すグラフであって、縦軸は測定信号値、横軸は時間を示す。図6において、期間T1及びT3では被覆樹脂に異常がなく、期間T2において被覆樹脂に異常(気泡や空隙、剥離、樹脂瘤、或いは異物混入)が存在するものとする。異常がない期間T1及びT3では、UV炉17における紫外線強度の変動、及び紫外線に対する被覆樹脂の反応度合いの変動などに起因して、測定される蛍光強度に僅かな揺らぎが生じるが、急激な変化はなく測定信号は略一定で推移する。これに対し、被覆樹脂に異常が存在する期間T2では、蛍光強度が大きく変動する。異常箇所において蛍光が散乱し、被覆樹脂の外部(すなわち光電センサ)に到達する蛍光が増加するからである。
【0034】
また、気泡等の異常は、或る長さの範囲内において連続的に生じることが多い。異常が1箇所のみである場合には光ファイバの伝送特性に大きな影響は生じないが、複数箇所の異常が連続的に生じると、光ファイバの伝送特性に少なからず影響を及ぼす。例えば光ファイバ素線Fの線速を1600m/分とし、異常箇所が4mにわたって続くとすると、蛍光強度の変動が測定される時間(図6の期間T2)は2.5ミリ秒となる。その期間、蛍光強度は大きく振動する。この振動の周波数は例えばkHz〜MHzのオーダーである。このような変動が測定信号の時間変化において検知された場合に、信号処理部24は、被覆樹脂に異常が存在すると判断する。
【0035】
図7は、本実施形態による光ファイバ素線の製造方法を示すフローチャートである。第1工程S21では、着色層を含む紫外線硬化型の被覆樹脂をガラス線F11の表面に塗布する。この工程は、例えば製造装置1Aの樹脂塗布部14,15によって行われる。次に、第2工程S22では、被覆樹脂に紫外線を照射する。この工程は、例えば製造装置1AのUV炉17によって行われる。続いて、第3工程S23では、被覆樹脂が発する蛍光の強さを測定し、ガラス線F11の長手方向における蛍光の強さの変化を検知する。この工程は、例えば検査装置19Aによって行われる。前述したように、この第3工程S23においては、ガラス線F11の走行ラインに沿った所定長さLの区間にわたって蛍光の強さを測定してもよい。また、第3工程S23においては、ガラス線F11に積分球25の内部を通過させ、積分球25の内部において蛍光を測定してもよい。
【0036】
以上に説明した、本実施形態による製造方法、製造装置1A、及び検査装置19Aによって得られる効果について説明する。本実施形態では、ガラス線F11の表面に紫外線硬化型の樹脂を塗布し、紫外線を照射したのち、樹脂から発する蛍光の強さを測定する。前述したように、紫外線硬化型の樹脂に紫外線を照射すると、樹脂はその直後に蛍光を発する。この蛍光は樹脂内部から生じるので、外部から樹脂に光を照射する場合と比較して、光検出の際の顔料による散乱の影響(ノイズレベル)が小さい。外部から樹脂に光を照射する場合は、樹脂表層の顔料によって光が散乱されるので、照射した光のうちで気泡に届かない光の割合が多い。一方、内部から生じた光は、樹脂表層の顔料に散乱されることなく気泡に届き、気泡による散乱の変化をより検知し易い。従って、本実施形態の製造方法、製造装置1A及び検査装置19Aによれば、例えば特許文献1に記載されたような外部から光を照射する方式と比較して、被覆樹脂に生じた異常を精度良く検知することができる。また、外部から樹脂に光を照射する必要がないので、消費電力を低減できる。
【0037】
また、外部から樹脂に光を照射する方式において、一方向のみから光を照射すると、光ファイバ素線内での屈折により光が照射されない部分が生じる。従って、被覆樹脂を全周にわたって確実に検査するためには、複数の方向から光を照射する必要がある。そのため、検査装置が大型化してしまうという問題がある。これに対し、本実施形態によれば、光源が不要であり、また積分球25内の一方向にのみ光電センサ26を配置すれば足りるので、検査装置の小型化が可能となる。
【0038】
また、本実施形態のように、ガラス線F11の走行ラインに沿った所定長さLの区間にわたって蛍光の強さを測定し、所定長さは50mm以上300mm以下であってもよい。樹脂が発する蛍光は微弱であるため、蛍光の強さを或る一点のみで測定すると、蛍光強度の変化を検知することが難しい場合がある。そのような場合であっても、所定長さLの区間にわたって蛍光の強さを測定することにより、蛍光強度の変化を精度良く検知することができる。
【0039】
また、本実施形態のように、ガラス線F11に積分球25の内部を通過させ、積分球25の内部において蛍光を測定してもよい。これにより、微弱な蛍光を集めてより強い光として検出できるので、蛍光強度の変化を精度良く検知することができる。
【0040】
(変形例)
図8は、一変形例に係る検査装置19Bの構成を示す斜視図である。図9は、図8に示された検査装置19BのIX−IX線に沿った断面図である。この検査装置19Bは、図5に示された蛍光測定部23に代えて、蛍光測定部27を有する。蛍光測定部27は、UV炉17によって紫外線を照射された直後に被覆樹脂が発する蛍光の強さを測定する。被覆樹脂が発する蛍光は微弱であるため、蛍光測定部27は、被覆樹脂が塗布されたガラス線F11(すなわち光ファイバ素線F)の走行ラインに沿った所定長さLの区間にわたって、蛍光の強さを測定する。なお、所定長さLの範囲は上記実施形態と同様である。
【0041】
蛍光測定部27は、光反射部材28と、複数の光電センサ29aを含むセンサアレイ29とを有する。光反射部材28は、内面28aが光反射性を有する湾曲板状部材であって、被覆樹脂が塗布されたガラス線F11(すなわち光ファイバ素線F)の走行ラインに沿って配置されている。具体的には、図9に示されるように、光ファイバ素線Fの長手方向に垂直な光反射部材28の断面は半楕円状であり、その楕円の一方の焦点に配置された光ファイバ素線Fの被覆樹脂が発する蛍光R2を、他方の焦点に配置された光電センサ29aに集める。なお、光反射部材28は、光ファイバ素線Fの長手方向における何処の断面においても図9に示される断面形状を有する。言い換えれば、光反射部材28は、図9に示される断面形状でもって光ファイバ素線Fの長手方向に延在している。光ファイバ素線Fの長手方向における光反射部材28の長さは、所定長さLと等しい。
【0042】
図8に示されるように、センサアレイ29の複数の光電センサ29aは、被覆樹脂が塗布されたガラス線F11(すなわち光ファイバ素線F)の走行ラインに沿って一列に並んでいる。各光電センサ29aの受光面は光ファイバ素線Fの方向を向いており、各光電センサ29aには、光反射部材28にて反射した蛍光R2と、被覆樹脂から直接到達する蛍光R1とが入射する。各光電センサ29aは、受光面に入射した蛍光R1,R2の光強度に応じた電気的な測定信号を生成する。測定信号は、蛍光強度の測定結果として、配線42を介して信号処理部24に提供される。図8では光電センサ29aがアレイ状に隣接する態様を示すが、光電センサ29aが離散的に並べられてもよい。
【0043】
光反射部材28の内面28a(反射面)は例えば鏡により構成される。また、光電センサ29aは例えばフォトダイオード(一例では、可視光域に感度を有するSiフォトダイオード)である。
【0044】
信号処理部24は、蛍光測定部27から提供された測定信号に基づいて、ガラス線F11の長手方向(すなわち光ファイバ素線Fの長手方向)における蛍光の強さの変化を検知する。図10(a)〜図10(c)は、一例として、3つの光電センサ29aから出力される測定信号の時間変化を示すグラフであって、縦軸は測定信号値、横軸は時間を示す。上記実施形態の図6と同様に、図10(a)〜図10(c)においても、期間T1及びT3では被覆樹脂に異常がなく、期間T2において被覆樹脂に異常(気泡や空隙、剥離、樹脂瘤、或いは異物混入)が存在するものとする。異常がない期間T1及びT3では、急激な変化はなく測定信号は略一定で推移する。これに対し、被覆樹脂に異常が存在する期間T2では、蛍光強度が大きく変動(振動)する。
【0045】
但し、3つの光電センサ29aは光ファイバ素線Fの長手方向に並んで配置されているので、蛍光強度の変動には時間差がある。すなわち、上流側に位置する光電センサ29aから出力される測定信号の変動タイミングに対し、下流側に位置する光電センサ29aから出力される測定信号の変動タイミングは、これらの光電センサ29aの距離と光ファイバ素線Fの線速とに応じた時間だけ遅延する。信号処理部24は、この遅延時間を補正した上で、各光電センサ29aからの測定信号を合成する(図10(d))。そして、合成後の測定信号の時間変化において変動が検知された場合に、信号処理部24は、被覆樹脂に異常が存在すると判断する。
【0046】
なお、上記実施形態の製造方法(図7参照)においても、第3工程S23において、ガラス線F11の走行ラインに沿って複数の光電センサ29aを並置するとともに、該走行ラインに沿って光反射部材28を配置し、光反射部材28にて反射した蛍光R2と、被覆樹脂から直接到達する蛍光R1とを複数の光電センサ29aに入射させてもよい。
【0047】
本変形例によれば、微弱な蛍光を或る程度の長さにわたって連続して検出し、合成できるので、図10(d)のように蛍光強度の変化をより大きな信号変化として精度良く検知することができる。
【0048】
本発明による光ファイバ素線の製造方法、光ファイバ素線の製造装置、及び光ファイバ素線の検査装置は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態及び変形例を、必要な目的及び効果に応じて互いに組み合わせてもよい。また、上記実施形態及び変形例では、蛍光測定部として積分球或いは断面楕円状の光反射板を用いて蛍光を集めているが、蛍光測定部としては、これらに限らず様々な集光手段を用いることができる。また、より長時間での蛍光強度の変化を測定することにより、被覆樹脂の硬化の様子を記録することも可能になる。
【符号の説明】
【0049】
1A…製造装置、10…プリフォーム、11…線引炉、12…強制冷却装置、14,15…樹脂塗布部、14A…プライマリ樹脂、15A…セカンダリ樹脂、17…UV炉、19A,19B…検査装置、20…ガイドローラ、21…キャプスタン、22…ボビン、23…蛍光測定部、24…信号処理部、25…積分球、25a,25b…開口部、25c…内壁面、26…光電センサ、26a…受光面、27…蛍光測定部、28…光反射部材、28a…内面、29…センサアレイ、29a…光電センサ、31…コア、32…クラッド、33A,33B…被覆樹脂、34…プライマリ樹脂層、35A,35B…セカンダリ樹脂層、36…着色層、41,42…配線、F…光ファイバ素線、F11…ガラス線、R1,R2…蛍光。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10