(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱処理部は、前記燃焼停止の指令が出力されたときは、少なくとも所定時間、前記バーナの燃焼停止が継続するように加熱指令部を制御する、請求項1から3のいずれか1項に記載の給湯装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお各図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【0019】
この明細書において、給湯装置では、ガスバーナの燃焼により発生する熱量(Kcal)を「号数」により示す。号数=1は、1(L/min)の流量下で湯温を予め定められた温度(例えば25℃)上昇させるのに必要な熱量に相当する。
【0020】
[概要]
各実施の形態を概要すると、給湯装置において熱交換器を加熱するために要求される要求熱量(以下、「要求号数」ともいう)が、バーナが有する最低の燃焼能力(以下、「最低号数」ともう)に対応した最低熱量以下である場合に、制御部は、間欠運転をするようにバーナを制御する。具体的には、予測熱量が上記の要求熱量よりも大きい時は燃焼を停止するようにバーナを制御し、一次熱交換器の出力を予測する予測熱量が要求熱量以下である時は最低熱量を発生して燃焼するようにバーナを制御する。上記の予測熱量は、バーナの燃焼により一次熱交換器から出力されることが予測される熱量を示す。
【0021】
上記の給湯装置によれば、要求熱量と予測熱量との大小関係に従い、バーナの燃焼または燃焼停止の切替えによる間欠運転が可能となる。
【0022】
上記の間欠運転が実施されることで、給湯装置において「最低号数」以下の低号数域の発熱量を得ることができる。その結果、低号数域において熱交換器への入水温度の変化に追従した加熱制御(加熱指令の出力)が可能となり、低号数域において出湯温度を設定温度に維持することが可能となる。
【0023】
[実施の形態1]
(給湯装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態に従う給湯装置の概略構成図である。
図1を参照して、給湯装置100は、加熱部20、ガスバーナ30、加熱部20を格納する燃焼缶体(以下、単に「缶体」とも称する)10、送風ファン40、入水管50、バイパス管60、出湯管70、およびコントローラ300を含む。加熱部20は、ガスバーナ30が燃焼して発生する熱量により湯水を加熱して送出する部分であり、顕熱を回収する一次熱交換器11および潜熱を回収する二次熱交換器21を含む。二次熱交換器21の出口は、一次熱交換器11の入口に接続される。
【0024】
入水管50および出湯管70の間にはバイパス管60が配置される。入水管50は、加熱部20に湯水を入力するための「入水経路」の一実施例である。入水管50には、バイパス管60への分流を制御するための分配弁80が介挿接続される。さらに、入水管50には、温度センサ110および流量センサ150が配置される。温度センサ110は、入水温度Twを検出する。分配弁80の開度に応じて、給湯装置100への給水量の一部が入水管50からバイパス管60へ分流される。全体給水量に対する分流の割合は、分配弁80の開度に応じて制御される。入水管50には、水道水または外部機器からの湯水が給水され得る。実施の形態1では、入水管50に接続され得る外部機器は、例えば燃料電池発電ユニットを含む。
【0025】
入水管50からの湯水は、入水経路に介挿された二次熱交換器21によって予熱された後、一次熱交換器11において主加熱される。一次熱交換器11および二次熱交換器21によって加熱された湯水は、出湯管70を介して、台所および浴室等の給湯栓190から出湯される。
【0026】
出湯管70は、合流点75においてバイパス管60と接続される。したがって、給湯栓190からの湯水は、缶体10から出力された高温湯と、バイパス管60からの湯水を混合した適温となる。
【0027】
出湯管70には、流量調整弁90および温度センサ120,130が設けられる。温度センサ120は、出湯管70のバイパス管60との合流点75よりも上流側(缶体10側)に配置されて、缶体10からの出力湯温(以下、缶体温度)を検出する。温度センサ130は、合流点75よりも下流側(出湯側)に設けられて、バイパス管60からの湯水が混合された後の出湯温度Thを検出する。流量調整弁90は、出湯流量を制御するために設けられる。
【0028】
ガスバーナ30から送出された燃料ガスは、送風ファン40からの燃焼用空気と混合される。図示しない点火装置によって混合気が着火されることにより、燃料ガスが燃焼されて火炎が生じる。ガスバーナ30からの火炎によって生じる燃焼熱は、缶体10内で一次熱交換器11および二次熱交換器21へ与えられる。
【0029】
一次熱交換器11は、ガスバーナ30による燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)により入水を熱交換によって加熱する。二次熱交換器21は、ガスバーナ30からの燃焼排ガスの潜熱によって通流された水を熱交換によって加熱する。缶体10の燃焼ガスの流れ方向下流側には熱交換後の燃焼排ガスを排出処理するための排気経路15が設けられる。このように、缶体10では、ガスバーナ30での燃焼による発熱量により、一次熱交換器11および二次熱交換器21で、入水管50から供給された湯水を加熱する。
【0030】
ガスバーナ30へのガス供給管31には、元ガス電磁弁32、供給される電流量に比例して開度が調整されるガス比例弁33、および能力切換弁35a〜35cが配置される。元ガス電磁弁32は、ガスバーナ30への燃料ガスの供給をオン/オフする機能を有する。ガス供給管31のガス流量は、ガス比例弁33の開度に応じて制御される。
【0031】
コントローラ300は、CPU(Central Processing Unit)301、外部との入出力を制御するインターフェイス302、タイマ303、および記憶部304を備える。CPU301は、インターフェイス302を介して各センサからの出力信号(検出)およびユーザ操作を受けて、給湯装置100の全体動作を制御するために、各機器への制御指令を生成し、インターフェイス302を介して出力する。
【0032】
また、CPU301は、インターフェイス302を介して各センサからの出力信号(検出)をサンプリングし、サンプリングした信号をA/D(Analog/digital)変換により測定値に変換する。ユーザ操作には、給湯装置100の電源オン/オフ指令および設定温度値(給湯設定温度値Trを含む)の指令が含まれる。ユーザ操作には、給湯装置100の運転オン/オフ指令が含まれ得る。制御指令は、ガスバーナ30の燃焼を制御するための加熱指令が含まれる。加熱指令は、元ガス電磁弁32への開指令または閉指令、およびガス比例弁33への開度を可変に調整するための指令を含む。
【0033】
また、給湯装置100では、合流点75よりも下流側(出湯側)に配置された流量調整弁90からは、缶体10からの加熱水(入水温度Tw+ΔT)と、バイパス管60からの非加熱水(入水温度Tw)とを混合した湯が出力される。
【0034】
コントローラ300は、流量調整弁90の開度を制御することによって、流量値Qおよび出湯管70からの出湯流量を制御することができる。なお、
図1に示された給湯装置100において、流量値Qは、給水圧力と流量調整弁90の開度によって決まる。
【0035】
流量センサ150は、分配弁80よりも下流側(缶体側)に配置される。したがって、流量センサ150によって検出される流量値Qは、缶体10に格納された加熱部20を通過する流量(缶体流量)を示している。
【0036】
コントローラ300は、給湯装置100の運転指令がオンされると、流量センサ150によって検出される流量値QがMOQ(最低作動流量値)を超えたとき、缶体10での燃焼動作をオンする。燃焼動作がオンされると、元ガス電磁弁32が開放されて、ガスバーナ30への燃料ガスの供給が開始される。
【0037】
図1から理解されるように、流量調整弁90は、入水管50から缶体10を通過して出湯管70へ至る通水路に介挿接続される。そして、流量センサ150は、当該通水路における「水」の流量を検出することができる。なお、
図1のように、バイパス管60が設けられた構成によっても、分配弁80の開度によって決まる分配比を用いて、流量センサ150による検出値によって、流量調整弁90からの出力流量を検出することができる。
【0038】
(コントローラ300の機能構成)
図2は、コントローラ300の機能構成を概略的に示すブロック図である。
図2の各部は、CPU301が実行するソフトウェアプログラム、または専用のハードウェア(電子回路)、またはソフトウェアプログラムと回路の組合せにより構成され得る。コントローラ300は、給湯装置100を制御する「制御部」の一実施例である。
【0039】
図2を参照して、コントローラ300は、要求熱量取得部307、予測熱量取得部308、加熱処理部309および加熱指令部310を含む。加熱処理部309は、加熱指令部310を制御する。実施の形態1では、給湯装置100が電源オンされているときは、コントローラ300は要求熱量取得部307、予測熱量取得部308および加熱処理部309による処理を、周期[n]毎に繰返す。また、コントローラ300は、インターフェイス302を介して各種のセンサ出力を、上記の処理の周期[n]に同期した周期でサンプリング(受付け)する。
【0040】
加熱指令部310は、加熱処理部309からの制御出力に基づき、加熱指令を生成して、加熱部20に出力する。上記の間欠運転時においては、加熱指令部310は、加熱処理部309からの制御出力に基づき、燃焼停止指令311または燃焼指令312を出力する。燃焼停止指令311が出力されるとガスバーナ30は燃焼を停止するため、発生熱量は「0号」に相当する。また、燃焼指令312が出力されるとガスバーナ30は最低燃焼能力である最低号数で燃焼するため、発生熱量は「最低号数」に相当する。実施の形態1の給湯装置100の記憶部304には、「最低号数」として2.4号が予め設定(記憶)されている。なお、最低号数は2.4号に限定されない。
【0041】
実施の形態1では、加熱指令部310からガス比例弁33に出力される加熱指令は、ガスバーナ30を燃焼させて加熱部20に入力(供給)するべき発熱量(以下、「実入力号数」ともいう)に相当する大きさの電流信号を示す。したがって、給湯装置100は、加熱指令により、ガスバーナ30の燃焼による発熱量を可変に制御することができる。
【0042】
(要求号数の取得方法)
要求熱量取得部307は、要求号数を算出する。具体的には、要求熱量取得部307は、缶体設定温度値TTと、入水経路から加熱部20に入力する湯水の入水温度値Tinと、流量センサ150による測定流量値Qとから、(式1)に従い要求号数RQを算出する。なお、(式1)の係数βは、熱量から号数に換算するための係数である。
【0043】
RQ=(TT−Tin)×Q×β・・・(式1)
なお、実施の形態1では、要求熱量取得部307は、要求号数RQを(式1)に基づき算出するが、要求号数RQの取得方法はこれに限定されない。例えば、缶体設定温度値TTおよび入水温度値Tinの組と関連付けされて登録されたテーブルが記憶部304に予め格納される場合は、要求熱量取得部307は、缶体設定温度値TTおよび入水温度値Tinに基づきテーブルを検索することにより、要求号数RQを読出すとしてもよい。
【0044】
実施の形態1では、缶体設定温度値TTは、燃焼缶体(より特定的には一次熱交換器11)のガスバーナ30の燃焼制御による目標温度を示す。缶体設定温度値TTは、実施の形態1では、例えば、ユーザが給湯装置100を操作して設定した給湯設定温度値Trを用いて、(缶体設定温度値TT=給湯設定温度値Tr+15度)にセットされる。ただし、50度≦TT≦67度である。
【0045】
(仮想出力の取得方法)
予測熱量取得部308は、加熱指令部310からの加熱指令が指示する「実入力号数」に従いガスバーナ30が燃焼した場合に、一次熱交換器11により出力される発熱量を予測する。この予測熱量を以下、「仮想出力」ともいう。
【0046】
予測熱量取得部308は、周期[n]の仮想出力y[n]を、実入力号数x[n]と給湯装置100が有する応答遅れの時定数Lとから、指数移動平均に従う(式2)に基づき算出する。
【0047】
y[n]=(L/(L+1)×y[n−1])+(1/(L+1)×x[n])
上記の式を変換すると、以下の(式2)となる。
【0048】
y[n]=((L×y[n−1])+x[n])/(L+1)・・・(式2)
予測熱量取得部308は、処理の周期[n]に同期して仮想出力y[n]を算出する。たとえば、仮想出力y[n]は今回の処理周期[n]での算出値であり、仮想出力y[n−1]は前回の処理周期[n−1]での算出値であり、仮想出力y[n+1]は次回の処理周期[n+1]での算出値である。また、実入力号数x[n]は、今回の処理周期[n]での算出値である。間欠運転時に仮想出力が算出される場合には、実入力号数x[n]は、処理周期[n]で燃焼停止指令311が出力されているときは0号を示し、処理周期[n]で燃焼指令312が出力されているときは2.4号(「最低号数」)を示す。
【0049】
(式2)では、仮想出力y[n]は、仮想出力y[n−1]と実入力号数x[n]との、時定数Lと時定数(L+1)に基づく内分点に相当する値を示す(
図4参照)。(式2)によれば、応答遅れに相当する値が補正された値として仮想出力y[n]を算出することができる。
【0050】
なお、実施の形態1では、予測熱量取得部308は仮想出力y[n]を(式2)により算出して取得したが、取得方法はこれに限定されない。例えば、記憶部304に仮想出力y[n]が、仮想出力y[n−1]と実入力号数x[n]の組で関連付けされて登録されたテーブルを格納しておき、予測熱量取得部308は、仮想出力y[n−1]と実入力号数x[n]に基づきテーブルを検索することにより、仮想出力y[n]を読出すとしてもよい。
【0051】
加熱処理部309は、処理の各周期[n]において、要求号数が、最低号数以下である場合は、仮想出力と要求号数との大小関係を比較し、比較の結果に従い、燃焼停止指令311または燃焼指令312を、加熱指令部310を介して出力する。これにより、加熱処理部309は、要求号数が最低号数以下である場合に、ガスバーナ30を燃焼と燃焼停止とを切替えて間欠的に運転することができる。
【0052】
間欠運転が実施されることで、給湯装置100は最低号数以下の低号数域に相当する発熱量を得ることができる。
【0053】
(間欠運転の説明)
図3と
図4は、実施の形態1にかかる間欠運転を説明するための図である。
図3と
図4は、横軸に時間がとられて、縦軸には号数がとられている。なお、実施の形態1では、間欠運転を終了(燃焼を停止)するための基準値として、設定最低号数(例えば、0.8号)が示される。設定最低号数は、記憶部304に格納される。なお、0<設定最低号数<最低号数(2.4号)の関係を有する値であれば、設定最低号数は、0.8号に限定されない。
【0054】
図3と4を参照して、外部機器から、入水経路を介して高い予熱を有した給水がなされる場合を説明する。時間=0において給湯栓190の開操作がされて、缶体流量が最低作動流量(MOQ)を超えると、比例制御による燃焼運転が開始される。比例制御の燃焼運転は、従来から周知の運転であるので、説明は繰返さない。
【0055】
その後、外部機器からの入水温度Twが上昇すると、要求号数RQは低下する。要求号数RQが最低号数(2.4号)以下となった場合は、給湯装置100の運転は、比例制御の運転から上記の間欠運転に切り替わる(
図3参照)。
図4を参照して、間欠運転においては、仮想出力と要求号数RQとの大小関係に従い、実入力号数が2.4号を示す燃焼指令312と、実入力号数が0号を示す燃焼停止指令311とが交互に出力される。これにより、給湯装置100は、本来は得ることができない低号数域(最低号数(2.4号)〜設定最低号数(0.8号))に対応した発熱量を出力することができる。なお、実施の形態1では、間欠運転は、要求号数RQが設定最低号数未満になると終了する。
【0056】
(ガスバーナ30の制御のフローチャート)
図5は、実施の形態1に係る燃焼制御の概略処理フローチャートである。
図6は、実施の形態1に係る間欠運転の処理フローチャートである。これらフローチャートは、プログラムとして記憶部304に格納される。CPU301は、記憶部304からプログラムを読出し実行することにより、処理が実現される。実施の形態1では、CPU301は、給湯装置100を制御するメインルーチンから
図5のフローチャートのプログラムを、一定時間ごと(周期的に)呼出して実行する。このプログラムの実行周期は、上記に述べた処理の周期[n]に同期する。
【0057】
図5を参照して、CPU301は、受付けるユーザ操作内容に基づき給湯装置100が電源オン状態であるか否かを判断する(ステップS1)。電源オンと判断されないときは(ステップS1でNO)、ステップS1の処理を繰返す。
【0058】
CPU301が、給湯装置100は電源オン状態であると判断すると(ステップS1でYES)、要求熱量取得部307は(式1)に従い要求号数RQを取得する(ステップS3)。加熱処理部309は、設定最低号数(0.8号)および最低号数(2.4号)を用いて、要求号数RQについて(0.8<要求号数RQ≦2.4)の条件が成立するか否かを判断する(ステップS5)。加熱処理部309は、当該条件は成立しないと判断すると(ステップS5でNO)、一連の処理は終了し、元のメインルーチンに戻る。
【0059】
加熱処理部309は、上記に述べた条件が成立すると判断すると(ステップS5でYES)、間欠運転処理(ステップS6)を実施する。
【0060】
図6を参照して、間欠運転処理では、まず、予測熱量取得部308は、(式2)に従い仮想出力を取得する(ステップS11)。また、要求熱量取得部307は、(式1)に基づき要求号数RQを取得する。
【0061】
加熱処理部309は、取得された仮想出力と要求号数RQについて(仮想出力>要求号数RQ)の条件が成立するか否かを判断する(ステップS17)。加熱処理部309は、(仮想出力>要求号数RQ)の条件が成立すると判断したとき(ステップS17でYES)、燃焼停止指令311を出力するよう加熱指令部310を制御する(ステップS19)。これにより、ガスバーナ30の出力(発熱量)が要求号数RQを上回ることが予測される場合、すなわち出湯温度Thが給湯設定温度を超えることが予測される場合は、燃焼停止指令311を出力し、ガスバーナ30の燃焼を停止させ、オーバーシュートを防止することが可能となる。
【0062】
また、加熱処理部309は、(仮想出力>要求号数RQ)の条件は成立しないと判断したとき(ステップS17でNO)、燃焼指令312を出力するよう加熱指令部310を制御する(ステップS20)。これにより、ガスバーナ30の出力(発熱量)が要求号数RQ以下となることが予測される場合は、燃焼指令312を出力してガスバーナ30を最低号数(2.4号)の発熱量で燃焼させて、出湯温度Thが給湯設定温度を下回る(アンダーシュート)事態を防止することが可能となる。ステップS19またはステップS20の処理後は、
図5の元の処理に戻る。
【0063】
[実施の形態2]
実施の形態2は、上述の各実施の形態の変形例を示す。実施の形態2では、要求号数RQを算出するための(式1)における入水温度値Tinとして、入水温度値Tin(1)と入水温度値Tin(2)の2種類が定義される。
【0064】
入水温度値Tin(1)は、温度センサ110の出力(入水温度Tw)を測定した値である。入水温度値Tin(2)は、二次熱交換器21の出口の湯水温度[n]、すなわち一次熱交換器11に入水する直前の湯水の温度を示す。
【0065】
実施の形態の背景として、入水経路の途中に二次熱交換器21を有する場合には、入水経路の途中に設けられた二次熱交換器21が有する配管容量のために、一次熱交換器11への入水温度が、入水経路の上流における温度センサ110が検出する入水温度Twから変化する可能性がある。そのため、入水温度Twに基づき算出された要求号数RQに従って間欠運転を実施すると、加熱指令(燃焼指令312)の出力が遅れて、出湯温度Thがアンダーシュートする可能性がある。
【0066】
このような背景のもと、実施の形態2では、要求熱量取得部307は、入水温度値Tin(1)および入水温度値Tin(2)のうち、温度の低い方を用いた(式2)に従い、要求号数RQを算出する。これにより、間欠運転時の加熱指令(燃焼指令312)の出力遅れを防止する。
【0067】
実施の形態2では、CPU301は、入水温度値Tin(2)を、以下の(式3)に従い算出(推定)する。この式は、仮想出力を算出する(式1)と同様に、周期[n-1]に算出された入水温度値Tin(2)[n-1]と周期[n]の入水温度値Tin(1)[n]とについて、時定数Lに従う内分点の値を算出する式である。
【0068】
入水温度値Tin(2)[n]=(L×入水温度値Tin(2)[n−1]+入水温度値Tin(1)[n])/(L+1)・・・(式3)
なお、給湯装置100の運転開始時の入水温度値Tin(2)の値(初期値)は、流量値Qを用いた所定関数から算出される値である。
【0069】
実施の形態2によれば、要求熱量取得部307は、入水経路において二次熱交換器21の上流側の温度センサ110による測定温度値、および二次熱交換器21の下流側である二次熱交換器21の出口の湯水温度[n]のうちのより低い方を用いて要求号数RQを算出する。
【0070】
したがって、例えば外部機器である燃料電池発電ユニットのタンクに蓄えられていた湯が入水経路から給湯装置100に供給される場合において、タンクの湯切れが生じたときには、入水温度値Tin(1)の方が低くなる。また、燃料電池発電ユニットから給湯装置100に運転を切替える場合には、二次熱交換器21の出口の湯水温度[n](入水温度値Tin(2))の方が、入水温度値Tin(1)よりも低くなる。実施の形態2によれば、いずれの場合も、速やかに燃焼指令312を出力して出湯温度Thのアンダーシュートを防止することが可能となる。
【0071】
[実施の形態3]
実施の形態3は、実施の形態2の変形例を示す。実施の形態3では、上記の入水温度値Tin(2)、すなわち二次熱交換器21の出口の湯水温度[n]を算出するための(式3)の時定数Lを変化させる。
【0072】
図7は、実施の形態3に係る時定数Lを説明する図である。実施の形態3では、二次熱交換器21の出口の湯水温度[n]をより正確に算出するために、CPU301は、時定数Lを、流量値Qにより可変に設定する。つまり、入水経路を介して湯水が一次熱交換器11(二次熱交換器21の出口)に到達するまでの時間は湯水の流量に依存して変化することに着目して、実施の形態3では(式3)の時定数Lを流量値Qにより可変に設定する(
図7を参照)。実施の形態3による具体的な効果は、
図13と
図14を参照して後述する。
【0073】
[実施の形態4]
実施の形態4は、上述の各実施の形態の変形例を示す。実施の形態4では、(式1)を用いて要求号数RQを算出するために、缶体設定温度値TTとして、缶体設定温度値TT(1)と缶体設定温度値TT(2)の2種類の上限値を定義する。
【0074】
要求熱量取得部307は、缶体設定温度値TT(1)と缶体設定温度値TT(2)を用いて(式1)に従い要求号数RQを算出する。
【0075】
缶体設定温度値TT(1)は、上記に述べた(給湯設定温度値Tr+15度)を示す。缶体設定温度値TT(2)は、入水温度値Tinと給湯設定温度値Trの関数である、以下の(式4)に従い算出される。
【0076】
TT(2)=(Tr−Tin×η(x=100))/(1−η(x=100))・・・(式4)
なお、関数η(x=100)は、分配弁80の分配比がη、且つ全開(x=100)であるときの、入水経路から分配弁80を介して出湯路に混合される湯水量を示す。
【0077】
実施の形態の背景として、上記に述べた比例制御の運転においては、CPU301は、缶体設定温度と入水温度に基づく指令を出力し、分配弁80の分配比(開度)を可変に制御して、出湯温度Thを設定温度に維持する。
【0078】
ここで、入水経路における給水予熱の温度が高い場合は、CPU301が、分配弁80に全開(x=100)となるような指令を出力したしても、出湯温度Thを給湯設定温度に維持することができず、オーバーシュートが発生し得る。これに対処するために、実施の形態4では、缶体設定温度値TT(1)と缶体設定温度値TT(2)のうち、より低い方の上限値を用いて要求号数RQを算出する。
【0079】
図8(A)と(B)は、実施の形態4を説明するための図である。
図8のグラフでは、横軸に時間がとられ、縦軸には温度または要求号数RQがとられている。
図8(A)の比較例においては、実施の形態4とは異なり缶体設定温度値TTを一定とした場合が示される。比較例によれば、入水経路における入水温度値Tin(すなわち、給水予熱の温度)が上昇し、給湯設定温度値Trに近づいたとしても、缶体設定温度は一定であるために、要求号数RQはゼロとはならず、燃焼指令312が出力されてしまう。また、分配弁80が全開状態であっても出湯温度Thを給湯設定温度にまで下げることはできない。この結果、オーバーシュートが発生する。
【0080】
これに対して
図8(B)の実施の形態4では、入水温度値Tin(給水予熱温度)が上昇するにつれて、(式4)により算出される缶体設定温度値TT(2)は、缶体設定温度値TT(1)よりも低くなる。その後は、缶体設定温度値TT(2)を用いて算出される要求号数RQは、入水温度値Tin(給水予熱温度)が上昇するにつれて小さくなる。
【0081】
入水温度値Tinが給湯設定温度値にまで達すると、(式1)により算出される要求号数RQはゼロとなる。これにより、(仮想出力>要求号数)の条件(
図6のステップS17)が成立し、燃焼停止指令311が出力されてガスバーナ30の燃焼は停止する。したがって、オーバーシュートを防止して、出湯温度Thを給湯設定温度に維持することが可能となる。
【0082】
[実施の形態5]
実施の形態5は、上述の各実施の形態の変形例を示す。実施の形態5では、間欠運転において、加熱処理部309は、燃焼停止指令311が出力されたときは、少なくとも所定時間、燃焼停止が継続するように加熱指令部310を制御する。
【0083】
これにより、間欠運転において、ガスバーナ30の燃焼停止→燃焼→燃焼停止の高速切替えを防止できる。その結果、例えば高速切替えに起因したガス比例弁33を含む燃焼系統の劣化を防止することができる。
【0084】
[実施の形態によるシミュレーション]
図9は、各実施の形態による間欠運転時の給湯装置100の動作を説明する図である。
図9のグラフでは、縦軸に温度(℃)または号数が、横軸に時間(秒)がそれぞれとられている。
図9のグラフは、発明者らによりなされた間欠運転を摸擬する計算機シミュレーションの結果を示す。シミュレーションでは、上記の各式における入水温度Twと流量値Q(缶体流量値)を、周期的に変化させながら、各値を算出する。
図9のグラフは、算出された値をプロットしたものである。なお、シミュレーションでは、給水予熱の温度を15度→40度に徐々に変化させた。また、燃焼停止の継続時間は最低1.0秒とし、設定最低号数は、0.8号とした。
【0085】
図9を参照して、給湯栓190が開かれて給湯装置100に給水が開始されて運転が開始される。運転開始時の、給水予熱温度である入水温度Tw(グラフG5)は低い値を示す。このときは、比例制御の運転がなされる。したがって、算出される仮想出力(グラフG4)は、要求号数(グラフG3)に追従して変化する。
【0086】
その後、給水予熱温度が上昇し始めると、実施の形態4に従い缶体設定温度値TTは低い方の上限値が採用されることから、缶体設定温度値TT(グラフG6)は低下し始める。
【0087】
運転開始から40秒ごろに、(0.8<要求号数RQ≦2.4)の条件が成立すると、間欠運転が開始される。間欠運転においても給水予熱温度を示す入水温度Tw(グラフG5)は上昇し、それに伴い、実施の形態4に従い、低い方の缶体設定温度値TTが選択される(グラフG6参照)ことにより要求号数RQ(グラフG3)は低下する。その後、仮想出力(グラフG4)も低下しながら要求号数RQに近づく。これにより、間欠運転の開始時には、燃焼指令312が出力されて燃焼する期間(ON期間とする)は、燃焼停止指令311が出力された燃焼停止する期間(OFF期間とする)よりも比較的長いが、その後は、ON期間は短くなり、入水温度Tw(グラフG5)がほぼ給湯設定温度値Trになると(間欠運転の終了時には)、燃焼停止(OFF期間)が継続する。
【0088】
このように、間欠運転の期間においては、ON(燃焼)期間とOFF(燃焼停止)期間とが周期[n]に同期して交互に繰り返される(グラフG7参照)。各実施の形態によれば、各周期におけるONとOFFからなるデユーティ比を自律的に変更することができる。
【0089】
したがって、要求号数RQが最低号数(2.4号)以下である場合の間欠運転において、デユーティ比を固定にする場合に比較して、オーバーシュートおよびアンダーシュートを防止しながら、出湯温度Thを給湯設定温度値Trに維持するような発熱量(
図5の2.4号〜0.8号の間の低号数域での発熱量)の調整を、精度よく実施することができる。
【0090】
[実施の形態の効果]
各実施の形態の効果について、ガスバーナ30を制御するために仮想出力(予測熱量)を用いることの利点と、要求号数RQの算出に用いる入水温度を切替えることの利点とを説明する。
【0091】
(仮想出力(予測熱量)を用いることの利点)
給湯器は、一般的に、一次熱交換器への入水温度を検出する温度センサ、流量を検出する水量センサおよび缶体の温度を検出する温度センサを備える。したがって、温度センサによる現在の検出温度と検出流量を用いて現在の一次熱交換器の出力を演算することが可能である。しかしながら、各実施の形態の背景として、(1)一次熱交換器11の出口温度は、缶体温度センサによって温度加熱部(ガスバーナ30)よりも下流で検出されること、また(2)ガスバーナ30の燃焼停止後も一次熱交換器(缶体)は余熱をもつことが知られている。
【0092】
したがって、間欠運転において、この現在熱量を用いて要求号数RQと比較し、燃焼停止、許可の判断を行うとすれば、燃焼停止の判断が遅くなってしまう。これを、防止するために、各実施の形態では、現在熱量ではなく、一次熱交換器11の出力を予測した値である仮想出力(予測熱量)を用いて間欠運転を実施する。
【0093】
図10は、間欠運転中の(要求熱量と現在出力)または(缶体設定温度と現在缶体温度)の関係を示す図である。
図10を参照して、仮に時刻t=t1で燃焼許可の指令が出力されて、t=t2に現在出力が要求号数RQに一致したとする。ここで、コントローラ300が燃焼停止の判断を行ったとして、t2以降の現在出力または缶体温度を考察すると、
図10のグラフAのように即低下することはなく、グラフBのように要求号数RQを上回るまたは缶体設定温度を上回ってから低下する挙動をとることになる。その原因は、上記に述べた背景(1)と(2)にある。
【0094】
図11は、加熱部20から出力直後の温度または、加熱部20の出力直後の熱量を用いて熱量を演算したグラフを
図10に追加したケースを示す。
図11においては、グラフCにより仮想出力(予測熱量)が示される。
図11では、仮想出力を要求号数RQと比較することにより、燃焼停止の判断のタイミングをt2→t2'に早めることができる。つまり、t2'で燃焼停止指令311を出力することができて、これにより、検出温度と現在出力は
図12に示されるように変化する。つまり、オーバーシュートを防ぐことが可能になる。
【0095】
(要求号数RQの算出に用いる入水温度を切替えることの利点)
実施の形態2で示されるように、要求号数RQを算出するための(式1)における入水温度値Tinは、温度センサ110による入水温度値Tin(1)と二次熱交換器21の出口の推定される湯水温度である入水温度値Tin(2)の一方に切替えられる。
【0096】
実施の形態2では、2種類の入水温度値Tin(1)と(2)を用いる理由は、給水予熱と湯切れ(燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)発電ユニットのタンクの湯切れ)に備えるためである。
図13に給水予熱時の入水温度の変化を例示し、
図14に湯切れ時の入水温度の変化を例示する。
【0097】
図13と
図14のいずれの場合でも、現在検出している入水温度よりも二次熱交換器21出口温度の方が遅れて上昇もしくは下降する。これは単純に検出箇所と一次熱交換器11との間の配管容量に依存して、湯水の到達に時間がかかることによる。
【0098】
ここで、給水予熱時に検出した入水温度を用いて要求号数RQを算出するとすれば、まだまだ燃焼を継続すべき温度であるのにガスバーナ30は燃焼を停止する。結果としてアンダーシュートする。このことは、
図13に示されるように、二次熱交換器出口温度(=一次熱交換器入り口温度)のほうが時刻tにおいて検出している入水温度よりも低い値を示すことからも理解される。つまり、給水予熱時に要求号数RQの算出に入水温度としては、二次熱交換器出口温度を用いることで、アンダーシュートを防止することができる。
【0099】
これに対して、湯切れ時において、二次熱交換器出口温度を用いて要求号数RQを算出した場合には、コントローラ300による燃焼許可の判断が遅くなって、燃焼指令312の出力が遅れる。結果としてアンダーシュートする。したがって、湯切れ時においては、検出している入水温度を用いて要求号数RQを算出しておけばガスバーナ30の着火を早めてアンダーシュートを防止することが可能となる。
【0100】
このように、実施の形態2では、(式3)により、検出した温度(入水温度)をなます(指数移動平均を用いる)ことで、二次熱交換器出口温度を想定する。そして、2種類の入水温度値Tin(1)と入水温度値Tin(2)のうちの低い方を要求号数RQの算出に採用することで、上記のアンダーシュート防止の要求を満たすことができる。
【0101】
また、実施の形態3では、二次熱交換器出口温度(入水温度値Tin(2))を算出する(式3)に用いる時定数Lは、
図7で説明したように、流量値Qの1変数関数により可変に設定することができる。具体的には、流量が少ないときは(すなわち、一次熱交換器11に到達するまでに要する時間が長くなるときは)、1変数関数により大きな時定数を算出することができる。流量が多いときは(すなわち、一次熱交換器11に到達するまでに要する時間は短いときは)、1変数関数により小さな時定数を算出することができる。
【0102】
このように、実施の形態3では、入水温度値Tin(2)を流量値Qによってなます程度(時定数L)を変化させて、入水温度値Tin(2)をより正確に算出することができる。
【0103】
各実施の形態によれば、給水予熱を利用した給湯装置であっても、間欠運転を実施することにより、低号数域において、オーバーシュートおよびアンダーシュートを防止しながら、出湯温度Thを給湯設定温度値Trに維持することができる。
【0104】
例えば、給湯装置100が燃料電池発電ユニットに接続される場合に、給湯装置100の入水経路の入水温度値Tinは、燃料電池発電ユニットから供給される湯水の温度(給水予熱)により変化する。その場合であっても、各実施の形態よる間欠運転を実施することにより、ガスバーナ30の燃焼制御を入水温度値Tinの変化に速やかに且つリニアに追従させて、出湯温度Thを給湯設定温度値Trに維持することができる。
【0105】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。