(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記羽根車の軸方向から見た平面視において、前記第2ゲート跡部は、前記第1ゲート跡部よりも軸心側に位置する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の羽根車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、製造コストの観点から、樹脂成形法のみによって羽根車を一体的に形成する技術が求められている。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、樹脂により一体的に形成された羽根車であって、安定的な送風性能を発揮する羽根車、給湯器、樹脂成形用金型、および羽根車の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の羽根車は、樹脂により一体的に形成された羽根車であって、環状のシュラウドと、中心部分にボス部を有する主板と、複数の羽根と、を備える。羽根のそれぞれは、シュラウドと主板とをつなぐように、シュラウドと主板との間に配置されている。シュラウドは、複数の第1ゲート跡部を有し、主板は、複数の第2ゲート跡部を有する。
【0008】
本発明の羽根車は、羽根車の形状に対応したキャビティを有する樹脂成形用金型を用いて一体的に形成することができる。特に、上記羽根車において、シュラウドに複数の第1ゲート跡部が存在し、かつ主板に複数の第2ゲート跡部が存在することから、当該羽根車を製造するための樹脂成形用金型は、シュラウドの形状に対応するキャビティ(以下、「シュラウド用キャビティ」ともいう)に通じるゲートと、主板の形状に対応するキャビティ(以下、「主板用キャビティ」ともいう)に通じるゲートとを備えることが理解される。
【0009】
仮に、シュラウド用キャビティに通じるゲートのみを備える樹脂成形用金型を用いて羽根車を作製する場合、ゲートからキャビティに注入された樹脂は、シュラウド用キャビティから羽根の形状に対応するキャビティ(以下、「羽根用キャビティ」ともいう)を通じで、主板用キャビティに充填されることとなる。この場合、主板用キャビティに到達する樹脂の量は不十分となり易く、これに伴い、主板用キャビティにおける樹脂密度が不均一となる。樹脂密度が不均一な主板は、硬化時に不均一に収縮することとなるため、硬化後において歪みを含む。
【0010】
これに対し、本発明の羽根車では、上記のとおり、シュラウド用キャビティに通じるゲートと、主板用キャビティに通じるゲートとを有する樹脂成形用金型を用いて作製されたものである。したがって、本発明の羽根車においては、主板における樹脂密度の不均一性が低減されており、これによって形状の歪みが低減または解消され、もって安定的な送風性能を発揮することができる。
【0011】
上記羽根車において、シュラウドは、第1面と、該第1面と反対側の第2面とを有し、主板は、第2面と対向する第3面と、該第3面と反対側の第4面とを有する。第1ゲート跡部および第2ゲート跡部のそれぞれは、第1面および第3面に位置する。この場合、樹脂成形用金型内における、シュラウド用キャビティに通じる第1ゲートの配置位置と、主板用キャビティに通じる第2ゲートの配置位置とのそれぞれを、近づけることができる。このため、樹脂成形用金型の構成を簡素化することができ、もって羽根車の製造コストを低減することができる。
【0012】
上記羽根車において、シュラウドは開口部を有し、羽根車の軸方向から見た平面視において、主板は、開口部に内包される。これにより、樹脂成形用金型の形状を簡素化することができ、もって羽根車の製造コストを低減することができる。また製造歩留まりを向上させることができる。
【0013】
上記羽根車は、羽根車の軸方向から見た平面視において、第2ゲート跡部は、第1ゲート跡部よりも軸心側に位置する。これにより、樹脂成形用金型の形状を簡素化することができ、もって羽根車の製造コストを低減することができ、また製造歩留まりを向上させることも可能となる。
【0014】
上記羽根車において、ウェルドラインは主板に位置する。この場合、ウェルドラインの存在に起因する破損の発生を低減することができる。
【0015】
上記羽根車において、第1ゲート跡部は、羽根とシュラウドとの接続部の真上に位置する。これにより、製造時において、樹脂を羽根用キャビティ内に十分かつ均一に充填させることができるため、各羽根の形状の均一性を高めることができる。
【0016】
上記羽根車において、第1ゲート跡部の寸法は、第2ゲート跡部の寸法よりも大きい。ゲートからキャビティ内に流れ込む樹脂の流量は、ゲート跡部の寸法の大きさに比例する傾向がある。すなわちこの羽根車は、第1ゲートから比較的高い流量で樹脂(以下、「第1樹脂」ともいう)が注入され、第2ゲートから比較的低い流量で樹脂(以下、「第2樹脂」ともいう)が注入されることによって製造されたものである。この場合、第1樹脂および第2樹脂の合流位置が、羽根用キャビティではなく、主板用キャビティとなるように調製することが容易となる。換言すれば、この羽根車によれば、ウェルドラインを主板に位置させることができるため、ウェルドラインに起因する破損の発生を抑制することができる。
【0017】
上記羽根車において、第1ゲート跡部の数は、第2ゲート跡部の数よりも大きい。これにより、第1ゲートからシュラウド用キャビティに流れ込む樹脂の流量を、第2ゲートから主板用キャビティに流れ込む樹脂の流量よりも大きくすることができる。この場合、第1樹脂および第2樹脂の合流位置が、羽根用キャビティではなく、主板用キャビティとなるように調製することが容易となる。換言すれば、この羽根車によれば、ウェルドラインを主板に位置させることができるため、ウェルドラインに起因する破損の発生を抑制することができる。
【0018】
また本発明の給湯器は、上記の羽根車を備える。上記の羽根車は、安定的な送風性能を発揮することができるため、これを備える給湯器によれば、安定的な給湯が可能となる。
【0019】
また本発明の樹脂成形用金型は、上記羽根車を製造するための樹脂成形用金型であって、羽根車に対応するキャビティと、キャビティのうちシュラウドに対応する位置に設けられた第1ゲートと、キャビティのうち主板に対応する位置に設けられた第2ゲートと、を備える。この樹脂成形用金型によれば、上記羽根車を作製することができる。
【0020】
また本発明の羽根車の製造方法は、上記樹脂成形用金型を準備する工程と、第1ゲートおよび第2ゲートを介して、キャビティに樹脂を注入する工程とを備える。この羽根車の製造方法によれば、上記羽根車を製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、樹脂により一体的に形成された羽根車であって、安定的な送風性能を発揮する羽根車、給湯器、樹脂成形用金型、および羽根車の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。また各図において、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0024】
〈羽根車の構成〉
図1〜
図4を参照しながら、本実施形態の羽根車について説明する。
図1〜
図4に示される羽根車10は、樹脂により一体成形された一体成形品であって、環状のシュラウド1と、主板2と、複数の羽根4と、を主に備えている。
【0025】
シュラウド1は、第1面1Aと、第1面1Aと反対側の第2面1Bとを有し、その中央部分に開口部1Cを有する。一般的に羽根車の「シュラウド」の形状は、羽根と羽根との間を通る気体の流れの妨げとならないように、覆う羽根の高さに沿うように形成される。本実施形態のシュラウド1は、羽根車10の軸方向から見た平面視において、円環形状を有しており、軸方向に平行な断面において、傾斜に絞りの入った円錐台形状を有する。
【0026】
なお羽根車10の軸方向とは、羽根車10の回転動作における中心軸に沿う方向を意味する。
図1〜
図4において、中心軸を一点鎖線Xで示す。またシュラウド1の形状に関し、羽根車10としての動作が可能な環状であればよく、円環形状に限られるものではない。ただし、送風性能の観点からは、円環形状であることが好ましい。
【0027】
シュラウド1はさらに、複数の第1ゲート跡部1Dを有する。本実施形態においては、シュラウド1の第1面1Aに第1ゲート跡部1Dが位置しており、かつ周上に等間隔に位置している。また
図2に示されるように、各第1ゲート跡部1Dは、各羽根4とシュラウド1との接続部の真上に位置している。
【0028】
主板2は、シュラウド1の第2面1Bと対向する第3面2Aと、第3面2Aと対向する第4面2Bとを有し、その中心部分にボス部3を有する。ボス部3の中心部には、第3面2A側から第4面2B側にまで貫通する軸受孔3aが設けられている。
【0029】
本実施形態において主板2は、軸方向から見た平面視において、中心部分に軸受孔3aが設けられた円盤形状を有しており、軸方向に平行な断面において、傾斜に絞りの入った円錐台形状を有する。
【0030】
主板2はさらに、複数の第2ゲート跡部2Dを有する。本実施形態においては、主板2の第3面2Aに第2ゲート跡部2Dが位置しており、かつ周上に等間隔に位置している。また
図1および
図2に示されるように、各第2ゲート跡部2Dは、主板2のうち、羽根4が延在していない領域である内周側に位置している。
【0031】
また軸方向から見た平面視において、主板2はシュラウド1の開口部1Cに内包されるように位置している。すなわち主板2の外形は、開口部1Cの外形よりも小さい。
【0032】
羽根4は、シュラウド1と主板2とをつなぐように、シュラウド1と主板2との間に配置されている。具体的には、羽根4は、シュラウド1の第2面1Bの外周側から内周側に延在し、さらに主板2の第1面1Aの外周側にまで延在することにより、主板2に到達している。なお、羽根4はそれぞれ個別に存在しており、互いに接することはない。
【0033】
羽根4の突出し方向の高さ(
図4の上下方向の幅)に関し、シュラウド1の外周側から内周側に向けて、連続的に(比較的なだらかに)大きくなり、シュラウド1の内周側から主板2の外周側に到達するまでの間に連続的に(比較的急に)小さくなる。
【0034】
このような構成の羽根4を備える羽根車10は、羽根4の延在方向の長さによって送風力を稼ぐものであり、羽根の突出し方向の高さによって送風力を稼ぐシロッコファンとは異なるものである。
【0035】
また本実施形態の羽根車10は、外縁リング5をさらに備える。外縁リング5は、羽根車10の軸方向から見た平面視において、円環形状を有しており、かつシュラウド1を内包するように位置している。外縁リング5には、各羽根4の端部がつながっている。
【0036】
〈羽根車を備える給湯器〉
本実施形態の羽根車10を備える給湯器の一例について、
図5を用いて説明する。
図5の給湯器100において、羽根車10は、ファン20のファンケース内に配置されることとなる。
【0037】
図5を参照し、給湯器100は、給湯経路と、風呂循環経路と、注湯経路と、ドレン排出経路とを主に有している。すなわち給湯器100は、風呂給湯器である。
【0038】
上記給湯器100の給湯経路は、上水を加熱する経路である。この給湯経路は、1次熱交換器40A、2次熱交換器50A、燃焼装置60A、配管71〜73、分配弁74などにより構成されている。
【0039】
配管71の一方端は、入水口を有している。入水口は、上水道に接続されている。配管71の他方端は、2次熱交換器50Aの一方端に接続されている。2次熱交換器50Aの他方端は、1次熱交換器40Aの一方端に接続されている。1次熱交換器40Aの他方端は、配管72の一方端に接続されている。配管72の他方端は、給湯器100の外部のカランなどに接続されている。分配弁74は、配管71に接続されている。分配弁74と配管72とが配管73により接続されている。
【0040】
熱交換器40Aの近傍には、燃焼装置60Aが配置されている。燃焼装置60Aは、複数の燃焼管61を有している。
【0041】
また上記給湯器100の風呂循環経路は、浴槽90中の湯水を加熱する経路である。この風呂循環経路は、ファン20、1次熱交換器40B、2次熱交換器50B、燃焼装置60B、配管82、83、循環ポンプ84などにより構成されている。
【0042】
配管82の一方端は2次熱交換器50Bの一方端に接続されている。2次熱交換器50Bの他方端は、1次熱交換器40Bの一方端に接続されている。1次熱交換器40Bの他方端は、配管83の一方端に接続されている。配管82の他方端および配管83の他方端の各々は、浴槽90に配置された循環アダプタ91に接続されている。配管82には循環ポンプ84が設けられている。
【0043】
熱交換器40Bの近傍には、燃焼装置60Bが配置されている。燃焼装置60Bは、複数の燃焼管61を有している。
【0044】
また上記給湯器100の注湯経路は、上記給湯経路から風呂循環経路に湯水を流入させる経路である。この注湯経路は、注湯電磁弁76、逆止弁77、78、大気開放弁79、配管75、80、81などにより構成されている。
【0045】
給湯経路の配管72から分岐された配管81は、風呂循環経路の循環ポンプ84に接続されている。この配管81には、注湯電磁弁76、逆止弁77および逆止弁78が、この順番で配置されている。逆止弁77と逆止弁78との間の配管81の経路には、大気開放弁79が接続されている。
【0046】
大気開放弁79は、配管75を通じて与えられる配管71中の流体の圧力に応動して開閉可能である。そして大気開放弁79が開動作した場合、大気開放弁79は、逆止弁77と逆止弁78との間の配管81の経路から流体を配管80を通じて給湯器100の外部へ排出可能である。
【0047】
また上記給湯器100のドレン排出経路は、2次熱交換器50A、50Bで生じたドレンを給湯器100の外部へ排出するための経路である。このドレン排出経路は、ドレンタンク86、配管85、87などにより構成されている。2次熱交換器50A、50Bで生じたドレンは配管85を通じてドレンタンク86に貯留可能である。ドレンタンク86内のドレンは、配管87を通じて給湯器100の外部へ排出可能である。
【0048】
なお上記燃焼装置60Aは、複数の燃焼領域BR1、BR2、BR3を有している。これらの燃焼領域BR1、BR2、BR3は、それぞれ互いに異なるタイミングあるいは、同時に燃焼動作を行なうことが可能である。
【0049】
具体的には、燃焼領域BR2は、燃焼領域BR1と異なるタイミングで燃焼動作が可能である。また燃焼領域BR3は、燃焼領域BR1、BR2の各々と異なるタイミングで燃焼動作が可能である。
【0050】
また燃焼装置60Bは、たとえば単一の燃焼領域BR4よりなっている。ただし燃焼装置60Bは、燃焼装置60Aと同様、複数の燃焼領域よりなっていてもよい。
【0051】
燃焼装置60A、60Bの各々には、ガス管65が接続されている。ガス管65は、燃焼装置60A、60Bの各々に燃料ガスを供給するためのものである。ガス管65には、元ガス電磁弁64およびガス比例弁63が接続されている。
【0052】
またガス管65は、たとえば4経路に分岐している。4経路の分岐したガス管65の各々は、燃焼領域BR1、BR2、BR3、BR4の各々に接続されている。分岐したガス管65の各々には、電磁弁62a〜62dの各々が接続されている。この電磁弁62a〜62dの各々の開閉動作によって、分岐したガス管65の各々への燃料ガスの供給を制御することができる。このように電磁弁62a〜62dの各々の開閉状態を独立に制御することで、燃焼領域BR1〜BR4の各々の燃焼状態を独立に調節することが可能である。
【0053】
〈羽根車を製造するための樹脂成形用金型〉
図6を参照しながら、本実施形態の羽根車の製造方法に用いられる樹脂成形用金型について説明する。
【0054】
図6に示される樹脂成形用金型200は、第1金型210と、第2金型220とを有する。樹脂成形用金型200内には、羽根車10の形状に対応するキャビティ230が形成されている。また樹脂成形用金型200内には、キャビティ230のうち、シュラウドに対応する位置、すなわち、シュラウド用キャビティに連通するように設けられた第1ゲート240aと、主板に対応する位置、すなわち、主板用キャビティに連通するように設けられた第2ゲート240bとが形成されている。
【0055】
また第1ゲート240aは、シュラウド用キャビティのうち羽根用キャビティとの接続部分の真上に位置する部分に配置されている。さらに、第1ゲート240aのそれぞれは、円環状のシュラウド用キャビティ上に周上に配置されており、第2ゲート240bのそれぞれは、円盤状の主板用キャビティ上に周上に配置されている。
【0056】
図6に示されるように、第1ゲート240aおよび第2ゲート240bは、それぞれピンゲートである。また本実施形態においては、第1ゲート240aの径方向の寸法W
1が、第2ゲート240bの径方向の寸法W
2よりも大きくなるように設計されている。
【0057】
図6において、第1金型210および第2金型220は、それぞれ一体として図示されるが、各金型は、たとえばエジェクターピンの配置を考慮し、複数の部材から構成されていてもよい。なお
図6においては、第1ゲート240aおよび第2ゲート240bから注入された樹脂が、キャビティ230を充填している状態が示されている。
【0058】
〈羽根車の製造方法〉
上述の樹脂成形用金型を用いて本実施形態の羽根車を製造する製造方法について説明する。
【0059】
まず、上記の樹脂成形用金型を準備する。次に、第1ゲート240aおよび第2ゲート240bからキャビティ230内に樹脂を注入する。
【0060】
これにより、第1ゲート240aを介してシュラウド用キャビティに流入した第1樹脂は、シュラウド用キャビティ内に充填されていく。第1樹脂のうち、シュラウド用キャビティを通過した第1樹脂は、羽根用キャビティに流入し、羽根用キャビティ内に充填されていく。第1樹脂のうち羽根用キャビティを通過した第1樹脂は、引き続き主板用キャビティに流入する。一方、第2ゲート240bを介して主板用キャビティに流入した第2樹脂は、主板用キャビティに充填されていく。
【0061】
ここで、第2樹脂が羽根用キャビティに流入しないように、すなわち、第1樹脂がシュラウド用キャビティおよび羽根用キャビティを充填するように、各樹脂の流入量および/または流入速度を制御することが好ましい。羽根車10におけるウェルドラインの発生位置を、羽根4ではなく、主板2とするためである。
【0062】
たとえば、任意の一の第1ゲート240aの寸法W
1が、任意の一の第2ゲート240bの寸法W
2よりも大きい場合、その一の第1ゲート240aから流入する第1樹脂の流量(ml/min)は、その一の第2ゲート240bから流入する第2樹脂の流量(ml/min)よりも大きくなる。また第1ゲート240aの数が第2ゲート240bの数よりも大きい場合、全ての第1ゲート240aから流入する第1樹脂の総流量は、全ての第2ゲート240bから流入する第2樹脂の総流量よりも大きくなる。なお、シュラウド用キャビティの体積および羽根用キャビティの体積の合計体積と、主板用キャビティの体積との比を考慮して、各樹脂の流入量を調整する必要がある。
【0063】
用いる樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、シンジオタクティックポリスチレン(SPS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリ四フッ化エチレン等のフッ素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート樹脂、メタクリルスチレン(MS)樹脂、メタクリル樹脂、AS樹脂(スチレンアクリロニトリルコポリマー)、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)を挙げることができる。また、繊維状のフィラーを含む樹脂を用いてもよい。フィラーとしては、ガラス繊維を挙げることができる。
【0064】
キャビティ230内の全てに樹脂が充填された後、樹脂の硬化を待って、樹脂成形用金型から樹脂成形体が取り出される。取り出された樹脂成形体のうち、第1ゲート240aおよび第2ゲート240bに充填されて硬化した部分を除去する。以上により、樹脂成形体である羽根車10が製造される。
【0065】
以上、本実施形態の羽根車10、羽根車10を備える給湯器100、羽根車10を製造するための樹脂成形用金型200、および羽根車10の製造方法について詳述した。
【0066】
このように、羽根車10は、樹脂成形用金型200を用いた上述の製造方法によって製造される樹脂成形体である。上述の製造方法によれば、通常、第1ゲート240aに充填されて硬化した樹脂の一部、および第2ゲート240bに充填されて硬化した樹脂の一部が、シュラウド1および主板2の各表面に残存する。各部分を完全に取り除くためには、緻密な研磨等が必要となり、製造コストの増大を引き起こすことから、産業的に実施されにくいためである。このような第1ゲート跡部1Dおよび第2ゲート跡部2Dは、目視により容易に確認することができる。
【0067】
また、樹脂が繊維状のフィラーを含む場合には、顕微鏡を用いて繊維状のフィラーの拡散状態を観察することにより、第1ゲート跡部1Dおよび第2ゲート跡部2Dの存在を確認することもできる。
【0068】
具体的には、まずシュラウド1を切断して、軸方向に略平行なシュラウド1の断面を含む試料を作製する。次に、顕微鏡を用いてその断面を観察する。樹脂が繊維状のフィラーを含む場合、樹脂成形用金型を用いる樹脂成形法においては、樹脂内のフィラーは、比較的狭い各ゲートから、比較的広いキャビティに向かって放射状に広がるように拡散されていく。このため、上記断面を観察した場合に、シュラウド1の表面にフィラーの集束点が存在し、該収束点から離れるにつれてそのフィラーが放射状に拡散している領域が確認された場合には、該収束点を第1ゲート跡部1Dとみなすことができる。
【0069】
同様に、主板2の断面を顕微鏡観察した際に、主板2の表面にフィラーの集束点が存在し、該収束点から離れるにつれてそのフィラーが放射状に拡散している領域が確認された場合には、該収束点を第2ゲート跡部2Dとみなすことができる。
【0070】
〈作用効果〉
本実施形態の作用効果について説明する。
【0071】
樹脂は、一般的に硬化する際に収縮する傾向がある。たとえば、樹脂成形用金型を用いて樹脂成形体を一体成形するにあたって、キャビティ内に充填される樹脂の密度が不均一であると、樹脂の収縮の程度もまた不均一となってしまう。特に、羽根車のような周方向に面積が広がる形状の樹脂成形体においては、樹脂の収縮が不均一となると、反りのような歪みが生じやすい傾向がある。羽根車における形状の歪みは、送風性能の低下を引き起こす。
【0072】
仮に、シュラウド用キャビティに通じるゲートのみを有する樹脂成形用金型を用いて羽根車10のような構成の羽根車を作製すると、ゲートと主板用キャビティとの距離が遠いために、主板用キャビティに十分に樹脂が充填されず、結果的に、主板に歪みが生じてしまう。
【0073】
これに対し、本実施形態の樹脂成形用金型200は、シュラウド用キャビティに通じる第1ゲート240aに加えて、主板用キャビティに通じる第2ゲート240bを備える。この樹脂成形用金型200を用いて羽根車10を一体成形した場合、第1ゲート240aを介してシュラウド用キャビティに第1樹脂が注入されるとともに、第2ゲート240bを介してシュラウド用キャビティ内に第2樹脂が注入されることとなる。
【0074】
このため、従来のような主板用キャビティにおける樹脂の充填が不均一および/または不十分となる現象が抑制されることとなり、結果的に、主板2のおける歪みの発生が抑制された羽根車10が製造されることとなる。したがって羽根車10は、安定的な送風性能を発揮することができる。
【0075】
また本実施形態の羽根車10において、第1ゲート跡部1Dは、シュラウド1の第1面1Aに位置し、第2ゲート跡部2Dは、主板2の第3面2Aに位置する。このような羽根車10は、
図6に示すように、第1金型側に第1ゲート240aおよび第2ゲート240bが配置された、簡素化された構造の樹脂成形用金型200によって製造することができる。したがって、本実施形態の羽根車10によれば、製造コストを低減することができる。
【0076】
また本実施形態の羽根車10において、シュラウドは開口部1Cを有し、羽根車10の軸方向から見た平面視において、主板2は、開口部1Cに内包される。これにより、樹脂成形用金型200の形状を簡素化することができ、もって羽根車10の製造コストを低減することができ、また製造歩留まりを向上させることができる。
【0077】
また本実施形態の羽根車10は、羽根車10の軸方向から見た平面視において、第2ゲート跡部2Dは、第1ゲート跡部1Dよりも軸心側に位置する。これにより、樹脂成形用金型200の形状を簡素化することができ、もって羽根車10の製造コストを低減することができ、また製造歩留まりを向上させることができる。
【0078】
また本実施形態の羽根車10がウェルドラインを有する場合、該ウェルドラインは主板に位置することが好ましい。
図2において、主板2がウェルドライン6を有する場合を図示している。ウェルドラインとは、樹脂成形用金型200のキャビティを流れる樹脂が合流した際に、合流する樹脂の表面がわずかに固化していることによって発生する細い線である。
【0079】
ウェルドラインが発生している位置は、ウェルドラインが発生していない他の位置と比して強度が低くなる傾向がある。羽根車10においては、その形状上、羽根4の強度はシュラウド1や主板2の強度と比して低い傾向がある。このため、ウェルドライン6が羽根4に位置している場合、これに起因する羽根4の強度低下に伴い、羽根4が破損することが懸念される。
【0080】
これに対し、羽根車10に存在するウェルドライン6が主板2に位置する場合、主板2の強度が比較的高いことから、ウェルドライン6に起因する破損の恐れはわずかである、またはない。このため、ウェルドライン6が主板2に位置する羽根車10は、ウェルドライン6に起因する破損の発生を抑制することができる。
【0081】
また本実施形態の羽根車10において、第1ゲート跡部1Dは、羽根4とシュラウド1との接続部の真上に位置する。これにより、製造時において、第1樹脂を羽根用キャビティ内に十分かつ均一に充填させることができ、もって羽根車10における羽根4の形状の均一性を高めることができる。羽根4の形状の均一性は、羽根車10の動バランス性の向上に結び付く。特に、第1ゲート跡部1Dの全てが、羽根4とシュラウド1との接続部の真上に位置することが好ましい。この場合、上記効果にさらに優れることとなる。
【0082】
また本実施形態の羽根車10において、第1ゲート跡部1Dの寸法W
1は、第2ゲート跡部2Dの寸法W
2よりも大きい。この場合、羽根車10の製造時において、第1ゲート240aから比較的高い流量で第1樹脂を注入し、第2ゲート240bから比較的低い流量で第2樹脂を注入することが容易となる。これにより、第1樹脂と第2樹脂との合流位置を、主板用キャビティとすることができる。したがって、羽根4にウェルドラインが存在する恐れを低減することができる。
【0083】
また本実施形態の羽根車10において、第1ゲート跡部1Dの数は、第2ゲート跡部2Dの数よりも大きい。すなわち、樹脂成形用金型200において、第1ゲート240aの数は、第2ゲート240bの数よりも大きい。この場合、第1ゲート240aからシュラウド用キャビティに流れ込む第1樹脂の流量を、第2ゲート240bから主板用キャビティに流れ込む第2樹脂の流量よりも大きくすることができる。これにより、第1樹脂と第2樹脂との合流位置を、主板用キャビティとすることができる。したがって、羽根4にウェルドラインが存在する恐れを低減することができる。
【0084】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。