(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記自身の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値と、並列に接続される前記他の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値との平均値を、前記他の電力変換装置が次回の有効電流指令値を生成するための情報として、前記他の電力変換装置に伝達するように構成されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された電力変換装置(電力変換システム)では、一方の電力変換器から他方の電力変換器に(または、他方の電力変換器から一方の電力変換器に)流れた横流の大きさに基づいて出力電圧指令値が変動するので、出力電圧を高精度に制御することが困難であるという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、横流が流れた場合でも、出力電圧を高精度に制御することが可能な電力変換装置および電力変換システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による電力変換装置は、負荷に接続されているとともに、互いに並列に接続される複数の電力変換装置のうちの一の電力変換装置であって、交流を直流に変換する電力変換部と、電力変換部に対する電流の指令値である有効電流指令値を生成する制御部とを備え、制御部は、自身の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値と、並列に接続される他の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値と
の平均値に基づいた値に第1補正ゲインを乗算した補正値を、電力変換部に対する直流電圧の指令値に加算する制御を行うことにより、自身の電力変換部に対する次回の有効電流指令値を生成するように構成されている。
【0010】
この発明の第1の局面による電力変換装置では、上記のように、制御部を、自身の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値と、並列に接続される他の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値とに基づいて、自身の電力変換部に対する次回の有効電流指令値を生成するように構成する。これにより、自身の電力変換装置に並列に接続される他の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値に基づいて、自身の電力変換装置に対する次回の有効電流指令値が生成されるので、自身の電力変換装置と他の電力変換装置との間において、電流分担のアンバランス化を抑制して、出力電流(出力電圧)のバランス化を図ることができる。したがって、他の電力変換装置から自身の電力変換装置に横流が流れる場合において、上記特許文献1のように、自身の電力変換装置と他の電力変換装置との間に流れる横流の大きさに基づいて出力電圧指令値を変動させる場合に比べて、出力電圧指令値の変動を抑制することができる。すなわち、横流が流れた場合でも、出力電圧を高精度に制御することができる。
【0011】
また、次回の有効電流指令値が、自身の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値と、並列に接続される他の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値との平均値に基づいて生成されるので、自身の電力変換装置と他の電力変換装置との間において、電流分担のアンバランス化を抑制して、出力電流のバランス化を容易に図ることができる。
また、自身の電力変換装置は、他の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値の情報に基づいて、自身の直流電圧の指令値を第1補正ゲインにより補正することができる。その結果、自身の電力変換装置と他の電力変換装置との間において、電流分担のアンバランス化を抑制して、出力電流のバランス化を効果的に行うことができる。
【0012】
この場合、好ましくは、制御部は、自身の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値と、並列に接続される他の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値との平均値を、他の電力変換装置が次回の有効電流指令値を生成するための情報として、他の電力変換装置に伝達するように構成されている。このように構成すれば、自身の電力変換装置に対する次回の有効電流指令値を生成するための、自身の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値と他の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値との平均値が、他の電力変換装置に伝達されるので、他の電力変換装置を自身の電力変換装置に追従するように制御することができる。これにより、自身の電力変換装置と他の電力変換装置との間において、電流分担のアンバランス化を抑制して、出力電流のバランス化をさらに容易に行うことができる。
【0013】
上記次回の有効電流指令値を他の電力変換装置に伝達する電力変換装置において、好ましくは、電力変換部は、PWM信号により制御されるように構成されており、制御部は、他の電力変換装置に対して、PWM信号を生成するためのキャリアの周期毎に通信を行うことにより、自身の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値と、並列に接続される他の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値との平均値を、他の電力変換装置が次回の有効電流指令値を生成するための情報として、他の電力変換装置に伝達するように構成されている。このように構成すれば、キャリアの周期毎の通信が、他の通信(RS−485などの通信規格)に比べて、比較的高速に行われるので、他の電力変換装置の制御(自身の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値と、並列に接続される他の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値との平均値によって、他の電力変換装置を制御すること)を高速に行うことができる。
【0015】
上記第1の局面による電力変換装置において、好ましくは、制御部は、
電力変換部に対する次回の有効電流指令値を生成する際に、自身の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値に対して第2補正ゲインを乗算した補正値に基づいて、次回の有効電流指令値を補正するフィードフォーワード制御を行うように構成されている。このように構成すれば、制御を乱す外的要因(電力変換装置に接続される負荷の急激な変動など)が発生した場合でも、フィードフォーワード制御(第2補正ゲイン)により、外的要因による電力の変化を次回の有効電流指令値に迅速に反映させることができる。その結果、外的要因による出力電圧の変動を抑制することができる。
【0016】
この発明の第2の局面による電力変換システムは、負荷に接続されているとともに、互いに並列に接続されるマスター電力変換装置とスレーブ電力変換装置とを備える電力変換システムであって、マスター電力変換装置は、自身から出力されている直流電流の検出値と、スレーブ電力変換装置から出力されている直流電流の検出値との平均値を算出するとともに、平均値に基づい
た値に補正ゲインを乗算した補正値を、交流を直流に変換する自身の電力変換部に対する直流電圧の指令値に加算する制御を行うことにより、自身の次回の有効電流指令値を生成し、スレーブ電力変換装置は、マスター電力変換装置から伝達される平均値の情報に基づいて、自身の次回の有効電流指令値を生成するように構成されている。
【0017】
この発明の第2の局面による電力変換システムでは、上記のように、マスター電力変換装置およびスレーブ電力変換装置の各々が、マスター電力変換装置から出力されている直流電流の検出値と、スレーブ電力変換装置から出力されている直流電流の検出値との平均値に基づいて、自身の次回の有効電流指令値を生成する。これにより、マスター電力変換装置とスレーブ電力変換装置との間において、電流分担のアンバランス化を抑制して、出力電流のバランス化を図ることができる。これにより、マスター電力変換装置とスレーブ電力変換装置との間において、横流が流れた場合でも、出力電圧を高精度に制御することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、横流が流れた場合でも、出力電圧を高精度に制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜
図7を参照して、本実施形態によるPWM整流器10および電力変換システム100の構成について説明する。なお、PWM整流器10は、特許請求の範囲の「電力変換装置」の一例である。
【0022】
本実施形態では、
図1に示すように、電力変換システム100は、マスター(電力変換装置)であるPWM整流器10aと、スレーブ(電力変換装置)であるPWM整流器10bとを備える。なお、PWM整流器10aは、特許請求の範囲の「自身の電力変換装置」および「マスター電力変換装置」の一例である。また、PWM整流器10bは、特許請求の範囲の「他の電力変換装置」および「スレーブ電力変換装置」の一例である。
【0023】
PWM整流器10aと、PWM整流器10bとは、互いに並列に接続されている。また、PWM整流器10aおよびPWM整流器10bは、電力系統1(3相交流電源)に接続されている。具体的には、2つのPWM整流器10は、各々、トランス2を介して電力系統1に接続されている。
【0024】
(マスターのPWM整流器)
次に、マスターのPWM整流器10aの構成について説明する。
【0025】
PWM整流器10aは、フィルタコンデンサ11を備えている。フィルタコンデンサ11は、トランス2を介して入力される電力系統1の交流電力のノイズを除去する機能を有する。また、フィルタコンデンサ11は、複数の相(U相、V相およびW相)に対応するように、複数(本実施形態では、3つ)設けられている。
【0026】
また、PWM整流器10aは、フィルタリアクトル12を備えている。フィルタリアクトル12は、後述するコンバータ13に含まれるスイッチのスイッチング動作などに起因する高周波などの電気的なノイズを除去する機能を有する。また、フィルタリアクトル12は、複数の相(U相、V相およびW相)に対応するように、複数(本実施形態では、3つ)設けられている。なお、コンバータ13は、特許請求の範囲の「電力変換部」の一例である。
【0027】
また、PWM整流器10aは、コンバータ13を備えている。コンバータ13は、トランス2を介して入力される電力系統1の交流電力を、直流電力に変換する機能を有する。コンバータ13は、たとえば、IGBTなどのスイッチング素子で構成されている。そして、後述する制御部15からのPWM信号に基づいてスイッチング素子がオンオフされることにより、所望の直流電力(直流電圧)が出力される。
【0028】
また、PWM整流器10aは、直流中間コンデンサ14を備えている。直流中間コンデンサ14は、コンバータ13の出力側に接続されている。また、PWM整流器10aの直流中間コンデンサ14は、他のPWM整流器10bの直流中間コンデンサ14に並列に接続されている。また、直流中間コンデンサ14には、負荷3が接続されている。すなわち、PWM整流器10aおよびPWM整流器10bと、負荷3とは接続されている。
【0029】
また、PWM整流器10aは、制御部15を備えている。制御部15は、コンバータ13に対する電流の指令値である有効電流指令値Id
*2(
図2参照)を生成するように構成されている。
【0030】
(マスターのPWM整流器の制御部)
次に、
図2を参照して、マスターのPWM整流器10aの制御部15の構成(制御動作)について説明する。
【0031】
まず、通常(従来)のPWM整流器10aでは、直流電圧指令値Edc
*1と、図示しない電圧検出部により検出されたPWM整流器10aの直流電圧検出値Edc1とが、減算器15aに入力される。そして、直流電圧指令値Edc
*1と直流電圧検出値Edc1との差分が直流電圧制御部15bに入力される。そして、直流電圧制御部15bから、有効電流指令値Id
*1が、コンバータ13に出力される。なお、直流電圧指令値Edc
*1は、特許請求の範囲の「直流電圧の指令値」の一例である。
【0032】
ここで、本実施形態では、制御部15は、自身(マスター)のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1と、並列に接続される他方(スレーブ)のPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2とに基づいて、自身のPWM整流器10aに対する次回の有効電流指令値Id
*2を生成するように構成されている。具体的には、制御部15は、自身のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1と、並列に接続される他のPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc1との平均値(=(Idc1+Idc2)/2)に基づいて、自身のコンバータ13に対する次回の有効電流指令値Id
*2を生成する。なお、直流電流検出値Idc1、および、直流電流検出値Idc2は、それぞれ、特許請求の範囲の「自身の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値」および「他の電力変換装置から出力されている直流電流の検出値」の一例である。
【0033】
詳細には、自身(マスター)のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1と、並列に接続される他方(スレーブ)のPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2とが、加算器15cに入力されて加算される。そして、加算器15cからの出力(=Idc1+Idc2)が、除算器15dに入力されて、2で除算(=(Idc1+Idc2)/2)される。これにより、直流電流検出値Idc1と直流電流検出値Idc2との平均値(直流電流指令値Idc
*1)が算出される。
【0034】
また、本実施形態では、制御部15は、除算器15dにより算出された、直流電流検出値Idc1と直流電流検出値Idc2との平均値(直流電流指令値Idc
*1)に基づいた値に補正ゲイン(K1)を乗算した補正値を、コンバータ13に対する直流電圧指令値Edc
*1に加算する制御を行う。具体的には、除算器15dからの出力である直流電流指令値Idc
*1と、自身(マスター)のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1とが減算器15eに入力される。そして、減算器15eからの出力(直流電流指令値Idc
*1と直流電流検出値Idc1との差分)が、ゲイン乗算器15fに入力されて、ゲインK1が乗算される。そして、ゲイン乗算器15fからの出力と、直流電圧指令値Edc
*1とが加算器15gに入力されて加算され、直流電圧指令値Edc
*2が生成される。なお、ゲインK1は、特許請求の範囲の「第1補正ゲイン」の一例である。
【0035】
次に、加算器15gからの直流電圧指令値Edc
*2と、自身(マスター)のPWM整流器10aの直流電圧検出値Edc1とが、減算器15aに入力される。そして、直流電圧指令値Edc
*2と直流電圧検出値Edc1との差分が直流電圧制御部15bに入力され、有効電流指令値Id
*1が生成される。
【0036】
ここで、本実施形態では、制御部15は、自身のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1に対して、補正ゲイン(K2)を乗算した補正値に基づいて、次回の有効電流指令値Id
*2を補正するフィードフォーワード制御を行うように構成されている。具体的には、自身のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1が、ゲイン乗算器15hに入力されて、ゲインK2が乗算される。ゲインK2は、たとえば、1よりも小さい値である。これにより、ゲイン乗算器15hからの出力(ゲインK2が乗算された直流電流検出値Idc1)が、過度に大きくならないので、PWM整流器10a(制御部15による制御)のロバスト性(制御を乱す外的要因によって変化することを阻止する性質)を向上させることが可能になる。なお、ゲインK2は、特許請求の範囲の「第2補正ゲイン」の一例である。
【0037】
そして、ゲイン乗算器15hからの出力と、直流電流指令値Idc
*1とが加算器15iに入力されて加算され、有効電流指令値Id
*2が生成される。
【0038】
また、本実施形態では、制御部15は、自身のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1と並列に接続される他のPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2との平均値(直流電流指令値Idc
*1)を、他のPWM整流器10bが次回の有効電流指令値Id
*2を生成するための情報として、他のPWM整流器10bに伝達するように構成されている。具体的には、制御部15は、他のPWM整流器10bに対して、コンバータ13を制御するPWM信号を生成するためのキャリアの周期毎に通信を行うことにより、直流電流指令値Idc
*1を、他のPWM整流器10bに伝達するように構成されている。
【0039】
図3に示すように、PWM制御では、キャリア波と呼ばれる三角波(w1)と、基本波に使用する信号波(w2)とを比較して、スイッチング素子のオンオフ信号が得られる。つまり、信号波(w2)が三角波(w1)よりも大きい場合、スイッチング素子をオンする信号が得られ、信号波(w2)が三角波(w1)よりも小さい場合、スイッチング素子をオフする信号が得られる。スイッチング素子がオンされている間に、パルス波であるPWM信号が出力される。そして、制御部15は、このキャリア波(三角波)の1周期T毎に、PWM整流器10bと通信を行うように構成されている。
【0040】
(スレーブのPWM整流器)
次に、スレーブのPWM整流器10bの構成について説明する。
【0041】
図1に示すように、スレーブのPWM整流器10bの構成は、制御部25の構成を除き、マスターのPWM整流器10aと同様である。すなわち、スレーブのPWM整流器10bは、フィルタコンデンサ11、フィルタリアクトル12、コンバータ13、および、直流中間コンデンサ14を備えている。
【0042】
(スレーブのPWM整流器の制御部)
次に、
図4を参照して、スレーブのPWM整流器10bの制御部25の構成(制御動作)について説明する。
【0043】
図4に示すように、スレーブのPWM整流器10bの制御部25は、減算器25a、直流電圧制御器25b、減算器25e、ゲイン乗算器25f、加算器25g、ゲイン乗算器25h、および、加算器25iを備えている。一方、制御部25は、マスターのPWM整流器10aの制御部15と異なり、直流電流検出値Idc1と直流電流検出値Idc2とを加算する加算器15c(
図2参照)と、加算器15cからの出力を除算する除算器15dとが設けられていない。そこで、制御部25では、減算器25eには、PWM整流器10aの制御部15によって生成された直流電流指令値Idc
*1が入力される。
【0044】
また、減算器25eには、スレーブのPWM整流器10bの直流電流検出値Idc2が入力される。また、加算器25gには、スレーブのPWM整流器10bの直流電圧指令値Edc
*11が入力される。また、減算器25aには、スレーブのPWM整流器10bの直流電圧検出値Edc2が入力される。また、ゲイン乗算器25hには、スレーブのPWM整流器10bの直流電流検出値Idc2が入力される。
【0045】
なお、制御部25のその他の構成および動作は、上記制御部15と同様である。
【0046】
次に、
図1および
図5を参照して、PWM整流器10aおよびPWM整流器10bの動作について説明する。
【0047】
図5に示すように、PWM整流器10aと負荷3との間の距離(配線の長さ)と、PWM整流器10bと負荷3との間の距離(配線の長さ)とが略等しい場合、PWM整流器10aと負荷3との間の配線インピーダンスと、PWM整流器10bと負荷3との間の配線インピーダンスとは、略等しい。
【0048】
また、PWM整流器10aの直流電流指令値Idc
*1(
図2参照)は、PWM整流器10bに伝達されているので、PWM整流器10aの出力電流(直流電流検出値Idc1)とPWM整流器10bの出力電流(直流電流検出値Idc2)とは略等しくなるように調整される。
【0049】
したがって、PWM整流器10aと負荷3との間における電圧降下量と、PWM整流器10bと負荷3との間における電圧降下量とは略等しくなる。この場合、PWM整流器10aの出力電圧(直流電圧検出値Edc1)と、PWM整流器10bの出力電圧(直流電圧検出値Edc2)とは、略等しくなるように調整されている。これにより、PWM整流器10aの負荷3の負荷端における出力電圧と、PWM整流器10bの負荷3の負荷端における出力電圧とは略等しくなる。
【0050】
一方、
図1に示すように、PWM整流器10aと負荷3との間の距離(配線の長さ)と、PWM整流器10bと負荷3との間の距離(配線の長さ)とが異なる(PWM整流器10aと負荷3との間の距離の方が大きい)場合、PWM整流器10aと負荷3との間の配線インピーダンスは、PWM整流器10bと負荷3との間の配線インピーダンスよりも大きくなる。
【0051】
ここで、PWM整流器10aの出力電流(直流電流検出値Idc1)とPWM整流器10bの出力電流(直流電流検出値Idc2)とは略等しくなるように制御されているので、PWM整流器10aと負荷3との間における電圧降下量は、PWM整流器10bと負荷3との間における電圧降下量よりも大きい。この場合、PWM整流器10aの出力電圧(直流電圧検出値Edc1)は、PWM整流器10bの出力電圧(直流電圧検出値Edc2)よりも、電圧降下量の差の分だけ大きくなるように調整されている。これにより、PWM整流器10aの負荷3の負荷端における出力電圧と、PWM整流器10bの負荷3の負荷端における出力電圧とは略等しくなる。
【0052】
ここで、上記のPWM整流器10aの出力電圧(直流電圧検出値Edc1)、および、PWM整流器10bの出力電圧(直流電圧検出値Edc2)の調整方法について、PWM整流器10aと負荷3との間の距離の方が大きい場合(
図1参照)を例にして以下に説明する。
【0053】
たとえば、PWM整流器10aの出力電圧(直流電圧検出値Edc1)が、PWM整流器10bの出力電圧(直流電圧検出値Edc2)と略同等であるとすると、PWM整流器10aの負荷端における出力電圧は、PWM整流器10bの負荷端における出力電圧よりも(電圧降下量の差の分だけ)小さくなる。その結果、PWM整流器10bからの出力電流(直流電流検出値Idc2)が、PWM整流器10aからの出力電流(直流電流検出値Idc1)よりも大きくなる。このため、PWM整流器10aからの出力電流(直流電流検出値Idc1)が小さくなる。その結果、減算器15e(
図2参照)の出力が正になり、PWM整流器10aの直流電圧指令値Edc
*2(
図2参照)が直流電圧指令値Edc
*1(
図2参照)に対して大きくなる。この制御により、PWM整流器10aの出力電圧(直流電圧検出値Edc1)が、PWM整流器10bの出力電圧(直流電圧検出値Edc2)よりも、電圧降下量の差の分だけ大きくなるように調整される。
【0054】
(シミュレーション)
次に、
図6および
図7を参照して、本実施形態の制御部15(制御部25)による制御(直流電流制御)を行った場合のシミュレーションについて説明する。
【0055】
(比較例)
(直流電流制御なし)
図6(a)に示すように、従来のように直流電流制御を行わない場合では、自身(マスター)のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1と、他(スレーブ)のPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2とは、時間の経過とともに互いに異なる値で安定する。
【0056】
(直流電流制御あり)
図6(b)に示すように、直流電流制御を行う場合では、自身(マスター)のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1と、他(スレーブ)のPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2とは、時間の経過とともに略同等の値で安定する。この結果、自身(マスター)のPWM整流器10aと、他(スレーブ)のPWM整流器10bとの偏差は略ゼロになるので、直流電圧指令値Edc
*2の変動が比較的小さくなることを確認した。
【0057】
(比較例)
(フィードフォワード制御なし)
図7(a)に示すように、従来のようにフィードフォワード制御を行わない場合(PI制御のみが行われる場合)では、急峻な負荷変動等が生じた場合、直流電圧検出値EdcはV1だけ降下し、その後、元の電圧値に戻る。この結果、外的要因による出力電圧の変動が比較的大きいことが確認された。
【0058】
(フィードフォワード制御あり)
図7(b)に示すように、フィードフォワード制御を行う場合では、急峻な負荷変動等が生じた場合、直流電圧検出値Edcは、V1よりも小さいV2だけ降下し、その後、元の電圧値に戻る。この結果、外的要因による出力電圧の変動が抑制され、出力電圧の変動が比較的小さいことが確認された。
【0059】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0060】
本実施形態では、上記のように、制御部15が、自身のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1と、並列に接続される他のPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2とに基づいて、自身のコンバータ13に対する次回の有効電流指令値Id
*2を生成するように、PWM整流器10を構成する。これにより、自身のPWM整流器10aに並列に接続される他のPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2に基づいて、自身のPWM整流器10aに対する次回の有効電流指令値Id
*2が生成されるので、自身のPWM整流器10aと他のPWM整流器10bとの間において、電流分担のアンバランス化を抑制して、出力電流(出力電圧)のバランス化を図ることができる。したがって、他のPWM整流器10bから自身のPWM整流器10aに横流が流れる場合において、自身のPWM整流器10aと他のPWM整流器10bとの間に流れる横流の大きさに基づいて直流電圧指令値Edc
*2を変動させる場合に比べて、直流電圧指令値Edc
*2の変動を抑制することができる。すなわち、横流が流れた場合でも、出力電圧(直流電圧検出値Edc1)を高精度に制御することができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記のように、制御部15が、自身のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1と、並列に接続される他のPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2との平均値に基づいて、自身のコンバータ13に対する次回の有効電流指令値Id
*2を生成するように、PWM整流器10を構成する。これにより、次回の有効電流指令値Id
*2が、自身のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1と、並列に接続される他のPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2との平均値に基づいて生成されるので、自身のPWM整流器10aと他のPWM整流器10bとの間において、電流分担のアンバランス化を抑制して、出力電流のバランス化を容易に図ることができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、制御部15が、自身のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1と、並列に接続される他のPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2との平均値を、他のPWM整流器10bが次回の有効電流指令値Id
*2を生成するための情報として、他のPWM整流器10bに伝達するように、PWM整流器10を構成する。これにより、自身のPWM整流器10aに対する次回の有効電流指令値Id
*2を生成するための、自身のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1と他のPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2との平均値が、他のPWM整流器10bに伝達されるので、他のPWM整流器10bを自身のPWM整流器10aに追従するように制御することができる。その結果、自身のPWM整流器10aと他のPWM整流器10bとの間において、電流分担のアンバランス化を抑制して、出力電流のバランス化をさらに容易に行うことができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、制御部15が、他のPWM整流器10bに対して、PWM信号を生成するためのキャリアの周期毎に通信を行うことにより、自身のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1と、並列に接続される他のPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2との平均値を、他のPWM整流器10bが次回の有効電流指令値Id
*2を生成するための情報として、他のPWM整流器10bに伝達するように、PWM整流器10を構成する。これにより、キャリアの周期毎の通信が、他の通信(RS−485などの通信規格)に比べて、比較的高速に行われるので、他のPWM整流器10bの制御(自身のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1と、並列に接続される他のPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2との平均値によって、他のPWM整流器10bを制御すること)を高速に行うことができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、制御部15が、自身のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1と、並列に接続される他のPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2との平均値に基づいた値にゲインK1を乗算した補正値を、コンバータ13に対する直流電圧指令値Edc
*1に加算する制御を行うように、PWM整流器10を構成する。これにより、自身のPWM整流器10aは、他のPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2の情報に基づいて、自身の直流電圧指令値Edc
*1をゲインK1により補正することができる。その結果、自身のPWM整流器10aと他のPWM整流器10bとの間において、電流分担のアンバランス化を抑制して、出力電流のバランス化を効果的に行うことができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、制御部15が、自身のPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1に対してゲインK2を乗算した補正値に基づいて、次回の有効電流指令値Id
*2を補正するフィードフォーワード制御を行うように、PWM整流器10を構成する。これにより、制御を乱す外的要因(PWM整流器10に接続される負荷3の急激な変動など)が発生した場合でも、フィードフォーワード制御(ゲインK2)により、外的要因による電力の変化を次回の有効電流指令値Id
*2に迅速に反映させることができる。その結果、外的要因による出力電圧の変動を抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、マスターのPWM整流器10aが、自身から出力されている直流電流検出値Idc1と、スレーブのPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2との平均値を算出するとともに、平均値に基づいて、自身の次回の有効電流指令値Id
*2を生成し、スレーブのPWM整流器10bが、マスターのPWM整流器10aから伝達される平均値の情報に基づいて、自身の次回の有効電流指令値Id
*2を生成するように、電力変換システム100を構成する。これにより、マスターのPWM整流器10aおよびスレーブのPWM整流器10bの各々が、マスターのPWM整流器10aから出力されている直流電流検出値Idc1と、スレーブのPWM整流器10bから出力されている直流電流検出値Idc2との平均値に基づいて、自身の次回の有効電流指令値Id
*2を生成する。その結果、マスターのPWM整流器10aとスレーブのPWM整流器10bとの間において、電流分担のアンバランス化を抑制して、出力電流のバランス化を図ることができる。これにより、マスターのPWM整流器10aとスレーブのPWM整流器10bとの間において、横流が流れた場合でも、出力電圧(直流電圧検出値Edc1および直流電圧検出値Edc2)をより高精度に制御することができる。
【0067】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0068】
たとえば、上記実施形態では、他の電力変換装置(PWM整流器10b)が1台だけ設けられている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、他の電力変換装置(PWM整流器10b)が2台以上設けられていてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、自身の電力変換装置(PWM整流器10a)から出力されている直流電流検出値Idc1と、並列に接続される他の電力変換装置(PWM整流器10b)から出力されている直流電流検出値Idc2との平均値に基づいて、有効電流指令値Id
*2を生成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、直流電流検出値Idc1と直流電流検出値Idc2とに基づいて、平均値以外(たとえば、比率)の値を算出し、有効電流指令値Id
*2を生成してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、自身の電力変換装置(PWM整流器10a)の制御部15によって算出された平均値を、他の電力変換装置(PWM整流器10b)に伝達する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、他の電力変換装置(PWM整流器10b)の制御部25自身が平均値を算出してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、電力変換システム100は、電力変換装置として、PWM整流器10を備えている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、電力変換システム100が、PWM整流器10以外の電力変換装置を備えていてもよい。