(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のゲート電極、第1の絶縁膜、酸化物半導体からなるチャネル層、第2の絶縁膜、第2のゲート電極、パッシベーション膜、ソース電極及びドレイン電極がこの順序で形成された薄膜トランジスタにおいて、
第1の絶縁膜とチャネル層との界面で、前記第1のゲート電極とチャネル層とが重なる領域に形成された第1のチャネル領域と、
第2の絶縁膜とチャネル層との界面で、前記第2のゲート電極とチャネル層とが重なる領域に形成された第2のチャネル領域と
を備え、
前記ソース電極及びドレイン電極は、前記第2のチャネル領域以外のチャネル層と接するように間隙を間にして並置してあり、
前記第1のチャネル領域における前記ソース電極及びドレイン電極の並置方向の長さを第1のチャネル長とし、前記第2のチャネル領域における前記並置方向の長さを第2のチャネル長とした場合、
前記第2のチャネル長が、前記第1のチャネル長よりも長く、かつ、
前記第1のゲート電極に印加される電位が、前記ソース電極又は前記ドレイン電極の電位のうちの低い方の電位以上である薄膜トランジスタを含むスイッチング素子及び表示素子をそれぞれ有し、2次元的に配列した複数の画素と、
前記スイッチング素子の前記第2のゲート電極に、前記スイッチング素子の前記ソース電極又は前記ドレイン電極の電位のうちの低い方の電位を印加する印加回路と
を備えることを特徴とする表示装置。
第1のクロック信号と出力端子とを接続する前記薄膜トランジスタで構成した第1の薄膜トランジスタと、前記出力端子と電源とを接続する前記薄膜トランジスタで構成した第2の薄膜トランジスタとを駆動する
ことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の薄膜トランジスタの駆動方法。
容量と、前記容量の電圧に応じた電流を備える有機発光層に流す前記薄膜トランジスタで構成した駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタの動作を制御する前記薄膜トランジスタで構成したスイッチングトランジスタとを駆動する
ことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の薄膜トランジスタの駆動方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
なお、明細書、特許請求の範囲における“第1”、“第2”等の序数は、要素間の関係を明確にするため、及び要素間の混同を防ぐために付している。したがって、これらの序数は、要素を数的に限定しているものではない。
【0012】
また、各図面における各構成要素の大きさや縮尺は、図の視認性を確保するために適宜変更して記載している。また、各図面におけるハッチングは、各構成要素を区別するためのものであり、必ずしも切断面を意味するものではない。
【0013】
さらに、“電極”や“配線”、“端子”という用語は、これらの構成要素を機能的に限定していない。例えば、“端子”、“配線”は”電極”の一部として利用されることも可能である。また、逆に、“電極”、“端子”は“配線”の一部として利用されることも可能である。また、逆に、“電極”、“配線”は“端子”の一部として利用されることも可能である。
【0014】
(実施の形態1)
図1は酸化物TFT1の第1の実施の形態に係る構成例を示す断面図である。酸化物TFT1は基板11、ボトムゲート電極12、ゲート絶縁膜13、酸化物半導体層14、エッチストップ膜15、ソース及びドレイン電極16、パッシベーション膜17、並びにトップゲート電極18を含む。
図2は酸化物TFT1の第1の実施の形態に係る構成例を示す平面図である。
図2においては、ボトムゲート電極12、酸化物半導体層14、エッチストップ膜15、ソース及びドレイン電極16、並びにトップゲート電極18を示している。なお、ソース及びドレイン電極16、トップゲート電極18、ボトムゲート電極12は、図示しないコンタクトホールを通し外部の回路と接続している。
【0015】
酸化物TFT1は、
図1に示すように、基板11上に、ボトムゲート電極12、ゲート絶縁膜13、酸化物半導体層14、エッチストップ膜15、ソース及びドレイン電極16、パッシベーション膜17、並びにトップゲート電極18が、この記載順で積層されている。
【0016】
基板11は矩形板状をなす。基板11はガラス基板などの絶縁性基板である。
【0017】
ボトムゲート電極12はモリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、又は銀(Ag)などの金属により形成する。ボトムゲート電極12をこれらの金属を積層して形成しても良い。また、ボトムゲート電極12を銅合金、アルミニウム合金、又は銀合金を用いて形成しても良い。トップゲート電極18もボトムゲート電極12と同様に形成する。
【0018】
ゲート絶縁膜13は例えば、酸化シリコン(Si0
2)又は窒化シリコン(Si
3N
4)で形成する。ゲート絶縁膜13を酸化シリコンと窒化シリコンとを積層したものとしても良い。また、ゲート絶縁膜13を酸化アルミニウム又は酸化タンタルを用いて形成しても良い。エッチストップ膜15及びパッシベーション膜17も、ゲート絶縁膜13と同様に形成する。
【0019】
酸化物半導体層14はIGZOなど酸化物半導体により形成された層である。IGZOは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、酸素(O)の化合物である。酸化物半導体層14はインジウム、亜鉛及び酸素の化合物(In−Zn−O)、インジウム、ガリウム、及び酸素の化合物(In−Ga−O)、又はインジウム、シリコン、及び酸素の化合物(In−Si−O)で形成しても良い。
【0020】
ソース及びドレイン電極16は2つの電極161及び電極162を含む。酸化物TFT1の動作状態により、2つの電極161及び電極162の一方の電極がソース電極として機能し、他方の電極がドレイン電極として機能する。すなわち、電極161がソース電極として、電極162がドレイン電極として機能する場合と、電極161がドレイン電極、電極162がソース電極として機能する場合がある。以降の説明においては、便宜上、電極161をソース電極161と呼び、電極162をドレイン電極162と呼ぶ。ソース電極161及びドレイン電極162は略同一形状をなしている。
図1及び
図2に示すように、ソース電極161とドレイン電極162は間隙を間にして並置してある。ソース及びドレイン電極16は、モリブデン、チタン、タングステン又はアルミニウムなどで形成する。ソース及びドレイン電極16をモリブデン合金、チタン合金、アルミニウム合金、銅合金などで形成しても良い。ソース及びドレイン電極16を複数の単体の金属又は合金を積層して形成しても良い。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態における酸化物TFT1において、エッチストップ膜15の紙面横方向の長さ(以降、横幅という。)は、酸化物半導体層14の横幅よりも小さくなっている。ソース電極161とドレイン電極162との間隙の横幅は、エッチストップ膜15の横幅よりも小さくなっている。そのため、
図1に示すように、ソース電極161及びドレイン電極162は断面視で階段状になっている。このように、本実施の形態における酸化物TFT1は、エッチストップ型のTFTである。酸化物TFT1において、酸化物半導体層14にチャネル層が形成される。なお、
図1において、ゲート電極12の横幅は、酸化物半導体層14の横幅よりも狭くなっているが、それに限らない。ゲート電極12の横幅が、酸化物半導体層14の横幅より広くても良い。
【0022】
また、酸化物TFT1において、トップゲート電極18の横幅は、ソース電極161とドレイン電極162との間隙の横幅よも大きくなっている。ボトムゲート電極12の横幅は、エッチストップ膜15の横幅よりも広くなっている。酸化物半導体層14において、ゲート絶縁膜13との界面の一部に、第1のチャネル領域141が形成される。より具体的には、平面視でエッチストップ膜15と重なる界面の領域が第1のチャネル領域141となる。第1のチャネル領域141はボトムゲート電極12の電圧により、キャリア密度を制御可能な領域である。また、酸化物半導体層14において、エッチストップ膜15との界面の一部に、第2のチャネル領域142が形成される。より具体的には、平面視でソース電極161とドレイン電極162の間隙に重なる界面の領域が第2のチャネル領域142となる。第2のチャネル領域142はトップゲート電極18の電圧により、キャリア密度を制御可能な領域である。第1のチャネル領域141において
、図1及び
図2の紙面横方向の長さLBを第1のチャネル長という。第2のチャネル領域142において
図1及び図2の紙面横方向の長さL
Tを第2のチャネル長という。
図1及び
図2に示すように、本実施の形態の酸化物TFT1において、第2のチャネル長LTは第1のチャネル長LBよりも短くなっている。
【0023】
本実施の形態において、以上のように構成された酸化物TFT1を駆動する際には、トップゲート電極18には、ソース電極161の電位Vs又はドレイン電極162の電位Vdの電位のうち低い方の電位以上の電位を印加する。トップゲート電極18の電位をVtgと表す。上述した本実施の形態における酸化物TFT1の特徴を式で表現すると、以下の式(1)
かつ(2)
、または、式(1)かつ(3)となる。
【0024】
L
B>L
T … (1)
但し、
L
B:第1のチャネル長
L
T:第2のチャネル長
【0025】
Vtg≧Vs かつ Vs<Vd … (2)
Vtg
≧Vd かつ Vs>Vd … (3)
但し
Vtg:トップゲート電極18の電位
Vs:ソース電極161の電位
Vd:ドレイン電極162の電位
【0026】
酸化物TFT1において、チャネル層の第1の面は第1の絶縁膜と接している。チャネル層は酸化物半導体層14の界面に形成される。第1の絶縁膜の一例がゲート絶縁膜13である。また、チャネル層の第2の面は第2の絶縁膜と接している。第2の絶縁膜の一例はエッチストップ膜15である。第2の絶縁膜は他の例はエッチストップ膜15及びエッチストップ膜15の上面に接するように形成されたパッシベーション膜17である。また、酸化物TFT1の動作時に、第1のゲート電極により、第1の絶縁膜のチャネル層との第1の界面に第1のチャネル領域が形成される。第1のゲート電極の一例がボトムゲート電極12である。また、第2のゲート電極により、第2の絶縁膜のチャネル層との第2の界面に第2のチャネル領域が形成される。第2のゲート電極の一例がトップゲート電極18である。
【0027】
本実施の形態では以下の効果を奏する。トップゲート電極18の電位Vtgがソース電極161の電位Vs又はドレイン電極162の電位Vdのうちの低い方の電位以上となるように、酸化物TFT1を駆動する。それにより、酸化物TFT1上に電荷が発生しても、初期特性は安定する。具体的には酸化物TFT1がオフからオンに切り替わるゲート電圧の変動、すなわち閾値電圧の変動を抑制することが可能となる。
【0028】
酸化物TFT1にプラスゲートストレスが掛かっている場合、トップゲート電極18の電位Vtgがソース電極161の電位Vs又はドレイン電極162の電位Vdのうちの低い方の電位未満であると、閾値電圧の変動が加速される傾向がある。しかし、本実施の形態においては、VtgをVs又はVdのうちの低い方の電位以上とすることにより、閾値電圧の変動を抑制することが可能となる。すなわち、酸化物TFT1の動作信頼性が向上する。
【0029】
プラスゲートストレスとは、プラスゲートストレスとは、ソース又はドレイン電極の電位以上の電位がゲート電極に印加されている状態(バイアス状態)などを言う。例えば、ゲート電極にハイレベルの電圧が印加され、ソース又はドレイン電極にローレベルの電圧が印加されている状態などである。プラスゲートストレスにより、閾値電圧がシフトすることが知られている。
【0030】
(実施の形態2)
図3は酸化物TFT1の第2の実施の形態に係る構成例を示す断面図である。酸化物TFT1は基板11、ボトムゲート電極12、ゲート絶縁膜13、酸化物半導体層14、ソース及びドレイン電極16、パッシベーション膜17、並びにトップゲート電極18を含む。
図4は酸化物TFT1の第2の実施の形態に係る構成例を示す平面図である。
図4においては、ボトムゲート電極12、酸化物半導体層14、ソース及びドレイン電極16、及びトップゲート電極18を示している。
図3及び
図4において、実施の形態1と同様な機能を持つ構成要素には同一の符号を付与している。以下の説明においては、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
【0031】
酸化物TFT1は、
図3に示すように、基板11上に、ボトムゲート電極12、ゲート絶縁膜13、酸化物半導体層14、ソース及びドレイン電極16、パッシベーション膜17、並びにトップゲート電極18が、この記載順で積層されている。
【0032】
ソース及びドレイン電極16は2つの電極161及び電極162を含む。実施の形態1と同様に、便宜上、電極161をソース電極161と呼び、電極162をドレイン電極162と呼ぶ。ソース電極161及びドレイン電極162は略同一形状をなしている。
図3及び
図4に示すように、ソース電極161とドレイン電極162は間隙を間にして並置してある。
【0033】
図3に示すように本実施の形態における酸化物TFT1において、ボトムゲート電極12の横幅(紙面横方向の長さ)は酸化物半導体層14の横幅よりも小さくなっている。トップゲート電極18の横幅はソース電極161とドレイン電極162との間隙の横幅よりも小さくなっている。言い換えれば、トップゲート電極18の長さが、ソース電極161とドレイン電極162のエッジ間の長さよりも短くなっている。このように、本実施の形態における酸化物TFT1は、チャネルエッチ型のTFTである。酸化物TFT1において、酸化物半導体層14がチャネル層である。パッシベーション膜17が第2の絶縁膜の一例である。本実施の形態において、第2の絶縁膜は単一の工程で形成された単層膜である。なお、
図3において、ゲート電極12の横幅は、酸化物半導体層14の横幅よりも狭くなっているが、それに限らない。ゲート電極12の横幅が、酸化物半導体層14の横幅より広くても良い。
【0034】
酸化物半導体層14において、ゲート絶縁膜13との界面の一部に、第1のチャネル領域141が形成される。より具体的には、平面視でソース電極161とドレイン電極162との間隙と重なる界面の領域が第1のチャネル領域141となる。また、酸化物半導体層14において、パッシベーション膜17との界面の一部に、第2のチャネル領域142が形成される。より具体的には、平面視でトップゲート電極18に重なる界面の領域が第2のチャネル領域142となる。
【0035】
実施の形態1と同様に、第1のチャネル領域のチャネル長を第1のチャネル長L
B、第2のチャネル領域のチャネル長を第2のチャネル長L
Tとする。本実施の形態において、第1のチャネル長L
Bはソース電極161とドレイン電極162との間隙の横幅と等しい。第2のチャネル長L
Tはトップゲート電極18の横幅と等しい。実施の形態1と同様に、本実施の形態の酸化物TFT1において、第2のチャネル長L
Tは第1のチャネル長L
Bよりも短くなっている。
【0036】
また、本実施の形態において、酸化物TFT1を駆動する際には、実施の形態1と同様に、トップゲート電極18にソース電極161の電位Vs又はドレイン電極Vdの内の低い方の電位以上の電位を印加する。
【0037】
本実施の形態は、実施の形態1と同様な次の2つの構成を採用している。すなわち、1)第2のチャネル長L
Tは第1のチャネル長L
Bよりも短い構成と、2)駆動する際、トップゲート電極18にVs又はVdのうちの低い方の電位以上の電位を印加する構成とを採用している。そのため実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0038】
(実施の形態3)
図5は酸化物TFT1の第3の実施の形態に係る構成例を示す断面図である。酸化物TFT2は基板21、ボトムゲート電極22、ゲート絶縁膜23、酸化物半導体層24、層間絶縁膜25、トップゲート電極26、パッシベーション膜27、並びにソース及びドレイン電極28を含む。
図6は酸化物TFT1の第3の実施の形態に係る構成例を示す平面図である。
図6においては、ボトムゲート電極22、酸化物半導体層24、トップゲート電極26、並びにソース及びドレイン電極28を示している。
【0039】
酸化物TFT2は、
図5に示すように、基板21上に、ボトムゲート電極22、ゲート絶縁膜23、酸化物半導体層24、層間絶縁膜25、トップゲート電極26、パッシベーション膜27、並びにソース及びドレイン電極28が、この記載順で積層されている。
【0040】
基板21は矩形板状をなす。基板21はガラス基板などの絶縁性基板である。
【0041】
ボトムゲート電極12及びトップゲート電極26は、実施の形態1のボトムゲート電極12、トップゲート電極18と同様な材料で形成する。ゲート絶縁膜23、層間絶縁膜25、及びパッシベーション膜27は、実施の形態1のゲート絶縁膜13と同様な材料で形成する。酸化物半導体層24は、実施の形態1の酸化物半導体層14と同様な材料で形成する。
【0042】
ソース及びドレイン電極28は2つの電極281及び電極282を含む。酸化物TFT2の動作状態により、2つの電極281及び電極282の一方の電極がソース電極として機能し、他方の電極がドレイン電極として機能する。すなわち、電極281がソース電極として、電極282がドレイン電極として機能する場合と、電極281がドレイン電極、電極282がソース電極として機能する場合がある。以降の説明においては、便宜上、電極281をソース電極281と呼び、電極282をドレイン電極282と呼ぶ。ソース電極281及びドレイン電極282は略同一形状をなしている。
【0043】
図5及び
図6に示すように、ソース電極281とドレイン電極282は間隙を間にして並置してある。ソース及びドレイン電極28は、実施の形態1のソース及びドレイン電極16と同様な材料で形成する。
【0044】
図5に示すように本実施の形態における酸化物TFT2において、ボトムゲート電極22の紙面横方向の長さ(以降、横幅という。)は、トップゲート電極26の横幅よりも小さくなっている。ソース電極281とドレイン電極282との間隙の横幅は、トップゲート電極26の横幅よりも大きくなっている。さらに、酸化物半導体層24の横幅は、ソース電極281とドレイン電極282との間隙よりも大きくなっている。層間絶縁膜25及びパッシベーション膜27には2つのコンタクトホールが設けてある。各コンタクトホールを利用して、ソース電極281と酸化物半導体層24とが、ドレイン電極282と酸化物半導体層24とが、それぞれ電気的に接続されている。このように、本実施の形態における酸化物TFT2は、トップゲート型のTFTである。酸化物TFT2において、酸化物半導体層24にチャネル層が形成される。
【0045】
酸化物半導体層24において、層間絶縁膜25との界面の一部に、第1のチャネル領域241が形成される。より具体的には、平面視でトップゲート電極26と重なる界面の領域が第1のチャネル領域241となる。第1のチャネル領域241はトップゲート電極26の電圧により、キャリア密度を制御可能な領域である。また、酸化物半導体層24において、ゲート絶縁膜23との界面の一部に、第2のチャネル領域242が形成される。より具体的には、平面視でボトムゲート電極22に重なる界面の領域が第2のチャネル領域242となる。第2のチャネル領域242はボトムゲート電極22の電圧により、キャリア密度を制御可能な領域である。
【0046】
第1のチャネル領域241において、ソース電極281とドレイン電極282の並置方向の長さ、
図5及び
図6の紙面横方向の長さL
Tを第1のチャネル長という。第2のチャネル領域142において当該並置方向の長さL
Bを第2のチャネル長という。
図5及び
図6に示すように、本実施の形態の酸化物TFT2において、第2のチャネル長L
Bは第1のチャネル長L
Tよりも短くなっている。
【0047】
本実施の形態において、以上のように構成された酸化物TFT2を駆動する際には、ボトムゲート電極22にソース電極281の電位Vs又はドレイン電極282の電位Vdのうちの低い方の電位以上の電位を印加する。ボトムゲート電極22の電位をVbgと表す。上述した本実施の形態における酸化物TFT1の特徴を式で表現すると、以下の式(4)
かつ(5)
、または、式(4)かつ(6)となる。
【0048】
L
T>L
B … (4)
但し、
L
T:第1のチャネル長
L
B:第2のチャネル長
【0049】
Vbg≧Vs かつ Vs<Vd … (5)
Vbg
≧Vd かつ Vs>Vd … (6)
但し
Vbg:ボトムゲート電極22の電位
Vs:ソース電極281の電位
Vd:ドレイン電極282の電位
【0050】
本実施の形態では、1)第2のチャネル長L
Bは第1のチャネル長L
Tよりも短い構成と、2)ボトムゲート電極22の電位Vbgがソース電極281の電位Vs又はドレイン電極282の電位Vgの低い方の電位以上となるように、酸化物TFT2を駆動するとの構成から、以下の効果を奏する。酸化物TFT2上に電荷が発生しても、初期特性は安定する。具体的には酸化物TFT2がオフからオンに切り替わるゲート電圧の変動、すなわち閾値電圧の変動を抑制することが可能となる。
【0051】
また、酸化物TFT2プラスゲートストレスが掛かっている場合、ボトムゲート電極22の電位Vbgがソース電極281の電位Vs又はドレイン電極282の電位Vgの低い方の電位未満であると、閾値電圧の変動が加速される傾向がある。しかし、本実施の形態においては、VbgをVs又はVdのうちの低い方の電位以上とすることにより、閾値電圧の変動を抑制することが可能となる。すなわち、酸化物TFT2の動作信頼性が向上する。
【0052】
(回路例1)
上述の酸化物TFTを用いた回路について、幾つかの例を以下に示す。
図7はゲートドライバの出力段の一例を示す回路図である。ゲートドライバは表示装置などにおいて、ゲート信号(走査信号、スキャン信号)を生成する。
図7において、Tr1及びTr2は実施の形態1又は2で示したボトムゲート型の酸化物TFT1を用いている。Tr1(第1の薄膜トランジスタ)は第1のクロック信号CLK1と出力端子OUT1とを接続する。Tr2(第2の薄膜トランジスタ)は出力端子OUT1と電源VLとを接続する。
【0053】
図7において、Tr2のボトムゲート電極は、例えば2相クロックを用いる場合デューティ比50%の正電圧が印加される。そのため、プラスゲートストレスに対する安定性が要求される。また、Tr1はブートストラップ効果によりボトムゲート電極には高い電圧が印加されるため、プラスゲートストレが厳しい。しかしながら、Tr1、Tr2として、実施の形態1又は2に示した酸化物TFT1を用い、トップゲートに印加する電位をソース電位より大きくすることにより、プラスゲートストレスに対する安定化を図ることが可能となる。
【0054】
(回路例2)
図8は画素回路の一例を示す回路図である。
図8はOLED(Organic Light Emitting Diode:有機発光ダイオード)を発光素子とする表示装置の画素回路を示している。OLEDは有機発光層を有する発光素子である。画素回路はスイッチングTFT(SW TFT)と駆動TFT(DRIVE TFT)とを含む。スイッチングTFTは走査線(SCAN)により供給される走査信号によりオン・オフされる。駆動TFTはOLEDに流れる電流を制御する。スイッチングTFTの閾値電圧が変動するとOLEDの発光するタイミングにずれが生じるおそれがある。また、駆動TFTの閾値電圧が変動すると、OLEDの輝度に誤差が発生するおそれがある。これらは表示のちらつきやムラなどの表示品位の低下につながる。スイッチングTFTと駆動TFTとに実施の形態1又は2に示した酸化物TFT1を用いることにより、画素回路の動作安定性に寄与し、表示品位の低下を防ぐことが可能となる。
【0055】
(回路例3)
図9は画素回路の一例を示す回路図である。
図9はLCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)における画素回路の例を示している。LCDにおいては複数の画素が2次元的に、より詳しくはマトリクス状に配列している。図の視認性を確保するため、縦3画素×横3画素の計9画素分の回路を示している。各画素に配置されるTFT(S11からS33)は走査線(G1からG3)により供給される走査信号によりオン・オフされる。すなわち、TFTはスイッング素子の一例である。TFTがオンのときに、データ線(D1からD3)から供給されるデータ信号に応じた電荷が、蓄積容量(C1からC33)に保持される。LCDにおいて各画素のTFTの閾値電圧が変動すると、蓄積容量へ電荷の蓄積が不十分(書き込み不足)となる。この蓄積容量の書き込み不足は、ちらつき、表示ムラといって表示品位低下の原因となる。
【0056】
そこで、各画素に配置されるTFTとして、実施の形態1又は2に示した酸化物TFT1を用いる。そして、トップゲート電極18の電位Vtgをソース電極161の電位Vsより高くなるように、制御する。
図10はトップゲート電極18の電位の制御例を示すグラフである。横軸は時間、縦軸は電位を示す。Vcomを付したグラフは共通電位の変位を示す。Vgを付したグラフはトップゲート電極18の電位Vtgの変位を示す。Vsを付したグラフはソース電極161の電位Vsの変位を示す。Vpixを付したグラフは蓄積容量において、TFTと接続されている側の端子の電位の変位を示す。Vtg1及びVtg2はトップゲート電極18への印加電位の制御例を示す。
【0057】
Vtg1を付したグラフはトップゲート電極18の電位Vtgをソース電極の電位Vsに追従させる例である。VtgはVs以上であれば良いので、VtgをVsに追従させれば良い。Vtg2を付したグラフはトップゲート電極18の電位Vtgを一定に保つ例である。Vtgをソース電位Vsの最大値に保てば、VtgはVs以上となる。Vsの最大値は設計上の理論値を計算にて求めるか、実測により求めれば良い。また、誤差を考慮して、求めた電位よりも少し高めの電位をVtgとしても良い。
【0058】
LCDの画素回路に実施の形態1又は2に示した酸化物TFT1を用いることにより、画素回路の動作安定性に寄与し、表示品位の低下を防ぐことが可能となる。
【0059】
回路例1から3において、ボトムゲート型TFTを用いる回路例のみを説明したが、それに限らない。トップゲート型TFTを用いる回路例においては、実施の形態3に示した酸化物TFT2を用いることが可能である。その場合において奏する効果は、上述した効果と同様である。
【0060】
(実施の形態4)
本実施の形態は、実施の形態1に示した酸化物TFT1に設計条件を付加した形態である。
図11は酸化物TFT1の第4の実施形態に係る構成例を示す平面図である。
図11において、実施の形態1と同様な構成については、実施の形態1と同一の符号を付与した。本実施の形態の酸化物TFT1はエッチストップ型のTFTである。実施の形態1と異なるのは、第1のチャネル長L
Bが10ミクロン(μm)、チャネル幅Wが10ミクロン以下との条件が付されていることである。
【0061】
トランジスタの特性を示すパラメータの一つとして、W/Lが知られている。Wはチャネル幅、Lはチャネル長である。本実施の形態において、チャネル長は第1のチャネル長L
Bである。第1のチャネル長L
Bを10ミクロンとし、チャネル幅Wを変えた複数の酸化物TFT1を作成した。チャネル幅Wが異なる複数の酸化物TFTについて、プラスゲートストレスによる閾値電圧の変動を計測したところ、Wが小さいほど良好の結果を得られた。したがって、チャネル幅Wが小さいほど、動作安定性が得られる。すなわち、第1のチャネル長L
Bを10ミクロンとした場合、チャネル幅Wは10ミクロン以下とすることが望ましい。
【0062】
本実施の形態によれば、チャネル幅Wに条件を付したことにより、酸化物TFT1において、プラスゲートストレスに対する動作安定性をより確実に得ることが可能となる。なお、チャネル幅Wをより小さくするとの条件は、OLEDを駆動するTFTに有利な条件である。
【0063】
(実施の形態5)
本実施の形態は、実施の形態1に示した酸化物TFT1に設計条件を付加した形態である。
図12は酸化物TFT1の第5の実施形態に係る構成例を示す説明図である。
図12Aは酸化物TFT1の構成例を示す平面図である。
図12Bは酸化物TFT1の構成例を示す断面図である。
図12A及び
図12Bにおいて、実施の形態1と同様な構成については、実施の形態1と同一の符号を付与した。本実施の形態の酸化物TFT1はエッチストップ型のTFTである。実施の形態1と異なるのは、平面視において、第1のチャネル領域とソース電極161とが重なる領域の幅(以下、オーバラップ幅)L
OVLが、1.5ミクロン以上との条件が付されていることである。第1のチャネル領域とドレイン電極162とが重なる領域の幅も同様とする。オーバラップ幅は言い換えると、エッチストップ膜15とソース電極161とが重なり合うチャネル長方向の長さ、及びエッチストップ膜15とドレイン電極162とが重なり合うチャネル長方向の長さである。
【0064】
酸化物TFT1の動作安定性は、第1のチャネル長L
Bと第2のチャネル長L
Tの差分により得られていると考えられる。したがって、当該差分が大きいほど効果が得られる。オーバラップ幅L
OVLが大きくなると、第2のチャネル長L
Tが小さくなる。オーバラップ幅L
OVLが大きくなった場合であっても、第1のチャネル長L
Bは変化しない。よって、第1のチャネル長L
Bと第2のチャネル長L
Tの差分が拡大し、酸化物TFT1の動作安定性が向上するものと考えられる。酸化物TFT1において、第1のチャネル長L
Bが10ミクロンとした場合、オーバラップ幅L
OVLを1.5ミクロン以上とすることが望ましい。
【0065】
本実施の形態によれば、オーバラップ幅L
OVLに条件を付したことにより、酸化物TFT1において、プラスゲートストレスに対する動作安定性をより確実に得ることが可能となる。なお、オーバラップ幅L
OVLをより大きくするとの条件は、チャネル幅Wを大きくする必要があるTFTに有利な条件である。
【0066】
(実施の形態6)
本実施の形態は、実施の形態2に示した酸化物TFT1に設計条件を付加した形態である。
図13は酸化物TFT1の第6の実施形態に係る構成例を示す説明図である。
図13Aは酸化物TFT1の構成例を示す平面図である。
図13Bは酸化物TFT1の構成例を示す断面図である。
図13A及び
図13Bにおいて、実施の形態2と同様な構成については、実施の形態2と同一の符号を付与した。本実施の形態の酸化物TFT1はチャネルエッチ型のTFTである。実施の形態2と異なるのは、平面視において、ソース電極161とトップゲート電極18との隙間及びドレイン電極162とトップゲート電極18との隙間の距離(以下、ギャップ幅)L
OFFが、1.5ミクロン以上との条件が付されていることである。
【0067】
酸化物TFT1の動作安定性は、第1のチャネル長L
Bと第2のチャネル長L
Tの差分により得られていると考えられる。したがって、当該差分が大きいほど効果が得られる。ソース電極161とドレイン電極162との隙間の距離は変更しないとの制約のもと、ギャップ幅L
OFFを大きくすると、第2のチャネル長L
Tが小さくなる。ギャップ幅L
OFFを大きくした場合であっても、第1のチャネル長L
Bは変化しない。よって、第1のチャネル長L
Bと第2のチャネル長L
Tの差分が拡大し、酸化物TFT1の動作安定性が向上するものと考えられる。酸化物TFT1において、第1のチャネル長L
Bが10ミクロンとした場合、ギャップ幅L
OFFを1.5ミクロン以上とすることが望ましい。
【0068】
本実施の形態によれば、ギャップ幅L
OFFに条件を付したことにより、酸化物TFT1において、プラスゲートストレスに対する動作安定性をより確実に得ることが可能となる。なお、ギャップ幅L
OFFをより大きくするとの条件は、チャネル幅Wを大きくする必要があるTFTに有利な条件である。
【0069】
(実施の形態7)
本実施の形態の酸化物TFT1は実施の形態1に示した酸化物TFT1に設計条件を付加した形態である。
図14は酸化物TFT1の第7の実施形態に係る構成例を示す説明図である。
図14Aは酸化物TFT1の構成例を示す平面図である。
図14Bは
図14AのXIV−XIV線による断面図である。
図14A及び14Bにおいて、実施の形態1と同様な構成については、実施の形態1と同一の符号を付与した。本実施の形態の酸化物TFT1は実施の形態1とエッチストップ型のTFTである。実施の形態1と異なるのは、平面視において、第1のチャネル領域とソース電極161とが重なる領域の幅(以下、ソースラップ幅)L
SOVLが、第1のチャネル領域とドレイン電極162とが重なる領域の幅(以下、ドレインラップ幅)L
DOVLよりも大きいとの条件が付されていることである。
【0070】
また、本実施の形態では、ボトムゲート電極12を構成する層と、ソース電極161を構成する層とが、平面視で重なる部分を作ることにより、ボトムゲート電極12とソース電極161と間にキャパシタCstを構成している。
図14は、酸化物TFT1とキャパシタCstとの2つの素子を示している。端子tm1はゲート電極12とキャパシタCstとが接続されている端子を、端子tm2はドレイン電極が接続されている端子を示す。
【0071】
図15は酸化物TFT1を用いた回路例を示す回路図である。
図15Aはゲートドライバの出力段の回路例を示す。
図15BはOLEDの画素回路の例を示す。
図15Aに示すTr3及びキャパシタCstを
図14に示した構成で実現できる。また、
図15Bに示すTr4及びキャパシタCstも
図14で示した構成で実現できる。
図15A及び
図15Bに示す端子tm1及びtm2は、
図14A及び
図14Bに示す端子tm1及びtm2と対応する。Tr3及びTr4を本実施の形態の酸化物TFT1を用いる場合、
図14に示したように構成すれば、酸化物TFT1とキャパシタCstとを効率的に作成することが可能となる。
【0072】
また、酸化物TFT1において、キャパシタCstと接続するソース側のソースラップ幅L
SOVLを大きくすることにより、次の効果が得られる。上述の他の実施の形態と同様に、プラスゲートストレスに対する動作安定性が向上する。さらに、ソースラップ幅L
SOVLを大きくしたことにより、キャパシタCstとして機能する領域が拡大する。それにより、キャパシタCstの構成に必要な平面積を減らすことが可能となるので、酸化物TFT1とキャパシタCstとを併せた構成に必要な平面積を減らすことが可能となる。
【0073】
OLEDの画素回路に用いた場合、酸化物TFT1とキャパシタCstとを併せた構成に必要な平面積の減少により、開口率が向上する。また、各画素を小さくすることが可能となるので、表示の精細化が可能となる。
【0074】
(駆動回路例)
次に、酸化物TFT1の駆動回路について、説明する。
図16は駆動回路100の一例を示す回路図である。駆動回路100はTFT回路101及び印加回路102を含む。TFT回路101は酸化物TFT1を含む回路である。TFT回路101の構成は、酸化物TFT1の用途により、適宜設計する。また、酸化物TFT2の駆動回路についても、同様に構成可能である。
【0075】
印加回路102は酸化物TFT1のトップゲート電極18に印加する電位を発生させる回路である。印加回路102はコンパレータ1021、スイッチ1022、バッファ1023を含む。コンパレータ1021はVsとVdの大小関係を判定する。Vsは酸化物TFT1のソース電極161の電位である。Vdは酸化物TFT1のドレイン電極162の電位である。スイッチ1022は切り替えスイッチである。スイッチ1022はVs及びVdを入力して受け付け、Vs又はVdの一方を出力する。スイッチ1022の切り替えはコンパレータ1021の出力により制御される。コンパレータ1021の制御により、スイッチ1022はVsとVdのうち低い方の電位を出力する。バッファ1023はスイッチ1022の出力をTFT回路101に入力する。当該入力は酸化物TFT1のトップゲート電極18に印加される。なお、バッファ1023を増幅器に替えてもよい。
【0076】
印加回路102は各酸化物TFT1に1つ設けるが、それに限らない。複数の酸化物TFT1を含む回路であるが、同時に複数の酸化物TFT1が動作しない場合は、印加回路102を1つとしても良い。また、複数の酸化物TFT1が同時に動作する場合であっても、設計上、動作条件が同一の場合は、印加回路102を1つとしても良い。すなわち、動作している酸化物TFT1のトップゲート電極18に印加すべき電位が、設計上、すべて同じ電位で良い場合である。この場合、同時に動作する酸化物TFT1の中の1つの酸化物TFT1について、Vs、Vdを印加回路102の入力とする。印加回路102の出力は、動作するすべての酸化物TFTのトップゲート電極に印加する。さらに、酸化物TFT1のトップゲート電極18に印加すべき電位を設計上、一意に決定できる場合は、印加回路102を定電圧源とする。この場合、一定の電位をトップゲート電極18に印加する。
【0077】
なお、上記で参照した断面図は、各層の積層順を示すためのものであり、各層の厚さや大きさ、各層間においての厚みの厚薄(大小関係)が図示する態様に限定されるものではない。
【0078】
各実施の形態で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【0079】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。