(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の表面修飾カーボンナノチューブと、極性溶媒と、バインダーとを含有する組成物であって、前記組成物の質量を基準として、極性溶媒を30〜94質量%、表面修飾カーボンナノチューブを1〜8質量%、バインダーを5〜60質量%含む組成物。
表面修飾カーボンナノチューブと、極性溶媒と、バインダーとを含有する組成物の製造方法であって、前記表面修飾カーボンナノチューブが、カーボンナノチューブ1質量部に対して、濃度が60〜70質量%の硝酸と、硫酸とからなる混酸50〜100質量部を用い、60℃以下の温度で酸化処理されたものであり、前記組成物の質量を基準として、極性溶媒を30〜94質量%、表面修飾カーボンナノチューブを1〜8質量%、バインダーを5〜60質量%含む組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブが最初に広く報告されたのは1991年である。カーボンナノチューブは実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブという。多層カーボンナノチューブのなかでも特に2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブという。カーボンナノチューブは、自体が優れた真性の導電性を有し、導電性材料として使用されることが期待されている。
【0003】
カーボンナノチューブの製造方法として、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学気相成長法などが知られている。化学気相成長法のなかでも、触媒を担体に担持して行う触媒化学気相成長法が知られている。
【0004】
カーボンナノチューブの中で、単層カーボンナノチューブは、高グラファイト構造を有しているために導電性や熱伝導性などの特性が高いことが知られている。しかしながら、単層カーボンナノチューブは強固で非常に太いバンドル構造を有しているため、1本1本のカーボンナノチューブが有しているナノ効果を発揮できず、各種用途展開が困難であった。特に樹脂や溶媒への分散が非常に困難であるために、予想される高特性を発揮できず、種々の用途への展開が妨げられているのが現状であった。特に透明導電性フィルム、成型品、膜等への用途にカーボンナノチューブを用いて実用性能を発揮させることは困難であった。
【0005】
多層カーボンナノチューブの中でも層数の比較的少ない2〜5層カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブの特性と多層カーボンナノチューブの両方の特性を有しているために、種々の用途において有望な素材として注目を集めている。その中でも2層カーボンナノチューブは最も特性が良好と考えられており、いくつかの合成法が開発されてきた。最近では純度の高い2層カーボンナノチューブの合成法として遠藤らの方法が知られている(非特許文献1、2、3)(特許文献1)。この方法は、主触媒として鉄塩を、副触媒としてモリブデン酸塩を配置して炭素源を反応させて2層カーボンナノチューブを合成している。またここで得られた2層カーボンナノチューブの用途としては、2層カーボンナノチューブが高い熱安定性を有しているために、高電流で用いられるフィールドエミッタとしての用途が記載されている。
【0006】
しかしながら、高品質な2層カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブと同様にチューブ間の疎水性相互作用や、π電子間の相互作用から強固にバンドルを形成しており、カーボンナノチューブを分散するのは困難と考えられている。遠藤らの2層カーボンナノチューブも同様に強固に太いバンドルを形成していると考えられる。強固に太いバンドル構造を有している間接的証拠として、カーボンナノチューブ集合体の耐熱性が挙げられる。耐熱性が高いカーボンナノチューブ集合体は、より太いバンドル構造を形成していると推測される(非特許文献3)。カーボンナノチューブの耐熱性は空気中での燃焼ピーク温度で判別できる。空気中での燃焼は酸素分子の攻撃による酸化反応と考えられる。
【0007】
1本1本は同じカーボンナノチューブであったとしても、そのバンドルが太い、つまりより多くのカーボンナノチューブが集合しているバンドルでは、内側のカーボンナノチューブは酸素の攻撃を受けにくいために酸化反応が起こりにくくなり、カーボンナノチューブ集合体の燃焼ピーク温度は上昇する。逆にバンドルが細い、つまり少ないカーボンナノチューブが集合しているバンドルでは、内側のカーボンナノチューブも容易に酸素の攻撃を受けるために、カーボンナノチューブ集合体の燃焼ピーク温度が低下すると考えられる。
【0008】
これら非特許文献1、2、3、特許文献1記載のカーボンナノチューブは同じ合成法で製造されたものであり、非特許文献2に記載されているとおり、その燃焼ピーク温度は717℃と高く、これらのカーボンナノチューブは強固に太いバンドルを形成していると考えられ、高度の分散性が要求される場合には満足できるものではなかった。
【0009】
一方上記より層数の多い多層カーボンナノチューブは、一般に直径も太く、グラファイト層に欠陥も多く、上記層数の少ないカーボンナノチューブよりもバンドルを組みにくいため、分散性には優れる。しかし、このような多層カーボンナノチューブは、品質に劣るため、特にすぐれた光透過率と表面抵抗が求められる透明導電性フィルム、成型品、膜等への用途において実用性能を発揮させることは困難であった。
【0010】
現在、カーボンナノチューブを代表とした各種のカーボンナノ材料が開発されており、例えば、導電フィラー、熱伝導材料、発光素子、電池やキャパシターの電極材料、配線材料や配線どうしの電極接合材料、補強材料、黒色顔料などの各種用途において、多様な機能を有する材料として有望視されている。
【0011】
しかし、一般にカーボンナノ材料は、製造されたままの状態では凝集体を形成しており、溶媒中で十分に分散させた状態にするのが非常に難しい。このため、製品にした際に特性を十分に発揮できないという問題がある。
【0012】
従来、カーボンナノ材料の分散性を高める手段として、例えば、微細炭素繊維の酸性懸濁液に酸化剤を添加して表面を酸化させたもの(特許文献2)や、硝酸あるいは硝酸と硫酸との混酸を用いて湿式酸化してCOOM基を導入したもの(特許文献3)や、発煙硝酸中または発煙硝酸と濃硫酸との混酸中で超音波処理してニトロ基を導入したもの(特許文献4)、100℃以上で混酸酸化処理する(特許文献5)などが知られている。
【0013】
しかし、これらの従来例は、過度な酸化処理によるカーボンナノチューブの切断によって導電性が劣化することや、酸化処理が不十分で分散性が劣るという問題があり、また、ニトロ化では分散媒が有機溶剤であって高濃度のときにカーボンナノチューブの分散性が十分ではない、また、高温で酸化処理することによりカーボンナノチューブが破壊されてしまい、分散性は良くなるが導電性が低下するという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0024】
本発明の表面修飾カーボンナノチューブは、濃度が60〜70質量%の硝酸と硫酸とからなる混酸を用い、60℃以下で酸化処理したことを特徴とし、平均粒子径D50が1〜50μm、体積抵抗率が0.1〜0.01Ω・cmであることを特徴とする表面修飾カーボンナノチューブである。
【0025】
硝酸と硫酸の混酸を用いてカーボンナノチューブの酸化処理を行う場合、混酸温度が高くなるほどカーボンナノチューブの分解も進み、平均粒子径D50が小さくなり、極性溶媒に対する分散性が向上する。
【0026】
しかし、カーボンナノチューブの分解が進み、平均粒子径D50が小さくなると、導電性が低下するという弊害が発生する。導電性を保つには、平均粒子径D50を1μm以上にする必要が有り、この粒子径を保つ混酸酸化条件の検討を行った結果、60℃以下で混酸処理を行うことにより、平均粒子径D50を1μm以上に保つことが可能となった。
【0027】
混酸処理温度は、硝酸と硫酸の混酸中にカーボンナノチューブ原料を浸漬し、60℃以下の温度で反応させればよい。液温は好ましくは60〜20℃が良く、60〜40℃がさらに好ましい。100℃以上の液温ではカーボンナノチューブの分解が進み、平均粒子径D50が1μm以下となり易い。
【0028】
混酸処理の好ましい反応時間は、例えば2〜8時間であるが、この範囲に限定はされない。酸化処理中の混合物は攪拌し続けることが好ましい。
【0029】
上記酸化処理において、硝酸と硫酸の混酸とカーボンナノチューブ原料との質量比は、カーボンナノチューブ原料の1質量部に対して混酸50〜100質量部の範囲が適当である。
【0030】
混酸の処理温度条件を上記のように調整した酸化処理を行うことによって、カーボンナノチューブ表面にカルボキシル基(−COOH)、カルボニル基(>C=O)、エーテル基(C−O−C)、フェノール性水酸基(−OH)などが導入される。
【0031】
本発明の表面修飾カーボンナノチューブとは、酸性の置換基であるカルボキシル基(−COOH)、フェノール性水酸基(−OH)がカーボンナノチューブの表面に結合された状態のカーボンナノチューブを示す。
【0032】
カーボンナノチューブの生産時、分離した別個のナノチューブ、もしくはナノチューブの凝集体の形態で存在しており、ランダムに互いに絡み合い鳥の巣類似の絡み合った玉を形成している。このカーボンナノチューブ凝集体の形成に関する更なる詳細は、Tennentの米国特許第5,165,909号、Moyらの米国特許第5,456,897号、Snyderらの1991年5月1日に出願された米国特許第5,707,916号、及び1989年1月28日に出願されたPCT出願第US89/00322号、WO89/07163、及び1994年8月2日出願されたMoyらの米国特許第5,456,897号及び1990年9月27日に出願されたPCT出願第US90/05498号、WO91/05089、及び1995年6月7日に出願されたMandevilleらの米国特許第5,500,200号及び1994年8月2日に出願された米国特許第5,456,897号及び1994年10月11日に出願されたMoyらの米国特許第5,569,635号の開示で説明されている。
【0033】
尚、本願明細書で示す平均粒子径D50とは、カーボンナノチューブの直径ではなく、凝集体の大きさを示している。カーボンナノチューブは、一般的に凝集体の形態で存在している。これを混酸処理することにより、解すことが可能である。
【0034】
このカーボンナノチューブの凝集体の大きさは、レーザー回折式粒子径分布測定装置により測定する事が出来る。具体的には、Mastersizer2000等の分析装置がある。
【0035】
カーボンナノチューブの平均粒子径D50が、1μm以上であれば、分散液や塗膜状態でのカーボンナノチューブ間の繋がりが保たれ、導電性が良好となる。そこで、分散液や塗膜状態での導電性を保ち、かつ極性溶媒中での分散性を維持する平均粒子径D50として、表面修飾カーボンナノチューブの平均粒子径D50は、1〜50μmが好ましい。
【0036】
カーボンナノチューブはその構造上の導電性が高いという特徴が有り、例えば、株式会社三菱化学製ロレスターGPによって測定したFloTube9100(CNano社製多層カーボンナノチューブ)の体積抵抗率は、0.015Ω・cmである。
【0037】
しかし、硝酸と硫酸からなる混酸を用いた酸化処理により製造した表面修飾カーボンナノチューブは、平均粒子径D50が小さくなることにより、体積抵抗率が増大する。そこで、極性溶媒中での分散性を維持し、分散液や塗膜状態での導電性を保つ表面修飾カーボンナノチューブの体積抵抗率は、0.1Ω・cm以下である。
【0038】
上記表面修飾カーボンナノチューブをアルコールなどの極性溶媒から選択した一種以上の分散媒に分散させることにより、カーボンナノチューブの分散性に優れた分散液が得られる。
【0039】
本発明の分散液を得るのに用いる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
【0040】
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類; スキャンデックス(株式会社スキャンデックス社製)、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル( ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
また、分散液の作製方法としては、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
【0042】
本発明のカーボンナノチューブ分散液にバインダー成分(樹脂成分)を加えることにより、塗料組成物、またはペースト組成物を得ることができる。このような組成物において、樹脂成分は絶縁性であるので、樹脂成分の量が多く、表面修飾カーボンナノチューブの量が少ないと、組成物の導電性が低下するが、本発明の表面修飾カーボンナノチューブは分散性が良いので、少ない含有量でも高い導電性を発揮し、良好な導電性塗膜を得ることができる。
【0043】
塗料組成物またはペースト組成物の好ましい組成としては、例えば、極性溶媒を30〜94質量%、表面修飾カーボンナノチューブを1〜8質量%、バインダー成分を5〜60質量%含む組成が挙げられる。極性溶媒の他に必要であれば無極性溶媒を含んでも良いし、塗料組成物又はペースト組成物として必要な他の成分を加えても良い。
【0044】
湿式混合装置としては、例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;
エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社製「フィルミックス」等のホモジナイザー類;
スキャンデックス(株式会社スキャンデックス社製)、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;
湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、奈良機械製作所社製「マイクロス」等のメディアレス分散機;その他ロールミル、ニーダー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、湿式混合装置としては、装置からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい場合がある。
【0045】
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面がタングステンカーバイド溶射又は樹脂コーティング等で処理された分散機を用いることが好ましい。メディアは、ガラスビーズ、又は、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合は、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用してもよいし、複数種の装置を組み合わせて使用してもよい。また、原料の溶媒への濡れ性、分散性を向上させるために、一般的な親水性官能基を有する分散剤を一緒に添加し、分散、及び混合することができる。
【0046】
湿式混合する際、各原料が均一に溶解しないケースにおいては、各原料の溶媒への濡れ性、及び分散性を向上させるために、市販の分散剤を一緒に添加し、分散して混合してもよい。分散剤としては、水系分散剤及び溶剤系分散剤を使用でき、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0047】
市販の水系分散剤は特に限定されないが、例えば、下記のものが挙げられる。
ビックケミー社製の分散剤としては、Disperbyk−180、183、184、185、187、190、191、192、193、198、2090、2091、2095、2096、又はBYK−154等が挙げられる。
日本ルーブリゾール社製の分散剤としては、SOLSPERSE12000、20000、27000、41000、41090、43000、44000、又は45000等が挙げられる。
エフカアディティブズ社製の分散剤としては、EFKA1101、1120、1125、1500、1503、4500、4510、4520、4530、4540、4550、4560、4570、4580、又は5071等が挙げられる。
BASFジャパン社製の分散剤としては、JONCRYL67、678、586、611、680、682、683、690、52J、57J、60J、61J、62J、63J、70J、HPD−96J、501J、354J、6610、PDX−6102B、7100、390、711、511、7001、741、450、840、74J、HRC−1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX−7630、352J、252D、538J、7640、7641、631、790、780、7610、JDX−C3000、JDX−3020、又はJDX−6500等が挙げられる。また、Luvitec K17、K30、K60、K80、K85、K90、K115、VA64W、VA64、VPI55K72W、又はVPC55K65W等が挙げられる。
川研ファインケミカル社製の分散剤としては、ヒノアクトA−110、300、303、又は501等が挙げられる。
ニットーボーメディカル社製の分散剤としては、PAAシリーズ、PASシリーズ、両性シリーズPAS−410C、410SA、84、2451、又は2351等が挙げられる。
アイエスピー・ジャパン社製の分散剤としては、ポリビニルピロリドンPVP K−15、K−30、K−60、K−90、又はK−120等が挙げられる。
丸善石油化学社製の分散剤としては、ポリビニルイミダゾールPVI等が挙げられる。
【0048】
市販の溶剤系分散剤としては、特に限定されないが、例えば下記のものが挙げられる。
ビックケミー社製の分散剤としては、Anti-Terra-U、U100、203、204、205、Disperbyk−101、102、103、106、107、108、109、110、111、112、116、130、140、142、161、162、163、164、166、167、168、170、171、174、180、182、183、184、185、2000、2001、2050、2070、2096、2150、BYK−P104、P104S、P105、9076、9077及び220S等が挙げられる。
日本ルーブリゾール社製の分散剤としては、SOLSPERSE3000、5000、9000、13240、13650、13940、17000、18000、19000、21000、22000、24000SC、24000GR、26000、28000、31845、32000、32500、32600、33500、34750、35100、35200、36600、37500、38500、又は53095が挙げられる。
エフカアディティブズ社製の分散剤としては、EFKA1500、1501、1502、1503、4008、4009、4010、4015、4020、4046、4047、4050、4055、4060、4080、4300、4330、4400、4401、4402、4403、4406、4510、4520、4530、4570、4800、5010、5044、5054、5055、5063、5064、5065、5066、5070、5071、5207、又は5244等が挙げられる。
味の素ファインテクノ社製の分散剤としては、アジスパーPB711、PB821、PB822、PN411、又はPA111が挙げられる。
川研ファインケミカル社製の分散剤としては、ヒノアクトKF−1000、1300M、1500、1700、T−6000、8000、8000E、又は9100等が挙げられる。BASFジャパン社製の分散剤としては、Lavaca等が挙げられる。
【0049】
本発明において、使用されるカーボンナノチューブとは、炭素原子が6角形をなす平面構造を有するカーボンナノチューブが、ファンデルワールス力により弱く結合した複層構造を有している。カーボンナノチューブは、欠陥の少ない平面構造を有しているため、高い電子伝導性、高い熱伝導性や高い機械的強度を示す。
複層構造のカーボンナノチューブの厚みは特に限定されないが単層以上であることが好ましい。厚すぎると、電子伝導性や比表面積などが低くなり好ましくない場合がある。
【0050】
単層カーボンナノチューブは、ナノメートル領域の直径を持つ継ぎ目のない円筒状で、グラフェンシート(2次元のグラファイト平面)が丸まった状態としてイメージすることができる。ナノチューブの構造は、直径とチューブの軸に対する炭素の6員環の相対的な方向で規定される。例えば、名城ナノカーボン(EC1.0,EC1.5,EC2.0,EC1.5−P)等が挙げられる。
【0051】
多層カーボンナノチューブは同心円筒状のこれらチューブから構成され、幾つかの単層チューブが入れ子になっていると考えられており、少ない場合は6層、多い場合で25層ほどの同心多層構造をとる。そのため、多層カーボンナノチューブの直径は、典型的な単層カーボンナノチューブの0.7−2.0nmに対して、30nmと大きい値を示す。カーボンナノチューブの持つ優れた独特の特性によって、新たな応用開発や既存の用途における性能改善を行うことが可能となる。例えば、CNano社(FloTube9000、FloTube9100、FloTube9110、FloTube9200)、Nanocyl社(NC7000)、Knano社(100T)等が挙げられる。
【0052】
バインダーとしては、水性の樹脂が好ましく、アクリルウレタン樹脂やイソシアネート系ポリエステル樹脂、スチレンアクリル系樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂などが例示できるがこれらに限定はされない。
【0053】
水性のアクリルウレタン樹脂としては、DSM Coating Resins社製のNeoPac:R−9699、R−9029、E−123、E−125や、大成ファインケミカル株式会社製のWEM−031U、WEM−200U、WEM−321U、WEM−3000、WEM−290A等が挙げられる。
イソシアネート系ポリエステル樹脂としては、大日本印刷社製の11−408、D−210−80、D−161、J−517、D−128−65BA、D−144−65BA、D−145−55BA等が挙げられる。
スチレンアクリル系樹脂としては、三井化学社製のアルマテックス:785−5、749.5M、749−17AE、749−16AE等が挙げられる。
アクリル樹脂としては、荒川化学工業社製のポリマロン等の水系アクリル樹脂エマルジョンが挙げられる。
ポリウレタン樹脂としては、大日本印刷社製のハイドラン:HW−171、COR−70、HW−350等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂の水系分散液は、バイロナールMD1245(東洋紡績(株)製)等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、三菱化学社製のサーフレンが挙げられる。
エポキシ樹脂としては、三菱化学社製の825、827、828、828EL、828US、828XA、834等が挙げられる。
【0054】
分散媒としては、水または水と親和性が高い極性溶媒が好ましく、特にアルコールが好適に使用できる。このようなアルコールとしては、例えば、沸点80〜200℃程度の1価のアルコールないし多価アルコールが利用でき、好ましくは炭素数が4以下のアルコール系溶剤が挙げられる。具体的には、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、プロピレングリコール、エチレングリコールなどが挙げられる。
【0055】
また、1種以上の極性溶媒を用いるのが好ましく、その具体例としては、水とエタノールの混合溶媒、水と2−プロパノールの混合溶媒、水とプロピレングリコールの混合溶媒、水とジプロピレングリコールの混合溶媒、水とDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)の混合溶媒、水とNMP(N−メチルピロリドン)の混合溶媒等が例示できる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例を比較例と共に示す。なお、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0057】
実施例1
カーボンナノチューブとしてCNano社の多層カーボンナノチューブ(FloTube9100)を原料として用い、市販の濃硝酸(濃度60質量%)および濃硫酸(濃度96質量%)を用い、表1に示す温度条件にて4時間表面酸化処理を行い、表面修飾した多層カーボンナノチューブ(以下、MW−CNTと略す)を得た。
得られた表面修飾MW−CNTを用いて作製した8質量%水分散液および8質量%DMF分散液の分散状態を表1に示す。
【0058】
8質量%水分散液は、スキャンデックスで分散したものであり、グラインドゲージで分散性を確認した。分散良好は〇、分散不良は×とした。
【0059】
8質量%DMF分散液は、スキャンデックスで分散したものであり、グラインドゲージで分散性を確認した。分散良好は〇、分散不良は×とした。
【0060】
実施例2
反応温度を50℃で混酸酸化を行った以外は、実施例1と同様に試験を行った。
【0061】
比較例1
反応温度を100℃で混酸酸化を行った以外は、実施例1と同様に試験を行った。
【0062】
比較例2
反応温度を120℃で混酸酸化を行った以外は、実施例1と同様に試験を行った。
【0063】
表1
【表1】
【0064】
実施例3
実施例1で作成した表面修飾MW−CNTを水に分散させ、平均粒子径D50を測定した。また、粉体での体積抵抗率を測定した結果を表2に示す。
尚、平均粒子径D50は、Malvern社製のMastersizer2000によって測定した。体積抵抗率(Ω・cm)は、株式会社三菱化学製ロレスターGPによって測定した。
【0065】
実施例4
実施例1で作成した表面修飾MW−CNTの代わりに、表2の表面修飾カーボンナノチューブを使用した以外は、実施例3と同様に試験を行った。
【0066】
比較例3
比較例1で作成した表面修飾MW−CNTを使用した以外は、実施例3と同様に試験を行った。
【0067】
比較例4
比較例2で作成した表面修飾MW−CNTを使用した以外は、実施例3と同様に試験を行った。
【0068】
表2
【表2】
【0069】
表2に示すように、混酸による酸化処理温度が50〜60℃の場合、実施例3〜4で示される通り、Mastersizer2000による平均粒子径D50が1μm以上であった。また、ロレスターによる体積抵抗率は、0.089〜0.095Ω・cmであった。しかし、混酸による酸化処理温度が、100℃の場合、比較例3で示される通り、Mastersizer2000による平均粒子径D50が0.85μmと1μm以下であった。また、ロレスターによる体積抵抗率は、3.5Ω・cmであった。また、混酸による酸化処理温度が、120℃の場合も、比較例4で示される通り、Mastersizer2000による平均粒子径D50が0.47μmと1μm以下であった。また、ロレスターによる体積抵抗率は、5.67Ω・cmであった。これは、混酸による酸化処理温度を上げると、酸化反応が進み、その結果として、カーボンナノチューブが分解され、平均粒子径D50が小さくなった。それにより、粉体での体積抵抗率が増大したと考えられる。
【0070】
実施例5
実施例1で作成した表面修飾MW−CNT8質量部と水92質量部をスキャンデックスで分散させたカーボンナノチューブ分散液を作製し、このカーボンナノチューブ分散液に、バインダーとしてWEM−200U(大成ファインケミカル株式会社製、アクリルウレタン樹脂)を10質量部加え、ペイントコンディショナーにて組成物を作成した。このようにして得られた組成物をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムにバーコーターにより塗布乾燥して、膜厚2μmの塗膜を作成した。この塗膜の体積抵抗率を測定した結果を、表3に示す。
尚、体積抵抗率(Ω・cm)は、株式会社三菱化学製ロレスターGPによって測定した。
【0071】
塗膜の水に対する再溶解性を確認する為、2cm角にカットし、PETフィルムごと100mlのイオン交換水に浸漬し、80kHzの周波数で1分間超音波を印加した。塗膜がイオン交換水に溶け出さない場合は〇、塗膜がイオン交換水に溶け出した場合は×とした。
【0072】
実施例6
実施例1で作成した表面修飾MW−CNTの代わりに、表3の表面修飾カーボンナノチューブを使用した以外は、実施例5と同様に試験を行った。
【0073】
比較例5
比較例1で作成した表面修飾MW−CNTを使用した以外は、実施例5と同様に試験を行った。
【0074】
比較例6
比較例2で作成した表面修飾MW−CNTを使用した以外は、実施例5と同様に試験を行った。
【0075】
表3
【表3】
【0076】
表3に示すように、混酸による酸化処理温度が50〜60℃の場合、実施例5〜6で示される通り、バインダーを加えた組成物をPETフィルムに塗布し、乾燥させた薄膜状態での塗膜の体積抵抗率は、0.76〜0.57Ω・cmであった。しかし、混酸による酸化処理温度が、100℃の場合、比較例5で示される通り、体積抵抗率は、12.2Ω・cmであった。また、混酸による酸化処理温度が、120℃の場合も、比較例6で示される通り、体積抵抗率は、17.6Ω・cmであった。これは、混酸による酸化処理温度を上げると、酸化反応が進み、その結果として、カーボンナノチューブが分解され、平均粒子径D50が小さくなった。それにより、塗膜での体積抵抗率が増大したと考えられる。また、再溶解試験では、いずれも、塗膜がイオン交換水に溶け出さないことを確認した。
【0077】
これらの結果より、混酸処理温度を60℃以下にすることにより、カーボンナノチューブの分解を防ぐ効果が表れ、それにより、極性溶媒に対する分散性を保ちながら、導電性の低下も防ぐことが出来た。