(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流動改良剤が、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリメチロールエタンよりなる群から選択される1種以上の多価アルコールである請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0013】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂、PAN系炭素繊維、カーボンブラック及び黒色染料を含むポリアミド樹脂組成物であり、前記PAN系炭素繊維を組成物全量中に7.5重量%以上25重量%以下で含み、前記カーボンブラックを組成物全量中に0.01重量%以上0.55重量%以下で含み、前記黒色染料を組成物全量中に0.01重量%以上1.0重量%以下で含む。
【0014】
[ポリアミド樹脂]
ポリアミド樹脂は、主鎖中にアミド結合(−CONH−)を有し、ラクタム、アミノカルボン酸、ジアミンとジカルボン酸、ジアミンとシュウ酸ジエステル等を原料として、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合することにより得られる。
【0015】
ラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ウンデカラクタム、ω−ラウロラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等が挙げられ、ε−カプロラクタム及びω−ラウロラクタムが好ましい。
【0016】
アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンドデカン酸、12−アミノドデカン酸等の脂肪族ω−アミノカルボン酸が挙げられ、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸及び12−アミノドデカン酸が好ましい。
【0017】
ジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン、ペンタデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、ヘプタデカメチレンジアミン、オクタデカメチレンジアミン、ノナデカメチレンジアミン、エイコサメチレンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−/1,4−シクロヘキシルジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3−/1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチレンアミン等の脂環式ジアミン;m−/p−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられ、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミンが好ましい。
【0018】
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−/1,8−/2,6−/2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられ、シュウ酸及びアジピン酸が好ましい。
【0019】
シュウ酸ジエステルとしては、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジn−(又はi−)プロピル、シュウ酸ジn−(又はi−、又はt−)ブチル等の脂肪族アルコールのシュウ酸ジエステル、シュウ酸ジシクロへキシル等の脂環式アルコールのシュウ酸ジエステル及びシュウ酸ジフェニル等の芳香族アルコールのシュウ酸ジエステルが挙げられ、シュウ酸ジn−ブチル、シュウ酸ジi−ブチル及びシュウ酸ジt−ブチルがより好ましく、シュウ酸ジn−ブチルがさらに好ましい。
【0020】
ポリアミド樹脂として、ラクタム、アミノカルボン酸、ジアミンとジカルボン酸又はジアミンとシュウ酸ジエステルの重合体であるポリアミド樹脂、あるいはそれらの共重合体であるポリアミド樹脂を使用することができる。また、ポリアミド樹脂は、単独でも、2種以上のポリアミド樹脂を併用してもよい。
【0021】
ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリドデカンラクタム(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド6T(H))、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリメタキシリレンテレフタラミド(ポリアミドMXDT)、ポリメタキシリレンイソフタラミド(ポリアミドMXDI)、ポリメタキシリレンナフタラミド(ポリアミドMXDN)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンテレフタラミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンイソフタラミド(ポリアミドPACMI)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリイソホロンアジパミド(ポリアミドIPD6)、ポリイソホロンテレフタラミド(ポリアミドIPDT)等が挙げられる。
【0022】
共重合体としては、例えば、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(ポリアミド6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカン酸共重合体(ポリアミド6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム(ポリアミド6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸(ポリアミド6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸(ポリアミド6/66/612)、ポリアミド92/62、ポリアミド102/62、ポリアミド122/62、カプロラクタム/ポリイソホロンアジパミド共重合体(ポリアミド6/IPD6共重合体)等が挙げられる。
【0023】
これらの中でも成形性の観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド1010、ポリアミド6/66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/12及びポリアミド6/66/12よりなる群から選択される1種以上のポリアミドが好ましく、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610及びポリアミド1010よりなる群から選択される1種以上のポリアミドがより好ましく、ポリアミド6及び/又はポリアミド66がさらに好ましい。
【0024】
ポリアミド樹脂は、JIS K−6920に準じて、96質量%の硫酸中、ポリアミド濃度1質量%、温度25℃の条件下にて測定した相対粘度が、1.0以上6.0以下であることが好ましい。この範囲であれば、組成物の溶融時の粘度が適切で、成形が容易で、得られた成形品に良好な機械的特性を付与することができる。同観点から、相対粘度は、1.5以上5.0以下がより好ましく、1.7以上4.5以下がさらに好ましく、2.2以上3.5以下が特に好ましい。
【0025】
射出溶着したときの接着性の観点から、末端カルボキシル基濃度(10
−5eq/g)より末端アミノ基濃度(10
−5eq/g)が大きいポリアミド樹脂が、ポリアミド樹脂に含まれることが好ましく、ポリアミド樹脂の全量が、末端カルボキシル基濃度(10
−5eq/g)より末端アミノ基濃度(10
−5eq/g)が大きいポリアミド樹脂であることがより好ましく、末端カルボキシル基濃度に対する末端アミノ基濃度の比が1.1以上であることが更に好ましく、1.5以上40.0以下が更に好ましい。
【0026】
尚、末端アミノ基濃度(10
−5eq/g)は、ポリアミド樹脂をフェノール/メタノール混合溶液に溶解し、0.05Nの塩酸で滴定して測定することができる。末端カルボキシル基濃度(10
−5eq/g)は、ポリアミド樹脂をベンジルアルコールに溶解し、0.05Nの水酸化ナトリウム溶液で滴定して測定することができる。
【0027】
末端変性ポリアミドは、アミン類の存在下に、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合することにより製造される。あるいは、重合後、アミン類の存在下に、溶融混練することにより製造される。このように、アミン類は、重合時の任意の段階、あるいは、重合後、溶融混練時の任意の段階において添加できるが、射出溶着したときの接着性を考慮した場合、重合時の段階で添加することが好ましい。
【0028】
上記アミン類としてはモノアミン、ジアミン、トリアミン、ポリアミンが挙げられる。また、アミン類の他に、上記の末端基濃度条件の範囲を外れない限り、必要に応じて、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等のカルボン酸類を添加してもよい。これら、アミン類、カルボン酸類は、同時に添加しても、別々に添加してもよい。また、下記例示のアミン類、カルボン酸類は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
添加するモノアミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデシレンアミン、エイコシルアミン、ドコシルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;ベンジルアミン、β−フエニルメチルアミン等の芳香族モノアミン;N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジオクチルアミン等の対称第二アミン;N−メチル−N−エチルアミン、N−メチル−N−ブチルアミン、N−メチル−N−ドデシルアミン、N−メチル−N−オクタデシルアミン、N−エチル−N−ヘキサデシルアミン、N−エチル−N−オクタデシルアミン、N−プロピル−N−ヘキサデシルアミン、N−プロピル−N−ベンジルアミン等の混成第二アミンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
添加するジアミンの具体例としては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、2,5−ビス(アミノメチル)ノルボルナン、2,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン;m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
添加するトリアミンの具体例としては、1,2,3−トリアミノプロパン、1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、1,2,4−トリアミノブタン、1,2,3,4−テトラミノブタン、1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、1,2,3−トリアミノシクロヘキサン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、1,2,3−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノナフタレン、2,5,7−トリアミノナフタレン、2,4,6−トリアミノピリジン等が挙げられる。テトラアミンの具体例としては、1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、1,2,4,5−テトラミノベンゼン、1,2,7,8−テトラミノナフタレン等、1,4,5,8−テトラミノナフタレンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
添加するポリアミンは、一級アミノ基(−NH
2)及び/又は二級アミノ基(−NH−)を複数有する化合物であればよく、例えば、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等が挙げられる。活性水素を備えたアミノ基は、ポリアミンの反応点である。
【0033】
ポリアルキレンイミンは、エチレンイミン、プロピレンイミン等のアルキレンイミンをイオン重合させる方法、或いは、アルキルオキサゾリンを重合させた後、該重合体を部分加水分解又は完全加水分解させる方法等で製造される。ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、或いは、エチレンジアミンと多官能化合物との反応物等が挙げられる。ポリビニルアミンは、例えば、N−ビニルホルムアミドを重合させてポリ(N−ビニルホルムアミド)とした後、該重合体を塩酸等の酸で部分加水分解又は完全加水分解することにより得られる。ポリアリルアミンは、一般に、アリルアミンモノマーの塩酸塩を重合させた後、塩酸を除去することにより得られる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリアルキレンイミンが好ましい。
【0034】
ポリアルキレンイミンとしては、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2−ブチレンイミン、2,3−ブチレンイミン、1,1−ジメチルエチレンイミン等の炭素原子数2以上8以下のアルキレンイミンの1種又は2種以上を常法により重合して得られる単独重合体や共重合体が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンイミンがより好ましい。ポリアルキレンイミンは、アルキレンイミンを原料として、これを開環重合させて得られる1級アミン、2級アミン、及び3級アミンを含む分岐型ポリアルキレンイミン、あるいはアルキルオキサゾリンを原料とし、これを重合させて得られる1級アミンと2級アミンのみを含む直鎖型ポリアルキレンイミン、三次元状に架橋された構造のいずれであってもよい。さらに、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、ジヘキサメチレントリアミン、アミノプロピルエチレンジアミン、ビスアミノプロピルエチレンジアミン等を含むものであってもよい。ポリアルキレンイミンは、通常、含まれる窒素原子上の活性水素原子の反応性に由来して、第3級アミノ基の他、活性水素原子をもつ第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)を有する。
【0035】
ポリアルキレンイミン中の窒素原子数は、特に制限はないが、4以上3,000以下であることが好ましく、8以上1,500以下であることがより好ましく、11以上500以下であることがさらに好ましい。また、ポリアルキレンイミンの数平均分子量は、100以上20,000以下であることが好ましく、200以上10,000以下であることがより好ましく、500以上8,000以下であることがさらに好ましい。
【0036】
一方、添加するカルボン酸類としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイン酸、エチル安息香酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘキサデセン二酸、オクタデカン二酸、オクタデセン二酸、エイコサン二酸、エイコセン二酸、ドコサン二酸、ジグリコール酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、2,4,4−トリメチルアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、m−キシリレンジカルボン酸、p−キシリレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,6−ヘキサントリカルボン酸、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、トリメシン酸等のトリカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
添加されるアミン類の使用量は、製造しようとするポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度、及び相対粘度を考慮して、公知の方法により適宜決められる。通常、繰り返し単位を構成する単量体又は単量体ユニット1モルに対し、アミン類の添加量は、十分な反応性を得ることと、所望の粘度を有するポリアミド樹脂の製造を容易とする観点から、0.5meq/モル以上20meq/モル以下であることが好ましく、1.0meq/モル以上10meq/モル以下であることがより好ましい(アミノ基の当量(eq)は、カルボキシル基と1:1で反応してアミド基を形成するアミノ基の量を1当量とする。)。
【0038】
ポリアミド樹脂においては、上記例示のアミン類のうち、末端基濃度の条件を満たすために、ジアミン及び/又はポリアミンを重合時に添加することが好ましく、ゲル発生抑制という観点から、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン及びポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0039】
ポリアミド樹脂の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0040】
[PAN系炭素繊維]
PAN系炭素繊維は、ポリアクリロニトリル繊維を炭素化して得られる炭素繊維である。
【0041】
PAN系炭素繊維の繊維長は、用途により短繊維のもののほか、1000mmに及ぶ長繊維でもよいが、二軸混練機へのフィード性等の生産性の観点から、混練前の繊維長が0.1mm以上20mm以下であることが好ましく、1mm以上15mm以下であることがより好ましい。
【0042】
また、PAN系炭素繊維の繊維径は、特に制限はされないが、小さい方が樹脂組成物や成形品にしたときの強度を発現しやすいが、小さすぎると混練機へのフィード時などに炭素繊維の解繊により混練時の生産効率が低下する場合もあり、混練機での生産性や強度等の機械物性の観点より、5μm以上15μm以下のものが好ましい。事前に樹脂に炭素繊維を高含有させたマスターバッチや、炭素繊維を顆粒化したものは、ポリアミド樹脂組成物製造時に炭素繊維の解繊が発生しにくいため、微細炭素繊維を用いることが好ましい。
【0043】
[カーボンブラック]
カーボンブラックは、ファーネス法により得られるファーネスブラック、チャンネル法により得られるチャンネルブラック、アセチレン法により得られるアセチレンブラック、サーマル法により得られるサーマルブラックのいずれでもかまわないが、導電性の観点からアセチレンブラックが好ましく、入手性やコストの観点からは、ファーネスブラックが好ましい。
【0044】
[黒色染料]
黒色染料としては、ニグロシンやアニリンブラックが挙げられ、何れを使用しても同様の効果は得られるが、コスト及び成形性の観点から、ニグロシンが好ましい。市販されているニグロシンとしては、オリエント化学工業株式会社のSPIRIT BLACK SB、SPIRIT BLACK AB、SPIRIT BLACK SA、SPIRIT BLACK SZ、ニグロシンベースEE、ニグロシンベースEX、ニグロシンベースEX−BP等が挙げられる。
【0045】
[ガラス繊維]
ポリアミド樹脂組成物は、耐衝撃性を向上させる観点から、ガラス繊維を含むのが好ましい。
【0046】
また、ガラス繊維は、混練機等でのフィード性を考慮すると、収束剤で収束されているのが好ましい。
【0047】
収束剤としては、ポリアミド樹脂との相溶性の観点から、ウレタン樹脂及び/又はアクリル樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂との相溶性をさらに向上させる観点から、アクリル樹脂がさらに好ましい。
【0048】
ガラス繊維は、ポリアミド樹脂中への分散性及び密着性を高める観点から、表面処理剤により表面処理がされていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、シラン系化合物、クロム系化合物、チタン系化合物等が挙げられ、シラン系化合物及び/又はチタン系化合物の表面処理剤が好ましい。
【0049】
シラン系化合物の表面処理剤としては、収束剤との接着に優れたアミノシラン系のカップリング剤が好ましく、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノジチオプロピルトリヒドロキシシラン、γ−(ポリエチレンアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノプロピル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)−エチレンジアミン、γ−ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0050】
チタン系化合物の表面処理剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0051】
これらの中でも、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−アミノプロピルトリエトキシシランよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0052】
ガラス繊維は、長さ方向に直角の断面が円形のガラス繊維及び/又は長さ方向に直角の断面が非円形断面のガラス繊維を用いることができる。
円形断面のガラス繊維の平均繊維径は、特に制限はないが、得られる成形体の寸法安定性及び機械特性の観点から、5μm以上25μm以下が好ましく、5μm以上24μm以下がより好ましく、6μm以上23μm以下がさらに好ましい。
【0053】
円形断面のガラス繊維の平均繊維径はJIS R3420で測定することができる。
【0054】
長さ方向に直角の断面が非円形断面のガラス繊維は、長さ方向に直角の断面における長径と短径の比が1.2〜10を有する。非円形断面のガラス繊維は、低反り性と力学特性の観点から、長さ方向に直角の断面において、長径と短径の比が1.2〜10であることが好ましくは、1.5〜6であることがより好ましくは、1.7〜4.5であることがさらにこのましい。ここで、長径とは、断面図形上の任意の2点間の直線距離が最大になったときの、その距離をとり、短径とは、該長径と直交する直線のうち断面図形と交差する2点間の距離が最小のものをとる。
【0055】
非円形断面のガラス繊維の長径は、2μm以上100μm以下が好ましく、短径は、1μm以上20μm以下が好ましい。
【0056】
非円形断面のガラス繊維は、所定の長径と短径の比を有するものであれば良く、通常、まゆ形、長円形、半円形、円弧形、長方形、平行四辺形又はこれらの類似形のものが用いられる。実用上は、流動性、力学特性、低反り性の観点から、まゆ形、長円形及び長方形が好ましい。
【0057】
[流動改良剤]
流動性を改良する観点からポリアミド樹脂組成物は、流動改良剤を含むことが好ましい。
【0058】
流動改良剤としては、ジカルボン酸、多価アルコールが挙げられ、多価アルコールがポリアミド樹脂との反応性の観点から好ましい。
【0059】
ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸が挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
【0060】
多価アルコールは、多価アルコールそのものはもとより、多価アルコールと脂肪酸との部分エステル化合物、多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と脂肪酸との部分エステル化合物も含まれる。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−/1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−/1,3−/1,4−/1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリ−(トリメチロールプロパン)、トリメチロールブタン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビタン、イソソルバイド、ソルビトール、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース等が挙げられる。
【0061】
これらの中でも、流動性向上の観点から、ペンタエリスリトール、ポリグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ソルビタン及びソルビトールからなる群より選択される1種以上の多価アルコールが好ましく、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリグリセリン、トリメチロールエタン及びトリメチロールプロパンからなる群より選択される1種以上の多価アルコールがより好ましく、混練や成形中の飛散低減及び良好な分散性の観点から、ペンタエリスリトール、ポリグリセリン、ジペンタエリスリトール及びトリメチロールエタンからなる群より選択される1種以上の多価アルコールがさらに好ましく、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリメチロールエタンからなる群より選択される1種以上の多価アルコールが特に好ましい。
【0062】
[ポリアミド樹脂組成物]
ポリアミド樹脂組成物は、組成物全量中に、PAN系炭素繊維を7.5重量%以上25重量%以下で含み、カーボンブラックを0.01重量%以上0.55重量%以下で含み、黒色染料を0.01重量%以上1.0重量%以下で含む。
【0063】
ポリアミド樹脂組成物は、PAN系炭素繊維を、組成物全量中に7.5重量%以上25重量%以下で含み、導電性の観点から、8重量%以上20重量%以下で含むことが好ましく、8重量%以上15重量%以下で含むことがより好ましい。
【0064】
PAN系炭素繊維のポリアミド樹脂に対する含有率は、導電性の観点から、10.0重量%以上40.0重量%以下が好ましく、12.0重量%以上25.0重量%以下がより好ましい。
【0065】
ポリアミド樹脂組成物は、カーボンブラックを、組成物全量中に0.01重量%以上0.55重量%以下で含み、レーザーマーキング性の観点から、0.03重量%以上0.52重量%以下で含むことが好ましく、0.05重量%以上0.5重量%以下で含むことがより好ましい。
【0066】
カーボンブラックのポリアミド樹脂に対する含有率は、レーザーマーキング性の観点から、0.02重量%以上1.20重量%以下が好ましく、0.05重量%以上1.00重量%以下がより好ましい。またPAN系炭素繊維に対するカーボンブラックの含有率は、導電性とレーザーマーキング性の観点から、0.1重量%以上2.5重量%以下が好ましく、0.6重量%以上3.5重量%以下がより好ましい。
【0067】
ポリアミド樹脂組成物は、黒色染料を、組成物全量中に0.01重量%以上1.0重量%以下で含み、レーザーマーキング性、成形性及び耐衝撃性の観点から、0.01重量%以上0.5重量%以下で含むことが好ましく、0.02重量%以上0.5重量%以下で含むことがより好ましく、0.03重量%以上0.3重量%以下で含むことがさらに好ましく、0.05重量%以上0.3重量%以下で含むことが特に好ましい。
【0068】
黒色染料のポリアミド樹脂に対する含有率は、レーザーマーキング性、成形性及び耐衝撃性の観点から、0.02重量%以上2.00重量%以下が好ましく、0.08重量%以上0.75重量%以下がより好ましい。カーボンブラックに対する黒色染料の含有率は、レーザーマーキング性の観点から、1.5重量%以上99.0重量%以下が好ましく、10.0重量%以上90.0重量%以下がより好ましい。
【0069】
ポリアミド樹脂組成物は、ガラス繊維を、組成物全量中に、耐衝撃性の観点から、15重量%以上60重量%で含むことが好ましく、25重量%以上50重量%以下で含むことがより好ましく、30重量%以上45重量%以下で含むことがさらに好ましい。
【0070】
ガラス繊維のポリアミド樹脂に対する含有率は、耐衝撃性の観点から、20重量%以上55重量%以下が好ましく、35重量%以上50重量%以下がより好ましい。
【0071】
ポリアミド樹脂組成物は、流動改良材を、組成物全量中に流動性向上の観点から、0.01重量%以上5重量%以下で含むことが好ましく、0.03重量%以上4重量%以下で含むことがより好ましく、0.05重量%以上3重量%以下で含むことがさらに好ましい。
【0072】
流動改良材のポリアミド樹脂に対する含有率は、流動性向上の観点から、0.02重量%以上10重量%以下が好ましく、0.08重量%以上6.0重量%以下がより好ましい。
【0073】
ポリアミド樹脂組成物は、組成物からPAN系炭素繊維、カーボンブラック、黒色染料、ガラス繊維及び流動改良材を除いた全量に対し、ポリアミド樹脂を、機械的特性の観点から、20重量%以上100重量%以下で含むことが好ましく、70重量%以上100重量%以下で含むことがより好ましく、90重量%以上100重量%以下で含むことがさらに好ましい。
【0074】
ポリアミド樹脂組成物の製造法は、タンブラーやミキサーを用いるドライブレンド法、一軸又は二軸の押出機を用いる溶融混練法、あるいは予め高濃度で原料に一軸又は二軸の押出機を用いて練り込み、これを希釈して使用するマスターバッチ法等が挙げられ、分散性向上の観点から、溶融混練法が好ましい。
【0075】
ポリアミド樹脂組成物には、組成物の特性を損なわない範囲で、通常配合される各種の添加剤、改質剤、強化材、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、フィラー、可塑剤、発泡剤、ブロッキング防止剤、粘着性付与剤、シール性改良剤、防雲剤、離型剤、架橋剤、発泡剤、分散剤、難燃剤、着色剤(顔料、染料等)、カップリング剤、タルク等のガラス以外の無機化合物を含有することができる。
【0076】
また、ポリアミド樹脂組成物には、組成物の特性を損なわない範囲内で、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂を使用してもよい。
【0077】
ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン(PB)、ポリメチルペンテン(TPX)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン(PS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体(MS)、メタクリル酸メチル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)、スチレン/ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン/イソプレン共重合体(SIR)、スチレン/イソプレン/ブタジエン共重合体(SIBR)、スチレン/ブタジエン/スチレン共重合体(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン共重合体(SIS)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体(SEBS)、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン共重合体(SEPS)等のポリスチレン系樹脂、カルボキシル基及びその塩、酸無水物基、エポキシ基等の官能基が含有された上記ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリ(エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレート)共重合体(PET/PEI)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリアリレート(PAR)、液晶ポリエステル(LCP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニルサルホン(PPSU)等のポリサルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンケトンケトン(PEKKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体(NBR)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/アクリル酸メチル共重合体等のポリビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、クロロトリフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン共重合体(CPT)等のフッ素系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエステルアミドイミド等のポリイミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0078】
ポリアミド樹脂組成物は、導電性、レーザーマーキング性が優れるため、レーザーマーキングを必要とする燃料部品に好適に使用することができる。
【0079】
[成形品]
本発明のポリアミド樹脂組成物からなる成形品は、射出成形、押出成形、中空成形、プレス成形、ロール成形、発泡成形、真空・圧空成形、延伸成形などにより成形されるが、生産性の観点から、射出成形が好ましい。すなわち、本発明は前記ポリアミド樹脂組成物の、成形品としての使用及び射出成形品としての使用を包含する。
【0080】
本発明のポリアミド樹脂組成物からなる成形品は、射出溶着部品及びレーザーマーキングを必要とする燃料部品に好適に使用でき、導電性、レーザーマーキング性に優れる事から、レーザーマーキングを必要とする燃料部品に特に好適に使用できる。すなわち、本発明は前記ポリアミド樹脂組成物の、射出溶着部品としての使用及び燃料部品としての使用を包含する。
【実施例】
【0081】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0082】
[相対粘度]
JIS K−6920に準じて、96%の硫酸中、ポリマー濃度1%、温度25℃の条件下で測定した。
【0083】
[末端アミノ基濃度]
末端アミノ基濃度(10
−5eq/g)は、ポリアミド樹脂をフェノール/メタノール混合溶液に溶解し、0.05Nの塩酸で滴定して測定した。
【0084】
[末端カルボキシル基濃度]
末端カルボキシル基濃度(10
−5eq/g)は、ポリアミド樹脂をベンジルアルコールに溶解し、0.05Nの水酸化ナトリウム溶液で滴定して測定した。
【0085】
[レーザーマーキング性]
実施例、比較例のポリアミド樹脂組成物を射出成形機で、100×70×3mmの成形品に成形し、成形した成形品にYVO
4(イットリウム・バナデート)結晶レーザーを用いた株式会社キーエンス製のレーザーマーカを使用し、印字速度1000mm/sec、出力40%、周波数20kHzの条件にて、印字を行った。
上記条件にてマーキングを施した成形品の印字された面を
図1のように、目視で観察を行い、下記基準にて判定を行った。
A:文字を読み取ることが可能である。
B:文字を読み取ることが難しい。
【0086】
[体積抵抗率(絶乾時)]
実施例、比較例のポリアミド樹脂組成物を射出成形機で、100×70×3mmの成形品に成形した後、株式会社三菱化学アナリテックのハイレスタUP MCP−HT450にて、ハイレスタUP MCP−HT450に付属するURSプローブを成形品の表面の中心に接触させ、10Vの電圧を30秒間印加させ、30秒経過時の体積抵抗率を測定した。これを5回行い、数平均した。
放電を抑制する目的から、体積抵抗率10
7Ω・cm以下を合格基準とした。
【0087】
[体積抵抗率(CE10 60℃×1000h処理後)]
実施例、比較例のポリアミド樹脂組成物を射出成形機で、100×70×3mmの成形品に成形した。トルエンとイソオクタンの比が1:1であるFuel Cにエタノール10体積%を加えた合成ガソリンをステンレス製耐圧容器にいれ、その中に成形品を60℃、1000時間浸漬した。その後、成形品を取り出し、23℃、50%RHの雰囲気にて24時間放置し、株式会社三菱化学アナリテックのハイレスタUP MCP−HT450にて、ハイレスタUP MCP−HT450に付属するURSプローブを放置した成形品の表面の中心に接触させ、10Vの電圧を30秒間印加させ、30秒経過時の体積抵抗率を測定した。これを5回行い、数平均した。
放電を抑制する目的から、体積抵抗率10
7Ω・cm以下を合格基準とした。
【0088】
[燃料浸漬後寸法変化率]
実施例、比較例のポリアミド樹脂組成物を射出成形機で、
図2の200mm×40mm×3mmの成形品を作製し、23℃、50%RH雰囲気にて48時間放置後に成形品表面に成形されたケガキ線間距離をOLYMPUS製マイクロスコープにて測定し、燃料浸漬処理前の寸法とした。なお、
図2における数値の単位はmmである。
次にトルエンとイソオクタンの比が1:1であるFuel Cにエタノール10体積%を加えた合成ガソリン(CE10)をステンレス製耐圧容器にいれ、その中に成形品を60℃、1000時間浸漬した後、成形品表面上に成形されたケガキ線間距離をOLYMPUS製マイクロスコープにて測定し燃料浸漬後の寸法とした。
上記にて得られた燃料浸漬前の寸法と燃料浸漬後の寸法を用いて次の計算式にて燃料浸漬後寸法変化率を算出した。なお、燃料浸漬後寸法変化率は、流れ方向(MD方向)と直角方向(TD方向)の両方向について算出した。
燃料浸漬後寸法変化率(%)=(燃料処理後寸法−燃料処理前寸法)/燃料処理前寸法×100
【0089】
[ポリアミド樹脂]
・PA−1
70リットルのオートクレブに重合モノマーとしてε−カプロラクタム20kgに対し水0.5kg、メタキシリレンジアミンを1/290(eq/molラクタム)となるよう仕込み、槽内を窒素置換した後、100℃まで加熱し槽内が均一になるよう攪拌した。次いで槽内を260℃、1.7MPaで重合を行い、ポリアミド6(以下、PA−1と称する場合がある。)を得た。
得られたPA−1の相対粘度、末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度は、それぞれ、2.47、5.9(10
−5eq/g)、4.6(10
−5eq/g)であった。
【0090】
・PA−2
70リットルのオートクレブに重合モノマーとしてε−カプロラクタム20kgに対し水0.5kg、メタキシリレンジアミンを1/290(eq/molラクタム)となるよう仕込み、槽内を窒素置換した後、100℃まで加熱し槽内が均一になるよう攪拌した。次いで槽内を260℃、1.7MPaで重合を行い、ポリアミド6(以下、PA−2と称する場合がある。)を得た。
得られたPA−2の相対粘度、末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度は、それぞれ2.41、9.6(10
−5eq/g)、2.6(10
−5eq/g)であった。
【0091】
・PA−3
JIS K−6920に準じ、96質量%の硫酸中、ポリアミド濃度1質量%、温度25℃の条件で測定した相対粘度、末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度は、それぞれ、2.75、3.7(10
−5eq/g)、6.3(10
−5eq/g)であるポリアミド66(以下、PA−3と称する場合がある。)。
【0092】
・PA−4
JIS K−6920に準じ、96質量%の硫酸中、ポリアミド濃度1質量%、温度25℃の条件で測定した相対粘度、末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度は、それぞれ、3.04、5.2(10
−5eq/g)、4.5(10
−5eq/g)であるポリアミド6/66(以下、PA−4と称する場合がある。)。
【0093】
[PAN系炭素繊維]
・CF−1
PAN系炭素繊維である三菱レイヨン株式会社のTR06NL B6R(以下、CF−1と称する場合がある。)を用いた。
【0094】
[カーボンブラック]
・CB−1
ファーネスブラックであるオリオンエンジニアドカーボンズ株式会社のHI BLACK 890B(以下、CB−1と称する場合がある。)を用いた。
・CB−2
ケッチェンブラックであるライオン株式会社のケッチェンブラックEC600JD(以下、CB−2と称する場合がある。)を用いた。
【0095】
[黒色染料]
・BA−1
ニグロシンであるオリエント化学工業株式会社のSPIRIT BLACK(以下、BA−1と称する場合がある。)を用いた。
【0096】
[ガラス繊維]
・GF−1
ガラス繊維径が13μmの円形断面のガラス繊維である日本電気硝子株式会社のT−249(以下、GF−1と称する場合がある。)を用いた。
・GF−2
ガラス繊維径が10.5μmの円形断面のガラス繊維である日本電気硝子株式会社のT
−249H(以下、GF−2と称する場合がある。)を用いた。
・GF−3
ガラス繊維径が23μmの円形断面のガラス繊維であるオーウェンスコーニングジャパンのCS03TA FT692(以下、GF−3と称する場合がある。)を用いた。
・GF−4
日東紡株式会社製の長さ方向に直角の断面における長径と短径が28μmと7μm、その比が4.0、断面形状が異形のガラス繊維であるCGS 3PA−820S(以下、GF−4と称する場合がある。)を用いた。
【0097】
[流動改良剤]
・FA−1
ペンタエリスリトールである広栄化学工業株式会社製のペンタリット(以下、FA−1と称する場合がある。)を用いた。
・FA−2
三菱ガス化学株式会社製のトリメチロールエタン(以下、FA−2と称する場合がある。)を用いた。
【0098】
[実施例1〜20、比較例1〜6]
表1に記載のポリアミド樹脂、PAN系炭素繊維、カーボンブラック、黒色染料、ガラス繊維と流動改良剤を、表1に記載の割合で二軸押出機を用いて混練し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを用い、上記の方法にて測定、評価した。その結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
日本国特許出願2014−218635号(出願日:2014年10月27日)及び日本国特許出願2014−223413号(出願日:2014年10月31日)の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。