(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材の一方の面に耐熱滑性層が設けられるとともに、他方の面に、熱により昇華する染料を含有する熱昇華性染料層と、被熱転写媒体上の転写画像を覆うように熱転写されて前記転写画像を保護するための熱転写性保護層とが設けられた保護層付き熱転写シートであって、
前記熱転写性保護層は、前記基材の一方の面上に、前記基材から剥離可能な剥離層と、前記被熱転写媒体に熱接着可能な接着層とを、この順に積層して形成されたものであり、
前記剥離層は、重量平均分子量が40000以下であるバインダ樹脂を含有し、
前記接着層は、重量平均分子量が80000以上で且つガラス転移温度が100℃以上であるバインダ樹脂を含有し、
前記剥離層のバインダ樹脂がアクリル系樹脂とポリエステル樹脂の混合物であり、前記ポリエステル樹脂の含有量が前記アクリル系樹脂に対して重量比で0.5%以上5.0%以下である保護層付き熱転写シート。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、スマートフォン等で撮影した写真を印刷する方式として、インクジェット方式、昇華転写記録方式が挙げられる。このうち昇華転写記録方式は、基材上に例えばシアン、マゼンダ、イエローの熱昇華性染料層を形成した熱転写シートと、基材上に熱昇華性染料を受容し得る受容層を形成した熱転写受像シートとを対向して重ね合わせ、プリンタのサーマルヘッドを熱転写シートの熱昇華性染料層を形成していない側に接触させ、画像情報に応じて熱をかけ各熱昇華性染料を熱転写受像シートに所定量移行させることにより画像を形成する。サーマルヘッドに印加する熱量に応じて熱昇華性染料の転写量を細かく制御することができるため、階調表現に優れた画像を得ることが可能である。
【0003】
昇華転写記録方式は記録材料として染料を用いているため、印画物の耐久性が課題となる。印画物の耐久性を担保するために、例えば特許文献1には、基材上に染料層に加えて熱転写可能な保護層を形成した熱転写シートが提案されている。また、特許文献2には、基材上に剥離可能な剥離層を形成し、熱転写受像シートと熱接着可能な接着層を剥離層上に形成してなる保護層を備えた熱転写シートが提案されている。このような保護層付き熱転写シートにおいては、印画時に剥離層は基材から剥離し、接着層と共に熱転写受像シート上に転写される。
【0004】
一般に、保護層の耐久性を向上させようとすると、箔切れ性が悪化する傾向にある。すなわち、熱転写受像シートに保護層を転写する際に、熱転写受像シートの端部に本来転写されるべきではない保護層の剥離片が付随してしまう。プリンタの動作中にこの剥離片が脱落すると、熱転写受像シートの搬送に不具合が生じる可能性があるため、対策が求められている。
【0005】
保護層付き熱転写シートの箔切れ性を改善するため、例えば特許文献3には、エポキシ基に反応する官能基を有するアミノ変性アクリル樹脂とエポキシ硬化剤とを反応させることで得られるガラス転移温度(Tg)が60℃以上の樹脂を、保護層に用いる提案がなされている。
また、特許文献4には、Tgが80℃以上であり、水酸基価が10mgKOH/g以上100mgKOH/g以下のアクリル系ポリオール樹脂を、保護層に用いる提案がなされている。
【0006】
一方、箔切れ性と並ぶ保護層付き熱転写シートの課題として、染料のキックバックが挙げられる。これは、保護層付き熱転写シートの製造工程において、保護層付き熱転写シートをロール状に巻き取り保管している間に染料層の染料が基材の背面に移行し(キック)、小巻加工等の巻き替え工程を経て保管される際に、背面に移行した染料が保護層の表面に再移行(バック)する現象である。染料がキックバックした保護層が印画物に転写されると、印画品位を著しく損なうため改善が求められている。
【0007】
この問題を解決するために、例えば特許文献5には、非ハロゲン系溶剤に可溶で、ガラス転移温度Tgが80℃以上であり、粘度平均分子量が5,000〜100,000の範囲である特定の構成単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂を、保護層に用いる提案がなされている。
また、特許文献6には、水素化ビスフェノールAを30モル%以上及び炭素数3〜6のトリオールを含む炭素数2〜6の脂肪族ポリオールを10〜70モル%含む多価アルコール成分と、イソフタル酸を50モル%以上含む多価カルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステル樹脂を、保護層に用いる提案がなされている。
【0008】
このように、保護層の箔切れ性とキックバックをそれぞれ改善するために特定の樹脂を用いる提案が数多くなされているが、両者を包括する提案はごく少数である。そうした中で、特許文献7には、粘度平均分子量が1,000〜10,000の範囲にあり、ガラス転移温度Tgが80℃以上であるトリシクロデカンジメタノール構造を有する脂環族ポリエステル樹脂を保護層に用いることで、良好な箔切れ性とキックバックの抑制とを両立できると記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示す本実施形態の保護層付き熱転写シート1は、フィルム状の基材2と、基材2の一方の面に設けられた耐熱滑性層3と、基材2の他方の面に設けられた熱昇華性染料層4及び熱転写性保護層5と、を備えている。
熱昇華性染料層4は、熱により昇華する染料を含有し、例えば、イエロー染料層4Y、マゼンタ染料層4M、シアン染料層4Cを少なくとも有する。
【0015】
また、熱転写性保護層5は、熱転写受像シート(被熱転写媒体)7上の図示しない転写画像を覆うように熱転写されて転写画像を保護するためのものであり、熱昇華性染料層4とは積層されておらず、同一面上に設けられている。
熱転写性保護層5は、基材2の他方の面上に、基材2から剥離可能な剥離層5aと、熱転写受像シート7に熱接着可能な接着層5bとを、この順に積層して形成されたものである。剥離層5aは、重量平均分子量が40000以下であるバインダ樹脂を含有し、接着層5bは、重量平均分子量が80000以上で且つガラス転移温度が100℃以上であるバインダ樹脂を含有する。
【0016】
剥離層5aに箔切れ性の改善に適したバインダ樹脂を用い、接着層5bにキックバックの抑制に適したバインダ樹脂を用いるため、剥離層5aにより箔切れ性が改良され、接着層5bによりキックバックが抑制される。そして、これらの組み合わせにより、本実施形態の保護層付き熱転写シート1は、良好な箔切れ性とキックバックの抑制とを高次元で両立している。
【0017】
図2に示す本実施形態の保護層付き印画物6は、
図1に示す保護層付き熱転写シート1を用いて得られるものであり、熱転写受像シート7と、保護層付き熱転写シート1から熱転写受像シート7上に熱転写された熱転写性保護層5と、を有する。すなわち、保護層付き印画物6は、保護層付き熱転写シート1を用いた熱転写により画像が形成された熱転写受像シート7上に、接着層5b、剥離層5aがこの順に積層したものである。
【0018】
保護層付き熱転写シート1の剥離層5aが接着層5bと一体化したまま基材2から剥離し、剥離した接着層5bが熱転写受像シート7に接着することにより、熱転写受像シート7上に接着層5bと剥離層5aからなる熱転写性保護層5が形成され、保護層付き印画物6となる。熱転写受像シート7の転写画像を覆うように熱転写性保護層5を転写すれば、熱転写性保護層5により転写画像を保護することができる。
【0019】
基材2としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ナイロン、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールといった各種プラスチックフィルムを適宜用いることが可能である。この中でも、耐久性、加工性に優れたポリエステルフィルム、とりわけポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好ましく用いられる。基材2の厚みは2μm以上50μm以下が好ましく、転写適性を考慮すると2μm以上9μm以下であることが特に好ましい。
【0020】
熱昇華性染料層4及び熱転写性保護層5の密着性を向上させるため、基材2の表面にコロナ処理、オゾン処理、紫外線処理、プラズマ処理、プライマー処理といった各種接着処理を施してもよい。これらの接着処理は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上の処理を併用してもよい。
【0021】
耐熱滑性層3は、保護層付き熱転写シート1とプリンタのサーマルヘッドの貼り付きを防止して滑り性を付与するために設けられる。耐熱滑性層3は、例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール、ポリエステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル、ポリブタジエン、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ニトロセルロース、酢酸セルロースといったバインダ樹脂に、必要に応じて硬化剤、界面活性剤を添加したもので形成することが可能である。
【0022】
硬化剤としては、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等のイソシアネート類及びその誘導体等が挙げられる。また、界面活性剤としては、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ナトリウム及び長鎖アルキルリン酸エステル等が挙げられる。耐熱滑性層3の乾燥後の塗布量は、0.1g/m
2以上2.0g/m
2以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.2g/m
2以上1.0g/m
2以下の範囲である。
【0023】
熱昇華性染料層4は、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のバインダ樹脂に、イエロー染料層4Y、シアン染料層4C、マゼンタ染料層4Mを構成する染料をそれぞれ配合した塗布液を、塗布、乾燥させることで形成される。熱昇華性染料層4には、その性能を損なわない範囲で、硬化剤、シランカップリング剤、分散剤、粘度調整剤、安定化剤等の公知の添加剤を添加することも可能である。
【0024】
熱昇華性染料層4のイエロー染料層4Yを構成する染料としては、例えばC.I.ソルベントイエロー16、30、33、56、93や、C.I.ディスパースイエロー33、201、231や、C.I.ソルベントオレンジ80や、C.I.ディスパースオレンジ47等が挙げられる。マゼンタ染料層4Mを構成する染料としては、C.I.ソルベントレッド18、19、27、168、207や、C.I.ディスパースレッド60や、C.I.ディスパースバイオレット26、31等が挙げられる。シアン染料層4Cを構成する染料としては、C.I.ソルベントブルー35、36、59、63、94や、C.I.ディスパースブルー24、56、60、72、83、257、354等が挙げられる。これらは単独で、若しくは複数種を混合して用いることが可能である。
【0025】
染料とバインダ樹脂との配合比率(質量比)は、(染料)/(バインダ樹脂)=10/100〜300/100の範囲であることが好ましく、より好ましくは(染料)/(バインダ樹脂)=30/100〜200/100の範囲である。(染料)/(バインダ樹脂)の比率が10/100を下回ると、転写感度が不十分となり熱転写画像の品位が低下するおそれがある。一方、この比率が300/100を超えると、染料が析出しやすくなり保護層付き熱転写シート1の保存安定性が悪化する。
【0026】
また、熱昇華性染料層4の乾燥後の塗布量は0.1g/m
2以上2.0g/m
2以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.2g/m
2以上1.0g/m
2以下の範囲である。熱昇華性染料層4の乾燥後の塗布量が0.1g/m
2未満である場合は、転写感度が不十分となり熱転写画像の品位が低下するおそれがある。一方、塗布量が2.0g/m
2超過である場合は、乾燥性が悪化すると共にコスト高となってしまうおそれがある。
【0027】
転写感度を向上させるために、基材2と熱昇華性染料層4の間に、図示しない下引き層を設けることも可能である。下引き層は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースといった水溶性高分子を主成分として含む塗布液を塗布、乾燥させることによって形成される。下引き層の乾燥後の塗布量は0.05g/m
2以上0.3g/m
2以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.1g/m
2以上0.25g/m
2以下の範囲である。乾燥後の塗布量が0.05g/m
2未満である場合は、基材2又は熱昇華性染料層4との密着性が悪化するおそれがある。一方、乾燥後の塗布量が0.3g/m
2超過である場合は、熱昇華性染料層4への熱伝導を阻害し転写感度が不足するおそれがある。
【0028】
印画物の耐光性、耐熱性並びに耐薬品性を向上させるために、保護層が設けられる。本実施形態の保護層付き熱転写シート1における熱転写性保護層5は、サーマルヘッドを通じて熱が加えられた際に基材2から剥離する剥離層5aと、サーマルヘッドを通じて熱が加えられた際に熱転写受像シート7に背着する接着層5bとを積層してなる。
【0029】
本実施形態の保護層付き熱転写シート1における剥離層5aは、重量平均分子量が40000以下であるバインダ樹脂を含有する。剥離層5aのバインダ樹脂の分子量がこの範囲内にあることにより、熱転写性保護層5の熱転写時の箔切れ性を良好に保つことが可能である。バインダ樹脂の重量平均分子量が40000超過である場合は、熱転写性保護層5の熱転写時の箔切れ性が悪化するおそれがある。
【0030】
剥離層5aのバインダ樹脂は、アクリル系樹脂とポリエステル樹脂の混合物であってもよく、ポリエステル樹脂の含有量はアクリル系樹脂に対して重量比で0.5%以上5.0%以下であってもよい。剥離層5aのバインダ樹脂におけるポリエステル樹脂の含有量がこの範囲内にあることにより、保護層付き熱転写シート1の熱転写部の転写性を良好に保ちつつ、非熱転写部の基材2への密着性を向上させ、箔切れ性を更に良化させることが可能である。ポリエステル樹脂の含有量が0.5%未満である場合は、非熱転写部の基材2への密着性が不十分となるおそれがある。一方、含有量が5.0%超過である場合は、剥離層5aの基材2への密着性が強すぎるがために剥離が重くなり熱転写性保護層5の転写性が悪化するおそれがある。
【0031】
重量平均分子量が40000以下であるアクリル系樹脂の具体例としては、例えば、ダイヤナールMB−2389、BR−83、BR−87、BR−113、BR−116(以上、三菱レイヨン株式会社製)や、アルフオンUP−1170、UP−1500、UH−2000、UH−2170(以上、東亞合成株式会社製)等が挙げられる。
【0032】
重量平均分子量が40000以下であるポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、バイロン200、220、240、270(以上、東洋紡株式会社製)や、アラキード7005N、7018、7036(以上、荒川化学工業株式会社製)や、ペスレジンS−110、S−140、S−180、S−250(以上、高松油脂株式会社製)等が挙げられる。
【0033】
箔切れ性、基材密着性及び透明性を損なわない範囲の量であれば、剥離層5aのバインダ樹脂として、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等を併用することが可能である。
また、剥離層5aのバインダ樹脂には、箔切れ性、基材密着性及び透明性を損なわない範囲の量であれば、離型剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤といった各種添加剤を添加することも可能である。
【0034】
本実施形態の保護層付き熱転写シート1における剥離層5aは、乾燥後の塗布量を0.5g/m
2以上1.0g/m
2以下の範囲としてもよい。塗布量が0.5g/m
2未満である場合は、保護層としての耐久性が不足するおそれがある。一方、塗布量が1.0g/m
2超過である場合は、箔切れ性が悪化するおそれがある。
【0035】
本実施形態の保護層付き熱転写シート1における接着層5bは、重量平均分子量が80000以上で且つガラス転移温度(Tg)が100℃以上であるバインダ樹脂を含有する。接着層5bのバインダ樹脂の分子量及びTgがこの範囲内にあることにより、染料のキックバックが抑制され高品位な印画物を得ることが可能である。バインダ樹脂の重量平均分子量が80000未満である場合や、Tgが100℃未満である場合は、キックバックが悪化するおそれがある。これは、ロール保管時に接着層5bと耐熱滑性層3が接触した際に、耐熱滑性層3の表面に移行した染料が接着層5b中を拡散しやすくなるためと考えられる。
【0036】
接着層5bのバインダ樹脂は、アクリル系樹脂であってもよい。これにより、キックバックの抑制に加えて、転写性、耐久性を良好に保つことが可能である。
重量平均分子量が80000以上で且つガラス転移温度(Tg)が100℃以上であるアクリル樹脂の具体例としては、例えば、ダイヤナールBR−52、BR−73、BR−80、BR−84、BR−85、BR−88(以上、三菱レイヨン株式会社製)等が挙げられる。
【0037】
キックバック耐性、転写性及び耐久性を損なわない範囲の量であれば、接着層5bのバインダ樹脂として、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等を併用することが可能である。
また、接着層5bのバインダ樹脂には、キックバック耐性、転写性及び耐久性を損なわない範囲の量であれば、離型剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤といった各種添加剤を添加することも可能である。
【0038】
本実施形態の保護層付き熱転写シート1における接着層5bは、乾燥後の塗布量を0.2g/m
2以上0.7g/m
2以下の範囲としてもよい。塗布量が0.2g/m
2未満である場合は、印画物の表面の平坦性が悪化して印画品位が損なわれるおそれがある。一方、塗布量が0.7g/m
2超過である場合は、箔切れ性が悪化するおそれがある。
【0039】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(耐熱滑性層の形成)
一方の面に易接着処理を施した厚さ4.5μmのPETフィルムの他方の面に、乾燥後の塗布量が0.5g/m
2になるように下記組成(数値の単位は質量部である)の耐熱滑性層塗布液をグラビアコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥させた。乾燥後40℃で1週間エージング処理を施し、PETフィルムの易接着処理が施されていない面に耐熱滑性層を形成した。
【0040】
<耐熱滑性層塗布液>
アクリルポリオール樹脂 21.0部
ステアリン酸亜鉛 0.40部
リン酸エステル系界面活性剤 3.70部
アルミナ(平均粒子径0.6μm) 0.10部
トリレンジイソシアネート 14.0部
トルエン 42.6部
メチルエチルケトン 18.2部
【0041】
(熱昇華性染料層の形成)
上記PETフィルムの易接着処理が施された面に、乾燥後の塗布量が0.5g/m
2になるように下記組成(数値の単位は質量部である)のイエロー染料層塗布液、マゼンタ染料層塗布液、及びシアン染料層塗布液をグラビアコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥させた。これにより、耐熱滑性層が形成されたPETフィルムの他方の面にイエロー、マゼンタ、シアンの熱昇華性染料層を形成した。
【0042】
<イエロー染料層塗布液>
C.I.ソルベントイエロー93 7.5部
C.I.ソルベントイエロー16 2.5部
ポリビニルアセタール樹脂 10.0部
シリコーン変性樹脂 0.2部
メチルエチルケトン 53.2部
トルエン 26.6部
【0043】
<マゼンタ染料層塗布液>
C.I.ディスパースレッド60 5.0部
C.I.ディスパースバイオレット26 5.0部
ポリビニルアセタール樹脂 10.0部
シリコーン変性樹脂 0.2部
メチルエチルケトン 53.2部
トルエン 26.6部
【0044】
<シアン染料層塗布液>
C.I.ソルベントブルー60 5.0部
C.I.ソルベントブルー36 5.0部
ポリビニルアセタール樹脂 10.0部
シリコーン変性樹脂 0.2部
メチルエチルケトン 53.2部
トルエン 26.6部
【0045】
(保護層の形成)
上記PETフィルムの易接着処理が施された面のうち熱昇華性染料層が形成されていない領域に、乾燥後の塗布量が0.8g/m
2になるように下記組成(数値の単位は質量部である)の剥離層塗布液1をグラビアコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥させることにより剥離層を形成した。引き続き剥離層上に、乾燥後の塗布量が0.5g/m
2になるように下記組成(数値の単位は質量部である)の接着層塗布液1をグラビアコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥させることにより接着層を形成し、保護層付き熱転写シートを得た。
【0046】
<剥離層塗布液1>
アクリル樹脂「ダイヤナールMB−2389」(三菱レイヨン株式会社製、重量平均分子量30000) 19.6部
ポリエステル樹脂「バイロン220」(東洋紡株式会社製)
0.4部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
【0047】
<接着層塗布液1>
アクリル樹脂「ダイヤナールBR−84」(三菱レイヨン株式会社製、重量平均分子量120000、Tg105℃) 20.0部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「チヌビン329」(BASF社製)
5.0部
メチルエチルケトン 75.0部
【0048】
[実施例2]
剥離層を形成する際に下記組成(数値の単位は質量部である)の剥離層塗布液2を用いた点以外は実施例1と同様にして、実施例2の保護層付き熱転写シートを得た。
<剥離層塗布液2>
アクリル樹脂「ダイヤナールBR−83」(三菱レイヨン株式会社製、重量平均分子量40000) 19.05部
ポリエステル樹脂「バイロン220」(東洋紡株式会社製)
0.95部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
【0049】
[実施例3]
剥離層を形成する際に下記組成(数値の単位は質量部である)の剥離層塗布液3を用いた点以外は実施例1と同様にして、実施例3の保護層付き熱転写シートを得た。
<剥離層塗布液3>
アクリル樹脂「アルフオンUP−1170」(東亞合成株式会社製、重量平均分子量8000) 19.9部
ポリエステル樹脂「バイロン220」(東洋紡株式会社製)
0.1部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
【0050】
[実施例4]
接着層を形成する際に下記組成(数値の単位は質量部である)の接着層塗布液2を用いた点以外は実施例1と同様にして、実施例4の保護層付き熱転写シートを得た。
<接着層塗布液2>
アクリル樹脂「ダイヤナールBR−52」(三菱レイヨン株式会社製、重量平均分子量85000、Tg105℃) 20.0部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「チヌビン329」(BASF社製)
5.0部
メチルエチルケトン 75.0部
【0051】
[実施例5]
剥離層塗布液1の乾燥後の塗布量が0.5g/m
2、接着層塗布液1の乾燥後の塗布量が0.7g/m
2になるように塗布した点以外は実施例1と同様にして、実施例5の保護層付き熱転写シートを得た。
【0052】
[実施例6]
剥離層塗布液1の乾燥後の塗布量が1.0g/m
2、接着層塗布液1の乾燥後の塗布量が0.2g/m
2になるように塗布した点以外は実施例1と同様にして、実施例6の保護層付き熱転写シートを得た。
【0053】
[比較例1]
剥離層を形成する際に下記組成(数値の単位は質量部である)の剥離層塗布液4を用いた点以外は実施例1と同様にして、比較例1の保護層付き熱転写シートを得た。
<剥離層塗布液4>
アクリル樹脂「ダイヤナールBR−84」(三菱レイヨン株式会社製、重量平均分子量120000) 19.6部
ポリエステル樹脂「バイロン220」(東洋紡株式会社製)
0.4部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
【0054】
[比較例2]
剥離層を形成する際に下記組成(数値の単位は質量部である)の剥離層塗布液5を用いた点以外は実施例1と同様にして、比較例2の保護層付き熱転写シートを得た。
<剥離層塗布液5>
アクリル樹脂「ダイヤナールMB−2389」(三菱レイヨン株式会社製、重量平均分子量30000) 20.0部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
【0055】
[比較例3]
接着層を形成する際に下記組成(数値の単位は質量部である)の接着層塗布液3を用いた点以外は実施例1と同様にして、比較例3の保護層付き熱転写シートを得た。
<接着層塗布液3>
アクリル樹脂「ダイヤナールBR−83」(三菱レイヨン株式会社製、重量平均分子量40000、Tg105℃) 20.0部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「チヌビン329」(BASF社製)
5.0部
メチルエチルケトン 75.0部
【0056】
[比較例4]
接着層を形成する際に下記組成(数値の単位は質量部である)の接着層塗布液4を用いた点以外は実施例1と同様にして、比較例4の保護層付き熱転写シートを得た。
<接着層塗布液4>
アクリル樹脂「ダイヤナールBR−75」(三菱レイヨン株式会社製、重量平均分子量85000、Tg90℃) 20.0部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「チヌビン329」(BASF社製)
5.0部
メチルエチルケトン 75.0部
【0057】
[比較例5]
剥離層塗布液1の乾燥後の塗布量が1.2g/m
2になるように塗布した点以外は実施例1と同様にして、比較例5の保護層付き熱転写シートを得た。
[比較例6]
接着層塗布液1の乾燥後の塗布量が1.0g/m
2になるように塗布した点以外は実施例1と同様にして、比較例6の保護層付き熱転写シートを得た。
【0058】
<熱転写受像シートの作製>
(発泡フィルムの貼り合わせ)
両面をポリプロピレンで被覆したレジンコート紙の両面に、発泡ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製「OPL−BT」)を押出しラミネート法にて加工速度50m/mim、樹脂温度320℃で貼り合わせた。
【0059】
(下引き層の形成)
ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製「PVA424H」)3質量部を純水87質量部とイソプロピルアルコール10質量部の混合溶媒に溶解し、下引き層塗布液を調整した。基材の一方の面にコロナ処理を施した後に、乾燥後の塗布量が1.5g/m
2になるように下引き層塗布液をグラビアコーターで塗布し、90℃で1分間乾燥させることにより、基材の一方の面に下引き層を形成した。
【0060】
(染料受容層の形成)
下引き層を形成した基材の一方の面にコロナ処理を施した後に、乾燥後の塗布量が2.0g/m
2になるように下記組成(数値の単位は質量部である)の染料受容層塗布液をグラビアコーターで塗布し、90℃で1分間乾燥させることにより評価用の熱転写受像シートを得た。
【0061】
<染料受容層塗布液>
塩化ビニル系エマルジョン「ビニブラン902」(日信化学工業株式会社製、固形分50質量%) 58.4部
ポリエーテル変性シリコーンオイル「KF−354L」(信越化学工業株式会社製) 0.8部
純水 37.3部
イソプロピルアルコール 3.5部
【0062】
<箔切れ性の評価>
実施例1〜6、比較例1〜6の保護層付き熱転写シートを用い、印画速度1.5msec/line、解像度300×300DPIの評価用サーマルプリンタにて、熱転写受像シートに保護層付き黒ベタ画像を印画した。熱転写受像シートの端部にはみ出した保護層の剥離片の長さを測定し、以下の判定基準にて箔切れ性を評価した。
【0063】
◎:剥離片の長さが20μm以下
○:剥離片の長さが20μm超過50μm以下
△:剥離片の長さが50μm超過100μm以下
×:剥離片の長さが100μm超過
【0064】
<キックバックの評価>
実施例1〜6、比較例1〜6の保護層付き熱転写シートのイエロー染料層と耐熱滑性層とを重ね合わせ、4kg/cm
2の面圧をかけて温度23℃、相対湿度50%の環境で24時間静置することにより、イエロー染料を耐熱滑性層の表面に移行させた。次に、この耐熱滑性層と保護層付き熱転写シートの熱転写性保護層とを重ね合わせ、4kg/cm
2の面圧をかけて温度40℃、相対湿度20%の環境で72時間静置することにより、イエロー染料を熱転写性保護層の表面に再移行(キックバック)させた。続いて、染料がキックバックした熱転写性保護層を、評価用サーマルプリンタを用いて熱転写受像シートに転写して、印画物を得た。そして、得られた印画物と、染料がキックバックしていない熱転写性保護層を転写して得られた印画物との色差Δabを測定し、以下の判定基準にて耐キックバック性を評価した。
【0065】
◎:色差Δabが0.5以下
○:色差Δabが0.5超過1.5以下
△:色差Δabが1.5超過3.0以下
×:色差Δabが3.0超過
【0067】
評価結果を表1に示す。実施例1〜6の保護層付き熱転写シートは、いずれも剥離片の長さが50μm以下と目視では視認出来ないレベルであり、キックバックの指標となる色差Δabも1.5以下と小さな値であった。これに対し、比較例1〜6の保護層付き熱転写シートは、剥離片が視認される長さ(100μm以上)であるか、又は、目視にて明らかなキックバックが認められる色差Δab(3.0以上)であった。