特許第6822225号(P6822225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6822225
(24)【登録日】2021年1月12日
(45)【発行日】2021年1月27日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20210114BHJP
   A01B 63/04 20060101ALI20210114BHJP
   A01B 63/08 20060101ALI20210114BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20210114BHJP
【FI】
   B60T7/12 B
   A01B63/04
   A01B63/08
   A01B69/00 302
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-42624(P2017-42624)
(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公開番号】特開2018-144684(P2018-144684A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楫野 豊
【審査官】 羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−306163(JP,A)
【文献】 特開2001−247019(JP,A)
【文献】 特開2003−219707(JP,A)
【文献】 特開2010−029192(JP,A)
【文献】 特開平08−207823(JP,A)
【文献】 特開2005−262908(JP,A)
【文献】 特開平08−310358(JP,A)
【文献】 実開昭53−138091(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0325782(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00−69/08
B60T 7/12−8/1769
B60T 8/32−8/96
B62D 9/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体と、
前記走行車体に設けられた左右一対の後輪をそれぞれ別々に制動可能な左右一対の後輪ブレーキ装置と、
前記左右一対の後輪ブレーキ装置を作動させる左右一対のブレーキペダルと、
前記走行車体が旋回する場合に旋回内側の前記後輪に対応する前記後輪ブレーキ装置を介して前記旋回内側の前記後輪に印加するブレーキ圧力を予め設定するブレーキ圧力設定スイッチと、
前記走行車体が前記旋回を開始した場合、前記旋回内側の前記後輪に対して、前記ブレーキ圧力を印加する制御装置と、
前記旋回の途中において、前記予め設定された前記ブレーキ圧力を変更するブレーキ圧力変更部と、
前記走行車体の後方に連結される作業機を昇降させる昇降機構と、
前記昇降機構の上昇・下降を操作する昇降操作スイッチと、
を備え、
前記制御装置は、前記ブレーキ圧力変更部からの出力に基づいて、前記旋回の途中において前記予め設定された前記ブレーキ圧力を変更し、
前記昇降操作スイッチは、前記ブレーキ圧力変更部を兼ねており、
前記制御装置は、前記走行車体が前記旋回を行っている間は、前記昇降操作スイッチによる操作指令を、前記昇降機構の上昇・下降の操作を意味するものとして受け付けず、前記ブレーキ圧力変更部からの前記予め設定された前記ブレーキ圧力の変更指令として受け付け、前記走行車体が前記旋回を行っていない間は、前記昇降操作スイッチによる操作指令を、前記昇降機構の上昇・下降の操作を意味するものとして受け付ける、ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記予め設定されたブレーキ圧力を断続的に変更する、ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記予め設定されたブレーキ圧力を連続的に変更する、ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両の旋回時に自動的に旋回内側の片ブレーキが作動する構成において、制動力を弱制動にして圃場表面の荒れを防止する技術が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−151142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、自動ブレーキの制動力を弱めると旋回半径が大きくなりすぎる場合があり、その場合は運転者が旋回内側に対応するブレーキペダルを踏んで制動力を高める必要があり操作が面倒であった。
【0005】
本発明では、自動ブレーキによる旋回時に例えば制動力が不足しても、簡単にブレーキの制動力を調整できる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、
走行車体と、
前記走行車体に設けられた左右一対の後輪をそれぞれ別々に制動可能な左右一対の後輪ブレーキ装置と、
前記左右一対の後輪ブレーキ装置を作動させる左右一対のブレーキペダルと、
前記走行車体が旋回する場合に旋回内側の前記後輪に対応する前記後輪ブレーキ装置を介して前記旋回内側の前記後輪に印加するブレーキ圧力を予め設定するブレーキ圧力設定スイッチと、
前記走行車体が前記旋回を開始した場合、前記旋回内側の前記後輪に対して、前記ブレーキ圧力を印加する制御装置と、
前記旋回の途中において、前記予め設定された前記ブレーキ圧力を変更するブレーキ圧力変更部と、
前記走行車体の後方に連結される作業機を昇降させる昇降機構と、
前記昇降機構の上昇・下降を操作する昇降操作スイッチと、
を備え、
前記制御装置は、前記ブレーキ圧力変更部からの出力に基づいて、前記旋回の途中において前記予め設定された前記ブレーキ圧力を変更し、
前記昇降操作スイッチは、前記ブレーキ圧力変更部を兼ねており、
前記制御装置は、前記走行車体が前記旋回を行っている間は、前記昇降操作スイッチによる操作指令を、前記昇降機構の上昇・下降の操作を意味するものとして受け付けず、前記ブレーキ圧力変更部からの前記予め設定された前記ブレーキ圧力の変更指令として受け付け、前記走行車体が前記旋回を行っていない間は、前記昇降操作スイッチによる操作指令を、前記昇降機構の上昇・下降の操作を意味するものとして受け付ける、ことを特徴とする作業車両である。
また、第2の本発明は、
前記制御装置は、前記予め設定されたブレーキ圧力を断続的に変更する、ことを特徴とする上記第1の本発明の作業車両である。
また、第3の本発明は、
前記制御装置は、前記予め設定されたブレーキ圧力を連続的に変更する、ことを特徴とする上記第1の本発明の作業車両である。
本発明に関連する第1の明は、
走行車体と、
前記走行車体に設けられた左右一対の後輪をそれぞれ別々に制動可能な左右一対の後輪ブレーキ装置と、
前記左右一対の後輪ブレーキ装置を作動させる左右一対のブレーキペダルと、
前記走行車体が旋回する場合に旋回内側の前記後輪に対応する前記後輪ブレーキ装置を介して前記旋回内側の前記後輪に印加するブレーキ圧力を予め設定するブレーキ圧力設定スイッチと、
前記走行車体が前記旋回を開始した場合、前記旋回内側の前記後輪に対して、前記ブレーキ圧力を印加する制御装置と、
前記旋回の途中において、前記予め設定された前記ブレーキ圧力を変更するブレーキ圧力変更部と、
を備え、
前記制御装置は、前記ブレーキ圧力変更部からの出力に基づいて、前記旋回の途中において前記予め設定された前記ブレーキ圧力を変更する、ことを特徴とする作業車両である。
【0007】
これにより、自動ブレーキによる旋回時に例えばブレーキ圧力が不足しても、簡単にブレーキ圧力を調整することが出来る。
【0008】
また、本発明に関連する第2の明は、
前記制御装置は、前記予め設定されたブレーキ圧力を断続的に変更する、ことを特徴とする上記本発明に関連する第1の明の作業車両である。
【0009】
これにより、上記本発明に関連する第1の明の効果に加えて、簡単な操作でブレーキ圧力を断続的に変更することが出来る。
【0010】
また、本発明に関連する第3の明は、
前記制御装置は、前記予め設定されたブレーキ圧力を連続的に変更する、ことを特徴とする上記本発明に関連する第1の明の作業車両である。
【0011】
これにより、上記本発明に関連する第1の明の効果に加えて、簡単な操作でブレーキ圧力を連続的に変更することが出来る。
【0012】
また、本発明に関連する第4の明は、
前記走行車体の後方に連結される作業機を昇降させる昇降機構と、
前記昇降機構の上昇・下降を操作する昇降操作スイッチと、を備え、
前記昇降操作スイッチは、前記ブレーキ圧力変更部を兼ねており、
前記制御装置は、前記走行車体が前記旋回を行っている間は、前記昇降操作スイッチによる操作指令を、前記昇降機構の上昇・下降の操作を意味するものとして受け付けず、前記ブレーキ圧力変更部からの前記予め設定された前記ブレーキ圧力の変更指令として受け付け、前記走行車体が前記旋回を行っていない間は、前記昇降操作スイッチによる操作指令を、前記昇降機構の上昇・下降の操作を意味するものとして受け付ける、ことを特徴とする上記本発明に関連する第1乃至第3の何れか一つの本発明に関連する発明の作業車両である。
【0013】
これにより、上記本発明に関連する第1乃至3の何れか一つの本発明に関連する発明の効果に加えて、昇降操作スイッチが、ブレーキ圧力変更部の機能を兼用するので、新たなスイッチ類を追加する必要がない。
【0014】
また、本発明に関連する第5の明は、
走行車体と、
前記走行車体に設けられた左右一対の後輪をそれぞれ別々に制動可能な左右一対の後輪ブレーキ装置と、
前記走行車体が旋回する場合に旋回内側の前記後輪に対応する前記後輪ブレーキ装置を介して前記旋回内側の前記後輪に印加するブレーキ圧力を予め設定するブレーキ圧力設定スイッチと、
前記走行車体が前記旋回を開始した場合、前記旋回内側の前記後輪に対して、前記ブレーキ圧力を印加する制御装置と、
前記走行車体の旋回中における旋回角速度を検出する旋回角速度センサと、を備え、
前記制御装置が、前記旋回角速度センサにより検出された前記旋回角速度が所定の閾値より小さいと判定した場合、前記制御装置は、前記旋回の途中において前記予め設定された前記ブレーキ圧力を増加させる方向に変更する、ことを特徴とする作業車両である。
【0015】
これにより、自動ブレーキによる旋回時に例えばブレーキ圧力が不足しても、自動的にブレーキ圧力を増加させることが出来るので、適切な旋回が行えると共に作業性の向上が図れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自動ブレーキによる旋回時に例えばブレーキ圧力が不足しても、簡単にブレーキ圧力を調整することが出来る作業車両を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態のトラクタの全体左側面図
図2】本実施の形態のトラクタの操縦座席側からステアリングホイール側を見た概略斜視図
図3】本実施の形態のトラクタの昇降切替レバー周辺の斜視図
図4】本実施の形態のトラクタのメータパネルを示す図
図5】本実施の形態のトラクタの操作パネル上に設けられた各種スイッチ類を示す斜視図
図6】本実施の形態のトラクタにおける動力伝動機構、及び自動ブレーキ機構における油圧回路を示す模式図
図7】本実施の形態のトラクタの制御ブロック図
図8】本実施の形態のトラクタにおける自動ブレーキのブレーキ圧力の変化を示す模式図
図9】(a):自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力P0を、ΔPだけ連続的に増加させてブレーキ圧力をP1に変更する構成の圧力変化の一例を示す模式図、(b):自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力P0を、ΔPだけ連続的に減少させてブレーキ圧力をP2に変更する構成の圧力変化の一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の作業車両の一実施の形態のトラクタについて、図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の作業車両の一例として示すトラクタ1の全体左側面図である。
【0020】
図2は、本実施の形態のトラクタ1の操縦座席8側からステアリングホイール9側を見た概略斜視図である。
【0021】
図3は、本実施の形態のトラクタ1の昇降切替レバー14周辺の斜視図である。
【0022】
図1に示す通り、本実施の形態のトラクタ1は、走行車体2の前部に搭載され、ボンネット内に配置されたエンジン3からの動力を動力伝動機構100で適宜に変速して、PTO出力軸6に伝達すると共に、左右一対の前輪4L、4Rと左右一対の後輪5L、5Rの両方、或は左右一対の後輪5L、5Rのみを駆動する構成である。
【0023】
これにより、走行車体2の後部に設けられたキャビン7内に配置された操縦座席8に座った作業者がステアリングホイール9を操作して左右一対の前輪4L、4Rを操向しながら走行する。
【0024】
走行車体2の後方へ突出するロワリンク10には、ロータリ耕運機等の作業機11を着脱可能に装着し、動力伝動機構100から後方へ向かって突出するPTO出力軸6からの動力により上記作業機11を駆動する。
【0025】
また、前端側が作業機昇降シリンダ12aに連結されており、且つ後端側がロワリンク10に連結されている、作業機11を昇降させるための昇降装置12が走行車体2の後部に設けられている。
【0026】
また、操縦座席8の前方下方における、作業者の右側の足元のフロアーには、左ブレーキペダル13Lと右ブレーキペダル13Rが設けられており(図2参照)、左右一対の後輪5L、5Rに対して、それぞれ個別にブレーキをかけることが出来る構成である。
【0027】
また、ステアリングホイール9の右側下方には、昇降装置12を作動させる昇降切替レバー14が略上下方向に移動可能に配置されている(図3の矢印A、矢印B参照)。
【0028】
即ち、トラクタ1が停止中又は直進走行中において、作業者が右手の指先で昇降切替レバー14を「上げ」方向(図3の矢印A参照)に倒すことにより、昇降切替レバー14の根元側に配置された作業機上げスイッチ20からのON信号が作業機昇降制御部320に送信されると、作業機昇降制御部320は、旋回走行中でないときに受信した作業機上げスイッチ20からのON信号は、昇降装置12の上昇操作を意味するものと判断し、メイン上昇ソレノイド21に指令を出し、作業機昇降シリンダ12aを昇降装置12の上昇方向に作動させ、最上げ位置まで作動させる構成である(図7参照)。
【0029】
また、上記と逆に、トラクタ1が停止中又は直進走行中において、作業者が右手の指先で昇降切替レバー14を「下げ」方向(図3の矢印B参照)に倒すことにより、昇降切替レバー14の根元側に配置された作業機下げスイッチ22からのON信号が作業機昇降制御部320に送信されると、作業機昇降制御部320は、旋回走行中でないときに受信した作業機下げスイッチ22からのON信号は、昇降装置12の下降操作を意味するものと判断し、メイン下降ソレノイド23に指令を出し、作業機昇降シリンダ12aを昇降装置12の下降方向に作動させる構成である(図7参照)。この場合、昇降装置12(即ち作業機11)の下げ位置は、昇降レバーセンサ24で検知される構成であり、予め昇降レバー(図示省略)で設定された下げ位置に昇降装置12が到達したことが検知されると、作業機昇降制御部320からの作業機下降停止指令により、昇降装置12の下降が停止される。
【0030】
なお、トラクタ1が旋回を開始する場合は、作業機昇降制御部320からの指令により昇降装置12が自動的に上昇する。
【0031】
また、本実施の形態のトラクタ1では、トラクタ1が旋回走行中において、作業者が右手の指先で昇降切替レバー14を「上げ」方向(図3の矢印A参照)に倒すことにより、昇降切替レバー14の根元側に配置された作業機上げスイッチ20からのON信号が作業機昇降制御部320に送信された場合、作業機昇降制御部320は、昇降装置12の上昇操作を意味するものとして受け付けず、旋回走行中に作動する後述する自動ブレーキのブレーキ圧力の変更指令として受け付ける。
【0032】
即ち、本実施の形態では、昇降切替レバー14と作業機上げスイッチ20と作業機下げスイッチ22は、昇降装置12を昇降操作する機能の他に、自動ブレーキのブレーキ圧力を変更操作する機能をも兼ね備えている。この点については、更に後述する。
【0033】
また、ステアリングホイール9の前側には、メータパネル15が配置されており(図2図4参照)、例えば、エンジン3の状態や作業機11の昇降状態、機体の走行速度、後述する自動ブレーキが作動中においてLEDランプが点灯することでオートブレーキモニタ15aとして表示されると共に、後述する自動ブレーキの初期設定の変更内容をタッチパネル15bに表示される入力スイッチ15c(図7参照)から入力することが出来る。
【0034】
また、操縦座席8の右側に設けられた操作パネル16上には、図5に示す様に、後述する自動ブレーキ機能を入り切りするための自動ブレーキ入り切りスイッチ17や、ブレーキ圧力(制動力)を設定するためのブレーキ圧力設定ダイヤル18等の各種スイッチ類が配置されている。
【0035】
図4は、本実施の形態のトラクタ1のメータパネル15を示す図である。
【0036】
図5は、本実施の形態のトラクタ1の操作パネル16上に設けられた各種スイッチ類を示す斜視図である。
【0037】
次に、本実施の形態のトラクタ1における動力伝動機構100、及び自動ブレーキ機構200について、主として図6図7を用いて説明する。
【0038】
図6は、本実施の形態のトラクタ1における動力伝動機構100、及び自動ブレーキ機構200における油圧回路を示す模式図である。
【0039】
図7は、本実施の形態のトラクタ1の制御ブロック図である。
【0040】
本実施の形態のトラクタ1の動力伝動機構100は、エンジン3からの動力を正回転又は逆回転に切り替える前後進クラッチ110と、正回転又は逆回転に切り替えられた駆動力を多段変速クラッチ(図示省略)等により変速する主変速部120と、主変速部120により変速された駆動力を更に複数段に変速する副変速部130と、副変速部130により変速された駆動力を左右一対の後輪5L、5Rに伝達する後輪差動ギヤ機構140と、後輪差動ギヤ機構140の直前から分岐された駆動力を、前輪が後輪と等速で駆動される様に前輪側に伝達するか、又は前輪が後輪よりも高速で駆動される様に前輪側に伝達するかの伝達切替可能な4WDクラッチ150と、4WDクラッチ150からの駆動力を左右一対の前輪4L、4Rに伝達する前輪差動ギヤ機構160等から構成されている。
【0041】
なお、4WDクラッチ150は、走行制御部310からの指令により4WDソレノイド151が作動することで、前輪が後輪と等速で駆動される様に伝達経路の切り替えが行われ、また、走行制御部310からの指令により前輪増速ソレノイド152が作動することで、前輪が後輪よりも高速で駆動される様に伝達経路の切り替えが行われる(図6図7参照)。
【0042】
ここで、本実施の形態のトラクタ1の自動ブレーキ機構200を説明する前に左右一対のブレーキペダル13L、13Rと、左右一対の後輪ブレーキ装置との関係について説明する。
【0043】
本実施の形態のトラクタ1の後輪の駆動軸には、左右一対の後輪5L、5Rをそれぞれ個別に制動可能な左右一対のブレーキ装置210L、210R(図6参照)が設けられており、この左ブレーキ装置210L及び右ブレーキ装置210Rと、上述した左ブレーキペダル13L及び右ブレーキペダル13Rとが、それぞれ、左ブレーキシリンダ220L及び右ブレーキシリンダ220Rと、連係ロッド230とを介して連動可能に連結されている(図6参照)。
【0044】
これにより、作業者が、左右のブレーキペダル13L、13Rを個別に踏み込むことにより、左右のブレーキ装置210L、210Rをそれぞれ個別に作動させ、左右の後輪5L、5Rをそれぞれ個別に制動することが出来る構成である。
【0045】
次に、主として図6図7を用いて、本実施の形態のトラクタ1の自動ブレーキ機構200の油圧系と制御系を中心に説明する。
【0046】
本実施の形態の自動ブレーキ機構200における油圧回路は、図6に示す様に、ポンプ240からの作動油が、比例調圧弁250、及び制御弁260等を介して左ブレーキシリンダ220L、及び右ブレーキシリンダ220R等に供給される構成である。
【0047】
比例調圧弁250から制御弁260側に出力される作動油の設定圧力は、走行制御部310から比例調圧ソレノイド251への指令により任意の圧力に設定可能である。
【0048】
例えば、旋回時における自動ブレーキ機能を作動させる場合、作業者が、作業開始前にブレーキ圧力設定ダイヤル18を用いて所望のブレーキ圧力を初期設定することで、ブレーキ圧力の初期設定値のデータが、操作パネル16を介して走行制御部310に設けられたメモリ部311に格納される(図5図7参照)。
【0049】
また、本実施の形態のトラクタ1では、図8に示す様に、ブレーキ圧力設定ダイヤル18により予め設定した初期設定値のブレーキ圧力P0を、旋回走行中において昇降切替レバー14を「上げ」側に倒すという簡単な操作を続けている間だけ、断続的にΔPだけ増加させることが出来る構成である。
【0050】
図8は、本実施の形態のトラクタ1における自動ブレーキのブレーキ圧力の変化を示す模式図である。
【0051】
即ち、作業者は、作業開始前に、ブレーキ圧力設定ダイヤル18を用いてブレーキ圧力P0を初期設定する他に、旋回走行中においてブレーキ圧力P0を断続的に増加させる場合を想定して、圃場の状態などを考慮して、メータパネル15のタッチパネル15bに表示される入力スイッチ15cを用いて、そのブレーキ圧力の増加分ΔP、増加分ΔPを印加する時間Ton、及び増加分ΔPを印加しない時間Toffを任意に設定することが出来る(図8参照)。入力スイッチ15cから入力された自動ブレーキの初期設定の変更内容(ΔP、Ton、Toff)は、メータパネル15を介して走行制御部310に設けられたメモリ部311に格納される(図7参照)。
【0052】
また、左右一対の前輪4L、4Rの操舵角を検知する操舵角センサ270による検知結果は、走行制御部310に送信される構成である(図7参照)。
【0053】
また、制御弁260は、図6図7に示す様に、(1)操舵角センサ270の検知結果に基づいた、走行制御部310から左ブレーキソレノイド261へ送信される指令により、比例調圧弁250からの作動油を左ブレーキシリンダ220Lに供給し、且つ右ブレーキシリンダ220Rを排油状態とする左旋回制動回路、(2)操舵角センサ270の検知結果に基づいた、走行制御部310から右ブレーキソレノイド262へ送信される指令により、比例調圧弁250からの作動油を右ブレーキシリンダ220Rに供給し、且つ左ブレーキシリンダ220Lを排油状態とする右旋回制動回路、及び(3)操舵角センサ270の検知結果に基づいて走行制御部310から上記何れの指令も送信されない場合には、比例調圧弁250からの作動油を左右のブレーキシリンダ220L、220Rの何れにも供給しない非制動回路の3通りの油圧回路に切り替え可能に構成されている。
【0054】
これにより、自動ブレーキ入り切りスイッチ17が入り状態で、圃場内を走行中のトラクタ1において、例えば、作業者がステアリングホイール9を操作して左旋回し始めた場合、操舵角センサ270が前輪4Lの操舵角を検知し、その検知結果を走行制御部310に送信する。走行制御部310は、その検知結果からトラクタ1が所定角度以上に左旋回していると判定すると、左ブレーキソレノイド261に対して指令を出し、制御弁260が上述した左旋回制動回路に切り替わる。
【0055】
また、これと同時に、走行制御部310は、トラクタ1が所定角度以上に左旋回していると判定すると、作業機昇降制御部320にその旨の情報を送信し、その旨の情報を受けた作業機昇降制御部320は、メイン上昇ソレノイド21に指令を出して、作業機昇降シリンダ12aを昇降装置12の最上げ位置まで作動させる。
【0056】
一方、比例調圧弁250から制御弁260側に出力される作動油の設定圧力は、走行制御部310からの指令により、予めメモリ部311に格納されている初期設定値のブレーキ圧力P0に設定されている。そのため、比例調圧弁250からのブレーキ圧力P0の作動油が左ブレーキシリンダ220Lに供給されると共に、右ブレーキシリンダ220Rは排油状態となり、左側後輪5Lに設けられた左ブレーキ装置210Lが初期設定されたブレーキ圧力P0で制動側に作動する。
【0057】
また、作業者がステアリングホイール9を操作して右旋回し始めた場合についても、上記と逆の動作により、右側後輪5Rに設けられた右ブレーキ装置210Rがブレーキ圧力P0で制動側に作動する。
【0058】
この様に、自動ブレーキ入り切りスイッチ17が「入り」状態の場合、旋回走行が開始されると、自動ブレーキ機能が自動的に作動するので、初期設定のブレーキ圧力P0を弱制動に予め設定することで、圃場面の荒れを防止しながらコンパクトな旋回が可能となる。
【0059】
なお、走行制御部310は、操舵角センサ270の検知結果からトラクタ1が右旋回又は左旋回していると判定した場合、前輪増速ソレノイド152に指令を出して、前輪4L、4Rが後輪5L、5Rよりも高速で駆動させ、また、操舵角センサ270の検知結果からトラクタ1が直進走行していると判定した場合、4WDソレノイド151に指令を出し、前輪4L、4Rと後輪5L、5Rとを等速で駆動させる構成である。
【0060】
次に、トラクタ1が旋回走行中において、作業者の操作により、初期設定されたブレーキ圧力P0が断続的に増加される場合について説明する。
【0061】
例えば、左旋回走行中において、作業者は、旋回が想定より大回りになっていると判断した場合、即座に右手の指先で昇降切替レバー14を「上げ」側に倒す操作を行う(図3の矢印A参照)。
【0062】
この場合、トラクタ1が左旋回走行中であるので、作業機上げスイッチ20からのON信号を受信した作業機昇降制御部320は、昇降装置12の上昇操作を意味するものとして受け付けず、旋回走行中に作動している自動ブレーキのブレーキ圧力P0の変更指令として受け付けて、その変更指令を走行制御部310に送信する。
【0063】
なお、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力が予め定めた弱制動の値を超えていると、走行制御部310が判定した場合は、当該変更指令を実行しない構成である。
【0064】
変更指令を受信した走行制御部310は、メモリ部311に予め格納されている初期設定のブレーキ圧力P0のデータと、メモリ部311に予め格納されている初期設定の変更内容、即ち、増加分ΔP、増加分ΔPを印加する時間Ton、及び増加分ΔPを印加しない時間Toffのデータとを用いて、演算部312で演算する。そして、走行制御部310は、その演算結果として、変更後の増加ブレーキ圧力P1(=P0+ΔP)をTon時間印加し、初期設定のブレーキ圧力P0をToff時間印加するという変更後のデータ(図8参照)を新たにメモリ部311に格納し、そのメモリ部311に格納された変更後のデータを利用して、作業者が昇降切替レバー14を「上げ」側に倒す操作を続けている間だけ、増加ブレーキ圧力P1と初期設定のブレーキ圧力P0とを交互に繰り返し印加する様に、比例調圧ソレノイド251に指令を出す。
【0065】
これにより、左側後輪5Lへの制動圧力が増加して、左旋回走行の旋回半径がより小さくなる。
【0066】
そして、左旋回が想定通りコンパクトに行われていると作業者が判断すると、昇降切替レバー14を「上げ」側に倒す操作をやめる。それにより、昇降切替レバー14は即座にかつ自動的に中立位置に戻り、作業機上げスイッチ20からのON信号が作業機昇降制御部320に送信されなくなるので、走行制御部310は、メモリ部311に格納されている初期設定のブレーキ圧力P0を印加する様に、比例調圧ソレノイド251に指令を出す。
【0067】
これにより、旋回走行中において、作業者は、旋回が想定より大回りになっていると判断した場合、即座に右手の指先で昇降切替レバー14を「上げ」側に倒すという簡単な操作を行うだけで(図3の矢印A参照)、確実にかつ安定的に旋回半径を小さくすることが出来る。
【0068】
また、自動ブレーキのブレーキ圧力を簡単なレバー操作だけで、自動で断続的に圧力の変更を繰り返すことができるので、旋回走行中において、作業者が、右足で旋回方向に対応する右ブレーキペダル13R、又は左ブレーキペダル13Lを繰り返し踏む操作に比べて操作性の向上が図れる。
【0069】
また、昇降切替レバー14が、昇降装置12を昇降操作する機能の他に、自動ブレーキのブレーキ圧力を変更操作する機能をも兼ね備えているので、自動ブレーキのブレーキ圧力を変更操作する専用レバーやスイッチを設ける必要がない。
【0070】
なお、トラクタ1が停止中又は直進走行中において、昇降切替レバー14が上げ操作又は下げ操作された場合において、作業機上げスイッチ20及び作業機下げスイッチ22から作業機昇降制御部320に送信されるON信号は、誤操作防止のために、作業機昇降制御部320においてすぐにON信号の検出を受け付けるのではなく、一定時間以上ON信号が継続した場合に限りON信号の検出を受け付ける様に、一定の遅延時間が設定されている。しかし、旋回走行中において、昇降切替レバー14が上げ操作された場合は、作業機上げスイッチ20からのON信号は、作業機昇降制御部320においてすぐに受け付けられる様に、遅延時間を自動的にゼロに設定する構成とし、応答性の向上を図っている。
【0071】
なお、本実施の形態の走行車体2は、本発明の走行車体の一例にあたる。また、本実施の形態の左右一対のブレーキ装置210L、210Rは、本発明の左右一対の後輪ブレーキ装置の一例にあたる。また、本実施の形態の左右一対のブレーキペダル13L、13Rは、本発明の左右一対のブレーキペダルの一例にあたる。また、本実施の形態のブレーキ圧力設定ダイヤル18は、本発明のブレーキ圧力設定スイッチの一例にあたる。また、本実施の形態の走行制御部310と作業機昇降制御部320は、本発明の制御装置の一例にあたる。
【0072】
また、本実施の形態の作業機上げスイッチ20は、本発明のブレーキ圧力変更部の一例にあたる。また、本実施の形態の昇降装置12、作業機昇降シリンダ12a、メイン上昇ソレノイド21、及びメイン下降ソレノイド23は、本発明の昇降機構の一例にあたる。また、本実施の形態の昇降切替レバー14と作業機上げスイッチ20と作業機下げスイッチ22は、本発明の昇降操作スイッチの一例にあたる。
【0073】
なお、上記実施の形態では、自動ブレーキのブレーキ圧力を簡単なレバー操作だけで、自動で断続的に圧力の変更を繰り返すことができる構成について説明したが、これに限らず例えば、昇降切替レバー14を「中立」位置と「上げ」位置の間を作業者が手動で繰り返し移動させることにより、自動ブレーキのブレーキ圧力を断続的に増加させることが出来る構成としても良い。これにより、自動ブレーキによる旋回時にブレーキ圧力が不足して、旋回半径が大きくなった場合でも、旋回方向に対応する側のブレーキペダルを足で踏み込む作業を断続的に繰り返す操作に比べて、より簡単にブレーキ圧力を増加させることが出来、旋回半径を小さくすることが容易に行える。
【0074】
また、上記実施の形態では、昇降切替レバー14と作業機上げスイッチ20と作業機下げスイッチ22が、昇降装置12を昇降操作する機能の他に、自動ブレーキのブレーキ圧力を変更操作する機能をも兼ね備えている場合について説明したが、これに限らず例えば、自動ブレーキのブレーキ圧力を変更する専用スイッチを設け、その専用スイッチからの出力信号を走行制御部310に送信する構成としても良い。この構成の専用スイッチは、本発明のブレーキ圧力変更部の一例にあたる。
【0075】
また、自動ブレーキのブレーキ圧力を変更する専用スイッチを設けた場合において、その専用スイッチを「入り」状態にすれば、自動で断続的にブレーキ圧力の変更を繰り返すことができる構成としても良いし、或いは、その専用スイッチの「入り」状態と「切り」状態の切り替え操作を手動で繰り返すことにより、断続的にブレーキ圧力の変更を繰り返すことができる構成としても良い。
【0076】
また、上記実施の形態では、兼用スイッチであるか専用スイッチであるかに関わらず、自動で断続的にブレーキ圧力の変更を繰り返すことができる構成において、当該兼用スイッチ又は専用スイッチの「入り」状態を維持するために、作業者が当該兼用スイッチ又は専用スイッチを直接またはレバー等を介して手で操作し続ける必要がある場合について説明したが、これに限らず例えば、作業者が当該兼用スイッチ又は専用スイッチを「入り」側に一旦操作すれば、その後、手を放しても、「入り」状態が維持され、手動で「切り」側に操作しなければ「切り」状態にはならない構成としても良い。
【0077】
また、上記実施の形態では、作業者が、昇降切替レバー14を「上げ」側に倒す操作を行うことにより、自動ブレーキのブレーキ圧力が変更される構成について説明したが、これに限らず例えば、走行車体2の旋回中におけるヨー方向の旋回角速度を検出しその検出結果を走行制御部310に出力する旋回角速度センサ(図示省略)をハンドルポスト9a(図3参照)の近傍に備え、走行制御部310が、旋回角速度センサにより検出されたヨー方向の旋回角速度が所定の閾値より小さいと判定した場合であって、且つ、ブレーキ圧力設定ダイヤル18による設定値が予め定めた弱制動の範囲内であると判定した場合、走行制御部310は、その旋回の途中においてメモリ部311に格納された自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力を図8に示す様に断続的に増加させ、その後、走行制御部310が、旋回角速度センサにより検出されたヨー方向の旋回角速度が所定の閾値を超えたと判定した場合、自動ブレーキのブレーキ圧力を初期設定の値(図8のP0参照)に戻す構成としても良い。これにより、旋回半径が大きくなりすぎてヨー方向の旋回角速度が遅くなった場合において、自動ブレーキのブレーキ圧力を自動で断続的に増加させることが出来、作業者が操作しなくても、最適な旋回走行が行える。
【0078】
ここで、旋回半径とヨー方向の旋回角速度との関係について説明する。自動ブレーキを使用して旋回走行を行う場合は、基本的に旋回時にギアチェンジやアクセル操作は行われない。よって、ブレーキのかからない旋回外側の後輪の周速度は一定、即ち、旋回軌跡の周速度が一定であると仮定することが出来る。その様に仮定した場合、ヨー方向の旋回角速度が遅いということは、旋回半径が大きくなっていることを意味し、旋回内側の後輪のブレーキ圧力が不足していると判断出来るので、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力を増加させることにより、旋回半径を適切に調節できるものである。
【0079】
また、上記構成において、自動ブレーキのブレーキ圧力を自動で断続的に増加させる機能を、作業者の操作により入り切り出来る構成としても良い。畑など圃場表面の仕上がりを重視している作業者にとっては、当該機能が自動的に作動することを望まない場合があり、その様な場合には、当該機能を切れる構成とすることで、汎用性が向上する。
【0080】
また、上記構成において、自動ブレーキのブレーキ圧力を自動で断続的に増加させる機能が作動中であれば、メータパネル15に配置されたオートブレーキモニタ15aを高速で点滅させる構成としても良い。これにより、作業者は当該機能が作動していることを認識出来て、走行安全性がより一層向上する。
【0081】
また、上記実施の形態では、直進走行時の車速について、自動ブレーキの作動を許可するか否かの制限を設けない構成について説明したが、これに限らず例えば、車速センサを備え、直進走行時の車速が所定値(例えば、7km/h)以下の場合に限り、走行制御部310は自動ブレーキの作動を許可する構成としても良い。また、この構成の場合において、更に、自動ブレーキの作動が許可されている場合であっても、旋回走行中に車速が所定値を超えた場合には、自動ブレーキの作動はそのまま継続させるが、初期設定のブレーキ圧力が増加する方向に変更される機能の作動は許可しない構成としても良い。これにより、車速が所定値より速い場合に高い制動が作用することを防止出来、安全性のより一層の向上を図ることが出来る。
【0082】
また、上記実施の形態では、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力が、図8に示す様に、断続的に変更される場合について説明したが、これに限らず例えば、図9(a)に示す様に、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力P0を、ΔPだけ連続的に増加させてブレーキ圧力をP1に変更する構成としても良い。これにより、旋回半径が大きくなった場合に、簡単な操作で旋回内側の後輪のブレーキ圧力を少しだけ連続的に増加させることが出来、旋回半径を適切な大きさにすることが出来、作業性が向上する。図9(a)は、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力P0を、ΔPだけ連続的に増加させてブレーキ圧力をP1に変更する構成の圧力変化の一例を示す模式図である。
【0083】
また、この構成の場合、専用スイッチを設けて、その専用スイッチを押した時にΔPの圧力(例えば、3kgf/cm2)だけブレーキ圧力が連続的に増加する(図9(a)参照)構成としても良いし、上述した様に、昇降切替レバー14(図3参照)が、昇降装置12を昇降操作する機能の他に、自動ブレーキのブレーキ圧力を変更操作する機能をも兼ね備えた構成としても良い。これにより、既存のレバーやスイッチを共用することが出来るので、コストアップすることなく機能を追加出来る。また、この構成の場合においても、上述した様に、ΔPの圧力を任意の値に設定可能な構成としても良い。これにより、圃場条件やユーザのニーズに応じて最適な値に設定出来、汎用性が向上する。
【0084】
また、上記実施の形態では、旋回半径が大きくなった場合において、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力を増加させる方向に変更可能な構成について説明したが、これに限らず例えば、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力を増加させる方向に変更可能な機能に加えて、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力を減少させる方向に変更可能な機能(図9(b)参照)をも備えた構成であっても良い。図9(b)は、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力P0を、ΔPだけ連続的に減少させてブレーキ圧力をP2に変更する構成の圧力変化の一例を示す模式図である。これにより、圃場内の一部において荒らしたくない場所が存在したり、水が浮いているので慎重に旋回したほうが良い場所が存在した場合でも、簡単な操作で、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力を即座に弱めることが出来、作業性が向上する。また、この構成の場合、昇降切替レバー14と作業機上げスイッチ20と作業機下げスイッチ22(図3図7参照)が、昇降装置12を昇降操作する機能の他に、自動ブレーキのブレーキ圧力を変更操作する機能をも兼ね備えた構成としても良い。即ち、この構成の場合、操舵角センサ370(図7参照)の検知結果に基づいて、旋回走行中であると判定した走行制御部310は、昇降切替レバー14の「上げ」方向(図3の矢印A参照)の操作が、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力を増加方向に変更する操作を意味するものとして受け付け、且つ、昇降切替レバー14の「下げ」方向(図3の矢印B参照)の操作が、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力を減少方向に変更する操作を意味するものとして受け付ける。また、この構成の場合、昇降切替レバー14を用いてブレーキ圧力の変更操作を行う構成であるので、作業者が、昇降切替レバー14を「上げ」方向又は「下げ」方向に手で操作している間だけ、ブレーキ圧力がΔPだけ変更され、手を離すとブレーキ圧力は、所定設定のP0に戻る構成である。
【0085】
また、この構成では、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力を増加させる方向に変更可能な機能に加えて、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力を減少させる方向に変更可能な機能をも備えた構成であるが、これに限らず例えば、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力を減少させる方向に変更可能な機能だけを備えた構成であっても良い。
【0086】
また、上記実施の形態では、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力を増加又は減少させる方向に変更する場合、図9(a)、図9(b)に示す様に、一気にΔPの変更を行う構成について説明したが、これに限らず例えば、圧力を徐々に変化させて最終的にΔPの変更を実現させる構成としても良い。これにより、急激な圧力変化を防止出来、圃場の枕地が荒れすぎるのを防止出来る。
【0087】
また、図9(a)、図9(b)で示した様に、昇降切替レバー14を用いてブレーキ圧力の変更操作を行う構成では、作業者が、昇降切替レバー14を「上げ」方向又は「下げ」方向に手で操作している間だけ、ブレーキ圧力がΔPだけ変更され、手を離すとブレーキ圧力は、所定設定のP0に戻る構成としたが、これに限らず例えば、ブレーキ圧力の変更操作を行うための専用スイッチ、即ち、ブレーキ圧アップスイッチとブレーキ圧ダウンスイッチとを設けた構成としても良い。この構成の場合、作業者が、旋回走行を開始し、自動ブレーキが自動的に作動しているときに、作業者が初めて「ブレーキ圧アップスイッチ」をON操作した場合、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力P0に対して、一定の規定圧ΔPが追加される。また、この状態の後、作業者が「ブレーキ圧ダウンスイッチ」をON操作した場合、一定の規定圧ΔPが追加されたブレーキ圧力P1が、その一定の規定圧ΔPが追加される前の状態の初期設定のブレーキ圧力P0に戻る。また、例えば、作業者が、旋回走行を開始し、自動ブレーキが自動的に作動しているときに、作業者が初めて「ブレーキ圧ダウンスイッチ」をON操作した場合、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力P0に対して、一定の規定圧ΔPが減じられる。また、その後、作業者が「ブレーキ圧アップスイッチ」をON操作した場合、一定の規定圧ΔPが減ぜられたブレーキ圧力P2が、その一定の規定圧ΔPが減ぜられる前の状態の初期状態のブレーキ圧力P0に戻る。
【0088】
また、上記実施の形態では、自動ブレーキの初期設定のブレーキ圧力の変更操作は、スイッチを何回操作しても、初期設定のP0に対して、±ΔPの範囲内の変更に限られる場合について説明したが、これに限らず例えば、スイッチを操作する度にΔPずつ変更される構成であっても良い。例えば、ブレーキ圧力が増加する方向に変化させる増加スイッチを一度操作すると、ブレーキ圧力はP0からP0+ΔPに変化し、その後、増加スイッチをもう一度操作すると、ブレーキ圧力はP0+ΔPからP0+2ΔPに変化する構成としても良い。また、この構成の場合、旋回走行が終了したときに、ブレーキ圧力の変更が解除されて初期設定値に戻る。
【0089】
また、上記実施の形態では、昇降切替レバー14の「上げ」操作が、自動ブレーキのブレーキ圧力を増加させる方向に変化させる操作に対応し、昇降切替レバー14の「下げ」操作が、自動ブレーキのブレーキ圧力を減少させる方向に変化させる操作に対応する場合について説明したが、これに限らず例えば、昇降切替レバー14の「上げ」操作が、自動ブレーキのブレーキ圧力を減少させる方向に変化させる操作に対応し、昇降切替レバー14の「下げ」操作が、自動ブレーキのブレーキ圧力を増加させる方向に変化させる操作に対応する構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明にかかる作業車両は、自動ブレーキによる旋回時に例えばブレーキ圧力が不足しても、簡単にブレーキ圧力を調整することが出来るという効果を有し、作業車両として有用である。
【符号の説明】
【0091】
1 トラクタ
2 走行車体
3 エンジン
4L、4R 左右一対の前輪
5L、5R 左右一対の後輪
6 PTO出力軸
11 作業機
12 昇降装置
12a 作業機昇降シリンダ
13L、13R 左右一対のブレーキペダル
20 作業機上げスイッチ
21 メイン上昇ソレノイド
22 作業機下げスイッチ
23 メイン下降ソレノイド
24 昇降レバーセンサ
100 動力伝動機構
210L、210R 左右一対のブレーキ装置
220L、220R 左右一対のブレーキシリンダ
230 連係ロッド
240 ポンプ
250 比例調圧弁
260 制御弁
270 操舵角センサ
310 走行制御部
320 作業機昇降制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9