(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対向配置される一対の配線基板の間に線膨張係数の異なる複数の熱電変換素子が組み合わせて配列され、これらの熱電変換素子が前記配線基板を介して接続された熱電変換モジュールであって、
各配線基板は、前記熱電変換素子が接合される配線部を有しており、
前記一対の配線基板のうちの少なくとも一方の配線基板において、隣り合う両熱電変換素子の間を接続して設けられる一方の配線部が、
両熱電変換素子の間を連結して設けられる多孔質ではない面状の導電層と、
前記導電層に接合された多孔質金属層とを有しており、
前記熱電変換素子と前記多孔質金属層との間に前記導電層が配設されていることを特徴とする熱電変換モジュール。
前記一方の配線部には、前記多孔質金属層の前記導電層とは反対側の面に、前記多孔質金属層と主成分が同一の材料により形成された基端側金属層が配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱電変換モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
第1実施形態の熱電変換モジュール101は、
図1〜
図3に示すように、対向した配線基板2A,2Bの間に、P型熱電変換素子3及びN型熱電変換素子4を線状(一次元)に配列した構成である。簡便にするため、
図1〜
図3にはP型熱電変換素子3及びN型熱電変換素子4が二対で配列された例を示しており、合計4個の熱電変換素子3,4が一列に並んで設けられている。
【0018】
P型熱電変換素子3及びN型熱電変換素子4の熱電変換材料としては、テルル化合物、スクッテルダイト、充填スクッテルダイト、ホイスラー、ハーフホイスラー、クラストレート、シリサイド、酸化物、シリコンゲルマニウムなどがあり、P型熱電変換素子3の材料として、Bi
2Te
3、Sb
2Te
3、PbTe、TAGS(=Ag‐Sb‐Ge‐Te)、Zn
4Sb
3、CoSb
3、CeFe
4Sb
12、Yb
14MnSb
11、FeVAl、MnSi
1.73、FeSi
2、Na
xCoO
2、Ca
3Co
4O
7、Bi
2Sr
2Co
2O
7、SiGeなどが用いられ、N型熱電変換素子4の材料として、Bi
2Te
3、PbTe、La
3Te
4、CoSb
3、FeVAl、ZrNiSn、Ba
8Al
16Si
30、Mg
2Si、FeSi
2、SrTiO
3、CaMnO
3、ZnO、SiGeなどが用いられる。以上のようにドーパントによりP型とN型の両方をとれる化合物と、P型かN型のどちらか一方のみの性質をもつ化合物があるが、本発明は特にP型かN型のどちらか一方のみの性質をもつ化合物を用い、線熱膨張係数が異なる材料同士を熱電変換モジュールとした際に、特に、効果を発揮する。
【0019】
また、環境への影響が少なく、資源埋蔵量も豊富なシリサイド系材料が注目されており、中温型(300℃〜500℃程度)の熱電変換モジュール101の熱電変換材料として、P型熱電変換素子3にマンガンシリサイド(MnSi
1.73)、N型熱電変換素子4にマグネシウムシリサイド(Mg
2Si)が用いられるが、その際、P型熱電変換素子3に用いられるマンガンシリサイドの線膨張係数は10×10
−6/K程度であり、N型熱電変換素子4に用いられるマグネシウムシリサイドの線膨張係数は17×10
−6/K程度である。
そして、これら熱電変換素子3,4は、例えば横断面が正方形(例えば、一辺が1mm〜8mm)の角柱状に形成され、長さ(
図1の上下方向に沿う長さ)は2mm〜8mmとされ、P型熱電変換素子3の長さとN型熱電変換素子4の長さは、ほぼ同じ長さに設定されている。なお、各熱電変換素子3,4の両端面にはニッケル、金等からなるメタライズ層35が形成される。
【0020】
配線基板2A,2Bは、絶縁基板21の一方の面に配線部11A,11Bが形成され、他方の面に熱伝達金属層22が形成されている。絶縁基板21は、一般的なセラミックス基板、例えばアルミナ(Al
2O
3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si
3N
4)や、グラファイト板上に成膜したダイヤモンド薄膜基板等の熱伝導性の高い絶縁性を有する部材が用いられる。例えば、絶縁基板21をセラミックス基板により形成した場合には、厚みが0.2mm〜1.5mmとされる。
【0021】
配線部11A,11Bは、
図1に示されるように、導電層12と、多孔質金属層13と、基端側金属層14,15とを有する構成とされている。また、配線基板2Aには、
図2に示すように、平面視長方形状の配線部11Aが形成されており、配線層11Aは、隣り合うP型熱電変換素子3とN型熱電変換素子4とを接続するように設けられている。そして、隣り合う両熱電変換素子3,4の間を接続して設けられる配線部11Aの導電層12は、両熱電変換素子3,4の間に連結して設けられている。一方、配線基板2Bには、
図3に示すように、平面視正方形状の配線部11Bが形成されており、配線部11Bには、外部に接続するための外部配線部15aが形成されている。なお、外部配線部15aは、基端側金属層15に形成されている。また、配線部11A,11Bの平面サイズ(面積)は、これら配線部11A,11Bに接続される熱電変換素子3,4の大きさに応じて、熱電変換素子3,4の端面の面積よりも若干大きく設定されている。
【0022】
配線部11A,11Bを構成する各金属層12〜15のうち、導電層12は、アルミニウム又は銅を主成分とする材料(アルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金)により面状に形成されている。この導電層12の材料としては、純度99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)や純度99.9質量%以上の銅からなる金属板が好ましく、導電層12の厚さとしては、0.1mm以上1.2mm以下とされる。このように、導電層12の厚さを比較的薄く形成しておくことで、隣り合う両熱電変換素子3,4の間を連結して設けられる面状の導電層12を両熱電変換素子3,4の熱伸縮に追従させてこれら熱電変換素子3,4の間で容易に屈曲できる。
【0023】
なお、導電層12の厚さが0.1mm未満では導電性が低下し、1.2mmを超えると熱電変換素子3,4に対する追従性が低下する。また、導電層12の厚さが0.1mm未満であると、熱電変換素子3,4との接合時に接合材の成分が導電層12を貫通し、多孔質金属層13にまで達することで、多孔質金属層13が溶融するおそれがある。
【0024】
なお、図示は省略するが、導電層12の一方の表面には銀下地層が形成されており、この銀下地層と熱電変換素子3,4の端面とが接合されている。また、導電層12の他方の表面(裏面)には、導電層12と主成分を同一の材料により形成された多孔質金属層13が設けられ、多孔質金属層13の他方の表面(裏面)に基端側金属層14,15が設けられている。なお、図示例では、外部配線部15aを除く基端側金属層14,15の一方の表面全体に多孔質金属層13が設けられ、多孔質金属層13の一方の表面全体に導電層12が設けられている。
【0025】
このように、基端側金属層14,15は、多孔質金属層13の導電層12とは反対側の面に接合されている。そして、基端側金属層14,15は、多孔質金属層13と主成分が同一(アルミニウム又は銅)の材料により形成されており、純度99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)や純度99.9質量%以上の銅が好ましい材料とされる。なお、基端側金属層14,15の厚みは0.05mm以上2.0mm以下とされる。
【0026】
また、多孔質金属層13は、例えば、焼結により複数の金属繊維(アルミニウム繊維又は銅繊維)が連結されて一体化された金属多孔体や、発泡金属等により形成され、内部に複数の空洞部を有する構成とされている。
多孔質金属層13に適用される金属多孔体は、導電層12と主成分を同一の材料(アルミニウム又は銅)とする複数の金属繊維が焼結されてなるものである。すなわち、導電層12がアルミニウムを主成分とする材料により形成される場合は、金属多孔体の金属繊維がアルミニウム繊維で構成され、導電層12が銅を主成分とする材料により形成される場合は、金属多孔体の金属繊維が銅繊維で構成される。そして、金属多孔体は、焼結により複数の金属繊維が互いに連結されて一体化されたものであり、内部に複数の空隙部を有する構成とされる。なお、金属多孔体を構成する各々の金属繊維の外周面には、その外周面から外方に突出する長さが短く、径が細い柱状突起が間隔をおいて複数形成され、隣接する金属繊維が互いの柱状突起において連結されて一体化されている。
【0027】
また、金属多孔体は、気孔率が20%以上90%以下とされるものを好適に用いることができる。
なお、金属多孔体の気孔率が20%未満であると、金属多孔体中の金属繊維が密となり、金属多孔体を伸縮させる際に大きな荷重が必要となる。このため、熱電変換素子3,4の熱伸縮に応じた応力緩和効果を得ることが難しくなる。また、気孔率が90%を超える金属多孔体を作ることは難しい。
【0028】
アルミニウム繊維からなる金属多孔体を例にして金属多孔体の製造方法について簡単に説明しておくと、金属多孔体は、常温において、平均線径が40〜300μm(好ましくは50〜200μm)であって長さが0.2〜20mm(好ましくは1〜10mm)の多数本のアルミニウム繊維に、平均粒径が1〜50μm(好ましくは5〜30μm)のチタン粉もしくは水素化チタン粉又はこれらの混合粉を加えて混合したものを、590℃〜665℃で加熱することで多数本のアルミニウム繊維が連結されて成形される。
【0029】
そして、多孔質金属層13は、このように構成される金属多孔体により形成され、熱電変換素子3,4と配線部11A,11Bとの接合時に加わる接合荷重によって、一方向(厚み方向)に押圧されることにより熱電変換素子3,4と接している部分が圧縮されている。
【0030】
例えば、少なくとも2つの部材が接合された接合体に対し、一定の高さを保つことで接合荷重を負荷する構造の治具を用いて、多孔質金属層13を有する配線部11A,11Bと熱電変換素子3,4とを接合するた場合、多孔質金属層13を用いた配線部11A,11Bに荷重を加えた際に、多孔質金属層13が圧縮されて厚さが小さくなることで荷重が緩和され、配線部11A,11Bと熱電変換素子3,4とに十分な接合荷重を付与することができない。このため、接合荷重を加える際には、荷重を加えて金属多孔質層13の厚さを小さくした後に、さらに目的の値まで接合荷重を追加する必要がある。あるいは、先に多孔質金属層13を用いた配線部11A,11Bを接合荷重以上の荷重により圧縮しておき、多孔質金属層13を圧縮した後に配線部11A,11Bと熱電変換素子3,4と組み立てて接合しても良い。いずれにせよ、製造された熱電変換モジュール101の多孔質金属層13は、接合荷重により圧縮される量以上に圧縮された状態となる。
【0031】
また、発泡金属は、多数の気孔(空洞部)を含む多孔質金属であり、機構の直径としては一般的に数μmから数cmとされる。この発泡金属は、ガスの発泡現象を利用して製造した多数の気泡をもつ三次元網目状をなす金属であり、金属フォームとも称される。また、多孔質樹脂の骨格表面に金属を被覆し、その後、樹脂だけを焼失させて三次元網目状の金属骨格を形成させたものも、発泡金属に含まれるものとする。
【0032】
また、熱伝達金属層22は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金からなり、絶縁基板21の表面に接合されることにより形成されている。熱伝達金属層22の材料としては、純度99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)や純度99.9質量%以上の銅が好ましい。特に限定されるものではないが、基端側金属層14,15と同程度の純度と厚みとするのが好ましい。
これら基端側金属層14,15及び熱伝達金属層22の絶縁基板21(セラミックス基板)への接合は、ろう材等を用いて行われる。
【0033】
次に、このように構成された熱電変換モジュール101を製造する方法を、伝導層12と基端側金属層14,15がアルミニウムを主成分とする材料により形成され、多孔質金属層13がアルミニウム繊維からなる金属多孔体により形成される場合について説明する。
【0034】
(配線基板の製造)
配線基板2A,2Bは、まず、例えば
図4(a)に示すように、絶縁基板21(セラミックス基板)の一方の面に配線部11A,11Bを構成する基端側金属層14,15を、他方の面に熱伝達金属層22を、Al‐Si系ろう材等により接合する。この場合、絶縁基板21に基端側金属層14,15となるアルミニウム板及び、熱伝達金属層22となるアルミニウム板をそれぞれろう材を介して積層し、これらを積層方向に加圧した状態で610℃〜650℃に加熱することにより、絶縁基板21に基端側金属層14,15及び熱伝達金属層22を接合する。
【0035】
次に、常温において、アルミニウム繊維(金属繊維)にチタン粉もしくは水素化チタン粉又はこれらの混合粉を加えて混合したものを、基端側金属層14,15上に配置する。そして、さらにこのチタン粉等が混合されたアルミニウム繊維の上に導電層12となるアルミニウム板を重ねて、基端側金属層14,15と導電層12となるアルミニウム板との間にアルミニウム繊維の混合物を挟んだ状態としておき、この状態で590℃〜650℃で加熱することにより、多数本のアルミニウム繊維を連結して、
図4(b)に示すように、基端側金属層14,15上に金属多孔体からなる多孔質金属層13を成形するとともに、導電層12を多孔質金属層13を介して一体に設け、配線部11A,11Bを有する配線基板2A,2Bを形成する。熱電変換素子との接合にろう材を用いることができない場合(おおむね550℃以上の温度域で熱電変換素子の耐久性が不足する場合)、導電層12の上にガラス含有銀ペーストを塗布して、焼成することにより銀下地層を形成してもよい。
【0036】
なお、配線基板2A,2Bは、大型(大面積)のセラミックス基板を用いることにより、個々の配線基板2A,2Bが連結された状態で形成することもできる。具体的には、大型のセラミックス基板に各金属層12〜15,22を接合した後、大型のセラミックス基板をワイヤーソー等により切断することにより、各セラミックス基板21に個片化して、配線基板2A,2Bを形成できる。
なお、配線基板に基端側金属層、セラミックス基板、熱伝達金属層を設けずに、導電層と多孔質金属層とで配線基板を構成する場合には、導電層となるアルミニウム板上にチタン粉等が混合されたアルミニウム繊維を配置した後に、そのままの状態で加熱を行えばよい。
【0037】
また、本実施形態においては、熱電変換素子3,4と接合される導電層12をアルミニウムが含まれる材料で形成していることから、熱電変換素子3,4にシリコン(Si),マグネシウム(Mg),マンガン(Mn),ニッケル(Ni)が含有される素子を用いる場合は、熱電変換素子3,4と各配線基板2A,2Bとの接合前に、これらの配線基板2A,2Bを積層方向(厚み方向)に、熱電変換素子3,4と各配線基板2A,2Bとの接合荷重で押圧することにより、多孔質金属層13を圧縮しておくと良い。なお、導電層12を銅が含まれる材料で形成した場合には、熱電変換素子3,4にアルミニウム(Al)が含有される素子を用いる場合も同様である。配線基板2A,2Bと熱電変換素子3,4との接合時において、隣り合うP型熱電変換素子3とN型熱電変換素子4とを接続する配線部11Aの中間部分が加熱によりだれることがあり、この場合に、導電層12と各熱電変換素子3,4とが接触することで融点降下を生じることを防止するためである。
【0038】
(熱電変換素子の接合)
銀下地層がある場合、配線基板2A,2Bに設けられた導電層12の銀下地層の上に銀ペーストをスクリーン印刷法等によって塗布し、乾燥させた後、
図4(c)に示すように、その銀ペースト層の上に熱電変換素子3,4の端面を重ね合わせるようにして配線基板2A,2Bの間にP型熱電変換素子3及びN型熱電変換素子4を並べて配置し、加熱炉内で、加圧力(接合荷重):0(自重のみ)〜30MPa(好ましくは0.01MPa〜3MPa)、焼成温度:150〜400℃で加熱焼成することにより、導電層12と熱電変換素子3,4とを銀接合層を介して接合し、配線基板2A,2Bの間に、P型熱電変換素子3及びN型熱電変換素子4が直列に接続された熱電変換モジュール101を製造する。あるいは、配線基板2A,2Bに設けられた導電層12と、P型熱電変換素子3およびN型熱電変換素子4との間にろう材を挿入し、加熱炉内で、加圧力(接合荷重):0.01〜10MPa、接合温度:585〜600℃で接合しても良い。
【0039】
この際、熱電変換素子3,4と配線基板2A,2Bとの接合時における積層方向への接合荷重は、30MPa以下とする。これにより、線膨張係数の異なる両熱電変換素子3,4に熱伸縮差が生じても、多孔質金属層13が伸縮して寸法変化を吸収するので、多孔質金属層13を介して熱電変換素子3,4と配線基板2A,2Bとに均一に接合荷重を付加でき、熱電変換素子3,4を所望の位置に確実に接合できる。
なお、熱電変換素子3,4と配線基板2A,2Bとの接合時に付加される焼成温度は、上記のように600℃以下で行う必要がある。アルミニウム繊維からなる多孔質金属層13にあっては、焼成温度が600℃を超えると、多孔質金属層13中のアルミニウム繊維同士が焼結し、多孔質金属層13の応力緩和効果が減少するおそれがある。
【0040】
このようにして製造された熱電変換モジュール101は、
図1の上側に外部の熱源5が配置され、下側に冷却流路6等が配置される。これにより、各熱電変換素子3,4に上下の温度差に応じた起電力が発生し、配列の両端の外部配線部15a間に、各熱電変換素子3,4に生じる起電力の総和の電位差を得ることができる。
【0041】
そして、このような使用環境下において、熱電変換モジュール101の両熱電変換素子3,4の熱膨張に差が生じるが、隣り合うP型熱電変換素子3とN型熱電変換素子4とを接続する配線部11A,11Bを、導電層12と多孔質金属層13とを有する構成としているので、配線部11A,11Bにより互いに接続される両熱電変換素子3,4に熱伸縮差が生じても、多孔質金属層13が伸縮して寸法変化を吸収する。このため、熱電変換素子3,4の熱伸縮差により熱電変換モジュール101内に生じる応力の発生を抑制できる。
【0042】
一方、熱電変換モジュール101が常温に戻された際にも、多孔質金属層13が配線基板2A,2Bと熱電変換素子3,4との間で押圧又は引っ張られ、多孔質金属層13が容易に伸縮して寸法変化を吸収するので、この場合においても、熱伸縮差により熱電変換モジュール101内に生じる応力の発生を抑制できる。このように、多孔質金属層13は、伸長と圧縮を繰り返すことができる。
【0043】
また、熱電変換モジュール101では、多孔質金属層13の表面に、導電層12を設け、導電層12と熱電変換素子3,4とを接合しており、導電層12を熱伝導性や導電性に優れた高純度のアルミニウム又は銅により形成しているので、配線部11A,11Bにより接続される両熱電変換素子3,4間の熱伝導性や導電性を導電層21によって良好に維持できる。また、導電層12は、柔軟性の高い高純度のアルミニウム又は銅により形成されるので、本実施形態のように、両熱電変換素子3,4の間を連結するように設けられていても、両熱電変換素子3,4の間で容易に屈曲でき、両熱電変換素子3,4の熱伸縮を阻害することもない。また、導電層12を設けることで、配線部11,12と熱電変換素子3,4との接合において、ろう付けやはんだ付け、固相拡散接合、銀焼結等の種々の接合方法を採用でき、接合方法の自由度が向上するので、導電層12と熱電変換素子3,4とを確実に接合できる。
【0044】
さらに、多孔質金属層13は、導電層12と主成分が同一の材料として、熱伝導性や導電性に優れたアルミニウム又は銅により形成されているので、配線部11A,11Bにより接続される両熱電変換素子3,4間の熱伝導性や導電性を多孔質金属層13によっても良好に維持でき、接合信頼性に優れた熱電変換モジュール101を得ることができる。
【0045】
したがって、熱伸縮差による熱電変換素子3,4のクラックや配線基板2A,2Bとの剥離等の発生を防止できる。また、熱電変換素子3,4と配線基板2A,2Bとの接合不良による内部抵抗の増加を回避でき、良好な熱伝導性及び導電性を確保できるので、熱電変換モジュール101の出力を向上させることができる。
【0046】
なお、
図1に示す第1実施形態では、外部配線部15aを除く基端側金属層14,15の表面全体に多孔質金属層13を設け、さらに多孔質金属層13の表面全体に導電層12を設けるとともに、これら多孔質金属層13と導電層12とを熱電変換素子3,4の両端の二箇所の両方にそれぞれ配設させていたが、多孔質金属層13は、P型熱電変換素子3又はN型熱電変換素子4の両端のうちの少なくともいずれか一方に設けておけばよい。なお、多孔質金属層13を設けない側の配線基板においては、複数の配線部を一枚のセラミックス基板21に一体に設けることが可能である。
【0047】
また、第1実施形態では、熱電変換素子3,4の両端に配設される配線基板2A,2Bのいずれにも絶縁基板21を設けたリジットタイプの熱電変換モジュール101について説明したが、本願発明は、
図5に示す第2実施形態のように、熱電変換素子3,4の一方の端部側(
図5では上側)に配設された配線基板2Aのみに絶縁基板21を設け、他方の端部側(
図5では下側)に配設された配線基板2C,2Dを配線部11A,11Bにより構成したハーフスケルトンタイプの熱電変換モジュール102にも適用できる。また、同様に、
図6に示す第3実施形態のように、熱電変換素子3,4の両端に配設される配線基板2C,2Dをいずれも絶縁基板を有しない構成とするスケルトンタイプの熱電変換モジュール103にも、本願発明を適用できる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【実施例】
【0049】
(実施例1)
導電層の有無による熱電変換モジュールの内部抵抗への影響を実証するため、
図7(a)及び(b)に示すように、導電層12と多孔質体金属層13と基端側金属層14とからなる配線部11C,11Dを作製した。
図7(a)に示す配線部11Cは、導電層12の中間に幅1mmのスリット16を入れた。
図7(b)に示す配線部11Dは、スリットを入れずに構成した。配線部11C,11Dの導電層12と基端側金属層14とには、それぞれ5mm×11mm×0.4mmtのアルミニウム板を用いた。また、多孔質金属層13には、平均線径100μmで、平均長さ3mmのアルミニウム繊維を焼成して気孔率約60%とし、基端側金属層14と同じ平面サイズで、厚み2mmのものを使用した。
【0050】
そして、導電層12を熱電変換素子と接合する面と想定し、
図7(a)又は(b)に示すように、4端子法により配線部11C,11Dの内部抵抗を測定した。なお、
図7(a),(b)に示す符号41は、測定器(三菱化学アナリテック社製のロレスタ‐GX)を表す。測定結果は、スリット16ありの配線部11Cが0.44mΩであるのに対し、スリットなしの配線部11Dは0.024mΩであった。この結果から、スリットのない導電層を用いることによって抵抗を下げることが可能であることがわかった。
【0051】
(実施例2)
実施例1において、内部抵抗の低かった、すなわちスリットのない導電層を有する配線部を用いた多孔質金属層を有する熱電変換モジュールと、多孔質金属層を有さない基端側金属層のみの配線部を有する熱電変換モジュールを作製し、内部抵抗、開放電圧、最大出力を評価した。
【0052】
マンガンシリサイドからなる角柱状のP型熱電変換素子と、マグネシウムシリサイドからなる角柱状のN型熱電変換素子とを作製した。各熱電変換素子は、底面を5mm×5mmとし、長さを7mmとした。また、メタライズ層として、Niが各素子の両端に形成されている。そして、これらP型熱電変換素子及びN型熱電変換素子をそれぞれ1個ずつ組み合わせて、
図8(a)及び(b)に示すように、スケルトンタイプの熱電変換モジュール201,202を作製した。なお、
図8(a)は本発明例の熱電変換モジュール201を示し、
図8(b)は比較例の熱電変換モジュール202を示す。
【0053】
本発明例では、P型熱電変換素子3及びN型熱電変換素子4の一方の端面側(
図8(a)では上側)に、隣り合う両熱電変換素子3,4の間を接続する配線部11Dを有する配線基板2Eを接合し、各熱電変換素子3,4の他方の端面側(
図8(a)では下側)に、外部と接続される配線部11Eからなる配線基板2Fを接合して、熱電変換モジュール201を作製した。また、配線基板2Eの配線部11Dは、導電層12と多孔質金属層13と基端側金属層14とから構成し、導電層12を両熱電変換素子3,4の間を接続するように連結させ、平面視長方形状に形成した。そして、導電層12の表面全体に多孔質金属層13を接合し、さらに多孔質金属層13の表面全体に基端側金属層14を接合することにより配線部11Aを形成した。一方、配線基板2Fの配線部11Eは、基端側金属層14のみで形成した。
【0054】
比較例では、P型熱電変換素子3及びN型熱電変換素子4の一方の端面側(
図8(b)では上側)に、隣り合う両熱電変換素子3,4の間を接続する基端側金属層14のみで構成された配線部11Fを有する配線基板2Gを接合し、各熱電変換素子3,4の他方の端面側(
図8(b)では下側)に、外部と接続され、基端側金属層14のみで構成された配線部11Eからなる配線基板2Fを接合して、熱電変換モジュール202を作製した。
【0055】
導電層12及び基端側金属層14には、純度99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)からなる厚み0.4mmのアルミニウム板を用いた。また、多孔質金属層13には、気孔率約60%の厚み2mmのアルミニウム製の繊維金属を用いた。そして、配線基板2Eを構成する配線部11Dは、導電層12となるアルミニウム板と基端側金属層14となるアルミニウム板との間に多孔質金属層13となる繊維金属を挟んだ状態で、640℃で加熱することにより、一体化して形成した。
【0056】
そして、導電層12とP型熱電変換素子3およびN型熱電変換素子4との間に、Al−Si系ろう材を配置し、上側の配線基板2E,2Gと、下側の配線基板2Fとの間にP型熱電変換素子3及びN型熱電変換素子4を並べて配置し、加熱炉内で、加圧力(接合荷重):0.3MPa、接合温度:585℃で加熱焼成することにより、導電層12と熱電変換素子3,4とをろう材(Al‐Si系ろう材)を介して接合し、P型熱電変換素子3及びN型熱電変換素子4が1個ずつ直列に接続された熱電変換モジュール201,202を作製した。
【0057】
そして、得られた熱電変換モジュール201,202について、超音波探査により一方のP型熱電変換素子3(マンガンシリサイド)と導電層12との接合性を確認した。得られた超音波探査画像を
図9に示す。
また、作製した熱電変換モジュール201,202へ実際に温度差(高温部500℃、低温部20℃)を与えることで、発電特性を評価し、内部抵抗、開放電圧、最大出力を確認した。
【0058】
上記温度差を与えた状態で、熱電変換モジュールの出力端子間に可変抵抗を設置し、抵抗を変化させて、電流値と電圧値とを測定した。そして、横軸を電流値、縦軸を電圧値としたグラフを作成した。このグラフにおいて、電流値が0の時の電圧値を開放電圧とし、電圧値が0の時を最大電流とした。また、上記のグラフにおいて、開放電圧と最大電流を直線で結び、その直線の傾きを熱電変換モジュールの内部抵抗とした。最大出力は、{(開放電圧/2)×(最大電流/2)}から算出した。
これらの結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
図9の超音波探査像からわかるように、多孔質金属層13を有する本発明例(
図9(b))ではP型熱電変換素子3と導電層12との全面が接合されているのに対して、多孔質金属層を有しない比較例(
図9(a))では、一部にP型熱電変換素子3と導電層12との接合界面に非接合部(白色部)が生じており、本発明例の方では比較例よりも、P型熱電変換素子3と導電層12の接合性が向上した。また、表1からわかるように、本発明例では、開放電圧と最大出力とのいずれもが比較例よりも大きくなった。これにより、熱電変換モジュールの内部抵抗が減少し、同じ温度差を与えた際の最大出力が増加したことが確認できた。